JP2006247945A - 液体吐出装置、及び、液体吐出方法 - Google Patents

液体吐出装置、及び、液体吐出方法 Download PDF

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Abstract

【課題】素子の負担を軽減できる液体吐出装置を実現する。
【解決手段】ピエゾ素子PZTを動作させるための固定波形部DRVを含むと共に、一定電位の変動波形部CSTを固定波形部DRVよりも後に含む駆動信号COMを、駆動信号生成回路50によって生成させる。ヘッド41が所定速度に達するまでの加速期間において、プリンタ側コントローラ70は、N−チャージ信号NCHGを用いて変動波形部CSTをピエゾ素子PZTへ強制的に印加させる。
【選択図】 図17

Description

本発明は、液体を吐出するための動作を行うために充放電される素子を有するヘッドを、所定方向に移動させながら液体を吐出させる液体吐出装置、及び、液体吐出方法に関する。
所定方向に移動されるヘッドから液体を吐出させる液体吐出装置としては、例えば、印刷装置、カラーフィルタ製造装置、染色装置といったように、種々のものがある。この種の液体吐出装置では、対象物へ液体を着弾させることで種々の処理を行っている。例えば、用紙への画像の印刷やカラーフィルタの製造を行っている。そして、装置の小型化と処理の高速化とを両立する観点から、ヘッドの加速期間や減速期間においても液体を吐出させる装置が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
また、この種の液体吐出装置では、液体を吐出させるための素子として充放電される素子を用いたものがある。この充放電される素子は例えばピエゾ素子であり、電位に応じた度合いで変形する。この素子は、駆動信号の印加停止後も電位を保持する性質を有する。この性質を利用し、駆動信号を断続的に印加することで、吐出される液体の量を変化させることが行われている(例えば特許文献2を参照。)。
特開2003−63085号公報 特開平10−81012号公報
充放電される素子を有するヘッドでは、使用に伴う劣化や使用環境(湿度や温度)等によって、この素子の絶縁性が損なわれる場合がある。そして、この素子の絶縁性が損なわれると、駆動信号の非印加期間に素子の電位が低下してしまう。そして、駆動信号の電位(非接地側の電位に相当する。)と素子の電位にギャップが生じ、駆動信号を再び印加した際に素子の電位が急激に上昇する可能性がある。特に、加速期間中に液体の吐出を行わせる装置では、着弾位置を揃えるため、加速期間や減速期間において駆動信号の非印加期間が長くなる。このような急激な電位上昇が生じてしまうと、素子に過度な負担を掛けてしまう可能性があり、好ましくない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、素子の負担を軽減できる液体吐出装置を実現することにある。
前記目的を達成するための主たる発明は、
液体を吐出するための動作を行うために充放電される素子を複数有するヘッドと、
前記ヘッドを所定方向に移動させるヘッド移動部と、
前記素子を動作させるための波形部を含むと共に、一定電位の定電位部を前記波形部よりも後に含む駆動信号を、繰り返し生成する駆動信号生成部と、
前記所定方向に移動されるヘッドが所定速度に達するまでの加速期間に、前記波形部の少なくとも一部を前記素子に印加させるための制御を行うコントローラであって、
前記駆動信号の少なくとも一部を複数の前記素子へ一括して印加させるための一括印加信号によって、前記波形部の生成終了後に前記定電位部を複数の前記素子へ強制的に印加させるコントローラと、を有する液体吐出装置である。
本発明の他の特徴は、本明細書、及び添付図面の記載により、明らかにする。
===開示の概要===
本明細書の記載、及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかにされる。
すなわち、液体を吐出するための動作を行うために充放電される素子を複数有するヘッドと、前記ヘッドを所定方向に移動させるヘッド移動部と、前記素子を動作させるための波形部を含むと共に、一定電位の定電位部を前記波形部よりも後に含む駆動信号を、繰り返し生成する駆動信号生成部と、前記所定方向に移動されるヘッドが所定速度に達するまでの加速期間に、前記波形部の少なくとも一部を前記素子に印加させるための制御を行うコントローラであって、前記駆動信号の少なくとも一部を複数の前記素子へ一括して印加させるための一括印加信号によって、前記波形部の生成終了後に前記定電位部を複数の前記素子へ強制的に印加させるコントローラと、を有する液体吐出装置が実現できること。
このような液体吐出装置によれば、波形部の生成終了後においてコントローラが、駆動信号の定電位部を複数の素子へ一括して印加させる。これにより、駆動信号の非印加期間をできる限り短くすることができ、素子における電位の低下幅を小さくすることができる。そして、加速期間に液体を吐出させる場合、波形部から次の波形部までの期間が長くなるが、その期間には定電位部が素子に印加されているので、素子を所望の電位に維持できる。その結果、素子の負担を軽減することができる。
かかる液体吐出装置であって、前記ヘッドが所定距離移動する毎にタイミング信号を出力するタイミング信号出力部をさらに有し、前記駆動信号生成部は、前記タイミング信号に基づいて前記駆動信号の生成を開始すること。
このような液体吐出装置によれば、ヘッドが移動した距離と駆動信号の生成開始タイミングとが互いに関係付けられるので、加速期間においても位置精度よく液体を吐出させることができる。
かかる液体吐出装置であって、前記タイミング信号出力部は、前記ヘッドが所定距離移動する毎に、HレベルとLレベルとで交互に変化するタイミング信号を出力すること。
このような液体吐出装置によれば、ヘッドが所定距離移動したことを明確に認識することができる。
かかる液体吐出装置であって、前記コントローラは、前記駆動信号生成部が前記駆動信号の生成を開始してからの経過時間に基づいて、前記一括印加信号を出力すること。
このような液体吐出装置によれば、コントローラは、一括印加信号の出力タイミングを容易に認識することができる。
かかる液体吐出装置であって、前記コントローラは、タイマーによって計測された前記駆動信号の生成開始からの経過時間に基づいて、前記一括印加信号を出力すること。
このような液体吐出装置によれば、コントローラは、一括印加信号の出力タイミングを確実に認識することができる。
かかる液体吐出装置であって、前記素子と前記駆動信号生成部との間に設けられ、前記駆動信号の前記素子への印加を制御するスイッチをさらに有し、前記コントローラは、前記一括印加信号によって前記スイッチを制御し、前記定電位部を複数の前記素子へ強制的に印加させること。
このような液体吐出装置によれば、一括印加信号によってスイッチを制御することで、定電位部を素子に印加させているため、制御が容易である。
かかる液体吐出装置であって、前記素子と前記駆動信号生成部との間に設けられ、前記駆動信号の前記素子への印加を制御する他のスイッチをさらに有し、前記コントローラは、スイッチ制御信号によって前記他のスイッチを制御し、前記波形部の必要部分を前記素子へ印加させること。
このような液体吐出装置によれば、スイッチ制御信号によって他のスイッチを制御することで、波形部の必要部分を素子へ印加させているため、定電位部の印加制御と波形部の印加制御とを個別に行うことができ、制御の自由度が増す。
かかる液体吐出装置であって、前記素子は、印加された前記駆動信号の電位に応じて変形すること。
このような液体吐出装置によれば、素子の変形によって液体を吐出させるので、液体を効率よく吐出させることができる。
かかる液体吐出装置であって、前記コントローラは、前記所定方向に移動されるヘッドが前記所定速度で一定の定速期間や前記所定速度から停止速度に達するまでの減速期間に、前記波形部を前記素子に印加させるための制御を行うこと。
このような液体吐出装置によれば、定速期間や減速期間における制御を、加速期間における制御と同じように行うことができ、制御の効率化が図れる。
また、液体を吐出するための動作を行うために充放電される素子を複数有するヘッドと、前記ヘッドを所定方向に移動させるヘッド移動部と、前記ヘッドが所定距離移動する毎に、HレベルとLレベルとで交互に変化するタイミング信号を出力するタイミング信号出力部と、前記素子を動作させるための波形部を含むと共に、一定電位の定電位部を前記波形部よりも後に含む駆動信号を繰り返し生成し、且つ、前記タイミング信号に基づいて前記駆動信号の生成を開始する駆動信号生成部と、前記素子と前記駆動信号生成部との間に設けられ、前記駆動信号の前記素子への印加を制御するスイッチと、前記素子と前記駆動信号生成部との間に設けられ、前記駆動信号の前記素子への印加を制御する他のスイッチと、前記所定方向に移動されるヘッドが所定速度に達するまでの加速期間、前記所定速度で一定の定速期間、及び、前記所定速度から停止速度に達するまでの減速期間に、前記波形部の少なくとも一部を前記素子に印加させるための制御を行うコントローラであって、タイマーによって計測された、前記駆動信号生成部が前記駆動信号の生成を開始してからの経過時間に基づいて、前記駆動信号の少なくとも一部を複数の前記素子へ一括して印加させるための一括印加信号を出力し、前記一括印加信号によって前記スイッチを制御し、前記波形部の生成終了後に、前記定電位部を複数の前記素子へ強制的に印加させ、スイッチ制御信号によって前記他のスイッチを制御し、前記波形部の必要部分を前記素子へ印加させるコントローラと、を有し、前記素子は、印加された前記駆動信号の電位に応じて変形する液体吐出装置を実現することもできる。
このような液体吐出装置によれば、既述のほぼ全ての効果を奏するので、本発明の目的が最も有効に達成される。
また、液体を吐出するための動作を行うために充放電される素子を動作させるための波形部を含むと共に、一定電位の定電位部を前記波形部よりも後に含む駆動信号を、繰り返し生成するステップと、前記素子を複数有するヘッドを、所定方向に移動させるステップと、前記所定方向に移動されるヘッドが所定速度に達するまでの加速期間に、前記波形部を前記素子に印加させるための制御を行うステップと、前記波形部の生成終了後に、前記駆動信号の少なくとも一部を複数の前記素子へ一括して印加させるための一括印加信号によって、前記定電位部を複数の前記素子へ強制的に印加させるステップと、を有する液体吐出方法を実現することもできる。
===説明の対象===
<液体吐出装置について>
液体吐出装置には、印刷装置、カラーフィルタ製造装置、ディスプレイ製造装置、半導体製造装置、及びDNAチップ製造装置など、様々な種類があり、全てについて説明することは困難である。そこで、本明細書では、印刷装置としてのプリンタ、及び、このプリンタを有する印刷システムを例に挙げて説明する。なお、印刷システムとは、印刷装置と、この印刷装置の動作を制御する印刷制御装置とを少なくとも有するシステムのことであり、液体吐出装置と吐出制御装置とを有する液体吐出システムの一形態に相当する。
===印刷システム100の構成===
<全体構成について>
まず、印刷装置を印刷システムとともに説明する。ここで、図1は、印刷システム100の構成を説明する図である。例示した印刷システム100は、印刷装置としてのプリンタ1と、印刷制御装置としてのコンピュータ110とを含んでいる。具体的には、この印刷システム100は、プリンタ1と、コンピュータ110と、表示装置120と、入力装置130と、記録再生装置140とを有している。プリンタ1は、用紙、布、フィルム等の媒体に画像を印刷する。なお、この媒体は、液体が吐出される対象となる対象物に相当する。また、以下の説明では、代表的な媒体である用紙S(図3Aを参照。)を例に挙げて説明する。コンピュータ110は、プリンタ1と通信可能に接続されている。そして、プリンタ1に画像を印刷させるため、コンピュータ110は、その画像に応じた印刷データをプリンタ1に出力する。このコンピュータ110には、アプリケーションプログラムやプリンタドライバ等のコンピュータプログラムがインストールされている。表示装置120は、ディスプレイを有している。この表示装置120は、例えば、コンピュータプログラムのユーザーインタフェースを表示するためのものである。入力装置130は、例えば、キーボード131やマウス132である。記録再生装置140は、例えば、フレキシブルディスクドライブ装置141やCD−ROMドライブ装置142である。
===コンピュータ110===
<コンピュータ110の構成について>
図2は、コンピュータ110、及びプリンタ1の構成を説明するブロック図である。まず、コンピュータ110の構成について簡単に説明する。このコンピュータ110は、前述した記録再生装置140と、ホスト側コントローラ111とを有している。記録再生装置140は、ホスト側コントローラ111と通信可能に接続されており、例えばコンピュータ110の筐体に取り付けられている。ホスト側コントローラ111は、コンピュータ110における各種の制御を行うものであり、前述した表示装置120や入力装置130も通信可能に接続されている。このホスト側コントローラ111は、インタフェース部112と、CPU113と、メモリ114とを有する。インタフェース部112は、プリンタ1との間に介在し、データの受け渡しを行う。CPU113は、コンピュータ110の全体的な制御を行うための演算処理装置である。メモリ114は、CPU113が使用するコンピュータプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM、ROM、磁気ディスク装置等によって構成される。このメモリ114に格納されるコンピュータプログラムとしては、前述したように、アプリケーションプログラムやプリンタドライバがある。そして、CPU113は、メモリ114に格納されているコンピュータプログラムに従って各種の制御を行う。
印刷データは、プリンタ1が解釈できる形式のデータであって、各種のコマンドデータと、画素データSI(図8を参照。)とを有する。コマンドデータとは、プリンタ1に特定の動作の実行を指示するためのデータである。このコマンドデータには、例えば、給紙を指示するコマンドデータ、搬送量を示すコマンドデータ、排紙を指示するコマンドデータがある。また、画素データSIは、印刷される画像の画素に関するデータである。ここで、画素とは、用紙上に仮想的に定められた方眼状の升目であり、ドットが形成される領域を示す。そして、印刷データにおける画素データSIは、用紙上に形成されるドットに関するデータ(例えば、階調値)である。本実施形態において、画素データSIは2ビットのデータによって構成されている。すなわち、この画素データSIには、ドット無し(インクの非吐出)に対応するデータ[00]と、小ドットの形成に対応するデータ[01]と、中ドットの形成に対応するデータ[10]と、大ドットの形成に対応するデータ[11]とがある。従って、このプリンタ1は、1画素について4階調で画像の形成ができる。
===プリンタ1===
<プリンタ1の構成について>
次に、プリンタ1の構成について説明する。ここで、図3Aは、本実施形態のプリンタ1の構成を示す図である。図3Bは、本実施形態のプリンタ1の構成を説明する側面図である。なお、以下の説明では、図2も参照する。このプリンタ1は、図2に示すように、用紙搬送機構20、キャリッジ移動機構30、ヘッドユニット40、駆動信号生成回路50、検出器群60、及び、プリンタ側コントローラ70を有する。そして、ヘッドユニット40は、ヘッド制御部HCと、ヘッド41とを有している。このプリンタ1では、プリンタ側コントローラ70によって制御対象部、すなわち用紙搬送機構20、キャリッジ移動機構30、ヘッドユニット40(ヘッド制御部HC,ヘッド41)、及び駆動信号生成回路50が制御される。すなわち、プリンタ側コントローラ70は、コンピュータ110から受け取った印刷データに基づいて制御対象部を制御し、用紙Sに画像を印刷させる。このとき、検出器群60の各検出器は、プリンタ1内の各部の状態を検出しており、検出結果をプリンタ側コントローラ70に出力する。各検出器からの検出結果を受けたプリンタ側コントローラ70は、その検出結果に基づいて制御対象部を制御する。
<用紙搬送機構20について>
用紙搬送機構20は、媒体を搬送させる媒体搬送部に相当する。この用紙搬送機構20は、媒体としての用紙Sを印刷可能な位置に送り込んだり、この用紙Sを搬送方向に所定の搬送量で搬送させたりするものである。この搬送方向は、次に説明するキャリッジ移動方向と交差する方向である。そして、図3A及び図3Bに示すように、用紙搬送機構20は、給紙ローラ21と、搬送モータ22と、搬送ローラ23と、プラテン24と、排紙ローラ25とを有する。給紙ローラ21は、紙挿入口に挿入された用紙Sをプリンタ1内に自動的に送るためのローラであり、この例ではD形の断面形状をしている。搬送モータ22は、用紙Sを搬送方向に搬送させるためのモータであり、その動作は、プリンタ側コントローラ70によって制御される。搬送ローラ23は、給紙ローラ21によって送られてきた用紙Sを、印刷可能な領域まで搬送するためのローラである。プラテン24は、用紙Sを裏面側から支持するための部材である。排紙ローラ25は、印刷が終了した用紙Sを搬送するためのローラである。
<キャリッジ移動機構30について>
キャリッジ移動機構30は、ヘッドユニット40が取り付けられたキャリッジCRをキャリッジ移動方向に移動させるためのものである。キャリッジ移動方向には、一側から他側への移動方向と、他側から一側への移動方向が含まれている。なお、ヘッドユニット40はヘッド41を有する。このため、キャリッジ移動方向は、ヘッド41が移動するヘッド移動方向(所定方向)に相当する。また、キャリッジ移動機構30は、ヘッド41を所定方向に移動させるヘッド移動部に相当する。このキャリッジ移動機構30は、キャリッジモータ31と、ガイド軸32と、タイミングベルト33と、駆動プーリー34と、従動プーリー35とを有する。キャリッジモータ31は、キャリッジCRを移動させるための駆動源に相当する。このキャリッジモータ31の動作は、プリンタ側コントローラ70によって制御される。そして、キャリッジモータ31の回転軸には、駆動プーリー34が取り付けられている。この駆動プーリー34は、キャリッジ移動方向の一端側に配置されている。駆動プーリー34とは反対側のキャリッジ移動方向の他端側には、従動プーリー35が配置されている。タイミングベルト33は、キャリッジCRに接続されているとともに、駆動プーリー34と従動プーリー35とに架け渡されている。ガイド軸32は、キャリッジCRを移動可能な状態で支持する。このガイド軸32は、キャリッジ移動方向に沿って取り付けられている。従って、キャリッジモータ31が動作すると、キャリッジCRはこのガイド軸32に沿ってキャリッジ移動方向に移動する。これに伴い、ヘッド41もヘッド移動方向に移動する。
<ヘッド41の移動について>
次に、ヘッド41の移動について説明する。ここで、図4は、プラテン24の平面図である。図5は、ヘッド41の加速期間、定速期間、及び、減速期間を説明する概念図である。プラテン24は、用紙Sを裏面側から支持する部材であり、液体状のインク(以下、単にインクという。)を吸収するためのインク吸収部材241と、用紙Sを裏面側から支持する複数の突起242を有している。インク吸収部材241よりもキャリッジ移動方向の外側には、それぞれ待機位置が定められている。一側の待機位置WP1は、電源オフ時等においてヘッド41が位置付けられるところであり、インクの蒸発を防止するためのキャップ部材CPが設けられている。そして、この一側の待機位置WP1は、ヘッド41が一側から他側に移動する際の基点となる。また、他側の待機位置WP2は、ヘッド41が他側から一側へ移動する際の基点となる。従って、ヘッド41は、一側の待機位置WP1と他側の待機位置WP2との間を往復する。そして、移動している最中のヘッド41からインクを断続的に吐出させることで、用紙Sにドットが形成され、ひいては画像が印刷される。
ところで、高画質な画像を印刷するためには、一定間隔でドットを形成することが求められる。このため、一般的なプリンタ1では、ヘッド41の移動速度が一定になった後にインクの吐出が行われている。この場合、停止状態のヘッド41が一定速度に達するまでの加速期間や、一定速度のヘッド41が停止速度(速度0)に達するまでの減速期間において、インクの吐出は行われない。このため、所定速度に達するまでの移動距離や停止速度に達するまでの移動距離を確保する必要があり、大型化の一因となっていた。この点に関し、本実施形態のプリンタ1では、これらの加速期間や減速期間においてもインクを吐出させるようにしている。この構成により、ヘッド41の移動範囲を短くし、プリンタ1の小型化や印刷時間の短縮を図っている。
<ヘッドユニット40について>
ヘッドユニット40は、インクを用紙Sに向けて吐出させるためのものである。このヘッドユニット40は、ヘッド41とヘッド制御部HCとを有している。ここで、図6Aは、ヘッド41の構造を説明するための断面図である。図6Bは、ヘッド41の主要部の構造を説明するための一部を拡大して示す断面図である。図7は、ノズルの配置を説明するための概念図である。図8は、ヘッド制御部HCを説明するためのブロック図である。
<ヘッド41について>
ヘッド41は、ケース411と、流路ユニット412と、ピエゾ素子ユニット413とを有する。ケース411は、ピエゾ素子ユニット413を収容するための収容室411aが内部に形成されたブロック状の部材である。ピエゾ素子ユニット413は、ノズル列毎に取り付けられる。例示したヘッド41は、4つのノズル列Nk〜Nyを有する。このため、ケース411には4つの収容室411aが設けられており、4つのピエゾ素子ユニット413が各収容室411aに収容されている。
流路ユニット412は、流路形成板412aと、流路形成板412aの一方の表面に接合された弾性板412bと、流路形成板412aの他方の面に接合されたノズルプレート412cとを有する。流路形成板412aは、シリコンウエハーや金属板等によって作製されている。この流路形成板412aには、圧力室412dとなる溝部、ノズル連通口412eとなる貫通口、共通インク室412f(「共通液室」に相当する。)となる貫通口、インク供給路412g(「液体供給路」に相当する。)となる溝部が形成されている。弾性板412bは、支持枠412hと、支持枠412hによって支持される弾性膜412iと、ピエゾ素子PZTの先端が接合されるアイランド部412jとを有する。そして、アイランド部412jの周囲には、弾性膜412iによる弾性領域が形成されている。
ノズルプレート412cは、複数のノズル列Nk〜Nyが設けられた薄い金属製の板である。本実施形態のヘッド41は、ブラックインク(K)、シアンインク(C)、マゼンタインク(M)、及び、イエローインク(Y)からなる4色のインクを吐出することができる。このため、ノズルプレート412cには、ブラックインク用のノズル列Nk、シアンインク用のノズル列Nc、マゼンタインク用のノズル列Nm、及び、イエローインク用のノズル列Nyが設けられている。各ノズル列Nk〜Nyは、搬送方向に並ぶ複数のノズルNzによって構成されている。各ノズル列Nk〜Nyが180個のノズルNz(#1〜#180)によって構成されている。そして、各ノズル列Nk〜Nyは、キャリッジ移動方向(ヘッド移動方向)に並べられている。
ピエゾ素子ユニット413は、ピエゾ素子群413aと、接着用基板413bとから構成されている。ピエゾ素子群413aは櫛歯状をしており、1つ1つの櫛歯状部分がピエゾ素子PZTに相当する。このピエゾ素子群413aは、圧電体と電極層とを交互に積層したピエゾ基板に、流路ユニット412の各圧力室412dに対応した所定ピッチでスリットを形成することにより作製されている。また、ピエゾ素子群413aは、ノズルNzに対応する数のピエゾ素子PZTを有する。このヘッド41において、1つのノズル列Nk〜Nyは180個のノズルNzで構成されているので、ピエゾ素子群413aも180本のピエゾ素子PZTで構成されている。また、接着用基板413bは、矩形状の板であり、一方の表面にピエゾ素子群413aが接着され、他方の表面がケース411に接着されている。このピエゾ素子ユニット413は、ピエゾ素子群413aの先端が流路ユニット412側に向けられた状態で、収容室411aに収容されている。この収容状態において、接着用基板413bはケース411の内壁に接着されている。
ピエゾ素子PZTは、対向する電極間に電位差を与えることにより変形する。具体的には、積層方向と直交する方向、つまり素子の長手方向に伸縮する。この伸縮量は、ピエゾ素子PZTの電位に応じて定まる。そして、ピエゾ素子PZTの電位は、印加された駆動信号COM(図9を参照。)によって定められる。このため、ピエゾ素子PZTは、印加された駆動信号COMの電位に応じて伸縮する。そして、ピエゾ素子PZTが伸縮すると、アイランド部412jは圧力室412d側に押されたり、反対方向に引かれたりする。このとき、アイランド部周辺の弾性膜412iが変形するので、ノズルNzからインクを効率よく吐出させることができる。このようなピエゾ素子PZTは、インクを吐出させる動作を行うために充放電される素子に相当する。
また、ピエゾ素子PZTは、容量性を有することが知られている。すなわち、ピエゾ素子PZTは、駆動信号COMの印加が停止された後も、停止直前における電位を維持すること、つまり、蓄電状態を維持することができる。このような特性を有するピエゾ素子PZTを、ヘッド41に用いるとごく微量のインクを効率良く且つ精度良く吐出させることができる。また、印加される駆動パルスPS1〜PS4の形状に応じて、吐出されるインクの量や速度を種々制御することができる。
<ヘッド制御部HCについて>
次に、ヘッド制御部HCについて説明する。図8に示す様に、ヘッド制御部HCは、第1シフトレジスタ81Aと、第2シフトレジスタ81Bと、第1ラッチ回路82Aと、第2ラッチ回路82Bと、デコーダ83と、制御ロジック84とを有する。そして、制御ロジック84を除いた各部、すなわち、第1シフトレジスタ81A、第2シフトレジスタ81B、第1ラッチ回路82A、第2ラッチ回路82B、デコーダ83は、それぞれピエゾ素子PZT毎、つまりノズルNz毎に設けられる。そして、このヘッド制御部HCと各ピエゾ素子PZTとの間には、第1スイッチ85A及び第2スイッチ85Bが設けられている。
ヘッド制御部HCは、プリンタ側コントローラ70からの画素データSIに基づき、インクを吐出させるべくヘッド41の動作を制御する。すなわち、プリンタ側コントローラ70は、ヘッド制御部HCを介してヘッド41を制御してインクを吐出させている。具体的には、プリンタ側コントローラ70はヘッド制御部HCに対して画素データSIを送信する。受信した画素データSIに基づき、ヘッド制御部HCはスイッチ制御信号SWを出力する。このスイッチ制御信号SWは、駆動信号COMの必要部分をピエゾ素子PZTへ選択的に印加させるためのものである。そして、このスイッチ制御信号SWは、第1スイッチ85Aへ出力される。この第1スイッチ85Aは、他のスイッチに相当するものであり、スイッチ制御信号SWに従ってオンオフして駆動信号COMのピエゾ素子PZTへの印加を制御する。なお、駆動信号COMや駆動信号COMの印加制御については、後で説明する。
本実施形態の画素データSIは2ビットで構成されており、その内容はノズルNz毎(ピエゾ素子PZT毎)に定められる。この画素データSIは、転送用のクロックCLKに同期してヘッド制御部HCへ送られる。そして、上位ビット群は各第1シフトレジスタ81Aにセットされ、下位ビット群は各第2シフトレジスタ81Bにセットされる。第1シフトレジスタ81Aには第1ラッチ回路82Aが接続され、第2シフトレジスタ81Bには第2ラッチ回路82Bが接続されている。そして、プリンタ側コントローラ70からのラッチ信号LATがHレベルになると、各第1ラッチ回路82Aは対応する画素データSIの上位ビットをラッチし、各第2ラッチ回路82Bは画素データSIの下位ビットをラッチする。第1ラッチ回路82A及び第2ラッチ回路82Bでラッチされた画素データSI(上位ビットと下位ビットの組)はそれぞれ、デコーダ83に入力される。
デコーダ83は、画素データSIの上位ビット及び下位ビットに基づいてデコードを行い、第1スイッチ85Aを制御するためのスイッチ制御信号SWを出力する。すなわち、デコーダ83は、制御ロジック84から出力される選択データq0〜q3を画素データSIに基づいて選択し、スイッチ制御信号SWとして出力する。そして、制御ロジック84は、選択データq0〜q3を、ラッチ信号LATやチェンジ信号CHによって定められるタイミングで出力する。ここで、選択データq0は、ドット無し用の選択データである。つまり、選択データq0は、用紙Sにドットを形成しない場合において、スイッチ制御信号SWとなる選択データである。選択データq1は、小ドット用の選択データである。つまり、選択データq1は、用紙Sに小ドットを形成する場合において、スイッチ制御信号SWとなる選択データである。同様に、選択データq2は中ドット用の選択データ、選択データq3は大ドット用の選択データである。
デコーダ83から出力されたスイッチ制御信号SWは、第1スイッチ85Aに入力される。この第1スイッチ85Aは、スイッチ制御信号SWに応じてオンオフされるスイッチであり、オン期間において駆動信号COMをピエゾ素子PZTへ印加させる。このため、第1スイッチ85Aの入力側には駆動信号生成回路50からの駆動信号COMが印加され、第1スイッチ85Aの出力側にはピエゾ素子PZTが接続されている。このスイッチ制御信号SWは、ラッチ信号LATやチェンジ信号CHがHレベルになるタイミングで、その内容が更新される。そして、スイッチ制御信号SWがデータ[1]の場合、第1スイッチ85Aがオン状態となって、駆動信号COMがピエゾ素子PZTに印加される。また、スイッチ制御信号SWがデータ[0]の場合、第1スイッチ85Aがオフ状態となるので、駆動信号COMはピエゾ素子PZTに印加されない。前述したように、ピエゾ素子PZTは駆動信号COMの印加が停止された場合において停止直前の電位を維持する。従って、駆動信号COMの印加が停止されている期間において、ピエゾ素子PZTは駆動信号COMの印加が停止される直前の変形状態を維持する。
第2スイッチ85Bは、N−チャージ信号NCHGによって動作するスイッチである。このN−チャージ信号NCHGは、複数のピエゾ素子PZTに一括して駆動信号COMを印加させる際に用いられるものであり、一括印加信号に相当する。このため、第2スイッチ85Bの入力側には駆動信号生成回路50からの駆動信号COMが印加され、第2スイッチ85Bの出力側にはピエゾ素子PZTが接続されている。そして、このN−チャージ信号NCHGは、Lレベルで有効な信号である。すなわち、N−チャージ信号NCHGがLレベルになると、全てのピエゾ素子PZTに対して駆動信号COMが一括して印加される。このように、このプリンタ1では、駆動信号COMをピエゾ素子PZTに印加する際に制御されるスイッチを、スイッチ制御信号SW(選択データ)によって個別に制御される第1スイッチ85Aと、N−チャージ信号NCHGによって一括して制御される第2スイッチ85Bとに分けて構成しているので、インクを吐出させる際の制御と、ピエゾ素子PZTを充電させる際の制御とを個別に行うことができ、制御の自由度が増す。
<駆動信号生成回路50について>
駆動信号生成回路50は、ピエゾ素子PZTの動作(変形状態)を定めるための駆動信号COMを生成するものであり、駆動信号生成部に相当する。ここで、図9は、駆動信号生成回路50によって生成される駆動信号COM、及び、インクの吐出時に用いられる制御信号を説明する図である。また、図10は、駆動信号COMの生成を説明するための概念図である。図11は、ピエゾ素子PZTに印加される波形部と階調値との関係を説明するための概念図である。
図9に示すように、駆動信号COMは、繰り返し周期Tにおける期間T1で生成される第1波形部SS1と、期間T2で生成される第2波形部SS2と、期間T3で生成される第3波形部SS3と、期間T4で生成される第4波形部SS4とを有する。そして、第1波形部SS1は駆動パルスPS1を有している。また、第2波形部SS2は駆動パルスPS2を、第3波形部SS3は駆動パルスPS3を、第4波形部SS4は駆動パルスPS4及び変動波形部CSTを、それぞれ有している。ここで、駆動パルスPS1、駆動パルスPS3、及び駆動パルスPS4は、ノズルNzからインクを吐出させる際に用いられるものであり、互いに同じ波形をしている。また、駆動パルスPS2は、メニスカスを微振動させるための微振動パルスである。これらの駆動パルスPS1〜PS4はピエゾ素子PZTを動作させるための波形部に相当し、その形状はピエゾ素子PZTに行わせる動作に基づいて定められている。
このような駆動信号COMは、プリンタ側コントローラ70(詳しくは、CPU72)からの駆動信号生成情報に基づき、駆動信号生成回路50から出力される。ここで、駆動信号生成回路50による駆動信号COMの生成動作について説明する。プリンタ側コントローラ70は、駆動信号COMを生成するためのパラメータに基づき、更新周期τ毎の出力電圧を求める。そして、駆動信号COMを生成する場合、プリンタ側コントローラ70は、出力電圧に対応するDAC値(例えば、出力電圧を10ビットのデジタル値で表した情報)を求め、求めたDAC値を更新周期τ毎に駆動信号生成回路50へ出力する。図10の例では、クロックCLKで規定されるタイミングt(n)で電圧V1に対応するDAC値が出力される。これにより、更新周期τ(n)にて、駆動信号生成回路50の出力は電圧V1となる。そして、更新周期τ(n+4)までは、電圧V1に対応するDAC値が順次出力されるので、駆動信号生成回路50からは電圧V1が出力され続ける。また、タイミングt(n+5)では、電圧V2に対応するDAC値が出力される。これにより、更新周期τ(n+5)にて、駆動信号生成回路50の出力は電圧V1から電圧V2へ降下する。同様に、タイミングt(n+6)では、電圧V3に対応するDAC値が出力される。これにより、更新周期τ(n+6)にて、駆動信号生成回路50の出力は電圧V2から電圧V3へ降下する。以下同様にしてDAC値が出力されるため、駆動信号生成回路50から出力される電圧は、次第に降下する。そして、更新周期τ(n+10)にて、駆動信号生成回路50の出力は電圧V4になる。なお、この駆動信号生成回路50において、非出力側の端子は接地されている。このため、出力側の端子は出力電圧に対応する電位に調整される。
この駆動信号COMは繰り返し周期T毎に繰り返し生成され、繰り返し周期Tはリニア式エンコーダ61(図1等を参照。)からのタイミング信号PTSに基づいて定められる。このタイミング信号PTSは、HレベルとLレベルとに交互に切り替わる信号であり、切り替わり周期がキャリッジCRの移動速度に応じて変動する。これは、タイミング信号PTSにおけるレベルが、ヘッド41(キャリッジCR)の移動距離に応じて定められるためである(後述する)。例えば、加速期間における繰り返し周期Tは、定速期間における繰り返し周期Tよりも長くなる。
ここで、駆動信号生成回路50は、プリンタ側コントローラ70から所定の更新周期τ毎に出力される駆動信号生成情報に基づいて駆動信号COMを生成する。このため、繰り返し周期Tの開始タイミングから各駆動パルスPS1〜PS4の生成が開始されるタイミングまでの期間は、繰り返し周期Tの長さに拘わらず一定である。従って、繰り返し周期Tが変動することにより、駆動パルスPS4(繰り返し周期T内における最後の駆動パルスに相当する。)よりも後に生成される一定電位の部分(期間T4bの部分)の時間幅が変動する。以下、駆動信号COMにおける期間T4bの部分を、変動波形部CSTともいう。この変動波形部CSTは、繰り返し周期Tに応じて時間幅が変動する、一定電位の定電位部に相当する。また、駆動信号COMにおける変動波形部CST以外の部分は、繰り返し周期Tに拘わらず時間幅が一定の固定波形部DRVともいう。なお、固定波形部DRVにも一定電位の部分があるが、この一定電位の部分は、繰り返し周期Tに拘わらず一定の時間幅である点において、変動波形部CSTと相違している。
このように、駆動信号COMを固定波形部DRVと変動波形部CSTとに分けた場合、第1波形部SS1〜第3波形部SS3は固定波形部DRVに属する。そして、第4波形部SS4に関しては、期間T4aで生成される前側部分が固定波形部DRVに属し、期間T4bで生成される後側部分が変動波形部CSTに属するといえる。
この駆動信号COMは、画素データSIに基づき、必要部分がピエゾ素子PZTへ印加される。この例では、図11に示すように、ドット無しの階調値(画素データSI[00])の場合、第2波形部SS2がピエゾ素子PZTに印加される。そして、小ドットの階調値(画素データSI[01])の場合、第3波形部SS3がピエゾ素子PZTに印加される。同様に、中ドットの階調値(画素データSI[10])の場合、第1波形部SS1及び第3波形部SS3がピエゾ素子PZTに印加される。さらに、大ドットの階調値(画素データSI[11])の場合、第1波形部SS1,第3波形部SS3及び第4波形部SS4がピエゾ素子PZTに印加される。そして、各波形部SS1〜SS4はそれぞれ駆動パルスPS1〜PS4を有しているので、波形部のピエゾ素子PZTへの印加によって、駆動パルスが印加される。すなわち、小ドットの形成時には駆動パルスPS3がピエゾ素子PZTへ印加される。また、中ドットの形成時には、駆動パルスPS3及び駆動パルスPS4がピエゾ素子PZTへ印加され、大ドットの形成時には、駆動パルスPS1、駆動パルスPS3、及び駆動パルスPS4がピエゾ素子PZTへ印加される。さらに、ドット無しの場合には、駆動パルスPS2がピエゾ素子PZTへ印加される。なお、駆動パルスPS2は、メニスカス(ノズルNzの開口部で露出しているインクの自由表面)を微振動させるためのパルスである。
このような制御を行うため、このプリンタ1では、画素データSIに対応する選択データq0〜q3をスイッチ制御信号SWとし、このスイッチ制御信号SWで第1スイッチ85Aを制御している。すなわち、制御ロジック84は、ドット無し用の選択データq0として[0100]を出力し、小ドット用の選択データq1として[0010]を出力している。また、中ドット用の選択データq2として[1010]を出力し、大ドット用の選択データq3として[1011]を出力している。ここで、選択データq0〜q3における最上位ビットは、期間T1における第1スイッチ85Aのオンオフを示し、2番目のビットは期間T2における第1スイッチ85Aのオンオフを示す。同様に、3番目のビットは、期間T3における第1スイッチ85Aのオンオフを示し、最下位ビットは期間T4における第1スイッチ85Aのオンオフを示す。このため、選択データq0〜q3を構成する各ビットのデータは、最上位ビットから順に出力される。そして、出力されるデータの切り替えは、ラッチ信号LATやチェンジ信号CHがHレベルになるタイミングで行われる。例えば、ラッチ信号LATがHレベルになるタイミングでは、選択データq0〜q3における最上位ビットのデータが出力される。また、チェンジ信号CHが最初にHレベルになるタイミングでは、選択データq0〜q3における2番目のビットのデータが出力される。そして、これらの選択データq0〜q3及び画素データSIは、デコーダ83に入力されている。デコーダ83は、画素データSIに応じた選択データq0〜q3を選択し、スイッチ制御信号SWとして出力する。
<検出器群60について>
検出器群60は、プリンタ1の状況を監視するためのものである。図3A,図3Bに示すように、この検出器群60には、リニア式エンコーダ61、ロータリー式エンコーダ62、紙検出器63、及び紙幅検出器64が含まれている。リニア式エンコーダ61は、キャリッジCRのキャリッジ移動方向の位置を検出するためのものである。ロータリー式エンコーダ62は、搬送ローラ23の回転量を検出するためのものである。紙検出器63は、印刷される用紙Sを検出するためのものである。紙幅検出器64は、印刷される用紙Sの幅を検出するためのものである。
ここで、リニア式エンコーダ61について具体的に説明する。図12は、リニア式エンコーダ61を説明するための概念図である。このリニア式エンコーダ61は、タイミング信号出力部に相当し、キャリッジCR(ヘッド41)が所定距離移動する毎にタイミング信号PTSを出力する。本実施形態におけるリニア式エンコーダ61は、符号板61aと光学式センサ61bとから構成されている。符号板61aは、図3Aに示すように、筐体の背面板に、キャリッジ移動方向に沿って取り付けられ、光学式センサ61bは、図3Bに示すように、キャリッジCRの背面部に取り付けられている。そして、符号板61aは細長い板状部材によって構成されている。図12にその一部を示すように、この符号板61aには、透光性を有する透光部TLと透光性を有さない非透光部ULとが、長手方向に交互に形成されている。本実施形態では、透光部TLと非透光部ULとが同じ長さで形成されている。具体的には、1/360インチの長さで形成されている。そして、光学式センサ61bは、透光部TLの検出期間においてHレベルの検出信号を出力し、非透光部ULの検出期間においてLレベルの電圧信号を出力する。従って、リニア式エンコーダ61からのタイミング信号PTSは、キャリッジCRが1/360インチ移動する毎に、HレベルとLレベルの一方から他方へ切り替わる。そして、タイミング信号PTSは、プリンタ側コントローラ70(CPU72)に入力される。従って、プリンタ側コントローラ70は、タイミング信号PTSにおける立ち上がりタイミングや立ち下がりタイミングに基づき、キャリッジCRの移動距離を認識することができる。つまり、駆動信号COMの生成開始タイミングを容易に認識させることができる。
<プリンタ側コントローラ70について>
プリンタ側コントローラ70は、プリンタ1が有する各部を制御するものである。例えば、プリンタ側コントローラ70は、所定の搬送量で用紙Sを搬送させる動作と、キャリッジCR(ヘッド41)を移動させながら断続的にインクを吐出させる動作とを交互に行わせることで、用紙Sに画像を印刷させている。このため、プリンタ側コントローラ70は、搬送モータ22の回転量を制御することによって用紙Sの搬送を制御する。また、プリンタ側コントローラ70は、キャリッジモータ31の回転を制御することによってキャリッジCRの移動を制御する。加えて、画素データSIをヘッド制御部HCへ出力することにより、スイッチ制御信号SWによってインクを吐出させる制御を行う。また、プリンタ側コントローラ70は、駆動信号生成情報を駆動信号生成回路50へ出力したり、N−チャージ信号NCHGを第2スイッチ85Bへ出力したりする制御も行っている。すなわち、プリンタ側コントローラ70は、一括制御信号としてのN−チャージ信号NCHGによって、駆動信号COMを複数のピエゾ素子PZTに強制的に印加させる制御も行っている。
このプリンタ側コントローラ70は、図2に示すように、インタフェース部71と、CPU72と、メモリ73と、制御ユニット74とを有する。インタフェース部71は、外部装置であるコンピュータ110との間でデータの受け渡しを行う。CPU72は、プリンタ1の全体的な制御を行うための演算処理装置である。メモリ73は、CPU72のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM、ROM等の記憶素子によって構成される。そして、CPU72は、メモリ73に記憶されているコンピュータプログラムに従って各制御対象部を制御する。例えば、CPU72は、制御ユニット74を介して用紙搬送機構20やキャリッジ移動機構30を制御する。例えば、搬送モータ22やキャリッジモータ31に対する制御信号を出力する。また、CPU72は、ヘッド41の動作を制御するためのヘッド制御信号(クロックCLK,画素データSI,ラッチ信号LAT,チェンジ信号CH,図8を参照。)をヘッド制御部HCへ出力したり、N−チャージ信号NCHGを第2スイッチ85Bへ出力したり、駆動信号COMを生成させるための駆動信号生成情報を駆動信号生成回路50へ出力したりする。
<印刷動作について>
前述した構成を有する印刷システム100において、アプリケーションプログラム上で印刷が指示されると、プリンタ1のホスト側コントローラ111はプリンタドライバに従って動作し、画像データ等から印刷データを生成する。そして、ホスト側コントローラ111は、生成された印刷データをプリンタ1に出力する。この印刷データを受信するとプリンタ1は、用紙Sに対する印刷動作を行う。すなわち、プリンタ側コントローラ70は、メモリ73に格納されたファームウェアに従って制御対象部を制御する。このようなプリンタドライバやファームウェアは、印刷動作を実行させるためのコードを有する。
この印刷動作について簡単に説明する。ここで、図13Aは、プリンタドライバによってホスト側コントローラ111で行われる動作を説明するフローチャートである。図13Bは、ファームウェアによってプリンタ側コントローラ70で行われる動作を説明するフローチャートである。
アプリケーションプログラム上で印刷命令が行われると、ホスト側コントローラ111は、印刷対象となる画像データに対して、解像度変換処理(ステップS10)、色変換処理(ステップS20)、ハーフトーン処理(ステップS30)、ラスタライズ処理(S40)を順次行う。解像度変換処理は、印刷対象となる画像データを、用紙Sに印刷される解像度(印刷するときのドットの間隔であり、印刷解像度ともいう。)に変換する処理である。色変換処理は、画像データを構成するRGB画素データを、印刷用のCMYK画素データに変換する処理である。ここでのCMYK画素データは、多段階の階調値を持っている。例えば256階調の階調値を持っている。ハーフトーン処理は、色変換処理後のCMYK画素データプリンタ1が表現可能な、少段階の階調値を有するCMYK画素データに変換する処理である。この処理により、例えば2ビットのCMYK画素データが得られる。ラスタライズ処理は、ハーフトーン処理がなされたCMYK画素データを、プリンタ1へ転送すべきデータ順に変更する処理である。ラスタライズ処理されたデータが、前述した画素データSIとなる。そして、この画素データSIは、印刷データの一部としてプリンタ1へ出力される。
一方、プリンタ側コントローラ70は、印刷データ中の印刷命令を受信すると(S110)、給紙動作(S120)、ドット形成動作(S130)、搬送動作(S140)、排紙判断(S150)、排紙処理(S160)、及び印刷終了判断(S170)を順に行う。給紙動作は、印刷対象となる用紙Sを移動させ、印刷開始位置(所謂頭出し位置)に位置決めする動作である。ドット形成動作は、用紙Sにドットを形成するための動作である。このドット形成動作において、プリンタ側コントローラ70は、キャリッジモータ31を駆動したり、駆動信号生成回路50やヘッド41に対して制御信号を出力したりする。搬送動作は、用紙Sを搬送方向へ移動させる動作である。この搬送動作により、先程のドット形成動作によって形成されたドットとは異なる位置にドットを形成することができる。排紙判断は、印刷対象となっている用紙Sに対する排出の要否を判断する動作である。排紙処理は、用紙Sを排出させる処理であり、先程の排紙判断で「排紙する」と判断されたことを条件に行われる。印刷終了判断は、印刷を続行するか否かの判断である。
===ピエゾ素子PZTの保護について===
<ピエゾ素子PZTの自然放電について>
ところで、前述したピエゾ素子PZTのように、インクを吐出させるために充放電される素子は、駆動信号COMの非印加時において自然放電する場合がある。例えば、長期間の使用等によって劣化した場合や湿度の高い環境下に晒された場合に自然放電する可能性がある。自然放電が生じると素子の電位が低くなる。そして、電位の低下度合いは、駆動信号COMの非印加期間が長くなるほど大きくなる。ここで、ピエゾ素子PZTの自然放電について何も対策を施さないと、非印加期間においてピエゾ素子PZTの放電が進み、ピエゾ素子PZTの電位が過度に低下してしまうことがある。ピエゾ素子PZTの電位が過度に低下してしまうと、駆動信号COMの電位(非接地側の電位)とピエゾ素子PZTの電位に大きなギャップが生じ、駆動信号COMを再び印加した際にピエゾ素子PZTの電位が急激に上昇してしまう。このような急激な電位上昇により、ピエゾ素子PZTに過度な負担(例えば、機械的ストレス)が掛かってしまう。
特に例示したプリンタ1のように、ヘッド41の加速期間においてもインクを吐出させるものでは、加速期間において駆動信号COMの印加されていない期間が長くなるため、ピエゾ素子PZTの電位低下が顕著となり易い。以下、この点について説明する。ここで、図14Aは、加速期間と定速期間を説明するための概念図である。図14Bは、加速期間と定速期間におけるタイミング信号PTSの違いを説明する概念図である。図14Cは、加速期間や定速期間における駆動信号COMの違いを説明する概念図である。図15Aは、ドット無しにおけるピエゾ素子PZTの電位を説明する概念図である。図15Bは、小ドットにおけるピエゾ素子PZTの電位を説明する概念図である。
これらの図に示すように、加速期間におけるヘッド41の移動速度は、定速期間におけるヘッド41の移動速度よりも低い。そして、前述したように、リニア式エンコーダ61から出力されるタイミング信号PTSは、ヘッド41(キャリッジCR)が1/360インチ移動する毎にレベルが切り替えられる。このため、ヘッド41の移動速度が低い程、タイミング信号PTSにおけるレベルの切り替え周期が長くなる。例えば、符号a1で示す移動開始直後の切り替え周期は、符号a3で示す定速期間での切り替え周期よりも長い。また、符号a2で示す加速期間途中の切り替え周期は、符号a1で示す移動開始直後の切り替え周期よりも短く、符号a3で示す定速期間での切り替え周期よりも長い。例えば、移動開始直後の切り替え周期a1は、定速期間での切り替え周期a3に比べて20%位長くなっている。
そして、駆動信号COMの生成開始タイミングは、タイミング信号PTSに基づいて定められる。このため、加速期間における駆動信号COMは、定速期間における駆動信号COMよりも長くなる。この場合、図14Cに示すように、変動波形部CSTの時間が長くなる。すなわち、移動速度が遅くなる程、変動波形部CSTの時間が長くなる。このように、変動波形部CSTの時間が長くなることで、ピエゾ素子PZTの電位の低下幅が大きくなり、ピエゾ素子PZTに過度な負担が掛かってしまう。
ドット無しの場合は、第2波形部SS2がピエゾ素子PZTに印加された後、他の波形部はピエゾ素子PZTに印加されない。このため、図15Aに示すように、ピエゾ素子PZTの電位は、第2波形部SS2の印加が終了した後、徐々に低下する。そして、繰り返し周期Tの終わりにおいて、ピエゾ素子PZTの電位は、変動波形部CSTの電位(中間電位)よりも低くなってしまう。ここで、電位の低下度合いは、繰り返し周期Tの長さに依存して変化する。ピエゾ素子PZTの電位は、例えば、符号a2で示される加速期間の途中において変動波形部CSTよりもギャップG1aだけ低くなり、符号a1で示される移動開始直後において変動波形部CSTよりもギャップG1bだけ低くなる。つまり、駆動信号COMの非印加期間が長くなる程、電位の低下度合いが大きくなる。
同様に、小ドットの形成の場合も、第3波形部SS3がピエゾ素子PZTに印加された後、他の波形部はピエゾ素子PZTに印加されないので、電位の低下幅が大きくなりやすい。例えば、図15Bに示すように、ピエゾ素子PZTの電位は、加速期間の途中において変動波形部CSTよりもギャップG2aだけ低くなり、移動開始直後において変動波形部CSTよりもギャップG2bだけ低くなる。この場合にも、駆動信号COMの非印加期間が長くなる程、電位の低下度合いが大きくなる。
<電位低下を防止するための構成について>
この点に着目して、本実施形態のプリンタ1では、次の構成を採っている。すなわち、このプリンタ1では、駆動パルスPS1〜PS4(ピエゾ素子PZTを動作させるための波形部に相当する。)を含む固定波形部DRVの後に、一定電位の変動波形部CSTを含む駆動信号COMを、駆動信号生成回路50によって、繰り返し周期T毎に生成させている。そして、キャリッジ移動機構30(ヘッド移動部)によりヘッド41を所定方向に移動させると共に、ヘッド41が所定速度に達するまでの加速期間において、プリンタ側コントローラ70により変動波形部CSTを複数のピエゾ素子PZTへ強制的に印加させている。さらに、変動波形部CSTをピエゾ素子PZTへ強制的に印加させるにあたり、プリンタ側コントローラ70は、駆動信号COMの少なくとも一部を複数のピエゾ素子PZTへ一括して印加させるためのN−チャージ信号NCHGを用いている。
このような構成を採ることにより、駆動信号COMがピエゾ素子PZTに印加されない非印加期間を、できる限り短くすることができ、ピエゾ素子PZTにおける電位の低下幅を小さくすることができる。そして、加速期間にインクを吐出させる場合、ヘッド41の移動速度が所定速度に達していないため、ある繰り返し周期Tから次の繰り返し周期Tまでの変動波形部CSTが長くなりがちだが、変動波形部CSTが素子に印加されているので、ピエゾ素子PZTを所望の電位に維持できる。その結果、ピエゾ素子PZTの負担を軽減することができる。
<制御の具体例について>
以下、制御の具体例について説明する。ここで、図16は、駆動信号COMにおけるピエゾ素子PZTへの印加部分を、階調毎に示した図である。図17は、ピエゾ素子PZTの電位を、ドット無しの階調値と小ドットの階調値について示した図である。なお、以下の説明では、図9も参照する。
図9に示すように、プリンタ側コントローラ70は、期間T4の途中、詳しくは、駆動パルスPS4の生成終了直後のタイミングで、N−チャージ信号NCHGをLレベルに切り替える。このとき、プリンタ側コントローラ70は、切り替えタイミングを駆動信号COMの生成開始タイミングからの経過時間に基づいて判断している。この実施形態では、プリンタ側コントローラ70のCPU72は、メモリ73の一部分をタイマーとして用いている。すなわち、メモリ73の一部分を、短い周期でカウントアップするタイマーとして用い、駆動信号COMの生成が開始される毎にカウントを開始させる(0カウントからカウントを再始動させる)。そして、CPU72は、所定の経過時間、すなわち、駆動パルスPS4の生成終了時点に対応するカウント値に達した時点で、N−チャージ信号NCHGをLレベルに切り替えている。このようにタイマーを用いてN−チャージ信号NCHGの出力レベルを切り替えているので、Lレベルの信号の出力タイミングを、容易に且つ確実に認識することができる。
なお、タイマーは一例であり、駆動パルスPS4の生成終了が認識できれば、タイマーでなくてもよい。前述したように、プリンタ側コントローラ70は、駆動信号生成回路50に対し、DAC値を更新周期τ毎に出力している。このため、出力したDAC値が何番目のものであるかが判れば、駆動パルスPS4の生成終了を判断することができる。従って、プリンタ側コントローラ70によるDAC値の出力回数をカウントし、このカウント値に基づいてN−チャージ信号NCHGをLレベルに切り替えてもよい。例えば、プリンタ側コントローラ70のCPU72は、メモリ73の一部分をカウント領域として用い、DAC値を送信する毎にこのカウント領域の内容をカウントアップ(+1更新)する。そして、このカウント領域のカウント値が駆動パルスPS4の生成終了に対応するカウント値に達したことを条件に、N−チャージ信号NCHGをLレベルに切り替える。このように構成しても、駆動パルスPS4の生成終了直後のタイミングで、N−チャージ信号NCHGをLレベルに切り替えることができる。
N−チャージ信号NCHGがLレベルに切り替わることにより、第2スイッチ85Bがオン状態になる。N−チャージ信号NCHGがLレベルに切り替わるタイミングは、駆動信号COMにおける固定波形部DRVと変動波形部CSTの境界に対応する。このため、第2スイッチ85Bがオン状態になると、期間T4bにおいて各ピエゾ素子PZTには変動波形部CSTが印加される。ここで、N−チャージ信号NCHGは、複数のピエゾ素子PZTに対して一括して駆動信号COMを印加するためのものである。このN−チャージ信号NCHGにより、1つのノズル列Nk〜Nyに属する180本のピエゾ素子PZTに対して駆動信号COMが一括して印加される。つまり、階調値に拘わらず、駆動信号COMが印加される。そして、画素データSIがドット無し(データ[00]),小ドットの形成(データ[01]),中ドットの形成(データ[10])の場合には、期間T4において、スイッチ制御信号SW(選択データq0〜q2)が[0]であり、第1スイッチ85Aがオフ状態である。このため、期間T4bにおいて、第2スイッチ85Bを介して変動波形部CSTがピエゾ素子PZTに印加される。また、大ドットの階調値(データ[11])では、期間T4において、スイッチ制御信号SW(選択データq3)が[1]であるため、期間T4bにおいて、第1スイッチ85Aと第2スイッチ85Bとが共にオン状態になり、これらのスイッチを介して変動波形部CSTがピエゾ素子PZTに印加される。
このようにして、変動波形部CSTが印加されると、各ピエゾ素子PZTは、変動波形部CSTに対応する電位に調整される。その結果、図17に示すように、ドット無しの階調値や小ドットの階調値であっても、駆動信号COMの非印加期間が一定の時間に限定される。すなわち、ドット無しの階調値において非印加期間は期間T3,T4aとなり、小ドットの階調において非印加期間は期間T4aとなる。そして、期間T4bで変動波形部CSTが印加されるが、駆動信号COMの非印加期間が制限されていることから、非印加期間におけるピエゾ素子PZTの電位低下が抑制される。例えば、ドット無しの階調値において、変動波形部CSTとの差はギャップG1cとなり、前述したギャップG1a,G1bよりも小さくすることができる。同様に、小ドットの階調値において、変動波形部CSTとの差はギャップG2cとなり、これも前述したギャップG2a,G2bより小さくすることができる。また、繰り返し周期Tが長くなっても、固定波形部DRVの長さは変わらないので、ギャップG1c,G2cは一定となる。その結果、加速期間において変動波形部CSTが長くなったとしても、ピエゾ素子PZTの電位低下を防止することができ、ピエゾ素子PZTに対する負担を軽減することができる。そして、このプリンタ1では、N−チャージ信号NCHGを用いて、複数のピエゾ素子PZTに対し変動波形部CSTを印加しているので、制御が容易である。
なお、以上はヘッド41の加速期間における制御について説明したが、このプリンタ1では、定速期間や減速期間(図5を参照。)においても同様な制御が行われる。そして、定速期間では、変動波形部CSTの長さが加速期間よりも短くなるものの、図14Cに示すように、所定期間に亘って生成される。そして、変動波形部CSTがピエゾ素子PZTに印加されることで、加速期間と同様にピエゾ素子PZTの電位低下が防止される。また、減速期間においても、同様にピエゾ素子PZTの電位低下が防止される。従って、定速期間や減速期間における制御を、加速期間における制御と同じように行うことができ、制御の効率化が図れる。
===その他の実施形態===
上記の実施形態は、主としてプリンタ1を有する印刷システム100について記載されているが、その中には液体吐出装置及び液体吐出システムの開示も含まれている。また、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
<駆動信号COMの印加方法について>
前述した実施形態において、N−チャージ信号NCHGによって動作する第2スイッチ85B(一括印加用のスイッチ)はピエゾ素子PZT毎に設けられていたが、この構成に限定されない。例えば、所定個数のピエゾ素子PZT毎に第2スイッチ85Bを設けてもよいし、1つのノズル列Nk〜Nyに1つの第2スイッチ85Bを設けてもよい。さらに、第1スイッチ85Aと第2スイッチ85Bの機能を有する単一のスイッチを設け、スイッチ制御信号SW及びN−チャージ信号NCHGによって、このスイッチを動作させるように構成してもよい。
<液体の吐出動作を行う素子について>
前述した実施形態において、液体の吐出動作を行う素子としてピエゾ素子PZTを例示したが、液体の吐出動作を行う素子はピエゾ素子PZTに限定されない。液体を吐出するための動作を行うために充放電される素子であればよい。例えば、静電アクチュエータであってもよい。
<インクについて>
前述の実施形態は、プリンタ1の実施形態であったので、液体状の染料インクや顔料インクをノズルNzから吐出させていた。しかし、ノズルNzから吐出させるインクは、液体状であれば、このようなインクに限られるものではない。
<他の応用例について>
また、前述の実施形態では、プリンタ1が説明されていたが、これに限られるものではない。例えば、カラーフィルタ製造装置、染色装置、微細加工装置、半導体製造装置、表面加工装置、三次元造形機、液体気化装置、有機EL製造装置(特に高分子EL製造装置)、ディスプレイ製造装置、成膜装置、DNAチップ製造装置などのインクジェット技術を応用した各種の液体吐出装置に、本実施形態と同様の技術を適用しても良い。また、これらの方法や製造方法も応用範囲の範疇である。
印刷システム100の構成を説明する図である。 コンピュータ110、及びプリンタ1の構成を説明するブロック図である。 図3Aは、プリンタ1の構成を示す図である。図3Bは、プリンタ1の構成を説明する側面図である。 プラテン24の平面図である。 ヘッド41の加速期間、定速期間、及び、減速期間を説明する概念図である。 図6Aは、ヘッド41の構造を説明するための断面図である。図6Bは、ヘッド41の主要部の構造を説明するための一部を拡大して示す断面図である。 ノズルの配置を説明するための概念図である。 ヘッド制御部HCを説明するためのブロック図である。 駆動信号生成回路50によって生成される駆動信号COM、及び、インクの吐出時に用いられる制御信号を説明する図である。 駆動信号COMの生成を説明するための概念図である。 ピエゾ素子PZTに印加される波形部と階調値との関係を説明するための概念図である。 リニア式エンコーダ61を説明するための概念図である。 図13Aは、プリンタドライバによってホスト側コントローラ111で行われる動作を説明するフローチャートである。図13Bは、ファームウェアによってプリンタ側コントローラ70で行われる動作を説明するフローチャートである。 図14Aは、加速期間と定速期間を説明するための概念図である。図14Bは、加速期間と定速期間におけるタイミング信号PTSの違いを説明する概念図である。図14Cは、加速期間や定速期間における駆動信号COMの違いを説明する概念図である。 図15Aは、ドット無しにおけるピエゾ素子PZTの電位を説明する概念図である。図15Bは、小ドットにおけるピエゾ素子PZTの電位を説明する概念図である。 駆動信号COMにおけるピエゾ素子PZTへの印加部分を、階調毎に示した図である。 ピエゾ素子PZTの電位を、ドット無しの階調値と小ドットの階調値について示した図である。
符号の説明
1 プリンタ,20 用紙搬送機構,21 給紙ローラ,22 搬送モータ,
23 搬送ローラ,24 プラテン,241 吸収部材,242 突起,
25 排紙ローラ,30 キャリッジ移動機構,31 キャリッジモータ,
32 ガイド軸,33 タイミングベルト,34 駆動プーリー,
35 従動プーリー,40 ヘッドユニット,41 ヘッド,
411 ケース,411a 収容室,412 流路ユニット,
412a 流路形成板,412b 弾性板,412c ノズルプレート,
412d 圧力室,412e ノズル連通口,412f 共通インク室,
412g インク供給路,412h 支持枠,412i 弾性膜,
412j アイランド部,413 ピエゾ素子ユニット,
413a ピエゾ素子群,413b 接着用基板,50 駆動信号生成回路,
60 検出器群,61 リニア式エンコーダ,
61a 符号板,61b 光学式センサ,62 ロータリー式エンコーダ,
63 紙検出器,64 紙幅検出器,70 プリンタ側コントローラ,
71 インタフェース部,72 CPU,73 メモリ,74 制御ユニット,
81A 第1シフトレジスタ,81B 第2シフトレジスタ,
82A 第1ラッチ回路,82B 第2ラッチ回路,83 デコーダ,
84 制御ロジック,85A 第1スイッチ,85B 第2スイッチ,
100 印刷システム,110 コンピュータ,111 ホスト側コントローラ,
112 インタフェース部,113 CPU,114 メモリ,
120 表示装置,130 入力装置,131 キーボード,132 マウス,
140 記録再生装置,141 フレキシブルディスクドライブ装置,
142 CD−ROMドライブ装置,S 用紙,CR キャリッジ,
WP1 一側の待機位置,WP2 他側の待機位置,
PZT ピエゾ素子,Nz ノズル,Nk ブラックインク用のノズル列,
Nc シアンインク用のノズル列,Nm マゼンタインク用のノズル列,
Ny イエローインク用のノズル列,HC ヘッド制御部,COM 駆動信号,
SI 画素データ,LAT ラッチ信号,CH チェンジ信号,
NCHG N−チャージ信号,SW スイッチ制御信号,q0〜q3 選択データ,
SS1 第1波形部,SS2 第2波形部,
SS3 第3波形部,SS4 第4波形部,
PS1〜PS4 駆動パルス,DRV 固定波形部,CST 変動波形部,
TL 透光部,UL 非透光部

Claims (12)

  1. 液体を吐出するための動作を行うために充放電される素子を複数有するヘッドと、
    前記ヘッドを所定方向に移動させるヘッド移動部と、
    前記素子を動作させるための波形部を含むと共に、一定電位の定電位部を前記波形部よりも後に含む駆動信号を、繰り返し生成する駆動信号生成部と、
    前記所定方向に移動されるヘッドが所定速度に達するまでの加速期間に、前記波形部の少なくとも一部を前記素子に印加させるための制御を行うコントローラであって、
    前記駆動信号の少なくとも一部を複数の前記素子へ一括して印加させるための一括印加信号によって、前記波形部の生成終了後に前記定電位部を複数の前記素子へ強制的に印加させるコントローラと、を有する液体吐出装置。
  2. 請求項1に記載の液体吐出装置であって、
    前記ヘッドが所定距離移動する毎にタイミング信号を出力するタイミング信号出力部をさらに有し、
    前記駆動信号生成部は、
    前記タイミング信号に基づいて前記駆動信号の生成を開始する液体吐出装置。
  3. 請求項2に記載の液体吐出装置であって、
    前記タイミング信号出力部は、
    前記ヘッドが所定距離移動する毎に、HレベルとLレベルとで交互に変化するタイミング信号を出力する液体吐出装置。
  4. 請求項2または請求項3に記載の液体吐出装置であって、
    前記コントローラは、
    前記駆動信号生成部が前記駆動信号の生成を開始してからの経過時間に基づいて、前記一括印加信号を出力する液体吐出装置。
  5. 請求項4に記載の液体吐出装置であって、
    前記コントローラは、
    タイマーによって計測された前記駆動信号の生成開始からの経過時間に基づいて、前記一括印加信号を出力する液体吐出装置。
  6. 請求項1から請求項5のいずれかに記載の液体吐出装置であって、
    前記素子と前記駆動信号生成部との間に設けられ、前記駆動信号の前記素子への印加を制御するスイッチをさらに有し、
    前記コントローラは、
    前記一括印加信号によって前記スイッチを制御し、前記定電位部を複数の前記素子へ強制的に印加させる液体吐出装置。
  7. 請求項6に記載の液体吐出装置であって、
    前記素子と前記駆動信号生成部との間に設けられ、前記駆動信号の前記素子への印加を制御する他のスイッチをさらに有し、
    前記コントローラは、
    スイッチ制御信号によって前記他のスイッチを制御し、前記波形部の必要部分を前記素子へ印加させる液体吐出装置。
  8. 請求項1から請求項7の何れかに記載の液体吐出装置であって、
    前記素子は、
    印加された前記駆動信号の電位に応じて変形する液体吐出装置。
  9. 請求項1から請求項8の何れかに記載の液体吐出装置であって、
    前記コントローラは、
    前記所定方向に移動されるヘッドが前記所定速度で一定の定速期間に、前記波形部を前記素子に印加させるための制御を行う液体吐出装置。
  10. 請求項1から請求項9の何れかに記載の液体吐出装置であって、
    前記コントローラは、
    前記所定方向に移動されるヘッドが前記所定速度から停止速度に達するまでの減速期間に、前記波形部を前記素子に印加させるための制御を行う液体吐出装置。
  11. 液体を吐出するための動作を行うために充放電される素子を複数有するヘッドと、
    前記ヘッドを所定方向に移動させるヘッド移動部と、
    前記ヘッドが所定距離移動する毎に、HレベルとLレベルとで交互に変化するタイミング信号を出力するタイミング信号出力部と、
    前記素子を動作させるための波形部を含むと共に、一定電位の定電位部を前記波形部よりも後に含む駆動信号を繰り返し生成し、且つ、前記タイミング信号に基づいて前記駆動信号の生成を開始する駆動信号生成部と、
    前記素子と前記駆動信号生成部との間に設けられ、前記駆動信号の前記素子への印加を制御するスイッチと、
    前記素子と前記駆動信号生成部との間に設けられ、前記駆動信号の前記素子への印加を制御する他のスイッチと、
    前記所定方向に移動されるヘッドが所定速度に達するまでの加速期間、前記所定速度で一定の定速期間、及び、前記所定速度から停止速度に達するまでの減速期間に、前記波形部の少なくとも一部を前記素子に印加させるための制御を行うコントローラであって、
    タイマーによって計測された、前記駆動信号生成部が前記駆動信号の生成を開始してからの経過時間に基づいて、前記駆動信号の少なくとも一部を複数の前記素子へ一括して印加させるための一括印加信号を出力し、
    前記一括印加信号によって前記スイッチを制御し、前記波形部の生成終了後に、前記定電位部を複数の前記素子へ強制的に印加させ、
    スイッチ制御信号によって前記他のスイッチを制御し、前記波形部の必要部分を前記素子へ印加させるコントローラと、を有し、
    前記素子は、
    印加された前記駆動信号の電位に応じて変形する液体吐出装置。
  12. 液体を吐出するための動作を行うために充放電される素子を動作させるための波形部を含むと共に、一定電位の定電位部を前記波形部よりも後に含む駆動信号を、繰り返し生成するステップと、
    前記素子を複数有するヘッドを、所定方向に移動させるステップと、
    前記所定方向に移動されるヘッドが所定速度に達するまでの加速期間に、前記波形部を前記素子に印加させるための制御を行うステップと、
    前記波形部の生成終了後に、前記駆動信号の少なくとも一部を複数の前記素子へ一括して印加させるための一括印加信号によって、前記定電位部を複数の前記素子へ強制的に印加させるステップと、を有する液体吐出方法。

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