JP4786013B2 - 多色性粉体及び多色性塗装体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は顔料及び塗装体の色調、特に見る角度によって異なった色調を呈する二色性真珠光沢顔料の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的に顔料は白色光が照射された場合、顔料が有する色調の補色に相当する光成分が吸収され、顔料の色調に相当する光成分のみが反射されるため、該顔料特定の色を認識することができる。しかしながら、このような一般的な顔料は、白色入射光に対し種々の角度を付けて観察したとしても、色の明暗は出るものの色相そのものは変化することがない。
【0003】
一方、入射光に対し種々の角度を持って観察した場合に、異なった色を観察することのできるいわゆる二色性顔料が、樹脂、塗料、インキ、建材等の特に意匠性を求められる分野などの種々の産業分野で注目されている。
【0004】
二色性顔料の基板顔料として最もポピュラーなのは白雲母や合成雲母に二酸化チタンを被覆した白色光輝性粉体である雲母チタンであるが、これまで雲母チタンを着色して二色性を付与するには、雲母チタンに酸化鉄、群青、カーミンなどの色剤を混合する方法、雲母チタン表面を還元し黒色提示酸化チタン層を設けることにより干渉色で発色させる方法、または特願平11−77998等にも紹介されているように、酸化チタン被覆雲母に湿式法にてCoAl2O4を被覆するなど雲母チタンの表面に金属複合酸化物等の有色薄膜を形成する方法等の様々な手段が採られていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記した方法で二色性を付与した顔料は、それぞれがいくつかの問題を有するものであった。まず第一の方法である雲母チタンに色剤を混合する方法では、顔料の色調が低彩度であり、光や熱等に対して安定性が低いという問題を有していた。
【0006】
また第二の方法である雲母チタン表面を還元し黒色提示酸化チタン層を設けることにより干渉色で発色させる方法では、低次酸化チタン層が光吸収性を持ち、屈折率が低いため光輝性がある程度犠牲になってしまう上、製造工程が複雑なためコストがやや高くなってしまうという問題を有していた。
【0007】
さらに第三の方法である雲母チタンの表面に金属複合酸化物等の有色薄膜を形成する方法では、やはり製造工程が複雑でコストがやや高くなってしまう上に、彩度が低く、色味がやや薄いものも存在した。
【0008】
本発明は前記従来技術の課題に鑑み為されたものであり、その目的は観察方向により大きく色相が変化し、色相のコントラストが明瞭に把握される、容易に製造することのできる二色性真珠光沢顔料、及び塗装体を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために本発明にかかる多色性粉体は、雲母表面に酸化チタンを被覆することで金色を生起する酸化チタン被覆雲母と、前記酸化チタン被覆雲母が生起する反射干渉色と略補色の関係にある色調を有するコバルトブルーとを混合したことを特徴とする。
また本発明において、前記酸化チタン被覆雲母と混合される顔料および/又は染料の配合量が2.5〜30.0wt%であることが好適である。
【0010】
また本発明にかかる多色性塗装体は、前記多色性粉体を含む組成物を基材に塗布することによって、入射光に対する観察角度によって色調が異なって観察されることを特徴とする。
また本発明にかかる多色性塗装体は、基材上に、雲母表面に酸化チタンを被覆することで反射干渉色を生起する酸化チタン被覆雲母を含む組成物を塗布し、前記酸化チタン被覆雲母含有組成物の上に前記酸化チタン被覆雲母が生起する反射干渉色と略補色の関係にある色調を有するコバルトブルーを含む透明着色組成物を塗布することによって、入射光に対する観察角度によって色調が異なって観察されることを特徴とする。
また本発明にかかる多色性塗装体は、基材上に、雲母表面に酸化チタンを被覆することで金色を生起する酸化チタン被覆雲母を、前記酸化チタン被覆雲母が生起する金色と略補色の関係にある青色を有するコバルトブルーを含む透明着色組成物と混合して得られた組成物を塗布することによって、入射光に対する観察角度によって色調が異なって観察されることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明者らは観察方向により大きく色相が変化し、色相のコントラストが明瞭に把握される、容易に製造することのできる二色性真珠光沢顔料、及び塗装体を提供するために鋭意研究を重ねた結果、特定種の顔料または染料を雲母チタンと単純混合したものであっても耐光性が高く、耐色性も優れた顔料を得ることができることを見いだした。
【0012】
さらに、基板雲母チタンに対して種々の無機系、有機系顔料および染料を添加し塗料化したときの色相変化(二色性)、彩度を観察した結果、干渉色雲母チタンが生起する反射干渉光と略補色の関係にある色調の顔料または染料をある特定の混合比で単純に混合するだけで、色相変化(二色性)が大きくかつ明度が高い粉体を簡単な工程で製造できることを見いだし、本発明を為すに至った。
【0013】
よって本発明における多色性粉体は、雲母表面に酸化チタンを被覆することで反射干渉色を生起する酸化チタン被覆雲母と、前記酸化チタン被覆雲母が生起する反射干渉色と略補色の関係にある色調を有する顔料および/又は染料とを混合したことを特徴とする。
【0014】
本発明において用いられる雲母はどのようなものでもよく、一般には市販の白雲母系雲母(muscovite mica)を用いるが、場合によっては黒雲母などを用いることも可能である。粒径は特に制限されないが、真珠光沢顔料として利用する場合には一般市販の雲母の中でも粒径が小さく粒子形状ができるだけ扁平なものが美しい色調と真珠光沢が発揮されやすいため、好ましい。よって雲母の粒径としては1μm〜150μm、さらには5μm〜60μmが好適である。
【0015】
本発明の多色性粉体の模式図を図1に示す。同図に示すように、本発明の多色性粉体10は、中心に雲母12が存在し、その外周に二酸化チタン層14が形成されている。そしてその外周に混合された顔料および/又は染料が付着し、着色層16を形成して粉体を着色している。
【0016】
この多色性粉体10に白色光18が照射されると、着色層16表面で白色光18の一部が反射され、反射光20となる。この反射光20は着色層によって呈する色調となる。
【0017】
着色層16表面で反射されなかった白色光18は、多色性粉体10内部に進行して行き、二酸化チタン層14の表面及び雲母12表面で屈折率の大きな変化により反射光を生じる。そして、二酸化チタン層14での反射光22と雲母12表面での反射光24は、二酸化チタン層14の層厚に起因する光路差によって特定の色調の反射干渉光26が生じる。
【0018】
よって反射干渉光26が観察されない角度からは、反射光20による着色層16によって着色された色調に観察され、反射干渉光26が観察される角度からは、該反射干渉光26と通常の反射光20が混合した状態の色が看取されるのである。
【0019】
そして本発明では、反射光20の色調と、反射干渉光26の色調は互いに補色近傍の色調とするため、反射干渉光26の色調は、反射光20が呈する色調と混合されたとき、観察される色を大きく変化させる。
【0020】
このため非常に大きな変色性を得ることができる上、酸化チタン被覆雲母に着色層を設ける作業は酸化チタン被覆雲母と顔料および/又は染料を好適に混合し得る周知の技術を用いれば良く、混合という単純な作業のみで変色性を与え得るため非常に簡単に製造することが可能である。
【0021】
なお本発明の多色性粉体において、酸化チタン被覆雲母が生起する反射干渉色が金色の色調であり、かつ、顔料および/又は染料が青色の色調であることが好適である。
【0022】
反射干渉光が金色のものは比較的高輝度、高彩色の反射干渉光が得られやすいため、多色性粉体の色調も高輝度、高彩色のものとすることができるためである。商業的に入手することができるこのような酸化チタン被覆雲母としては、メルクジャパン(株)社製のIriodin201TMなどが挙げられる。
さらに青色の顔料および/又は染料を使用する理由は前記反射干渉光の色調の補色に当たるものであることがあげられる。
【0023】
なお、本発明に用いることのできる顔料および/又は染料としては、特に限定はないものの、粉体の耐光性、耐色性が着色層を形成する顔料および/又は染料によって左右されるため、耐光性、耐色性に優れた顔料を選択することが望ましい。
【0024】
本発明の多色性粉体を顔料として使用するときには、塗料組成物に本発明の多色性粉体を適量配合することによって用いることができる。塗料組成物への多色性粉体の配合量は、その組成物を用いる対象にもよるので特に限定されないが、組成物全量に対して通常5〜35重量%が好適である。多色性粉体の配合量が少ないと、隠蔽力が低下し、配合量が過剰になると組成物中で多色性粉体の分散が不均一になったり、組成物塗装体の外観がまだらになったり、組成物の粘度が上昇して作業性や印刷適正等に好ましくない影響を及ぼすことがある。
【0025】
塗料組成物としては特に限定されないが、バインダー樹脂、溶剤等が配合されたものが挙げられる。バインダー樹脂とは、多色性粉体を基材上に安定に密着させうる樹脂であり、塗料組成物を基材上に塗装後は該組成物中の溶剤が揮散して多色性粉体を包埋した状態で基材上に被膜を形成するものである。バインダー樹脂は基材との相性や、形成被膜強度、膜厚等によって選択されるので特に限定されないが、通常塗料や印刷インキのバインダーとして用いられているものを使用することができる。例えば、ギルソナイト、マレイン酸樹脂、環化ゴム、硬化ロジン、石油樹脂、ニトロセルロース、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、アマニ油、変性フェノール樹脂、フマル酸樹脂、エポキシエステル樹脂、エポキシアミノ樹脂、エポキシフェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、鉱油ワニス、ケトン樹脂、塩化ゴム、エチルセルロース、尿素樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。
【0026】
また、本発明に係る多色性粉体と共に配合される溶剤としては、一般に塗料やインキに用いられる溶剤を用いることが可能であり、通常バインダー樹脂を良好に溶解して作業性を向上させ、且つこの樹脂溶液中に多色性粉体が良好に分散配合できるものであれば特に限定されない。例えば、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等が挙げられる。
溶剤としては揮発性の有機溶剤が多く用いられるが、場合によっては水等を配合しても良い。
【0027】
本発明の多色性粉体を配合した塗料組成物を用いる際には、本発明の効果を損なわない範囲であれば組成物の特性を調節するために前記成分の他に通常の塗料やインキに配合されている各種添加剤を配合してもよい。例えば、可塑剤、ワックス、湿潤剤、安定剤、染顔料、静電防止剤、消泡剤、酸化防止剤、レベリング剤、重合禁止剤、フィラー剤等が挙げられる。
【0028】
前述のような本発明の多色性粉体が配合された塗料組成物によって塗装される基材としては、紙、板紙、布、皮革、金属、プラスティック等、特に限定されず、その形状も様々なものが適用可能である。もちろん、予め塗装、印刷、コーティング処理された基材でもよい。
【0029】
本発明において、有色の高い光輝感と、優れた色調を得るためには塗料組成物中の多色性粉体とバインダー樹脂の重量比は1:20〜3.5:10であることが好適である。このような塗料組成物を基材上に塗装すると、乾燥により組成物中の溶剤が揮散し、基材上にバインダー樹脂被膜が形成され、多色性粉体はこの被膜中に保持されて、塗膜が形成される。従って、基材上の塗膜中、多色性粉体とバインダー樹脂の重量比は1:20〜3.5:10の範囲に存する。このような組成比を有する塗膜は基材に有色の外観色及び高い光輝感を与え、且つ良好な色調を発現する。
【0030】
また本発明の多色性粉体を配合した塗料組成物を塗布しようとする基材の色調は、無彩色の白〜黒のグレースケール範囲内にあるもの、または黄緑〜藍色の青色系にあるものが本発明の多色性粉体の多変色性を十分発揮する上で好適である。また本発明の多色性粉体を配合した塗料組成物を塗布厚5μm以上で塗布することが本発明の多色性粉体の多変色性を十分発揮する上で好適である。
【0031】
なお、本発明における塗装方法は、本発明の多色性粉体を配合した組成物を基材上の一部又は全部の表面に塗布する方法であり、一般的な印刷方法も含む概念である。本発明の塗装方法としては、従来から行われている塗装方法、印刷方法、コーティング技術を利用することができ、例えば印刷方法としては凸板印刷、凹板印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、インキジェット印刷、静電印刷等が利用できる。また、はけ塗り、スプレー塗り、転がし塗り、ステンシル塗り、静電塗り、流し塗り、浸し塗り、ローラー塗り、吹き付け塗り等の塗装方法も用いることができる。
【0032】
なお本発明の多色性塗装体は、基材上に、雲母表面に酸化チタンを被覆することで反射干渉色を生起する酸化チタン被覆雲母を含む組成物を塗布し、前記酸化チタン被覆雲母含有組成物の上に前記酸化チタン被覆雲母が生起する反射干渉色と略補色の関係にある色調を有する顔料および/又は染料を含む透明着色組成物を塗布したもの、あるいは、基材上に、雲母表面に酸化チタンを被覆することで反射干渉色を生起する酸化チタン被覆雲母を、前記酸化チタン被覆雲母が生起する反射干渉色と略補色の関係にある色調を有する顔料および/又は染料を含む透明着色組成物と混合して得られた組成物を塗布したものであっても、入射光に対する観察角度によって色調が異なって観察されることが確かめられた。
【0033】
【実施例】
続いて本発明の多色性粉体が示す特性について調べてみた。
実験1
まず金色干渉色を生起する酸化チタン被覆雲母に対して、下記表1に示すように無機系顔料の添加量を1.0、2.5、5.0、10.0、25.0、50.0wt%と変えて、また有機系顔料、有機系染料の添加量を0.50、1.0、3.0、10.0wt%と変えて小型粉末粉砕装置を用いてよく混合し、各混合粉末1gを15gのニトロセルロースラッカーNo.6341TM(武蔵塗料(株)社製)に入れ、ディスパーで攪拌・分散させ、その塗料を白黒隠蔽力試験紙にドクターブレード(クリアランス:101μm)で塗布して、塗装体を作成した。
【0034】
前記塗装体に白色光を照射し、前記白色入射光に対する観察角度を変えて目視で色の変化を観察し、色相の変化の大きさと彩度の高さの判定及び前記色相の変化が一番大きく、彩度の高さが良好に観察できる顔料または染料の添加量を判定した。
【0035】
下記表1に示す4種の無機系顔料とも目視で最も金−青の二色性が大きく、かつ彩度も高く観察されたのは10.0wt%の添加量のときであった。また、1種の有機系顔料、2種の有機系染料において目視で最も金−青の二色性が大きく、かつ彩度も高く観察されたのは1.0wt%の添加量のときであった。
【0036】
さらに無機系顔料では10.0wt%、有機系顔料、有機系染料では1.0wt%の添加量の塗装体を観察して色相の変化の大きさと彩度の高さの判定を行ったところ、表1に記載したような結果が得られた。なお二色性、及び彩度の判定では、大変良い◎、良い○、普通△、悪い×、で評価している。
【0037】
【表1】
【0038】
表1に示すように二色性及び彩度ともに良好な結果が得られた顔料または染料はコバルトブルーとフタロシアニンブルーを添加した多色性粉体を用いた塗装体であった。
【0039】
実験2
次に本発明の多色性粉体の耐光性について試験した。
金色干渉色を生起する酸化チタン被覆雲母に対して、無機系顔料の添加量を10.0wt%、有機系顔料、有機系染料の添加量を1.0wt%として、それぞれ添加し、小型粉末粉砕装置を用いてよく混合して、本発明の多色性粉末を得た。この各多色性粉体を石英ガラス製セルに入れ、キセノンランプを30時間照射し(照度285W/m2、積算照射量:約30MJ/m2)、照射前後で分光測色機(ミノルタカメラ(株)社製、CM−1000TM)で測色し、照射による色差を測定した。
【0040】
また上記と同様の方法で調製した本発明の多色性粉体1gを15gのニトロセルロースラッカーNo.6341TM(武蔵塗料(株)社製)に入れ、ディスパーで攪拌・分散させ、その塗料を白黒隠蔽力試験紙にドクターブレード(クリアランス:101μm)で塗布して、塗装体を作成した。このようにして得られた塗装体にもキセノンランプを30時間照射し(照度285W/m2、積算照射量:約30MJ/m2)、照射前後で分光測色機(ミノルタカメラ(株)社製、CM−1000TM)で測色し、照射による色差を測定した。
【0041】
なお比較例として雲母チタン表面にアルミン酸コバルトを湿式法にて被覆処理した粉体及びそれを用いた塗装体を使用した。
この各多色性粉体、及び塗装体の色差を測定した結果を表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
表2において、白色紙上に塗布されたときの塗装体は混合された多色性粉体の外観色が、黒色紙上に塗布されたときの塗装体は混合された多色性粉体の反射干渉色が生起している状態での粉体色が観察されていると見ることができる。
【0044】
表2に示すように、有機系の顔料、染料を添加した多色性粉体、及び多色性塗装体はランプ照射前後での色差が大きい傾向が見られたが、コバルトブルーが添加された多色性粉体は比較例である雲母チタン表面にアルミン酸コバルトを被覆処理した粉体とほぼ同等の高い耐光性を示した。
よって実験1、及び実験2の結果から酸化チタン被覆雲母に混合する青色顔料としてはコバルトブルーが非常に優れたものであることがわかった。
【0045】
続いて本発明者らはコバルトブルーの添加量と多色性粉体の色調との関係について詳細に検討した。
金色干渉色を生起する酸化チタン被覆雲母に対して、添加するコバルトブルーの量を1.0、2.5、5.0、10.0、20.0、30.0、40.0、50.0wt%と変化させて、小型粉末粉砕装置を用いてよく混合し、コバルトブルーの添加量が異なるそれぞれの多色性粉体を得た。得られた各混合粉体1gを15gのニトロセルロースラッカーNo.6341TM(武蔵塗料(株)社製)に入れ、ディスパーで攪拌・分散させ、その塗料を白黒隠蔽力試験紙にドクターブレード(クリアランス:101μm)で塗布して、塗装体を作成した。
前記塗装体に白色光を照射し、前記白色入射光に対する観察角度を変えて目視で色の変化を観察し、色相の変化の大きさと彩度の高さを判定した。
【0046】
目視で観察したところ、添加量が1.0wt%では青色が薄いため二色性が十分に発揮されず色味も薄いものであったが、2.5wt%以上では高い青−金の二色性が観察された。しかし40wt%まで増量すると、青色が濃すぎて真珠光沢顔料独特の光輝性が失われてしまった。
【0047】
このときの下地色が白色の塗装体を変角分光測色システム((株)村上色彩技術研究所社製、GCMS−3型GSP−1TM)で測色した。なお測定方法の説明図を図2に示す。同図に示すように、本測定では被検物である塗装体30の垂直軸32に対し−45°の方向から白色光光源34によって白色光36を照射し、受光器38によって−25゜〜65゜まで5゜間隔で反射光を受光し、その光を測色して測色値をハンターのLab値に換算し、変色度を調べた。
【0048】
得られた結果を次の表3、4、5にそれぞれ示す。またこの結果を受光角と色相変化の関係のグラフ化したものを図3に、受光角と明度の関係をグラフ化したものを図4に示す。
また表6に観察角度−25゜と+35゜のときの観察色の色調の差を色差(ΔLab)、色相差(Δab)、明度差(ΔL)により示す。
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】
【0051】
【表5】
【0052】
【表6】
【0053】
表3、4、5、6及び図3、4よりコバルトブルーの添加量は2.5〜30.0wt%であるとき入射光に対する観察角度の変化による色相のコントラストが大きいことがわかった。特に塗装体に対して10.0〜20.0wt%のときは色相差、明度差が共に大きいため、色調のコントラスト差が大きく、よりいっそう美しい二色性が観察されることが示された。
よって本発明の多色性粉体では、酸化チタン被覆雲母に配合する無機系顔料の配合量は2.5〜30.0wt%、特に10.0〜20.0wt%であることが好適である。
【0054】
以下、さらに本発明の多色性粉体を用いた塗料の配合例を挙げるが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、特に限定のない限り、配合量は重量%で表す。
【0055】
配合例1 グラビアインキ
本発明の多色性粉体 30.0%
エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂 7.5
塩素化ポリプロピレン 5.5
トルエン 28.0
酢酸エチル 8.5
メチルエチルケトン 17.0
イソプロピルアルコール 2.5
ポリエチレンワックス 0.8
静電防止剤 0.2
【0056】
配合例2 グラビアインキ
本発明の多色性粉体 15.0%
ポリアミド樹脂 15.0
ロジンエステル 4.0
ニトロセルロース 3.0
イソプロピルアルコール 46.0
酢酸エチル 5.0
トルエン 10.0
ポリエチレンワックス 2.0
【0057】
配合例3 グラビアインキ
本発明の多色性粉体 20.0%
硬化ロジン 15.0
石油系樹脂 10.0
トルエン 55.0
【0058】
配合例4 グラビアインキ
本発明の多色性粉体 30.0%
ニトロセルロース 10.0
ブチルセルソルブ 10.0
ナフサ 25.0
シクロヘキサン 25.0
【0059】
配合例5 グラビアインキ
本発明の多色性粉体 14.0%
エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂 7.2
塩素化ポリプロピレン 5.8
トルエン 58.0
酢酸エチル 11.0
イソプロピルアルコール 3.0
ポリエチレンワックス 0.8
静電防止剤 0.2
【0060】
配合例6 スクリーンインキ
本発明の多色性粉体 15.0%
アクリル樹脂 20.0
ナフサ 35.0
ブチルセルソルブ 30.0
【0061】
配合例7 スクリーンインキ
本発明の多色性粉体 15.0%
ニトロセルロース 15.0
シクロヘキサノン 40.0
イソホロン 10.0
ナフサ 10.0
ジブチルフタレート 10.0
【0062】
配合例8 スクリーンインキ
本発明の多色性粉体 20.0%
ニトロセルロース 20.0
シクロヘキサノン 45.0
イソホロン 10.0
ジオクチルフタレート 5.0
【0063】
なお、塗装体の多変色性を得る場合には、基材上に、雲母表面に酸化チタンを被覆することで反射干渉色を生起する酸化チタン被覆雲母を含む組成物を塗布し、その酸化チタン含有組成物の上に前記酸化チタン被覆雲母が生起する反射干渉色と略補色の関係にある色調を有する顔料および/又は染料を含む透明着色組成物を塗布した塗装体、または基材上に、雲母表面に酸化チタンを被覆することで反射干渉色を生起する酸化チタン被覆雲母を、前記酸化チタン被覆雲母が生起する反射干渉色と略補色の関係にある色調を有する顔料および/又は染料を含む透明着色組成物と混合して得られた組成物を塗布した塗装体であっても、入射光に対する観察角度によって色調が異なって観察されるものとなる。ただしその際には透明着色組成物によって酸化チタン被覆雲母の反射干渉色が観察されることが阻害されず、かつ、透明着色組成物の着色状態が濃すぎず、薄すぎない状態に調製する必要がある。
【0064】
【発明の効果】
以上説明したように本発明にかかる多色性粉体によれば、製造が簡易であり、観察する角度により異なる色調を看取することが可能となる。
また、本発明にかかる多色性塗装体は、基材に色調の多変色性を付与することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の多変色性粉体の模式図である。
【図2】図2は、本発明の多変色性粉体の変色度を測定する方法の説明図である。
【図3】図3は、表13、表14、表15の結果から受光角と色相変化の関係をグラフ化した図である。
【図4】図4は、表13、表14、表15の結果から受光角と明度の関係をグラフ化した図である。
【符号の説明】
10 多色性粉体
12 雲母
14 二酸化チタン層
16 着色層
18 白色光
20 着色層16表面での反射光
22 二酸化チタン層14での反射光
24 雲母12表面での反射光
26 反射干渉光
30 塗装体
32 被検物に対する垂直軸
34 白色光光源
36 白色光
38 受光器
Claims (5)
- 雲母表面に酸化チタンを被覆することで金色を生起する酸化チタン被覆雲母と、前記酸化チタン被覆雲母が生起する金色と略補色の関係にある青色を有するコバルトブルーと、を混合したことを特徴とする多色性粉体。
- 請求項1に記載の多色性粉体において、前記酸化チタン被覆雲母と混合されるコバルトブルーの配合量が2.5〜30.0wt%であることを特徴とする多色性粉体。
- 請求項1または2のいずれかに記載の多色性粉体を含む組成物を基材に塗布することによって、入射光に対する観察角度によって色調が異なって観察されることを特徴とする多色性塗装体。
- 基材上に、
雲母表面に酸化チタンを被覆することで金色を生起する酸化チタン被覆雲母を含む組成物を塗布し、前記酸化チタン被覆雲母含有組成物の上に前記酸化チタン被覆雲母が生起する金色と略補色の関係にある青色を有するコバルトブルーを含む透明着色組成物を塗布することによって、入射光に対する観察角度によって色調が異なって観察されることを特徴とする多色性塗装体。 - 基材上に、
雲母表面に酸化チタンを被覆することで金色を生起する酸化チタン被覆雲母を、前記酸化チタン被覆雲母が生起する金色と略補色の関係にある青色を有するコバルトブルーを含む透明着色組成物と混合して得られた組成物を塗布することによって、入射光に対する観察角度によって色調が異なって観察されることを特徴とする多色性塗装体。
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