JP4788033B2 - 金型離型回復樹脂組成物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体封止用金型離型回復樹脂組成物の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の電子機器の小型化、軽量化、高性能化の市場動向において、半導体素子の高集積化が年々進み、又半導体装置の表面実装化が促進されるなかで、半導体封止用エポキシ樹脂組成物への要求は益々厳しいものとなってきている。この要求に対応する様々な樹脂や添加剤が用いられた半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、連続成形時に金型汚れが発生し、金型取られ、未充填等の成形不具合が起こりやすくなり、そのため定期的に金型表面のクリーニングを行うことが通常となってきている。
【0003】
従来、半導体封止用金型のクリーニング材は、アミノ系樹脂のような成形収縮率の大きい樹脂と結晶破砕シリカ、ガラス繊維等の硬度の高い充填材等からなり、このクリーニング材を用いて金型表面の汚れを削り落とすというものが主体であった。クリーニング材を使用した後は金型表面が綺麗になる反面、金型表面の離型剤も取り去るため、クリーニングした直後に成形された半導体装置は極端に離型性が悪くなるという問題があった。そのためクリーニング材の使用後に、金型離型回復樹脂組成物を用いて、金型表面に金型離型回復樹脂組成物中の離型剤を移行させ塗布し、離型性を回復させる必要がある。
【0004】
金型離型回復樹脂組成物の機能は、金型表面に離型剤を移行させ塗布し、速やかに離型性を回復することにあるが、多量の離型剤を移行させてしまうと、その後成形した半導体装置の表面に油浮きや汚れを起こすという問題があり、十分に離型剤を移行できない場合は離型性が回復できず、離型回復樹脂組成物を多量に用いる必要があるという問題が発生する。更に離型性回復後の離型性を長く持続できない場合は、頻繁に離型回復樹脂組成物を用いる必要があり生産性が低下するので、生産性向上等のため、より金型離型回復性に優れた半導体封止用金型離型回復樹脂組成物が求められている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、特定の製造方法で得られた金型離型回復樹脂組成物であって、この樹脂組成物は少量でも離型性を回復させ、離型性回復直後の半導体装置の表面に油浮きや汚れを生じず、離型性を長く維持できる半導体封止用金型離型回復樹脂組成物の製造方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、金型離型回復樹脂組成物を製造する方法であって、(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、(D1)酸化マイクロクリスタリンワックス、酸化ポリエチレンワックス及び/又は酸化マイクロクリスタリンワックスと酸化ポリエチレンワックスのウレタン化物、(E)酸化防止剤、及び(F)無機充填材を必須成分とし、前記各成分を加熱混練冷却後4メッシュ以下の粉砕物とし、前記粉砕物に(D2)酸化マイクロクリスタリンワックス、酸化ポリエチレンワックス及び/又は酸化マイクロクリスタリンワックスと酸化ポリエチレンワックスのウレタン化物を添加混合して、その配合割合[(D1)+(D2)]が全樹脂組成物中の0.1〜2重量%、[(D2)]/[(D1)+(D2)]≧25重量%で、(D2)の粒度が16メッシュ以下であることを特徴とする半導体封止用金型離型回復樹脂組成物の製造方法である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられるエポキシ樹脂としては、特に限定するものではないが、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いてもよい。
【0008】
本発明で用いられるフェノール樹脂としては、特に限定するものではないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリフェノールメタン樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、フェニレン及び/又はジフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いてもよい。
エポキシ樹脂とフェノール樹脂との配合割合は特に限定するものではないが、エポキシ基/フェルーノール水酸基比としては、0.9〜1.2が好ましく、更に好ましくは0.95〜1.15が望ましい。この範囲から大きく外れると、樹脂組成物が充分に硬化せず離型性低下等の作業性の悪化が起こるおそれがある。
【0009】
本発明で用いられる硬化促進剤としては、前記エポキシ樹脂とフェノール樹脂との架橋反応の触媒となり得るものを指し、例えば、トリブチルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のアミン系化合物、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート塩等の有機リン系化合物、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。又これらの硬化促進剤は単独でも混合して用いてもよい。
【0010】
本発明で用いられる酸化マイクロクリスタリンワックスは、重油留分から得られるn−パラフィン及び分岐炭化水素を含むマイクロクリスタリンワックスを酸化することで得られ、カルボキシル基や水酸基を含むものである。一般的に、n−パラフィン及び分岐炭化水素を含むマイクロクリスタリンワックスは、樹脂成分との相溶性に乏しく、樹脂組成物の粘度が上昇し、更に成形時に金型表面に過度に染み出し、金型離型回復効果には優れるものの、離型性回復直後に成形した半導体装置に油浮きや汚れが生じるという欠点がある。そこで酸化マイクロクリスタリンワックスを用いると、樹脂成分との適度な相溶性による製品への油浮き、汚れの防止と、更に流動性を付与でき、優れた離型回復性を図ることができる。
【0011】
酸化ポリエチレンワックスは、エチレン重合法やポリエチレンの熱分解物として得られるポリエチレンワックスを酸化することで得られ、カルボキシル基や水酸基を含むものである。分子量1000〜10000程度のものが一般的である。分子量は特に限定するものではないが、離型回復樹脂組成物の低粘度化のためには、低分子量のものを用いることが好ましい。一般的に、ポリエチレンワックスは、融点が高く、樹脂成分との相溶性にも乏しく、成形時に金型表面に過度に染み出し、離型性回復直後に成形した半導体装置に汚れが付着するという欠点がある。そこで酸化ポリエチレンワックスを用いると、樹脂成分との適度な相溶性により、汚れ防止を図ることができる。
【0012】
本発明では、更に前記の酸化マイクロクリスタリンワックス及び酸化ポリエチレンワックスのウレタン化物を用いることができる。これらは離型性回復直後に成形した半導体装置への油浮き、汚れ防止と、低粘度化が図れ、離型回復効果を発揮するものである。
ウレタン化の方法は、特に限定するものではないが、例えばメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート等のイソシアネート類と、酸化マイクロクリスタリンワックス及び酸化ポリエチレンワックスの水酸基、或いはカルボキシル基とを反応させて行う。
本発明では、酸化マイクロクリスタリンワックスのウレタン化物と酸化ポリエチレンワックスのウレタン化物を用いても、或いは酸化マイクロクリスタリンワックスと酸化ポリエチレンワックスとを予め混合して、ウレタン化物としたものを離型剤として用いてもよい。
ウレタン化の割合については、特に限定するものではないが、得られたワックス中の窒素分で0.3〜5重量%の含有率が望ましい。ウレタン化部分が多過ぎると、ワックス自体の粘度が上昇し材料化が困難になる。
【0013】
本発明で用いられる酸化マイクロクリスタリンワックス、酸化ポリエチレンワックス及び/又は酸化マイクロクリスタリンワックスと酸化ポリエチレンワックスのウレタン化物の配合量は、特に限定するものではないが全樹脂組成物中に0.1〜2重量%が好ましく、更に好ましく0.5〜1.5重量%が望ましい。2重量%を越えると金型に過度に染み出し、離型回復直後の半導体装置に油浮きが生じるという問題がある。又0.1重量%未満だと金型表面に離型剤が充分に移行せず、期待されるような金型離型回復性が得られなないおそれがある。
本発明の半導体封止用金型離型回復樹脂組成物の製造方法において、製造工程の前半で添加するワックス(D1)と製造工程の後半で添加するワックス(D2)の配合量[(D1)+(D2)]は、全樹脂組成物中0.1〜2重量%で、その配合割合[(D2)]/[(D1)+(D2)]≧25重量%であり、(D2)の粒度としては16メッシュ以下のものである。
【0014】
粒子が小さすぎる場合、成形時の熱により溶融したワックスの一部が樹脂成分と相溶してしまい、金型表面への染み出しが少なくなり充分な離型性回復効果が得られず、離型回復樹脂組成物の添加量が多くなり生産性が低下する。又粒子が大きすぎる場合、過度に染み出したワックスが金型からの熱で徐々に酸化され、離型性が低下し、長時間離型性を維持することが難しく好ましくない。
[(D2)]/[(D1)+(D2)]が25重量%未満では、離型回復樹脂組成物自体の離型性は充分なものの、金型表面へ移行し塗布出来るワックス量が少なくなり、充分な離型回復効果が得られない。
【0015】
本発明で用いられる酸化防止剤は、金型表面に染み出しワックスの酸化を抑える機能を有し、長時間離型性を維持するためのものである。配合量については、特に限定しないが、全樹脂組成物中に0.1〜0.5重量%が望ましい。0.1重量%未満だとその効果が不十分で、0.5重量%を越えると酸化防止剤がブリードアウトして、成形品汚れを生じるという問題がある。ここで用いられる酸化防止剤は、例えば2,6-ジターシャリーブチル-p-クレゾール等のBHT誘導体、p-ベンゾキノン等のキノン誘導体、ジラウリルチオプロピオネートといった硫黄系酸化防止剤、カテコール、ビタミンC,ビタミンE等が挙げられる。
本発明で用いられる無機充填材としては、例えば溶融球状シリカ、結晶破砕シリカ等が挙げられる。
【0016】
本発明の金型離型回復樹脂組成物には、(A)〜(F)成分の他に、必要に応じてカルナバワックス、ステアリン酸、モンタン酸ワックスといった離型剤や、カップリング剤、カーボンブラック等の着色剤等の添加剤を用いてもよい。
本発明の金型離型回復樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、(D1)酸化マイクロクリスタリンワックス、酸化ポリエチレンワックス及び/又は酸化マイクロクリスタリンワックスと酸化ポリエチレンワックスのウレタン化物、(E)酸化防止剤、及び(F)無機充填材をミキサー等を用いて混合後、加熱ニーダ、熱ロール、押し出し機等を用いて加熱混練し、続いて冷却粉砕後4メッシュ以下の粉砕物とし、前記粉砕物に、(D2)粒度が16メッシュ以下の酸化マイクロクリスタリンワックス、酸化ポリエチレンワックス及び/又は酸化マイクロクリスタリンワックスと酸化ポリエチレンワックスのウレタン化物を添加混合した後タブレト化して得られる。4メッシュ以下の粉砕物と16メッシュ以下の(D2)を混合する際に発熱するような混合法だと、(D2)が溶融するし樹脂との相溶が起こり、離型回復樹脂組成物として、使用時に金型表面にワックスが充分に移行し塗布することが出来ず充分な離型回復効果が発揮できないので好ましくない。
【0017】
【実施例】
以下、本発明を実施例で具体的に説明する。配合割合は重量部とする。
実施例1
組成物1
オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂 21.4重量部
フェノールノボラック樹脂 10.1重量部
1,8 −ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(以下、DBUという) 0.2重量部
球状溶融シリカ 66.6重量部
酸化マイクロクリスタリンワックス(融点92℃) 0.2重量部
酸化ポリエチレンワックス(融点96℃) 0.2重量部
カルナバワックス 0.3重量部
2,6-ジターシャリーブチル-p-クレゾール 0.1重量部
カーボンブラック 0.3重量部
をミキサーを用いて各成分を混合した後、表面温度が95℃と25℃の2軸ロールを用いて20回混練して得られた混練物シートを冷却後粉砕した4メッシュ以下の粉砕物99.4重量部に、組成物2の16メッシュ以下の粒度の酸化マイクロクリスタリンワックスのウレタン化物0.6重量部を配合混合後タブレット化した。得られた樹脂組成物の特性を以下の方法で評価した。評価結果を表1に示す。
【0018】
評価方法
スパイラルフロー:EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用の金型を用いて、金型温度175℃、注入圧力70kg/cm2、硬化時間2分で測定した。単位はcm。
離型回復性:金型表面をクリーニングするためのメラミン樹脂系クリーニング材を用いて、離型時荷重評価用金型で成形品を成形し、前記金型の表面の離型剤成分を取り除いた後、金型離型回復樹脂組成物を3回成形した後、金型温度175℃、注入圧力70kg/cm2、硬化時間2分で評価用材料をトランスファー成形し、製品抜き出し時の離型荷重を測定した。
離型時荷重評価用金型は、上型・中型・下型とからなり、成形後に中型に付着した14mmΦで1.5mm厚の円形の成形品に、中型の上部の穴からプッシュブルゲージを当て、成形品を突き出した際にかかる荷重を測定した。
評価用材料としては、住友ベークライト(株)製・半導体封止用エポキシ成形材料EME−7351を用いた。
離型持続性:離型時荷重評価用金型で成形品を成形し、前記金型の表面の離型剤成分を取り除いた後、金型離型回復樹脂組成物を3回成形した後、金型温度175℃、注入圧力70kg/cm2、硬化時間2分で評価用材料をトランスファー成形し、製品抜き出し時の離型荷重を測定した。離型荷重は、上型・中型・下型とからなる離型時荷重評価用金型を用いて成形し、成形後に中型に付着した14.5mmΦで1.5mm厚の円形の成形品に、中型の上部の穴からプッシュブルゲージを当て、成形品を突き出した際にかかる荷重とした。続けて評価用材料を200ショット成形し、離型荷重のショットごとの変化を測定した。このとき初期の離型荷重に対して30%以上離型荷重が増大したショット数で表現した。200<は、200ショット以上で初期の離型荷重に対して30%以下の離型荷重であることを表現したものである。
製品汚れ:金型離型回復樹脂組成物の使用直後に成形した評価用材料の成形品表面の油浮きと汚れ具合を確認した。表面を拭いた時に拭き取れるものは油浮き、取れないものは汚れと判定した。製品表面に汚れが発生したものは×、汚れはないが油浮きがあるものを△、いずれもないものは○と表現した。
【0019】
実施例2〜5、比較例1〜5
表1、表2の配合に従い、実施例1同様の組成物を得た。
実施例4、5、比較例4、5で用いたビフェニル型エポキシ樹脂は、融点105℃、エポキシ当量195である。実施例4、5、比較例4,5で用いたフェノールアラルキル樹脂は、軟化点72℃、水酸基当量165である。
実施例2、5のワックス1は酸化マイクロクリスタリンワックスと酸化ポリエチレンワックスの混合物のトルエンジイソシアネート変性品(融点89、酸価16、鹸化価60)
実施例3のワックス2は、酸化マイクロクリスタリンワックスと酸化ポリエチレンワックスの混合物のトルエンジイソシアネート変性品(融点82、酸化18、鹸化価50)
比較例1、4のマイクロクリスタリンワックスは、融点90℃。比較例1、2のポリエチレンワックスは、融点92℃。比較例3の酸化ポリエチレンワックスの融点は96℃である。
【0020】
【表1】
【0021】
【表2】
【0022】
【発明の効果】
本発明の製造方法で得られた半導体封止用金型離型回復樹脂組成物を用いた後に、成形された半導体装置には油浮きや汚れがなく、離型回復性に優れており、更に離型性を長く維持することができるので生産性向上に寄与する。
Claims (1)
- 金型離型回復樹脂組成物を製造する方法であって、(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、(D1)酸化マイクロクリスタリンワックス、酸化ポリエチレンワックス及び/又は酸化マイクロクリスタリンワックスと酸化ポリエチレンワックスのウレタン化物、(E)酸化防止剤、及び(F)無機充填材を必須成分とし、前記各成分を加熱混練冷却後4メッシュ以下の粉砕物とし、前記粉砕物に(D2)酸化マイクロクリスタリンワックス、酸化ポリエチレンワックス及び/又は酸化マイクロクリスタリンワックスと酸化ポリエチレンワックスのウレタン化物を添加混合して、その配合割合[(D1)+(D2)]が全樹脂組成物中の0.1〜2重量%、[(D2)]/[(D1)+(D2)]≧25重量%で、(D2)の粒度が16メッシュ以下であることを特徴とする半導体封止用金型離型回復樹脂組成物の製造方法。
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