JP4784163B2 - 印刷システム、及び、印刷方法 - Google Patents

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Description

本発明は、インクを吐出させるための動作を行わせるための波形部を、ヘッドが有する素子に印加して印刷を行う印刷装置、及び、印刷方法に関する。
ヘッドからインクを吐出させて印刷を行う、所謂インクジェット方式の印刷装置としては、例えば、プリンタ、プロッタ、ファクシミリがある。この種の印刷装置には、ヘッドが有する素子の動作を駆動信号によって制御し、階調毎に量を異ならせてインクを吐出させるものがある(例えば、特許文献1を参照。)。この装置では、ドットの非形成、小ドット、中ドット、及び、大ドットからなる4階調で制御を行う。このため、4種類の駆動信号を生成し、素子に印加している。
特開平10−193587号公報
前述した印刷装置には、インクの色や色材の種類(染料,顔料)が異なる複数種類のインクを吐出するものがある。この印刷装置では、インクの種類に拘わらず、素子に印加される駆動信号の種類は同じであった。
このような制御をした場合、粒状性が損なわれてしまうという問題があった。これは、同じ量のインクで形成されたドットであっても、視認される大きさがインクの種類によって異なるためと考えられる。例えば、同色の淡インクと濃インクとを吐出して印刷をする印刷装置では、淡インクの方は濃インクよりも大きく視認される傾向にある。そして、この傾向は、ある程度の高い階調で顕在化する。このため、淡インクと濃インクのインク量を揃えてしまうと、淡インクにおいて、例えば、中ドットと大ドットの大きさの差が過度に大きくなり、粒状性が損なわれてしまう。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、粒状性の向上を図ることにある。
前記目的を達成するための主たる発明は、
多段階の入力階調値をそれぞれ有する複数色の画素データから、前記多段階よりも少ない段階の印刷表現可能な少段階の階調値のデータであって、前記複数色に対応する複数色のインクについて形成するドットの大きさを示す前記階調値のデータを前記複数色のそれぞれについて生成する階調値生成手段と、前記階調値に対応した駆動信号を生成する駆動信号生成手段と、前記駆動信号が印加され前記駆動信号に対応する量のインクを吐出する素子を備えたヘッドと、を備えた印刷システムにおいて、
前記複数色のインクのうち少なくとも一色については、濃インクと淡インクによる同色インクにより構成し
記同色の濃インクと淡インクについては、前記駆動信号生成手段は、前記生成された前記階調値のうち特定の階調値について当該特定の階調値に対する駆動信号を前記濃インクに対する駆動信号と前記淡インクに対する駆動信号とを異ならせ前記淡インクの吐出量が前記濃インクの吐出量より少なくなるように構成したことを特徴とする印刷システムである。
本発明の他の特徴は、本明細書、及び添付図面の記載により、明らかにする。
===開示の概要===
本明細書の記載、及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかにされる。
すなわち、インクを吐出するための動作を行う素子を有し、複数種類のインクを、指定された階調値毎に量を異ならせて吐出するヘッドと、前記素子を動作させるための波形部を有する駆動信号を生成する駆動信号生成部であって、前記波形部がインクの種類によって異なる複数種類の前記駆動信号を、特定の階調値に対して生成する、駆動信号生成部と、を有する印刷装置が実現できること。
このような印刷装置によれば、特定の階調値が指定されると、駆動信号生成部は、インクの種類に適した波形部を有する駆動信号を生成する。このため、特定の階調値におけるドットを所望の大きさにすることができ、ひいては粒状性の向上が図れる。
かかる印刷装置において、前記駆動信号生成部は、前記波形部を複数有する原駆動信号を生成する原駆動信号生成部と、前記原駆動信号生成部と前記素子との間に配置され、前記原駆動信号から前記素子に印加される駆動信号を生成するためのスイッチと、前記指定された階調値及び前記インクの種類に基づいて、前記スイッチの動作を制御するスイッチコントローラと、を有する構成が好ましい。
このような印刷装置によれば、スイッチの制御によって、共通の原駆動信号から複数種類の駆動信号を容易に生成することができる。
かかる印刷装置において、前記駆動信号生成部は、前記スイッチの動作を定めるためのスイッチ動作情報を前記インクの種類毎及び前記階調値毎に記憶したスイッチ動作情報記憶部を、さらに有し、前記スイッチコントローラは、前記指定された階調値及び前記インクの種類に基づいて、対応するスイッチ動作情報を選択し、選択したスイッチ動作情報を用いて前記スイッチの動作を制御する構成が好ましい。
このような印刷装置によれば、インクの種類毎及び階調値毎のスイッチ動作情報をスイッチ動作情報記憶部に記憶させているので、印刷動作の高速化が図れる。また、使用されるインクの種類が相違した場合にも、容易に対応できる。
かかる印刷装置において、前記駆動信号生成部は、所定サイズよりも大きいドットに対応する階調値を、前記特定の階調値とする構成が好ましい。
このような印刷装置によれば、ドットが大きくなるほど顕在化し易い粒状性の悪化を効果的に抑制することができる。
かかる印刷装置において、前記駆動信号生成部は、最大サイズのドットに対応する階調値を、前記特定の階調値とする構成が好ましい。
このような印刷装置によれば、最大サイズのドットで特に顕在化する粒状性の悪化を効果的に抑制することができる。
かかる印刷装置において、前記ヘッドは、前記複数種類のインクとして、同色の淡インクと濃インクとを吐出するものであり、前記駆動信号生成部は、前記淡インクの吐出量が前記濃インクの吐出量よりも少なくなるように前記波形部を異ならせた複数種類の前記駆動信号を、前記特定の階調値に対して生成する構成が好ましい。
このような印刷装置によれば、淡インクと濃インクで印刷される画像について粒状性の向上が図れる。
かかる印刷装置において、前記ヘッドは、前記複数種類のインクとして、色材の濃度に対する明度が異なるインクを吐出するものであり、前記駆動信号生成部は、明度の高いインクの吐出量が明度の低いインクの吐出量よりも少なくなるように前記波形部を異ならせた複数種類の前記駆動信号を、前記特定の階調値に対して生成する構成が好ましい。
このような印刷装置によれば、明度の高いインクと明度の低いインクで印刷される画像について粒状性の向上が図れる。
かかる印刷装置において、前記ヘッドは、前記複数種類のインクとして、色材の濃度に対する明度が異なるブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、及び、イエローインクを吐出するものであり、前記駆動信号生成部は、明度の高いイエローインクの吐出量が明度の低い他のインクの吐出量よりも少なくなるように前記波形部を異ならせた複数種類の前記駆動信号を、前記特定の階調値に対して生成する構成が好ましい。
このような印刷装置によれば、ブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、及び、イエローインクで印刷される画像について粒状性の向上が図れる。
かかる印刷装置において、前記ヘッドは、前記複数種類のインクとして、染料インクと顔料インクとを吐出するものであり、前記駆動信号生成部は、前記染料インクの吐出量が前記顔料インクの吐出量よりも少なくなるように前記波形部を異ならせた複数種類の前記駆動信号を、前記特定の階調値に対して生成する構成が好ましい。
このような印刷装置によれば、顔料インクと染料インクで印刷される画像について粒状性の向上が図れる。
かかる印刷装置において、前記複数種類のインクを貯留するインク貯留容器であって、貯留されたインクの種類を示すインク種類情報が記憶された容器側記憶部を有するインク貯留容器を、さらに有し、前記駆動信号生成部は、前記容器側記憶部に記憶されたインク種類情報に基づいて、吐出するインクの種類を認識する構成が好ましい。
このような印刷装置によれば、使用されるインク貯留容器に応じてインクの種類が認識されるので、操作の簡略化が図れる。
また、以下の構成を有する印刷装置を実現することもできる。すなわち、複数種類のインクを貯留するインク貯留容器であって、貯留されたインクの種類を示すインク種類情報が記憶された容器側記憶部を有するインク貯留容器と、インクを吐出するための動作を行う素子を有し、前記複数種類のインクを、指定された階調値毎に量を異ならせて吐出するヘッドと、前記素子を動作させるための波形部を有する駆動信号を生成する駆動信号生成部であって、前記波形部を複数有する原駆動信号を生成する原駆動信号生成部と、前記原駆動信号生成部と前記素子との間に配置され、前記原駆動信号から前記素子に印加される駆動信号を生成するためのスイッチと、前記スイッチの動作を定めるためのスイッチ動作情報を前記インクの種類毎及び前記階調値毎に記憶したスイッチ動作情報記憶部と、前記指定された階調値及び前記インクの種類に基づいて、対応するスイッチ動作情報を選択し、選択したスイッチ動作情報を用いて前記スイッチの動作を制御するスイッチコントローラと、を有し、前記容器側記憶部に記憶されたインク種類情報に基づいて、吐出するインクの種類を認識し、所定サイズよりも大きいドットに対応する階調値、又は、最大サイズのドットに対応する階調値を特定の階調値とし、前記波形部がインクの種類によって異なる複数種類の前記駆動信号を、前記特定の階調値に対して生成する、駆動信号生成部と、を有し、前記ヘッドは、前記複数種類のインクとして、同色の淡インクと濃インク、又は、色材の濃度に対する明度が異なるブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、及び、イエローインク、又は、染料インクと顔料インクを、吐出するものであり、前記駆動信号生成部は、前記淡インクの吐出量が前記濃インクの吐出量よりも少なくなるように前記波形部を異ならせた複数種類の前記駆動信号、又は、明度の高いイエローインクの吐出量が明度の低い他のインクの吐出量よりも少なくなるように前記波形部を異ならせた複数種類の前記駆動信号、又は、前記染料インクの吐出量が前記顔料インクの吐出量よりも少なくなるように前記波形部を異ならせた複数種類の前記駆動信号を、前記特定の階調値に対して生成する、印刷装置を実現することもできる。
このような印刷装置によれば、既述のほぼ全ての効果を奏するため、本発明の目的が最も有効に達成される。
また、インクを吐出するための動作を行う素子を動作させるための波形部が、インクの種類によって異なる複数種類の駆動信号を、複数の階調値の中の特定の階調値に対して生成するステップと、前記特定の階調値にて、前記複数種類の駆動信号を素子に印加することにより、ヘッドからインクを吐出させるステップと、を有する印刷方法を実現することもできる。
===印刷システム100の構成===
<全体構成について>
まず、印刷装置を印刷システム100とともに説明する。ここで、図1は、印刷システム100の構成を説明する図である。例示した印刷システム100は、印刷装置としてのプリンタ1と、印刷制御装置としてのコンピュータ110とを含んでいる。具体的には、この印刷システム100は、プリンタ1と、コンピュータ110と、表示装置120と、入力装置130と、記録再生装置140とを有している。プリンタ1は、用紙、布、フィルム等の媒体に画像を印刷する。なお、以下の説明では、代表的な媒体である用紙S(図3Aを参照。)を例に挙げて説明する。コンピュータ110は、プリンタ1と通信可能に接続されている。そして、プリンタ1に画像を印刷させるため、コンピュータ110は、その画像に応じた印刷データをプリンタ1に出力する。このコンピュータ110には、アプリケーションプログラムやプリンタドライバ等のコンピュータプログラムがインストールされている。表示装置120は、ディスプレイを有している。この表示装置120は、例えば、コンピュータプログラムのユーザーインタフェースを表示するためのものである。入力装置130は、例えば、キーボード131やマウス132である。記録再生装置140は、例えば、フレキシブルディスクドライブ装置141やCD−ROMドライブ装置142である。
===コンピュータ110===
<コンピュータ110の構成について>
図2は、コンピュータ110、及びプリンタ1の構成を説明するブロック図である。まず、コンピュータ110の構成について簡単に説明する。このコンピュータ110は、前述した記録再生装置140と、ホスト側コントローラ111とを有している。記録再生装置140は、ホスト側コントローラ111と通信可能に接続されており、例えばコンピュータ110の筐体に取り付けられている。ホスト側コントローラ111は、コンピュータ110における各種の制御を行うものであり、前述した表示装置120や入力装置130も通信可能に接続されている。このホスト側コントローラ111は、インタフェース部112と、CPU113と、メモリ114とを有する。インタフェース部112は、プリンタ1との間に介在し、データの受け渡しを行う。CPU113は、コンピュータ110の全体的な制御を行うための演算処理装置である。メモリ114は、CPU113が使用するコンピュータプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM、ROM、磁気ディスク装置等によって構成される。このメモリ114に格納されるコンピュータプログラムとしては、前述したように、アプリケーションプログラムやプリンタドライバがある。そして、CPU113は、メモリ114に格納されているコンピュータプログラムに従って各種の制御を行う。
印刷データは、プリンタ1が解釈できる形式のデータであって、各種のコマンドデータと、ドット形成データSI(図6を参照。)とを有する。コマンドデータとは、プリンタ1に特定の動作を実行させるためのデータである。このコマンドデータには、例えば、給紙を指示するコマンドデータ、搬送量を示すコマンドデータ、排紙を指示するコマンドデータがある。また、ドット形成データSIは、印刷される画像のドットに関するデータである。ここで、ドットは、用紙S上に仮想的に定められた方眼状の升目(以下、単位領域ともいう。)に対応して形成される。そして、ドット形成データSIは階調値を示す階調データで構成される。本実施形態において、ドット形成データSIは、2ビットデータによって構成されている。すなわち、このドット形成データSIには、ドット無し(インクの非吐出)に対応する階調データ[00]と、小ドットの形成に対応する階調データ[01]と、中ドットの形成に対応する階調データ[10]と、大ドットの形成に対応する階調データ[11]とがある。要するに、このプリンタ1では、1つの単位領域に対して4つの階調値を有している。
===プリンタ1===
<プリンタ1の構成について>
次に、プリンタ1の構成について説明する。ここで、図3Aは、本実施形態のプリンタ1の構成を示す図である。図3Bは、本実施形態のプリンタ1の構成を説明する側面図である。なお、以下の説明では、図2も参照する。このプリンタ1は、図2に示すように、用紙搬送機構20、キャリッジ移動機構30、ヘッドユニット40、原駆動信号生成回路50、検出器群60、及び、プリンタ側コントローラ70を有する。そして、原駆動信号生成回路50とプリンタ側コントローラ70は共通のコントローラ基板CTRに実装されている。また、ヘッドユニット40は、ヘッド制御部HCと、ヘッド41とを有している。このプリンタ1では、プリンタ側コントローラ70によって制御対象部、すなわち用紙搬送機構20、キャリッジ移動機構30、ヘッドユニット40(ヘッド制御部HC,ヘッド41)、及び原駆動信号生成回路50が制御される。すなわち、プリンタ側コントローラ70は、コンピュータ110から受け取った印刷データに基づいて制御対象部を制御し、用紙Sに画像を印刷させる。このとき、検出器群60の各検出器は、プリンタ1内の各部の状態を検出しており、検出結果をプリンタ側コントローラ70に出力する。各検出器からの検出結果を受けたプリンタ側コントローラ70は、その検出結果に基づいて制御対象部を制御する。
そして、このプリンタ1では、原駆動信号生成回路50、プリンタ側コントローラ70、及び、ヘッド制御部HCが駆動信号生成部に相当し、ヘッド41が有するピエゾ素子PZT(図4A,図4Bを参照。)に印加される駆動信号を生成する。なお、駆動信号生成部を構成する各部や、生成される駆動信号については、後で詳しく説明する。
<用紙搬送機構20について>
用紙搬送機構20は、媒体を搬送させる媒体搬送部に相当する。この用紙搬送機構20は、媒体としての用紙Sを印刷可能な位置に送り込んだり、この用紙Sを搬送方向に所定の搬送量で搬送させたりするものである。この搬送方向は、次に説明するキャリッジ移動方向と交差する方向である。そして、図3A及び図3Bに示すように、用紙搬送機構20は、給紙ローラ21と、搬送モータ22と、搬送ローラ23と、プラテン24と、排紙ローラ25とを有する。給紙ローラ21は、紙挿入口に挿入された用紙Sをプリンタ1内に自動的に送るためのローラであり、この例ではD形の断面形状をしている。搬送モータ22は、用紙Sを搬送方向に搬送させるためのモータであり、その動作は、プリンタ側コントローラ70によって制御される。搬送ローラ23は、給紙ローラ21によって送られてきた用紙Sを印刷可能な領域まで搬送するためのローラである。プラテン24は、用紙Sを裏面側から支持するための部材である。排紙ローラ25は、印刷が終了した用紙Sを搬送するためのローラである。
<キャリッジ移動機構30について>
キャリッジ移動機構30は、ヘッドユニット40が取り付けられたキャリッジCRをキャリッジ移動方向に移動させるためのものである。キャリッジ移動方向には、一側から他側への移動方向と、他側から一側への移動方向が含まれている。なお、ヘッドユニット40はヘッド41を有する。このため、キャリッジ移動方向は、ヘッド41が移動するヘッド移動方向(所定方向)に相当する。また、キャリッジ移動機構30は、ヘッド41を所定方向に移動させるヘッド移動部に相当する。このキャリッジ移動機構30は、キャリッジモータ31と、ガイド軸32と、タイミングベルト33と、駆動プーリー34と、アイドラプーリー35とを有する。キャリッジモータ31は、キャリッジCRを移動させるための駆動源に相当する。このキャリッジモータ31の動作は、プリンタ側コントローラ70によって制御される。そして、キャリッジモータ31の回転軸には、駆動プーリー34が取り付けられている。この駆動プーリー34は、キャリッジ移動方向の一端側に配置されている。駆動プーリー34とは反対側のキャリッジ移動方向の他端側には、アイドラプーリー35が配置されている。タイミングベルト33は、その端部がキャリッジCRに固定された環状の部材であり、駆動プーリー34とアイドラプーリー35とに架け渡されている。ガイド軸32は、キャリッジCRを移動可能な状態で支持する。このガイド軸32は、キャリッジ移動方向に沿って取り付けられている。従って、キャリッジモータ31が動作すると、キャリッジCRはこのガイド軸32に沿ってキャリッジ移動方向に移動する。これに伴い、ヘッド41もヘッド移動方向に移動する。
キャリッジCRには、インクを貯留するインクカートリッジICが装着される。このインクカートリッジICは、インク貯留容器に相当するものである。本実施形態のインクカートリッジICは、ブラックインクを貯留したブラックインクカートリッジICkと、カラーインクを貯留したカラーインクカートリッジICcとを有している。そして、カラーインクカートリッジICcには、5種類のインクが貯留されている。具体的には、淡シアンインク、濃シアンインク、淡マゼンタインク、濃マゼンタインク、及び、イエローインクが貯留されている。ここで、淡シアンインクと濃シアンインクの組、及び、淡マゼンタインクと濃マゼンタインクの組は、同色の淡インクと濃インクの組に相当する。従って、前述したヘッド41は、ブラックインクを加えた合計6種類のインクを吐出する。
そして、図2に示すように、インクカートリッジICには、カートリッジ側メモリICmが設けられている。このカートリッジ側メモリICmは容器側記憶部に相当し、貯留されたインクの種類を示すインク種類情報が記憶される。また、カートリッジ側メモリICmには他の情報、例えば、インクの消費量に関する消費量情報も記憶される。そして、カートリッジ側メモリICmには接点端子(便宜上、メモリ側接点端子TM1という。)が設けられている。このメモリ側接点端子TM1は、インクカートリッジICのキャリッジCRへの装着状態において、キャリッジ側に設けられた接点端子(便宜上、キャリッジ側接点端子TM2という。)と接触する。キャリッジ側接点端子TM2は、配線を介してプリンタ側コントローラ70(CPU72)に接続されている。このため、インクカートリッジICが装着されると、プリンタ側コントローラ70(つまり、駆動信号生成部)は、インク種類情報や消費量情報を取得することができる。
<ヘッドユニット40について>
ヘッドユニット40は、インクを用紙Sに向けて吐出させるためのものである。このヘッドユニット40は、ヘッド41とヘッド制御部HCとを有している。ここで、図4Aは、ヘッド41の構造を説明するための断面図である。図4Bは、ヘッド41の主要部を拡大して示す断面図である。図5は、ノズル列の配置を説明する図である。なお、便宜上、ここではヘッド41について説明し、ヘッド制御部HCについては後で説明することにする。
<ヘッド41について>
ヘッド41は、ケース411と、流路ユニット412と、ピエゾ素子ユニット413とを有する。ケース411は、ピエゾ素子ユニット413を収容するための収容室411aが内部に形成されたブロック状の部材である。ピエゾ素子ユニット413は、ノズル列毎に取り付けられる。図5に示すように、このヘッド41では、6つのノズル列(Nk〜Nlc)を有している。このため、ケース411には6つの収容室411aが設けられており、6つのピエゾ素子ユニット413が各収容室411aに収容されている。なお、図4Aには、6つの収容室411aの一部分を示している。
流路ユニット412は、流路形成板412aと、流路形成板412aの一方の表面に接合された弾性板412bと、流路形成板412aの他方の面に接合されたノズルプレート412cとを有する。流路形成板412aは、シリコンウエハーや金属板等によって作製されている。この流路形成板412aには、圧力室412dとなる溝部、ノズル連通口412eとなる貫通口、共通インク室412fとなる貫通口、インク供給路412gとなる溝部が形成されている。弾性板412bは、支持枠412hと、ピエゾ素子PZTの先端が接合されるアイランド部412jとを有する。そして、アイランド部412jの周囲には、弾性膜412iによる弾性領域が形成されている。
ピエゾ素子ユニット413は、ピエゾ素子群413aと、接着用基板413bとから構成されている。ピエゾ素子群413aは櫛歯状をしており、1つ1つの櫛歯状部分がピエゾ素子PZTに相当する。このピエゾ素子群413aは、ノズルNzに対応する数のピエゾ素子PZTを有する。また、接着用基板413bは、矩形状の板であり、一方の表面にピエゾ素子群413aが接着され、他方の表面がケース411に接着されている。ピエゾ素子PZTは、対向する電極間に電位差を与えることにより変形する。この例では、素子の長手方向に伸縮する。この伸縮量は、ピエゾ素子PZTの電位に応じて定まる。そして、ピエゾ素子PZTの電位は、印加された駆動信号(図13,図14に実線で示す部分。)によって定められる。従って、ピエゾ素子PZTは、印加された駆動信号の電位に応じて伸縮する。
そして、ピエゾ素子PZTが伸縮すると、アイランド部412jは圧力室412d側に押されたり、反対方向に引かれたりする。このとき、アイランド部周辺の弾性膜412iが変形するので、ノズルNzからインクを効率よく吐出させることができる。このようなピエゾ素子PZTは、駆動信号によって充放電され、インクを吐出するための動作を行う素子に相当する。そして、ピエゾ素子PZTをヘッド41に用いると、印加される駆動パルスPS1〜PS4の形状に応じて、吐出されるインクの量や速度を様々に制御できる。
また、前述したノズルプレート412cは、このヘッド41の用紙対向面に設けられている。そして、このノズルプレート412cには、複数のノズルNzからなるノズル列が、インクの種類に応じた複数設けられている。前述したように、このプリンタ1では6種類のインクを吐出させることができるので、ノズル列も6つ設けられている。図5に示す例では、図の左側からブラックインクノズル列Nk,シアンインクノズル列Nc,マゼンタインクノズル列Nm,イエローインクノズル列Ny,ライトシアンインクノズル列Nlc,マゼンタインクノズル列Nlmが設けられている。それぞれのノズル列は、搬送方向に沿って、キャリッジ方向に並んだ状態で形成されている。
<ヘッド制御部HCについて>
次に、ヘッド制御部HCについて説明する。ここで、図6は、ヘッド制御部HCの構成を説明するためのブロック図である。前述したように、ヘッド制御部HCは、駆動信号生成部の一部を構成するものである。本実施形態におけるヘッド制御部HCは、シフトレジスタ81と、ラッチ回路82と、制御ロジック83と、デコーダ84と、ゲート回路85と、ヘッド側スイッチ86とを有する。そして、制御ロジック83を除いた各部、すなわち、シフトレジスタ81、ラッチ回路82、デコーダ84、ゲート回路85、ヘッド側スイッチ86は、それぞれピエゾ素子PZT毎、つまりノズルNz毎に設けられる。また、このヘッド制御部HCは、インクの種類毎に設けられる。前述したように、このプリンタ1では、6種類のインクを吐出させることができるので、図6に記載されたブロックが6つ設けられる。以下、ヘッド制御部HCを構成する各部分について説明する。
シフトレジスタ81は、プリンタ側コントローラ70からのドット形成データSIがセットされるものである。ラッチ回路82は、シフトレジスタ81にセットされたドット形成データSIをラッチするものである。
制御ロジック83は、スイッチ動作情報記憶部に相当し、ヘッド側スイッチ86の動作を定めるためのスイッチ動作情報(q0〜q3)を記憶する。そして、記憶したスイッチ動作情報を、ラッチ信号LATやチェンジ信号CH(図7を参照。)で規定されるタイミングで切り替えながら出力する。つまり、時系列的に出力する。この制御ロジック83は、スイッチ動作情報を、ドット形成データSIの種類毎、具体的には、ドットの非形成、小ドットの形成、中ドットの形成、及び、大ドットの形成のそれぞれの階調について記憶している。また、制御ロジック83はインクの種類で定められるブロックごとに設けられている。そして、各制御ロジック83に記憶されるスイッチ動作情報は、吐出させるインクの種類に対応させて定められる。すなわち、ブラックインク用のスイッチ動作情報、淡シアンインク用のスイッチ動作情報、濃シアンインク用のスイッチ動作情報、…といったように、スイッチ動作情報はインクの種類毎に定められる。従って、この制御ロジック83は、スイッチ動作情報を前記インクの種類毎及び前記階調値毎に記憶しているといえる。なお、制御ロジック83に記憶されるスイッチ動作情報については、後で説明する。
デコーダ84は、制御ロジック83から出力される階調毎のスイッチ動作情報を、ラッチ回路82でラッチされたドット形成データSIに応じて選択し、選択したスイッチ動作情報を、ゲート回路85を通じてヘッド側スイッチ86に出力する。ここで、制御ロジック83から出力されるスイッチ動作情報は、デコーダ84で選択される前のものである。このため、選択前スイッチ動作情報と表現することができる。一方、ヘッド側スイッチ86に印加されるスイッチ動作情報は、デコーダ84によって選択されたものである。このため、選択後スイッチ動作情報に相当する。従って、デコーダ84は、同時に出力される複数種類の選択前スイッチ動作情報から、階調に対応したものを選択後スイッチ動作情報として出力するものといえる。
ゲート回路85は、デコーダ84からのスイッチ動作情報とプリンタ側コントローラ70からのN−チャージ信号N_CHGを、ヘッド側スイッチ86に印加するためのものである。ここで、N−チャージ信号N_CHGとは、原駆動信号COM(図7を参照。)を、そのブロックに属する全てのピエゾ素子PZTに印加させるための強制印加信号であり、ピエゾ素子PZTの電位を調整するために用いられる。そして、このN−チャージ信号N_CHGは、Lレベルで有効な信号となっている。従って、このゲート回路85は、N−チャージ信号N_CHGがHレベルのとき、その出力レベルがデコーダ84からのスイッチ動作情報に依存して変化する。一方、N−チャージ信号N_CHGがLレベルのとき、その出力レベルは、デコーダ84からのスイッチ動作情報に拘わらずHレベルとなる。
ヘッド側スイッチ86は、ゲート回路85を介して入力されたスイッチ動作情報やN−チャージ信号N_CHGによって動作するスイッチである。このヘッド側スイッチ86は、原駆動信号COMの供給線とピエゾ素子PZTとの間に配置され、オン状態では原駆動信号COMをピエゾ素子PZTに印加し、オフ状態では原駆動信号COMを遮断する。なお、原駆動信号COMの供給線は、原駆動信号生成回路50に接続されている。このため、ヘッド側スイッチ86は、原駆動信号生成回路50とピエゾ素子PZTとの間に配置されているといえる。そして、N−チャージ信号N_CHGがHレベルのとき、ヘッド側スイッチ86は、デコーダ84で選択されたスイッチ動作情報によってオンオフし、原駆動信号COMにおける必要部分(すなわち、駆動信号)をピエゾ素子PZTに印加する。このため、ヘッド側スイッチ86は、ピエゾ素子PZTに印加される駆動信号を原駆動信号COMから生成するためのスイッチに相当する。
また、このヘッド側スイッチ86の動作を制御する部分、具体的には、シフトレジスタ81、ラッチ回路82、及び、デコーダ84は、スイッチコントローラに相当する。そして、このスイッチコントローラは、ドット形成データSI(階調値)と選択前スイッチ動作情報とから、選択後スイッチ動作情報を生成する。なお、シフトレジスタ81、ラッチ回路82、制御ロジック83、及び、デコーダ84については、後で説明する。
<原駆動信号生成回路50について>
原駆動信号生成回路50は、原駆動信号COMを生成するものであり、原駆動信号生成部に相当する。ここで、原駆動信号COMとは、先の説明から判るように、ピエゾ素子PZTを駆動するための駆動信号の基となっている信号である。
図7に示すように、原駆動信号COMは、繰り返し周期T毎に繰り返し生成される。この繰り返し周期Tは、5つの期間T1〜T5に分けることができる。そして、原駆動信号COMは、最初の期間T1で生成される第1区間信号SS1と、2番目の期間T2で生成される第2区間信号SS2と、3番目の期間T3で生成される第3区間信号SS3と、4番目の期間T4で生成される第4区間信号SS4と、5番目の期間T5で生成される第5区間信号SS5とを有する。そして、第1区間信号SS1は駆動パルスPS1を有している。また、第2区間信号SS2は駆動パルスPS2を、第3区間信号SS3は駆動パルスPS3をそれぞれ有している。同様に、第4区間信号SS4は駆動パルスPS4を、第5区間信号SS5は駆動パルスPS5をそれぞれ有している。これらの駆動パルスPS1〜PS5はピエゾ素子PZTを動作させるための波形部に相当し、その形状はピエゾ素子PZTに行わせる動作に基づいて定められている。
駆動パルスPS1、駆動パルスPS3、駆動パルスPS4、及び、駆動パルスPS5は、ノズルNzからインクを吐出させる際に用いられる波形部である。これらの中で、駆動パルスPS1、駆動パルスPS3、及び、駆動パルスPS5は、何れも同じ波形をしている。これらの駆動パルスPS1,PS3,PS5のうち1つの駆動パルスがピエゾ素子PZTに印加されると、中ドットに対応する量のインクがノズルNzから吐出される。例えばは7pl(7ng)のインクが吐出される。そして、このインクが用紙Sに着弾すると、用紙Sの単位領域には、中ドットが形成される。また、これらの駆動パルスPS1,PS3,PS5のうち2つの駆動パルス、或いは、全ての駆動パルスがピエゾ素子PZTに印加されると、ノズルNzからは大ドットに対応する量(14pl,21pl)のインクが吐出され、用紙Sには大ドットが形成される。
便宜上、駆動パルスPS1、駆動パルスPS3、及び、駆動パルスPS5のことを中ドットパルスともいう。さらに、駆動パルスPS1のことを第1中ドットパルスと、駆動パルスPS3のことを第2中ドットパルスと、駆動パルスPS5のことを第3中ドットパルスともいう。なお、大ドットの形成に2つの駆動パルスを用いるか、3つの駆動パルスを用いるかについては、インクの種類によって定められる。この点については、後で説明する。
駆動パルスPS4は、小ドットの形成時にピエゾ素子PZTへ印加される駆動信号である。すなわち、この駆動パルスPS4がピエゾ素子PZTへ印加されると、ノズルNzからは小ドットに対応する量のインクが吐出される。この例では2pl(2ng)のインクが吐出される。そして、このインクが用紙Sに着弾すると小ドットが形成される。便宜上、この駆動パルスPS4のことを小ドットパルスともいう。
一方、駆動パルスPS2は、メニスカス(ノズル部分で露出しているインクの自由表面)を微振動させるためのパルスである。すなわち、この駆動パルスPS2がピエゾ素子PZTに印加されると、インクが吐出されない程度の圧力変動が圧力室412d内のインクに生じる。これにより、ノズルNz内でメニスカスが変位し、ノズルNz付近のインクが攪拌される。便宜上、この駆動パルスPS2のことを、微振動パルスともいう。
このような原駆動信号COMは、プリンタ側コントローラ70からの駆動信号生成情報に基づき、原駆動信号生成回路50から出力される。以下、原駆動信号生成回路50による原駆動信号COMの生成動作について説明する。図8は、原駆動信号COMの生成動作を説明するための概念図である。
プリンタ側コントローラ70は、原駆動信号COMを生成するためのパラメータに基づき、更新周期τ毎の出力電圧を求める。そして、原駆動信号COMを生成する場合、プリンタ側コントローラ70は、出力電圧に対応するDAC値(例えば、出力電圧を10ビットのデジタル値で表した情報)を求め、求めたDAC値を更新周期τ毎に原駆動信号生成回路50へ出力する。図8の例では、クロックで規定されるタイミングt(n)で電圧V1に対応するDAC値が出力される。これにより、更新周期τ(n)にて、原駆動信号生成回路50の出力は電圧V1となる。そして、更新周期τ(n+4)までは、電圧V1に対応するDAC値が順次出力されるので、原駆動信号生成回路50からは電圧V1が出力され続ける。また、タイミングt(n+5)では、電圧V2に対応するDAC値が出力される。これにより、更新周期τ(n+5)にて、原駆動信号生成回路50の出力は電圧V1から電圧V2へ降下する。同様に、タイミングt(n+6)では、電圧V3に対応するDAC値が出力される。これにより、更新周期τ(n+6)にて、原駆動信号生成回路50の出力は電圧V2から電圧V3へ降下する。以下同様にしてDAC値が出力されるため、原駆動信号生成回路50から出力される電圧は、次第に降下する。そして、更新周期τ(n+10)にて、原駆動信号生成回路50の出力は電圧V4になる。なお、この原駆動信号生成回路50において、非出力側の端子は接地されている。このため、出力側の端子は出力電圧に対応する電位となっている。
<検出器群60について>
検出器群60は、プリンタ1の状況を監視するためのものである。図3A,図3Bに示すように、この検出器群60には、リニア式エンコーダ61、ロータリー式エンコーダ62、紙検出器63、及び紙幅検出器64が含まれている。リニア式エンコーダ61は、キャリッジCRのキャリッジ移動方向の位置を検出するためのものである。ロータリー式エンコーダ62は、搬送ローラ23の回転量を検出するためのものである。紙検出器63は、印刷される用紙Sを検出するためのものである。紙幅検出器64は、印刷される用紙Sの幅を検出するためのものである。
<プリンタ側コントローラ70について>
プリンタ側コントローラ70は、プリンタ1が有する各部を制御するものである。例えば、プリンタ側コントローラ70は、所定の搬送量で用紙Sを搬送させる動作と、キャリッジCR(ヘッド41)を移動させながら断続的にインクを吐出させる動作とを交互に行わせることで、用紙Sに画像を印刷させている。このため、プリンタ側コントローラ70は、搬送モータ22の回転量を制御することによって用紙Sの搬送を制御する。また、プリンタ側コントローラ70は、キャリッジモータ31の回転を制御することによってキャリッジCRの移動を制御する。さらに、ドット形成データSIをヘッド制御部HCへ出力することで、インクを吐出させるための制御を行う。このドット形成データSIは、前述した様に、ピエゾ素子PZTに印加される駆動信号を、原駆動信号COMから生成する際に用いられるものである。加えて、プリンタ側コントローラ70は、電圧指定情報としてのDAC値を原駆動信号生成回路50へ出力する制御も行っている。このように、プリンタ側コントローラ70は、原駆動信号COMを生成するための制御と、ピエゾ素子PZTに印加される駆動信号を、原駆動信号COMから生成するための制御とを行っている。このため、プリンタ側コントローラ70は、原駆動信号生成回路50、ヘッド側スイッチ86、及び、ヘッド制御部HCとともに、駆動信号生成部を構成しているといえる。
このプリンタ側コントローラ70は、図2に示すように、インタフェース部71と、CPU72と、メモリ73と、制御ユニット74とを有する。インタフェース部71は、外部装置であるコンピュータ110との間でデータの受け渡しを行う。CPU72は、プリンタ1の全体的な制御を行うための演算処理装置である。メモリ73は、CPU72のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM、ROM等の記憶素子によって構成される。そして、CPU72は、メモリ73に記憶されているコンピュータプログラムに従って各制御対象部を制御する。例えば、CPU72は、制御ユニット74を介して用紙搬送機構20やキャリッジ移動機構30を制御する。例えば、搬送モータ22やキャリッジモータ31に対する制御信号を出力する。また、CPU72は、ヘッド41の動作を制御するためのヘッド制御信号(例えば、クロックCLK,ドット形成データSI,ラッチ信号LAT,チェンジ信号CH,N−チャージ信号N_CHGが相当する。図6を参照。)をヘッド制御部HCへ出力したり、原駆動信号COMを生成させるためのDAC値を原駆動信号生成回路50へ出力したりする。
===印刷動作===
<本実施形態における印刷動作の概要>
次に、この印刷システム100における印刷動作の概要について説明する。この印刷システム100が有するプリンタ1では、前述したように、1つの単位領域について、複数種類の階調で印刷することができる。具体的には、ドットの非形成、小ドットの形成、中ドットの形成、及び、大ドットの形成からなる4階調で印刷をすることができる。ここで、同色の淡インクと濃インクについては、大ドットの量を揃えてしまうと、同じ量のインクで形成されたドットであっても、視認される大きさが互いに相違してしまう。具体的には、淡インクの方が濃インクよりも大きく見えてしまう。この場合、淡インクにおける中ドットと大ドットとの大きさの差と、濃インクにおける中ドットと大ドットとの大きさの差が異なってしまう。このようなドット間の大きさの違いによって、粒状感が損なわれてしまう。すなわち、淡インクにおける中ドットと大ドットの大きさの差が、濃インクにおける差に比べて過度に大きくなり、粒状性が損なわれてしまうことになる。
そこで、この実施形態では、淡インクと濃インクを用いて印刷する色については、大ドットの階調値(特定の階調値に相当する。)に対応する駆動信号を淡インクと濃インクとで異ならせ、ドットの大きさを最適化している。これにより、淡インクにおける中ドットと大ドットの大きさの差を、濃インクにおける差に揃えることができ、淡インクと濃インクで印刷される画像について粒状性の向上が図れる。以下、これらの点について、詳細に説明する。
<印刷動作について>
例示した印刷システム100にて画像を用紙Sへ印刷する際には、印刷データを生成するための処理と、印刷データに基づいて用紙Sに印刷するための処理とが行われる。そして、印刷データを生成するための処理は、印刷システム100が有するコンピュータ110で行われる。即ち、ホスト側コントローラ111が有するCPU113は、メモリ114に記憶されたコンピュータプログラムに従って動作し、この処理を実行する。従って、このコンピュータプログラムは、各処理を実行するためのコードを有する。また、用紙Sに印刷するための処理は、印刷システム100が有するプリンタ1で行われる。即ち、プリンタ側コントローラ70が有するCPU72は、メモリ73に記憶されたコンピュータプログラムに従って動作し、この処理を実行する。従って、このコンピュータプログラムは、各処理を実行するためのコードを有する。
<印刷データを生成するための処理について>
まず、印刷データを生成するための処理について説明する。ここで、図9は、印刷データを生成するための処理を説明するためのフローチャートである。図9に示すように、印刷データを生成するための処理では、解像度変換処理(S10)、色変換処理(S20)、ハーフトーン処理(S30)、ラスタライズ処理(S40)が行われる。
解像度変換処理は、画像データ(テキストデータ、イメージデータなど)を、用紙Sに画像を印刷する際の解像度(印刷するときのドットの間隔であり、印刷解像度ともいう。)に変換する処理である。色変換処理は、RGB画像データの各RGB画素データを、CMYK色空間により表される多段階(例えば256段階)の階調値を有するデータに変換する処理である。この色変換処理は、RGBの階調値とCMYKの階調値とを対応づけたテーブル(色変換ルックアップテーブル)を参照することによって行われる。
ハーフトーン処理は、多段階の階調値を有するCMYK画素データから、プリンタ1で表現可能な少段階の階調値のデータに変換する処理である。すなわち、多段階の階調値を有するCMYK画素データからドット形成データSIを得るための処理である。このハーフトーン処理により、例えば、256段階の階調値を示すCMYK画素データから、4段階の階調値を示す2ビットのドット形成データSIが得られる。
ここで、図10Aは、ハーフトーン処理での選択ルーチンを説明する図である。図10Bは、選択ルーチンで選択されるハーフトーン処理の種類をインクの色毎に示した図である。また、図11は、第1のハーフトーン処理を説明するための概念図である。図10A及び図10Bに示すように、この印刷システム100では、2種類のハーフトーン処理が定められている。第1のハーフトーン処理は、同色の淡インクと濃インクとを用いて印刷を行う色で選択される処理である。すなわち、シアンとマゼンタで選択される処理である。第2のハーフトーン処理は、一種類の濃度のインクを用いて印刷を行う色で選択される処理である。すなわち、イエローとブラックで選択される処理である。これらの処理については、後で説明する。
ラスタライズ処理は、ハーフトーン処理で得られたドット形成データSIを、プリンタ1に転送すべきデータ順に変更する処理である。ラスタライズ処理されたドット形成データSIは、前述したコマンドデータとともに、印刷データとしてプリンタ1へ出力される。
<ハーフトーン処理について>
前述したように、ハーフトーン処理は、シアンとマゼンタ用の第1のハーフトーン処理と、イエローとブラック用の第2のハーフトーン処理とがある。
第1のハーフトーン処理では、1つの単位領域に、淡インクの小ドット、中ドット、大ドット(便宜上、淡小ドット、淡中ドット、淡大ドットともいう。)と、濃インクの小ドット、中ドット、大ドット(便宜上、濃小ドット、濃中ドット、濃大ドットともいう。)との何れを形成するのか、複数のドットを重ねて形成するのか、或いは、ドットを形成しないのかを定め、ドット形成データSIを取得する。
この第1のハーフトーン処理を、図11の例に基づいて説明する。説明の便宜上、図11には、淡小ドット、淡大ドット、濃小ドット、及び、濃大ドットの4種類のドットによって階調表現をする例を示している。なお。本実施形態では、これらのドットの他に淡中ドットや濃中ドットもあるが、考え方は同じであるので4種類のドットの例で説明する。この図11において、横軸は入力階調値である。すなわち、変換の対象となる256階調のCMYK画素データに相当する。また、左側の縦軸はドット形成率を示している。このドット形成率は、対象となる単位領域に対する、各ドットが形成される確率を示したものである。また、右側の縦軸は、ドット形成率に対応するレベルデータの値を示している。
この第1のハーフトーン処理において、ホスト側コントローラ111は、或る階調値が入力されると、濃大ドット、濃小ドット、淡大ドット、淡小ドットの順で、ドットの形成/非形成を判断する。例えば、或る単位領域の入力階調値(横軸)が191であった場合、濃大ドットについてのドット形成率は約75%であり、レベルデータの値は191となる。このレベルデータの値を、ディザマトリクスで定められる所定の閾値と比較し、レベルデータの方が大きければ濃大ドットの形成と判断する。この場合、ドット形成データSIとしては、大ドットの形成を示す階調データ[11]がその濃インクについて定められる。一方、レベルデータが閾値以下であれば濃大ドットは非形成と判断し、濃小ドットについての判断を行う。すなわち、ドット形成率20%に対応するレベルデータである値51を取得し、このレベルデータの値をディザマトリクスで定められる所定の閾値と比較する。そして、レベルデータの方が大きければ濃小ドットの形成と判断し、レベルデータが閾値以下であれば濃小ドットの非形成と判断する。そして、濃小ドットの形成と判断された場合、ドット形成データSIとして、小ドットの形成を示す階調データ[01]がその濃インクについて定められる。また、濃小ドットも非形成と判断された場合には、淡大ドットについての判断、及び、淡小ドットについての判断が同様にして行われる。なお、図11に示す例では、符号Xで示す範囲の入力階調値において、濃インクによるドット(濃大ドット、濃小ドット)と、淡インクによるドット(淡大ドット、淡小ドット)とが重ね打ちされる場合がある。
第2のハーフトーン処理では、1つの単位領域に、小ドット、中ドット、大ドットの何れを形成するのか、或いは、ドットを形成しないのかを定め、ドット形成データSIを取得する。この第2のハーフトーン処理も、基本的な内容は第1のハーフトーン処理と同様である。簡単に説明すると、或る単位領域の入力階調値について、大ドットのレベルデータを求め、このレベルデータの値をディザマトリクスで定められる所定の閾値と比較する。ここで、レベルデータの方が大きければ大ドットの形成と判断され、大ドットの形成を示す階調データ[11]が定められる。一方、大ドットの非形成と判断された場合には、中ドットについて同様の処理が行われる。ここで、中ドットの形成と判断された場合には、中ドットの形成を示す階調データ[10]が定められる。また、中ドットの非形成と判断された場合には、小ドットについて同様の処理が行われる。ここで、小ドットの形成と判断された場合には、小ドットの形成を示す階調データ[01]が定められ、小ドットも非形成と判断された場合には、ドットの非形成を示す階調データ[00]が定められる。
そして、これらの第1,第2のハーフトーン処理にて、ドットの形成や非形成を示すデータが全ての単位領域について定められたならば、ハーフトーン処理を終了する。
<用紙Sに印刷するための処理について>
次に、用紙Sに印刷すべくプリンタ1にて行われる処理について説明する。ここで、図12Aは、印刷時に行われる処理を説明するフローチャートである。図12Bは、ピエゾ素子PZTに印加される駆動パルスを、インクの種類毎、及び、階調値毎に示した図である。
図12Aに示すように、用紙Sに印刷するための処理では、印刷命令の受信動作(S110)、給紙動作(S120)、ドット形成動作(S130)、搬送動作(S140)、排紙判断(S150)、排紙動作(S160)、及び、印刷終了判断(S170)が行われる。
印刷命令の受信動作では、プリンタ側コントローラ70は、インタフェース部71を介して、コンピュータ110からの印刷コマンドを受信する。この印刷コマンドは、コンピュータ110から送信される印刷データに含まれている。給紙動作は、印刷対象となる用紙Sを移動させ、印刷開始位置(所謂、頭出し位置)に位置決めする動作である。この給紙動作において、プリンタ側コントローラ70は、給紙ローラ21を回転させ、印刷すべき用紙Sを搬送ローラ23まで送る。続いて、プリンタ側コントローラ70は、搬送ローラ23を回転させ、給紙ローラ21から送られてきた用紙Sを印刷開始位置に位置決めする。ドット形成動作は、キャリッジ移動方向に沿って移動するヘッド41からインクを断続的に吐出させ、用紙Sにドットを形成する動作である。プリンタ側コントローラ70は、キャリッジモータ31を駆動し、キャリッジCRをキャリッジ移動方向に移動させる。また、プリンタ側コントローラ70は、キャリッジCRが移動している間に、ドット形成データSIに基づいてヘッド41(ノズルNz)からインクを吐出させる。そして、ヘッド41から吐出されたインクが用紙S上に着弾すれば、前述したように、用紙S上にドットが形成される。なお、ドット形成動作については後で詳しく説明する。搬送動作は、用紙Sをヘッド41に対して搬送方向に沿って相対的に移動させる動作である。プリンタ側コントローラ70は、搬送ローラ23を回転させて用紙Sを搬送方向に搬送する。この搬送動作により、ヘッド41は、先程のドット形成動作によって形成されたドットの位置とは異なる位置にドットを形成することができる。排紙判断は、印刷中の用紙Sを排出するか否かを判断する処理である。この判断は、印刷データの有無に基づいて行われる。すなわち、プリンタ側コントローラ70は、印刷中の用紙Sに対する印刷データの有無を判断し、印刷データが残っていれば排紙しないと判断する。この場合、プリンタ側コントローラ70は、印刷データがなくなるまでドット形成動作と搬送動作とを交互に繰り返し、ドットから構成される画像を徐々に用紙Sに印刷する。また、プリンタ側コントローラ70は、印刷データがなければ排紙すると判断し、排紙ローラ25を回転させることで、印刷された用紙Sを外部に排出する。なお、排紙を行うか否かの判断は、印刷データに含まれる排紙コマンドに基づいて行っても良い。印刷終了判断は、印刷を続行するか否かの判断である。この判断において、プリンタ側コントローラ70は、印刷データの有無を判断する。そして、次の用紙Sに印刷を行うのであれば、次の用紙Sについての給紙動作を行う。一方、次の用紙Sに印刷を行わないのであれば、印刷動作を終了する。
<ドット形成動作について>
次にドット形成動作について詳細に説明する。ここで、図13は、淡シアンインクや淡マゼンタインクの場合に、ピエゾ素子PZTへ印加される駆動信号を説明する図である。図14は、濃シアンインクや濃マゼンタインクの場合、或いは、イエローインクやブラックインクの場合に、ピエゾ素子PZTへ印加される駆動信号を説明する図である。
このドット形成動作において、プリンタ側コントローラ70は原駆動信号生成回路50へDAC値を出力し、原駆動信号生成回路50はDAC値に応じた電圧信号をヘッドユニット40へ出力する。すなわち、原駆動信号生成回路50はDAC値で規定される電圧の原駆動信号COMを生成する。この原駆動信号COMの生成は、ラッチ信号LATがHレベルになる毎に繰り返し行われる。その結果、図7で説明した原駆動信号COMが、繰り返し周期T毎に繰り返し生成される。
また、プリンタ側コントローラ70は、印刷データに含まれるドット形成データSIをヘッド制御部HCに転送する。加えて、プリンタ側コントローラ70は、ラッチ信号LATやチェンジ信号CHを、所定のタイミングでヘッド制御部HCへ出力する。前述したように、ヘッド制御部HCでは、プリンタ側コントローラ70からのドット形成データSIをシフトレジスタ81に順次セットする。そして、ラッチ信号LATの受信タイミング(ラッチ信号LATがHレベルになったタイミング)で、対応するドット形成データSIをラッチ回路82がラッチする。
ラッチ信号LATは、ヘッド制御部HCの制御ロジック83にも入力される。加えて、この制御ロジック83には、チェンジ信号CHも入力される。そして、制御ロジック83は、インクの種類毎及び階調値毎に定められたスイッチ動作情報を出力する。すなわち、制御ロジック83は、スイッチ動作情報を、ラッチ信号LATやチェンジ信号CHがHレベルになるタイミングで、内容を更新しつつ出力する。
ここで、スイッチ動作情報について説明する。図13に示すように、淡シアンインク及び淡マゼンタインクに用いられるスイッチ動作情報(便宜上、淡インク用スイッチ動作情報ともいう。)は、非吐出の階調値(階調データ[00])に対応するスイッチ動作情報q0がデータ[01000]で構成され、小ドットの階調値(階調データ[01])に対応するスイッチ動作情報q1がデータ[00010]で構成されている。同様に、中ドットの階調値(階調データ[10])に対応するスイッチ動作情報q2がデータ[00100]で構成され、大ドットの階調値(階調データ[11])に対応するスイッチ動作情報q3がデータ[10001]で構成されている。一方、図14に示すように、濃シアンインク及び濃マゼンタインクや、イエローインク及びブラックインクに用いられるスイッチ動作情報(便宜上、濃インク用スイッチ動作情報ともいう。)は、非吐出の階調値に対応するスイッチ動作情報q0がデータ[01000]で構成され、小ドットの階調値に対応するスイッチ動作情報q1がデータ[00010]で構成されている。同様に、中ドットの階調値に対応するスイッチ動作情報q2がデータ[00100]で構成され、大ドットの階調値に対応するスイッチ動作情報q3がデータ[10101]で構成されている。
淡インク用スイッチ動作情報と濃インク用スイッチ動作情報を比較すると、これらのスイッチ動作情報の内容は、非吐出の階調値から中ドットの階調値に対応するスイッチ動作情報q0〜q2において同じである。しかし、大ドットの階調値に対応するスイッチ動作情報q3にて、その内容が異なっている。言い換えれば、最大ドットの階調値(特定の階調値に相当する。)のみ、その内容が異なっている。具体的には、図12Bに示すように、淡インク用スイッチ動作情報q3は、第1駆動信号(第1中ドットパルス)と第5駆動信号(第3中ドットパルス)とをピエゾ素子PZTに印加するものである。一方、濃インク用スイッチ動作情報q3は、第1駆動信号(第1中ドットパルス)と第3駆動信号(第2中ドットパルス)と第5駆動信号(第3中ドットパルス)とをピエゾ素子PZTに印加するものである。つまり、淡インク用スイッチ動作情報q3は、最大ドットの階調値において、吐出するインク量が濃インク用スイッチ動作情報q3よりも少なくなっている。ここで、最大ドットの階調値において、吐出するインク量を異ならせたのは、最大ドットで特に顕在化する粒状性の悪化を効果的に抑制するためである(後述する)。
これらのスイッチ動作情報は、制御ロジック83に記憶されているが、その内容はプリンタ側コントローラ70から転送される。例えば、前述したドット形成データSIとセットになって、繰り返し周期T毎に更新される。この場合、プリンタ側コントローラ70は、吐出されるインクの種類を認識し、その制御ロジック83に適合したドット形成データSIを記憶させる必要がある。ここで、前述したように、本実施形態ではカートリッジ側メモリICmに記憶されたインク種類情報に基づいて、プリンタ側コントローラ70が、吐出されるインクの種類を認識する。このため、認識を確実に行うことができる。また、異なる種類のインクを貯留したインクカートリッジICに交換された際も、自動的に対応することができる。
前述したスイッチ動作情報(淡インク用スイッチ動作情報,濃インク用スイッチ動作情報)は、デコーダ84にて選択される。すなわち、デコーダ84は、ラッチ回路82からの階調値が非吐出の階調値の場合にスイッチ動作情報q0を選択し、小ドットの階調値の場合にスイッチ動作情報q1を選択する。同様に、中ドットの階調値の場合にスイッチ動作情報q2を選択し、大ドットの階調値の場合にスイッチ動作情報q3を選択する。そして、選択されたスイッチ動作情報q0〜q3は、ヘッド側スイッチ86に出力される。その結果、原駆動信号COMを構成する区間信号SS1〜SS5が、選択的にピエゾ素子PZTに印加される。
すなわち、スイッチ動作情報q0の場合、期間T2で生成される第2区間信号SS2がピエゾ素子PZTに印加される。つまり、この第2区間信号SS2が駆動信号に相当する。これにより、駆動パルスPS2(微振動パルス)がピエゾ素子PZTに印加され、メニスカスが微振動される。そして、スイッチ動作情報q1の場合、期間T4で生成される第4区間信号が駆動信号としてピエゾ素子PZTに印加される。これにより、駆動パルスPS4(小ドットパルス)がピエゾ素子PZTに印加され、小ドットの形成に必要な量のインクがノズルNzから吐出される。また、スイッチ動作情報q2の場合、期間T2で生成される第3区間信号SS3が駆動信号としてピエゾ素子PZTに印加される。これにより、駆動パルスPS3(第2中ドットパルス)がピエゾ素子PZTに印加され、中ドットの形成に必要な量のインクがノズルNzから吐出される。なお、これらスイッチ動作情報q0〜q2は淡インクと濃インクとで同じである。このため、上記の各動作は、淡インクと濃インクとで共通である。
そして、淡インクのスイッチ動作情報q3の場合、期間T1で生成される第1区間信号SS1及び期間T5で生成される第5区間信号SS5が駆動信号としてピエゾ素子PZTに印加される。これにより、駆動パルスPS1(第1中ドットパルス)と駆動パルスPS5(第3中ドットパルス)とがピエゾ素子PZTに印加される。これにより、淡インクで大ドットを形成するために必要な量のインクがノズルNzから吐出される。本実施形態では、前述したように、このインク量は14pl(14ng)である。一方、濃インクのスイッチ動作情報q3の場合、期間T1で生成される第1区間信号SS1、期間T3で生成される第3区間信号SS3、及び、期間T5で生成される第5区間信号SS5が駆動信号としてピエゾ素子PZTに印加される。これにより、駆動パルスPS1(第1中ドットパルス)と、駆動パルスPS3(第2中ドットパルス)と、駆動パルスPS5(第3中ドットパルス)とがピエゾ素子PZTに印加される。これにより、濃インクで大ドットを形成するために必要な量のインクがノズルNzから吐出される。本実施形態では、前述したように、このインク量は21pl(21ng)である。このような制御を行うプリンタ1は、含まれる駆動パルス(波形部)が異なる複数種類の駆動信号を、特定の階調値に対して生成し、生成した駆動信号をピエゾ素子PZTに印加しているといえる。そして、大ドットのインク量に関し、淡インクの量を濃インクの量よりも少なくしているので、淡インクについて、大ドットが過度に大きくなってしまい、粒状性が損なわれてしまう不具合を防止することができる。すなわち、特定の階調値におけるドットを所望の大きさにすることができる。これにより、印刷画像について粒状性の向上が図れ、画質の向上が図れる。また、粒状性の向上によって、印刷解像度を従来よりも低くしても同等の画質が得られる。このため、印刷解像度を低くすることで、印刷速度の高速化が図れる。
また、このプリンタ1では、インクの種類毎に制御ロジック83(スイッチ動作情報記憶部)を設け、各制御ロジック83に階調値毎のスイッチ動作情報を記憶させている。そして、各制御ロジック83から出力させた階調値毎のスイッチ動作情報を、階調値に基づいてデコーダ84で選択させ、選択されたスイッチ動作情報に基づいてヘッド側スイッチ86を動作させている。この構成では、ヘッド側スイッチ86の動作を制御することで、共通の原駆動信号COMから複数種類の駆動信号を容易に生成できる。また、インクの種類毎及び階調値毎のスイッチ動作情報を制御ロジック83に記憶させているので、CPU72等による演算をすることなく、多階調における制御が行える。その結果、印刷動作の高速化が図れる。また、使用されるインクの種類が相違した場合において、制御ロジック83の記憶内容を更新すれば済み、容易に対応できる。
ところで、この第1実施形態は、同色の淡インクと濃インクを使用して画像を印刷するプリンタ1について説明した。このプリンタ1では、淡インクと濃インクで印刷される画像について粒状性の向上が図れるという利点がある。しかし、この構成に限定されるものではない。以下、他の実施形態について説明する。
===第2実施形態について===
次に第2実施形態について説明する。この第2実施形態は、色材の濃度に対する明度が異なる複数種類のインクを吐出する印刷装置を対象としている。ここで、図15Aは、第2実施形態におけるヘッド41を説明する図である。図15Bは第2実施形態における制御を説明する図である。
この第2実施形態は、インク溶媒中における色材の濃度に対する明度が異なるインクとして、色材の濃度に対する明度が異なるブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、及び、イエローインクを吐出するものを例示している。すなわち、図15Aに示すように、ヘッド41には、ブラックインクノズル列Nk、シアンインクノズル列Nc、マゼンタインクノズル列Nm、及び、イエローインクノズル列Nyが設けられ、それぞれのノズル列から対応する色のインクが吐出される。ここで、イエローインクは、溶媒中の色材濃度を他のインクと同じにしても、明度が他のインクよりも高くなる。このため、イエローインクについては、インク量を他のインクに揃えて印刷すると、ドットが他のインクのものよりも大きく見えると考えられる。そこで、大ドットの階調値(特定の階調値)において、イエローインクは、2つの中ドットパルスを用いてインクを吐出させる。そして、他のインクについては、3つの中ドットパルスを用いてインクを吐出させる。
即ち、この実施形態では、明度の高いイエローインクの吐出量が明度の低い他のインクの吐出量よりも少なくなるように駆動パルスを異ならせた2種類の駆動信号を、大ドットの階調値に対して生成している。これにより、イエローインクの大ドットに関し、大きさが適正化され、粒状性の向上が図れる。なお、インクの吐出制御やハードウェア構成については、第1実施形態と同様であるので、説明は省略する。
===第3実施形態について===
次に第3実施形態について説明する。この第3実施形態は、染料インクと顔料インクを吐出する印刷装置を対象としている。ここで、図16Aは、第3実施形態におけるヘッド41を説明する図である。図16Bは第3実施形態における制御を説明する図である。
この第3実施形態のヘッド41は、ブラックインクに関し、顔料ブラックインクと染料ブラックインクを吐出する。また、このヘッド41は、カラーインクに関し、染料シアンインク、染料マゼンタインク、及び、染料イエローインクを吐出する。このため、図16Aに示すように、ヘッド41には、顔料ブラックインクノズル列Nk1、染料ブラックインクノズル列Nk2、染料シアンインクノズル列Nc、染料マゼンタインクノズル列Nm、及び、染料イエローインクノズル列Nyが設けられている。ここで、染料ブラックインクや染料カラーインクは、顔料ブラックインクに比べ、同じ量のインクを用いても形成されるドットの大きさが大きくなる傾向がある。これは、用紙S等の媒体に対する浸透性の違いに起因すると考えられる。そこで、大ドットの階調値(特定の階調値)において、染料ブラックインクや染料カラーインクは、2つの中ドットパルスを用いてインクを吐出させる。そして、顔料ブラックインクについては、3つの中ドットパルスを用いてインクを吐出させる。
即ち、この実施形態では、染料インクの吐出量が顔料インクの吐出量よりも少なくなるように駆動パルスを異ならせた2種類の駆動信号を、大ドットの階調値に対して生成している。これにより、染料インクの大ドットに関し、大きさが適正化され、粒状性の向上が図れる。なお、インクの吐出制御やハードウェア構成については、第1実施形態と同様であるので、説明は省略する。また、顔料インクに関し、顔料ブラックインクを例に挙げて説明したが、顔料カラーインクについても同様に適用できる。
===その他の実施形態について===
上記の各実施形態は、主としてプリンタ1について記載されているが、その中には、印刷装置、印刷方法、印刷システム100等の開示が含まれている。また、実施形態としてのプリンタ1について説明をしたが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
<特定の階調値について>
前述した各実施形態では、階調数が4であり、そのうちの大ドットの階調において、複数種類の駆動信号を生成する構成とした。しかし、この構成に限定されるものではない。例えば、所定サイズよりも大きいドットの階調値で、複数種類の駆動信号を生成するようにしてもよい。図17A及び図17Bに示す実施形態は、6階調でドットの形成を制御できるものである。すなわち、インク吐出量の少ない方から順に、ドットの非形成、第1小ドットの形成、第2小ドットの形成、第1中ドットの形成、第2中ドットの形成、及び、大ドットの形成の階調がある。そして、この例では、第5階調(第2中ドット)と第6階調(大ドット)において、淡インクで使用する駆動信号と、濃インクで使用する駆動信号とを異ならせている。つまり、第5階調と第6階調が特定の階調値に相当する。このように構成しても、前述した各実施形態と、同様の効果を奏する。即ち、第5階調よりも大きいドットで顕在化する、つまり、ドットが大きくなるほど顕在化し易い粒状性の悪化を有効に防止することができる。なお、階調数は、4階調と6階調に限定されるものではない。例えば、3階調であってもよいし、7階調以上であってもよい。
<駆動信号について>
前述した各実施形態は、共通の原駆動信号COMを使用し、駆動パルス(波形部)の選択パターンを異ならせることで、異なる駆動信号を生成していた。この点に関し、原駆動信号生成回路50を複数設けて、複数種類の原駆動信号COMを生成するようにしてもよい。
<プリンタ1について>
前述の実施形態では、専ら印刷を行う単機能のプリンタ1を例に挙げて説明したが、印刷装置はこのプリンタ1に限定されるものではない。例えば、プリンタ1の機能とスキャナ装置の機能とを併せ持つ、所謂プリンタ・スキャナ複合機であってもよい。また、前述したように、プロッタやファクシミリ装置であってもよい。加えて、カラーフィルタ製造装置、染色装置、微細加工装置、半導体製造装置、表面加工装置、三次元造形機、液体気化装置、有機EL製造装置(特に高分子EL製造装置)、ディスプレイ製造装置、成膜装置、DNAチップ製造装置などのインクジェット技術を応用した各種の印刷装置に、本実施形態と同様の技術を適用しても良い。また、これらの方法や製造方法も応用範囲の範疇である。
<ヘッド41が有する素子について>
前述した各実施形態では、ヘッド41が有する素子、すなわち、インクを吐出させるための動作を行う素子として、ピエゾ素子PZTを例示したが、ピエゾ素子PZTに限定されるものではない。例えば、静電アクチュエータ、磁歪素子、発熱素子もヘッド41が有する素子になりうる。
印刷システムの構成を説明する図である。 コンピュータ、及びプリンタの構成を説明するブロック図である。 図3Aは、本実施形態のプリンタの構成を示す図である。図3Bは、本実施形態のプリンタの構成を説明する側面図である。 図4Aは、ヘッドの構造を説明するための断面図である。図4Bは、ヘッドの主要部を拡大して示す断面図である。 ノズル列の配置を説明する図である。 ヘッド制御部の構成を説明するためのブロック図である。 原駆動信号を説明する図である。 原駆動信号の生成動作を説明するための概念図である。 印刷データを生成するための処理を説明するためのフローチャートである。 図10Aは、ハーフトーン処理での選択ルーチンを説明する図である。図10Bは、選択ルーチンで選択されるハーフトーン処理の種類をインクの色毎に示した図である。 第1のハーフトーン処理を説明するための概念図である。 図12Aは、印刷時に行われる処理を説明するフローチャートである。図12Bは、ピエゾ素子に印加される駆動パルスを、インクの種類毎、及び、階調値毎に示した図である。 淡シアンインクや淡マゼンタインクの場合に、ピエゾ素子へ印加される駆動信号を説明する図である。 濃シアンインクや濃マゼンタインクの場合、或いは、イエローインクやブラックインクの場合に、ピエゾ素子へ印加される駆動信号を説明する図である。 図15Aは、第2実施形態におけるヘッドを説明する図である。図15Bは、第2実施形態における制御を説明する図である。 図16Aは、第3実施形態におけるヘッドを説明する図である。図16Bは、第3実施形態における制御を説明する図である。 図17Aは、他の実施形態における淡シアンインクや淡マゼンタインクについての制御を説明する図である。図17Bは、他の実施形態における濃シアンインクや濃マゼンタインクの場合、或いは、イエローインクやブラックインクについての制御を説明する図である。
符号の説明
1 プリンタ,20 用紙搬送機構,21 給紙ローラ,22 搬送モータ,
23 搬送ローラ,24 プラテン,25 排紙ローラ,
30 キャリッジ移動機構,31 キャリッジモータ,32 ガイド軸,
33 タイミングベルト,34 駆動プーリー,35 アイドラプーリー,
40 ヘッドユニット,41 ヘッド,
50 原駆動信号生成回路,60 検出器群,61 リニア式エンコーダ,
62 ロータリー式エンコーダ,63 紙検出器,64 紙幅検出器,
70 プリンタ側コントローラ,71 インタフェース部,72 CPU,
73 メモリ,74 制御ユニット,81 シフトレジスタ,
82 ラッチ回路,83 制御ロジック,84 デコーダ,85 ゲート回路,
86 ヘッド側スイッチ,
100 印刷システム,110 コンピュータ,111 ホスト側コントローラ,
112 インタフェース部,113 CPU,114 メモリ,
120 表示装置,130 入力装置,131 キーボード,132 マウス,
140 記録再生装置,141 フレキシブルディスクドライブ装置,
142 CD−ROMドライブ装置,
S 用紙,SI ドット形成データ,HC ヘッド制御部,PZT ピエゾ素子,
CR キャリッジ,IC インクカートリッジ,
ICk ブラックインクカートリッジ,ICc カラーインクカートリッジ,
ICm カートリッジ側メモリ,TM1 メモリ側接点端子,
TM2 キャリッジ側接点端子,Nz ノズル,
Nk ブラックインクノズル列,Nc シアンインクノズル列,
Nm マゼンタインクノズル列,Ny イエローインクノズル列,
Nlc ライトシアンインクノズル列,Nlm マゼンタインクノズル列,
LAT ラッチ信号,CH チェンジ信号,q0〜q3 スイッチ動作情報,
N_CHG N−チャージ信号,COM 原駆動信号,
SS1 第1区間信号,SS2 第2区間信号,SS3 第3区間信号,
SS4 第4区間信号,SS5 第5区間信号,PS1〜PS5 駆動パルス

Claims (6)

  1. 多段階の入力階調値をそれぞれ有する複数色の画素データから、前記多段階よりも少ない段階の印刷表現可能な少段階の階調値のデータであって、前記複数色に対応する複数色のインクについて形成するドットの大きさを示す前記階調値のデータを前記複数色のそれぞれについて生成する階調値生成手段と、前記階調値に対応した駆動信号を生成する駆動信号生成手段と、前記駆動信号が印加され前記駆動信号に対応する量のインクを吐出する素子を備えたヘッドと、を備えた印刷システムにおいて、
    前記複数色のインクのうち少なくとも一色については、濃インクと淡インクによる同色インクにより構成し
    記同色の濃インクと淡インクについては、前記駆動信号生成手段は、前記生成された前記階調値のうち特定の階調値について当該特定の階調値に対する駆動信号を前記濃インクに対する駆動信号と前記淡インクに対する駆動信号とを異ならせ前記淡インクの吐出量が前記濃インクの吐出量より少なくなるように構成したことを特徴とする印刷システム。
  2. 前記特定の階調値は、前記階調値の中で最も大きなドット階調を示す階調値であることを特徴とする請求項1記載の印刷システム。
  3. 前記複数色のインクのうち、前記濃インクと淡インクによる同色インクにより構成される色以外の色については、一種類の濃度のインクにより構成し、当該一種類の濃度のインクについて、前記駆動信号生成手段は前記生成された前記階調値にそれぞれ対応する前記駆動信号を生成し、前記素子からは前記駆動信号に対応する量のインクが吐出されるように構成するとともに、
    前記複数色のインクは、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックのインクであり、前記一種類の濃度のインクはイエローとブラックのインクであり、前記濃インクと前記淡インクによる同色インクはシアンとマゼンタのインクであることを特徴とする請求項1又は2記載の印刷システム。
  4. 多段階の入力階調値をそれぞれ有する複数色の画素データから、前記多段階よりも少ない段階の印刷表現可能な少段階の階調値のデータであって、前記複数色に対応する複数色のインクについて形成するドットの大きさを示す前記階調値のデータを前記複数色のそれぞれについて生成する階調値生成ステップと、前記階調値に対応した駆動信号を生成する駆動信号生成ステップと、インクを吐出する素子に前記駆動信号が印加され前記駆動信号に対応する量のインクを吐出するステップと、を備えた印刷方法において、
    前記複数色のインクのうち少なくとも一色については、濃インクと淡インクによる同色インクにより構成するステップと
    記同色の濃インクと淡インクについて、前記生成された前記階調値のうち特定の階調値について当該特定の階調値に対する駆動信号を前記濃インクに対する駆動信号と前記淡インクに対する駆動信号とを異ならせ前記淡インクの吐出量が前記濃インクの吐出量より少なくなるように吐出するステップと、を備えたことを特徴とする印刷方法。
  5. 前記特定の階調値は、前記階調値の中で最も大きなドット階調を示す階調値であることを特徴とする請求項4記載の印刷方法。
  6. 前記複数色のインクのうち、前記濃インクと淡インクによる同色インクにより構成される色以外の色については、一種類の濃度のインクにより構成し、当該一種類の濃度のインクについて、前記生成された前記階調値にそれぞれ対応する前記駆動信号を生成し、前記素子からは前記駆動信号に対応する量のインクが吐出されるように構成するとともに、
    前記複数色のインクは、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックのインクであり、前記一種類の濃度のインクはイエローとブラックのインクであり、前記濃インクと前記淡インクによる同色インクはシアンとマゼンタのインクであることを特徴とする請求項4又は5記載の印刷方法。
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