JP4787418B2 - (メタ)アクリル酸オリゴスチレン・エステルと(メタ)アクリル酸メチルとの共重合体及びその製造方法 - Google Patents

(メタ)アクリル酸オリゴスチレン・エステルと(メタ)アクリル酸メチルとの共重合体及びその製造方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規(メタ)アクリル酸オリゴスチレン・エステルと(メタ)アクリル酸メチルとの共重合体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
従来から(メタ)アクリル酸メチルと(メタ)アクリル酸スチレン・エステルとの共重合体は知られていたが、(メタ)アクリル酸オリゴスチレン・エステルとの共重合体については、全く知られていなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、(メタ)アクリル酸オリゴスチレン・エステルと(メタ)アクリル酸メチルとの新規な共重合体及びその製造方法を提供する。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、本発明者が開発した新規なモノマである、(メタ)アクリル酸オリゴスチレン・エステルを(メタ)アクリル酸メチルとのラジカル重合させることにより、新規な(メタ)アクリル酸オリゴスチレン・エステルと(メタ)アクリル酸メチル共重合体が得られることを見出し本発明を完成した。
【0005】
すなわち、本発明にかかる共重合体は、下記一般式(1)と(2)で表される繰り返し構造単位からなる数平均分子量1000〜500000の共重合体である。
【化5】
Figure 0004787418
式中、Rは水素またはメチル基を表わし、nは2〜10の整数を表わす。
【化6】
Figure 0004787418
式中、R1は水素またはメチル基を表わす。
【0006】
また、本発明にかかる共重合体は前記一般式(1)中のR、および(2)中のR1がメチル基であり、nが2または3であることを特徴とする。
【0007】
さらに、本発明にかかる(メタ)アクリル酸オリゴスチレン・エステルと(メタ)アクリル酸メチルとの共重合体の製造方法は、下記一般式(3)
【化7】
Figure 0004787418
(式中、Rは水素またはメチル基を表わし、nは2〜10の整数を表わす)で表わされる(メタ)アクリル酸オリゴスチレン・エステルと、
【化8】
Figure 0004787418
(式中、R1は水素またはメチル基を表わす)で表わされる(メタ)アクリル酸メチルとを、有機溶媒中において重合させることを特徴とする。
【0008】
さらには、前記重合反応がラジカル重合であることを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下本発明を実施の形態に即して詳細に説明する。
(メタ)アクリル酸オリゴスチレン・エステルと(メタ)アクリル酸メチルとの共重合体
本発明にかかる共重合体は、その繰り返し構造単位が、一般式(1)及び(2)で表されるものであることを特徴とする。
その分子量について特に制限はなく、以下に説明する重合反応を制御することにより広い範囲で得ることができる。分子量(Mn、Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)はポリスチレンを標準としてゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)にて測定することができる。本発明において好ましい分子量は10000〜100000の範囲である。
【0010】
また、共重合体中の各繰り返し構造の存在比(モル比)には特に制限はなく以下説明する製造方法により広い範囲で得ることができる。本発明においては、一般式(1)で表される繰り返し構造と一般式(2)で表される繰り返し構造との比が、0.1:0.99〜0.99〜0.1の範囲であることが好ましく、さらに1:99〜99:1の範囲であることが好ましい。
【0011】
表1及び表2には典型的な本発明の共重合体について、仕込みメチルメタクリル酸(MMA)のモル分率、得られる共重合体のMw、Mw/Mn、収率及びMMA単位のモル分率がまとめられている。また、表3にはA−SDを用いた場合、仕込みMMAのモル分率、得られる共重合体中のMMA単位のモル分率がまとめられている。
【0012】
【表1】
Figure 0004787418
【0013】
ここで、a)分子量はポリスチレンを標準としてGPCで測定した。b)共重合体中のMMA単位のモル分率は重クロロホルム中の1HNMRで求めた。重合反応は、窒素置換したガラスアンプルを用いてベンゼン中で、[モノマ濃度]=0.18mol/L、[AIBN]=0.0036mol/L、60℃、3時間の条件で行った。
【0014】
【表2】
Figure 0004787418
【0015】
ここで、a)分子量はポリスチレンを標準としてGPCで測定した。b)MMA単位のモル分率は重クロロホルム中の1H NMRで求めた。重合反応は、窒素置換したガラスアンプルを用いてトルエン中で、[モノマ濃度]=1.87mol/L、[AIBN]=0.02mol/L、60℃、3時間の条件で行った。
【0016】
【表3】
Figure 0004787418
【0017】
ここで、MMA単位のモル分率は重クロロホルム中の1H NMRで求めた。重合反応は、窒素置換したガラスアンプルを用いてトルエン中で、[モノマ濃度]=0.18mol/L、[AIBN]=0.003mol/L、60℃、3時間の条件で行った。
【0018】
さらに、本発明の共重合体の繰り返し構造単位の結合様式については特に制限はなく完全なランダム共重合体から完全なブロック共重合体まで含むが、好ましくは部分的にブロック性を有するランダム共重合体である。ブロック性は、例えば1H NMR、13C NMRのミクロ構造からランダム共重合体かブロック性を有する共重合体かが推定できる。図1及び図2にはそれぞれ本発明の共重合体(MMAが70%モル組成、n=2)と、ポリメタアクリル酸ジスチレン・エステル(PM−SD)とポリメタアクリル酸メチル(PMMA)のブレンド物の1H NMRが示されている。明らかに本発明の共重合体がブロック性であることがわかる。
【0019】
またブロック性の見積もりには、Fineman-Ross法によるr値測定が可能である。具体的には、図3に一例として仕込み量のMMAのモル分率と、共重合体中のMMAのモル分率が示されているように前記r値は1より大きく、ランダムというよりもブロック性が多いことがわかる。
【0020】
また、本発明の共重合体の熱特性の1つとしてDSC測定によるガラス転移温度(Tg)が挙げられる。図4にその一例が挙げられているように、共重合体中の2つの繰り返し構造単位のモル比が1:1に近づくに従ってTgは低下し、1:1では約40℃にまで達することがわかる。このTgの低下は、PMMAのTgが約130℃であり、またポリメタアクリル酸ジスチレン・エステル(PM−SD)のTgが約70℃であることから本発明の共重合体に特徴的である。
【0021】
製造方法
本発明にかかる共重合体は、一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸オリゴスチレン・エステルをモノマとして一般式(4)で表される(メタ)アクリル酸メチルとともに重合させることを特徴とする。
ここで、(メタ)アクリル酸オリゴスチレン・エステルの合成には特に制限はないが以下に説明する方法により容易に得ることができる。
【0022】
本発明者の開発した熱分解方法(Journal of Polymer Science, Polym. Chem., 36, 209 (1998))により、スチレンモノマ単位の繰り返し数が2〜10程度の単分散性の片末端ビニリデン基含有オリゴスチレンが得られる。単分散性の末端ビニリデン基含有オリゴスチレンのビニリデン基を、常法により酸化することにより単分散性の末端ヒドロキシ基含有オリゴスチレンを得ることができる。
【0023】
さらにここで得られる単分散性の末端ヒドロキシ基含有オリゴスチレンと、(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸塩化物とを常法により反応させることにより一般式(3)で表わされる(メタ)アクリル酸オリゴスチレン・エステルを容易に製造することができる。
また、(メタ)アクリル酸メチルは市販品が好ましく使用できる。
【0024】
本発明の共重合体は、前記モノマを有機溶媒、好ましくはベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒中で重合させることにより、容易に製造することができる。重合方法には特に制限はなく、ラジカル重合、アニオン重合などのイオン重合、有機金属化合物による重合などの公知の重合法を採用することができる。好ましくは、ラジカル重合またはアニオン重合を採用する。
【0025】
たとえば、ラジカル開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を用いたラジカル重合の場合、室温〜80℃の温度で60分〜25時間反応させることにより、反応溶媒不溶性の重合体を高収率で得ることができる。
【0026】
【実施例】
実施例1 (メタ)アクリル酸オリゴスチレン・エステルの製造
ポリスチレンの高度制御熱分解生成物から単離精製した前記一般式中のnが2であるスチレンダイマーおよびnが3であるスチレントリマーのそれぞれをヒドロホウ素化した後、水酸化ナトリウム水溶液および過酸化水素を用いて酸化し、末端ヒドロキシ基含有スチレンダイマー(SD−OH)および末端ヒドロキシ基含有スチレントリマー(ST−OH)を調製した。
次いで、得られたSD−OHまたはST−OHのトリメチルアミン/ジクロロメタン溶液を、塩化メタクリロイルまたは塩化アクリロイルのジクロロメタン溶液中に、−5℃で滴下し、得られた反応生成物を、シリカゲル・カラムを用いクロロホルム/ヘキサン=2/1混合溶媒により精製してメタクリル酸スチレンダイマー・エステル(M−SD)、メタクリル酸スチレントリマー・エステル(M−ST)、アクリル酸スチレンダイマー・エステル(A−SD)およびアクリル酸スチレントリマー・エステル(A−ST)を調製した。
得られたM−SD、M−ST、A−SDおよびA−STは、IRスペクトル、1H−NMRスペクトルおよび13C−NMRスペクトルにより、いずれも前記一般式(2)の構造を有することが確認された。
M−SD、M−ST、A−SDおよびA−STの収率は、いずれも約70重量%であった。
【0027】
実施例2 メタクリル酸スチレンダイマー・エステル(M−SD)とメタクリル酸メチル(MMA)との共重合
表1及び表2に示すように上記調製したM−SDとMMAとを種々の仕込み比で、ラジカル開始剤のアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)および反応溶媒のベンゼンと共に重合管に仕込み、凍結、脱気、窒素置換を繰返した後封管し、反応温度を60℃の条件に設定して重合を開始させ、生成した重合体を再沈殿によるかまたは沈殿物として回収した。反応条件および得られた重合体の特性を表1、2に示した。
【0028】
実施例3 アクリル酸スチレンダイマー・エステル(A−SD)とメタクリル酸メチル(MMA)との共重合
上記調製したM−SDとMMAとを種々の仕込み比で、ラジカル開始剤のアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)および反応溶媒のベンゼンと共に重合管に仕込み、凍結、脱気、窒素置換を繰返した後封管し、反応温度を60℃の条件に設定して重合を開始させ、生成した重合体を再沈殿物として回収した。反応条件および得られた重合体の特性を他の重合体とともに表3及び表4(DSCで求めたTgとGPCで求めた数平均分子量)にまとめて示した。また、図5にはPMMA、PA−SD及びMMAとA−SDとの共重合体(仕込み組成比MMA:A−SD=8:2)の1HNMRスペクトルを示す。同様に図6には、A−SDとMMAとのラジカル共重合における共重合体の仕込み中のMMAのモル分率と、共重合体中のMMA単位のモル分率のプロット(共重合組成曲線)を示す。
【0029】
【表4】
Figure 0004787418
【0030】
【発明の効果】
本発明は、(メタ)アクリル酸オリゴスチレン・エステルと(メタ)アクリル酸メチルとの共重合体により、新規な(メタ)アクリル酸オリゴスチレン・エステルと(メタ)アクリル酸メチルとの共重合体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】仕込み組成比MMA:M−SD=7:3の本発明の共重合体の1HNMRスペクトル。
【図2】PMMAとPM−SDのブレンド物の1HNMRスペクトル。
【図3】M−SDとMMAとのラジカル共重合における共重合体の仕込み中のMMAのモル分率と、共重合体中のMMA単位のモル分率のプロット(共重合組成曲線)であり、(a)はベンゼン中、(b)はトルエン中で測定した。
【図4】MMAとM−SDとの共重合体のDSCデータ。
【図5】PMMA、PA−SD及びMMAとA−SDとの共重合体(仕込み組成比MMA:A−SD=8:2)の1HNMRスペクトル。
【図6】A−SDとMMAとのラジカル共重合における共重合体の仕込み中のMMAのモル分率と、共重合体中のMMA単位のモル分率のプロット(共重合組成曲線)。

Claims (3)

  1. 下記一般式(1)と(2)で表される繰り返し構造単位からなる数平均分子量1000〜500000の共重合体。
    Figure 0004787418
    式中、Rは水素またはメチル基を表わし、nは2〜10の整数を表わす。
    Figure 0004787418
    式中、R1は水素またはメチル基を表わす。
  2. 一般式(1)中のR、および(2)中のR1がメチル基であり、nが2または3である請求項1記載の重合体。
  3. 下記一般式(3)
    Figure 0004787418
    (式中、Rは水素またはメチル基を表わし、nは2〜10の整数を表わす)で表わされる(メタ)アクリル酸オリゴスチレン・エステルと、
    Figure 0004787418
    (式中、R1は水素またはメチル基を表わす)で表わされる(メタ)アクリル酸メチルとを、有機溶媒中においてラジカル重合させることを特徴とする請求項1記載の(メタ)アクリル酸オリゴスチレン・エステル重合体の製造方法。
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