JP4774633B2 - マルテンサイト系耐熱鋼の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、マルテンサイト系耐熱鋼の製造方法、詳細には靱性の優れたマルテンサイト系耐熱鋼の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
火力発電用蒸気タービン軸及び羽根、プラント等には、マルテンサイト系耐熱鋼が使用されている。
従来、これらの用途に使用されているマルテンサイト系耐熱鋼としては、C:0.17%、Ni:0.5%、Cr:11%、Mo:1%、V:0.2%、Ta:0.05%、N:0.05、残部がFe及び不可避の不純物からなもの、C:0.2%、Cr:10.5%、Mo:1.3%、W:1.0%、V:0.2%、Nb:0.2%、B:0.04%、N:0.02、残部がFe及び不可避の不純物からなるもの等が知られている。
そして、これらのマルテンサイト系耐熱鋼は、溶製し、鋳造してインゴットにした後、1150℃前後でソーキングをし、その後熱間加工、焼入れ及び焼戻しをして使用されている。
【0003】
また、最近、C:0.12%、Cr:10.3%、Mo:0.7%、W:1.8%、Co:3.3%、V:0.20%、Nb:0.05%、Ta:0.05%、B:0.005%及びN:0.023を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなるマルテンサイト系耐熱鋼が開発された。このマルテンサイト系耐熱鋼は、上記従来の耐熱鋼と同様に溶製した後、鋳造してインゴットにし、その後1150℃前後でソーキングをし、熱間加工、焼入れ及び焼戻しをして使用されていた。
しかし、このマルテンサイト系耐熱鋼は、クリープ破断強度等の耐熱性が優れているが、靱性がまだ十分でなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記最近開発されたマルテンサイト系耐熱鋼の靱性をより優れたものにする製造方法を提供することを課題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明者らは、上記マルテンサイト系耐熱鋼について鋭意研究をしていたところ、上記マルテンサイト系耐熱鋼は、この種のマルテンサイト系耐熱鋼の通常のソーキング温度より高い温度でソーキングをすると、靱性がより優れたものになること等の知見を得た。
本発明は、これらの知見に基づいて発明をされたものである。
【0006】
すなわち、本発明のマルテンサイト系耐熱鋼の製造方法においては、C:0.05〜0.20%、Si:0.15%以下、Mn:0.20%以下、P:0.020%以下、S:0.010%以下、Cu:0.20%以下、Ni:0.25%以下、Cr:9.80〜10.70%、Mo:0.50〜0.90%、W:1.60〜2.00%、Co:2.90〜3.60%、V:0.10〜0.30%、Nb:0.03〜0.07%、Ta:0.03〜0.07%、B:0.003〜0.008%及びN:0.010〜0.035%を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなる鋼を1180〜1250℃でソーキングをし、その後熱間加工、焼入れ及び焼戻等をすることである。
【0007】
【発明の実施の形態】
次に、本発明のマルテンサイト系耐熱鋼の製造方法について詳細に説明する。
まず、本発明のマルテンサイト系耐熱鋼の成分組成を上記ように特定した理由を説明する。
C:0.05〜0.20%
Cは、強度を高くするので、そのために含有させる元素である。必要な強度を得るためには0.05%以上含有させる必要があるが、その量が多くなると溶接が困難になるので、その上限を0.20%にする。
【0008】
Si:0.15%以下
Siは、溶製時の脱酸剤であるが、その量が多くなると靱性と高温強度を低下させるので、その上限を0.15%にする。
Mn:0.20%以下
【0009】
Mnは、Siと同様に溶製時の脱酸剤であるが、その量が多くなるとクリープ破断強度を劣化させるので、その上限を0.20%にする。
P:0.020%以下
Pは、不純物であり、溶接性を低下させると共に、靱性及び強度を低下させるので、0.020%以下にする。
S:0.010%以下
Sは、不純物であり、熱間加工性を低下させると共に、靱性及び強度を低下させるので、0.010%以下にする。
【0010】
Cu:0.20%以下、Ni:0.25%以下
Cu及びNiは、高温強度を低下するが、溶解原料から混入する通常の不純物程度の0.20%以下又は0.25%以下であれば、その影響が少ないので、その含有量を0.20%以下又は0.25%以下にする。
【0011】
Cr:9.80〜10.70%
Crは、耐酸化性を向上さると共に、炭化物としてマトリックス中に微細に析出してクリープ強度を向上させるので、それらのために含有させる元素である。それらの作用効果を得るためには9.80以上含有させる必要があるが、その量が多くなるとδフェライトを生成し易くなって高温強度を低下させると共に、靱性を劣化させるので、その上限を10.70%にする。
【0012】
Mo:0.50〜0.90%
Moは、マトリックス中に固溶してクリープ破断強度を向上させるので、そのために含有させる元素である。その作用効果を得るためには0.50%以上含有させる必要があるが、その量が多くなるとδフェライトを生成し、逆にクリープ破断強度を劣化させるので、その上限を0.90%にする。
W:1.60〜2.00%
Wは、Moと同様にマトリックス中に固溶してクリープ破断強度を向上させるので、そのために含有させる元素である。その作用効果を得るためには1.60%以上含有させる必要があるが、その量が多くなるとδフェライトや多量のラーベス相を生成し、逆にクリープ破断強度を劣化させるので、その上限を2.00%にする。
【0013】
Co:2.90〜3.60%
Coは、マトリックス中に固溶してδフェライトの生成を抑制するので、δフェライトを生成するCr、W、Mo等の強化元素を多く添加することができるようになり、その結果クリープ破断強度を向上させることができ、また焼戻し軟化抵抗を大きくするので、それらのために含有させる元素である。それらの作用効果を得るにためは2.90%以上含有させる必要があるが、多くなるとσ相等の金属間化合物が生成しやすくなり、このような金属間化合物が生成するとクリープ破断強度が劣化するので、その上限を3.60%にする。
【0014】
V:0.10〜0.30%
Vは、炭窒化物となって析出しても、またマトリックス中に固溶してもクリープ破断強度を著しく向上させるので、そのために含有させる元素である。その作用効果を得るためには0.10%以上含有させる必要があるが、その量が多くなると逆にクリープ破断強度を低下させてしまうので、その上限を0.30%にする。
【0015】
Nb:0.03〜0.07%、Ta:0.03〜0.07%
NbとTaは、炭化物又は炭窒化物として析出することによって高温強度を向上させると共に、マトリックス中に固溶してマトリックスの強度を向上させるので、それらのために含有させる元素である。それらの作用効果を得るためには0.03%以上含有させる必要があるが、その量が多くなると炭化物又は炭窒化物が粗大化して靱性を低下させるので、その上限を0.07%にする。好ましい含有量の上限は、NbとTaの合計が0.12%である。
【0016】
B:0.003〜0.008%
Bは、粒界強度を高くし、その結果クリープ破断強度を向上させるので、そのために含有させる元素である。その作用効果を得るためには0.003%以上含有させる必要があるが、その量が多くなると溶接性を劣化させると共に、靱性も低下させるので、その上限を0.008%にする。
【0017】
N:0.010〜0.035%
Nは、マトリックス中に固溶しても、また窒化物あるいは炭窒化物として析出しても強度を向上させるので、そのために含有させる元素である。その作用効果を得るためには0.010%以上含有させる必要があるが、その量が多くなるとBNの生成量が多くなって、Bを含有させる効果を低下させるので、その上限を0.035%にする。
【0018】
次に、上記本発明に係るマルテンサイト系耐熱鋼を1180〜1250℃でソーキングする理由を説明する。
従来のマルテンサイト系耐熱鋼は、上記のように通常1150℃前後でソーキングをしているが、本発明に係る上記マルテンサイト系耐熱鋼は、表3及び図1に示すように1180℃以上の温度でソーキングをすると、引張強さ、伸び、硬さ等は1150℃でソーキングをしたものとほぼ同じであるが、靱性(衝撃値)が著しく高くなるので、1180℃以上の温度でソーキングをする必要がある。しかし、1250℃より高い温度でソーキングをするとフェライトの析出による靱性の低下を招くので、その上限を1250℃にする。
【0019】
以下、本発明の実施例を説明する。
【実施例】
下記表1に示す成分組成の供試鋼を溶製して通常の方法で鋳造してインゴットにし、下記表2に示す条件でソーキングをし、その後通常の方法で熱間加工をして供試材とした。
【0020】
【表1】
【0021】
その後これらの供試材からJIS Z 2201に規定する棒状引張試験片及びJIS Z 2202に規定する衝撃試験片を作成し、下記表2に示す条件で焼入れ及び焼戻しを行った。これらの熱処理をした試験片を用いて引張試験及び衝撃試験を実施した。その結果を下記表3及び図1に示す。なお、衝撃値(吸収エネルギー)は3本の試験片の平均値とした。
【0022】
【表2】
【0023】
【表3】
【0024】
これらの結果より、本発明例は、耐力が839〜860N/mm2 、引張強さが978〜998N/mm2 、伸びが18〜20%、絞りが53〜65%、硬さがHRC 31〜34及び衝撃値が64〜94Jであった。
これに対して、比較例は、耐力、引張強さ、伸び及び絞りが本発明例とほぼ同じであったが、衝撃値が38〜43Jであった。
【0025】
【発明の効果】
本発明のマルテンサイト系耐熱鋼の製造方法は、上記構成にしたことにより、上記マルテンサイト系耐熱鋼の靱性を、他の性質を低下することなく従来の製造方法で製造したものより約50〜120%向上せることができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明例及び比較例の引張強さと衝撃値との関係を示すグラフである。
Claims (1)
- 重量%で(以下同じ)、C:0.05〜0.20%、Si:0.15%以下、Mn:0.20%以下、P:0.020%以下、S:0.010%以下、Cu:0.20%以下、Ni:0.25%以下、Cr:9.80〜10.70%、Mo:0.50〜0.90%、W:1.60〜2.00%、Co:2.90〜3.60%、V:0.10〜0.30%、Nb:0.03〜0.07%、Ta:0.03〜0.07%、B:0.003〜0.008%及びN:0.010〜0.035%を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなる鋼を1180〜1250℃でソーキングをすることを特徴とするマルテンサイト系耐熱鋼の製造方法。
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