JP4782528B2 - 塩基配列決定方法と試薬 - Google Patents

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Description

本発明は核酸分析方法及び核酸分析キットに関する。より詳しくは、DNA相補鎖合成を利用したDNA塩基配列決定及びそのためのキットに関する。
DNA塩基配列決定にはゲル電気泳動と蛍光検出を用いた方法が広く用いられている。この方法では、まず配列解析の対象となるDNA断片を増幅する。次いで、5’末端を始点として種々の長さのDNA断片を作製し、その3’末端に塩基種に応じて波長の異なる蛍光標識を付加する。そして、ゲル電気泳動により各蛍光標識断片の長さの違いを1塩基の差で識別すると共に、それぞれの断片群が発する蛍光色から3’末端の塩基種を特定する。DNAは短い断片群から順次蛍光検出部を通過するため、蛍光色を計測することで短いDNAから順に末端塩基種が特定され、配列決定が可能となる。この方法を利用した蛍光式DNAシーケンサーは幅広く普及しており、ヒトゲノム解析においても大いに活躍した。
2003年ヒトゲノム配列解析の終了が宣言され、配列情報を医療や種々の産業に活用する時代になってきた。最近のDNA解析では長い配列の全てを解析する必要はなく、目的とする特定領域の配列を知れば十分なことも多い。そのため、このような短いDNA配列の解析に適した、簡便な方法や装置も必要とされるようになってきた。
こうした要求に応えて生まれた技術として、パイロシーケンシングに代表される段階的相補鎖合成反応による配列決定方法がある。この方法ではターゲットとするDNA鎖にプライマーをハイブリダイズさせ、4種の相補鎖合成核酸基質(dATP、dCTP、dGTP、dTTP)を1種類ずつ順番に反応液中に加えて相補鎖合成反応を行う。相補鎖合成反応が起きると、その副産物としてピロリン酸(PPi)が生成する。パイロシーケンシングでは、PPiは共存するATP sulfurylaseの働きでAPS(adenosine 5’-phosphosulfate)と反応してATPを生成し、このATPがルシフェラーゼの共存下でルシフェリンと反応して発光を生じる。従って、生じた発光を検出することで、加えた相補鎖合成核酸基質がDNA鎖に取り込まれたことがわかり、ターゲットとなったDNA鎖の配列を決定することができる(非特許文献1参照)。反応に使われなかった相補鎖合成核酸基質は、次の反応ステップに影響が無いようアピラーゼなどの酵素によって速やかに分解される。しかし、相補鎖合成核酸基質のうちdATPは発光基質であるATPと構造が似ており、ルシフェリンと反応して背景光を与える原因になるため、発光基質とはならないdATPαSなどのdATP誘導体がATPに代えて用いられている。
一方、DNA解析技術が普及するにつれ、よりコストパーフォーマンスの良い方法が望まれるようになってきた。DNA配列決定のコストを下げるためには、簡便で安価な装置の使用と試薬コストの低減が重要である。安価な化学発光検出装置は、光ダイオードを検出器に用いることで実現できる(非特許文献2参照)。しかし、従来の方法では、この装置を用いてDNA配列決定を行うために多量のDNAサンプルと試薬が必要となる。すなわち、光ダイオードを用いた化学発光検出装置の検出限界は、光電子増倍管を用いたシステムよりも検出感度が1桁劣るため、fmolオーダーのATP検出にはルシフェラーゼなどの発光試薬の量を増やさなければならない。
パイロシーケンシングでは、DNA相補鎖合成で生成するPPiをATP sulfurylaseの存在下でAPSに反応させ、生成するATPに由来する化学発光を検出する。しかし、背景光が存在する場合、得られる検出感度は必ずしも生成するATP量を反映しない。例えば、ATPに比べて反応効率は1/1000程度であるが、APSはルシフェラーゼの反応基質となり光を発する。相補鎖合成で生成したPPiを効率よくATPに変換するためには、通常5μM程度のAPSが反応液に加えられなければならない。反応液の容積を100μlとした場合、5μMのAPSは約500 fmolのATPに相当する発光を生じる。従って、パイロシーケンシングで精度良いDNA塩基配列決定を行うためには、ピコモルレベルのDNA試料とこれに見合った多量の試薬を使用しなければならないことになる。
ルシフェラーゼ濃度を増やすと発光量も増加するため、微量のATPを検出する場合には感度を向上させる有効な手段となるが、パイロシーケンシングの場合には同時にAPSや試薬中の不純物による背景光も強くなってしまうため有効とはいえない。また、使用するAPS量を減らすと測定しようとする信号も減少するためAPSを用いる限り検出限界を下げることができず、検出限界はAPS濃度で決められてしまう。
以上の問題に関連して、APSを使用せずにPPiからATPを生成させる方法として、ピルビン酸リン酸ジキナーゼ(PPDK)を用いる方法が知られている。例えば、PCR時に生成するPPiをAMPとPPDKを用いてATPに変換後、ルシフェリン−ルシフェラーゼ反応により発光検出する方法(非特許文献3参照)や、PPiをPPDKとAMPを用いた生物発光により測定し、SNP解析を行う方法(非特許文献4参照)が報告されている。さらに、生物発光試薬及びその試薬を用いたアデノシンリン酸エステルの定量法並びにその試薬を用いたATP変換反応系に関与する物質の定量法が開示されている(特許文献1参照)。しかし、これらはいずれも大量のDNAサンプルを用いて実施されており、PPDKとAMPを用いた微量DNAサンプルの解析や配列決定を可能にする方法は未だ知られていない。
特開平09-234099号公報 Electrophoresis 2001, 22, 3497-3504 Measurement Science and Technology 13 (2002) 1779-1785 K. Karasawa, et al., 2003年日本薬学会 要旨集 発表番号29[P1]-I-204 E. Munakata, et al., 2004年日本薬学会 要旨集 発表番号29[P2]-I-311
本発明の課題は、パイロシーケンシングで問題となる背景光の原因を除去して、微量のDNAサンプルを用いて高感度かつ簡便にDNA配列解析するための方法を提供することにある。
上記課題を克服するために、本発明ではルシフェリン反応の基質にならないAMPをPPDKの存在下でピロリン酸(PPi)と反応させてATPを生成させる。さらに、試薬中に含まれる背景光の原因となる物質を特定し、PPaseなどの酵素を用いてこれらによる背景光を低減する。ただし、化学発光を用いた塩基配列決定(パイロシーケンシング)では4つの酵素反応が一つの反応槽で競合して起こるため、これらの反応を考慮して条件を最適化する必要がある。例えば、反応溶液のpH、いくつかの反応に影響を及ぼすAMP濃度(AMPはdATPなどと類似の構造を持つため、大量に共存するとDNA相補鎖合成反応を阻害する)を最適化しなければならない。かくして、発明者らはパイロシーケンシングにAMPとPPDKを用いたATP生成反応を適用するための最適条件を決定し、高感度な配列解析方法を実現することに成功した。
ATPは生成反応後に一度除去すれば良いが、PPiはdNTPの分解によって再度生成する。発明者らは、あらかじめ試薬に微量のPPase(配列決定に支障のない程度のPPase)を添加し、測定に先立ってPPiを分解することにより、高感度な測定を実現できることを確認した。また、PPiからのATP生成反応において、発光基質とならないAMPを使用することで背景光を大幅に低減することができた。これにより、通常より1桁少ない0.1pmol以下の量のDNAを用いて塩基配列決定を行うことが可能になった。また、共存するAMP濃度を特定範囲に制限することで、他の反応阻害を防止し、繰り返し核酸基質を加え、連続して相補鎖合成を行う配列決定が可能になった。これにより、DNA配列解析に用いる試薬の量と費用を大幅に削減できた。
以上のとおり、本発明は、ルシフェリン反応の基質にならないAMPを用いたATP生成反応と試薬中に含まれるATPやPPi等の分解により、これらに起因する背景光を除去して高感度なDNA検出を実現する。本発明による検出感度の向上は、安価な光検出器を用いたDNA検査装置、微細な反応セルに微量のDNAを入れてDNA配列決定を行うマイクロDNA解析デバイス、更に反応セルを多量に用いた大量DNA解析装置を用いたDNA配列解析を可能にし、効率的なDNA解析を実現する。
本発明は、試料核酸を含む反応液において、前記試料核酸を鋳型とする相補鎖合成を行う工程と、前記相補鎖合成で生成するピロリン酸(PPi)をピルビン酸リン酸ジキナーゼ(PPDK)の共存下で30〜800μMのAMPと反応させてATPを生成させる工程と、前記ATPを反応基質とするルシフェラーゼ反応を行う工程と、前記ルシフェラーゼ反応で生じる化学発光を検出して相補鎖合成の有無を判定する工程とを含む、核酸分析方法に関する。
前記ATP生成工程において、PPiはAMP濃度が50〜600μMの条件で反応させることがより好ましい。
前記相補鎖合成工程において、塩基AGTCに対応する4種の核酸基質又はその誘導体を1種類ずつ順次加えても2種以上同時に加えてもよく、その相補鎖合成の有無に基づいて試料核酸の配列決定を行うことができる。
核酸基質としてはdNTPのほか、ddNTPを用いることもできる。誘導体としては、例えばdATPαSやddATPαSが挙げられる。
相補鎖合成反応後の余剰の核酸基質又はその誘導体は測定のじゃまになるため、酵素分解等によって速やかに除去することが好ましい。用いられる酵素としては、アピラーゼやピロホスファターゼ(PPase)等を挙げることができる。
ピルビン酸リン酸ジキナーゼ及び/又はルシフェラーゼは、40℃以上で安定に機能する耐熱性酵素であることが好ましい(例えば、市販のルシフェラーゼとしては、Sigma社製Luciferase、キッコーマン社製LUC-H 61314(抽出剤耐性)、同LUC-C 61313(高比活性)、同LUC-T 61315(熱耐性)があるが、キッコーマン社製LUC-T 61315(熱耐性)が好ましい)。また相補鎖合成に用いられるDNAポリメラーゼはエキソ型酵素活性を除去したクレノーフラグメント(Klenow fragment)等が好ましい。
反応液は、酵素活性と相補鎖合成反応の点から、pH7.0〜8.0、温度30〜45℃の範囲に調整されることが好ましい。
さらに、試薬には予め微量のピロホスファターゼ等の酵素を添加して、背景光の原因となる試薬中に含まれるPPiやATPを分解除去しておくことが好ましい。
本発明は、上記核酸分析方法のためのキットも提供する。このキットは、
1)DNAポリメラーゼ、
2)塩基AGTCに対応する4種の核酸基質又はその誘導体、
3)AMPとホスホエノールピルビン酸とピルビン酸リン酸ジキナーゼ、及び
4)ルシフェラーゼ及びルシフェリン
を含み、かつ、「AMPは反応液中30〜800μMでピルビン酸リン酸ジキナーゼと反応させる」旨の表示を含む。ここで、前記表示は説明書としてキットに添付されるほか、パッケージの表面に記載されていても、シールの形態でパッケージ表面に貼付されていてもよい。また前記表示は、ここに記載した表現や使用語句に限定されず、その内容や趣旨を変更しない限りにおいて異なる表現や使用語句を用いてもよい。
本発明の核酸分析キットに含まれる酵素等の試薬は、前記した好適な範囲で提供され、使用されることが望ましい。
化学発光を用いた配列決定では、1塩基の配列決定は30〜60秒で一段が終了する段階反応で行われる。すなわち、反応液に4種の核酸基質を順次加えて、化学発光が観測されるか否かを検出する。注入した試薬は、次の試薬注入までに除去あるいは分解する必要がある。注入した試薬が残存していると配列決定が不正確になったり、相補鎖合成の進行状況がターゲットDNA鎖毎に異なってしまう等の問題を生じるためである。一方、反応を短時間でしかも均一に行わせるためには溶液の攪拌が必要なため、反応セルには振動モーターなど攪拌装置が取りつけられている。背景光の量が大きい場合、試薬分注前に予め背景光を測定し、反応による発光量より差し引くことが必要である。しかし、攪拌モーターを駆動すると、その影響により、背景光が大きく揺らいでしまう。そのため、攪拌モーター利用時は背景光の正確な把握が難しい場合がある。従って、精度のよい測定のためには、背景光による信号は測定しようとするDNAに起因した信号強度の1/10が望ましい。
従来用いられているDNA試料量1pmolの1/10である0.1pmolのDNA試料量を用いて配列決定を行う場合、背景光の量を0.01pmolのATPが発する化学発光の量と同等かそれ以下にする必要がある。従来のAPS(adenosine 5’-phosphosulfate)とPPiの反応でATPを生成するプロセスを用いたパイロシーケンシングではAPSがルシフェラーゼ反応の基質となるために微量のDNAを用いた配列決定はできなかった。APSとPPiは酵素ATP sulfurylaseによりATPに変換される。このプロセスでは過剰に存在するAPSと酵素がまず複合体を作り、ついでPPiと反応すると考えられる。APSと酵素が複合体を作る反応のミカエリス定数はKm = 0.56μMと報告されており、従って十分な量の複合体を生成させるためには約5μM以上のAPSが必要である。反応溶液の体積を100μlとすると必要なAPSの量は500pmolということになる。ルシフェラーゼによる発光反応の基質としてみたときにはAPSはATPに対して0.6×10-3の活性があると報告されているが、パイロシーケンシングの条件下ではdNTPやATPを分解する酵素アピラーゼを共存させるため、ATPを基質とした発光プロセスの効率は低下する。これらを考慮するとAPS起因の化学発光強度はATP換算で0.1pmol程度となり、非常に大きい。反応容積を30μlと小さくしても、なお大きい。
このような背景光を小さくするにはルシフェラーゼによる化学発光の基質にならない試薬を用いてPPiからATPを生成するプロセスを用いる必要がある。これにより、従来よりも1〜2桁少ないDNA試料で配列解析や、安価な装置を用いた配列解析を実現した。
以下の実施例では、そのようなプロセスとしてDNA相補鎖合成で生成したPPiを酵素PPDKによりATPに変換し、ルシフェラーゼを用いて化学発光を検出してDNA塩基配列決定を行う方法について説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
1.概要及び原理
本実施例では、DNA相補鎖合成で生成したピロリン酸(PPi)を、PPDKによりATPに変換し、ルシフェラーゼを用いて化学発光反応を行わせ、生じる化学発光を検出することによりDNA塩基配列決定を行う方法について検証する。
使用する酵素はDNAポリメラーゼ(EXO- Klenow、Ambion (Austin, TX, USA)、Cat #2008、PPDK(キッコーマン、PPDK-E 61317)、アピラーゼ(Apyrase from Potato、Sigma(St Louis, MO, USA)、A6410)及びルシフェラーゼ(Luciferase、Sigma (St Louis, MO, USA)、L1759)である。すなわち4つの酵素反応が同時に進行し、反応に関与する物質が相互に関連していると言う複雑な反応系である。本発明の反応の概要を図1に、また従来のAPS(adenosine 5’-phosphosulfate)を用いたパイロシーケンシング反応の概要を図2に示す。
従来のパイロシーケンシングでは、下式及び図2に示すように、PPiからのATP生成反応はAPSとATPスルフリラーゼを用いた酵素反応で行われていた。
Figure 0004782528
しかし、ATPに比べて反応効率は1/1000程度であるが、APSはルシフェラーセの発光基質となりルシフェリンと反応して化学発光を生じる。このため、微量のDNAを用いた配列決定ではAPSによる背景光により配列決定がうまくいかないことがあった。
本発明の方法では、下式及び図1に示すように、PPiからのATP生成反応をルシフェラーゼ反応の発光基質とならないAMPをPPDKの存在下でPEPと反応させる。
Figure 0004782528
上記反応で用いられるPEP及び反応産物であるピルビン酸はルシフェラーゼ反応の基質にはならないため、背景光を抑えて高感度の測定を実現することができる。この結果、本発明の方法では、従来法より1桁少ないDNAサンプルを用いて配列決定を行うことができる。
本発明の方法と従来の方法の大きな違いは、従来のAPSを用いたシステムではAPSはATP生成に使われ、消耗するだけで再産生はされず、またAPSはルシフェラーゼの存在下でルシフェリンと反応して化学発光を生じるが、本発明のPPDKを用いたシステムでは反応基質となるAMPはルシフェリンと反応しないということである。このため、本発明の方法では背景光が抑えられ、高感度にDNA配列を決定することが可能となる。
しかし、反応に用いるAMPを含む試薬にはATPやPPiなどが不純物として含まれていることが多く、これらもまた背景光を与えて検出感度を低下させる原因となる。そのため、使用に先立ってこれらの試薬にアピラーゼを加えてATPを分解したり、PPaseを加えてPPiを分解してから使用することが望まれる。しかしながら、これらの酵素は、試薬をパイロシーケンシング使用する際に、各種反応に影響を与える。使用時の影響を除くためには、酵素処理した後で、加えた酵素を除去することが考えられる。しかし、AMPは放置しておくと徐々に分解され発光サイクルに影響を与える化合物が蓄積されていくため、酵素の除去は試薬として利用する直前に行うことが必要となり、実験方法が煩雑になってしまう。そこで、AMPを含む試薬の使用前、或いは保存する際、パイロシーケンシングに影響を及ぼさない程度の微量の分解酵素を試薬中に加え、長時間(1時間以上)かけて酵素分解することとした。本実施例では、PPaseを1U/Lに調整して加え、約1日の処理により、試薬内に予め含まれていたPPiを分解した。加える酵素の量が多すぎる場合、測定時の影響が増加するため、添加酵素の好ましい酵素量は、約10U/L以下である。
用いるPPDKとAMPのミカエリス定数Kmは5μMと報告されている。反応を効率よく行うには50μM以上のAMPを共存させることが必要である。パイロシーケンシングでは反応のボトルネックはPPiをATPに変換するプロセスにあり、この観点からも高濃度のAMPを使用することが望ましい。
2.材料(酵素)
(1)耐熱性PPDK
本実施例で使用した耐熱性PPDKの特性を表1に、また標準的な使用プロトコールと反応試薬組成を表2に示す。なお、プロトコールはPPDKを用いるときの標準的な仕様であり、複数の酵素を合わせて使用するときには内容に応じて、後に詳述する試薬組成の最適化を行う必要がある。
表1:耐熱性PPDKの特性
特性
分子量 約230 kDa (ゲルろ過)
構造 約91 kDaの2つのサブユニットからなる(SDS-PAGE)
Michaelis 定数 5.0106 M (AMP)
3.8105 M (PPi)
2.8104 M (phosphoenolpyruvate)
2.0104 M (ATP)
1.3104 M (pyruvate)
至適pH 6.5-7.0
安定pH 6.0-11.0
至適温度 55-60℃
熱安定性 55℃ 以下
低温で安定、かつ凍結融解に耐性
活性化剤 Mg2+, Mn2+, CO2
阻害剤 Zn2+, Hg2+, Ag+
特異性 AMP (100), UMP (0), IMP (0), TMP (0), CMP (0), GMP (0)
表2:耐熱性PPDKの使用プロトコール
<試 薬>
A. 基質溶液:
(NH4)2SO4 330 mg, Na4P2O7・10H2O 89.2 mg, phosphoenolpyruvate・Na3・H2O 46.8 mg, 2-mercaptoethanol 25 μl, 5.0 mM AMP・Na2 2.0 ml,及び0.5 M Bis-Tris propane-HCl buffer (pH 6.8) 10mlを80 mlの蒸留水に溶解し、2N HClでpH 6.8に合わせ、蒸留水で100 mlに希釈する(20℃で保存)
使用前に、1.0 M MgSO4 溶液30 μl を基質溶液 10 mlに加える
B. ATP 標準溶液
2107 μmol/ml: CheckLite ATP standard (2106 M) (キッコーマン社製) を蒸留水で10000倍容に希釈する
C. 酵素希釈用バッファー: ウシ血清アルブミン(BSA) 0.5 gを2-mercaptoethanol 62.5 μl及び50 mlの0.5 M Bis-Tris propane buffer (pH 6.8) in 400 ml of distilled waterに溶解し、2N HClでpH 6.8に合わせ、蒸留水で500 mlに希釈する(20℃で保存)
<サンプル>
測定直前に、酵素標品を氷冷した酵素希釈用バッファー(試薬 C)で希釈し104-102 U/mlとする
<手 順>
1. 試験管に0.18 mlの基質溶液(試薬 A)を入れる
2. 37℃で約5分間平衡化する
3. 0.02 mlのサンプルを加え、37℃で30分間インキュベートする
4. 3分間静置し、沸騰水で反応を止める
5. 反応混合液を遠心にかける
6. 蒸留水で前記反応混合液の上清を10000倍容に希釈する
7.希釈した反応混合液0.1 mlにCheckLite 250(キッコーマン社製) 0.1 ml を加える
8. Lumitester C-100により発光を検出する
サンプルの代わりに酵素希釈用バッファー(試薬 C)を加えたものをブランクとして使用
<ATP標準溶液の測定>
1. 0.1 mlのATP標準溶液(試薬 B)にCheckLite 2500.1 mlを加える
2. Lumitester C-100により発光を検出する
ATP標準溶液(試薬 B) の代わりに蒸留水を加えたものをブランクとして使用
(2)耐熱性ルシフェラーゼ
本実施例で使用した耐熱性ルシフェラーゼの特性を表3に、また標準的な使用プロトコールと反応試薬組成を表4に示す。
表3:耐熱性ルシフェラーゼの特性
特性
分子量 約60 kDa (ゲルろ過)
構造 約60 kDaのモノマーからなる(SDS-PAGE)
比活性 1.41011 RLU/mg purified protein
Michaelis 定数 1.9104 M (ATP)
1.5104 M (D-luciferin)
至適pH 約 7.0-8.5
安定pH 6.0-9.0
熱安定性 約40℃以下
安定性(溶液形態) 25℃で最低5日間安定
表4:耐熱性ルシフェラーゼの使用プロトコール
<試 薬>
A. Tricine-NaOH buffer, 50 mM; pH 7.8:
Tricine 4.48 g を蒸留水450 mlに溶解し、4N NaOHでpH 7.8に合わせ、蒸留水で500 mlに希釈する
B. ATP 溶液, 40 mM:
ATP・Na2+ 2.42 g 及びTricine 896 mg を蒸留水90 mlに溶解し、4N NaOHでpH 7.8に合わせ、蒸留水で100 mlに希釈する
C. ルシフェリン溶液, 5.0 mM:
D-luciferin 100 mg を Tricine-NaOH buffer (試薬 A) 71.4 ml に溶解し、4N NaOH でpH 7.8 に合わせる
D. MgSO4 溶液, 0.1 M:
MgSO4・7H2O 2.47 g/ Tricine-NaOH buffer (試薬 A) 100 ml
E. 酵素希釈用バッファー:
Tricine 4.48 g, EDTA・Na2+・2H2O 185 mg, 2-mercaptoethanol31.5 μl, glycerol 25 g 及びウシ血清アルブミン(BSA) 5 g を蒸留水450 mlに溶解し、4N NaOHでpH 7.8 に合わせ、蒸留水で500 mlに希釈する
<サンプル>
凍結乾燥された酵素を氷冷した酵素希釈用バッファー(試薬 E)で希釈し、11031.5105 RLU/ml とする
<手 順>
1. 下記の基質溶液を調製する (使用直前)
2.0 ml Tricine-NaOH buffer (試薬 A)
0.5 ml ATP 溶液 (試薬 B)
2.0 ml ルシフェリン溶液 (試薬 C)
0.5 ml MgSO4溶液 (試薬 D)
2. キュベットに0.1 mlのサンプルを入れる
3. キュベットを30℃に加熱したluminometerにセットする
4. 基質溶液0.1 mlを加え、直ちに20秒間の発光量を測定する
サンプルの代わりに酵素希釈バッファー(試薬 E)を加えたものをブランクとして使用
3.方法
以下、具体的な実験手順について説明する。反応セルの中には鋳型DNA、プライマー、DNAポリメラーゼ、PPDK、アピラーゼ、ルシフェラーゼ、AMP、ホスホエノールピルビン酸(Phosphoenolpyruvate:PEP)、ルシフェリンが含まれている。なお、これらの他に反応液には各種塩類が含まれている。使用した反応液の組成を下表に示す。
表5:反応液組成
試薬 濃度
Tricine (pH7.8) 60 mM
MgAc 20 mM
PPDK 15.0 U/mL
Luciferase 200.0 GLU/mL
Exo- Klenow 50 U/mL
Apyrase 2 U/mL
Luciferin 0.4 mM
PEP・3Na 0.08 mM
AMP 0.4 mM
反応セル中には、4種の核酸基質dNTP(dATPαS, dCTP, dGTP, dTTP)を1種ずつ順次入れる。この反応ではATPが発光反応の基質として重要な役割を果たすが、通常相補鎖合成核酸基質として用いられるdATPはATPに構造が類似しており、効率は低いが発光反応の基質として機能する。そのため、発光反応と相補鎖合成反応が同一反応セルで行われる場合には、dATPは背景光を生じて検出感度に影響を与える。そこで、発光基質としての能力が極めて低いdATPαSをdATPに代えて使用した。他のdNTP(dCTP, dGTP, dTTP)は発光基質としての特性が弱く、検出感度に影響を与えることはないためそのまま使用した。
反応セル中ではまず、1本鎖の鋳型DNAにプライマーがハイブリダイズする。反応セルに加えた核酸基質が、鋳型DNAにハイブリダイズしたプライマーの3’末端に隣接する鋳型DNAの塩基種に相補的な場合には、加えた核酸塩基による相補鎖合成が起こり、プライマーの長さが伸長する。このとき相補鎖合成反応の副産物としてPPiが生成する。PPiは先に述べたPPDKによる反応で、AMP及びPEPと反応してATP及びピルビン酸とリン酸を生成する。引き続きATPはルシフェラーゼの働きでルシフェリンと反応してAMP、PPi、酸化ルシフェリン、炭酸ガス及び光を生成する。得られた発光は光ダイオードなどの検出器で検出できる。余剰の核酸基質は、アピラーゼにより20秒程度でほぼ完全に1リン酸に分解され、以後の相補鎖合成には関与しない。
4.結果及び条件の最適化
以上の工程を各核酸基質について順番に繰り返し、発光の有無をモニターすることで相補鎖合成に取り込まれた塩基種が特定し、DNA配列を決定できる。図3に本発明の方法を用いた配列決定の結果を示す。発光反応で生成したAMP及びPPiは、PPDKにより再びATPに変換する。PPiとAMPの反応で再生成したATPはアピラーゼによって分解されるため、発光信号は長時間継続することなく、半値幅が10秒程度のピーク状の信号が観察されることがわかる。
前述したように、パイロシーケンシングではDNAポリメラーゼ、アピラーゼ、PPDK、及びルシフェラーゼと言った4つの酵素を同時に働かせることになる。これら酵素の最適環境は必ずしも同じではないため、これらの特性を考慮しつつ、系全体として条件を最適化する必要がある。
(1)pH
図4及び図5に、それぞれルシフェラーゼとPPDKのpH及び温度による活性の変化を示す。ルシフェラーゼの最適pHはpH8.0であるが、PPDKの最適pHはpH6.8である。PPDKの活性はpH8.0になると活性が約20%に低下することがわかる。本発明では、後述のポリメラーゼ活性と、本PPDK活性及びルシフェラーゼ活性のバランスが、測定精度を決定する重要な因子であるため、測定感度に不足が生じない範囲として、20%以上のPPDK活性が期待できるpH7.0-8.0を最適範囲とした。
(2)温度
一方、PPDKの活性は低温で低く、60℃を超える高温では急速に低下する。酵素の活性を考えると室温から55℃、望ましくは30℃から55℃の範囲が良い。一般で市販されているルシフェラーゼは30℃を超えて長時間放置すると劣化する。図11及び図12は、各温度条件で核酸伸長を行った場合の発光量を測定した結果である。これより、温度30℃以上で効率よく測定できることがわかる。本実施例では耐熱性のルシフェラーゼを用いたが図5に示すように40℃を超えると活性は低下する。以上のPPDKとルシフェラーゼの活性の温度依存性を考慮し、最適温度範囲を30℃から45℃とした。なお、通常のDNAポリメラーゼの最適温度は37℃前後で、前記範囲内である。
(3)DNAポリメラーゼ
DNAポリメラーゼとしては種々のものが使用可能であるが、本実施例ではエキソ型酵素活性を除去したクレノーフラグメントを使用した。エキソ型酵素活性があると相補鎖合成の時に末端塩基を切り取り、再度相補鎖塩基を結合するプロセスが組み込まれる。このため、段階的な相補鎖合成を用いる配列決定方法では同じところを繰り返して読むことになったり、相補鎖合成反応の進行状態がDNAコピー毎に異なってきたりする原因になるからである。
(4)相補鎖合成反応
既に述べたように、反応セルの中にはDNAポリメラーゼ、PPDK、アピラーゼ、ルシフェラーゼなどを同時に入れて反応を行う。鋳型DNAとプライマーをハイブリダイズさせて相補鎖合成を行うが、温度が低いとプライマー同士あるいは鋳型DNA同士がハイブリダイズしたり、プライマーが本来ハイブリダイズすべき位置とは異なる位置に部分的にハイブリダイズして、そこから相補鎖合成を起こすことがある。このような場合には、ターゲットDNA配列とは無関係に発光が観測されることがあり、配列決定に支障を来たす。こうした問題を防止するために、相補鎖合成反応は室温ではなく37℃で行った。ただし、この温度では通常のルシフェラーゼの活性は短時間で劣化する。そのため、本実施例では耐熱性のルシフェラーゼ及びPPDKを用いた。なお、これら酵素の最適pHとは一致しないが相補鎖合成反応を優先しpHは7.0-8.0の範囲とした。
(5)装置
図6は、本発明を用いた配列決定を可能とする装置の例である。図1に示したように、配列決定をしようとするDNA、プライマー、相補鎖合成酵素、それにAMP、PPDK、及び発光試薬を反応セルに入れる。反応セルには外部から核酸基質dNTPを順次加える。この例では、dATPαS → dCTP → dGTP → dTTP → dATPαS → ---の順に繰り返し核酸基質を加えていく。それぞれのdNTPはノズルつきの試薬溜に保持されており、ノズルから反応セルに噴霧注入される。相補鎖合成で核酸基質がDNA鎖の中に取り込まれるとDNAの長さが一つ長くなると共にPPiが副産物として放出される。PPiは前述した一連の反応でATPに変換され、ルシフェリンと反応して光を出す。この化学発光は反応セルの下にある光検出器で検出される。余剰のdNTPは次の核酸基質注入に先立ってアピラーゼで分解される。
(6)AMP濃度
DNA相補鎖合成反応は非常に短時間に終わるので、通常、反応サイクルを決めるのはPPiをATPに変換するプロセスである。このプロセスの進行を早くしようとする従来の方法では、多くのAPSを加えるために背景光が大きくなり、配列決定には1pmol程度のDNA試料が必要であった。一方、本実施例ではAPSを用いないため背景光は小さい。
しかし、用いるAMPは相補鎖合成に用いるdATPや発光基質のATPと構造が似ており、大量に存在すると相補鎖合成など反応セル内の酵素反応に悪影響を及ぼすことが懸念される。
図7は、種々濃度のAMPを共存させたときにDNAを反応セルに加えて得られる発光量の変化を調べた結果である。DNAを加えたときに得られる発光(DNA相補鎖合成で得られるPPiによる発光)はAMPが存在して始めて生成する。ATPを用いて発光反応は行われるので、発光はAMPの増加と共に急速に増大するが、100μMあたりをピークにすぐに減少に転じる。十分な発光強度を与えるAMPの濃度範囲は30〜600μMである。この範囲の濃度のAMPを用いれば、0.1 pmolのDNAサンプルを用いて配列決定可能なことがわかる。
(7)AMP−PPDKによるATP生成
図8は、ルシフェリン−ルシフェラーゼを用いた反応系で、AMPとPPDKを用いた本発明の方法と、従来のAPSとATP sulfurylaseを用いた方法で、得られる信号強度と背景光の信号強度を比較した結果である。PPiあるいはATPを一定量加えたときの発光量は本発明のシステムと従来のAPSを用いたシステムでは余り差がないものの、背景光は本発明によるAMPとPPDKを用いた系が2桁以上少ないことがわかる。
(8)ルシフェラーゼ
発光量はルシフェラーゼの量にも依存する。図9は、ルシフェラーゼの量を変えてAPSから生じる背景光、本発明の方法で生じる背景光、及びATPを加えたときの発光を調べた結果である。ルシフェラーゼの量を増やすと化学発光信号は増加し、高感度な測定を行えるが、従来の方法ではルシフェラーゼの量を多くすると背景光が増大してスケールオーバーし、実質測定不能に陥るためルシフェラーゼ量を増やすことはできない。一方、本発明の方法では背景光が少ないためルシフェラーゼ濃度が高くても測定が可能であり、微量のDNAを用いて配列決定が可能となる。
(9)サンプル量
図10は、181塩基のTPMT遺伝子をPCR増幅して得た微量のDNA試料を用いて本方法で配列決定した結果を示す。従来の方法ではDNA配列決定には0.5-1pmolのDNAを必要としていたが、本発明の方法では従来の方法よりも2桁少ない2.5 fmolのDNA試料を用いて配列決定を行えることが確認された。
(10)PPase添加
試薬に含まれるAMPにはPPiが不純物として含まれていることがあり、測定に影響を及ぼすことがある。これに対して10U/L以下(好ましくは1U/L)の微量のPPaseを加えておくと残存PPiをゆっくり分解してくれるので都合がよい。PPaseは相補鎖合成反応で生じたPPiも分解するが分解酵素PPaseの量が少ないのでDNA配列解析には支障がない。PPaseを加えず数日間経過した試薬とPPaseを加えて数日間経過した試薬を使用したときの背景光を比較をすると、PPaseを加えず数日間経過した試薬では、dNTPの分解で生じたPPiのため背景光の増加が観察されたが、PPaseを加えて数日間経過した試薬では、PPase添加により生成したPPiが無視できる程度に減少した。すなわち、背景光の原因となる試薬中のPPiの除去に、微量のPPaseの添加が有効であることが確認された。
以上説明したように、本発明の方法では、ATP生成反応にルシフェラーゼの発光基質とならないAMPを用い、更にその濃度範囲を最適化し、反応のpHや温度を最適化することで微量のDNAサンプルを用いて配列解析をすることを可能とした。本発明の方法において、配列決定に使用するDNAサンプル量は従来の方法に比べて1桁〜2桁少ない。これにより使用する試薬量も抑えられ、大幅な配列解析コストの低減が実現される。更に、本発明の方法は簡便な装置を用いて実施できるため、測定系全体としてのコスト低減効果はより一層大きい。
従来の標準的なDNA解析方法はゲル電気泳動を用いた方法であるが、装置も試薬も高価である。化学発光によりDNA相補鎖合成を段階的に行うパイロシーケンシングは、装置が高価で、多量の試薬を使用するためやはり配列解析に要するコストが高い。光ダイオードなど安価な部品を検出部に用いた簡便な装置を利用したパイロシーケンシングも可能であるが、試薬を多量に消耗する点は変わらない。試薬を多量に消耗する従来法の原因は、配列決定反応に関与しないプロセスで生じる背景光の影響を抑えるためである。本発明では、このようなプロセスを使用しない配列解析方法を提供し、従来よりも1〜2桁少ない試薬量と安価な装置を用いた配列解析可能を実現する。本発明の方法は、安価で手軽なDNA塩基配列方法とそのためのキットを提供し、バイオ関連分野に計り知れない利益をもたらす。その適用範囲は、DNA配列解析に限ることなく、遺伝子検査、mRNAによる遺伝子発現解析、食品検査、細菌検査など多岐にわたる。
図1は、段階的相補鎖合成反応によるDNA塩基配列決定の原理(上)と、PPiからのATP生成反応にAMPとPPDKを用いた本発明の方法の概要(下)を示す。 図2は、PPiからのATP生成反応にAPSを用いる従来のパイロシーケンシングの概要を示す。 図3は、本発明の方法を用いた配列決定の具体例を示す:図中、1塩基レベル、2塩基レベル及び3塩基レベルは一度に取り込まれる塩基の1DNAあたりの個数をあらわす。 図4は、ルシフェラーゼ及びPPDK活性のpH依存性を示す。 図5は、ルシフェラーゼ及びPPDK活性の温度依存性を示す。 図6は、小型のDNA配列検査装置の鳥瞰図である。 図7は、DNA相補鎖合成で得られるPPiを用いてATPを生成し、ルシフェラーセ発光反応を行った場合に得られる信号強度変化とAMP濃度との関係を示すグラフである。グラフの横軸はAMPの反応液中の濃度を示す。 図8は、従来の方法で得られる信号強度と本発明により得られる信号強度の比較:本発明の方法では背景光が圧倒的に小さいことがわかる。 図9は、ルシフェラーゼの量を変化させたときの信号強度と背景光の信号強度の変化を示すグラフである。 図10は、微量のDNA試料(TPMT遺伝子をPCR増幅したもの)について、本方法で配列決定した結果を示すグラフである。 図11は、温度条件を変化させたときの信号強度の変化を示すグラフである。 図12は、図11の結果を、まとめたものである。
符号の説明
101; パイロシーケンシングの原理説明図
102; パイロシーケンシングで行われる本発明による一連の酵素反応
201; 相補鎖伸長前のターゲットDNAとプライマーの複合体。プライマー鎖の長さは塩基長(n)である。
202; 相補鎖伸長反応後のターゲットDNAとプライマーの複合体。プライマーは鎖が伸びて塩基長(n+1)となっている。
203; 反応副産物のPPi
301; 相補鎖合成核酸基質を注入したときに観測される化学発光のピーク。注入されたdNTP及び反応で生成するATPはアピラーゼで分解されるので信号はピーク状に観測される。
401; 0.1M MES-NaOH バッファー
402; 0.1M HEPES-NaOH バッファー
403; 0.1M Bis-tris Propane-HCl バッファー
404; 0.1M Tricine-NaOHバッファー
405; 50mM MES-NaOHバッファー
406; 50mM Bis-Tris propane-HCl バッファー
407; 50mM MOPS-NaOHバッファー
501; 0.3M Tricine-NaOHバッファー、pH7.8(0.2%BSA及びグリセロール含有)を使用して10分反応後の活性
502; 50mM Bis-Tris propane-HCl バッファー(pH6.8)使用
601; 試薬注入制御用ガス圧力配管
602; ハウジング
603; 試薬溜ホルダー
604; 回転基盤
605; 反応セル トレー
701; DNA相補鎖合成で得られるPPiによる発光
801; 従来法を用いたときの信号強度
802; 本発明の方法による方法を用いたときの信号強度
803; 従来法を用いたときの化学発光の信号強度
901; 従来法を用いたときの背景光の信号強度
902; 従来法を用いたときの信号強度(背景発光を含む)
903; 本発明の方法によるシステムを用いたときの背景光
904; 本発明の方法による信号強度(背景光を含む)
1001; 5fmのDNA試料を用いたときの本発明の方法による配列決定結果
1002; 2.5fmを用いたときの本発明の方法による配列決定結果

Claims (8)

  1. 試料核酸、DNAポリメラーゼ、プライマー、ホスホエノールピルビン酸、ピルビン酸リン酸ジキナーゼ、30〜800μMのAMP、ルシフェラーゼ、ルシフェリンを含む反応液に対しdATP、dCTP、dGTP、dTTP又はその誘導体の少なくとも一つを順に繰り返し加え、前記試料核酸を鋳型とする相補鎖伸長反応を行う工程と、
    前記相補鎖伸長反応において生成されるATPに、前記ルシフェラーゼと前記ルシフェリンが反応することにより生じる化学発光を検出して相補鎖合成の有無を判定する工程と、
    前記相補鎖合成の有無に基づいて、前記試料核酸の配列を決定する工程とを含む核酸配列分析方法。
  2. 前記相補鎖伸長反応工程において、前記dATP、dCTP、dGTP、dTTP又はその誘導体を2種以上同時に加えて相補鎖合成を行うことを特徴とする請求項1に記載の核酸配列分析方法。
  3. 余剰の核酸基質又はその誘導体を酵素分解することを特徴とする請求項1又は2に記載の核酸配列分析方法。
  4. 前記ピルビン酸リン酸ジキナーゼ及び/又はルシフェラーゼが40℃以上で安定に機能する耐熱性酵素であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の核酸配列分析方法。
  5. 反応液のpHが7.0〜8.0であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の核酸配列分析方法。
  6. 反応液の温度が30〜45℃であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の核酸配列分析方法。
  7. 試薬を予めピロリン酸及び/又はATPを分解する酵素で処理しておくことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の核酸配列分析方法。
  8. 前記酵素がピロホスファターゼであることを特徴とする請求項に記載の核酸配列分析方法。
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