JP4548631B2 - 光輝性油絵具類組成物 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、油絵具等に適用できる光輝性油絵具類組成物に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来、強い光揮感及び立体感のある塗膜が得られる光輝性油絵具類組成物はなかった。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来にない強い光輝感及び強い立体感を併せ持つ塗膜を得ることができる光輝性油絵具類組成物を提供するところにある。
【０００４】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため鋭意検討した結果、本発明は、必須成分として、ガラスフレーク顔料を含有する光輝性油絵具類組成物を採用した。中でも、本発明は、必須成分として、ガラスフレーク顔料、体質顔料及び乾性油を含んでなる光輝性油絵具類組成物を採用した。
【０００５】
また、本発明は、必須成分として、金属被覆無機顔料、体質顔料及び乾性油を含んでなる光輝性油絵具類組成物を採用した。
【０００６】
なお、本発明でいう「金属被覆無機顔料」とは、金属及び金属酸化物のうち少なくともいずれか１つの物質が被覆された無機顔料を総称するものとして定義される。
【０００７】
従って、上記のガラスフレーク顔料を含有した光輝性油絵具類組成物は、ガラスが持つ高い表面平滑性により、従来の油絵具類組成物と比較して、強い光輝感と立体感を有する塗膜を得ることができる。
【０００８】
また、上記の金属被覆無機顔料を含有した光輝性油絵具類組成物も、無機顔料が金属蒸着等で着色されているため、従来の油絵具類組成物と比較して、強い光輝感を持つ筆跡乃至塗膜を得ることができる。
【０００９】
【発明の実施の形態】
（ガラスフレーク顔料）
本発明で用いられるガラスフレーク顔料は、フレーク状ガラスが金属などで被覆された構造からなり、光輝感と立体感を有する顔料として定義される。一例を挙げれば、フレーク状ガラスが無電解メッキ法により金属で被覆されたガラスフレーク顔料を使用することができる。例えば、銀で被覆された東洋アルミニウム社製の商品名「メタシャインＲＥＦＳＸ−２０１５ＰＳ」、「メタシャインＲＥＦＳＸ−２０２５ＰＳ」、及び「メタシャインＲＥＦＳＸ−２０４０ＰＳ」、日本板硝子社製の商品名「メタシャインＲＣＦＳＸ−５４８０ＰＳ」、「メタシャインＲＣＦＳＸ−５２３０ＰＳ」「メタシャインＲＣＦＳＸ−５１５０ＰＳ」、「メタシャインＲＣＦＳＸ−５０９０ＰＳ」を例示することができる。
【００１０】
また、フレ−ク状ガラスがスパッタリング法により金属で被覆されたガラスフレーク顔料も使用することができる。例えば、銀で被覆された東洋アルミニウム社製の商品名「クリスタルカラ−ＧＦ２１２５」、「クリスタルカラーＧＦ２１２５−Ｍ」、「クリスタルカラーＧＦ２１４０」、「クリスタルカラーＧＦ２１４０−Ｍ」がある。また、ニッケル・クロム・モリブデンで被覆された同社製の商品名「クリスタルカラーＧＦ２５２５」、「クリスタルカラーＧＦ２５２５−Ｍ」、「クリスタルカラーＧＦ２５４０」、「クリスタルカラーＧＦ２５４０−Ｍ」がある。また、真鍮で被覆された同社製の商品名「クリスタルカラーＧＦ２５０」、銀合金で被覆された同社製の商品名「クリスタルカラーＧＦ１３４５」、チタンで被覆された同社製の商品名「クリスタルカラーＧＦ１４４５」がある。
【００１１】
本発明では、ガラスフレーク顔料のメジアン径は５００μｍ以下（好ましくは５〜１００μｍ）が好適である。ガラスフレーク顔料のメジアン径が、５μｍ未満の場合は上記の無機顔料粒子が小さすぎるため光輝性が劣り、５００μｍを超えると描画性が低下する。
【００１２】
本発明におけるガラスフレーク顔料は、油絵具類組成全量に対して５〜７０量％、好適には１０〜５０量％含まれていることが好ましい。ガラスフレーク顔料が油絵具類組成全量に対して５重量％未満の場合は光輝性及び立体感が充分でない。また、ガラスフレーク顔料が油絵具類全量に対して７０重量％を超えると、油絵具としての粘りが低下する。なお、ガラスフレーク顔料は１種又は２種以上を混合して用いることができる。また、ガラスフレーク顔料を、金属被覆無機顔料、アルミニウム顔料、パ−ル顔料などの光輝性顔料と混合して用いることもできる。
【００１３】
（金属被覆無機顔料）
本発明で用いる金属被覆無機顔料とは、例えば金属蒸着等で金属及び又は金属酸化物が被覆された無機顔料として構成されている。一例を挙げれば、酸化鉄(III)が被覆されたアルミニウムを用いることができる。例えばＢＡＳＦ株式会社製の商品名「Paliocrom Gold L2000」、「Paliocrom Gold L2002」、「Paliocrom Gold L2020」、「Paliocrom Gold L2022」、「Paliocrom Gold L2025」「Paliocrom Orange L2800」がある。また、酸化鉄(III)が被覆された雲母を用いることができる。例えばＢＡＳＦ株式会社製の商品名「Paliocrom Red Gold L2500」、「Paliocrom Red L4000」がある。また、アルミニウム−マンガン被覆の雲母状酸化鉄(III) を用いることができる。例えばＢＡＳＦ株式会社製の商品名「Paliocrom Copper L3000」及び「Paliocrom Copper L3001」がある。また、還元二酸化チタンが被覆された雲母を用いることができる。例えばＢＡＳＦ株式会社製の商品名「Paliocrom Blue Silver L6000」、「Paliocrom Blue Silver L6001」がある。また、二酸化チタンが被覆された雲母も用いることができる。
【００１４】
上記の金属被覆無機顔料のメジアン径も、ガラスフレーク顔料のメジアン径と同様に、５００μｍ以下、特に５〜１００μｍが好適である。金属被覆無機顔料のメジアン径が５μｍ未満の場合は、上記の無機顔料粒子が小さすぎるため光輝性が劣り、また５００μｍを超えると、描画性が低下する。
【００１５】
金属被覆無機顔料の配合量も、ガラスフレーク顔料と同様に油絵具類全量に対して５〜７０重量％含まれていることが好ましい。上記の無機顔料が油絵具類全量に対して５重量％未満の場合は光輝性及び立体感が充分でない。また、上記の無機顔料が油絵具類全量に対して７０重量％を超えると、油絵具としての粘りが低下する。なお、金属被覆無機顔料は１種又は２種以上を混合して用いることができる。また、金属被覆無機顔料を、ガラスフレーク顔料、アルミニウム顔料、パ−ル顔料などの光輝性顔料と混合して用いることもできる。最適含有量は１０〜５０重量％である。
【００１６】
（体質顔料）
体質顔料としては、油絵具類組成物に含まれるものとして、公知の体質顔料を用いることができる。体質顔料としては、透明なもの、油と屈折率の近いもの、特にバインダー中で透明なものを好適に用いることができる。また、潤滑性（滑り）が優れているものが好ましい。具体的には、体質顔料としては、例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、クレー、カオリン、シリカ、アルミナシリケート、ベントナイト等を例示することができる。そしてこれらの中から適宜選択して単独で又は組み合わせて使用できる。これらの中でも、シリカ、アルミナシリケートが最適である。
【００１７】
体質顔料の含有量は、油絵具類組成物全量に対して１５〜５０重量％、好ましくは２０〜４０重量％である。体質顔料の配合量が油絵具類組成物全量に対して１５重量％より少ないと、ペースト状になりにくく、一方、体質顔料の配合量が油絵具類組成物全量に対して５０重量％より多いと、光輝感、立体感が低下する。
【００１８】
（着色剤）
着色剤としては、着色効果を有する顔料が好ましい。具体的には、カーボンブラック、酸化チタンなどの無機顔料、銅フタロシアニン系顔料、スレン系顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アンスラキノン系顔料、ジオキサン系顔料、インジゴ系顔料、チオインジゴ系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、インドレノン系顔料、アゾメチン系顔料などの有機顔料のほか、蛍光顔料、着色樹脂エマルジョンなどが挙げられる。また、本発明で顔料は１種又は２種以上を混合して使用することができる。また、本発明のガラスフレーク顔料等と、アルミニウム粉顔料、パール顔料等の光輝性顔料と混合して用いることができる。また、金属被覆無機顔料をガラスフレーク顔料とともに用いることもできる。
【００１９】
本発明の油絵具類組成物では、着色剤は必ずしも含まれていなくても差し支えない。着色剤は含まれていないがガラスフレーク顔料が含まれている油絵具類組成物でも、強い光輝感と強い立体感を筆跡又は塗膜に与えることができる。また、着色剤は含まれていないが金属被覆無機顔料が含まれている油絵具類組成物でも、強い光輝感を描画塗膜に与えることができる。しかし、着色剤が含まれている上記各油絵具類組成物では、着色剤の色相等によってその色相等に応じた強い輝きを塗膜に与えることができる点できわめて好ましい。
【００２０】
なお、着色剤は、油絵具類組成物全量中１０重量％以下、好ましくは７重量％以下含まれていることが好ましい。上記着色剤が油絵具類組成物全量中１０重量％を超える場合は、光輝感及び立体感が低下する。
【００２１】
（乾性油）
乾性油は、分散機で練り、ペースト状にし、油が乾燥するものが望ましい。具体的には公知の植物性乾性油、合成乾性油などを用いることができる。好ましい含有量は油絵具類組成物全量に対して２０〜８０重量％、好ましくは４０〜７０重量％である。その含有量が油絵具類組成物全量に対して２０重量％より少ないとペースト状になり難い。一方、その含有量が油絵具類組成物全量に対して８０重量％より多いと、柔らかくなって液状になり易く、盛り上げて描画し難い。
【００２２】
（その他の添加物）
なお、本発明においてはその他必要に応じて、防腐剤、ワックス、油溶性樹脂、乾燥促進剤などの各種の公知の添加剤を含有することができる。
【００２３】
【実施例】
表１に示す組成及び配合量（重量部）で、原料を秤量し、デスパー等で約３０分均一に混合する。その後、ロールミルで顔料を分散する。次ぎに、ガラスフレーク顔料を混合し、デスパー等で十分に攪拌しながら真空脱泡して、各実施例及び比較例を調整した。
【００２４】
【表１】

【００２５】
（ガラスフレーク顔料）
I：商品名「メタシャインＲＥＦＳＸ−２０４０ＰＳ」、東洋アルミニウム株式会社製、メジアン径約４０μｍ
II：商品名「メタシャインＲＥＦＳＸ−２０２５ＰＳ」、東洋アルミニウム株式会社製、メジアン径約２５μｍ
(植物性乾性油)
I：商品名「サフラワオイル」、日清製油株式会社製
(乾燥促進剤)
I：商品名「２０％ナフテン酸鉛」、大日本インキ化学工業株式会社製
II：商品名「１２％ナフテン酸ジルコニウム」、大日本インキ化学工業株式会社製
(金属石鹸)
I：商品名「ステアリン酸マグネシウム」、スイショウ油化工業株式会社製
(体質顔料)
I：商品名「ファインシールＢ」、Ｃ．Ｉ．Ｎｏ．７７８１１
徳山曹達工業株式会社製
(顔料)
I：商品名「カーボンブラックＮｏ．３０」、Ｃ．Ｉ．Ｎｏ．７７２６６
三菱化学工業株式会社製
II：商品名「群青ＡＰ−２０１」、Ｃ．Ｉ．Ｎｏ．７７００７
第一化成工業株式会社製
(光輝性顔料)
I：商品名「イリオジン１００シルバー」、Ｃ．Ｉ．酸化チタン被覆雲母
メルク・ジャパン株式会社製
【００２６】
（評価試験）
次に、これらの実施例及び比較例に係る絵具組成物を用いて、下記の試験を行った。これらの評価結果は表１に示した。
（光輝感及び立体感）
これらの実施例及び比較例に係る絵具組成物を用いて市販の用紙に筆記し、各実施例等の光輝感及び立体感についてそれぞれ評価した。光輝感は筆記状態を目視観察により行い、光輝感の強いものを○、光輝感が小さい又は光輝感がないものを×として評価した。また立体感についても筆記状態を目視観察により行い、立体感があるものを○、立体感がないものを×として評価した。表１にそれらの結果を示す。
【００２７】
（定着性試験）
実施例及び比較例に係る絵具組成物を用いて、画用紙に０．２ｍｍフィルムアプリケーターで一定の厚みに絵具を塗布し、１日乾燥後、塗面上に上質紙を置き、その上に転写用の重り（直径３０ｍｍ、重さ１５０ｍｍ）を置いて、１５ｃｍ／ｓｅｃの速さで水平方向に、水平方向に重りをのせたまま引き、上質紙への色の移り具合を調べ、以下の基準により、定着性を評価する。
○：転写がまったくない。
△：輪になっていて、転写している色がわかる。
×：完全に汚れ、転写している。
【００２８】
表より、本実施例の光輝性油絵具類組成物、特にガラスフレーク顔料が含まれている光輝性油絵具類組成物は、比較例の油絵具組成物と比較して、宝石をイメージする強い光輝感と立体感を持ち、かつ定着性の有る従来にない独特の塗膜を得ることができる。
【００２９】
【発明の効果】
本発明は、必須成分として、ガラスフレーク顔料及び又は金属被覆無機顔料を含んでなる光輝性油絵具類組成物であるので、従来の油絵具類組成物と比較して、強い光輝感と立体感を持つ従来にない独特の塗膜を得ることができる。特に、ガラスフレーク顔料とともに着色剤が含まれた上記の光輝性油絵具類組成物の場合、その着色剤の色相等に応じた強い輝きを塗膜に与えることができる。

Claims (3)

1. 必須成分として、ガラスフレーク顔料、着色剤、体質顔料及び乾性油を含んでなり、
   前記ガラスフレーク顔料は、表面平滑なフレーク状ガラスが銀、銀合金、真鍮、チタン又はニッケル・クロム・モリブデンで被覆されたガラスフレーク顔料からなり、
   前記ガラスフレーク顔料は、５〜５００μmのメジアン径を有し、
   前記ガラスフレーク顔料が、油絵具類組成物全量中５〜７０重量％含まれており、
   さらに着色剤が、着色する顔料からなり、油絵具類組成物全量中１０重量％以下、含まれている
   光輝性油絵具類組成物。
2. 体質顔料が、油絵具類組成物全量中１５〜５０重量％含まれている請求項１記載の光輝性油絵具類組成物。
3. 乾性油が、油絵具類組成物全量中２０〜８０重量％含まれている請求項１又は２記載の光輝性油絵具類組成物。