JP4782457B2 - 積層セラミックコンデンサ - Google Patents

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本発明は、パソコン、携帯電話など、高機能の電子機器に使用され、極めて薄い誘電体層と内部電極層とが交互に積層され、高容量かつ温度特性に優れた小型の積層セラミックコンデンサに関する。
近年、電子機器の小型化、高機能化に伴い、これに用いる積層セラミックコンデンサは小型高容量化が求められており、そのため誘電体層および内部電極層の積層数の増加と誘電体層自体の薄層化が進められ、また、積層セラミックコンデンサとしての特性としても容量温度特性や高温負荷寿命などの信頼性の向上が図られている。
例えば、比表面積が1.7m/g、3.2m/g、6.6m/gの3種類のチタン酸バリウム粉末を用いて、誘電体磁器を調製し、焼成後において粒径が0.4μm以上の結晶粒子と粒径が0.25μm以下の結晶粒子とを混在させた誘電体層を形成することが開示されている(例えば、特許文献1)。この場合、粒径が0.4μm以上の結晶粒子により誘電体磁器の比誘電率を向上でき、一方、粒径が0.25μm以下の結晶粒子により誘電体磁器の絶縁抵抗を高めることができることが記載されている。
特開2001−338828号公報
即ち、上記特許文献1に開示された積層セラミックコンデンサでは、比表面積の異なる誘電体粉末を3種類も用いているために、実験炉のような温度分布の少ない焼成炉を用いた場合には結晶粒子の粒径の制御が適正に行える。
しかしながら、上記特許文献1に記載の誘電体粉末を用いたのでは温度分布の広い量産炉を用いた焼成においては、焼成温度のばらつきによる結晶粒子の粒径制御が困難となり、得られる積層セラミックコンデンサの静電容量が低く、また、静電容量のばらつきや静電容量の温度特性のばらつきが大きいという問題があった。
従って、本発明は、誘電体層を薄層化しても、静電容量のばらつきが小さく、量産性に優れた小型高容量の積層セラミックコンデンサを提供することを目的とする。
本発明の積層セラミックコンデンサは、誘電体層および内部電極層を交互に積層し構成したコンデンサ本体と外部電極とを具備してなる積層セラミックコンデンサであって、前記誘電体層を構成する結晶粒子の粒度分布の50%累積値D50の粒径と、90%累積値D90の粒径との比D90/D50が1.9〜2.5であり、前記粒度分布における10%累積値D10の粒径が0.05〜0.1μm、前記粒度分布の90%累積値D90の粒径が0.9〜1.6μmであることを特徴とする。
本発明によれば、誘電体層を薄層化しても静電容量が高く、また静電容量のばらつきが小さく、量産性に優れた小型高容量の積層セラミックコンデンサを提供することができる。
本発明の積層セラミックコンデンサについて、図1および図2をもとに詳細に説明する。図1は本発明の積層セラミックコンデンサの概略断面図である。図2は本発明の積層セラミックコンデンサを構成する誘電体層の断面における結晶粒子の粒度分布を示すグラフである。図2に示すグラフは粒度分布を単位面積におけるある粒径ごとに分けた結晶粒子の個々の面積の累積で示したものである。なお、本発明における粒度分布は誘電体層中の単位面積における断面組織の電子顕微鏡写真に写した結晶粒子についてそれぞれ最長
径を求め、これら求めた個々の結晶粒子の累積個数を粒径ごとに頻度で表したものである。
本発明の積層セラミックコンデンサは、コンデンサ本体1の両端部に外部電極3を形成して構成されている。この外部電極3は、例えば、CuもしくはCuとNiの合金ペーストを焼き付けて形成されている。
コンデンサ本体1は誘電体層5と内部電極層7とを交互に積層してなるものであり、誘電体層3は静電容量を高めるという理由から厚みが2.5μm以下であることが望ましい。
また、本発明にかかる誘電体層5は結晶粒子9と粒界相11とから構成されており、組織上、誘電体層5を構成する結晶粒子9の粒度分布の50%累積値D50と、90%累積値D90との比、D90/D50が1.9〜2.5であることを特徴とするものであり、特に、2≦D90/D50≦2.3の関係であることがより望ましい。この場合、特に、粒度分布の10%累積値D10の粒径が0.05〜0.1μm、粒度分布の90%累積値D90の粒径が0.9〜1.6μmであることが誘電体層5の絶縁性および静電容量(比誘電率)を高めるとともに、焼成温度の変化に対しても安定した誘電特性を得ることができる。
このように、誘電体層5を構成する結晶粒子9の粒度分布を本発明で規定する粒度分布の範囲内にすると、焼成温度範囲が1100℃から1200℃の範囲においても、静電容量のばらつき(CV)を3.1%以下、特に、3%以下にでき、また、85℃における静電容量が基準温度20℃の静電容量に対して±20%以内、さらに、125℃においても±30%以内にできる。
これに対して、D90/D50比が1.よりも小さいと静電容量(比誘電率)が低くなり、静電容量のばらつきが大きくなる。
内部電極層7は、高積層化しても製造コストを抑制できるという点で、NiやCuなどの卑金属が望ましく、特に、本発明の誘電体層との同時焼成を図るという点でNiがより望ましい。この内部電極層7の厚みは平均2μm以下が好ましい。
図3は誘電体粉末の粒度分布を示すグラフである。図3に示すグラフは誘電体粉末の粒度分布を面積占有率で示したものである。なお、この誘電体粉末の粒度分布は、誘電体粉末の電子顕微鏡写真からそれぞれ最長径を求め、これら求めた個々の誘電体粉末の占有面積の累積値を粒径ごとの頻度で表したものである。
誘電体粉末と誘電特性を制御する添加剤とガラス粉末とを有機ビヒクルと混合してスラリを調製し、そのスラリをシート状に成形して誘電体グリーンシートを形成する。誘電体グリーンシートの厚みは4μm以下が好ましい。
電体粉末は、電子顕微鏡写真の任意の単位面積において面積占有率で表したときの粒度分布が、小径ピークおよび大径ピークの2つのピークをもつ粒度分布で示されることを特徴とするものであり、特に、小径ピークの最大粒径が大径ピークの最小粒径と同等もしくはそれよりも小さいことが望ましく、さらには、大径側の最大粒径が1.1μm以下である。
なお、誘電体粉末についての最小粒径は粒度分布の1%累積値で表し、一方、最大粒径は粒度分布の99%累積値で表す。この場合、小径側の粒度分布の1%累積値は0.0μm以上である。
これに対して、誘電体粉末の粒度分布が3つ以上であり、粒度分布の小径側と大径側とが重なるような粒度分布の場合には、特に、焼成時に小径側の誘電体粉末が種々の粒径の誘電体粉末と合体し粒成長するために、安定した誘電特性をもつ誘電体層を形成できない。
以上詳述したように、本発明の積層セラミックコンデンサを製造する場合には、粒径範囲の異なる誘電体粉末を配合して用いることにより、従来、平均粒径で表したときに同じ程度の値になる粒度分布の単一ピークを有する誘電体粉末を用いる場合に比較して、大径ピークの粒度分布に含まれる誘電体粉末および小径ピークの粒度分布に含まれる誘電体粉末の両方ともに粒成長が抑制された状態で誘電体磁器の緻密化を図ることができる。
図4は、粒径の異なる誘電体粉末を用いて作製した誘電体磁器の断面をトレースした組織写真の模式図である。表示したスケールバーは長さ2μmである。図4にかかる誘電体磁器は1250℃の温度で焼成したものである。この試料の誘電率は、BT02が3000、BT03が3500、BT04+02が3600、BT04が4600であった。なお、内部電極層を介装しない誘電体磁器のみでは焼結温度が高くなる。
BT02は平均粒径が0.2μm、BT03は平均粒径が0.3μm、BT04は平均粒径が0.4μm、BT04+02は平均粒径が0.4μmと0.2μmであり、等しい質量比で混合された粉末であり、この場合、BT04の最小粒径とBT02の最大粒径とは粒径の範囲を異にする場合のものである。
図4から明らかなように、BT02、BT03、BT04のそれぞれの誘電体粉末を1種類のみ用いた試料は、BT02とBT04との混合粉末を用いた場合に比較して、上記したように粒成長がおこり、BT02の誘電体粉末であってもBT04と同等の粒径に成長している。これに対して、BT02とBT04との混合粉末から作製した試料では、大径および小径の結晶粒子におけるそれぞれの粒成長が抑えられている。このように本発明にかかる2つのピークを有する誘電体粉末の粒子配合の方法によれば、結晶粒子の粒成長を抑制しかつ緻密化した誘電体磁器を容易に形成できる。しかも、この場合において、大径の結晶粒子により比誘電率の向上を図り、一方、小径の結晶粒子により絶縁性を著しく高めることができる。
ガラス粉末は、誘電体粉末の粒径と同等以下であることが好ましく、また、その組成はSi=40〜60モル%、Ba=10〜30モル%、Ca=10〜30モル%、Li=5〜10モル%、アルミナ不純物量が0.1質量%以下であることが好ましい。このような組成であれば誘電体磁器の緻密化および結晶化を図ることができ誘電特性を安定化できる。
次に、誘電体グリーンシートの主面上に内部電極パターンを形成する。内部電極パターンは、例えば、NiやCuなどの卑金属粉末を有機樹脂や溶剤とともにペースト化したものをスクリーン印刷により形成する。内部電極パターンの厚みは、誘電体グリーンシート上における段差を小さくするという点で、誘電体グリーンシートの厚みよりも薄く2μm以下であることが望ましい。
次に、内部電極パターンが形成された誘電体グリーンシートを複数積層してコンデンサ本体成形体を形成し、この後、コンデンサ本体を大気中で40〜80℃/hの昇温速度で400〜500℃にて脱バインダ処理を行い、その後、還元雰囲気中で500℃からの昇温速度を100〜400℃/hとし、1100〜1250℃の温度で2〜3時間焼成し、続いて80〜400℃/hの降温速度で冷却し、酸素分圧が0.1〜10−4Paの雰囲気中900〜1000℃で再酸化処理を行う。
最後に、焼成したコンデンサ本体の両端面に、外部電極用ペーストを塗布して窒素中で焼き付けることによって、外部電極3を形成し、本発明の積層セラミックコンデンサを得ることができる。
本発明の積層セラミックコンデンサを以下のようにして作製した。まず、誘電体材料として表1に示す2種類の粒度分布をもつBaTiO(BT)粉末を準備し、質量比で等量混合した。
また、BaTiO(BT)粉末100質量部に対して焼結助剤としてガラス粉末を 質量部添加した。そのガラス組成は、Si=50モル%、Ba=20モル%、Ca=20モル%、Li=10モル%のものを用いた。
また、BaTiO(BT)粉末100質量部に対して誘電特性を制御するための助剤として、Mg、Y、Mnを酸化物換算で、それぞれ0.5質量部、0.5質量部、0.3質量部添加した。
次に、上記誘電体粉末と助剤との混合粉末に対してトルエン中にポリビニルブチラールバインダを混合した有機ビヒクルを添加してスラリを調製し、このスラリをダイコータを用いてシート成形し厚み3μmの誘電体グリーンシートを得た。
次に、この誘電体グリーンシート上にNi内部電極パターンを厚み1.5μmで形成した。
次に、Ni内部電極パターンを形成した誘電体グリーンシートを、内部電極パターンの長手方向に半パターンずれるように交互に30枚積層し、さらにその上下に内部電極パターンを形成していない誘電体グリーンシートを各々20枚積層し、加熱加圧して母体積層体を形成した。
次に、この母体積層体を格子状に切断しコンデンサ本体成形体を形成した。このコンデンサ本体成形体の対向する端面には内部電極パターンが積層方向に交互に露出していた。コンデンサ本体の寸法は2×1.25×0.4mmであり、また、誘電体層の厚みは平均2.4μm、内部電極層の厚みは1μmであった。
次に、得られたコンデンサ本体成形体を還元雰囲気中、最高温度1110℃、1140℃、1170、1200℃にて、各2時間の焼成を行い、次いで、窒素雰囲気中、1000℃、4時間の再酸化処理を行った。
次に、焼成後のコンデンサ本体をバレル研磨した後、内部電極層が露出した端面にCuを主成分とする外部電極ペーストを塗布し850℃の焼付けを行い、積層セラミックコンデンサを作製した。
なお、誘電体粉末および誘電体層中の結晶粒子の粒度分布は、いずれも上記した方法により電子顕微鏡写真から求めた。
次に得られた積層セラミックコンデンサ各100個について、周波数1.0kHz、入力信号レベル0.5Vにて温度20℃にて静電容量とそのばらつきを評価した。また、各50個について静電容量の温度特性を評価した。試験条件は85℃および125℃での評価とした。
また、比較例として、比表面積の異なる3種の誘電体粉末を混合したものについて、本発明の試料と同じ条件にて作製し評価した。
Figure 0004782457
Figure 0004782457
表1、2から、本発明の製法を用いて作製した試料No.1〜No.4では、焼成温度1110〜1200℃の範囲においても比誘電率が3840以上と高く、また、静電容量のばらつき(CV)を3.1%以下にでき、また、85℃における静電容量が基準温度20℃の静電容量に対して±20%以内、さらには、125℃においても±30%以内であった。
特に、粒度分布における10%累積値の粒径が0.05μm以上、前記粒度分布の90%累積値の粒径が1.2μm以下である試料No.2.3では静電容量のばらつきおよび125℃における静電容量の温度特性が改善された。
一方、粒子径の異なる3種類の誘電体粉末を混合して用いた比較例No.5の試料では、比誘電率が最高でも3350と低く、焼成温度1110〜1200℃の範囲における静電容量のばらつきや温度特性のばらつきが最高−32%と大きかった。
本発明の積層セラミックコンデンサの概略断面図である。 本発明の積層セラミックコンデンサを構成する誘電体層の断面における結晶粒子の粒度分布を示すグラフである。 電体粉末の粒度分布を示すグラフである。 粒径の異なる誘電体粉末を用いて作製した誘電体磁器の断面をトレースした組織写真の模式図である。
符号の説明
1・・・コンデンサ本体
5・・・誘電体層
7・・・内部電極層
9・・・結晶粒子
11・・粒界相

Claims (1)

  1. 誘電体層および内部電極層を交互に積層し構成したコンデンサ本体と外部電極とを具備してなる積層セラミックコンデンサであって、前記誘電体層を構成する結晶粒子の粒度分布の50%累積値D50の粒径と、90%累積値D90の粒径との比D90/D50が1.9〜2.5であり、前記粒度分布における10%累積値D10の粒径が0.05〜0.1μm、前記粒度分布の90%累積値D90の粒径が0.9〜1.6μmであることを特徴とする積層セラミックコンデンサ。
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