JP4995122B2 - 溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材及び耐熱構造体 - Google Patents

溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材及び耐熱構造体 Download PDF

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Description

本発明は、450℃以上でかつ高圧で使用する耐熱溶接構造体、特に、エネルギー変換を目的とする火力発電プラントや、エネルギー精製を目的とする石油化学プラントを構成するフェライト系耐熱鋼材、詳しくは、溶接熱影響部(Heat Affected Zone of weld、以下、「HAZ」ということがある。)のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材に関するものである。
近年のエネルギー資源の枯渇及び大量消費の見直しを背景とし、地球環境保護のため、高温高圧で使用する鋼構造体、特に、圧力機器の稼動においては、効率よくエネルギーを変換する技術が求められている。将来的には、原子力発電や、高速増殖炉、軽水炉、核融合炉等の低排出大型発電を実現する技術の開発が期待されている。
また、従来から稼働している石油、石炭又は天然ガス火力発電においても、地球温暖化防止の観点から、効率よく電気エネルギーを獲得する技術を開発することが重要視されている。
また、交通手段の車両から排出される排出ガス中に、地球環境に悪影響を与える物質が含まれていることから、燃料自体を清浄化し、該物質の排出量を低減するため、原油の脱硫をより高温高圧で行う、いわゆる、浸深度脱硫技術が注目されている。
このような、電力プラント及び化学プラントでの稼動率の向上、又は、精製率の向上のために、プラントを構成する機器の使用環境は、高温高圧化する傾向にあり、また、同時に、エネルギー需要の増大から、電力プラント及び化学プラントの建設需要が、世界規模で進行する現状において、電力プラント及び化学プラントを高温高圧化においても安定的に稼働し得る技術の開発が求められている。
現在、火力発電が電気エネルギーの大部分を賄い、また、化学プラントが450〜500℃の高温域で稼動している状況において、これらのシステムを構成する機器の事故は、エネルギーの供給の観点から致命的なものであって、上記システムの数日間の停止でさえ、社会に与える影響及び経済的損失は計り知れない。
このような操業不能を招く大規模な事故は、機器を構成する鋼板の損傷による場合が多いが、該損傷は、一般に、鋼板の溶接部で発生する。
溶接部の金属組織を採取し光学顕微鏡で観察すると、鋼材の変態点以上に加熱されて組織が変化し損傷の起点となり得る部位を特定することができるが、特に、溶接熱影響部の外縁(母材に最も近い部位)で生じる局部的なクリープ強度の低下に起因する破壊が、プラント機器の安全性の点から大きな問題となっている。
上記破壊(損傷)は、その発生位置による分類により、一般に、Type IV型損傷(又は、Type IV型破壊)として知られている現象(図1、参照)であるが、その発生機構に係る報告は少なく(非特許文献1及び2、参照)、発生機構解明のための共通認識は、未だ確立されていない。したがって、現在、工業的に実用化されたType IV型損傷防止技術は開発されていない。
プラント機器の設計においては、基準や規制で、溶接部がある場合の高温許容応力を決定する際の目安が定められているに過ぎず、機器・プラントメーカーの自主的な安全裕度追加により、大規模な事故の未然防止を図っているのが現状である。
このため、設計は、過剰に安全性を確保する設計となり、その結果、プラント機器の重量が増し、製造コストが増加する。さらに、プラント工程が増えて、操業コストが増大して、供給するエネルギーのコスト上昇が懸念される。エネルギーコストの上昇は、安定供給の支障となる。
また、過剰に安全性を確保する設計を行っても、溶接部の強度に依然として不安が残り、プラントの事故発生率を低減することは期待できないから、溶接部の強度低下は、エネルギーの安定供給を妨げる大きな要因となる。なお、鋼材の強度を高める組成設計をしても、プラントの設計強度は、溶接部の強度で決定するので、鋼材の機能の向上自体、意味がないことになる。
このように、溶接熱影響部におけるType IV型損傷を解消することは、エネルギー変換を高温高圧で行うプラントの建造にとって極めて重要である。即ち、溶接熱影響部におけるType IV型損傷の発生を防止することができれば、高温高圧プラント機器は、その機能を安定的に充分に発揮し、低コストエネルギーの安定供給に大きく貢献する。
ところで、溶接部(溶接継手)の強度低下は、一般に、10万時間で30〜50%といわれている。この強度の低下をなくすことは、低下率から推定して、高温プラント機器の強度は、逆に、30〜50%上昇することに等しい。この強度の上昇は、プラント操業条件の点でみると、操業温度が50〜80℃上昇することに匹敵する。
この操業温度の上昇は、例えば、火力発電プラントの場合、エネルギー変換効率を5%改善することになる。その結果、火力発電プラントは、原子力発電に匹敵する高効率エネルギー変換プラントになる。
以上の背景の下、高温高圧プラント用耐熱鋼材の溶接部における強度低下を抑制する技術の開発が精力的に行われ、その結果が、これまで数多く報告されている。その代表的な技術の一つとして、溶接熱影響部のクリープ特性を支える析出強化因子、例えば、炭化物、炭窒化物、酸化物を安定化する技術を挙げることができる(特許文献1〜5、参照)。
溶接熱影響部に存在する析出物は、マルテンサイト組織やベイナイト組織に内包される転位の移動を妨げる移動障害物であるから、変態点以上の温度に再熱されて分解固溶する可能性がある炭化物や炭窒化物を安定化することは、溶接部における強度低下の抑制する点で効果がある(特許文献1〜5、参照)。
また、酸化物は、再熱温度域でも分解固溶しないので、炭窒化物の替わりに酸化物を分散させて析出強化を図ると、溶接部における強度低下を抑制することができる(特許文献1〜5、参照)。
しかし、溶接熱影響部における析出物の安定化による効果は、析出物が極めて微細にかつ高密度に析出した場合にこそ大きいが、通常、転位密度が高いベイナイト組織やマルテンサイト組織においては不動転位密度が高いので、析出物の安定化は、主たる強化因子にならない場合がある。
また、炭化物や炭窒化物が大量に析出したまま分解固溶しない場合、再度冷却される際に、基材中の炭素濃度や窒素濃度が低下し、溶接熱影響部の組織形成に悪影響を及ぼす場合があり、溶接方法によっては、溶接熱影響部の強度低下を大幅に改善することができない場合もある。
特許文献6には、溶接部を、溶接後に、再度、母材とともに熱処理する技術、例えば、焼入れ焼戻し、又は、焼準焼戻しすることで、溶接熱影響部における強度低下を解決する技術が開示されている。
この技術は、溶接熱影響部の組織を、母材組織と同じ組織に戻す技術であり、Type IV型損傷の発生を防止する技術ではない。また、部品機器や構成ユニットがある程度以上の大きさになると、溶接構造体全体を同時に熱処理することは困難である。
さらに、通常は、溶接金属強度を、溶接まま、即ち、鋳造まま+焼戻しによって設計していることから、上記方法、即ち、溶接金属を含む構造体全体の焼入れ+焼戻しでは、溶接金属の高温強度を確保することが困難となり、Type IV型損傷発生以前に、溶接継手としては、強度の設計が困難となってしまう。
溶接構造体全体を熱処理するためには、大型炉を使用する必要があるが、大型炉の場合には、設備費が高くつき、また、使用するエネルギーコストも増大するので、特許文献6に開示の技術を工業的な大量生産に適用するためには、さらなる技術開発が必要となる。
しかし、溶接構造体全体を熱処理することは、実際には不可能であり、この熱処理で、溶接熱影響部におけるType IV型損傷を完全に抑制することはできない。
一方、非特許文献3には、溶接熱影響部組織の細粒化を抑制し、クリープ特性の改善を図る手法が報告されている。この手法は、溶接前にAc3変態点以上に加熱し、残留オーステナイトを3%導入し、その成長合体によって細粒化を防止するものであるが、セメンタイト、又は、M236型炭化物を生成して残留オーステナイトを生成しない合金系には適用できないものである。
さらに、上記手法によれば、溶接後に、母材中に残留オーステナイトが生じて、クリープ中に徐々に変形が進行して、配管類や熱交換器系において大きな熱応力が発生するという、耐熱鋼としては致命的な事態を避けることができない。
即ち、非特許文献3は、工業的な特殊解しか提案しておらず、安定してType IV型損傷を抑制する技術を開示するものではない。非特許文献3は、むしろ、Bを90ppm添加すると、Type IV型損傷を安定的に抑制することができることを示唆するものである。
特開2002−332547号公報 特開2001−192761号公報 特開平11−256269号公報 特開平07−242935号公報 特開平06−065689号公報 特開2001−003120号公報 「高Crフェライト系先端耐熱鋼の熱影響部に見られるType IV型クリープ損傷を発生する組織の特定と生成機構」,鉄と鋼,Vol.90(2006)No.10,pp31-39 「高Crフェライト系先端耐熱鋼のType IV型クリープ損傷の組織支配因子の考察」,鉄と鋼,Vol.90(2006)No.10,pp40-48 「細粒化を抑制したP92HAZ再現材のクリープ特性」,CAMP-ISIJ,Vol.19(2006),1180
本発明は、フェライト系耐熱鋼材を用いて、火力発電プラント又は石油化学プラントを構成する耐熱溶接構造体を建造する時、溶接部に必然的に発生する溶接熱影響部における局部的な強度低下現象に起因するType IV型損傷の発生を抑制して、溶接熱影響部からの耐熱溶接構造体の破壊を防止することを課題とする。
そして、本発明は、上記課題を解決して、発電ブラント又は石油化学プラントを構成する耐熱溶接構造体の設計において、設計裕度を小さくとっても、耐熱溶接構造体の安全性を損なわないか、又は、従来の設計基準を活用して設計裕度を高くとり、操業条件、特に、圧力条件を高めてエネルギー変換効率を高め、低排出型プラントの建造を実現することを目的とする。
本発明者は、9%Cr鋼において、Type IV型損傷が、非特許文献1及び2に記載の発生機構に従い発生することを実験的に確認した。
その結果、本発明者は、次の知見を得るに至った。
(i)9%Cr鋼の溶接部における強度低下の主たる原因は、溶接熱影響部において、溶接熱影響部の外縁(母鋼材に近接した部位)に形成された細粒域における転位密度の低下である。
(ii)溶接部におけるType IV型損傷の発生を抑制するためには、溶接熱の影響を受けた後の冷却時に、たとえ、Ac3点直上に加熱された細粒域において、炭化物が一部未固溶で残留し、低温変態組織形成に必要な固溶C量が減少しても、転位密度の高いマルテンサイト及び/又はベイナイトを形成し、溶接熱影響部の組織と母鋼材組織の均一性及び整合性を確保することが重要である。
さらに、本発明者は、上記知見に加え、次の知見を得るに至った。
(iii)転位密度の高いマルテンサイト及び/又はベイナイトを形成するためには、溶接熱影響部焼入性指数HDIを定義し、このHDIを所要の範囲に規制すれば、溶接熱影響部において結晶粒径が顕著に変化しても、Type IV型損傷の発生を抑制することができる。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
(1) 質量%で、C:0.01〜0.20%、Si:0.02〜0.50%、Mn:0.05〜1.0%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Cr:0.4〜12.0%、Al:0.001〜0.05%、N:0.001〜0.07%を含有し、O:0.01%以下に制限し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、かつ、下記式(1)で定義する溶接熱影響部焼入性指数HDIが0.5〜80のフェライト系耐熱鋼材であって、
Ac1変態点〜Ac1変態点+300℃に加熱される鋼材の溶接熱影響部位に、転位密度が1×1012個/m2以上(Cr:0.4〜3.0%の場合)、又は、1×1013個/m2以上(Cr:3.0超〜12.0%の場合)の低温変態組織が生成する
ことを特徴とする溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材。
HDI=√[%C]√[%N](1+0.5[%Si])(1+3[%Mn])(1+2[%Cr])(1+3[%Mo])(1+0.8[%W])(1+0.3[%Cu])(1+0.5[%Ni])(1+2.5[%Nb])(1+1.5[%V])(1+0.5[%Al])(1+0.3[%Ti])(1+0.3[%Zr])(1+0.2[%Re])(1+25[%B])(1+0.5[%Co]) ・・・(1)
(2) 前記フェライト系耐熱鋼材が、さらに、質量%で、B:0.0003〜0.005%を含有することを特徴とする前記(1)に記載の溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材。
(3) 前記フェライト系耐熱鋼材が、さらに、質量%で、Mo:0.05〜2.0%、W:0.05〜3.0%、Re:0.05〜2.0%のうちの一種又は二種以上を含有することを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材。
(4) 前記フェライト系耐熱鋼材が、さらに、質量%で、Ni:0.01〜0.5%、Co:0.01〜3.0%、Cu:0.01〜1.5%のうちの一種又は二種以上を含有することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材。
(5) 前記フェライト系耐熱鋼材が、さらに、質量%で、Ti:0.005〜0.20%、Zr:0.002〜0.10%のうちの一種又は二種を含有することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材。
(6) 前記フェライト系耐熱鋼材が、さらに、質量%で、Ca:0.0003〜0.005%、Mg:0.0003〜0.01%、La:0.005〜0.05%、Ce:0.005〜0.10%、Y:0.005〜0.10%、Ba:0.0003〜0.005%のうちの一種又は二種以上を含有することを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材。
(7) 前記フェライト系耐熱鋼材のCr量が3.0〜12.0質量%であり、さらに、質量%で、B:0.0003〜0.005%、Nb:0.005〜0.50%、V:0.01〜1.0%を含有することを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載の溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材。
) 前記Ac1変態点〜Ac1変態点+300℃に加熱される鋼材の溶接熱影響部位に、予め、旧オーステナイトの粒径が球相当平均直径で100μm以上の低温変態組織が形成されていることを特徴とする前記(1)〜()のいずれかに記載の溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材。
) 前記低温変態組織が、ベイナイト及び/又はマルテンサイトであることを特徴とする前記(1)〜()のいずれかに記載の溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材。
10) 前記溶接熱影響部焼入性指数HDIが3.0〜65であることを特徴とする前記(1)〜()のいずれかに記載の溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材。
11) 前記(1)〜(10)のいずれかに記載の溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材を溶接して製造したことを特徴とする溶接熱影響部のクリープ特性に優れた耐熱構造体。
本発明によれば、フェライト系耐熱鋼材の溶接部の熱影響部において、Type IV型損傷が発生しないから、高温高圧プラント機器を構成する耐熱溶接構造体(耐熱構造体)の設計において、その高温強度を、クリープ破断強度の0.67倍(通常の安全率)として設計することができる。その結果、従来発生していた溶接熱影響部起点の事故を防止することができる。
図1に、フェライト系耐熱鋼材の溶接熱影響部に発生したType IV型損傷の断面を示すが、本発明のフェライト系耐熱鋼材(本発明鋼材)は、溶接熱影響部において、図1に示すType IV型損傷が発生しないから、溶接熱影響部のクリープ特性が著しく優れたものである。
本発明鋼材は、質量%で、C:0.01〜0.20%、Si:0.02〜0.50%、Mn:0.05〜1.0%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Cr:0.4〜12.0%、Al:0.001〜0.05%、N:0.001〜0.07%を含有し、O:0.01%以下に制限し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、かつ、下記式(1)で定義する溶接熱影響部焼入性指数HDIが、0.5〜80のフェライト系耐熱鋼である。
HDI=√[%C]√[%N](1+0.5[%Si])(1+3[%Mn])(1+2[%Cr])(1+3[%Mo])(1+0.8[%W])(1+0.3[%Cu])(1+0.5[%Ni])(1+2.5[%Nb])(1+1.5[%V])(1+0.5[%Al])(1+0.3[%Ti])(1+0.3[%Zr])(1+0.2[%Re])(1+25[%B])(1+0.5[%Co]) ・・・(1)
ここで、溶接熱影響部焼入性指数HDIの式(1)は、炭素量が0.2%以下の低合金鋼の溶接熱影響部における焼入性を評価するに際し、一般に用いられている理想臨界直径DIの式を最適化したものである。
即ち、主要合金元素Xの焼入性倍数fXは、一次式:fX=1+αX[%X]で表せると仮定して、炭素量が0.2%以下の低合金鋼の溶接熱影響部の組織を光学顕微鏡で観察した結果を基に、回帰分析により、αXを決定して求めた。
焼入性倍数の式を前記一次式と仮定した理由は、一般によく知られている、Grossmannらが求めた焼入性倍数の図において、各主要合金元素の焼入性倍数が、一定範囲で、前記一次式で表されることによる。ただし、炭素量及び窒素量については、1/2乗に比例することを知見したので、(1)式では、1/2乗として組み入れている。
なお、フェライト系耐熱鋼では、焼き戻して使用する場合がほとんどであり、その結果、有効結晶粒径が、おおよそ、10〜15μmとほぼ一定となることも解ったので、結晶粒径の影響については、HDIの式に組み入れていない。
したがって、対象製品の溶接熱影響部焼入性を、指数HDIで表すことができる。このHDIと鋼材の特性との関係から、満足すべきHDI閾値を決定して、適用した。
まず、化学成分及びHDI値の範囲を前述のように限定する理由について説明する。なお、%は、質量%を意味する。
C:Cは、フェライト系耐熱鋼材の焼入性の向上に寄与し、同時に、炭化物を形成してクリープ破断強度の向上に寄与する。この向上効果は、0.01%以上の添加で明瞭となるが、0.20%を超えて添加すると、炭化物の粗大化が著しく、かえってクリープ破断強度を損なう場合があるので、上限を0.20%とする。加工性及び組織安定性を考慮すれば、0.05〜0.12%が好ましい。
Si:Siは、製鋼工程で脱酸剤として添加するが、鋼の強度向上、及び、高温での耐水蒸気酸化性の向上に寄与する元素である。0.02%以上の添加で、その効果が顕著となるが、0.50%を超えて添加すると、酸化物クラスターを生成して靭性が低下するので、上限を0.50%とする。安定して、水蒸気酸化性と靱性を両立させるためには、0.1〜0.35%が好ましい。
Mn:Mnは、鋼の強度及び靭性の向上に寄与する元素であるので、0.05%以上添加する。一方、1.0%を超えて添加すると、クリープ破断強度が低下するので、上限を1.0%とする。長時間のクリープ破断強度を向上させる目的からすると、0.1〜0.5%が好ましい。
Cr:Crは、焼入性を著しく高める元素であり、耐熱鋼では、さらに、高温水蒸気酸化性も同時に向上させる元素であるので、0.4%以上添加する。一方、12.0%を超えて添加すると、δフェライトの析出量が増加して、クリープ破断強度や靭性が著しく低下するので、上限を12.0%とする。
工業的に、均一な焼入組織を得て、同時に、所要レベルの耐水蒸気酸化性を得るためには、1.0〜9.0%が好ましいが、さらに、クリープ強度を高めるためには、3.0〜7.0%が、より好ましい。
N:Nは、Cと同様に、鋼材の焼き入れ性向上に寄与し、また、本発明鋼材においては、HDI値を高める効果を有する。さらに、炭窒化物等を形成して鋼材のクリープ強度向上に寄与する。0.001%未満の添加では、その効果が顕在化せず、一方、0.07%を超えて添加すると、粗大な窒化物又は炭窒化物等を形成し、鋼材の靭性低下、又は、クリープ破断強度の低下を招く場合があるため、その添加範囲を0.001〜0.07%とする。
P、S:P及びSは、不可避的な不純物元素であるので、少ないほうが好ましく、Pは0.02%以下、Sは0.01%以下とする。
本発明鋼材は、上記元素の他、本発明鋼の特性、及び、溶接部の特性を阻害しない通常の範囲で、不可避的に、Al、Oを含有してもよい。
低Cr鋼を、500℃以下の比較的低温の領域で使用する際に、むしろ、靱性を重視して、Alを脱酸元素として添加する場合がある。この場合、Alを最大0.05%まで添加することが可能である。
一方、製鋼技術的には困難を伴うが、通常、クリープ破断強度の観点から、Alを0.005%以下に抑制することが好ましいが、製鋼技術上の制約もあり、Alの下限を、0.001%とする。
Oは、Cr添加を前提とする成分であり、基本的に添加しないが、不純物量程度の0.01%以下の範囲内で、耐火物の損耗を防ぐため、敢えて添加する場合がある。この場合に、Oは、微小酸化物を生成して鋼材中に存在し、固溶化処理時に、結晶粒が異常に成長するのを抑制する効果を発揮する。
本発明鋼材は、クリープ特性のさらなる向上のため、又は、他の特性の向上のため、上記以外の他の元素を含有してもよい。
本発明鋼材は、鋼材の焼入性を高めるため、Bを0.0003〜0.005%含有してもよい。
本発明鋼材は、金属間化合物析出、又は、M2C、さらに、MC型炭化物又は炭窒化物の析出による析出強化機構を活用して、高温強度を高めるため、Mo:0.05〜2.0%、W:0.05〜3.0%、Re:0.05〜2.0%のうちの一種又は二種以上を含有してもよい。
また、本発明鋼材は、上記のフェライト安定化元素を多量に添加し、その結果、相安定性が低下して、δフェライトが生成し、クリープ強度が損なわれるよりは、クリープ強度に対する影響が少ない、Ni:0.01〜0.5%、Co:0.01〜3.0%、Cu:0.01〜1.5%を、変態点を著しく低下させない範囲内で、一種又は二種以上を含有してもよい。
さらに、本発明鋼材は、高温クリープ特性を長時間にわたって支えるのに必要な粒内析出型炭化物又は炭窒化物を形成するため、Ti:0.005〜0.20%、Zr:0.002〜0.10%、Nb:0.005〜0.50%、V:0.01〜1.0%のうちの一種又は二種以上を含有してもよい。
また、本発明鋼材は、粗大硫化物、具体的には、MnSが偏析部に粗大析出することを防止するため、また、粒界に偏析してクリープ破断強度を低下させるSを固定するため、Ca:0.0003〜0.005%、Mg:0.0003〜0.01%、La:0.005〜0.05%、Ce:0.005〜0.10%、Y:0.005〜0.10%、Ba:0.0003〜0.005%のうちの一種又は二種以上を含有してもよい。
本発明鋼においては、個々の元素の組成に加え、上記式(1)で定義する溶接熱影響部焼入性指数HDIを、0.5〜80に限定する。HDIの限定は、以下に説明するように、溶接熱影響部におけるType IV型損傷の発生を抑制する上で最も重要である。
溶接熱影響部焼入性指数HDIが、所要の範囲内にあれば、たとえ、溶接熱影響部外縁において、平均旧γ粒径が5μm程度まで小さくなる場合、即ち、溶接熱により、Ac1変態点以上、Ac1変態点+300℃の範囲の温度に曝されて生成した細粒組織が存在しても、内部の転位密度が高いままに維持され、従来から課題となっている“細粒組織域の転位密度低下”を、直接、防止することができる。
溶接熱影響部における“細粒組織域の転位密度低下”を防止することができれば、Type IV型損傷の発生を抑制することができるから、HDIが所要の範囲に限定されていることは、本発明鋼材において、極めて重要な要件である。
HDIは、鋼の焼入性、特に、溶接熱影響部の焼入性を評価する指標であるが、本発明者は、溶接熱影響部の焼入性の良否が、溶接熱影響部への転位の導入に大きく影響することから、個々の元素の焼入性を総合して評価する指数を、新規に上記式(1)で定義し、本発明鋼材においては、値を0.5〜80に規制した。この点が、本発明の第一の特徴である。
HDIを0.5〜80に規制した理由は、次の通りである。
本発明鋼材において、HDIが0.5未満であると、溶接熱影響部の焼入性は低いままであり、一度、加熱を受けた部位が、溶接熱影響部の組成や冷却速度に依存して、再度、変態する際、低温変態する能力を欠くことになる。その結果、溶接熱影響部の組織は、ベイナイト又はマルテンサイトとなり難く、一部は、フェライト組織になってしまうので、溶接熱影響部の高温クリープ強度が著しく低下して、典型的なType IV型損傷が生起することになる。
したがって、溶接熱影響部焼入性指数HDIは、最低限必要な値として、0.5を下限とする。なお、溶接熱影響部において、再度低温変態する能力を確実に確保するため、HDIは、3.0以上が好ましく、5.0以上が、より好ましい。
一方、本発明鋼材が、HDI80を超える強い焼入性を有する場合、溶接熱影響部の強度は極めて高くなり、その結果、溶接残留応力起因の高温割れが発生する可能性があり、また、焼戻した場合における焼戻し脆化が顕著となり、場合によっては、焼戻し割れが発生する可能性がある。それ故、HDIの上限は80とするが、上記割れ発生の可能性を確実になくすためには、65以下が好ましい。
通常、フェライト系耐熱鋼材の溶接は、1kJ/mm以上の溶接入熱で行うが、1kJ/mm以上の溶接入熱の影響で、溶接熱影響部に細粒の低温変態組織が生成する。
上記化学成分及び上記HDIの本発明鋼材においては、1kJ/mm以上の溶接入熱の影響を受けて、冷却後、細粒の低温変態組織が生成しても、上記転位密度の低温変態組織が生成し、転位の挙動により、溶接熱影響部でType IV型損傷が発生するのを抑制する。
この点が、本発明鋼の第二の特徴であるが、転位密度の下限が、3%Crを境にして異なる(Cr:0.4〜3.0%の場合:1×1012個/m2以上、Cr:3.0%超〜12.0%の場合:1×1013個/m2以上)理由は、次の通りである。
Cr量の多寡により合金状態図の形態が変化する。Cr量が少ない場合、鉄−炭素系状態図に近い形態のγループ型状態図を形成し、Cr量が多い場合、典型的なγループ型状態図を形成する。それ故、Cr量、また、Cr量に応じて第3元素の影響の度合いも変化し、その結果、変態点は変化し、当然、焼入性は変化する。
焼入性の変化は、そのまま、低温変態組織そのものを変え、Cr量が少ない場合は、ベイナイト主体の組織となり、Cr量が多い場合は、マルテンサイト主体の組織となる。したがって、導入する転位の転位密度は、低温変態組織により変えなければならず、当然に、Cr量の多寡に応じて変えるべきである。
即ち、Cr:0.4〜3.0%の場合には、転位密度が1×1012個/m2以上の低温変態組織を形成し、Cr:3.0%超〜12.0%の場合には、転位密度が1×1013個/m2以上の低温変態組織を形成すれば、溶接熱影響部の転位密度は、母鋼材の転位密度に比較して低下していない。
なお、本明細書において、転位密度は“個/m2”で表示するが、単位を表示していない場合も、転位密度の単位は“個/m2”である。
低温変態組織は、ベイナイト及び/又はマルテンサイトであり、溶接熱影響部を、腐食液(ナイタール、ピクリン酸、硝酸、王水等)でエッチングし、光学顕微鏡で観察することにより、低温変態組織の生成を確認することができる。
本発明鋼おいて、Ac1変態点〜Ac1変態点+300℃に加熱される鋼材の溶接熱影響部位に、予め、旧オーステナイトの粒径が球相当平均直径で100μm以上の低温変態組織を形成しておくと、溶接後の低温変態組織の細粒化を、さらに抑制して、溶接熱影響部におけるType IV型損傷の発生を、より安定して防止することができる。
なお、旧オーステナイト粒径は、低温変態組織を、光学顕微鏡で、100倍の倍率で少なくとも10箇所を観察して確認した。
次に、本発明鋼材の製造と、溶接部特性の確認について説明する。
本発明鋼材で規定する化学成分の鋼を、通常の高炉−転炉−連続鋳造の銑鋼一貫プロセス、又は、電気炉製鋼法、直接還元製鉄法等を用いて溶製し、続いて、溶鋼を、インゴット鋳造法又は連続鋳造法で鋳込んで、所定の寸法・形状の鋳片とする。
上記鋳片に熱間圧延を施して鋼板とし、また、さらに、鋼板を加工・成型して鋼管とするか、又は、上記鋳片に鍛造を施して鍛造部材とし、所要の調質熱処理、即ち、焼入れ−焼戻し処理、又は、焼準−焼戻し処理を施して、焼戻しベイナイト及び/又は焼戻しマルテンサイトを実質的に80%以上含む組織を形成する。
本発明鋼材においては、焼戻しベイナイト及び/又は焼戻しマルテンサイトを、ベイナイト及び/又はマルテンサイトと称するが、ベイナイト/マルテンサイトの体積率(体積%)は、光学顕微鏡による観察で得ることができる。
上記調質熱処理を施した鋼材は、本来、良好な高温クリープ特性及び靱性、さらに、加工性を有していて、プラント建設用に適するが、加えて、前記式(1)で定義するHDIが0.5〜80に規制されている。
したがって、本発明鋼材においては、たとえ、溶接熱でAc1〜Ac1+300℃に再加熱された部位でも、また、旧γ粒径が、光学顕微鏡観察によって測定した平均値で最小5μm程度まで減少した部位でも、該部位の組織は、冷却時に低温変態し、ベイナイト(Cr:0.4〜3%)又はマルテンサイト(Cr:3超〜12%)となり、溶接熱影響部でType IV型損傷は発生しない。
本発明者は、このことを、上記部位の断面組織を、ピクリン酸飽和アルコール溶液にてエッチングし、光学顕微鏡を用い、100倍の倍率で組織を観察して確認した。
なお、Type IV型損傷の発生の有無は、旧γ粒径が小さい場合、光学顕微鏡による組織観察では判別が困難であるので、同時に、透過電子顕微鏡を用いて、1万倍の倍率で組織観察を実施し、溶接後熱処理の後でも、組織が健全なベイナイト又はマルテンサイトであることを確認した。
その後、X線回折ピーク高さ判定法を用いて、上記部位における転位密度を測定し、ベイナイト(Cr:0.4〜3%)及びマルテンサイト(Cr:3超〜12%)において、それぞれ、1×1012以上及び1×1013以上となっていることを確認した。
ここで、転位密度の測定に用いたX線回折ピーク高さ判定法として、具体的には、X線回折ピークの半価幅から判定・評価する方法(下記、参考文献1、参照)を用いた。
試験片素材を10mm×10mm×2mmに切断加工し、主面を鏡面研磨した後、化学研磨又は電解研磨によって、鏡面研磨表面を50μm以上溶削した。この試料をX線回折装置に設置し、前記研磨主面に、Cr−Kα特性X線又はCu−Kα特性X線を入射して、背面反射X線回折法により、α−Fe(110)、(211)、及び、(220)面の回折線を測定した。
Cr−Kα特性X線及びCu−Kα特性X線は、それぞれ、近接するKα1線及びKα2線からなる。このため、Rachingerの方法(下記、参考文献2、参照)によって、それぞれの結晶面の回折ピークにおいて、近接するKα2線回折ピーク高さを差し引いて、Kα1線回折ピーク半価幅を評価した。
この回折ピーク半価幅は、結晶内の平均歪みεに比例するので、Williamson-Hall法(下記、参考文献3、参照)によって、この半価幅から、εを求めた。
さらに、このεから、参考文献1に記載の(10)式:ρ=14.4ε2/b2
を用いて、転位密度ρ(個/m2)を求めた。bは、バーガースベクトルの大きさ(=0.248×10-9m)である。
参考文献1:中島孝一ら、「X線回折を利用した転位密度の評価法」(材料とプロセス、日本鉄鋼協会、Vol.17(2004),No.3)、p.396-399
参考文献2:Guinier,A.、高良和武ら訳「X線結晶学の理論と実際改訂3版」(理学電機、(1967),p.406
参考文献3:G.K.Williamson and W.H.Hall,「Acta Metall.,1(1953)」,p.22
このようにして、本発明鋼材の化学成分の範囲で、溶接熱影響部の組織が、Type IV型損傷が発生し難い組織となっていることを確認した。
続いて、上記組織を含む溶接部から、溶接線と垂直な方向に沿って、直径6mmφ、評点間距及び平行部が、ともに、30mmのクリープ破断試験片を採取し、クリープ破断試験を行った。鋼材の使用想定温度から最大100℃高い温度に至る温度範囲において、温度加速クリープ試験を行い、その試験結果に基づいて、10万時間推定のクリープ破断強度を、3次曲線外挿を用いるLarson-Miller-Parameter法で得た。
本発明鋼材は、化学成分とHDI値を前提に、溶接熱影響部の転位密度を規定して、Type IV型損傷の発生を抑制するものであるが、化学成分が同一であっても、結晶粒径により焼入性は変化する。
特に、旧オーステナイト粒径(旧γ粒径)が連続的に大きく変化する溶接熱影響部において、旧γ粒径の影響は顕著であり、旧γ粒径が、もともと、数十μmの粒径であるか、100μmを超える粒径であるかは、後続の溶接によって生成する溶接熱影響部の旧γ粒径に影響を与えることになる。
この理由は、溶接入熱が比較的大きい場合、溶接熱影響部が溶接熱に曝される時間が、結果的に、α→γ変態の後のγ粒に、粒成長する時間的な余裕を提供することになるということである。
したがって、本発明鋼材においては、特に、Type IV型損傷の発生を確実に抑制するため、溶接熱の影響を受ける前組織の旧γ粒径を、100μm以上にすることが好ましい。
母鋼材の旧γ粒径が100μm以上であれば、HDI値が低い領域の鋼材であっても、HDI値が高い領域の鋼材並みのType IV型損傷抑制効果を発揮することができることを、本発明者は、鋭意研究の結果見いだした。この点も、本発明の特徴の一つである。
なお、本発明鋼材のType IV型損傷抑制効果を確認するに際し、Type IV型損傷の発生の有無は、溶接部のクリープ破断強度と、母鋼材のクリープ破断強度の比で判定した。
従来技術では、Type IV型損傷を発生する溶接部の10万時間推定のクリープ破断強度は、母鋼材のクリープ破断強度に対して、0.5〜0.6程度であり、0.7を超えることはほとんどない。
そこで、本発明鋼材の溶接部のクリープ破断強度を評価するに際しては、外乱因子となる溶接状態や溶接金属強度、継手の形状や健全性をも考慮して、クリープ破断強度比の閾値を、上記“0.7”を超える“0.8”とした。
ここで、図2に、10万時間推定のクリープ破断強度に基づいて求めた、母鋼材、本発明鋼材の溶接部、及び、従来鋼材の溶接部のクリープ破断強度比を示す。図2には、2.25%Cr−1%Mo鋼材(Cr3.0%以下の本発明鋼材)の溶接部のクリープ破断強度比と、9%Cr−1%Mo鋼材(Cr3.0%超の本発明鋼材)のクリープ破断強度比を示した。
2.25%Cr−1%Mo鋼材(Cr3.0%以下の本発明鋼材)の場合、Ac1変態点〜Ac1変態点+300℃に加熱される溶接熱影響部位の転位密度は、クリープ試験前で、3.2×1012個/m2であり、9%Cr−1%Mo鋼材(Cr3.0%超の本発明鋼材)の場合、7.8×1014個/m2であった。
従来鋼材の場合において、上記部位の転位密度は、クリープ試験前で、9.8×109個/m2でしかなく、本発明鋼材と従来鋼材との間には、転位密度の顕著な差異が認められる。
図3に、Ac1変態点〜Ac1変態点+300℃に加熱された溶接熱影響部位における転位密度(溶接後熱処理の後、クリープ試験前に、前記X線回折ピーク高さ判定法で測定した)と、母鋼材と溶接部の10万時間推定のクリープ破断強度を比較したクリープ破断強度比との相関を、各種鋼材について示した。なお、図3では、Cr3.0%以下の鋼材(黒丸)とCr3.0%超の鋼材(白丸)に分けて示した。
図3から、Cr3.0%以下の鋼材では、転位密度1×1012を維持しないと、クリープ破断強度比が、本発明で設定した閾値0.80を超えないこと、及び、Cr3%超の鋼材では、転位密度1×1013を維持しないと、クリープ破断強度比が、閾値0.80を超えないことが解る。
さらに、図4に、Type IV型損傷が発生しなかった9%Cr鋼の溶接部における溶接前の旧γ粒径と、溶接後、クリープ試験前の、Ac1変態点〜Ac1変態点+300℃に加熱された溶接熱影響部位の転位密度との関係を示す。図4から、溶接前の旧γ粒径が100μm以上の場合においては、明らかに、溶接後の溶接熱影響部位の転位密度が上昇していることが解る。
本発明の耐熱構造体は、本発明鋼材を、通常の溶接方法で溶接したものであるが、本発明鋼材は、溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材であるから、耐熱構造体自体、溶接熱影響部のクリープ特性に優れた耐熱構造体である。
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例の条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
(実施例)
表1に示す化学成分とHDI値の本発明鋼材(発明例)と比較鋼材(比較例)を、前述した製造方法で製造し、これら鋼材につき、前述した試験方法により、溶接部の特性及び組織を調査した。その結果を、表2に示す。
第31番の比較例は、化学成分が本発明鋼材の化学成分を満足するものの、HDI値が0.5(本発明鋼材の下限)より低く、Ac1変態点〜Ac1変態点+300℃に加熱された溶接熱影響部位の転位密度が、1×1012(Cr3%以下の本発明鋼材における下限)に達せず、溶接熱影響部にType IV型損傷が発生して、母鋼材と溶接部の10万時間推定のクリープ破断強度比(以下、単に「クリープ破断強度比」という。)が著しく低下した例である。
第32番の比較例は、Mn量が過多となり(表1、参照)、HDI値が高すぎて、溶接割れが、溶接金属と母鋼材の境界から発生して破断したため、クリープ破断強度比が著しく低下した例である。
第33番の比較例は、Cr量が過多となり、第34番の比較例は、Mo量が過多となり、また、第35番の比較例は、W量が過多となり(表1、参照)、同様に、溶接金属と母材の境界付近で焼戻し割れを生じ、クリープ破断強度比が著しく低下した例である。
第36番の比較例は、化学成分が本発明鋼材の化学成分を満足するものの、HDI値が80(本発明鋼材の上限)より高く、Ac1変態点〜Ac1変態点+300℃に加熱された溶接熱影響部位の転位密度は十分で、1×1013個/m2(本発明鋼材の下限)を超えているが、溶接金属と母鋼材の境界付近で焼戻し割れを生じ、クリープ破断強度比が著しく低下した例である。
比較例に比べ、発明例においては、従来値を超えて設定した閾値“0.8”を超えるクリープ破断強度比が得られている。
前述したように、本発明によれば、フェライト系耐熱鋼材の溶接部の熱影響部において、Type IV型損傷が発生しないから、高温高圧プラント機器を構成する耐熱溶接構造体(耐熱構造体)の設計において、その高温強度を、クリープ破断強度の0.67倍(通常の安全率)として設計することができる。その結果、従来発生していた溶接部起点の事故を防止することができる。したがって、本発明は、プラント建設産業において利用可能性が大きいものである。
フェライト系耐熱鋼の溶接熱影響部に発生したType IV型損傷を示す図である。 本発明鋼材の溶接部と従来鋼材の10万時間推定のクリープ破断強度を、母鋼材のクリープ破断強度に対する比で示す図である。 本発明鋼材の溶接熱影響部の転位密度と、溶接部の10万時間推定のクリープ破断強度比の関係を示す図である。 溶接前の鋼材の旧γ粒径(平均値)と、HDI値が本発明範囲を満たす溶接部の溶接熱影響部の転位密度の関係を示す図である。

Claims (11)

  1. 質量%で、C:0.01〜0.20%、Si:0.02〜0.50%、Mn:0.05〜1.0%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Cr:0.4〜12.0%、Al:0.001〜0.05%、N:0.001〜0.07%を含有し、O:0.01%以下に制限し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、かつ、下記式(1)で定義する溶接熱影響部焼入性指数HDIが、0.5〜80のフェライト系耐熱鋼材であって、
    Ac1変態点〜Ac1変態点+300℃に加熱される鋼材の溶接熱影響部位に、転位密度が1×1012個/m2以上(Cr:0.4〜3.0%の場合)、又は、1×1013個/m2以上(Cr:3.0超〜12.0%の場合)の低温変態組織が生成する
    ことを特徴とする溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材。
    HDI=√[%C]√[%N](1+0.5[%Si])(1+3[%Mn])(1+2[%Cr])(1+3[%Mo])(1+0.8[%W])(1+0.3[%Cu])(1+0.5[%Ni])(1+2.5[%Nb])(1+1.5[%V])(1+0.5[%Al])(1+0.3[%Ti])(1+0.3[%Zr])(1+0.2[%Re])(1+25[%B])(1+0.5[%Co]) ・・・(1)
  2. 前記フェライト系耐熱鋼材が、さらに、質量%で、B:0.0003〜0.005%を含有することを特徴とする請求項1に記載の溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材。
  3. 前記フェライト系耐熱鋼材が、さらに、質量%で、Mo:0.05〜2.0%、W:0.05〜3.0%、Re:0.05〜2.0%のうちの一種又は二種以上を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材。
  4. 前記フェライト系耐熱鋼材が、さらに、質量%で、Ni:0.01〜0.5%、Co:0.01〜3.0%、Cu:0.01〜1.5%のうちの一種又は二種以上を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材。
  5. 前記フェライト系耐熱鋼材が、さらに、質量%で、Ti:0.005〜0.20%、Zr:0.002〜0.10%のうちの一種又は二種を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材。
  6. 前記フェライト系耐熱鋼材が、さらに、質量%で、Ca:0.0003〜0.005%、Mg:0.0003〜0.01%、La:0.005〜0.05%、Ce:0.005〜0.10%、Y:0.005〜0.10%、Ba:0.0003〜0.005%のうちの一種又は二種以上を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材。
  7. 前記フェライト系耐熱鋼材のCr量が3.0〜12.0質量%であり、さらに、質量%で、B:0.0003〜0.005%、Nb:0.005〜0.50%、V:0.01〜1.0%を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材。
  8. 前記Ac1変態点〜Ac1変態点+300℃に加熱される鋼材の溶接熱影響部位に、予め、旧オーステナイトの粒径が球相当平均直径で100μm以上の低温変態組織が形成されていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材。
  9. 前記低温変態組織が、ベイナイト及び/又はマルテンサイトであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材。
  10. 前記溶接熱影響部焼入性指数HDIが3.0〜65であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の溶接熱影響部のクリープ特性に優れたフェライト系耐熱鋼材を溶接して製造したことを特徴とする溶接熱影響部のクリープ特性に優れた耐熱構造体。
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