JP3434180B2 - 溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼 - Google Patents

溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼

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JP3434180B2
JP3434180B2 JP26683597A JP26683597A JP3434180B2 JP 3434180 B2 JP3434180 B2 JP 3434180B2 JP 26683597 A JP26683597 A JP 26683597A JP 26683597 A JP26683597 A JP 26683597A JP 3434180 B2 JP3434180 B2 JP 3434180B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高クリープ強度を
有し、さらに溶接熱影響部のクリープ特性を改善したフ
ェライト系耐熱鋼に関するもので、特に、化学工業用反
応装置や石油精製用圧力容器等のリアクターや、ロータ
等の高温用部材に使用するフェライト系耐熱鋼に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】化学工業用反応装置や石油精製用圧力容
器などは、現在2.25質量%(以下「質量%」を
「%」と称する。)Cr−1%Mo鋼や3%Cr−1%
Mo鋼が主に使用されているが、その使用上限温度は約
500℃であり、操業条件の高温高圧化を図るために、
より一層高温における強度特性が要望されている。50
0℃以上で使用可能な耐熱鋼としては、蒸気タービンや
ボイラーチューブ用として実用に9%Cr系鋼が使用さ
れ始めている。この9%Cr系耐熱鋼としては、米国A
STM基準のA387Fr.91鋼(9%Cr−1%M
o−0.2%V−0.1%Nb鋼)が知られている。
【0003】さらに、高温強度の要求が高くなり、クリ
ープ強度を改善するために、9%Cr系フェライト耐熱
鋼を基本鋼として、種々の合金を添加したCr系フェラ
イト耐熱鋼が開発されてきた。例えば、W添加によるク
リープ強度の改善(特開昭58−17820号公報参
照)、MoとWの複合添加によるクリープ強度の改善
(特開昭62−60845号公報、特公平3−6090
5号公報参照)、さらには、Ta2 5 の分散強化によ
るクリープ強度の改善(特開平6−65690号公報参
照)が提案されている。
【0004】特に、特公平3−60905号公報のフェ
ライト系耐熱鋼はクリープ強度とともに溶接性を改善し
た鋼である。このフェライト系耐熱鋼は、C添加量を低
減させて溶接性の改善を行ない、クリープ強度の改善
に、Mo、W、Nbの複合添加を行ない、さらに、Nを
0.02〜0.05%添加を行っている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特公平
3−60905号公報のフェライト系耐熱鋼は母材のク
リープ強度とともに溶接性に優れるが、溶接熱影響部の
クリープ強度については考慮されておらず、溶接熱影響
部のクリープ強度が低くなる場合がある。通常、母材に
比べて溶接熱影響部の材料特性が低下するため、溶接部
を有する高温用部材の性能は、この溶接熱影響部のクリ
ープ強度に左右される場合が多く、溶接施行を行う高温
用部材では、溶接熱影響部のクリープ強度の向上が重要
な課題となる。さらに、特開昭58−17820号公報
や特開平6−65690号公報でも、溶接熱影響部のク
リープ強度については考慮されておらず、同様に、溶接
熱影響部のクリープ強度が低くなる場合がある。
【0006】また、凝固時の冷却速度が遅い大型鋼塊を
製造する場合に、前述の特公平3−60905号公報の
場合では、Nb等の偏析が生じる場合があり、特開昭5
8−17820号公報の場合では、原子量の大きなWの
添加量が多くなるとWの重量偏析が生じやすくなり、さ
らに、特開平6−65690号公報の場合では、Ta 2
5 を均質に分散させることが困難となる場合がある。
【0007】本発明は上述の問題に鑑みてなされたもの
であり、溶接熱影響部のクリープ強度に優れ、500℃
以上の温度で、従来の9%Cr系鋼(米国ASTM基準
のA387Fr.91鋼)より、強度、靱性およびクリ
ープ強度(母材)を有するフェライト系耐熱鋼を提供す
ることを目的とするものである。さらに、大型鋼塊の鋳
造時のNbの偏析やWの重量偏析を防止可能なフェライ
ト系耐熱鋼を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】発明者らは、フェライト
系耐熱鋼のクリープ強度(溶接熱影響部および母材)の
改善と、クリープ強度を高めるNbとWに関し、大型鋼
塊の鋳造時のNbやWの偏析の防止について鋭意研究を
行った。この結果、MoとWの添加量および添加比率の
最適化と、Nの添加量を従来よりさらに低減することに
より、母材のクリープ強度だけでなく、溶接熱影響部ク
リープ強度をも改善でき、さらに、NbとWの上限を規
定することにより、これら元素の鋳造時の偏析を防止で
きるという知見を得て、本発明を完成した。
【0009】すなわち、Mo当量「(%Mo)+0.5
×(%W)」を0.75〜2.0%の範囲に規定し、さ
らに、(%W)/(%Mo)比を3.5、好ましくは
4.0以上にすることにより、クリープ過程中に、微量
のFe2 W(金属間化合物)がフェライト系耐熱鋼のマ
トリックス中に析出し、このFe2 Wがフェライト系耐
熱鋼の溶接熱影響部および母材のクリープ強度の維持、
改善に寄与することを見い出した。さらに、Nの添加量
が0.015%を越えると、溶接熱影響部の結晶粒径が
微細化して、溶接熱影響部のクリープ強度が低下すると
いう新しい知見を得て、N量を0.015%以下に規定
することにより溶接熱影響部のクリープ強度を改善でき
ることを見い出した。また、Nb量を0.06%以下、
W量を2.5%以下に規定にすることによって、大型鋼
塊中でのNb偏析やWの重量偏析を抑制でき、その後の
鍛造加工時の割れを防止できることを見い出した。
【0010】本発明のうちで請求項1記載の発明は、質
量%(以下、%で示す。)でC:0.05〜0.15
%、N:0.015%以下(0%を含む)、Mn:0.
05〜0.5%、Ni:0.5%以下(0%を含む)、
Cr:7.0〜10.0%、Mo:0.71%以下(0
%を含む)、W:1.0〜2.5%、V:0.1〜0.
6%、Nb:0.01〜0.05%からなり、かつ、M
oとWの量が、0.75%≦(%Mo)+0.5×(%
W)≦2.0%と、(%W)/(%Mo)≧3.5を同
時に満たし、残部がFeおよび不可避不純物元素からな
ることを特徴とするものである。各成分の限定理由を以
下に示す。
【0011】(イ)C:0.05〜0.15% 本発明では溶接性の改善のためにC量をできるだけ低減
しているが、高い高温強度を得るため、十分な炭化物量
と均一なマルテンサイト組織にするために、Cは0.0
5%以上必要である。一方、C量が0.15%を越える
と、溶接熱影響部の硬さが高くなり割れを生じ、溶接性
が悪化するので、C量は0.05〜0.15%とする。
【0012】(ロ)N:0.015%以下 Cと同様に、溶接性の改善のためにN量をできるだけ低
減しているが、Nはマトリックスに固溶したり、窒化
物、炭窒化物として析出し、溶接熱影響部および母材の
クリープ強度(以下、特別な明示がないかぎり、単に、
「クリープ強度」と称す。)を高める効果があるので、
Nを0.005%以上添加することが好ましい。しか
し、N量が0.015%を越えて添加すると溶接熱影響
部の結晶粒径が微細となり、溶接熱影響部のクリープ強
度が低下する。この結果、N量は0.015%以下とす
る。
【0013】(ハ)Mo当量「(%Mo)+0.5×
(%W)」:0.75〜2.0% W、Moは固溶体強化により高温強度を顕著に高める元
素であり、固溶体強化により十分なクリープ強度を得る
ためには、Mo当量:(%Mo)+0.5×(%W)は
0.75%以上必要である。また、Mo当量が2%を越
えると金属間化合物の量が多くなり靱性が低下するとと
もに、耐酸化性の観点でも悪影響をおよぼす。このた
め、Mo当量は0.75〜2%とする。
【0014】(ニ)(%W)/(%Mo)比:3.5以
上 (%W)/(%Mo)比を3.5以上とすることによ
り、クリープ強度が著しく向上する。これは、Wの比率
をを多くすることにより、クリープ中に、微量のFe2
W(金属間化合物)が析出することにより、クリープ強
度が維持、改善されるためである。
【0015】(ホ)W:1〜2.5% Wは原子量の大きい元素であり、Wを多量に添加すると
鋳造時の重量偏析が生じやすくなるため、最大添加量は
2.5%とした。また、クリープ強度の改善のために、
W量は1%以上必要である。
【0016】(へ)Mo:0.71%以下(0%を含
む) (ニ)のMo当量の規定と(ホ)の(%W)/(%M
o)比の規定より、Mo量は0.71%以下となるが、
Mo量を0.4%以下、さらには、Wのみ添加してし
て、Moを添加しないこともできる。
【0017】(ト)Nb:0.01〜0.05% Nbは炭化物や窒化物として析出するとともに、後から
析出する炭窒化物の分散状態を制御して、クリープ強度
を著しく高める元素である。Nb量が0.01%未満で
はこの効果が小さく、十分なクリープ強度が得られな
い。一方、Nbが0.05%を越えて添加した場合に
は、特に、大型鋼塊では鋼塊中に添加されたCとNとN
bによる炭窒化物等が生成してNb偏析が起こり、その
後の鍛造加工時に割れが生じやすくなる。また、本発明
では、耐溶接性の観点から、C、N量を低く設定してい
るため、0.06%を越えてNbを添加しても、焼入れ
のための溶体化処理時にNbCやNbNが十分に固溶で
きず、これ以上のクリープ強度の改善が期待できない。
このために、Nb量は0.01〜0.05%とした。
【0018】(チ)Cr:7〜10% Crは耐酸化性耐食性を確保するために重要な元素であ
るが、Cr量が10%を越えると、デルタフェライトが
析出して、高温特性が劣化する。また、Cr量が7%未
満ではクリープ強度、特に溶接熱影響部のクリープ強度
が十分に得られない。
【0019】(リ)Ni:0.5%以下(0%を含む) Niはデルタフェライト相の防止や常温における靱性を
向上させるために必要であるが、0.5%を越えて添加
するとクリープ強度が十分に得られない。
【0020】(ヌ)Mn:0.05〜0.5% Mnは脱酸および焼入れ性を確保するために必要な元素
であり、Mnは0.05%以上必要である。一方、Mn
量が0.5%を越えると、クリープ強度を低下させる。
【0021】(ル)V:0.1〜0.6% Vはマトリックスに固溶し高温強度を上げると同時に、
炭化物や窒化物として析出して、高温強度を向上させ
る。しかし、V量が0.1%未満では十分な効果が得ら
れず、一方、V量が0.6%を越えて添加しても0.6
%までの添加の効果に差がない。このためV量は0.1
〜0.6%とする。
【0022】また、請求項2記載の発明は、請求項1記
載の発明の構成に、Bを0.01%以下含有することを
特徴とするものである。請求項1記載のフェライト系耐
熱鋼に、さらに、Bを微量添加(好ましくは、Bを0.
001%以上、0.01以下%添加)することにより、
フェライト系耐熱鋼の焼入れ性を改善するとともに、ク
リープ強度を改善できる。Bを0.01%を越えて添加
すると熱間加工性が著しく低下するため、B量の上限は
0.01%とした。
【0023】さらに、請求項3記載の発明は、請求項1
又は2記載の発明の構成に、Siを0.1質量%以下含
有することを特徴とするものである。請求項1又は2記
載のフェライト系耐熱鋼に、さらに、Siを添加(好ま
しくは、Siを0.04%以上、0.1以下%添加)す
ることにより、フェライト系耐熱鋼の鋳造時の脱酸を行
うとともに、フェライト系耐熱鋼の耐酸化性を改善す
る。鋳造時の脱酸および耐酸化性の改善のために、Si
量は0.04%以上必要である。一方、Si量が0.1
%を越えると、フェライト系耐熱鋼に金属間化合物(ラ
ーベス相)を増加させて靱性を低下させる。
【0024】また請求項4記載の発明は、請求項1又は
2又は3記載の溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフ
ェライト系耐熱鋼が石油精製用圧力容器等のリアクタ
ー、ロータ等の大型の高温用部材に用いられることを特
徴とするものである。本発明のフェライト系耐熱鋼をリ
アクターや、ロータ等の大型の高温用部材に用いること
により効果を発揮する。すなわち、本発明のフェライト
系耐熱鋼は、母材だけでなく溶接熱影響部のクリープ強
度が高いので、石油精製用圧力容器等のリアクターや、
ロータ等の溶接施行を必要とする高温用部材の高温特性
を向上させ、安定して、優れた性能を発揮させる。さら
に、本発明を大型の高温用部材に用いた場合、鋳塊の鍛
造加工時の割れが防止でき、これら大型の高温用部材の
製作が容易である。
【0025】
【実施例】次に本発明の効果を実施例により、さらに具
体的に説明する。実施例1は溶接熱影響部および母材の
クリープ強度におよぼす合金元素の影響を調査したもの
であり、実施例2は凝固時の鋼塊の偏析におよぼすNb
およびWの影響を調査したものである。
【0026】(実施例1)表1に示す化学成分になるよ
うに、真空誘導溶解炉で20kgの鋼塊を鋳造した。こ
れら鋼塊の内部組織の観察を行ない、初析のNbCやN
bNの有無と、Wの重量偏析の調査したしたところ、比
較例のNo.1(ASTM基準のA387Fr.91
鋼)とNo.20(Nb:0.08%)の鋼塊にNbの
偏析が観察された。しかし、他の鋼塊については、Nb
の偏析やWの重量偏析が認められなかった。
【0027】
【表1】
【0028】次に、これら鋼塊を1200℃に加熱し、
鍛造して直径20mmの丸棒を作成した。さらに、これ
ら丸棒を、1050℃で1時間加熱後、空冷による焼き
ならし処理を行った後に、硬さ(Hv)が220になる
ように720〜760℃で3時間の焼き戻し処理を行っ
た。以下、これらの材料を母材と称する。また、溶接熱
影響部を再現するために、さらに、これら試料をオース
テナイト組織となる1000℃に加熱して、溶接模擬熱
処理を行なった。以下、これらの材料をHAZ再現材と
称する。
【0029】次に、母材について、室温および550℃
における引張試験と、−18℃におけるシャルピー衝撃
試験を行ない、この結果を表2に示す。なお、No.6
の試料(Cr:10%)は、母材の組織観察の結果、デ
ルタフェライトが認められたため、上記試験を行わなか
った。
【0030】
【表2】
【0031】表2に示されるように、各試料とも、N
o.1(ASTM A387Fr.91鋼)と同程度以
上の室温および550℃における耐力および引張強度と
吸収エネルギーを有していることを確認した。さらに、
本実施例の試料はいずれも、No.1より高い耐力、引
張強度および吸収エネルギーを示し、石油精製用圧力容
器に適した強度と靱性を十分に満足していることが確認
された。
【0032】次に、各母材については、600℃、1
7.4kg/mm2 でのクリープ試験を行った。一方、
HAZ再現材については、結晶粒度測定(JIS G
0551 オーステナイト粒度試験)とともに、585
℃、14.0kg/mm2 でのクリープ試験を行った。
これらの結果を表3に示す。従来材のNo.1(AST
M A4387Fr.91鋼)のクリープ試験結果よ
り、母材のクリープ試験での破断時間が342時間を越
え、かつ、HAZ再現材でのクリープ試験での破断時間
が890時間を越えれば、この従来材が使用されている
石油精製用圧力容器に適用できるレベルとなる。
【0033】
【表3】
【0034】本発明の実施例の試験材では、母材および
HAZ再現材のクリープ破断時間はいずれも1000時
間以上となった。これにより、本発明の実施例の試験材
はASTM A4387Fr.91鋼(No.1)より
も、母材、HAZ再現材ともに、クリープ強度に優れて
いることが確認できた。
【0035】次に、クリープ試験の結果におよぼす合金
元素の影響について、さらに説明する。なお、本実施例
では、本発明の成分範囲にあるNo.3の試験材(0.
1%C−7%Cr−0.35%Mo−1.3%W−0.
2%V−0.01%N鋼、Mo当量:1%、W/Mo
比:約3.8)をベースにして合金元素の影響について
試験を行った。
【0036】Cr量の影響について、No.2〜7の結
果から説明する。Cr量が6%以下のNo.2のHAZ
再現材のクリープ強度が低く、一方、Cr量が約11%
のNo.7の試験材は、高温特性を劣化させるデルタフ
ェライトが析出した。本発明のCr量:6〜10%の範
囲にあるNo.2〜6は優れたクリープ特性を示し、特
に、No.4(Cr:8%)のHAZ再現材のクリープ
破断時間は2000時間以上となり、溶接熱影響部が優
れたクリープ強度を有することが判明した。
【0037】N量の影響について、No.3および7〜
9の結果から説明する。N量が増加することにより、母
材およびHAZ再現材のクリープ破断時間が短くなる傾
向があり、特にN量が0.015%越えるとNo.9の
試験材のクリープ破断時間が著しく低下する。また、ク
リープ強度が低下した試験材のHAZ再現材の結晶粒度
は、N量が0.015%越えるとJIS結晶粒度番号が
10以上となり結晶粒が微細化していることが判明し
た。
【0038】W/Mo比の影響について、No.3およ
び10〜13の結果から説明する。W/Mo比の増加と
ともに母材およびHAZ再現材のクリープ破断時間が長
くなる傾向がある。特に、W/Mo比が3.5以上のN
o.3ではHAZ再現材のクリープ破断時間が1359
時間となり、W/Mo比が4.0以上のNo.13では
クリープ破断時間が1729時間以上の優れた、クリー
プ特性を示すことが判明した。なお、No.11はW量
が0.7%未満であったために、クリープ特性が低下し
たものと考えられる。
【0039】次に、Mo当量「(%Mo)+0.5×
(%W)」の影響について、No.3およびNo.14
〜17の結果から説明する。Mo当量が0.75%未満
のNo.15のHAZ再現材のクリープ強度が低く、一
方、Mo当量が2.0%を越えるNo.17では、表3
に示されるように、No.1(ASTM A387F
r.91鋼)と同程度か若干劣るクリープ強度を示し
た。MoとWの添加量が、0.75%≦(%Mo)+
0.5×(%W)≦2.0%と、(%W)/(%Mo)
≧3.5を同時に満たす範囲に調製されたNo.15お
よびNo.16では、良好な特性が得られた。
【0040】Nb量の影響について、No.3およびN
o.18〜20の結果から説明する。Nb量の増加とと
もに母材およびHAZ再現材のクリープ破断時間が長く
なる傾向があるが、Nb量が約0.05%のNo.19
のクリープ破断時間とNb量が0.08%のNo.20
のクリープ破断時間との間に大きな差が認められなかっ
た。また、Nb量が0.05%を越えた、Nb量が0.
08%のNo.20は前述したように、鋼塊中にNbの
偏析が観察された。
【0041】V量の影響について、No.21とNo.
22の結果から説明する。Nbと同様に、V量の増加と
ともに母材およびHAZ再現材のクリープ破断時間が長
くなる傾向があるが、V量が0.6%のNo.21のク
リープ破断時間とV量が0.8%のNo.22のクリー
プ破断時間との間に大きな差が認められなかった。
【0042】B量の影響について、No.3とNo.2
3の結果から説明する。No.3とBを添加したNo.
23とを比較すると、Bを添加することにより母材およ
びHAZ再現材のクリープ破断時間が長くなってクリー
プ強度が改善される。
【0043】(実施例2)さらに、凝固時の鋼塊の偏析
におよぼすNbおよびWの影響を調査するために、表4
に示す化学組成の溶湯を溶製し、凝固時の冷却速度が5
℃/分になるように加熱を行っている鋳型に前記溶湯を
鋳造して鋳塊を製作した。次に、これら鋳塊の内部組織
の観察を行ない、初析のNbCやNbNの有無と、Wの
重量偏析の調査した。この結果を表4に示す。
【0044】
【表4】
【0045】表4に示すように、Nbの添加量が0.0
5%を越えるNo.Fの鋼塊にNb炭窒化物によるNb
偏析が観察され、一方、Wの添加量が2.5%を越える
No.CおよびNo.Dの鋼塊にはWの重量偏析が見出
された。この結果から、Nbの最大添加量を0.05
%、Wの最大添加量を2.5%とすることにより、偏析
のない大型鋼塊を製造できることが判明した。
【0046】以上、説明したように、本発明のフェライ
ト系耐熱鋼の溶接熱影響部のクリープ強度を、従来の9
%Cr系鋼(ASTM A387Fr.91鋼)より、
著しく改善できることが判明した。さらに、本発明のフ
ェライト系耐熱鋼は、この9%Cr系鋼よりも、常温お
よび550℃で高い耐力、引張強度と−18℃での優れ
た衝撃特性を示し、母材のクリープ強度も高いことが明
らかになった。また、本発明のフェライト系耐熱鋼は、
大型鋼塊の鋳造時のNbやWの偏析を防止せきることが
判明した。
【0047】このようなすぐれた特性を有するフェライ
ト系耐熱鋼は、溶接施行を必要とする石油精製用圧力容
器等のリアクターや、ロータ等の高温用部材に用いるこ
とにより、安定して優れた高温優れた性能を発揮する。
その上、大型鋼塊の鋳造時の偏析を防止しできるので、
大型の高温用部材への適用に効果がある。
【0048】
【発明の効果】以上の説明したように、本発明のフェラ
イト系耐熱鋼は、MoとWの添加量および添加比率の最
適化と、Nの添加量を0.015%以下にすることによ
り、母材のクリープ強度だけでなく、溶接熱影響部クリ
ープ強度をも改善できる。さらに、従来の耐熱鋼よりも
合金元素量を低減しても、ASTM A387Fr.9
1鋼より優れた、室温および550℃における耐力およ
び引張強度と吸収エネルギーを有するものである。そし
て、合金元素量を低減により、溶接性が改善できるとい
う効果もある。
【0049】その上、NbとWの上限を規定することに
より、Nb炭窒化物等の偏析やWの重量偏析を防止し、
特に大型鋼塊の鋳造時における、これら元素の偏析を効
果的に抑制できるので、大型鋼塊の鍛造時の鍛造割れを
防止できる効果もある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 内田 博幸 兵庫県神戸市西区高塚台1丁目5番5号 株式会社神戸製鋼所 神戸総合技術研 究所内 (72)発明者 奥田 隆成 兵庫県神戸市西区高塚台1丁目5番5号 株式会社神戸製鋼所 神戸総合技術研 究所内 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/60

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%でC:0.05〜0.15%、
    N:0.015%以下(0%を含む)、Mn:0.05
    〜0.5%、Ni:0.5%以下(0%を含む)、C
    r:7.0〜10.0%、Mo:0.71%以下(0%
    を含む)、W:1.0〜2.5%、V:0.1〜0.6
    %、Nb:0.01〜0.05%からなり、 かつ、M
    oとWの量が、0.75%≦(%Mo)+0.5×(%
    W)≦2.0%と、(%W)/(%Mo)≧3.5を同
    時に満たし、残部がFeおよび不可避不純物元素からな
    るフェライト系耐熱鋼。
  2. 【請求項2】 さらに、Bを0.01質量%以下含有す
    る請求項1記載の溶接熱影響部のクリープ特性に優れた
    フェライト系耐熱鋼。
  3. 【請求項3】 さらに、Siを0.1質量%以下含有す
    る請求項1又は2記載の溶接熱影響部のクリープ特性に
    優れたフェライト系耐熱鋼。
  4. 【請求項4】 リアクター、ロータ等の大型の高温用部
    材に用いられることを特徴とする請求項1又は2又は3
    記載の溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト
    系耐熱鋼。
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