JP4995130B2 - 溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材及び耐熱構造体 - Google Patents

溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材及び耐熱構造体 Download PDF

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Description

本発明は、450℃以上でかつ高圧で使用する耐熱溶接構造体、特に、エネルギー変換を目的とする火力発電プラントや、エネルギー精製を目的とする石油化学プラントを構成するフェライト系耐熱鋼材、詳しくは、溶接熱影響部(Heat Affected Zone of weld、以下、「HAZ」ということがある。)のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材に関するものである。
近年のエネルギー資源の枯渇及び大量消費の見直しを背景とし、地球環境保護のため、高温高圧で使用する鋼構造体、特に、圧力機器の稼動においては、効率よくエネルギーを変換する技術が求められている。将来的には、原子力発電や、高速増殖炉、軽水炉、核融合炉等の低排出大型発電を実現する技術の開発が期待されている。
また、従来から稼働している石油、石炭又は天然ガス火力発電においても、地球温暖化防止の観点から、効率よく電気エネルギーを獲得する技術を開発することが重要視されている。
また、交通手段の車両から排出される排出ガス中に、地球環境に悪影響を与える物質が含まれていることから、燃料自体を清浄化し、該物質の排出量を低減するため、原油の脱硫をより高温高圧で行う、いわゆる、浸深度脱硫技術が注目されている。
このような、電力プラント及び化学プラントでの稼動率の向上、又は、精製率の向上のために、プラントを構成する機器の使用環境は、高温高圧化する傾向にあり、また、同時に、エネルギー需要の増大から、電力プラント及び化学プラントの建設需要が、世界規模で進行する現状において、電力プラント及び化学プラントを高温高圧化においても安定的に稼働し得る技術の開発が求められている。
現在、火力発電が電気エネルギーの大部分を賄い、また、化学プラントが450〜500℃の高温域で稼動している状況において、これらのシステムを構成する機器の事故は、エネルギーの供給の観点から致命的なものであって、上記システムの数日間の停止でさえ、社会に与える影響及び経済的損失は計り知れない。
このような操業不能を招く大規模な事故は、機器を構成する鋼板の損傷による場合が多いが、該損傷は、一般に、鋼材の溶接部で発生する。
溶接部の金属組織を採取し光学顕微鏡で観察すると、鋼材の変態点以上に加熱されて組織が変化し損傷の起点となり得る部位を特定することができるが、特に、溶接熱影響部の外縁(母材に最も近い部位)で生じる局部的なクリープ強度の低下に起因する破壊が、プラント機器の安全性の点から大きな問題となっている。
上記破壊(損傷)は、その発生位置による分類により、一般に、Type IV型損傷(又は、Type IV型破壊)として知られている現象(図1、参照)であるが、その発生機構に係る報告は少なく(非特許文献1及び2、参照)、発生機構解明のための共通認識は、未だ確立されていない。しがって、現在、工業的に実用化されたType IV型損傷防止技術は開発されていない。
プラント機器の設計においては、基準や規制で、溶接部がある場合の高温許容応力を決定する際の目安が定められているに過ぎず、機器・プラントメーカーの自主的な安全裕度追加により、大規模な事故の未然防止を図っているのが現状である。
このため、設計は、過剰に安全性を確保する設計となり、その結果、プラント機器の重量が増し、製造コストが増加する。さらに、プラント工程が増えて、操業コストが増大して、供給するエネルギーのコスト上昇が懸念される。エネルギーコストの上昇は、安定供給の支障となる。
また、過剰に安全性を確保する設計を行っても、溶接部の強度に依然として不安が残り、プラントの事故発生率を低減することは期待できないから、溶接部の強度低下は、エネルギーの安定供給を妨げる大きな要因となる。なお、鋼材の強度を高める組成設計をしても、プラントの設計強度は、溶接部の強度で決定するので、鋼材の機能の向上自体、意味がないことになる。
このように、溶接熱影響部におけるType IV型損傷を解消することは、エネルギー変換を高温高圧で行うプラントの建造にとって極めて重要である。即ち、溶接熱影響部におけるType IV型損傷の発生を防止することができれば、高温高圧プラント機器は、その機能を安定的に充分に発揮し、低コストエネルギーの安定供給に大きく貢献する。
ところで、溶接部(溶接継手)の強度低下は、一般に、10万時間で30〜50%といわれている。この強度の低下をなくすことは、低下率から推定して、高温プラント機器の強度を、逆に、30〜50%上昇することに等しい。この強度の上昇は、プラント操業条件の点でみると、操業温度が50〜80℃上昇することに匹敵する。
この操業温度の上昇は、例えば、火力発電プラントの場合、エネルギー変換効率を5%改善することになる。その結果、火力発電プラントは、原子力発電に匹敵する高効率エネルギー変換プラントになる。
以上の背景の下、高温高圧プラント用耐熱鋼材の溶接部における強度低下を抑制する技術の開発が精力的に行われ、その結果が、これまで数多く報告されている。その代表的な技術の一つとして、溶接熱影響部のクリープ特性を支える析出強化因子、例えば、炭化物、炭窒化物、酸化物を安定化する技術を挙げることができる(特許文献1〜5、参照)。
溶接熱影響部に存在する析出物は、マルテンサイト組織やベイナイト組織に内包される転位の移動を妨げる移動障害物であるから、変態点以上の温度に再熱されて分解固溶する可能性がある炭化物や炭窒化物を安定化することは、溶接部における強度低下を抑制する点で効果がある(特許文献1〜5、参照)。
また、酸化物は、再熱温度域でも分解固溶しないので、炭窒化物の替わりに酸化物を分散させて析出強化を図ると、溶接部における強度低下を抑制することができる(特許文献1〜5、参照)。
しかし、溶接熱影響部における析出物の安定化による効果は、析出物が極めて微細にかつ高密度に析出した場合にこそ大きいが、通常、転位密度が高いベイナイト組織やマルテンサイト組織においては不動転位密度が高いので、析出物の安定化は、主たる強化因子にならない場合がある。特に、酸化物の微細分散は困難で、特殊な製造方法、例えば、メカニカルミーリングなどの適用が不可欠であり、一般的な手法ではない。
また、炭化物や炭窒化物が大量に析出したまま分解固溶しない場合、再度冷却される際に、基材中の炭素濃度や窒素濃度が低下し、溶接熱影響部の組織形成に悪影響を及ぼす場合があり、溶接方法によっては、溶接熱影響部の強度低下を大幅に改善することができない場合もある。
特許文献6には、溶接部を、溶接後に、再度、母材とともに熱処理する技術、例えば、焼入れ焼戻し、又は、焼準焼戻しすることで、溶接熱影響部における強度低下を解決する技術が開示されている。
この技術は、溶接熱影響部の組織を、母材組織と同じ組織に戻す技術であり、以下の理由から、Type IV型損傷の発生を防止する工業的な技術として確立されたものではなく、本発明に比べ、効果が発現し難いものである。即ち、部品機器や構成ユニットがある程度以上の大きさになると、溶接構造体全体を同時に熱処理することは困難である。
溶接構造体全体を、焼入れ又は焼戻しに必要な高温で熱処理するためには、大型炉を使用する必要があるが、大型炉の場合には、設備費が高くつき、また、使用するエネルギーコストも増大するので、特許文献6に開示の技術を工業的な大量生産に適用するためには、さらなる技術開発が必要となる。
しかし、溶接構造体全体を、焼入れ又は焼戻しに必要な高温で熱処理することは、実際には不可能であり、この熱処理で、溶接熱影響部におけるType IV型損傷を完全に抑制することはできない。さらに、上記方法では、溶接金属強度を、溶接まま、すなわち鋳造まま+焼戻しによって設計していることから、全体の焼入れ+焼戻しでは溶接金属の高温強度を確保することが困難となり、Type IV型損傷発生以前に、溶接継手としては、強度の設計が困難となってしまう。
一方、非特許文献3には、溶接熱影響部組織の細粒化を抑制し、クリープ特性の改善を図る手法が報告されている。この手法は、溶接前にAc3変態点以上に加熱し、残留γを3%導入し、その成長合体によって細粒化を防止するものであるが、セメンタイトを生成して残留γを生成しない合金系には適用できないものである。
さらに、上記手法によれば、溶接後に、母材中に残留オーステナイトが生じて、クリープ中に徐々に変形が進行して、配管類や熱交換器系において大きな熱応力が発生するという、耐熱鋼としては致命的な事態を避けることができない。
即ち、非特許文献3は、工業的ではない特殊解しか提案しておらず、安定してType IV型損傷を抑制する技術を開示するものではない。非特許文献3は、むしろ、Bを90ppm添加すると、Type IV型損傷を安定的に抑制することができることを示唆するものである。
特開2002−332547号公報 特開2001−192761号公報 特開平11−256269号公報 特開平07−242935号公報 特開平06−065689号公報 特開2001−003120号公報 「高Crフェライト系先端耐熱鋼の熱影響部に見られるType IV型クリープ損傷を発生する組織の特定と生成機構」,鉄と鋼,Vol.90(2006)No.10,pp31-39 「高Crフェライト系先端耐熱鋼のType IV型クリープ損傷の組織支配因子の考察」,鉄と鋼,Vol.90(2006)No.10,pp40-48 「細粒化を抑制したP92HAZ再現材のクリープ特性」, CAMP−ISIJ,Vol.19(2006),1180
本発明は、フェライト系耐熱鋼材を用いて、火力発電プラント又は石油化学プラントを構成する耐熱溶接構造体を建造する時、溶接部に必然的に発生する溶接熱影響部における局部的な強度低下現象に起因するType IV型損傷の発生を抑制して、組織制御、及び、安定窒化物の導入により、完全に溶接熱影響部からの耐熱溶接構造体の破壊を防止することを課題とする。
そして、本発明は、上記課題を解決して、発電ブラント又は石油化学プラントを構成する耐熱溶接構造体の設計において、設計裕度を小さく取っても、耐熱溶接構造体の安全性を損なわないか、又は、従来の設計基準を活用して設計裕度を高く取り、操業条件、特に、圧力条件を高めてエネルギー変換効率を高め、低排出型プラントの建造を実現することを目的とする。
本発明者は、9%Cr鋼において、Type IV型損傷が、非特許文献1及び2に記載の発生機構に従い発生することを実験的に確認するとともに、実験結果について解析した。
その結果、本発明者は、次の知見を得るに至った。
(i)9%Cr鋼の溶接部における強度低下の主たる原因は、溶接熱影響部において、溶接熱影響部の外縁(母鋼材に近接した部位)に形成された細粒域における転位密度の低下である。
(ii)溶接部におけるType IV型損傷の発生を抑制するためには、溶接熱の影響を受けた後の冷却時に、母鋼材中の炭素濃度の変化と低温変態組織の細粒化を極力抑制し、溶接熱影響部の組織と母鋼材組織の均一性及び整合性を確保することが重要である。
さらに、上記解析の結果、本発明者は、次の知見をも得るに至った。
(iii)溶接熱影響部が多重の熱影響を受け、溶接熱影響部に、Type IV型損傷を生起する可能性のある組織が生成する場合でも、溶接熱影響部外縁、即ち、加熱速度:50℃/秒以上で加熱した際に見られる、Ac1変態点〜Ac1変態点+300℃に加熱された部位の組織において、大傾角粒界が、電子顕微鏡視野にて、M236型炭化物により、粒界の30%以上被覆されていると、溶接部のクリープ特性は低下せず、Type IV型損傷は発生しない。
(iv)同じく、加熱速度:50℃/秒以上で加熱した際に見られる、Ac1変態点〜Ac1変態点+300℃に加熱された部位の組織において、透過電子顕微鏡を用いた5万倍の観察にて確認できる、球相当直径:200nm以下のMX型窒化物が、2個/μm2以上、粒内に分散析出して存在していると、溶接部のクリープ特性は低下せず、Type IV型損傷は発生しない。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
) 質量%で、C:0.01〜0.20%、Si:0.02〜0.50%、Mn:0.05〜1.0%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Cr:0.4〜12.0%、N:0.002〜0.15%、及び、Mo:0.05〜2.0%、W:0.05〜3.0%、Re:0.05〜2.0%のいずれか1種又は2種以上を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、かつ、下記式(1)で定義するHCreq(溶接熱影響部のCr当量)が0.4〜20であり、溶接前の開先を含む部位に、最高加熱温度:1000〜1400℃、保持時間:1〜60000秒、及び、冷却速度:0.1〜50℃/sの熱処理が施されてなるフェライト系耐熱鋼材であって、
(x)Ac1変態点〜Ac1変態点+300℃に加熱される鋼材の溶接熱影響部位の前組織が、(x1)ベイナイト及び/又はマルテンサイトの低温変態組織、及び、(x2)低温変態前のオーステナイトと同じ結晶方位を有し、マルテンサイトのラス境界、又は、ベイナイト及び/又はマルテンサイトのブロック粒境界に存在する残留オーステナイトを体積率で、0.5%以上、5%以下含み、
(z)Ac1変態点〜Ac1変態点+300℃に加熱される鋼材の溶接熱影響部位に、(z1)旧オーステナイト粒の平均粒径が10μm以上のベイナイト及び/又はマルテンサイトの低温変態組織が生成し、かつ、(z2)300℃〜Ac1変態点に保持する溶接後の熱処理により、上記部位の大傾角粒界におけるM236型炭化物の粒界長さ占有率が30%以上となる潜在特性
を有することを特徴とする溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材。
HCreq=[%Cr]+6[%Si]+11[%V]+4[%Mo]+1.5[%W]+
5[%Nb]+12[%Al]+[%Re]+2[%Zr]+5[%Ti]+
2[%Ta]+15[%B]−18[%C]−12[%N]−4[%Ni]−
2[%Mn]−[%Cu]−2[%Co] ・・・(1)
) 質量%で、C:0.01〜0.20%、Si:0.02〜0.50%、Mn:0.05〜1.0%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Cr:0.4〜12.0%、N:0.002〜0.15%、及び、Mo:0.05〜2.0%、W:0.05〜3.0%、Re:0.05〜2.0%のいずれか1種又は2種以上、さらに、Ti:0.01〜0.20%、Zr:0.003〜0.20%、Nb:0.01〜0.50%、V:0.01〜0.50%、Ta:0.01〜0.15%のいずれか1種又は2種以上を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、かつ、下記式(1)で定義するHCreq(溶接熱影響部のCr当量)が0.4〜20であり、溶接前の開先を含む部位に、最高加熱温度:1000〜1400℃、保持時間:1〜60000秒、及び、冷却速度:0.1〜50℃/sの熱処理が施されてなるフェライト系耐熱鋼材であって、
(x)Ac1変態点〜Ac1変態点+300℃に加熱される鋼材の溶接熱影響部位の前組織が、(x1)ベイナイト及び/又はマルテンサイトの低温変態組織、及び、(x2)低温変態前のオーステナイトと同じ結晶方位を有し、マルテンサイトのラス境界、又は、ベイナイト及び/又はマルテンサイトのブロック粒境界に存在する残留オーステナイトを体積率で、0.5%以上、5%以下含み、
(z)Ac1変態点〜Ac1変態点+300℃に加熱される鋼材の溶接熱影響部位に、(z1)旧オーステナイト粒の平均粒径が10μm以上のベイナイト及び/又はマルテンサイトの低温変態組織が生成し、かつ、(z2)300℃〜Ac1変態点に保持する溶接後の熱処理により、上記部位の大傾角粒界におけるM236型炭化物の粒界長さ占有率が30%以上となる潜在特性
を有することを特徴とする溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材。
HCreq=[%Cr]+6[%Si]+11[%V]+4[%Mo]+1.5[%W]+
5[%Nb]+12[%Al]+[%Re]+2[%Zr]+5[%Ti]+
2[%Ta]+15[%B]−18[%C]−12[%N]−4[%Ni]−
2[%Mn]−[%Cu]−2[%Co] ・・・(1)
) 前記低温変態組織が、マルテンサイトのラス内、又は、ベイナイト及び/又はマルテンサイトのブロック粒内に、Ti、Zr、Nb、V、Taのいずれか1種又は2種以上のMX型窒化物であって、透過電子顕微鏡を用いた5万倍の観察にて確認できる、球相当直径:200nm以下のMX型窒化物を、2個/μm2以上含むことを特徴とする請前記()に記載の溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材。
) 前記溶接後の熱処理が、残留オーステナイト消失熱処理及び/又は粒界炭化物析出促進熱処理であることを特徴とする前記()〜()のいずれかに記載の溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材。
) 前記溶接後の熱処理を、1分以上施すことを特徴とする前記()〜()のいずれかに記載の溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材。
) 質量%で、C:0.01〜0.20%、Si:0.02〜0.50%、Mn:0.05〜1.0%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Cr:0.4〜12.0%、N:0.002〜0.15%、及び、及び、Mo:0.05〜2.0%、W:0.05〜3.0%、Re:0.05〜2.0%のいずれか1種又は2種以上を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、かつ、下記式(1)で定義するHCreq(溶接熱影響部のCr当量)が0.4〜20であり、溶接前の開先を含む部位に、最高加熱温度:1000〜1400℃、保持時間:1〜60000秒、及び、冷却速度:0.1〜50℃/sの熱処理が施されてなるフェライト系耐熱鋼材であって、
(y)Ac1変態点〜Ac1変態点+300℃に加熱される鋼材の溶接熱影響部位の前組織が、(y1)ベイナイト及び/又はマルテンサイトの低温変態組織、及び、(y2)低温変態前のオーステナイトの結晶方位と低温変態組織の結晶方位を整合させる特定の結晶方位を有し、マルテンサイトのラス境界、又は、マルテンサイト及び/又はベイナイトのブロック粒境界に存在する整合セメンタイトを体積率で、0.5%以上、5%以下含み、
(z)Ac1変態点〜Ac1変態点+300℃に加熱される鋼材の溶接熱影響部位に、(z1)旧オーステナイト粒の平均粒径が10μm以上のベイナイト及び/又はマルテンサイトの低温変態組織が生成し、かつ、(z2)300℃〜Ac1変態点に保持する溶接後の熱処理により、上記部位の大傾角粒界におけるM236型炭化物の粒界長さ占有率が30%以上となる潜在特性
を有することを特徴とする溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材。
HCreq=[%Cr]+6[%Si]+11[%V]+4[%Mo]+1.5[%W]+
5[%Nb]+12[%Al]+[%Re]+2[%Zr]+5[%Ti]+
2[%Ta]+15[%B]−18[%C]−12[%N]−4[%Ni]−
2[%Mn]−[%Cu]−2[%Co] ・・・(1)
) 質量%で、C:0.01〜0.20%、Si:0.02〜0.50%、Mn:0.05〜1.0%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Cr:0.4〜12.0%、N:0.002〜0.15%、及び、Mo:0.05〜2.0%、W:0.05〜3.0%、Re:0.05〜2.0%のいずれか1種又は2種以上、さらに、Ti:0.01〜0.20%、Zr:0.003〜0.20%、Nb:0.01〜0.50%、V:0.01〜0.50%、Ta:0.01〜0.15%のいずれか1種又は2種以上を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、かつ、下記式(1)で定義するHCreq(溶接熱影響部のCr当量)が0.4〜20であり、溶接前の開先を含む部位に、最高加熱温度:1000〜1400℃、保持時間:1〜60000秒、及び、冷却速度:0.1〜50℃/sの熱処理が施されてなるフェライト系耐熱鋼材であって、
(y)Ac1変態点〜Ac1変態点+300℃に加熱される鋼材の溶接熱影響部位の前組織が、(y1)ベイナイト及び/又はマルテンサイトの低温変態組織、及び、(y2)低温変態前のオーステナイトの結晶方位と低温変態組織の結晶方位を整合させる特定の結晶方位を有し、マルテンサイトのラス境界、又は、マルテンサイト及び/又はベイナイトのブロック粒境界に存在する整合セメンタイトを体積率で、0.5%以上、5%以下含み、
(z)Ac1変態点〜Ac1変態点+300℃に加熱される鋼材の溶接熱影響部位に、(z1)旧オーステナイト粒の平均粒径が10μm以上のベイナイト及び/又はマルテンサイトの低温変態組織が生成し、かつ、(z2)300℃〜Ac1変態点に保持する溶接後の熱処理により、上記部位の大傾角粒界におけるM236型炭化物の粒界長さ占有率が30%以上となる潜在特性
を有することを特徴とする溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材。
HCreq=[%Cr]+6[%Si]+11[%V]+4[%Mo]+1.5[%W]+
5[%Nb]+12[%Al]+[%Re]+2[%Zr]+5[%Ti]+
2[%Ta]+15[%B]−18[%C]−12[%N]−4[%Ni]−
2[%Mn]−[%Cu]−2[%Co] ・・・(1)
) 前記低温変態組織が、マルテンサイトのラス内、又は、ベイナイト及び/又はマルテンサイトのブロック粒内に、Ti、Zr、Nb、V、Taのいずれか1種又は2種以上のMX型窒化物であって、透過電子顕微鏡を用いた5万倍の観察にて確認できる、球相当直径:200nm以下のMX型窒化物を、2個/μm2以上含むことを特徴とする前記()に記載の溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材。
) 前記溶接後の熱処理が、残留オーステナイト消失熱処理及び/又は粒界炭化物析出促進熱処理であることを特徴とする前記()〜()のいずれかに記載の溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材。
10) 前記溶接後の熱処理を、1分以上施すことを特徴とする前記()〜()のいずれかに記載の溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材。
11) 前記フェライト系耐熱鋼材が、さらに、質量%で、Ni:0.01〜2.0%、Co:0.01〜5.0%、Cu:0.01〜2.0%、B:0.0003〜0.0050%、Y:0.005〜0.05%、Ce:0.005〜0.5%、Mg:0.0003〜0.005%、Ba:0.0003〜0.005%、Ca:0.0003〜0.005%、La:0.005〜0.05%のいずれか1種又は2種以上を含有することを特徴とする前記(1)〜(10)のいずれかに記載の溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材。
12) 前記(1)〜(11)のいずれかに記載の溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材を溶接して製造したことを特徴とする溶接熱影響部のクリープ特性に優れた耐熱構造体。
13) 前記耐熱構造体の全体に、Ac1変態点以下で、1分以上の熱処理を施し、残留オーステナイト又は整合セメンタイトを、体積率で、0.5%未満に低減したことを特徴とする前記(12)に記載の溶接熱影響部のクリープ特性に優れた耐熱構造体。
本発明によれば、フェライト系耐熱鋼材の溶接部の熱影響部において、Type IV型損傷の発生が、M236炭化物による粒界被覆、又は、MX型窒化物の粒内析出強化によって、長時間にわたり、完全に抑制されているので、高温高圧プラント機器を構成する耐熱溶接構造体(耐熱構造体)の設計において、その高温強度を、クリープ破断強度の0.67倍(通常の安全率)として設計することができる。その結果、従来発生していた溶接熱影響部起点の事故を防止することができる。
図1に、フェライト系耐熱鋼材の溶接熱影響部に発生したType IV型損傷の断面を示すが、本発明のフェライト系耐熱鋼材(本発明鋼材)は、溶接熱影響部において、図1に示すType IV型損傷が発生しないから、溶接熱影響部のクリープ特性が著しく優れたものである。
本発明鋼材は、質量%で、C:0.01〜0.20%、Si:0.02〜0.50%、Mn:0.05〜1.0%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Cr:0.4〜12.0%、N:0.002〜0.15%、及び、Mo:0.05〜2.0%、W:0.05〜3.0%、Re:0.05〜2.0%のいずれか1種又は2種以上を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、かつ、下記式(1)で定義するHCreq(溶接熱影響部のCr当量)が0.4〜20で、(z)Ac1変態点〜Ac1変態点+300℃に加熱される鋼材の溶接熱影響部位に、(z1)旧オーステナイト粒の平均粒径が10μm以上の低温変態組織が生成し、かつ、(z2)300℃〜Ac1変態点に保持する溶接後の熱処理により、上記部位の大傾角粒界におけるM236型炭化物の粒界長さ占有率が30%以上となる潜在特性溶接後の熱処理により、Ac1変態点〜Ac1変態点+300℃に加熱された鋼材の溶接熱影響部位の大傾角粒界におけるM236型炭化物の粒界長さ占有率が30%以上である低温変態組織(ベイナイト及び/又はマルテンサイト)が生成する潜在特性を有することを特徴とするフェライト系耐熱鋼材である。
なお、溶接後の熱処理は、300℃以上、Ac1点以下に、所定の時間、例えば、1分以上保持する残留オーステナイト消失熱処理及び/又は粒界炭化物析出促進熱処理であるが、これについては、後述する。
また、本発明鋼材は、質量%で、さらに、Ti:0.01〜0.20%、Zr:0.003〜0.20%、Nb:0.01〜0.50%、V:0.01〜0.50%、Ta:0.01〜0.15%のいずれか1種又は2種以上を含有する場合、Ti、Zr、Nb、V、Taのいずれか1種又は2種以上のMX型窒化物であって、透過電子顕微鏡を用いた5万倍の観察にて確認できる球相当直径:200nm以下のMX型窒化物を、2個/μm2以上含む低温変態組織(ベイナイト及び/又はマルテンサイト)が生成することを特徴とするフェライト系耐熱鋼材である。
HCreq=[%Cr]+6[%Si]+11[%V]+4[%Mo]+1.5[%W]+
5[%Nb]+12[%Al]+[%Re]+2[%Zr]+5[%Ti]+
2[%Ta]+15[%B]−18[%C]−12[%N]−4[%Ni]−
2[%Mn]−[%Cu]−2[%Co] ・・・(1)
まず、化学成分及びHCreqを上記のように限定する理由について説明する。なお、%は、質量%を意味する。
C:Cは、フェライト系耐熱鋼材の焼入性の向上に寄与し、同時に、M236型炭化物及びMX型炭窒化物を形成して、母鋼材と溶接部のクリープ破断強度の向上に寄与する。この向上効果は、0.01%以上の添加で明瞭となるが、0.20%を超えて添加すると、炭化物及び/又は炭窒化物の粗大化が著しく、かえってクリープ破断強度を損なう場合があるので、上限を0.20%とする。加工性及び組織安定性を考慮すれば、0.05〜0.12%が好ましい。
Si:Siは、製鋼工程で脱酸剤として添加するが、鋼の強度向上、及び、高温での耐水蒸気酸化性の向上に寄与する元素である。0.02%以上の添加で、その効果が顕著となるが、0.50%を超えて添加すると、酸化物クラスターを生成して靭性が低下するので、上限を0.50%とする。安定して、水蒸気酸化性と靱性を両立させるには、0.1〜0.35%が好ましい。
Mn:Mnは、鋼の強度及び靭性の向上に寄与する元素であるので、0.05%以上添加する。一方、1.0%を超えて添加すると、クリープ破断強度が低下するので、上限を1.0%とする。長時間のクリープ破断強度を高める目的からすると、0.1〜0.5%が好ましい。
Cr:Crは、焼入性を著しく高める元素である。耐熱鋼では、M236型炭化物を析出させ、高温強度を高め、さらに、高温水蒸気酸化性も同時に高める元素である。上記向上効果を確保するため、0.4%以上を添加する。一方、12.0%を超えて添加すると、δフェライトの析出量が増加し、クリープ破断強度や靭性が著しく低下するので、上限を12.0%とする。
工業的に、均一な焼入組織を得て、同時に、所要レベルの耐水蒸気酸化性を得るためには、1.0〜9.0%が好ましいが、さらに、クリープ強度を高めるには、3.0〜7.0%が、より好ましい。
P、S:P及びSは、不可避的な不純物元素であるので、少ないほうが好ましく、Pは0.02%以下、Sは0.01%以下とする。
N:Nは、MX型炭窒化物及び/又はMX型窒化物を形成し、母鋼材と溶接部のクリープ破断強度の向上に寄与する元素であるので、0.002%以上を添加し、上記向上効果を確保する。
一方、Nを、0.15%を超えて添加すると、MX型炭窒化物の過剰生成や、凝集・粗大化を招き、かえって、母鋼材のクリープ破断強度が低下するし、また、溶接部の低温変態組織に残留するMX型窒化物も粗大化して、溶接熱影響部のクリープ破断強度が向上しないので、上限を0.15%とする。
Mo:Moは、母鋼材を固溶強化すると同時に、M236型炭化物や、M2C型炭化物を安定化し、母鋼材の高温強度を高める元素である。0.05%未満では、その向上効果が小さいので、0.05%以上を添加する。一方、2.0%を超えて添加すると、δフェライトの生成を促進すると同時に、M6C型炭化物とLaves相の析出と、凝集・粗大化を促進するので、上限を2.0%とする。
W:Wは、母鋼材を固溶強化し、M236型炭化物の長時間安定化に寄与すると同時に、金属間化合物として析出し、高温長時間側のクリープ破断強度を著しく高める。この向上効果を確保するためには、0.05%以上の添加が必要である。一方、3.0%を超えて添加すると、δフェライトと粗大金属間化合物が生成し、高温強度と靭性を損なうので、上限を3.0%とする。好ましくは、0.5〜2.0%である。
Re:Reは、母鋼材の組織の回復を遅延させて、組織の強化を促進する。この促進効果を確保するためには、0.05%以上の添加が必要である。一方、2.0%を超えて添加すると、δフェライトの生成により、靱性が劣化する場合があるので、上限を2.0%とする。
Ti、Zr、Nb、V、Ta:Ti、Zr、Nb、V、及び、Taは、MX型窒化物を形成し、母鋼材と溶接部のクリープ破断強度を高めるのに必須の元素である。この向上効果を確保するため、1種又は2種以上を添加するが、Tiは、0.01%以上、Zrは0.003%以上、Nbは0.01%以上、Vは0.01%以上、Taは0.01%以上を添加する。
一方、Ti、Zr、Nb、V、及び/又は、Taを過剰に添加すると、MX型窒化物の過剰生成や、凝集・粗大化を招き、母鋼材のクリープ破断強度は向上しないし、また、溶接部の低温変態組織に残留するMX型窒化物も粗大化して、溶接部のクリープ破断強度の向上に寄与しないので、Tiは、0.20%以下、Zrは0.20%以下、Nbは0.50%以下、Vは0.50%以下、Taは0.15%以下の範囲で添加する。
本発明鋼材は、上記元素の他、本発明鋼材の特性、及び、溶接部の特性を阻害しない通常の範囲で、不可避的に、他の元素、Al、Oを含有してもよい。なお、Al:0.05%未満、O:0.01%未満が好ましい。
さらに、本発明鋼材は、本発明鋼材の特性、及び、溶接部の特性を阻害しない範囲で、Ni、Co、Cu、B、Y、Ce、Mg、Ba、Ca、及び、Laの1種又は2種以上を含有してもよい。
具体的には、Ni:0.01〜2.0%、Co:0.01〜5.0%、Cu:0.01〜2.0%、B:0.003〜0.0050%、Y:0.005〜0.05%、Ce:0.005〜0.5%、Mg:0.0003〜0.005%、Ba:0.0003〜0.005%、Ca:0.0003〜0.005%、及び、La:0.005〜0.05%である。
これらの元素のうち、Ni、Co、Cuは、相安定性確保のためにクリープ破断強度に影響のない範囲で添加し、Bは、母鋼材の焼入性を著しく高めるとともに、M236型炭化物を安定化してクリープ破断強度を高めるために添加する。ただし、過剰に添加すると、鋼材の高温クリープ強度を損ねるので、NiとCuは2.0%以下、Coは5.0%以下、の範囲で添加する。
その他の元素は、硫化物の形態を制御する作用を有し、粗大なMnSの形成を防止して、靱性を高める役割を担う元素である。
Y:0.005%未満、Ce:0.005%未満、Mg:0.0003%未満、Ba:0.0003%未満、Ca:0.0003%未満、La:0.005%未満であると、硫化物の形態を制御する作用が得られない。
一方、Y:0.05%超、Ce:0.5%超、Mg:0.005%超、Ba:0.005%超、Ca:0.005%超、La:0.05%超であると、クリープ破断強度の低下を招くので、Y:0.005〜0.05%、Ce:0.005〜0.5%、Mg:0.0003〜0.005%、Ba:0.0003〜0.005%、Ca:0.0003〜0.005%、及び、La:0.005〜0.05%とする。
本発明鋼材においては、個々の元素の組成に加え、上記式(1)で定義するHCreq(溶接熱影響部のCr当量)を、0.4〜20に限定する。この限定は、以下に説明するように、高強度のフェライト系耐熱鋼材を得るうえで重要な条件であり、かつ、溶接熱影響部の組織で発生するType IV型損傷を回避する技術を有効に適用するうえで重要な条件である。
HCreq(溶接熱影響部のCr当量)は、Cr以外の元素のフェライト生成能を、Crのフェライト生成能に換算して総合し、鋼材全体のフェライト生成能を示す指標である。意図的に添加していない化学成分であっても、不純物として混入している元素を含めて、HCreqを算出する。
例えば、Alは、不純物として混入する傾向のある元素であるが、不純物として混入していても、混入量が明確である限り、該混入量も含めてHCreqを算出する。
Creq(Cr当量)の基本式が、シェフラーの状態図に示されているが、本発明者は、溶接熱影響部における低温変態組織を所要の組織に制御するため、個々の元素のフェライト生成能を、種々の耐熱鋼材における相安定性に基づいて実験的に確認し、Crのフェライト生成能に換算して総合し、耐熱鋼材のフェライト生成能をより正確に評価する指標として、上記基本式を前提に、上記式(1)を定義した。
したがって、上記式(1)は、一般的な技術書に掲載されているCr当量式とは、係数も、対象とする相安定度も異なる式であり、本発明鋼材に固有の式である。この点も、本発明鋼材における特徴の一つである。
そして、本発明鋼材において、上記式(1)を用いてHCreqを定義し、その値を0.4〜20に限定するが、その理由は、次の通りである。
本発明鋼材にて、HCreqが低いと、通常の使用形態、即ち、高温圧力機器に使用する鋼管又は鋼板の形態において、その組織を、高強度のベイナイト又はマルテンサイトとすることが困難となるので、HCreqの下限を0.4とする。
一方、HCreqが20を超えると、Cr含有鋼の特徴である、フェライトを生成してベイナイト又はマルテンサイトを得ることができなくなる場合があるので、HCreqの上限を20とする。
HCreqは、好ましくは、1.0〜15.0であり、クリープ強度の観点からは、5.0〜12.0が、より好ましい。
通常、フェライト系耐熱鋼材の溶接は、1kJ/mm以上の溶接入熱で行うが、1kJ/mm以上の溶接入熱の影響で、溶接熱影響部に細粒の低温変態組織が生成する。
上記化学成分及び上記HCreqの本発明鋼材においては、溶接前に、開先部とその近傍に、Type IV型損傷回避熱処理(この熱処理については、後述する。)を施しておけば、溶接部が、1kJ/mm以上の溶接入熱の影響を受けても、冷却後、溶接部に、旧オーステナイト粒(以下「旧γ粒」ということがある。)の平均粒径が10μm以上の低温変態組織が生成する。この点が、本発明鋼材の特徴である。
低温変態組織は、ベイナイト及び/又はマルテンサイトであり、その旧γ粒の痕跡は、溶接熱影響部を、腐食液(ナイタール、ピクリン酸、硝酸、王水等)でエッチングし、光学顕微鏡で観察することにより確認することができる。
本発明者は、50個以上の旧γ粒の粒径を光学顕微鏡で測定し、その平均値を、本発明鋼で定義する“旧γ粒の平均粒径”とした。ただし、一部のα→γ変態で生成する新生オーステナイト粒(以下「新生γ粒」ということがある。)は、以下の理由で、“旧γ粒の平均粒径”に含めない。
平均結晶粒径は、低温変態組織における旧γ粒径を意味するが、旧γ粒を、断面観察の際、2面の結合する稜線近傍で切断すると、実際の結晶粒径を、必ずしも測定することができない。
本発明鋼材の溶接熱影響部におけるα→γ変態は、専ら、結晶粒内部から生じるので、同じ結晶方位を有し、残留オーステナイト(以下「残留γ相」ということがある。)、又は、整合セメンタイト(以下「整合θ相」ということがあるが、説明は後述する。)から再生したγ粒が、成長、合体する際、旧γ粒界から、旧γ粒の痕跡のない新生γ粒が、わずかに生成する場合があり、なかには、粒径が、最大で10μmになるものもある。
新生γ粒は、旧γ粒を核生成サイトとして、旧γ粒界に隣接して生成し、かつ、旧γ粒界を消失させることなく、γ粒の内部に向かって、成長するので、旧γ粒界の片側又は両側に連続して生成するが、専有体積(面積)が小さく、溶接熱影響部の特性には、特に、影響を及ぼさない。
専有面積が小さく、溶接熱影響部の特性に影響を及ぼさない新生γ粒を、作用効果の点で、溶接熱影響部の特性に影響を及ぼす旧γ粒と同列に扱うことはできないので、本発明鋼材においては、新生γ粒を除いて、旧γ粒に隣接しないγ粒の直径を、光学顕微鏡上の視直径にて代表して旧γ粒径とし、“旧γ粒の平均粒径”を算出した。
なお、上記の隣接する微小な新生γ粒が生成しない場合も、現象としてあり得るが、希であるので、本発明鋼材においては、いずれの場合でも、粒内の残留γ相又は整合θ相の合体、成長により、前組織のオーステナイト結晶方位を再現したγ粒の平均粒径をもって、“旧γ粒の平均粒径”を定義する。
本発明鋼材においては、溶接熱影響部の外縁に生成する低温変態組織の細粒化を抑制するため、低温変態する前のオーステナイトの結晶粒の平均粒径は、10μm以上でなければならない。粒径10μm以下の結晶粒が存在していても、平均粒径が10μmであれば、低温変態組織の細粒化を抑制することができる。
しかし、平均粒径が10μm未満であると、必然的に、粒径10μm以下のオーステナイト結晶粒が多く存在することになるので、低温変態組織が細粒化し、Type IV型損傷が発生する原因となる。
低温変態前のオーステナイト結晶粒の平均粒径を10μm以上とし、低温変態組織の細粒化を確実に抑制するため、少なくとも、溶接前の開先を含む部位(1kJ/mm以上の溶接入熱の影響を受ける部位)に、最高加熱温度:1000〜1400℃、保持時間:1〜60000秒、及び、冷却速度:0.1〜50℃/秒の熱処理(以下「Type IV型損傷回避熱処理」ということがある。)を施し、その後の溶接において、溶接熱影響部の全領域が10℃/秒以上の速度で昇温される溶接条件を選択することが好ましい。
少なくとも溶接前の開先を含む部位(1kJ/mm以上の溶接入熱の影響を受ける部位)に、Type IV型損傷回避熱処理を施すと、該部位の組織は、組織の均一性の点から、溶接後は少ないほど好ましい残留γ相に着目すれば、(x1)ベイナイト及び/又はマルテンサイトの低温変態組織を含み、かつ、(x2)低温変態前のオーステナイトと同じ結晶方位を有し、マルテンサイトのラス境界、又は、ベイナイト及び/又はマルテンサイトのブロック粒境界に存在する球相当平均粒径10nm以上の残留オーステナイトを含む組織となる。
なお、低温変態前のオーステナイト組織は、転位下部構造の電子顕微鏡の電子線回折像で観察することができるので、該組織を構成する結晶の方位を、菊池線等を解析することで知ることができる。
近年、解析技術は向上し、この解析は、EBSP(Electron Back Scattering Pattern analysis)と称する結晶方位Mapping技術によって、その断面における面積率を簡便に測定することが可能となっている。そして、この測定面積率から、容易に、体積率も求めることができる。
このように、予め、溶接前に、少なくとも開先を含む部位に上記組織を形成しておくと、溶接後の溶接熱影響部において、旧オーステナイト粒の平均粒径が10μm以上のベイナイト及び/又はマルテンサイトの低温変態組織の形成が促進される。
この場合、Type IV型損傷を回避する点で必要な残留オーステナイトは、体積率で、0.5%以上5%以下が好ましく、さらに、0.5%以上3%以下が、より好ましい。また、残留オーステナイトの30%以上が、同じ結晶方位を有することが、Type IV型損傷を確実に回避する点で、好ましい。
なお、残留オーステナイトの結晶方位分布は、上記EBSP法又は透過電子顕微鏡による電子線回折法で測定することができる。
また、少なくとも溶接前の開先を含む部位(1kJ/mm以上の溶接入熱の影響を受ける部位)に、Type IV型損傷回避熱処理を施すと、該部位の組織は、組織の整合性の点から、セメンタイトの存在態様に着目すれば、(y1)ベイナイト及び/又はマルテンサイトの低温変態組織を含み、かつ、(y2)低温変態前のオーステナイトの結晶方位と低温変態組織の結晶方位を整合させる“特定の結晶方位”、即ち、未変態の残留オーステナイトの主方位<111>と斜方晶Fe3Cの主方位<100>の法線ベクトルが、並進対称性を勘案して、15°以内にある方位関係(焼入組織であるベイナイトやマルテンサイトとも一定の方位関係を有し、Pitsch-Schraderの関係、又は、Pitschの関係)を有し、かつ、マルテンサイトのラス境界、又は、マルテンサイト及び/又はベイナイトのブロック粒境界に存在する“球相当平均粒径10nm以上の整合セメンタイト”を含む組織となる。
本発明者は、上記方位関係を有するセメンタイトが、溶接熱影響部組織の細粒化を抑制する点で、重要な役割を担うことを見いだした。本発明においては、このようなセメンタイトを、「整合セメンタイト」(整合θ相)と称する。この整合θ相は、効果の観点から、前記残留オーステナイトと同じ役割を果す。なお、セメンタイトの結晶方位は、電子顕微鏡で測定することができる。
このように、予め、溶接前に、少なくとも開先を含む部位に上記組織を形成しておくと、溶接後の溶接熱影響部において、旧オーステナイト粒の平均粒径が10μm以上のベイナイト及び/又はマルテンサイトの低温変態組織の形成が促進される。
この場合、整合θ相から核生成したオーステナイトの成長合体が促進されるためには、溶接熱影響を受ける前の整合θ相の30%以上が、同じ結晶方位を有することが、Type IV型損傷を確実に回避する点で好ましい。
しかし、溶接前、少なくとも開先を含む部位に、上記の溶接前熱処理、即ち、Type IV型損傷回避熱処理を施しても、溶接条件が、開先形状や溶接方法によって変動し、溶接部が、溶接熱の影響を複数回にわたり受ける場合には、旧γ粒界から発生する拡散変態型新生γ粒が増殖し、この新生γ粒の増殖が、長期の溶接部特性に影響し、無視し難い強度の低下を招く場合があることを、本発明者は、本発明鋼材の開発過程で見いだした。
この新生γ粒の増殖に起因する現象は、比較的大型の構造物のように、肉厚で、多数パス溶接を必要とした溶接部で見られるが、多くの場合、後続パスの熱影響により、先行パスで生成した溶接熱影響部外縁の組織が、別の組織に変化し、結局は、溶接部の破断強度に影響しないか、又は、ほぼ90%以上の溶接熱影響部外縁の組織が、細粒域相当熱サイクル、即ち、Ac1〜Ac1+300℃の温度に曝されず、Type IV型損傷が発生し難いものとなる。
しかし、長時間使用して脆化した耐熱鋼材料の場合、Type IV型損傷が、一部にでも、一度、発生すれば、損傷起点は、短時間の内に、大規模な損傷に発展する可能性があるのであり、僅かでも、Type IV型損傷発生の可能性があれは、それを無視することはできない。
本発明鋼材は、溶接構造物の一部において見られる、Type IV型損傷回避熱処理を施すだけでは解決しきれない、ごく僅かなType IV型損傷発生の可能性をも根絶することにより、耐熱溶接構造体の破壊の危険性を払拭することができる、工業的に極めて重要な技術である。
本発明鋼材においては、ごく僅かなType IV型損傷発生の可能性をも根絶するため、以下2つの手法を、選択的に一種、又は、二種採用する。
即ち、第一の手法は、Type IV型損傷回避熱処理を施して形成した溶接部の溶接熱影響部外縁、具体的には、Ac1変態点〜Ac1変態点+300℃に加熱される鋼材の溶接熱影響部位に、大傾角粒界におけるM236型炭化物の粒界長さ占有率が30%以上となる組織を形成することである。
この手法を用いる場合、Cr量が多い方が望ましく、最低でも、0.4%以上必要である。Cr量が1.0%以上、好ましくは3.0%以上であると、M236型炭化物による効果がより顕著に発現する。特に、M236型炭化物のMは、Cr、Fe、W、Mo、Reの1種又は2種以上を意味するので、これら元素の添加は、M236型炭化物による効果を強めることになる。
加えて、Bは、M236型炭化物の安定化に有効な元素である。特に、溶接前に、少なくとも開先を含む部位に、Type IV型損傷回避熱処理を施し、旧γ粒径を10μm以上にすると、炭化物の粒界析出割合は必然的に増加する。
また、Type IV型損傷回避熱処理を施した場合、該熱処理を施さない場合に比べ、溶接前、鋼母材中のC濃度は、ほぼ添加量にまで回復しているから、溶接後に施す残留オーステナイト消失熱処理、即ち、Ac1変態点以下に、少なくとも1分保持する熱処理を施すと、M236型炭化物は、粒界に容易に析出する。
溶接熱影響部位の組織の大傾角粒界に析出したM236型炭化物の粒界被覆率は、電子顕微鏡を用い、5000倍の倍率で観察して、簡便かつ正確に測定することが可能であることを、本発明者は、実験的に見いだし、上記粒界被覆率と、溶接熱影響部のクリープ破断強度との関係を調査した。
その結果、M236型炭化物による粒界線の被覆率が30%以上となると、溶接熱影響部のクリープ破断強度が向上することが判明した。
即ち、溶接熱影響部の組織における大傾角粒界、ここでは、隣接する結晶粒の<110>面、即ち、低温変態組織を有するBCC金属の最優先すべり面の法線ベクトルが15°以上となる粒界に析出したM236型炭化物が、組織回復時の転位の移動抑制に有効に作用し、クリープ破断強度の低下の防止に有効に作用することが判明した。
したがって、溶接後の熱処理においては、Ac1変態点以下で1分以上保持すべきであるが、同時に、M236型炭化物の粒界被覆率が、倍率5000倍の電子顕微鏡観察にて、粒界被覆率30%以上なるような熱処理条件を選択すべきである。
具体的には、750℃〜Ac1変態点以下であれば、1〜30分、700〜750℃未満であれば、1時間、600〜700℃未満であれば、2時間、500〜600℃未満であれば、3時間、400〜600℃未満であれば、5時間の保持が好ましい。
この溶接後の熱処理と、本発明鋼材の化学成分規定及びHCreq規定により、複数回、Ac1変態点〜Ac1変態点+300℃に加熱される鋼材の溶接熱影響部においても、長期にわたり、クリープ破断強度の低下を防止することができることを、本発明者は見いだした。
それ故、本発明鋼材の溶接熱影響部の組織において、M236型炭化物の粒界被覆率が、5000倍の電子顕微鏡観察にて30%以上であることを、一要件として既定した。
第2の手法は、溶接熱影響部における変態点を通過する熱履歴に曝されても、析出形態が殆ど変化しない安定な窒化物、を、溶接熱影響部を強化する主要な析出強化因子として導入することである。
本発明鋼材では、溶接前のType IV型損傷回避熱処理により、クリープ変形中、溶接熱影響部において、析出強化因子の作用の低下は生じない。しかし、溶接熱影響部に、繰り返し、細粒域相当の熱サイクルが加わると、焼入性の低下が徐々に進行して、転位組織の強度が、局部的に低下する現象を避けることが難しい。
この場合、旧γ粒は、徐々に小さくなる傾向があり、その分、さらに、粒内不動転位密度は低下する。不動転位密度が低下した組織においては、クリープ変形で導入された可動転位を効果的に止めることが困難となる場合があるので、ここに、析出形態が殆ど変化しない安定な窒化物を導入して、転位の移動を効果的に抑制し、高温での組織回復を防止して、クリープ破断強度を高めることが有効である。
母鋼材の組織のごとく、転位密度の高い組織において、このような安定窒化物は、極めて長時間を経ないと、強度向上に有効に寄与しないが、溶接熱影響部のような低転位密度の組織部位では、有効な強化機構になり得ることも、本発明者が見いだした。
このような知見に基づいて、本発明鋼材では、Ti、Nb、V、Zr、Taの1種又は2種以上のMX型窒化物(ただし、炭化物と固溶していない窒化物)を、所要の添加量のもとで、所要の個数以上、溶接熱影響部の低温変態組織(ベイナイト及び/又はマルテンサイト)中に微細に分散させ、溶接熱影響部のクリープ破断強度を著しく高める手法を採用した。
上記MX型窒化物については、透過電子顕微鏡を用いた5万倍の観察にて確認できる、球相当直径:200nm以下のMX型窒化物を、2個/μm2以上、ベイナイト及び/又はマルテンサイトの低温変態組織中に分散させる。
MX型窒化物の球相当直径が200nm超で、かつ、析出個数が2個/μm2未満であると、窒化物による析出強化機構が機能しないので、MX型窒化物の球相当直径は200nm以下とし、MX型窒化物の個数は、2個/μm2以上とする。
次に、本発明鋼材の製造と、本発明鋼材を用いる耐熱構造体(耐熱溶接構造体)の製造について説明する。
本発明鋼材で規定する成分組成の鋼を、通常の高炉−転炉−連続鋳造の銑鋼一貫プロセス、又は、電気炉製鋼法、直接還元製鉄法等を用いて溶製し、続いて、溶鋼を、インゴット鋳造法又は連続鋳造法で鋳込んで、所定の寸法・形状の鋳片とする。
上記鋳片に熱間圧延を施して鋼板とし、また、さらに、鋼板を加工・成型して鋼管とするか、鋳片を、熱間圧延又は熱間押出によって、シームレス鋼管とするか、又は、上記鋳片に鍛造を施して鍛造部材とし、所要の調質熱処理、即ち、焼入−焼戻し処理、又は、焼準−焼戻し処理を施して、焼戻しベイナイト及び/又は焼戻しマルテンサイトを実質的に80%以上含む組織を形成する。
本発明鋼材においては、焼戻しベイナイト及び/又は焼戻しマルテンサイトを、ベイナイト及び/又はマルテンサイトと称するが、ベイナイト/マルテンサイトの体積率(体積%)は、光学顕微鏡による観察で知ることができる。
上記調質熱処理を施した鋼材は、本来、良好な高温クリープ特性及び靱性、さらに、加工性を有していて、プラント建設用に適するが、焼戻しにより、残留オーステナイト又は整合セメンタイトが分解又は変質して、溶接熱影響部の細粒化抑制が達成されない場合がある。
それ故、上記事態を避けるため、溶接に先立ち、鋼板又は鋼材全体、又は、開先を含む部位を、再度、加熱し、残留オーステナイト又は整合セメンタイトを、再度、生成させておく必要がある。
なお、本発明の知見は、鋼材を焼入れ、又は、焼準した後に、その後の溶接工程までに、加工、変形等で問題が生じない範囲において、焼戻し処理を省略し、又は、あえて実施しないで溶接し、プラント又は構造商品を構築する方法にも適用でき、現実に、Type IV型損傷回避に有効である場合、該方法は本発明と実質的に同一であるといえる。
これらの相(残留γ相又は整合θ相)は、溶接時、溶接熱の影響を受けて、旧γ粒を、再現する。また、溶接熱の影響で、新結晶粒の核生成点である旧γ粒界から、α→γ変態が僅かに生じるが、上記相は、新結晶粒の成長を妨げる作用をなす。
このような組織の再現現象により、本発明鋼材の溶接熱影響部においては、変態点の直上の温度付近に再加熱された部位において、旧γ粒の平均粒径が10μm未満となることがない。その結果、溶接熱影響部の外縁部において、組織の細粒化が抑制されるとともに、焼入性が低下しないので、溶接熱影響部において、従来から問題となっているType IV型損傷が発生しない。
本明鋼材においては、M236型炭化物により大傾角粒界を30%以上被覆する粒界被覆強化機構、及び/又は、安定なMX型窒化物を組織中に分散析出させる分散析出強化機構により、複雑で多重の熱サイクルを受ける溶接部の溶接熱影響部においても、従来から問題となっているType IV型損傷が発生しない。
上記組織を有する溶接部に対し、通常、遅れ破壊や脆化を回避するため、さらに、溶接後熱処理(Post Weld Heat Treatment、以下「PWHT」と記載することがある)を施すことがある。
このPWHTにより、溶接部とその近傍の組織の強度、靱性が、ともに改善されるが、鋼材、又は、開先を含む溶接前の部位に意図的に導入した残留オーステナイト又は整合セメンタイトが、溶接後も、母鋼材中又は上記部位に残留したままであると、例えば、圧力機器を高温で使用して途中、温度及び負荷応力に起因して、マルテンサイトや、フェライトとCr炭化物等が経時的に変態又は変質するか、又は、何らかの外的要因が作用して、析出物の周囲に纏った高密度転位が解放されて、鋼材全体又は機器全体として、大きな体積変化が生じる可能性がある。
この体積変化は、特に、高温蒸気を搬送する配管類に対して、熱応力の他、配管類の各所に応力を付与することとなり、結果的に、圧力機器の損傷の一因となる。
そこで、本発明鋼材においては、残留オーステナイト又は整合セメンタイトを、体積%で、0.5%以下に制限し、本発明鋼材を溶接して製造した圧力機器が、高温に曝されても、機器独自の熱膨張等により発生する熱応力に比較して小さな応力しか与えない組織にする必要がある。実際には、溶接部材又は溶接構造体を、溶接後に、Ac1変態点以下で、残留オーステナイト又は整合θ相が分解、変質する条件で焼戻し熱処理を施せばよい。
本発明鋼材を溶接して製造した、圧力機器、プラント等の溶接構造体は、溶接熱影響部でType IV型損傷が発生しないから、溶接熱影響部のクリープ特性に優れた耐熱構造体であるが、さらに、溶接構造体の全体に、Ac1変態点以下で、1分以上の残留オーステナイト消失熱処理を施し、溶接構造体の至る所で、残留オーステナイト又は整合セメンタイトを体積率で0.5%未満に低減し、上記変態又は変質による応力発生を抑制することが、より好ましい。
なお、残留オーステナイト消失熱処理は、400℃以上Ac1変態点以下で、10分以上保持する熱処理が好ましい。
なお、本発明鋼材において、本発明鋼材の特徴の一つの安定な窒化物は、上記熱処理によっては分解固溶し難いので、その強化機構は影響を受けないし、かえって、大傾角粒界を被覆するM236型炭化物の析出率が増加して、この強化機構が強化される。即ち、溶接後、溶接熱熱影響部に施す熱処理は、残留オーステナイト消失熱処理、及び/又は、粒界炭化物析出促進熱処理として機能し、溶接部のクリープ特性の向上に寄与する。
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例の条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
(実施例1)
表1に示す化学成分の耐熱鋼材に、Type IV型回避熱処理を施した後、該鋼材を、表1に示す化学成分の溶接材料で溶接し、圧力機器を構成した。圧力機器に、400℃以上Ac1変態点以下、10分以上の残留γ相低減熱処理を施した後、機器構成部材及び該部材溶接部から、平行部直径4〜6mm、平行部長さ30mmの試験片を採取した。
そして、上記試験片を用いて、圧力機器の使用温度(500〜650℃)にて想定される応力(20〜100MPa)を定荷重として付加するクリープ試験を実施し、機器構成部材及び該部材溶接部のクリープ破断寿命を調査した。
また、比較のため、表1に示す化学成分の耐熱鋼材に、Type IV型回避熱処理を施さず、表1に示す化学成分の溶接材料で溶接して圧力機器を構成し、同様に、機器構成部材及び該部材溶接部のクリープ破断寿命を調査した。
図2に、9%Crフェライト系耐熱鋼材Aを、溶接材料Dを用いて、入熱2kJ/mmで、TIG溶接して形成した溶接部(本発明溶接部)と、従来耐熱鋼材の溶接部(従来溶接部)の、650℃、10万時間の推定のクリープ破断強度(MPa)を示す。さらに、図2に、溶接実施前で、かつ、Type IV型損傷対策処理を施していない母鋼材の、650℃、10万時間の推定クリープ破断強度(MPa)を併せて示す。
従来溶接部の650℃、10万時間の推定クリープ破断強度は、母鋼材の650℃、10万時間の推定クリープ破断強度の約半分しかないが、本発明溶接部の650℃、10万時間の推定クリープ破断強度は、母鋼材の650℃、10万時間の推定クリープ破断強度と同等である。
次に、図3に、9%Crフェライト系耐熱鋼Bを、共金系溶接材料Cを用いて溶接して製造した溶接部における溶接熱影響部(Ac1変態点〜Ac1変態点+300℃に再加熱された溶接部における母鋼材部分において、元来、細粒域となる部位。以下、「FG−HAZ」と記載することがある。)の平均結晶粒径と、X線回折ピーク法で測定した残留γ量との関係、及び、同じく、上記平均結晶粒径と、電子顕微鏡観察と母材の酸溶解定電位電解抽出残渣によって定量した整合セメンタイト量との関係を示す。
なお、平均結晶粒径は、低温変態組織における旧γ粒径を意味し、前述したように、新生γ粒の粒径を含めない。
図3から、Type IV型損傷の発生を抑制するため、FG−HAZ(細粒域相当溶接熱影響部)における平均結晶粒径を10μm以上にするには、残留オーステナイト又は整合セメンタイトが0.5%以上存在しなければならないことが解る。
整合セメンタイト又は残留オーステナイトが、5%を超えて残留又は析出した場合、機器又はプラント全体を、Ac1変態点以下の温度で加熱する熱処理を施しても、整合セメンタイト又は残留オーステナイトが、完全に、分解、固溶しない場合があって、高温でのプラント操業時に、配管等が著しく変形したり、また、破損したりすることがある。それ故、整合セメンタイト又は残留オーステナイトの量は、体積率で、5%以下が好ましい。
なお、圧力機器又はプラントにおいて、長い直線配管に続いて設けた曲線配管等では、配管の変形が厳しく制限され、特に、高温では3%までに制限される場合があるので、整合セメンタイト又は残留オーステナイトの量は、体積率で、3%以下がより好ましい。
残留オーステナイト量と配管の変形率の関係は、欧州で、既に、経験的に知られている。本発明者は、小形の試験片を用いて仮想試験を行い、中途変態又は変質による変形への影響を調査した。その結果を、図4に示す。
図4から、650℃において、変形が、変形限度の0.5%(100mの直線配管で、50cmにも達する大きな変形である。)を下回るためには、残留オーステナイトを、母鋼材中に残留させたままでは使用に耐えず(前記変形で配管が破損する)、その量を、体積率で0.5%以下に低減する必要があることが解る。
本発明者は、整合セメンタイトの場合も、同様に、体積率で0.5%以下に低減する必要があることを、実験的に確認した。
上記配管の変形は、体積変化を伴う炭化物の析出又は変質が発生することによるものと推定されるが、本発明鋼材においては、フェライト系耐熱鋼材の溶接部に発生するType IV型損傷を回避するとともに、その回避技術によって不可避的に生じる圧力機器又はプラント構成部材の変形を防止することができる。
ここで、図5に、本発明の重要な特徴であるM236型炭化物の粒界被覆の効果を示す。即ち、図5に、溶接後、残留γ低減又は消失熱処理を施した段階で析出したM236型炭化物を、5000倍の走査電子顕微鏡にて観察して得た“粒界の全長に対する析出長さの割合”、即ち、“粒界長さ被覆率(%)”と、2重の熱サイクルを受けた溶接部の10万時間推定クリープ破断強度の母鋼材の該破断強度に対する比の関係を示す。
図5は、溶接入熱(最大5kJ/mm)、及び、パス数(板厚:20〜50mmで35〜120パス)を種々変化させて形成した溶接部から採取したクリープ破断試験片、及び、細粒域相当の多重の熱サイクルを加えた模擬試験体のクリープ破断曲線から得られたクリープ破断強度を合わせて推定した結果から、それぞれ、最も低い値を選んで作成したものである。
図5から、粒界被覆率が30%以上になると(図中、点線及び矢印、参照)、クリープ破断強度比が、安定して、0.8(図中、点線、参照)を上回ることが解る。
なお、M236型炭化物の粒界析出については、既に説明したように、溶接後の残留γ消失熱処理を兼ねる熱処理を実施する必要がある。即ち、溶接ままでは、窒化物以外の析出物が、組織中に存在することができない。
図6に、700℃において、残留オーステナイト消失熱処理と、粒界炭化物(M236型炭化物)析出促進熱処理を実施した場合における、熱温度時間とM236型炭化物の粒界被覆率の関係を示す。図6から、700℃、1分以上の熱処理により、粒界被覆率が、30%以上に増加することが解る。
他の温度条件では、実際に、種々の熱処理時間が必要となるが、耐熱鋼材を溶接した後の残留応力除去や残留オーステナイト消失の観点から、本発明鋼材においては、1分を、最低限必要な熱処理時間として設定した。
熱処理温度が低い場合には、さらに、長時間を必要とする鋼種もあるが、熱処理温度と時間の関係は、鋼材の大きさ、化学成分、さらには、加熱速度、冷却速度にも依存する複雑な関係であるが、本発明鋼材において、極めて良い相関関係が得られたので、熱処理時間を、粒界被覆を有効に活用する指標として採用した。好ましい条件は、前述したとおりである。
図7に、本発明の重要な第二の特徴である、安定なMX型窒化物(M:Nb、V、Ti、Ta、Zrのうち1種又は2種以上が混在)の析出密度と、2重又は3重の細粒域相当熱サイクル、即ち、Ac3変態点〜Ac3変態点+300℃の温度範囲の熱影響を繰り返し受けた場合における、母鋼材と溶接部の650℃、10万時間の推定クリープ破断強度の比の関係を示す。
溶接部の母鋼材とのクリープ破断強度比が0.8(図中、点線、参照)となるのは、MX型窒化物の析出密度が2個/μm2のところ(図中、点線、参照)であり、0.8以上のクリープ破断強度比を確保するためには、MX型窒化物の析出密度を2個/μm2以上にしなければならないことが解る。
Nb、Ti、V、Zr、Taの1種又は2種以上の濃度が、本発明鋼材で規定する範囲から逸脱していると、図7に示すように、析出密度は2個/m2未満である。本発明鋼材において、MX型窒化物の効果は顕著である。
図8に、MX型窒化物の導入の有無と、650℃、10万時間の推定クリープ破断強度比の関係を示す。
図8から、MX型窒化物が導入しない場合(図中、左半分、参照)、Type IV型損傷回避熱処理を溶接前に実施し、組織を制御した場合でも、細粒域相当の熱サイクルを繰り返して受けると、必ずしも頻繁ではないものの、溶接部にType IV型損傷が発生し、クリープ破断強度比0.8を下回る場合があるが、本発明鋼材で規定する化学成分の範囲でMX型窒化物を導入した場合、安定してType IV型損傷の発生を回避することができることが解る。
(実施例2)
表2及び表3(表2の続き)に示す化学成分の本発明鋼材を、表5に示す条件で熱処理して溶接し、溶接部の組織を観察し、強度を測定した。その結果を、表5に、併せて示す。
また、表4に化学成分を示す比較鋼材(従来耐熱鋼材)を、表6に示す条件で熱処理して溶接し、溶接部の組織を観察し、強度を測定した。その結果を、表6に、併せて示す。
溶接部のクリープ特性は、Type IV型損傷の発生の有無だけで評価できるものではなく、溶接金属や、その後の応力除去焼鈍条件でも変化することを考慮し、強度比0.8を閾値とし、閾値0・8以上を、本発明鋼材の効果が発現したものとした。
比較例において、強度比は、最大でも0.8未満であり(表6、参照)、このことを前提とすれ、閾値0.8は、Type IV型損傷の発生による強度低下が殆どないことを意味している。即ち、本発明鋼材の溶接部は、圧倒的に、クリープ特性に優れていることが解る。
なお、推定クリープ破断強度とは、フェライト系耐熱鋼の使用温度、例えば、450〜600℃において、それよりも、最大で100℃高い温度までの温度加速クリープ試験による強度を含み、3万時間を超えるクリープ破断データを、LMP法を用いて、温度と時間を等価に扱い、破断強度を推定計算した値である。
推定計算値は外挿値となるが、その次数が3以上の高次多項式関数であれば、精度高く計算ができるので、実際に必要な10万時間のクリープ試験そのものは実施していない。
表5に示す比較例31は、Cr量が、本発明鋼材の下限以下であるため、溶接前及び/又は溶接後の熱処理を実施したにもかかわらず、M236型炭化物の粒界被覆率が30%に達せず、2重の細粒域相当熱サイクルが加わった溶接熱影響部外縁からType IV型損傷が発生し、同時に、HCreqが小さいが故、熱影響部の組織の転位密度が低下し、結果的に、溶接部のクリープ破断強度が、母鋼材のクリープ破断強度の0.8を超えなかった例である。
比較例32は、化学成分が、本発明鋼材の化学成分範囲を満たすものであるが、溶接後の炭化物析出促進熱処理、又は、残留オーステナイト消失熱処理の時間が不十分であって、M236型炭化物の粒界被覆率が30%に達せず、二重の熱履歴を受けた溶接熱影響部外縁で、Type IV型損傷が発生し、比較例31と同様に、溶接部の破断強度比が0.8に届かなかった例である。なお、比較例32は、残留オーステナイト相の経時変化による体積変化が生じたために、変形が大きく、高温部材としては不的確となった例である。
比較例33は、鋼材に、窒化物を構成する元素を添加していないため、本発明鋼材の特徴であるMX型窒化物による析出強化が発現せず、二重の細粒域相当の熱履歴を受けた熱影響部で、Type IV型損傷の発生を防止することができず、結果的に、溶接部のクリープ破断強度が低下した例である。比較例34も同様である。
比較例35は、溶接前の鋼材に、Type IV型損傷回避熱処理を施さなかったため、Ac1変態点〜Ac1変態点+300℃に加熱された時、溶接熱影響部の平均結晶粒径が小さくなり、焼入性が低下し、溶接部のクリープ破断強度が母鋼材との比で0.8を超えず、低下した例である。
比較例36は、鋼材に、Type IV型損傷回避熱処理を、溶接前に施したものの、溶接後、プラント機器又はプラント全体で、残留オーステナイト又は整合セメンタイトの消失熱処理を施さなかったため、プラント構成フェライト系耐熱鋼材、特に、この場合、配管系統で、多大な歪みが発生し、溶接部が破損し、クリープ破断強度比が著しく低下した例である。
比較例37は、鋼材に、Type IV型損傷回避熱処理を施したが、最高加熱温度が低いため、残留オーステナイト又は整合セメンタイトを、十分に、溶接前の組織に存在させることができず、Type IV型損傷の発生を回避することができなかった例である。
比較例38は、鋼材に、Type IV型損傷回避熱処理を施したが、冷却速度が遅すぎたため、残留オーステナイトの分解又は整合セメンタイトの成長により、組織の整合性が消失して、残留オーステナイト又は整合セメンタイトを十分に溶接前の組織に存在させることができず、Type IV型損傷の発生を回避することができなかった例である。
比較例39は、本発明鋼材で規定する処理条件を全て満たすものであるが、溶接入熱と板厚の関係から、溶接時の昇温速度が遅すぎて、本発明鋼材の効果が得られず、結果として、溶接熱影響部に細粒域が生成してしまい、Type IV型損傷の発生を回避することができなかった例である。
比較例40は、HCreqが高すぎてフェライト単相鋼となり、鋼材の強度そのものが著しく低下し、さらに、Type IV型損傷回避熱処理による効果が発現せず、結局、Type IV型損傷が発生して、溶接部のクリープ破断強度が、母鋼材のクリープ破断強度に比べ著しく低下した例である。
前述したように、本発明によれば、フェライト系耐熱鋼材の溶接部の熱影響部において、Type IV型損傷の発生が、M236炭化物による粒界被覆、及び/又は、MX型窒化物の粒内析出強化によって、長時間にわたり、完全に抑制されているので、高温高圧プラント機器を構成する耐熱溶接構造体(耐熱構造体)の設計において、その高温強度を、クリープ破断強度の0.67倍(通常の安全率)として設計することができる。
その結果、従来発生していた溶接部起点の事故を防止することができるので、本発明は、プラント建設産業において利用可能性が大きいものである。
フェライト系耐熱鋼材の溶接熱影響部に発生するType IV型損傷を示す図である。 本発明鋼材の溶接部(本発明溶接部)の650℃、10万時間の推定クリープ破断強度と、従来耐熱鋼材の溶接部(従来溶接部)の上記破断強度を対比して示す図である。 溶接前の残留オーステナイト又は整合セメンタイトの体積率(%)と、溶接熱影響部外縁(細粒域相当熱影響部)の平均旧γ粒径(μm)との関係を示す図である。 フェライト系耐熱鋼材で製造した直線配管の長さの変化率(%)と、該鋼管中の残留オーステナイトの体積率(%)との関係を示す図である。 236型炭化物による大傾角粒界の粒界長さ被覆率(%)と、母鋼材と溶接部の650℃、10万時間の推定クリープ破断強度の比の関係を示す図である。 溶接後のM236型炭化物の粒界析出促進熱処理時間と、大傾角粒界を被覆する粒界被覆率の関係を示す図である。 多重の細粒域相当熱履歴を受けた溶接部と母鋼材の、650℃、10万時間推定のクリープ破断強度の比と、球相当直径200nm以下の安定なMX型窒化物の析出密度との関係を示す図である。 MX型窒化物を導入したことにより、多重熱履歴を受けた溶接熱影響部外縁の、650℃、10万時間推定のクリープ破断強度比が安定化することを示す図である。

Claims (13)

  1. 質量%で、C:0.01〜0.20%、Si:0.02〜0.50%、Mn:0.05〜1.0%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Cr:0.4〜12.0%、N:0.002〜0.15%、及び、Mo:0.05〜2.0%、W:0.05〜3.0%、Re:0.05〜2.0%のいずれか1種又は2種以上を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、かつ、下記式(1)で定義するHCreq(溶接熱影響部のCr当量)が0.4〜20であり、溶接前の開先を含む部位に、最高加熱温度:1000〜1400℃、保持時間:1〜60000秒、及び、冷却速度:0.1〜50℃/sの熱処理が施されてなるフェライト系耐熱鋼材であって、
    (x)Ac1変態点〜Ac1変態点+300℃に加熱される鋼材の溶接熱影響部位の前組織が、(x1)ベイナイト及び/又はマルテンサイトの低温変態組織、及び、(x2)低温変態前のオーステナイトと同じ結晶方位を有し、マルテンサイトのラス境界、又は、ベイナイト及び/又はマルテンサイトのブロック粒境界に存在する残留オーステナイトを体積率で、0.5%以上、5%以下含み、
    (z)Ac1変態点〜Ac1変態点+300℃に加熱される鋼材の溶接熱影響部位に、(z1)旧オーステナイト粒の平均粒径が10μm以上のベイナイト及び/又はマルテンサイトの低温変態組織が生成し、かつ、(z2)300℃〜Ac1変態点に保持する溶接後の熱処理により、上記部位の大傾角粒界におけるM236型炭化物の粒界長さ占有率が30%以上となる潜在特性
    を有することを特徴とする溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材。
    HCreq=[%Cr]+6[%Si]+11[%V]+4[%Mo]+1.5[%W]+
    5[%Nb]+12[%Al]+[%Re]+2[%Zr]+5[%Ti]+
    2[%Ta]+15[%B]−18[%C]−12[%N]−4[%Ni]−
    2[%Mn]−[%Cu]−2[%Co] ・・・(1)
  2. 質量%で、C:0.01〜0.20%、Si:0.02〜0.50%、Mn:0.05〜1.0%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Cr:0.4〜12.0%、N:0.002〜0.15%、及び、Mo:0.05〜2.0%、W:0.05〜3.0%、Re:0.05〜2.0%のいずれか1種又は2種以上、さらに、Ti:0.01〜0.20%、Zr:0.003〜0.20%、Nb:0.01〜0.50%、V:0.01〜0.50%、Ta:0.01〜0.15%のいずれか1種又は2種以上を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、かつ、下記式(1)で定義するHCreq(溶接熱影響部のCr当量)が0.4〜20であり、溶接前の開先を含む部位に、最高加熱温度:1000〜1400℃、保持時間:1〜60000秒、及び、冷却速度:0.1〜50℃/sの熱処理が施されてなるフェライト系耐熱鋼材であって、
    (x)Ac1変態点〜Ac1変態点+300℃に加熱される鋼材の溶接熱影響部位の前組織が、(x1)ベイナイト及び/又はマルテンサイトの低温変態組織、及び、(x2)低温変態前のオーステナイトと同じ結晶方位を有し、マルテンサイトのラス境界、又は、ベイナイト及び/又はマルテンサイトのブロック粒境界に存在する残留オーステナイトを体積率で、0.5%以上、5%以下含み、
    (z)Ac1変態点〜Ac1変態点+300℃に加熱される鋼材の溶接熱影響部位に、(z1)旧オーステナイト粒の平均粒径が10μm以上のベイナイト及び/又はマルテンサイトの低温変態組織が生成し、かつ、(z2)300℃〜Ac1変態点に保持する溶接後の熱処理により、上記部位の大傾角粒界におけるM236型炭化物の粒界長さ占有率が30%以上となる潜在特性
    を有することを特徴とする溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材。
    HCreq=[%Cr]+6[%Si]+11[%V]+4[%Mo]+1.5[%W]+
    5[%Nb]+12[%Al]+[%Re]+2[%Zr]+5[%Ti]+
    2[%Ta]+15[%B]−18[%C]−12[%N]−4[%Ni]−
    2[%Mn]−[%Cu]−2[%Co] ・・・(1)
  3. 前記低温変態組織が、マルテンサイトのラス内、又は、ベイナイト及び/又はマルテンサイトのブロック粒内に、Ti、Zr、Nb、V、Taのいずれか1種又は2種以上のMX型窒化物であって、透過電子顕微鏡を用いた5万倍の観察にて確認できる、球相当直径:200nm以下のMX型窒化物を、2個/μm2以上含むことを特徴とする請求項に記載の溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材。
  4. 前記溶接後の熱処理が、残留オーステナイト消失熱処理及び/又は粒界炭化物析出促進熱処理であることを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材。
  5. 前記溶接後の熱処理を、1分以上施すことを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材。
  6. 質量%で、C:0.01〜0.20%、Si:0.02〜0.50%、Mn:0.05〜1.0%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Cr:0.4〜12.0%、N:0.002〜0.15%、及び、及び、Mo:0.05〜2.0%、W:0.05〜3.0%、Re:0.05〜2.0%のいずれか1種又は2種以上を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、かつ、下記式(1)で定義するHCreq(溶接熱影響部のCr当量)が0.4〜20であり、溶接前の開先を含む部位に、最高加熱温度:1000〜1400℃、保持時間:1〜60000秒、及び、冷却速度:0.1〜50℃/sの熱処理が施されてなるフェライト系耐熱鋼材であって、
    (y)Ac1変態点〜Ac1変態点+300℃に加熱される鋼材の溶接熱影響部位の前組織が、(y1)ベイナイト及び/又はマルテンサイトの低温変態組織、及び、(y2)低温変態前のオーステナイトの結晶方位と低温変態組織の結晶方位を整合させる特定の結晶方位を有し、マルテンサイトのラス境界、又は、マルテンサイト及び/又はベイナイトのブロック粒境界に存在する整合セメンタイトを体積率で、0.5%以上、5%以下含み、
    (z)Ac1変態点〜Ac1変態点+300℃に加熱される鋼材の溶接熱影響部位に、(z1)旧オーステナイト粒の平均粒径が10μm以上のベイナイト及び/又はマルテンサイトの低温変態組織が生成し、かつ、(z2)300℃〜Ac1変態点に保持する溶接後の熱処理により、上記部位の大傾角粒界におけるM236型炭化物の粒界長さ占有率が30%以上となる潜在特性
    を有することを特徴とする溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材。
    HCreq=[%Cr]+6[%Si]+11[%V]+4[%Mo]+1.5[%W]+
    5[%Nb]+12[%Al]+[%Re]+2[%Zr]+5[%Ti]+
    2[%Ta]+15[%B]−18[%C]−12[%N]−4[%Ni]−
    2[%Mn]−[%Cu]−2[%Co] ・・・(1)
  7. 質量%で、C:0.01〜0.20%、Si:0.02〜0.50%、Mn:0.05〜1.0%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Cr:0.4〜12.0%、N:0.002〜0.15%、及び、Mo:0.05〜2.0%、W:0.05〜3.0%、Re:0.05〜2.0%のいずれか1種又は2種以上、さらに、Ti:0.01〜0.20%、Zr:0.003〜0.20%、Nb:0.01〜0.50%、V:0.01〜0.50%、Ta:0.01〜0.15%のいずれか1種又は2種以上を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、かつ、下記式(1)で定義するHCreq(溶接熱影響部のCr当量)が0.4〜20であり、溶接前の開先を含む部位に、最高加熱温度:1000〜1400℃、保持時間:1〜60000秒、及び、冷却速度:0.1〜50℃/sの熱処理が施されてなるフェライト系耐熱鋼材であって、
    (y)Ac1変態点〜Ac1変態点+300℃に加熱される鋼材の溶接熱影響部位の前組織が、(y1)ベイナイト及び/又はマルテンサイトの低温変態組織、及び、(y2)低温変態前のオーステナイトの結晶方位と低温変態組織の結晶方位を整合させる特定の結晶方位を有し、マルテンサイトのラス境界、又は、マルテンサイト及び/又はベイナイトのブロック粒境界に存在する整合セメンタイトを体積率で、0.5%以上、5%以下含み、
    (z)Ac1変態点〜Ac1変態点+300℃に加熱される鋼材の溶接熱影響部位に、(z1)旧オーステナイト粒の平均粒径が10μm以上のベイナイト及び/又はマルテンサイトの低温変態組織が生成し、かつ、(z2)300℃〜Ac1変態点に保持する溶接後の熱処理により、上記部位の大傾角粒界におけるM23C6型炭化物の粒界長さ占有率が30%以上となる潜在特性
    を有することを特徴とする溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材。
    HCreq=[%Cr]+6[%Si]+11[%V]+4[%Mo]+1.5[%W]+
    5[%Nb]+12[%Al]+[%Re]+2[%Zr]+5[%Ti]+
    2[%Ta]+15[%B]−18[%C]−12[%N]−4[%Ni]−
    2[%Mn]−[%Cu]−2[%Co] ・・・(1)
  8. 前記低温変態組織が、マルテンサイトのラス内、又は、ベイナイト及び/又はマルテンサイトのブロック粒内に、Ti、Zr、Nb、V、Taのいずれか1種又は2種以上のMX型窒化物であって、透過電子顕微鏡を用いた5万倍の観察にて確認できる、球相当直径:200nm以下のMX型窒化物を、2個/μm2以上含むことを特徴とする請求項に記載の溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材。
  9. 前記溶接後の熱処理が、残留オーステナイト消失熱処理及び/又は粒界炭化物析出促進熱処理であることを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材。
  10. 前記溶接後の熱処理を、1分以上施すことを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材。
  11. 前記フェライト系耐熱鋼材が、さらに、質量%で、Ni:0.01〜2.0%、Co:0.01〜5.0%、Cu:0.01〜2.0%、B:0.0003〜0.0050%、Y:0.005〜0.05%、Ce:0.005〜0.5%、Mg:0.0003〜0.005%、Ba:0.0003〜0.005%、Ca:0.0003〜0.005%、La:0.005〜0.05%のいずれか1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項に記載の溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材を溶接して製造したことを特徴とする溶接熱影響部のクリープ特性に優れた耐熱構造体。
  13. 前記耐熱構造体の全体に、Ac1変態点以下で、1分以上の熱処理を施し、残留オーステナイト又は整合セメンタイトを、体積率で、0.5%未満に低減したことを特徴とする請求項12に記載の溶接熱影響部のクリープ特性に優れた耐熱構造体。
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