JP4778173B2 - 植栽屋根構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、植栽物(例えば、芝、草木、セダム植物等)を保持する植栽マットを、屋根部(例えば、屋根面、屋上、バルコニー、ベランダ等)上に敷設して植栽部を構成し、前記植栽マットを貫通する状態で前記屋根部に固定する固定具によって、前記植栽マットを前記屋根部に固定してある植栽屋根構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
屋根部上に形成される植栽部としては、土を積層させて形成するものや、マット状に形成した植栽マットを敷設するもの等、様々な形態のものがあるが、屋根の上に設けられる関係上、建物本体への負担を減らす意味では、植栽部の重量を軽く設定し易い後者の植栽マットを敷設する方法がよく用いられている。
しかしながら、屋根上においては、時として突風が吹くこともあり、植栽部の重量を小さくすればするほど吹き飛ばされ易くなり、これを防止するために、植栽部を屋根部に固定する固定具を屋根部上に設けてあることが多い。
因みに、上述の植栽マットとは、例えば、合成樹脂の繊維を編んでマット状に成形した母材マットに、土を擦り込んで植栽物の苗や種を植え付けたもので、工場生産によって形成することができる(現場に敷設してから植え付けて形成することも可能である)と共に、現場での敷設も簡単に迅速にできるので、屋上緑化の施工効率向上に一役かっている。
【0003】
従来、この種の植栽屋根構造としては、図12に示すように、前記固定具30として、屋根部B2上に突出する状態にアンカーボルト20を予め設けておき、そのアンカーボルト20が植栽マットS2を貫通する状態に植栽マットS2を敷設し、前記アンカーボルト20の先端に、外れ止めの鍔部材21を螺合させて植栽マットS2を押さえる状態で固定してあったり(図12(イ)参照)、前記固定具30として前記アンカーボルト20に替えて、図12(ロ)に示すようなボルト付きベース部材22を使用し、前記ベース部材22を予め屋根部B2上に固定しておき、後は、上述と同様に鍔部材21によって植栽マットS2を押さえる状態に固定するものがあった。
そして、植栽部Sの縁部に位置する植栽マットS2は、端縁部に直接的に風を受け易く、それに伴って捲れ上がる危険性が高いから、上述の固定具30を植栽マットS2の縁部に必ず設置して固定してあった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記固定具は、植栽マットを固定するためには必須であるものの、植栽部として本来必要とされる美観性の向上と言う観点に立てば、逆に、目障りになり易い。しかも、固定具の前記鍔部材によって押さえられた植栽マット部分は、植栽物の生育も他の部分に比べて劣りやすく、尚更、美観性を損なう可能性が高い。
上述した従来の植栽屋根構造によれば、特に、目に付き易い植栽部の縁部に、前記固定具が必要不可欠であるから、植栽部の美観性を損ない易いという問題点がある。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、植栽マットの安定した敷設状態を維持できながら、植栽部としての美観性を損ないにくい植栽屋根構造を提供するところにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明の特徴構成は、図1・2・4、図8〜11に例示するごとく、植栽物1を保持する植栽マットS2を、屋根部B2上に敷設して植栽部Sを構成し、前記植栽マットS2を貫通する状態で前記屋根部B2に固定する固定具3によって、前記植栽マットS2を前記屋根部B2に固定してある植栽屋根構造において、前記植栽マットS2の端縁部への風当たりを抑制自在な防風カバー8を、前記植栽部Sの端縁部に配置すると共に、前記屋根部B2に固定してあるところにある。
【0007】
請求項1の発明の特徴構成によれば、防風カバーによって植栽部の縁部に位置する植栽マットへの風当たりが抑制されるから、突風が吹いたとしても、植栽マットが吹き飛ばされ難くすることができる。従って、従来のように、端部の植栽マットの目に付きやすい位置に固定具を配置してたものを、固定具を使用しなくても(又は、その数を減らしても)、安定した植栽マットの敷設状態を維持することが可能となる。
その結果、植栽部の内で特に目に付きやすい縁部において、前記固定具を無くす(減らす)ことができるようになって、鍔部材の存在による美観性の低下や、固定具で押さえられることによるその周囲の植栽物の発育不足による美観性の低下を防止することが可能となり、植栽部のもつ本来の美観性を無駄なく発揮させることが可能となる。
また、防風カバーそのものは、屋根部に固定してあるから、安定した状態で植栽マットに対する風当たり抑制作用を発揮することができるものである。
【0008】
請求項2の発明の特徴構成は、図1・2・4・10・11に例示するごとく、前記防風カバー8には、防風カバー8前面側からの風の流線を、前記植栽マットS2に向かない方向へ誘導するガイド部8Cを設けてあるところにある。
【0009】
請求項2の発明の特徴構成によれば、請求項1の発明による作用効果を叶えることができるのに加えて、前記ガイド部によって風の流線を植栽マットに向かないように誘導することが可能となり、植栽マットの植栽物への風当たりを少なくし、生育しやすい状況を維持することが可能となる。特に、風が植栽マットに直接に当たれば、植栽マットに含まれている水分の気化が促進される危険性があり、植栽物への水分不足を招くことにもなりかねないが、当該発明によれば、植栽マットの植栽物への風当たりを抑制することでき、水分の気化を抑制して植栽マットの水分の保持作用を向上させることが可能となる。その結果、渇水による枯れ防止をも図ることが可能となる。
また、植栽マットへの直接的な風による吹き上げを防止することも可能となる。
【0010】
請求項3の発明の特徴構成は、図1・2・4・11に例示するごとく、前記植栽マットS2と前記屋根部B2との間に、通水層Hを形成してあるところにある。
【0011】
請求項3の発明の特徴構成によれば、請求項1又は2の発明による作用効果を叶えることができるのに加えて、植栽マット中から余分な水を通水層に流下させて除去することが可能となり、水分過多による根腐りを防止することが可能となる。
更には、通水層が通水状態でないときには、適度な量の空気を通水層に保持することも可能であるから、植栽マットに対する通気性を向上させることも可能となる。
【0012】
請求項4の発明の特徴構成は、図1・2・4・11に例示するごとく、前記通水層Hは、通水マットS1で構成してあり、前記防風カバー8の前記屋根部B2への固定部9で、前記通水マットS1も前記屋根部B2に固定してあるところにある。
【0013】
請求項4の発明の特徴構成によれば、請求項1〜3の何れかの発明による作用効果を叶えることができるのに加えて、通水マットを敷設するだけの簡単な手間で通水層を形成することが可能となり、植栽部形成作業の効率を向上することができる。
しかも、その通水マットの屋根部への固定は、前記防風カバーの固定部で兼用できるので、より手間を掛けずに植栽部形成作業を実施することが可能となると共に、固定部品の兼用化によるコストダウンをも叶えることが可能となる。
【0014】
請求項5の発明の特徴構成は、図1・2・4・11に例示するごとく、前記防風カバー8と前記屋根部B2との間に、前記通水層Hと前記防風カバー8前面側とを連通させる隙間11を設けてあるところにある。
【0015】
請求項5の発明の特徴構成によれば、請求項1〜4の何れかの発明による作用効果を叶えることができるのに加えて、前記隙間を通じて、前記通水層から排除される水分を、防風カバー全面側へ抜くことが可能となり、前記通水層の通水作用をより向上させることが可能となる。
更には、通水層が通水状態にない場合には、防風カバー全面側から、前記隙間・通水層を通して植栽マットに新鮮な空気を接触させることが可能となる。
その結果、前述の根腐り防止や、通気性の向上を促進することが可能となる。
【0016】
請求項6の発明の特徴構成は、図1・2・4・9・11に例示するごとく、前記防風カバー8に、前記通水マットS1の縁部に沿って前記通水マットS1を支持自在な長尺のマット支持部8Aを設けてあるところにある。
【0017】
請求項6の発明の特徴構成によれば、請求項1〜5の何れかの発明による作用効果を叶えることができるのに加えて、マット支持部を通水マットの縁部に沿った長尺に形成してあるから、点在する状態のマット支持に比べて、支持力を長い範囲に分散でき、通水マットを無理なく支持することが可能となる。
また、マット支持部による通水マットの支持形態としては、種々のものを採用することができるが、例えば、マット支持部と屋根部との間に通水マットを挟む状態に固定する構造を採用すれば、通水マットに対して挟持力を作用させて、より確実に通水マットの固定を果たすことが出来る。また、マット支持部上に通水マットを載置する状態で固定する構造を採用すれば、通水マットの被支持部と屋根部との間に長手方向にわたって隙間を形成することが可能となり、この隙間を、請求項5に記載の隙間に望ませることによって、請求項5の発明の特徴構成による作用を、より好ましい状態で叶えることが可能となる。
【0018】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。尚、図面において従来例と同一の符号で表示した部分は、同一又は相当の部分を示している。
【0020】
図1は、当該発明の植栽屋根構造の一つの実施形態を備えた建物Bを示すものである。
本実施形態の建物Bは、建物本体部B1と、その上に形成した屋根部B2とを一体的に構成した鉄筋コンクリート造の建物である。
【0021】
前記屋根部B2は、図1・2に示すように、陸屋根に構成してあり、この屋上Rには、植栽部S、及び、植栽部Sに隣接させて通路部Tを設けてあり、屋上緑化を図ってある。
【0022】
そして、前記屋根部B2上面には、図1・2・4に示すように、塩化ビニル製の防水シート4を接着固定してあり、更にその上には、前記植栽部S内の排水層(通水層に相当)Hとなる排水マット(通水マットに相当)S1と、植栽部Sの植付層となる植栽マットS2とを積層させてある。
また、前記防水シート4の上面には、前記排水マットS1と植栽マットS2とを固定する複数の固定具3が、所定間隔をあけて接着固定してあり、この固定具3によって、前記排水マットS1や植栽マットS2は屋根に固定されており、その結果、横ズレや風の揚力によって吹き飛ばされるのを防止できるものである。
因みに、前記防水シート4も、前記固定具3も、ともに塩化ビニルによって構成されたもので、両者の接着は、例えば、溶剤を用いて溶着したり、熱融着によって一体化を図ってあり、同質材料によって構成してあるから、溶け合うことで組織が一体となり易く強力な接着力が得られる。
【0023】
前記防水シート4は、先に述べたとおり、塩化ビニルを素材として形成してあり、隣接するシートどうしは、重ね代部分を溶着によって接着してあるから、防水面としては、信頼性の高い連続面が得られる。そして、塩化ビニルそのものの強度、及び、隣接する防水シート4どうしの接着強度、及び、防水シート4全体とした一体性より、植栽部Sでの根の発育による防水シート4貫通を確実に防止することが可能となる。
また、防水シート4そのものは、屋根部B2に接着材によって固定してある。
【0024】
前記排水マットS1は、合成樹脂製の繊維を絡ませてマット状に成形したもので、各繊維間の隙間を通して、植栽部Sの余剰水を排水できるように構成してある。
一方、前記植栽マットS2は、図4に示すように、合成樹脂製の繊維を絡ませてマット状に成形した本体S2aと、その本体S2aの下面部分に一体に形成した合成樹脂製のフィルタS2bと、前記本体S2aの空間に詰めた客土S2cとを備えて構成してある。そして、客土S2cには、例えば、乾燥状態や貧栄養状態でも生育するセダム類等の植物(植栽物の一例)1を植生してある。
因みに、前記客土S2cは、火山砂利やセラミックス系のもの等を使用すれば、乾燥・貧栄養条件を維持しやすく、雑草の侵入を抑制した状態で前記セダム類の生育環境を最適化することが可能となる。
また、屋根部B2への固定は、上述の通り、排水マットS1の上に植栽マットS2が重なる状態で、前記固定具3によって実施してあるが、植栽部Sの外周側に関しては、固定具3は、排水マットS1のみを固定してあり、植栽マットS2の端は固定せずに重なる状態に設置されている。これは、通路部に近い部分に、固定具3が見えにくくするために実施してある。即ち、植栽部Sの外周側は通路部から見通しやすく、そんな環境下に固定具3があれば目立ち易く、植栽部としての美観性を損ねかねない訳であるが、少なくとも、植栽部S外周部において植栽マットS2に固定具3を取り付けてないことで、固定具3が目について美観上の障害となるのを防止している。但し、この部分は、後述の防風カバー8を設けることで、風が当たりにくくなり、固定されてないにも係わらず、安定した取付状態を維持することができる。
【0025】
前記固定具3は、塩化ビニルによって形成してあり、図3・5・6に示すように、ベース部分3aと本体部分3bとを備えて構成してある。
前記ベース部分3aは、円板で構成してあり、前記本体部分3bは、前記円板の中央部分に一体的に且つ立設状態に設けられた樹脂ボルトによって構成してある。
そして、固定具3は、円板形状のベース部分3aを、防水シート4上に面接着することによって、本体部分3bが、屋根面上に突出する状態に設置されている。また、前記本体部分3bには、外周部の雄ネジ部に係止自在な係止リング部材3cやナット10を着脱自在に設けてあり、この係止リング部材3cやナット10によって前記排水マットS1・植栽マットS2を抑える状態に固定したり、後述の防風カバー8を屋根部B2に固定することができる。
また、係止リング部材3cについて説明すると、前記ベース部分3a・本体部分3bと同様に、合成樹脂によって構成してあり、図6に示すように、リング本体7の内周部に薄肉の複数の係止片7aを一体的に設けて構成してある。
前記各係止片7aは、リング軸芯に対して一方側へ傾斜する姿勢に形成してあり、前記樹脂ボルトからなる前記本体部分3bの一端側から当該係止リング部材3cをボルト軸芯に沿って嵌合操作する際には、前記各係止片7aが撓み易い係止状態となり、容易に嵌合させることが出来ながら、一度、嵌合させると、逆方向には、前記係止片7aが突っ張って抜け難くなるように構成してある。
因みに、本体部分3bへの係止リング部材3cの係止作用は、本体部分3bの外周雄ネジ部に係止片7aの先端部が係合することによって有効となる。また、本体部分3bから係止リング部材3cを取り外すには、ボルトからナットを外すのと同じ操作(前記雄ネジ部にそってボルト軸芯周りに係止リング部材3cを回転操作)することによって実施される。
また、本体部分3bに対する係止リング部材3cの係止位置や、後述のナット10の螺合位置は、自由に変更することが可能であるから、前記排水マットS1・植栽マットS2の厚み寸法に合わせて支持高さを好ましい値に調整したり、前記防風カバー8の取付高さを調整することが容易に実施することができるようになる。
【0026】
また、植栽部Sと通路部Tとの境目に位置させた各固定具3(図3参照)には、図1・2・4に示すように、前記植栽マットS2の端縁部への風当たりを抑制自在な防風カバー8を取り付けてある。
前記防風カバー8は、図に示すように、断面チャンネル形状の長尺体部材で構成してあり、下面部8Aは、前記排水マットS1の縁部に沿って前記排水マットS1を支持自在な長尺のマット支持部の役割を果たし、この下面部8Aには、長手方向に間隔をあけて屋根部B2への固定部9を設けてある。この固定部9は、具体的には、前記固定具3の本体部分3bが貫通自在な挿通孔によって構成してあり、この挿通孔は、防風カバー8の長手方向に細長い長穴として形成してある。長穴に形成してあるから、固定具3の本体部分3bに嵌合させて固定する際、融通が利き易く、設置効率よく作業を進めることができる。そして、固定具3への取り付けは、前記固定部9に固定具3の本体部分3bが貫通する状態に配置して、本体部分3bにナット10を螺合させて前記下面部8Aを挟持することで、屋根部B2に固定することができる。尚、当該実施形態での取付構造では、固定具3の本体部分3bには、予め、前記排水マットS1の端縁部を貫通させてあり、前記下面部8Aと、固定具3のベース部分3aとで排水マットS1を挟持する状態に固定してある。即ち、排水マットS1は、前記防風カバー8の固定部9で共に屋根部B2に固定してある。
また、防風カバー8の側面部8Bは、防風カバー8の通路部T側(防風カバーの前面側)から植栽部Sへ向かう風が、通路部T側の植栽マットS2端縁部に直接あたるのを防止できるように構成してある。
また、防風カバー8の上面部8Cは、植栽部Sより高い位置となるように配置してあり、概ね、水平となるように構成してある。従って、この上面部8Cによって、防風カバー8前面側からの風の流線は、前記上面部8Cに沿うようにガイドされ、その結果、前記植栽マットS2に向かない方向で通過しやすくなる。この上面部8Cをガイド部と言う。
一方、屋根部B2に対する防風カバー8の固定高さは、上述のように、上面部8Cが、植栽部Sのマット上面より高い位置となると共に、下面部8Aと屋根部B2との間には、図に示すように隙間11ができるように設定してある。従って、前記排水層Hと通路部(防風カバー8前面)T側空間とは前記隙間11を通して連通しており、排水マットS1から水が排水されるときには、前記隙間11を通して通路部側へ速やかに排水できる一方、排水が無い状態の時には、通路部側から隙間11を通して排水層Hに新鮮空気を流通させることが可能となる。
【0027】
次に、当該建物の屋根上植栽の形成方法について、その一例を挙げて説明する。
[1] 屋根部B2上に防水シート4を接着固定する。
[2] 防水シート4上面の所定の箇所に固定具3を接着固定する。
[3] 排水マットS1・植栽マットS2を、前記防水シート4の上に敷設する。この作業の際には、前記防風カバー8を取り付ける固定具3を除いて、前記固定具3の本体部分3bが、排水マットS1・植栽マットS2を貫通する状態に配置する。そして、植栽マットS2は、排水マットS1より短めに寸法設定しておき、図に示すように、防風カバー8を取り付ける固定具3に対しては、排水マットS1のみが貫通する状態に敷設する。
[4] 各固定具3に、係止リング部材3cを係止させて排水マットS1・植栽マットS2を固定する。但し、植栽部Sと通路部Tとの境目の固定具3には、排水マットS1の上から前記防風カバー8を取り付けて、前記ナット10を螺合させて固定する。この防風カバー8によって、植栽部Sから客土が通路部Tへ流出し難くすることができると共に、植栽部の縁石としての機能も果たし、美観性の向上に努めることが可能となる。また、前述の通り、前記排水マットS1の端縁部を支持すると共に、植栽部Sへの風当たりを抑制することも可能となる。
【0028】
当該実施形態で説明した植栽屋根構造によれば、防風カバー8によって植栽部Sの縁部に位置する植栽マットS2への風当たりが抑制されるから、突風が吹いたとしても、植栽マットが吹き飛ばされ難くすることができ、植栽部Sにおける特に目に付きやすい端部に固定具を使用しなくても(又は、その数を減らしても)、安定した植栽マットの敷設状態を維持することが可能となり、植栽部のもつ本来の美観性を無駄なく発揮させることが可能となる。
また、前記ガイド部(上面部8C)によって、植栽マットS2への風当たりを少なくし、水分の保持作用の向上を図れることで、植物1の生育しやすい状況を維持することが可能となる。更には、植栽マットS2の下方においては、排水マットによって、余分な水分の排除を行い、水分過多による根腐り防止を図る一方、植栽マットに対する通気性の向上を図ることが可能となる。
そして、必要最小限度の固定部を設けるだけで安定した状態に植栽部を構成することが可能となり、植栽部形成作業の効率向上、及び、固定材料コストの低減を叶えることが可能となる。
【0029】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
【0030】
〈1〉 建物の構造は、先の実施形態で説明した鉄筋コンクリート造に限るものではなく、例えば、鉄骨造や、鉄骨鉄筋コンクリート造、又は、木造、及び、それらの複合構造等、公知の建築構造を採用することが可能である。
〈2〉 前記屋根部B2は、先の実施形態で説明した陸屋根に限るものではなく、例えば、傾斜屋根で構成してあるものであってもよい。この場合、前記防風カバー8を、屋根面上で屋根傾斜方向に交わる方向に沿って取り付けることによって、植栽部Sの滑り荷重を受け止めて、より確実な植栽部の固定を果たすことが可能となる。
〈3〉 前記植栽部Sは、排水マットS1と植栽マットS2とを備えて構成してあるものに限らず、例えば、植栽マットS2のみによって構成してあるものであってもよく、それらを総称して植栽部という。
〈4〉 前記固定具3は、先の実施形態で説明したベース部3aと突出部3bとを一体に形成したものに限るものではなく、例えば、図7に示すように、それぞれを別部材で着脱自在な構成とするものであってもよい。この場合、前記ベース部3aと突出部3bとの着脱関係を工夫することによって、色々な植栽屋根形成法をとることが可能となる。
また、植栽部Sのメンテナンス作業等において、突出部3bのみを、新しいものに取り替えるといったことを、効率よく実施することが可能となる。
また、ベース部3aと突出部3bとの材質を異なるもので構成して、それぞれの材質が備えた長所を、ベース部3a・突出部3bそれぞれに生かした高機能固定具とすることが可能となる。
即ち、材質も合成樹脂に限るものではなく、金属やセラミックス、木材等で構成してあってもよい。
〈5〉 前記防水シート4は、先の実施形態で説明した塩化ビニル製の防水シート4を使用して構成してあるものに限るものではなく、ゴムやTPE(サーモ・プラスチック・エラストマ)製のシート、又は、その他の素材からなる防水シートであってもよい。更には、成形シートに限るものではなく、防水材の塗布によって防水層を構成するものであってもよい。
また、防水シート4の屋根部B2への固定は、先の実施形態で説明した全面接着に限るものではなく、例えば、屋根部B2に取り付けた防水シート固定金具に対して接着することで固定する所謂「機械的固定工法」によって設置するものであってもよい。
また、上述の機械的固定工法によって防水シートが固定されている場合は、屋根部B2に取り付けられた防水シート固定金具の上に、防水シートを介して前記固定具3を取り付けることによって、他の位置に取り付けるのに比べて安定した状態に、且つ、強固に固定することが可能となり、植栽部の浮き上がり防止や、ズレ防止上好ましい。
〈6〉 植栽部Sに生育させる植栽物1は、先の実施形態で説明したようにセダム類の植物に限るものではなく、他の草木であってもよい。
〈7〉 前記防風カバー8は、先の実施例で説明した断面チャンネル形状のものに限るものではなく、例えば、図8・9・10に示すように、断面平板形状のものや、断面アングル形状のものであってもよく、要するに、前記植栽マットS2の端縁部への風当たりを抑制自在なものであればよい。
また、前記ガイド部8Cは、図11に示すように、植栽部の表面に対して傾斜する状態に形成してあってもよく、要するに、防風カバー8前面側からの風の流線を、前記植栽マットS2に向かない方向へ誘導するものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】建物を示す一部切欠き斜視図
【図2】屋根の詳細を示す要部断面図
【図3】防風カバーの固定具を示す斜視図
【図4】植栽部を示す要部断面図
【図5】固定具を示す分解斜視図
【図6】固定具の取付状況を示す断面図
【図7】別実施形態の固定具を示す断面図
【図8】別実施形態の防風カバーを示す斜視図
【図9】別実施形態の防風カバーを示す斜視図
【図10】別実施形態の防風カバーを示す斜視図
【図11】別実施形態の防風カバーを示す断面図
【図12】従来の植栽部を示す要部断面図
【符号の説明】
1 植栽物
3 固定具
8 防風カバー
8A マット支持部
8C ガイド部
9 固定部
11 隙間
B2 屋根部
H 通水層
S 植栽部
S1 通水マット
S2 植栽マット

Claims (6)

  1. 植栽物を保持する植栽マットを、屋根部上に敷設して植栽部を構成し、前記植栽マットを貫通する状態で前記屋根部に固定する固定具によって、前記植栽マットを前記屋根部に固定してある植栽屋根構造であって、
    前記植栽マットの端縁部への風当たりを抑制自在な防風カバーを、前記植栽部の端縁部に配置すると共に、前記屋根部に固定してある植栽屋根構造。
  2. 前記防風カバーには、防風カバー前面側からの風の流線を、前記植栽マットに向かない方向へ誘導するガイド部を設けてある請求項1に記載の植栽屋根構造。
  3. 前記植栽マットと前記屋根部との間に、通水層を形成してある請求項1又は2に記載の植栽屋根構造。
  4. 前記通水層は、通水マットで構成してあり、前記防風カバーの前記屋根部への固定部で、前記通水マットも前記屋根部に固定してある請求項3に記載の植栽屋根構造。
  5. 前記防風カバーと前記屋根部との間に、前記通水層と前記防風カバー前面側とを連通させる隙間を設けてある請求項3又は4の何れかに記載の植栽屋根構造。
  6. 前記防風カバーに、前記通水マットの縁部に沿って前記通水マットを支持自在な長尺のマット支持部を設けてある請求項4〜5の何れかに記載の植栽屋根構造。
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