===開示の概要===
本明細書の記載、及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかにされる。
すなわち、インクを吐出させるための動作を実行可能な素子と、前記素子の動作開始から動作終了までを規定する単位信号を複数有する第1駆動信号、及び、前記第1駆動信号における単位信号の発生終了から次の単位信号の発生開始までの期間に、前記素子の動作開始から動作終了までを規定する他の単位信号を発生する第2駆動信号を生成する駆動信号生成回路と、前記第1駆動信号及び前記第2駆動信号を前記素子に印加させるコントローラと、を有する印刷装置が実現できること。
このような印刷装置によれば、素子を動作させるための単位信号及び他の単位信号が、第1駆動信号と第2駆動信号に分散される。そして、第1駆動信号が有する単位信号に関し、その発生間隔は、他の単位信号の発生期間以上に定められる。つまり、第1駆動信号における単位信号の発生周波数を低く抑えることができる。また、第2駆動信号における他の単位信号の発生周波数も低く抑えることができる。これらにより、駆動信号生成回路における第1駆動信号の生成に係わる部分、及び、第2駆動信号の生成に係わる部分に関し、過度な発熱を抑えることができる。従って、素子の動作周波数を落とすことなく、駆動信号生成回路の過度な発熱を抑えることができる。その結果、発熱対策用の部品の大型化を防止でき、ひいては印刷装置の大型化も防止できる。
かかる印刷装置であって、前記第2駆動信号は、前記他の単位信号を複数有し、前記第1駆動信号が有する複数の前記単位信号のそれぞれは、前記第2駆動信号における他の単位信号の発生終了から次の他の単位信号の発生開始までの期間に発生されること。
このような印刷装置によれば、駆動信号生成回路における第1駆動信号の生成に係わる部分の発熱量と、第2駆動信号の生成に係わる部分の発熱量とを近づけることができ、印刷装置の大型化を防止できる。
かかる印刷装置であって、前記単位信号は、前記インクを吐出させるための動作を、前記素子に実行させる吐出用単位信号であり、前記他の単位信号は、前記インクを吐出させるための動作を、前記素子に実行させる他の吐出用単位信号であること。
このような印刷装置によれば、インクの吐出周波数を落とすことなく、駆動信号生成回路全体の発熱を抑えることができる。
かかる印刷装置であって、前記吐出用単位信号と前記他の吐出用単位信号は同じ波形であること。
このような印刷装置によれば、駆動信号生成回路における第1駆動信号の生成に係わる部分の発熱量と、第2駆動信号の生成に係わる部分の発熱量とを均等化できる。その結果、発熱対策用の部品について最適化が図れる。
かかる印刷装置であって、前記駆動信号生成回路は、前記第1駆動信号及び前記第2駆動信号を、所定の繰り返し期間毎に生成する構成が好ましい。また、前記コントローラは、媒体に形成されるドットの大きさに応じて、前記第1駆動信号及び前記第2駆動信号を前記素子に印加させる構成が好ましい。
かかる印刷装置であって、前記コントローラは、 前記吐出用単位信号と前記他の吐出用単位信号が交互に印加されるように、前記第1駆動信号及び前記第2駆動信号を前記素子に印加させること。
このような印刷装置によれば、駆動信号生成回路における第1駆動信号の生成に係わる部分の発熱量と、第2駆動信号の生成に係わる部分の発熱量とを高いレベルで均等化できる。
かかる印刷装置であって、前記単位信号は、前記インクの増粘を防止させるための動作を、前記素子に実行させる増粘防止用単位信号であり、前記他の単位信号は、前記インクの増粘を防止させるための動作を、前記素子に実行させる他の増粘防止用単位信号であること。
このような印刷装置によれば、十分な増粘防止効果を得つつも、駆動信号生成回路全体の発熱を抑えることができる。
かかる印刷装置であって、前記増粘防止用単位信号と前記他の増粘防止用単位信号は同じ波形であること。
このような印刷装置によれば、駆動信号生成回路における第1駆動信号の生成に係わる部分の発熱量と、第2駆動信号の生成に係わる部分の発熱量とを均等化できる。その結果、発熱対策用の部品について最適化が図れる。
かかる印刷装置であって、前記コントローラは、前記増粘防止用単位信号と前記他の増粘防止用単位信号が交互に印加されるように、前記第1駆動信号及び前記第2駆動信号を前記素子に印加させること。
このような印刷装置によれば、駆動信号生成回路における第1駆動信号の生成に係わる部分の発熱量と、第2駆動信号の生成に係わる部分の発熱量とを均等化できる。その結果、発熱対策用の部品について最適化が図れる。
かかる印刷装置であって、前記素子は、ピエゾ素子であることが好ましい。
また、インクを吐出させるための動作を実行可能な素子と、前記素子の動作開始から動作終了までを規定する単位信号を複数有する第1駆動信号、及び、前記第1駆動信号における単位信号の発生終了から次の単位信号の発生開始までの期間に、前記素子の動作開始から動作終了までを規定する他の単位信号を発生する第2駆動信号を生成する駆動信号生成回路と、前記第1駆動信号及び前記第2駆動信号を前記素子に印加させるコントローラと、を有し、前記第2駆動信号は、前記他の単位信号を複数有し、前記第1駆動信号が有する複数の前記単位信号のそれぞれは、前記第2駆動信号における他の単位信号の発生終了から次の他の単位信号の発生開始までの期間に発生され、前記駆動信号生成回路は、前記第1駆動信号及び前記第2駆動信号を、所定の繰り返し期間毎に生成し、前記素子は、ピエゾ素子であり、前記単位信号は、前記インクを吐出させるための動作を、前記素子に実行させる吐出用単位信号であり、前記他の単位信号は、前記インクを吐出させるための動作を、前記素子に実行させる他の吐出用単位信号であり、前記吐出用単位信号と前記他の吐出用単位信号は同じ波形であり、前記コントローラは、媒体に形成されるドットの大きさに応じて、且つ、前記吐出用単位信号と前記他の吐出用単位信号が交互に印加されるように、前記第1駆動信号及び前記第2駆動信号を前記素子に印加させ、又は、前記単位信号は、前記インクの増粘を防止させるための動作を、前記素子に実行させる増粘防止用単位信号であり、前記他の単位信号は、前記インクの増粘を防止させるための動作を、前記素子に実行させる他の増粘防止用単位信号であり、前記増粘防止用単位信号と前記他の増粘防止用単位信号は同じ波形であり、前記コントローラは、前記増粘防止用単位信号と前記他の増粘防止用単位信号が交互に印加されるように、前記第1駆動信号及び前記第2駆動信号を前記素子に印加させる、印刷装置を実現することもできる。
このような印刷装置によれば、既述のほぼ全ての効果を奏するので、本発明の目的が最も有効に達成される。
また、印刷装置と、前記印刷装置の動作を制御する印刷制御装置と、を有する印刷システムであって、前記印刷装置は、インクを吐出させるための動作を実行可能な素子と、前記素子の動作開始から動作終了までを規定する単位信号を複数有する第1駆動信号、及び、前記第1駆動信号における単位信号の発生終了から次の単位信号の発生開始までの期間に、前記素子の動作開始から動作終了までを規定する他の単位信号を発生する第2駆動信号を生成する駆動信号生成回路と、前記第1駆動信号及び前記第2駆動信号を前記素子に印加させるコントローラと、を有する、印刷システムを実現することもできる。
また、インクを吐出させるための動作を実行可能な素子の動作開始から動作終了までを規定する単位信号を複数有する第1駆動信号、及び、前記第1駆動信号における単位信号の発生終了から次の単位信号の発生開始までの期間に、前記素子の動作開始から動作終了までを規定する他の単位信号を発生する第2駆動信号を生成するステップと、前記第1駆動信号及び前記第2駆動信号を前記素子に印加させるステップと、を有する印刷方法を実現することもできる。
===印刷システムの構成===
<全体構成について>
まず、印刷装置を印刷システムとともに説明する。なお、印刷システムとは、印刷装置と、この印刷装置の動作を制御する印刷制御装置とを少なくとも含むシステムのことである。
図1は、印刷システム100の構成を説明する図である。例示した印刷システム100は、印刷装置としてのプリンタ1と、印刷制御装置としてのコンピュータ110とを含んでいる。具体的には、この印刷システム100は、プリンタ1と、コンピュータ110と、表示装置120と、入力装置130と、記録再生装置140とを有している。
プリンタ1は、用紙、布、フィルム等の媒体に画像を印刷する。なお、この媒体に関し、以下の説明では、代表的な媒体である用紙S(図3Aを参照。)を例に挙げて説明する。コンピュータ110は、プリンタ1と通信可能に接続されている。そして、プリンタ1に画像を印刷させるため、コンピュータ110は、その画像に応じた印刷データをプリンタ1に出力する。このコンピュータ110には、アプリケーションプログラムやプリンタドライバ等のコンピュータプログラムがインストールされている。表示装置120は、ディスプレイを有している。この表示装置120は、例えば、コンピュータプログラムのユーザーインタフェースを表示するためのものである。入力装置130は、例えば、キーボード131やマウス132である。記録再生装置140は、例えば、フレキシブルディスクドライブ装置141やCD−ROMドライブ装置142である。
===コンピュータ===
<コンピュータ110の構成について>
図2は、コンピュータ110、及びプリンタ1の構成を説明するブロック図である。まず、コンピュータ110の構成について簡単に説明する。
このコンピュータ110は、前述した記録再生装置140と、ホスト側コントローラ111とを有している。記録再生装置140は、ホスト側コントローラ111と通信可能に接続されており、例えばコンピュータ110の筐体に取り付けられている。ホスト側コントローラ111は、コンピュータ110における各種の制御を行うものであり、前述した表示装置120や入力装置130も通信可能に接続されている。このホスト側コントローラ111は、インタフェース部112と、CPU113と、メモリ114とを有する。インタフェース部112は、プリンタ1との間に介在し、データの受け渡しを行う。CPU113は、コンピュータ110の全体的な制御を行うための演算処理装置である。メモリ114は、CPU113が使用するコンピュータプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM、ROM、磁気ディスク装置等によって構成される。このメモリ114に格納されるコンピュータプログラムとしては、前述したように、アプリケーションプログラムやプリンタドライバがある。そして、CPU113は、メモリ114に格納されているコンピュータプログラムに従って各種の制御を行う。
プリンタドライバは、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換する機能をコンピュータ110に実現させる。そして、プリンタ1は、コンピュータ110からの印刷データを受信することで印刷動作を実行する。言い換えると、コンピュータ110は、印刷データを介してプリンタ1の動作を制御しているといえる。従って、コンピュータ110は、このプリンタドライバによって、印刷制御装置として機能する。そして、プリンタドライバは、画像データを印刷データに変換する機能を実現させるためのコードを有する。
印刷データは、プリンタ1が解釈できる形式のデータであって、各種のコマンドデータと、画素データとを有する。コマンドデータとは、プリンタ1に特定の動作の実行を指示するためのデータである。このコマンドデータには、例えば、給紙を指示するコマンドデータ、搬送量を示すコマンドデータ、排紙を指示するコマンドデータがある。また、画素データは、印刷される画像の画素に関するデータである。ここで、画素とは、用紙上に仮想的に定められた方眼状の升目である。この画素は、ドットが形成される領域を示す。そして、印刷データにおける画素データは、用紙上に形成されるドットに関するデータ(例えば、ドットの大きさのデータ)に変換される。本実施形態において、画素データは2ビットのデータによって構成されている。すなわち、この画素データには、ドット無しに対応する画素データ「00」と、小ドットに対応する画素データ「01」と、中ドットの形成に対応する画素データ「10」と、大ドットに対応する画素データ「11」とがある。従って、このプリンタ1は4階調でドットの形成ができる。
そして、プリンタドライバは、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換するため、解像度変換処理、色変換処理、ハーフトーン処理、ラスタライズ処理などを行う。また、プリンタドライバは、フレキシブルディスクFDやCD−ROMなどの記録媒体(コンピュータ読み取り可能な記録媒体)に記録された状態で提供される。また、プリンタドライバは、インターネットを介してコンピュータ110にダウンロードすることも可能である。
===プリンタ===
<プリンタ1の構成について>
次に、プリンタ1の構成について説明する。ここで、図3Aは、本実施形態のプリンタ1の構成を示す図である。図3Bは、本実施形態のプリンタ1の全体構成の横断面図である。なお、以下の説明では、図2のブロック図も参照する。
図2に示すように、プリンタ1は、用紙搬送機構20、キャリッジ移動機構30、ヘッドユニット40、検出器群50、プリンタ側コントローラ60、及び駆動信号生成回路70を有する。なお、本実施形態において、プリンタ側コントローラ60及び駆動信号生成回路70は、共通のコントローラ基板CTRに設けられている。また、ヘッドユニット40は、ヘッド制御部HCと、ヘッド41とを有している。
このプリンタ1では、プリンタ側コントローラ60によって制御対象部、すなわち用紙搬送機構20、キャリッジ移動機構30、ヘッドユニット40(ヘッド制御部HC,ヘッド41)、及び駆動信号生成回路70が制御される。これにより、プリンタ側コントローラ60は、コンピュータ110から受け取った印刷データに基づき、用紙Sに画像を印刷させる。また、検出器群50の各検出器は、プリンタ1内の状況を監視している。そして、各検出器は、検出結果をプリンタ側コントローラ60に出力する。各検出器からの検出結果を受けたプリンタ側コントローラ60は、その検出結果に基づいて制御対象部を制御する。
用紙搬送機構20は、媒体を搬送させる媒体搬送部に相当する。この用紙搬送機構20は、用紙Sを印刷可能な位置に送り込んだり、この用紙Sを搬送方向に所定の搬送量で搬送させたりするものである。この搬送方向は、次に説明するキャリッジ移動方向と交差する方向である。そして、図3A及び図3Bに示すように、用紙搬送機構20は、給紙ローラ21と、搬送モータ22と、搬送ローラ23と、プラテン24と、排紙ローラ25とを有する。給紙ローラ21は、紙挿入口に挿入された用紙Sをプリンタ1内に自動的に送るためのローラであり、この例ではD形の断面形状をしている。搬送モータ22は、用紙Sを搬送方向に搬送させるためのモータであり、その動作は、プリンタ側コントローラ60によって制御される。搬送ローラ23は、給紙ローラ21によって送られてきた用紙Sを、印刷可能な領域まで搬送するためのローラである。この搬送ローラ23の動作も搬送モータ22によって制御される。プラテン24は、印刷中の用紙Sを、この用紙Sの裏面側から支持する部材である。排紙ローラ25は、印刷が終了した用紙Sを搬送するためのローラである。
キャリッジ移動機構30は、ヘッドユニット40が取り付けられたキャリッジCRをキャリッジ移動方向に移動させるためのものである。キャリッジ移動方向には、一側から他側への移動方向と、他側から一側への移動方向が含まれている。なお、ヘッドユニット40はヘッド41を有するので、キャリッジ移動方向はヘッド41の移動方向に相当し、キャリッジ移動機構30はヘッド41を移動方向に移動させるヘッド移動部に相当する。そして、このキャリッジ移動機構30は、キャリッジモータ31と、ガイド軸32と、タイミングベルト33と、駆動プーリー34と、従動プーリー35とを有する。キャリッジモータ31は、キャリッジCRを移動させるための駆動源に相当する。このキャリッジモータ31は、プリンタ側コントローラ60によって動作が制御される。そして、キャリッジモータ31の回転軸には、駆動プーリー34が取り付けられている。この駆動プーリー34は、キャリッジ移動方向の一端側に配置されている。駆動プーリー34とは反対側のキャリッジ移動方向の他端側には、従動プーリー35が配置されている。タイミングベルト33は、キャリッジCRに接続されているとともに、駆動プーリー34と従動プーリー35に架け渡されている。ガイド軸32は、キャリッジCRを移動可能な状態で支持する。このガイド軸32は、キャリッジ移動方向に沿って取り付けられている。従って、キャリッジモータ31が動作すると、キャリッジCRは、このガイド軸32に沿ってキャリッジ移動方向に移動する。
ヘッドユニット40は、インクを用紙Sに向けて吐出させるためのものである。ここで、図4は、ヘッドユニット40の分解斜視図である。図5Aは、ヘッド41の構造を説明する断面図である。図5Bは、ノズルNzの配置を説明する図である。
このヘッドユニット40は、例えば、図4に示す構造をしている。すなわち、ヘッドユニット40は、ヘッド41と、針側ケース部材42と、ヘッド側ケース部材43を有している。針側ケース部材42は、インクカートリッジIC(図3Aを参照)に挿入されるインク供給針421を有する部材であり、例えば樹脂を成型することで作成される。また、ヘッド側ケース部材43は、ヘッド41が取り付けられる部材であり、例えば樹脂を成型することで作成される。このヘッド側ケース部材43には、基板配置部431が設けられている。基板配置部431は、ヘッド制御基板44が配置される部分であり、略長方形の窪部によって形成されている。そして、ヘッド制御基板44とヘッド41とは、フィルム状のヘッド側配線部材45によって電気的に接続される。すなわち、ヘッド側配線部材45は、一端側の部分がヘッド41のピエゾ素子417(PZT,図5Aを参照。)と電気的に接続され、他端側の部分がヘッド制御基板44と電気的に接続されている。このヘッド制御基板44には、ヘッド41を制御するためのヘッド制御部HC(サブコントローラ)と、コネクタ441とが設けられている。なお、ヘッド制御部HCについては、後で説明する。そして、ヘッド制御基板44とプリンタ側コントローラ60とは、フィルム状のコントローラ側配線基板FC(図3Aを参照)によって電気的に接続されている。
このヘッドユニット40が有するヘッド41は、例えば、図5Aに示す構造を有している。例示したヘッド41は、流路ユニット41Aと、アクチュエータユニット41Bとを有する。流路ユニット41Aは、ノズルNzが設けられたノズルプレート411と、インク貯留室412aとなる開口部が形成された貯留室形成基板412と、インク供給口413aが形成された供給口形成基板413とを有している。そして、貯留室形成基板412の一方の表面にはノズルプレート411が接着され、他方の表面には供給口形成基板413が接着されている。アクチュエータユニット41Bは、圧力室414aとなる開口部が形成された圧力室形成基板414と、圧力室414aの一部を区画する振動板415と、供給側連通口416aとなる開口部が形成された蓋部材416と、振動板415の表面に形成されたピエゾ素子417とを有している。そして、このヘッド41には、インク貯留室412aから圧力室414aを通ってノズルNzに至る一連の流路が形成されている。使用時において、この流路はインクで満たされており、ピエゾ素子417を変形させることで、対応するノズルNzからインクを吐出させることができる。従って、このヘッド41において、ピエゾ素子417は、インクを吐出させるための動作を実行可能な素子に相当する。
また、図5Bに示すように、各ノズルNzは、吐出させるインクの種類毎にグループ分けされており、各グループによってノズル列が構成されている。例示したヘッド41は、ブラックインクノズル列Nkと、シアンインクノズル列Ncと、マゼンタインクノズル列Nmと、イエローインクノズル列Nyからなる4列のノズル列を有し、4色のインクを吐出可能である。そして、各ノズル列は、n個(本実施形態では、n=180)のノズルNzを有している。これらのノズル列において、各ノズルNzは、所定の配列方向(この例では搬送方向)に沿って一定の間隔(ノズルピッチ:k・D)で配列されている。ここで、Dは、搬送方向における最小のドットピッチ、つまり、用紙Sに形成されるドットの最高解像度での間隔である。また、kは、最小のドットピッチDとノズルピッチとの関係を表す係数であり、1以上の整数に定められる。
また、このプリンタ1では、前述したように、画素データ「00」に対応するドット無し、画素データ「01」に対応する小ドットの形成、画素データ「10」に対応する中ドットの形成、及び画素データ「11」に対応する大ドットの形成という4種類の制御ができる。このため、各ノズルNzからは、量が異なる複数種類のインクを吐出させることができる。例えば、各ノズルNzからは、大ドットを形成し得る量の大インク滴、中ドットを形成し得る量の中インク滴、及び小ドットを形成し得る量の小インク滴からなる3種類のインクを吐出させることができる。なお、画素データと吐出されるインクの関係については、後で説明する。
検出器群50は、プリンタ1の状況を監視するためのものである。この検出器群50には、リニア式エンコーダ51、ロータリー式エンコーダ52、紙検出器53、及び紙幅検出器54等が含まれている。リニア式エンコーダ51は、キャリッジCR(ヘッド41,ノズルNz)のキャリッジ移動方向の位置を検出するためのものである。ロータリー式エンコーダ52は、搬送ローラ23の回転量を検出するためのものである。紙検出器53は、印刷される用紙Sの先端位置を検出するためのものである。紙幅検出器54は、印刷される用紙Sの幅を検出するためのセンサである。
プリンタ側コントローラ60は、プリンタ1の制御を行うものである。このプリンタ側コントローラ60は、駆動信号COM(第1駆動信号COM_A及び第2駆動信号COM_B,図13Aを参照。)を、ピエゾ素子417に印加させるコントローラに相当する。また、このプリンタ側コントローラ60は、図2に示すように、インタフェース部61と、CPU62と、メモリ63と、制御ユニット64とを有する。インタフェース部61は、外部装置であるコンピュータ110との間で、データの受け渡しを行う。CPU62は、プリンタ1の全体的な制御を行うための演算処理装置である。メモリ63は、CPU62のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM、ROM等の記憶素子によって構成される。そして、CPU62は、メモリ63に格納されているコンピュータプログラムに従い、各制御対象部を制御する。例えば、CPU62は、制御ユニット64を介して用紙搬送機構20やキャリッジ移動機構30を制御する。また、CPU62は、ヘッド41の動作を制御するためのヘッド制御信号(クロック信号CLK,画素データSI,ラッチ信号LAT,第1チェンジ信号CH_A,第2チェンジ信号CH_B,全オン信号N_CHG,図10を参照。)をヘッド制御部HCに出力する。さらに、CPU62は、駆動信号COMを生成させるための制御信号を駆動信号生成回路70に出力したりする。
駆動信号生成回路70は、共通に使用される駆動信号COMを生成する。本実施形態の駆動信号COMは、一つのノズル列に対応する全てのピエゾ素子417に対して共通に使用される。ここで、図6は、駆動信号生成回路70の構成を説明するブロック図である。
この駆動信号生成回路70は、複数種類の駆動信号COMを同時に生成できる。本実施形態の駆動信号生成回路70は、第1駆動信号COM_Aを生成する第1駆動信号生成部70Aと、第2駆動信号COM_Bを生成する第2駆動信号生成部70Bを有している。そして、第1駆動信号生成部70Aは、第1波形生成回路71Aと第1電流増幅回路72Aを有し、第2駆動信号生成部70Bは、第2波形生成回路71Bと第2電流増幅回路72Bを有する。なお、第1波形生成回路71Aと第2波形生成回路71Bは同じ構成であり、第1電流増幅回路72Aと第2電流増幅回路72Bは同じ構成である。このため、以下の説明は、主として、第1波形生成回路71Aと第1電流増幅回路72Aについて行う。
図7は、第1波形生成回路71A及び第2波形生成回路71Bの構成を説明するためのブロック図である。なお、第2波形生成回路71Bの構成は、括弧付きの符号で示している。第1波形生成回路71Aは、メモリ711Aと、第1ラッチ回路712Aと、加算器713Aと、第2ラッチ回路714Aと、デジタルアナログ変換器(D/A変換器)715Aと、電圧増幅回路716Aとを有する。
メモリ711Aは、複数種類の電圧変化量のデータを、アドレスに対応させて記憶する。このメモリ711Aは、第1クロック信号の入力端子と、データ信号の入力端子と、アドレス信号の入力端子と、イネーブル信号の入力端子と、データ信号の出力端子とを有する。データ信号は、電圧変化量を示すものである。アドレス信号は、電圧変化量のデータが格納される格納アドレス、或いは、読み出される電圧変化量のデータの読み出しアドレスを示すものである。そして、メモリ711Aは、アドレス信号で指定される格納アドレスに、電圧変化量のデータを格納する。この電圧変化量のデータは、第1クロック信号の入力端子、データ信号の入力端子、アドレス信号の入力端子、及びイネーブル信号の入力端子から必要な信号を入力することで格納される。また、メモリ711Aは、読み出しアドレスで指定される電圧変化量のデータを、第1ラッチ回路712Aに出力する。この読み出しアドレスも、アドレス信号の入力端子から入力されたアドレス信号で指定される。
第1ラッチ回路712Aは、メモリ711Aに電気的に接続されており、第2クロック信号が入力される毎に、メモリ711Aに格納された電圧変化量のデータを読み出す。言い換えれば、メモリ711Aから出力されている電圧変化量のデータをラッチする。加算器713Aには、第1ラッチ回路712Aの出力と第2ラッチ回路714Aの出力とが入力される。そして、加算器713Aの出力は、第2ラッチ回路714Aに入力されている。すなわち、この加算器713Aは、第1ラッチ回路712Aの出力と第2ラッチ回路714Aの出力とを加算した加算値を出力する。第2ラッチ回路714Aは、第3クロック信号が入力される毎に、加算器713Aから出力される加算値をラッチする。
デジタルアナログ変換器715Aは、第2ラッチ回路714Aからの出力、すなわち、加算器713Aから出力された加算値をアナログ信号に変換する。電圧増幅回路716Aは、デジタルアナログ変換器715Aの出力と電気的に接続されている。この電圧増幅回路716Aは、デジタルアナログ変換器715Aから出力されたアナログ信号の電圧を、ピエゾ素子417が駆動可能な電圧に増幅する。
次に、この第1波形生成回路71Aの動作の具体例について説明する。詳しくは、メモリ711Aと、第1ラッチ回路712Aと、加算器713Aと、第2ラッチ回路714Aの動作について説明する。ここで、図8は、第1波形生成回路71Aの動作を説明する図である。
プリンタ側コントローラ60のCPU62は、アドレス信号をメモリ711Aに出力する。メモリ711Aは、アドレス信号で指定された読み出しアドレスのデータを出力する(t0〜)。この例において、CPU62は、アドレスBを示すアドレス信号を出力し、メモリ711Aは、電圧変化量のデータとして電圧値△V1を出力する。次に、CPU62は、第2クロック信号をHレベルに切り替える(t1)。つまり、クロックパルスを出力する。このクロックパルスを受け取った第1ラッチ回路712Aは、電圧値△V1をラッチする。その後、CPU62は、読み出しアドレスを変更する(t3〜)。これにより、CPU62は、アドレスAを示すアドレス信号を出力し、メモリ711Aは、電圧変化量のデータとして電圧値0を出力する。また、CPU62は、第3クロック信号を周期△T毎にHレベルに切り替える。つまり、クロックパルスを出力する。このクロックパルスを受け取る毎に、第2ラッチ回路714Aの出力は電圧△V1だけ上昇する(t2,t4,t5)。
次に、CPU62は、第2クロック信号をHレベルに切り替える(t6)。このクロックパルスを受け取った第1ラッチ回路712Aは、アドレスAに対応する電圧値0をラッチする。このため、第3クロック信号がHレベルに切り換わっても、第2ラッチ回路714Aの出力は一定電位を維持する(t7,t9)。また、CPU62は、読み出しアドレスをアドレスCに変更し(t8〜)、電圧変化量のデータとして電圧値−△V2をメモリ711Aから出力させる。この電圧値−△V2は、次に第2クロック信号がHレベルとなったタイミング(t10)で、第1ラッチ回路712Aにラッチされる。このため、第3クロック信号がHレベルになる毎に、第2ラッチ回路714Aの出力は電圧−△V2だけ降下する(t11〜)。
次に、第1電流増幅回路72Aについて説明する。ここで、図9Aは、電流増幅回路72A,72Bの構成を説明する図である。図9Bは、トランジスタ対721A,721Bとヒートシンク722A,722Bの構成を説明する図である。
図9Aに示すように、第1電流増幅回路72Aは、第1駆動信号COM_Aの電位の変化に伴って発熱する第1トランジスタ対721Aを有する。そして、この第1トランジスタ対721Aは、互いのエミッタ端子同士が接続されたNPN型のトランジスタQ1とPNP型のトランジスタQ2を有する。NPN型のトランジスタQ1は、駆動信号COMの電位上昇時に動作するトランジスタである。このNPN型のトランジスタQ1は、コレクタが電源に、エミッタが第1駆動信号COM_Aの出力信号線に、それぞれ接続されている。PNP型のトランジスタQ2は、電位降下時に動作するトランジスタである。PNP型のトランジスタQ2は、コレクタが接地(アース)に、エミッタが第1駆動信号COM_Aの出力信号線に、それぞれ接続されている。なお、NPN型のトランジスタQ1とPNP型のトランジスタQ2のエミッタ同士が接続されている部分の電位(第1駆動信号COM_Aの電位)は、符号FBで示すように、電圧増幅回路716Aへフィードバックされている。
そして、この第1電流増幅回路72A、すなわち第1トランジスタ対721Aは、第1波形生成回路71Aからの出力信号によって動作が制御される。例えば、出力信号の電位が上昇状態にあると、制御信号S_Q1によってNPN型のトランジスタQ1がオン状態となる。これに伴い、第1駆動信号COM_Aの電位も上昇する。一方、出力信号の電位が降下状態にあると、制御信号S_Q2によってPNP型のトランジスタQ2がオン状態となる。これに伴い、第1駆動信号COM_Aの電位も降下する。なお、出力信号が定電位である場合、NPN型のトランジスタQ1もPNP型のトランジスタQ2もオフ状態となる。その結果、第1駆動信号COM_Aは一定電位となる。
また、この第1トランジスタ対721Aには、共通のヒートシンク722Aが取り付けられている。すなわち、ヒートシンク722Aは、第1トランジスタ対721Aを構成するNPN型のトランジスタQ1とPNP型のトランジスタQ2の両方に接触している。そして、これらのNPN型のトランジスタQ1及びPNP型のトランジスタQ2が発生する熱を外部に放出する。
次に、第2波形生成回路71B及び第2電流増幅回路72Bについて簡単に説明する。前述したように、第2波形生成回路71Bの構成は、第1波形生成回路71Aの構成と同じであり、第2電流増幅回路72Bの構成は、第1電流増幅回路72Aの構成と同じである。すなわち、第2波形生成回路71Bは、メモリ711Bと、第1ラッチ回路712Bと、加算器713Bと、第2ラッチ回路714Bと、デジタルアナログ変換器715Bと、電圧増幅回路716Bとを有する。また、第2電流増幅回路72Bは、第2駆動信号COM_Bの電位の変化に伴って発熱する第2トランジスタ対721Bを有する。そして、第2トランジスタ対721Bは、互いのエミッタ端子同士が接続されたNPN型のトランジスタQ1とPNP型のトランジスタQ2を有する。また、この第2トランジスタ対721Bには、共通のヒートシンク722Bが取り付けられている。
次に、ヘッド制御部HCについて説明する。ここで、図10は、ヘッド制御部HCの構成を説明するブロック図である。図10に示すように、ヘッド制御部HCは、第1シフトレジスタ81Aと、第2シフトレジスタ81Bと、第1ラッチ回路82Aと、第2ラッチ回路82Bと、デコーダ83と、制御ロジック84と、防止回路85と、第1レベルシフタ86Aと、第2レベルシフタ86Bと、第1スイッチ87Aと、第2スイッチ87Bを備えている。制御ロジック84を除いた各部、すなわち、第1シフトレジスタ81Aと、第2シフトレジスタ81Bと、第1ラッチ回路82Aと、第2ラッチ回路82Bと、デコーダ83と、防止回路85と、第1レベルシフタ86Aと、第2レベルシフタ86Bと、第1スイッチ87Aと、第2スイッチ87Bは、それぞれピエゾ素子417毎に設けられる。そして、ピエゾ素子417はインクが吐出されるノズルNz毎に設けられるので、これらの各部もノズルNz毎に設けられる。
ヘッド制御部HCは、プリンタ側コントローラ60からの印刷データ(画素データSI)に基づき、インクを吐出させるための制御を行う。本実施形態では、画素データが2ビットで構成されており、クロック信号CLKに同期して、この画素データが記録ヘッド41へ送られてくる。この画素データは、上位ビット群から下位ビット群の順で送られる。例えば、ノズルNz(#1)の上位ビット、ノズルNz(#2)の上位ビット、…、ノズルNz(#179)の上位ビット、ノズルNz(#180)の上位ビット、ノズルNz(#1)の下位ビット、ノズルNz(#2)の下位ビット、…、ノズルNz(#179)の下位ビット、ノズルNz(#180)の下位ビットの順で送られてくる。このため、まず、画素データの上位ビット群が第2シフトレジスタ81Bにセットされる。全てのノズルNzについて画素データの上位ビット群が第2シフトレジスタ81Bにセットされると、続いて画素データの下位ビット群が第2シフトレジスタ81Bにセットされる。この画素データの下位ビット群のセットに伴い、画素データの上位ビット群はシフトして第1シフトレジスタ81Aにセットされる。
第1シフトレジスタ81Aには第1ラッチ回路82Aが電気的に接続され、第2シフトレジスタ81Bには第2ラッチ回路82Bが電気的に接続されている。そして、プリンタ側コントローラ60からのラッチ信号LATがHレベルになると、つまり、ラッチパルスが第1ラッチ回路82A及び第2ラッチ回路82Bに入力されると、第1ラッチ回路82Aは画素データの上位ビットをラッチし、第2ラッチ回路82Bは画素データの下位ビットをラッチする。第1ラッチ回路82A及び第2ラッチ回路82Bでラッチされた画素データ(上位ビットと下位ビットの組)はそれぞれ、デコーダ83に入力される。このデコーダ83は、画素データの上位ビット及び下位ビットに基づいてデコードを行い、第1駆動信号COM_A及び第2駆動信号COM_Bを構成する波形部SS11〜SS16,SS21〜SS26(図13Aを参照。後述する。)を選択するための選択データを生成する。
本実施形態における選択データは、第1駆動信号COM_Aと第2駆動信号COM_Bとに分けて生成される。すなわち、第1駆動信号COM_Aに対応する第1選択データは、第1波形部SS11から第6波形部SS16のそれぞれに対応する6ビットのデータによって構成される。同様に、第2駆動信号COM_Bに対応する第2選択データもまた、第1波形部SS21から第6波形部SS26のそれぞれに対応する6ビットのデータによって構成される。このような動作をするデコーダ83は、選択データ生成部に相当し、2ビットの画素データ(階調データ)から6ビットの選択データを、駆動信号COMの数だけ生成する。
また、デコーダ83には、制御ロジック84からのタイミング信号も入力されている。この制御ロジック84は、プリンタ側コントローラ60と共にタイミング信号生成部として機能しており、ラッチ信号LATやチェンジ信号CH_A,CH_Bに基づいてタイミング信号生成する。このタイミング信号も駆動信号COM毎に生成される。すなわち、第1駆動信号COM_A用の第1タイミング信号TIM_Aと、第2駆動信号COM_B用の第2タイミング信号TIM_Bが生成される。そして、図13Aに示すように、第1タイミング信号TIM_Aでは、ラッチパルスと、第1駆動信号COM_A用のチェンジパルスの発生タイミングに同期してタイミングパルスが発生される。また、第2タイミング信号TIM_Bは、ラッチパルスと、第2駆動信号COM_B用のチェンジパルスに同期してタイミングパルスが発生される。
デコーダ83によって生成された6ビットの選択データは、タイミングパルスによって規定されるタイミングで上位ビット側から順に、出力される。出力された選択データは、防止回路85を通った後に、第1レベルシフタ86Aや第2レベルシフタ86Bに入力される。すなわち、第1タイミング信号TIM_Aが有するタイミングパルスの立ち上がりタイミングに同期して、第1選択データが第1レベルシフタ86Aに入力される。また、第2タイミング信号TIM_Bが有するタイミングパルスの立ち上がりタイミングに同期して、第2選択データが第2レベルシフタ86Bに入力される。
第1レベルシフタ86A及び第2レベルシフタ86Bは、電圧増幅器として機能する。すなわち、これらの第1レベルシフタ86A及び第2レベルシフタ86Bは、選択データが[1]の場合に、対応するスイッチ(第1スイッチ87A,第2スイッチ87B)を駆動な程度の電圧まで昇圧されたオン信号を出力する。例えば、第1選択データが[1]の場合には、数十ボルトに昇圧されたオン信号が第1スイッチ87Aに出力される。同様に、第2選択データが[1]の場合には、数十ボルトに昇圧されたオン信号が第2スイッチ87Bに出力される。
なお、本実施形態では、デコーダ83と、第1レベルシフタ86A及び第2レベルシフタ86Bの間に、防止回路85が配置されている。この防止回路85は、一つのピエゾ素子417に対して、第1駆動信号COM_A及び第2駆動信号COM_Bが同時に印加されることを防止するためのものである。この防止回路85は、例えば、ロジック回路によって構成される。
そして、第1スイッチ87Aの入力側には駆動信号生成回路70からの第1駆動信号COM_Aが印加されており、第2スイッチ87Bの入力側には第2駆動信号COM_Bが印加されている。また、第1スイッチ87Aと第2スイッチ87Bの共通の出力側にはピエゾ素子417が電気的に接続されている。これらの第1スイッチ87A及び第2スイッチ87Bは、発生される駆動信号COM毎に設けられるスイッチである。そして、第1駆動信号COM_Aを構成する波形部SS11〜SS16と、第2駆動信号COM_Bを構成する波形部SS21〜SS26を、ピエゾ素子417へ選択的に印加させる。
選択データは、第1スイッチ87A及び第2スイッチ87Bの動作を制御する。すなわち、第1スイッチ87Aに入力された選択データが[1]である期間には、この第1スイッチ87Aが接続状態になり、第1駆動信号COM_Aがピエゾ素子417に印加される。同様に、第2スイッチ87Bに入力された選択データが[1]である期間には、第2駆動信号COM_Bがピエゾ素子417に印加される。そして、ピエゾ素子417の電位は、印加された第1駆動信号COM_A若しくは第2駆動信号COM_Bに応じて定まる。一方、第1スイッチ87Aに入力された選択データ及び第2スイッチ87Bに入力された選択データが共に[0]の期間において、第1レベルシフタ86A及び第2レベルシフタ86Bからは、第1スイッチ87A及び第2スイッチ87Bを動作させるための電気信号は出力されない。ここで、ピエゾ素子417はコンデンサの様に振る舞い、駆動信号COMの印加が停止された場合において停止直前の電位を維持する。従って、駆動信号COMの印加が停止されている期間において、ピエゾ素子417は、駆動信号COMの印加が停止される直前の変形状態を維持する。なお、選択データの内容については、後で詳しく説明する。
<印刷動作について>
前述した構成を有するプリンタ1では、プリンタ側コントローラ60が、メモリ63に格納されたコンピュータプログラムに従って、制御対象部(用紙搬送機構20、キャリッジ移動機構30、ヘッドユニット40、駆動信号生成回路70)を制御する。従って、このコンピュータプログラムは、この制御を実行するためのコードを有する。そして、制御対象部を制御することで、用紙Sに対する印刷動作が行われる。
ここで、図11は、印刷動作を説明するフローチャートである。例示した印刷動作は、印刷命令の受信動作(S10)、給紙動作(S20)、ドット形成動作(S30)、搬送動作(S40)、排紙判断(S50)、排紙処理(S60)、及び印刷終了判断(S70)を有している。以下、各動作について、簡単に説明する。
印刷命令の受信動作(S10)は、コンピュータ110からの印刷命令を受信する動作である。この動作において、プリンタ側コントローラ60はインタフェース部61を介して印刷命令を受信する。
給紙動作(S20)は、印刷対象となる用紙Sを移動させ、印刷開始位置(所謂頭出し位置)に位置決めする動作である。この動作において、プリンタ側コントローラ60は、搬送モータ22を駆動するなどして、給紙ローラ21や搬送ローラ23を回転させる。
ドット形成動作(S30)は、用紙Sにドットを形成するための動作である。この動作において、プリンタ側コントローラ60は、キャリッジモータ31を駆動したり、駆動信号生成部やヘッド41に対して制御信号を出力したりする。これにより、ヘッド41の移動中にノズルNzからインクが吐出され、用紙Sにドットが形成される。
搬送動作(S40)は、用紙Sを搬送方向へ移動させる動作である。この動作において、プリンタ側コントローラ60は、搬送モータ22を駆動して搬送ローラ23を回転させる。この搬送動作により、先程のドット形成動作によって形成されたドットとは異なる位置に、ドットを形成することができる。
排紙判断(S50)は、印刷対象となっている用紙Sに対する排出の要否を判断する動作である。この判断は、例えば、印刷データの有無に基づき、プリンタ側コントローラ60によって行われる。
排紙処理(S60)は、用紙Sを排出させる処理であり、先程の排紙判断で「排紙する」と判断されたことを条件に行われる。この場合、プリンタ側コントローラ60は、排紙ローラ25を回転させることで、印刷済みの用紙Sを外部に排出させる。
印刷終了判断(S70)は、印刷を続行するか否かの判断である。この判断も、プリンタ側コントローラ60によって行われる。
===本実施形態の概要===
<駆動信号の消費電力とヒートシンクについて>
このプリンタ1において、駆動信号生成回路70は、駆動信号COMの生成に伴って発熱する。この発熱は種々の要因によって生じるが、最も発熱する部分は第1電流増幅回路72A及び第2電流増幅回路72Bである。これらの第1電流増幅回路72A及び第2電流増幅回路72Bは、第1駆動信号COM_A及び第2駆動信号COM_Bの生成時において、NPN型のトランジスタQ1におけるコレクタ損失と、PNP型のトランジスタQ2のコレクタ損失によって発熱する。そして、発熱するということは、その分だけ電力を消費しているといえる。
ここで、駆動信号COMが有する駆動パルスPSと消費電力の関係について説明する。図12Aは、駆動パルスPSとトランジスタ対(第1トランジスタ対721A,第2トランジスタ対721B)の消費電力とを模式的に説明する図である。図12Bは、参考例の駆動信号COM´を説明する図である。参考例の駆動信号COM´は、ラッチ信号LATのタイミングで規定される繰り返し周期Tに、6個の駆動パルスPSを有する。なお、図12Bの駆動信号COM´は、単一の信号として駆動信号生成回路から発生される。
図12Aに例示した駆動パルスPSは、ピエゾ素子417の動作開始から動作終了までを規定する単位信号の一種である。この駆動パルスPSがピエゾ素子417に印加されると、ノズルNzからインクが吐出される。このため、この駆動パルスPSは、吐出用単位信号に相当する。この駆動パルスPSは、中間電位Vcから最低電位VLまで一定勾配で電位を下降させる第1放電要素WE1と、最低電位VLを維持する第1定電位要素WE2と、最低電位VLから最高電位VHまで一定の勾配で電位を上昇させる充電要素WE3と、最高電位VHを維持する第2定電位要素WE4と、最高電位VHから中間電位Vcまで一定勾配で電位を下降させる第2放電要素WE5を有している。
そして、本実施形態において、この駆動パルスPSが印加されるピエゾ素子417は、その電位が高くなる程に圧力室414aを収縮させるように変形するものである。このため、第1放電要素WE1がピエゾ素子417に印加される(t21−t22)と、圧力室414aは、中間電位Vcに対応する容積から最低電位VLに対応する容積まで膨張する。従って、この第1放電要素WE1は、圧力室414aを膨張させるための膨張要素に相当する。続いて、第1定電位要素WE2がピエゾ素子417に印加される(t22−t23)。この第1定電位要素WE2の印加により、圧力室414aの膨張状態が維持される。従って、この第1放電要素WE1は、圧力室414aの膨張状態を維持させるための膨張維持要素に相当する。続いて、充電要素WE3がピエゾ素子417に印加される(t23−t24)。充電要素WE3の印加により、圧力室414aは、最高電位VHに対応する容積まで収縮される。そして、この充電要素WE3の印加時間は、ピエゾ素子417が応答し得る程度の極めて短い時間に定められる。その結果、圧力室414aが急速に収縮し、ノズルNzからインクが吐出される。従って、この充電要素WE3は、圧力室414aを急速に収縮させてインクを吐出させるための吐出要素に相当する。続いて、第2定電位要素WE4がピエゾ素子417に印加される(t24−t25)。この第2定電位要素WE4の印加により、圧力室414aの収縮状態が維持される。従って、この第2定電位要素WE4は、圧力室414aの収縮状態を維持させるための収縮維持要素に相当する。続いて、第2放電要素WE5がピエゾ素子417に印加される(t25−t26)。この第2放電要素WE5の印加により、圧力室414aは、最高電位VHに対応する容積から中間電位Vcに対応する容積まで膨張する。そして、この膨張により、インクの吐出によって生じた圧力室414a内の圧力変動が効果的に抑制される。そして、圧力室414a内の圧力変動が抑制されることから、次のインクを短い時間で吐出させても、インクの量や飛行方向等を安定化することができる。従って、この第2放電要素WE5は、圧力室414a内の圧力変動を抑制する変動抑制要素に相当する。
このような駆動パルスPSを発生するにあたり、電流増幅回路(第1電流増幅回路72A,第2電流増幅回路72B)におけるNPN型のトランジスタQ1は、駆動信号COMの電圧を上昇させる時、すなわち、ピエゾ素子417を充電する時にオン状態となる。反対に、PNP型のトランジスタQ2は、駆動信号COMの電圧を降下させる時、すなわち、ピエゾ素子417を放電する時にオン状態となる。そして、NPN型のトランジスタQ1における消費電力は、電源電位PWmaxと駆動信号COMの電位との差と、NPN型のトランジスタQ1を流れる電流I1(図9Aを参照。)の積となる。一方、PNP型のトランジスタQ2における消費電力は、駆動信号COMの電位と接地電位GNDの差と、PNP型のトランジスタQ2を流れる電流I2(図9Aを参照。)の積となる。従って、この駆動パルスPSにおいて、消費電力は、ハッチングにて示した期間の電位差と、これらの期間にNPN型のトランジスタQ1及びPNP型のトランジスタQ2を流れる電流I1,I2とに基づいて算出される。この駆動パルスPSにおいて、消費電力は1.5Wとなる。具体的に説明すると、一つの駆動パルスPSが一つのノズル列に対応する180個のピエゾ素子417の全てに印加されると、1.5Wの電力が消費される。
そして、図12Bに示す駆動信号COM´、すなわち、一つの繰り返し周期T内に、6個の駆動パルスPSを有する駆動信号COMを用いた場合、その消費電力は、繰り返し周期T内において全ての駆動パルスPSを全てのピエゾ素子417に印加した時に最大となり、9Wとなる。仮に、図12Bに示す駆動信号COM´を、一つの駆動信号生成回路で生成させる場合、トランジスタ対を放熱するためのヒートシンクは、2mm厚のアルミニウムで約170cm2の大きさが必要となる。略正方形のヒートシンクの場合、1辺は約13cmとなる。このような大型のヒートシンクをプリンタ1に搭載することは、装置の大型化を招くので現実的ではない。
そこで、本実施形態では、駆動信号COMを第1駆動信号COM_Aと第2駆動信号COM_Bの2つに分け、駆動信号生成回路70によって、それぞれの駆動信号COM_A,COM_Bを個別に生成させている。本実施形態の第1駆動信号COM_Aは、ピエゾ素子417の動作開始から動作終了までを規定する駆動パルスPS(単位信号に相当する。)を複数有する信号である。また、第2駆動信号COM_Bは、第1駆動信号COM_Aにおける駆動パルスPSの発生終了から次の駆動パルスPSの発生開始までの期間に、ピエゾ素子417の動作開始から動作終了までを規定する他の駆動パルスPS(他の単位信号に相当する。)を発生する信号である。そして、これらの第1駆動信号COM_Aと第2駆動信号COM_Bをピエゾ素子417に印加させて、用紙Sに印刷する(ドットを形成する)ようにしている。
このような構成を採ることにより、次の利点がある。すなわち、第1駆動信号COM_Aが有する駆動パルスPSに関し、その発生間隔は、第2駆動信号COM_Bが有する他の駆動パルスPSが発生されている期間以上に定められる。つまり、駆動パルスPSの発生周波数を低く抑えることができる。このため、第1駆動信号COM_Aと第2駆動信号COM_Bに関し、トランジスタ対721A,721Bの放熱期間を確保することができる。そして、第1駆動信号COM_Aと第2駆動信号COM_Bが有する駆動パルスPSをピエゾ素子417に印加するので、ピエゾ素子417の動作周波数を落とすことなく、駆動信号生成回路70の発熱を抑えることができる。その結果、ヒートシンク722A,722B(発熱対策用の部品の一種、図9Bを参照。)の大型化を防止でき、ひいてはプリンタ1の大型化も防止できる。以下、この点について、詳細に説明する。
===ドット形成時の具体的制御===
<駆動信号COMについて>
図13Aは、第1駆動信号COM_Aと、第2駆動信号COM_Bと、必要な制御信号を説明する図である。また、図13Bは、画素データ(階調値)と、波形部の選択パターンと、選択データを説明する図である。
例示した第1駆動信号COM_Aは、期間T1で発生される第1波形部SS11と、期間T2で発生される第2波形部SS12と、期間T3で発生される第3波形部SS13と、期間T4で発生される第4波形部SS14と、期間T5で発生される第5波形部SS15と、期間T6で発生される第6波形部SS16とを有する。これらの波形部の中で、第1波形部SS11と、第3波形部SS13と、第5波形部SS15は、駆動パルスPSを有している。この駆動パルスPSは、図12Aに示された駆動パルスPSと同じ波形であり、単位信号に相当する。また、第2波形部SS12と、第4波形部SS14と、第6波形部SS16は、中間電位Vcで一定となっている。この中間電位Vcは、駆動パルスPSの開始電位及び終了電位に相当する。従って、この第1駆動信号COM_Aにおいて、期間T1では駆動パルスPSが発生され、期間T2では中間電位Vcで一定の信号(定電位信号)が発生される。また、期間T3及び期間T5では駆動パルスPSが発生され、期間T4及び期間T6では定電位信号が発生される。要するに、この第1駆動信号COM_Aは、駆動パルスPSと定電位信号とを交互に発生させる信号である。
例示した第2駆動信号COM_Bは、期間T1で発生される第1波形部SS21と、期間T2で発生される第2波形部SS22と、期間T3で発生される第3波形部SS23と、期間T4で発生される第4波形部SS24と、期間T5で発生される第5波形部SS25と、期間T6で発生される第6波形部SS26とを有する。本実施形態において、第2駆動信号COM_Bの第1波形部SS21〜第6波形部SS26は、対応する第1駆動信号COM_Aの第1波形部SS11〜第6波形部SS16と同じ時間幅に定められている。これに伴い、第1駆動信号COM_A用の第1チェンジ信号CH_Aと、第2駆動信号COM_B用の第2チェンジ信号CH_Bは、Hレベルになるタイミングが揃えられている。言い換えれば、パルスが同期して発生されている。
この第2駆動信号COM_Bでは、第1波形部SS21と、第3波形部SS23と、第5波形部SS25は、中間電位Vcで一定の定電位信号である。また、第2波形部SS22と、第4波形部SS24と、第6波形部SS26は、駆動パルスPSを有している。この駆動パルスPSは、第1駆動信号COM_Aが有する駆動パルスPSと同じ波形であり、他の単位信号に相当する。そして、この第2駆動信号COM_Bは、定電位信号と駆動パルスPSとを交互に発生させる信号であるといえる。
なお、第1駆動信号COM_Aとの関係で表現すると、第2駆動信号COM_Bは、第1駆動信号COM_Aにおける駆動パルスPSの発生終了から次の駆動パルスPSの発生開始までの期間(つまり、定電位信号の発生期間T2,T4,T6)に、駆動パルスPSを発生するものであるといえる。同様に、第1駆動信号COM_Aを、第2駆動信号COM_Bとの関係で表現すると、第1駆動信号COM_Aは、第2駆動信号COM_Bにおける駆動パルスPSの発生終了から次の駆動パルスPSの発生開始までの期間に、駆動パルスPSを発生する信号といえる。
要するに、第1駆動信号COM_Aと第2駆動信号COM_Bは、他方の駆動信号COMにおける駆動パルスPSの非発生期間に、駆動パルスPSを発生させる信号ということができる。
<階調制御について>
次に、このプリンタ1における階調制御について説明する。ここで、図14は、小ドットの形成時、中ドットの形成時、及び大ドットの形成時において、ピエゾ素子417に印加される波形部を説明する図である。この多階調の制御において、第1スイッチ87A及び第2スイッチ87Bは、デコーダ83が生成した選択データに基づき、動作が制御される。
まず、ドットの非形成(画素データ[00])の場合について説明する。この場合、デコーダ83は、非記録を示す画素データ[00]に基づき、第1選択データ[000000]及び第2選択データ[000000]を生成する。これらの第1選択データ[000000]及び第2選択データ[000000]は、タイミング信号がHレベルになるタイミング(立ち上がりタイミング)で、上位ビット側から順に、第1スイッチ87A及び第2スイッチ87Bへ出力される。ここで、第1選択データは[000000]であり、第2選択データも[000000]である。このため、第1駆動信号COM_Aの波形部SS11〜SS16は、ピエゾ素子417に印加されない。同様に、第2駆動信号COM_Bの波形部SS21〜SS26も、ピエゾ素子417に印加されない。その結果、駆動パルスPSはピエゾ素子417には印加されず、ノズルNzからはインクが吐出されない。
次に、小ドットの形成(画素データ[01])の場合について説明する。この場合、デコーダ83は、小ドットの形成を示す画素データ[01]に基づき、第1選択データ[001000]及び第2選択データ[000000]を生成する。これらの第1選択データ[001000]及び第2選択データ[000000]は、前述したように、タイミング信号がHレベルになるタイミングで、上位ビット側から順に、第1スイッチ87A及び第2スイッチ87Bへ出力される。ここで、第1選択データは[001000]である。このため、第1駆動信号COM_Aは、図14に示すように、T3の期間において、ピエゾ素子417に印加される。つまり、第3波形部SS13が、ピエゾ素子417に印加される。一方、第2選択データは[000000]である。このため、第2駆動信号COM_Bは、ピエゾ素子417に印加されない。これにより、期間T3で発生された駆動パルスPSがピエゾ素子417に印加され、ノズルNzからは小ドットに対応する量のインクが吐出される。その結果、用紙Sには小ドットが形成される。
次に、中ドットの形成(画素データ[10])の場合について説明する。この場合、デコーダ83は、中ドットの形成を示す画素データ[10]に基づき、第1選択データ[001000]及び第2選択データ[010100]を生成する。そして、第1選択データ[001000]が第1スイッチ87Aに出力されると、期間T3において、第1駆動信号COM_Aがピエゾ素子417に印加される。つまり、図14に示すように、第3波形部SS13が、ピエゾ素子417に印加される。また、第2選択データ[010100]が第2スイッチ87Bに出力されると、期間T2,期間T4において、第2駆動信号COM_Bがピエゾ素子417に印加される。すなわち、図14に示すように、第2波形部SS22,第4波形部SS24がピエゾ素子417に印加される。これにより、期間T2で発生された駆動パルスPSと、期間T3で発生された駆動パルスPSと、期間T4で発生された駆動パルスPSがピエゾ素子417に印加され、ノズルNzからは中ドットに対応する量のインクが吐出される。その結果、用紙Sには中ドットが形成される。
次に、大ドットの形成(画素データ[11])の場合について説明する。この場合、デコーダ83は、大ドットの形成を示す画素データ[11]に基づき、第1選択データ[101010]及び第2選択データ[010101]を生成する。そして、第1選択データ[101010]が第1スイッチ87Aに出力されると、図14に示すように、期間T1,期間T3,期間T5において、第1駆動信号COM_Aがピエゾ素子417に印加される。また、第2選択データ[010101]が第2スイッチ87Bに出力されると、図14に示すように、期間T2,期間T4,期間T6において、第2駆動信号COM_Bがピエゾ素子417に印加される。これにより、第1駆動信号COM_Aが有する3つの駆動パルスPSと、第2駆動信号COM_Bが有する3つの駆動パルスPSがピエゾ素子417に印加され、ノズルNzからは大ドットに対応する量のインクが吐出される。その結果、用紙Sには大ドットが形成される。
このように、本実施形態では、ピエゾ素子417に印加される駆動パルスPSを、第1駆動信号COM_Aと第2駆動信号COM_Bに分散させている。これにより、第1駆動信号COM_Aが有する駆動パルスPSに関し、その発生間隔を空けてもインクを高い周波数で吐出させることができる。第2駆動信号COM_Bが有する駆動パルスPSに関しても同様である。また、第1駆動信号COM_A及び第2駆動信号COM_Bに関し、それぞれが繰り返し周期Tに有する駆動パルスPSの数は3個である。前述した参考例(図12B)では、一つの駆動信号COM´が、繰り返し周期Tに6個の駆動パルスPSを有しているので、半分の数になっている。そして、第1駆動信号COM_A及び第2駆動信号COM_Bに関し、ある駆動パルスPSの発生終了から次の駆動パルスPSの発生開始までの期間が参考例の駆動信号COM´よりも長い。
これらによって、本実施形態の第1駆動信生成部70A及び第2駆動信生成部70Bの発熱が抑えられる。そして、本実施形態の駆動信号生成回路70は、参考例の駆動信号生成回路よりも発熱を抑えることができる。これは、駆動パルスPSの発生により、第1トランジスタ対721A及び第2トランジスタ対721Bが発熱するが、その後の定電位信号が発生されている期間において、第1トランジスタ対721A及び第2トランジスタ対721Bが休止状態となって、放熱が促進されるためと考えられる。
その結果、インクの吐出周波数(ピエゾ素子417の動作周波数)を落とすことなく、駆動信号生成回路70の発熱を抑えることができる。例えば、参考例の駆動信号COM´を生成させた場合、電流増幅回路のトランジスタ対の放熱に必要なヒートシンクは、前述したように、2mm厚のアルミニウムで約170cm2の大きさとなる。これに対し、本実施形態のように、駆動パルスPSを第1駆動信号COM_Aと第2駆動信号COM_Bとに分散させた場合、各駆動信号の消費電力は参考例の半分となり、それぞれ約4.5Wである。また、NPNトランジスタやPNPトランジスタの定格も、参考例のものの約半分になる。ここで、トランジスタ対の放熱に必要なヒートシンク722A,722Bは、2mm厚のアルミニウムで約53cm2の大きさとなる。つまり、ヒートシンク722A,722Bの面積は、比較例の1/3程度で済む。このため、一辺が7cm強の正方形状のヒートシンクを用意すれば足りる。このように、参考例のものよりも、小さいサイズのヒートシンクが使用できるので、プリンタ1の大型化の防止が図れる。
また、本実施形態では、第1駆動信号COM_Aと第2駆動信号COM_Bのいずれも駆動パルスPSを複数有しており、第1駆動信号COM_Aが有する駆動パルスPSと、第2駆動信号COM_Bが有する駆動パルスPSとが同じ波形である。また、第1駆動信号COM_Aが有する駆動パルスPSの数と、第2駆動信号COM_Bが有する駆動パルスPSの数が揃えられている。これらにより、大ドット形成時の駆動信号生成回路70における、第1駆動信号生成部70Aの発熱量と、第2駆動信号生成部70Bの発熱量とを均等化することができ、ヒートシンク722A,722Bの大きさを揃えることができる。この点においても、プリンタ1の大型化を有効に防止できる。
さらに、本実施形態では、複数の駆動パルスPSをピエゾ素子417に印加するにあたり、第1駆動信号COM_Aが有する駆動パルスPSと、第2駆動信号COM_Bが有する駆動パルスPSを交互に印加している。例えば、中ドットを形成する場合、まず、期間T2で第2駆動信号COM_B側の駆動パルスPSがピエゾ素子417に印加される。続いて、期間T3で第1駆動信号COM_A側の駆動パルスPSがピエゾ素子417に印加される。さらに、期間T4で第2駆動信号COM_B側の駆動パルスPSがピエゾ素子417に印加される。また、大ドットを形成する場合には、期間T1、期間T3、期間T5で第1駆動信号COM_A側の駆動パルスPSがピエゾ素子417に印加され、期間T2、期間T4、期間T6で第2駆動信号COM_B側の駆動パルスPSがピエゾ素子417に印加される。
このように、第1駆動信号COM_Aが有する駆動パルスPSと、第2駆動信号COM_Bが有する駆動パルスPSを、ピエゾ素子417へ交互に印加しているので、第1駆動信号生成部70A(第1トランジスタ対721A)が発熱する期間と、第2駆動信号生成部70B(第2トランジスタ対721B)が発熱する期間が分散される。これにより、第1駆動信号生成部70Aの発熱量と、第2駆動信号COM_Bの発熱量を高いレベルで均等化できる。
===駆動信号COMの変形例===
図15は、第1駆動信号COM_A及び第2駆動信号COM_Bの変形例を説明する図である。この変形例において、第1駆動信号COM_Aは繰り返し周期Tの前半で3つの駆動パルスPSを発生している。一方、第2駆動信号COM_Bは繰り返し周期Tの後半で3つの駆動パルスPSを発生している。すなわち、第1駆動信号COM_Aにおいて、期間T11、期間T12、期間T13のそれぞれで駆動パルスPSが発生されている。そして、期間T14では中間電位Vcで一定の定電位信号が発生されている。一方、第2駆動信号COM_Bにおいて、期間T21では中間電位Vcで一定の定電位信号が発生されている。そして、期間T22、期間T23、期間T24のそれぞれで駆動パルスPSが発生されている。なお、この変形例において、期間T13と期間T14の境界は、期間T21と期間T22の境界と同じタイミングである。
第1駆動信号COM_Aでは、第2駆動信号COM_Bにおける駆動パルスPS(他の単位信号に相当する。)の発生終了から次の駆動パルスPSの発生開始までの期間に、駆動パルスPS(単位信号に相当する。)が発生されている。すなわち、第1駆動信号COM_Aでは、第2駆動信号COM_Bで駆動パルスPSが発生されていない期間T11から期間T13に亘って、駆動パルスPSが発生されている。また、第2駆動信号COM_Bでは、第1駆動信号COM_Aで駆動パルスPSが発生されていない期間T22から期間T24において、駆動パルスPSが発生されている。
この変形例の第1駆動信号COM_Aと第2駆動信号COM_Bを用いた場合、デコーダ83は、次の選択データを生成する。まず、ドットの非形成(画素データ[00])の場合、デコーダ83は、第1選択データ[0000]と第2選択データ[0000]を生成する。なお、この変形例において、第1駆動信号COM_A及び第2駆動信号COM_Bのいずれも、4つの波形部から構成されているため、第1選択データ及び第2選択データは、4ビットのデータとなっている。そして、これらの選択データが第1スイッチ87Aと第2スイッチ87Bに出力されても、いずれの駆動パルスPSもピエゾ素子417には印加されない。このため、ノズルNzからはインクが吐出されない。
そして、小ドットの形成(画素データ[01])の場合、デコーダ83は、第1選択データ[0010]と第2選択データ[0000]を生成する。これらの選択データが第1スイッチ87Aと第2スイッチ87Bに出力されると、期間T13で第1駆動信号COM_Aがピエゾ素子417に印加される。これにより、期間T13で発生された駆動パルスPSがピエゾ素子417に印加され、ノズルNzからは小ドットに対応する量のインクが吐出される。
また、中ドットの形成(画素データ[10])の場合、デコーダ83は、第1選択データ[0110]及び第2選択データ[0100]を生成する。これらの選択データが第1スイッチ87Aと第2スイッチ87Bに出力されると、期間T12及び期間T13で第1駆動信号COM_Aがピエゾ素子417に印加される。また、期間T22で第2駆動信号COM_Bがピエゾ素子417に印加される。これにより、これらの期間T12、期間T13及び期間T22のそれぞれで発生された、3つの駆動パルスPSがピエゾ素子417に印加され、ノズルNzからは中ドットに対応する量のインクが吐出される。
また、大ドットの形成(画素データ[11])の場合、デコーダ83は、第1選択データ[1110]及び第2選択データ[0111]を生成する。これらの選択データが第1スイッチ87Aと第2スイッチ87Bに出力されると、期間T11、期間T12及び期間T13で第1駆動信号COM_Aがピエゾ素子417に印加される。また、期間T22、期間T23及び期間T24で第2駆動信号COM_Bがピエゾ素子417に印加される。その結果、これらの期間T11、期間T12、期間T13、期間T22、期間T23及び期間T24で発生された6つの駆動パルスPSがピエゾ素子417に印加され、ノズルNzからは大ドットに対応する量のインクが吐出される。
そして、この変形例でも、ピエゾ素子417に印加される駆動パルスPSが、第1駆動信号COM_Aと第2駆動信号COM_Bに分散されている。そして、一方の駆動信号COMが駆動信号を発生している期間において、他方の駆動信号COMは一定の電位となっている。この期間において、他方の駆動信号COMを発生させるためのトランジスタ対は休止状態となり、放熱の効率が高まる。すなわち、発熱を抑えることができる。これにより、トランジスタ対721A,721Bの放熱に必要なヒートシンク722A,722Bのサイズを小さくすることができ、プリンタ1の大型化を有効に防止できる。
===第2実施形態===
ところで、前述した第1実施形態及びその変形例のいずれも、駆動信号COM(第1駆動信号COM_A,第2駆動信号COM_B)は、インク滴を吐出させるための駆動パルスPS(吐出用単位信号,他の吐出用単位信号)を有していたが、このような駆動信号COMに限定されるものではない。例えば、ピエゾ素子417に増粘防止動作を実行させるためのパルスを有する駆動信号COMにも適用できる。なお、増粘防止動作とは、インクの増粘を防止させるための動作である。
以下、このように構成した第2実施形態について説明する。ここで、図16Aは、第2実施形態における第1駆動信号COM_A及び第2駆動信号COM_Bと、制御用の信号を説明する図である。図16Bは、微振動動作の実行時における駆動信号COMの印加を説明する図である。ここで、微振動動作とは、増粘防止動作の一種であり、例えば、印刷前(ドットの形成前)に行われるものである。
微振動動作では、インクが吐出されない程度に圧力室414aのインクに圧力変動を生じさせる。これにより、メニスカス、すなわちノズルNzで露出しているインクの自由表面を僅かに振動させ、インクの増粘を防止する。この微振動動作を行わせるための微振動パルスVPは、単位信号或いは他の単位信号に相当する。詳しくは、インクの増粘を防止させるための動作をピエゾ素子417に実行させるための増粘防止用単位信号、或いは、他の増粘防止用単位信号に相当する。そして、この微振動パルスVPは、例えば台形状のパルスである。この微振動パルスVPをピエゾ素子417に印加すると、電位の上昇に伴ってピエゾ素子417が変形し、圧力室414aを基準容積(中間電位Vcに対応する容積)よりも僅かに収縮させる。続いて、定電位の期間において収縮状態が維持された後、電位の降下に伴って圧力室414aが基準容積に戻される。このようなピエゾ素子417の変形により、圧力室414aのインクに圧力変動が生じ、メニスカスが微振動される。
この第2実施形態において駆動信号生成回路70(第1駆動信号生成部70A,第2駆動信号生成部70B)は、微振動パルスVPを有する第1駆動信号COM_Aと第2駆動信号COM_Bを生成している。微振動パルスVPを有する第1駆動信号COM_A及び第2駆動信号COM_Bは、キャリッジCR(ヘッド41)の移動停止期間や加速期間中に生成される。なお、駆動信号生成回路70は、キャリッジCRの移動速度が所定速度に達した後、つまり、用紙Sに対するインクの吐出が可能となった後は、駆動パルスPSを有する第1駆動信号COM_A及び第2駆動信号COM_Bを生成する。
第1駆動信号COM_Aは、微振動パルスVPを有する波形部と定電位信号からなる波形部とを有する。そして、この第1駆動信号COM_Aでは、微振動パルスVPを有する波形部と定電位信号からなる波形部とが交互に生成されている。同様に、第2駆動信号COM_Bも、微振動パルスVPを有する波形部と定電位信号からなる波形部とを有し、これらの波形部が交互に生成されている。
第1駆動信号COM_Aと第2駆動信号COM_Bとは、微振動パルスVPが発生されるタイミングが相違している。すなわち、第1駆動信号生成部70Aが微振動パルスVPを発生させている期間において、第2駆動信号生成部70Bは定電位信号からなる波形部を生成している。また、第1駆動信号生成部70Aが定電位信号からなる波形部を生成している期間において、第2駆動信号生成部70Bは微振動パルスVPを有する波形部を発生させている。
図16Bの例では、第1駆動信号生成部70Aが微振動パルスVPを有する波形部を生成している期間T1,期間T3,期間T5において、第2駆動信号生成部70Bは定電位信号からなる波形部を生成している。また、第1駆動信号生成部70Aが定電位信号からなる波形部を生成している期間T2,期間T4,期間T6において、第2駆動信号生成部70Bは微振動パルスVPを有する波形部を生成している。
これらの第1駆動信号COM_A及び第2駆動信号COM_Bをピエゾ素子417に印加させるためには全オン信号を用いる。この全オン信号は、N−チャージ信号とも呼ばれ、全てのピエゾ素子417(本実施形態では、一つのノズル列に対応する180個のピエゾ素子417)に、駆動信号COMを一括して印加する際に用いられる。本実施形態では、この全オン信号として、第1駆動信号COM_A用の第1全オン信号N_CHG_Aと、第2駆動信号COM_B用の第2全オン信号N_CHG_Bを有している。すなわち、第1全オン信号N_CHG_AがHレベルの期間において、第1駆動信号COM_Aが全てのピエゾ素子417に印加されるようにし、第2全オン信号N_CHG_BがHレベルの期間において、第2駆動信号COM_Bが全てのピエゾ素子417に印加されるようにしている。
図16Bの例では、期間T1、期間T3、期間T5で第1全オン信号N_CHG_Aが出力され、期間T2、期間T4、期間T6で第2全オン信号N_CHG_Bが出力されている。これにより、ピエゾ素子417には期間T1〜期間T6のそれぞれで微振動パルスVPが印加され、微振動動作が行われる。
このような第1駆動信号COM_A及び第2駆動信号COM_Bを用いることにより、これらの駆動信号COM_A,COM_Bの生成時における、第1駆動信号生成部70Aと第2駆動信号生成部70Bの発熱を抑えることができる。これは、微振動パルスVPを第1駆動信号COM_Aと第2駆動信号COM_Bに分散させたことによる。すなわち、各駆動信号生成回路70A,70Bでは、微振動パルスVPを分散させた分だけ、微振動パルスVPの発生頻度を減らすことができる。さらに、一方の駆動信号生成回路70が微振動パルスVPを生成している期間においては、他方の駆動信号生成回路70は定電位信号を発生させれば足りる。このため、その期間において、一方の駆動信号生成回路70は、トランジスタ対721A,721Bを効率よく放熱することができる。従って、駆動信号生成回路70の過度な発熱を抑えることができ、ヒートシンク722A,722Bの大型化を防止できる。その結果、プリンタ1の大型化も防止できる。
また、この実施形態において、各微振動駆動パルスPSは同じ波形である。そして、第1駆動信号COM_Aが有する微振動パルスVPと、第2駆動信号COM_Bが有する微振動パルスVPを、ピエゾ素子417に対して交互に印加させている。このため、第1駆動信号COM_Aを生成する第1駆動信号生成部70Aの発熱量と、第2駆動信号COM_Bを生成する第2駆動信号生成部70Bの発熱量とを均等化できる。これにより、ヒートシンク722A,722Bに関し、サイズを最適化することもできる。
===微振動駆動信号の変形例===
図17は、第1駆動信号COM_A及び第2駆動信号COM_Bの変形例を説明する図である。この変形例では、2つの微振動パルスVPを組にし、この微振動パルスVPの組を第1駆動信号COM_Aと第2駆動信号COM_Bとに分散させている。例えば、第1駆動信号COM_Aでは、微振動パルスVPの組を期間T1と期間T3で発生させている。また、第2駆動信号COM_Bでは、微振動パルスVPの組を期間T2で発生させている。そして、期間T1及び期間T3で第1全オン信号N_CHG_AがHレベルとされ、期間T2で第2全オン信号N_CHG_BがHレベルとされることで、ピエゾ素子417には、微振動パルスVPが連続的に供給されている。
このような第1駆動信号COM_A及び第2駆動信号COM_Bを用いても、これらの微振動駆動信号を生成している際における、第1駆動信号生成部70Aと第2駆動信号生成部70Bの発熱を抑えることができる。
===その他の実施の形態===
上記の各実施形態は、主としてプリンタ1を有する印刷システム100について記載されているが、その中には、印刷制御装置や印刷制御方法等の開示が含まれている。また、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
<駆動信号について>
前述の実施形態において、第1駆動信号COM_Aが有する駆動パルスPSの数と、第2駆動信号COM_Bが有する駆動パルスPSの数は同じであった。例えば、第1実施形態において、繰り返し周期Tにおける駆動パルスPSの数は、第1駆動信号COM_Aが3個、第2駆動信号COM_Bも3個であった。しかし、駆動パルスPSの数を、第1駆動信号COM_Aと第2駆動信号COM_Bで異ならせてもよい。例えば、一つの繰り返し周期T内において、最大5つの駆動パルスPSをピエゾ素子417に印加する構成の場合、第1駆動信号COM_Aに3個の駆動パルスPSを含ませ、第2駆動信号COM_Bに2個の駆動パルスPSを含ませることができる。なお、第1駆動信号生成部70Aと第2駆動信号生成部70Bの発熱量を近づけるという観点からすれば、第1駆動信号COM_Aが有する駆動パルスPSの数と、第2駆動信号COM_Bが有する駆動パルスPSの数を近づけることが好ましい。
また、繰り返し周期T毎に、駆動パルスPSの数を変えるようにしてもよい。例えば、ある繰り返し周期Tにおいては、第1駆動信号COM_Aに3個の駆動パルスPSを、第2駆動信号COM_Bに2個の駆動パルスPSをそれぞれ含ませる。そして、次の繰り返し周期Tにおいては、第1駆動信号COM_Aに2個の駆動パルスPSを、第2駆動信号COM_Bに3個の駆動パルスPSをそれぞれ含ませる。さらに、その次の繰り返し周期Tにおいては、第1駆動信号COM_Aに3個の駆動パルスPSを、第2駆動信号COM_Bに2個の駆動パルスPSをそれぞれ含ませる。このようにすれば、繰り返し周期T内の駆動パルスPSの数が奇数であっても、第1駆動信号生成部70Aと第2駆動信号生成部70Bの発熱量を均等化できる。
また、駆動信号に含まれるパルス(単位信号)に関し、第1実施形態ではドット形成時に使用される駆動パルスPSについて説明し、第2実施形態では微振動動作に使用される微振動パルスVPについて説明した。駆動信号に含まれるパルスは、これらのパルスに限定されるものではない。例えば、フラッシング動作時に用いられるフラッシングパルスであってもよい。このフラッシング動作は、インクの増粘を回復させる目的で、印刷範囲外の所定位置でインクを強制的に吐出させる動作である。そして、フラッシングパルスは、インクを強制的に吐出させる際に、ピエゾ素子417に印加されるパルスである。このフラッシングパルスを第1駆動信号COM_Aと第2駆動信号COM_Bとに分散させることで、駆動信号生成回路70の発熱を抑えることができる。
また、前述した各実施形態において、生成される駆動信号は2種類であったが、これに限定されない。例えば、3種類以上の駆動信号を発生させるようにしてもよい。
<印刷システムについて>
印刷システムに関し、前述の実施形態では、印刷装置としてのプリンタ1と、印刷制御装置としてのコンピュータ110とが別々に構成されている印刷システム100について説明したが、この構成に限定されない。印刷システムは、印刷装置と印刷制御装置とが一体になっているものであってもよい。
<駆動素子について>
前述の実施形態では、ピエゾ素子417を用いてインクを吐出させていた。しかし、インクを吐出させる素子は、ピエゾ素子417に限られるものではない。例えば、発熱素子や磁歪素子等、インクを吐出させるための動作を実行である素子ならば使用できる。
<インクについて>
前述の実施形態は、プリンタ1の実施形態であったので、染料インク又は顔料インクをノズルNzから吐出させていた。しかし、ノズルNzから吐出させるインクは、このようなインクに限られるものではない。また、インクの色も前述した4色に限られるものではない。
<他の応用例について>
また、前述の実施形態では、プリンタ1が説明されていたが、これに限られるものではない。例えば、カラーフィルタ製造装置、染色装置、微細加工装置、半導体製造装置、表面加工装置、三次元造形機、液体気化装置、有機EL製造装置(特に高分子EL製造装置)、ディスプレイ製造装置、成膜装置、DNAチップ製造装置などのインクジェット技術を応用した各種の記録装置に、本実施形態と同様の技術を適用してもよい。また、これらの方法や製造方法も応用範囲の範疇である。
1…プリンタ,20…用紙搬送機構,21…給紙ローラ,22…搬送モータ,23…搬送ローラ,24…プラテン,25…排紙ローラ,30…キャリッジ移動機構,31…キャリッジモータ,32…ガイド軸,33…タイミングベルト,34…駆動プーリー,35…従動プーリー,40…ヘッドユニット,41…ヘッド,41A…流路ユニット,411…ノズルプレート,412…貯留室形成基板,412a…インク貯留室,413…供給口形成基板,413a…インク供給口,41B…アクチュエータユニット,414…圧力室形成基板,414a…圧力室,415…振動板,416…蓋部材,416a…供給側連通口,417…ピエゾ素子,42…針側ケース部材,421…インク供給針,43…ヘッド側ケース部材,431…基板配置部,44…ヘッド制御基板,441…コネクタ,45…ヘッド側配線部材,50…検出器群,51…リニア式エンコーダ,52…ロータリー式エンコーダ,53…紙検出器,54…紙幅検出器,60…プリンタ側コントローラ,61…インタフェース部,62…CPU,63…メモリ,64…制御ユニット,70…駆動信号生成回路,70A…第1駆動信号生成部,71A…第1波形生成回路,711A…メモリ,712A…第1ラッチ回路,713A…加算器,714A…第2ラッチ回路,715A…デジタルアナログ変換器,716A…電圧増幅回路,72A…第1電流増幅回路,721A…第1トランジスタ対,722A…ヒートシンク,70B…第2駆動信号生成部,71B…第2波形生成回路,711B…メモリ,712B…第1ラッチ回路,713B…加算器,714B…第2ラッチ回路,715B…デジタルアナログ変換器,716B…電圧増幅回路,72B…第2電流増幅回路,721B…第2トランジスタ対,722B…ヒートシンク,81A…第1シフトレジスタ,81B…第2シフトレジスタ,82A…第1ラッチ回路,82B…第2ラッチ回路,83…デコーダ,84…制御ロジック,85…防止回路,86A…第1レベルシフタ,86B…第2レベルシフタ,87A…第1スイッチ,87B…第2スイッチ,100…印刷システム,110…コンピュータ,111…ホスト側コントローラ,112…インタフェース部,113…CPU,114…メモリ,120…表示装置,130…入力装置,131…キーボード,132…マウス,140…記録再生装置,141…フレキシブルディスクドライブ装置,142…CD−ROMドライブ装置,S…用紙,CTR…コントローラ基板,IC…インクカートリッジ,HC…ヘッド制御部,FC…コントローラ側配線基板,Nz…ノズル,Nk…ブラックインクノズル列,Nc…シアンインクノズル列,Nm…マゼンタインクノズル列,Ny…イエローインクノズル列,COM_A…第1駆動信号,COM_B…第2駆動信号,Q1…NPN型のトランジスタ,Q2…PNP型のトランジスタ,PS…駆動パルス,SS11…第1波形部,SS12…第2波形部,SS13…第3波形部,SS14…第4波形部,SS15…第5波形部,SS16…第6波形部,SS21…第1波形部,SS22…第2波形部,SS23…第3波形部,SS24…第4波形部,SS25…第5波形部,SS26…第6波形部,CH_A…第1チェンジ信号,CH_B…第2チェンジ信号,VP…微振動パルス