JP2003286543A - 長時間クリープ特性に優れた高強度低Crフェライト系ボイラ用鋼管およびその製造方法 - Google Patents
長時間クリープ特性に優れた高強度低Crフェライト系ボイラ用鋼管およびその製造方法Info
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Abstract
プ強度の低下を最小限に抑制し、かつ、充分な初期強度
を有する長時間クリープ特性に優れた低Crフェライト
系ボイラ用鋼管およびその製造方法を提供する。 【解決手段】 質量%で、C:0.01〜0.20%、
Si:0.01〜1.0%、Mn:0.10〜2.0
%、Cr:0.5〜3.5%、B:0.0003〜0.
01%、N:0.001〜0.08%、Al:0.00
05〜0.01%を含有し、Mo:0.01〜2.0%
およびW:0.01〜3.0%のうちの1種または2種
を含有し、P:0.030%以下、S:0.010%以
下、O:0.020%以下に制限し、残部がFeおよび
不可避不純物からなり、かつ組織中のフェライト分率が
20%以上80%以下であることを特徴とする長時間ク
リープ特性に優れた高強度低Crフェライト系ボイラ用
鋼管及びその製造方法。
Description
5%(ここで%は質量%を意味する。以下、特に説明が
ない限り%は質量%を示す。)以下の低Crフェライト
系ボイラ用鋼管およびその製造方法に関するものであ
り、さらに詳しくは、高温・高圧環境下で使用する際の
長時間クリープ破断特性に優れた低Crフェライト系ボ
イラ用鋼管およびその製造方法に関するものである。
用等の高温耐熱耐圧部材にはオーステナイト系ステンレ
ス鋼、Cr含有量が9〜12%の高Crフェライト鋼、
Cr含有量が2.25%以下の低Crフェライト鋼ある
いは炭素鋼等の材料が用いられており、これらの適用対
象部材の使用温度、圧力等の使用環境と経済性を考慮し
て適宜選択される。
が2.25%以下の低Crフェライト鋼の特徴として
は、Crを含有しているため炭素鋼に比べて耐酸化性、
高温耐食性および高温強度に優れることや、オーステナ
イト系ステンレス鋼に比べて格段に安価で、かつ熱膨張
係数が小さくて応力腐食割れを起こさないこと、さらに
は高Crフェライト鋼に比べても安価であって靭性、熱
伝導性および溶接性に優れることが挙げられる。
して、JISに規格されているSTBA20,STBA22,STBA2
3,STBA24等が知られており、通常Cr−Mo鋼と総称
されている。また、高温強度を向上させる目的で析出強
化元素であるV,Nb,Ti,Ta,Bを添加した低C
rフェライト鋼が、特開昭57−131349号、特開
昭57−131350号、特開昭61−166916
号、特開昭62−54062号、特開昭63−1803
8号、特開昭63−62848号、特開昭64−684
51号、特開平1−29853号、特開平3−6442
8号、特開平3−87332号等の公報で提案されてい
る。
として、タービン用材料である1Cr−1Mo−0.2
5V鋼や、高速増殖炉用構造材料である2.25Cr−
1Mo−Nb鋼等が良く知られている。しかし、これら
の低Crフェライト鋼は、高Crフェライト鋼やオース
テナイト系ステンレス鋼に比べると高温での耐酸化性、
耐食性に劣り、また高温強度も低いため、550℃以上
の高温環境下での使用に問題がある。
強度を改善するため、特開平2−217438号公報、
特開平2−217439号公報には、Wの多量添加やC
uとMgの複合添加を行った低Crフェライト鋼が提案
されている。また、特開平4−268040号公報に
は、550℃以上の高温でのクリープ強度を改善し、併
せて高強度化に伴う靭性低下を抑制するため、N量を制
限した上でBを微量添加した低Crフェライト鋼が提案
されている。
フェライト鋼は、その鋼中に固溶、析出強化成分を添加
するため焼き入れ性が高くなり、その金属組織は主にマ
ルテンサイトまたはベイナイト組織となりやすい。この
ようなマルテンサイトまたはベイナイト組織を主体とす
る金属組織は、可動転位密度が非常に高いため、高温・
長時間のクリープ環境下でクリープ強度低下が顕著に現
れるという問題があった。
低Crフェライト系ボイラ用鋼管の問題点に鑑みて、鋼
成分組成及び組織の適正化により、高温・長時間の環境
下で使用する際のクリープ強度の低下を最小限に抑制
し、かつ、充分な初期強度を確保する高温・長時間クリ
ープ特性に優れたCr含有量:3.5%以下の低Crフ
ェライト系ボイラ用鋼管およびその製造方法を提供する
ことを目的とする。
3.5%以下の低Crフェライト系鋼の金属組織中のフ
ェライト分率を20%以上80%以下とすることによっ
て、可動転位密度を低減し、高温・長時間のクリープ環
境下でのクリープ強度低下を抑制し、さらに金属間化合
物の析出総量を0.5%重量以上とすることによって、
フェライト組織が高い場合に生じる強度の低下分を補償
し初期強度を向上し、その結果、より長時間クリープ特
性に優れた低Crフェライト系ボイラ用鋼管の製造を可
能にすることを特徴とする。
以下の通りである。 (1)質量%で、C:0.01〜0.20%、Si:
0.01〜1.0%、Mn:0.10〜2.0%、C
r:0.5〜3.5%、B:0.0003〜0.01
%、N:0.001〜0.08%、Al:0.0005
〜0.01%を含有し、Mo:0.01〜2.0%およ
びW:0.01〜3.0%のうちの1種または2種を含
有し、P:0.030%以下、S:0.010%以下、
O:0.020%以下に制限し、残部がFeおよび不可
避不純物からなり、かつ組織中のフェライト分率が20
%以上80%以下であることを特徴とする長時間クリー
プ特性に優れた高強度低Crフェライト系ボイラ用鋼
管。 (2)さらに、Mo、W、NiおよびCuのうちの何れ
か1種または2種以上とFeとからなる金属間化合物の
析出総量が0.5重量%であることを特徴とする上記
(1)に記載の長時間クリープ特性に優れた高強度低C
rフェライト系ボイラ用鋼管。 (3)質量%で、さらに、Nb:0.001〜0.5%
およびV:0.02〜1.0%のうちの1種または2種
を含有することを特徴とする上記(1)または(2)に
記載の長時間クリープ特性に優れた高強度低Crフェラ
イト系ボイラ用鋼管。 (4)質量%で、さらに、Ti:0.001〜0.05
%を含有することを特徴とする上記(1)から(3)の
いずれか1項に記載の長時間クリープ特性に優れた高強
度低Crフェライト系ボイラ用鋼管。 (5)質量%で、さらに、Cu、NiおよびCoのうち
の1種または2種以上を総量で0.1〜4.0%含有す
ることを特徴とする上記(1)から(4)のいずれか1
項に記載の長時間クリープ特性に優れた高強度低Crフ
ェライト系ボイラ用鋼管。 (6)質量%で、さらに、La、Ca、Y、Ce、Z
r、Ta、Hf、Re、Pt、Ir、PdおよびSbの
うちの1種または2種以上を総量で001〜0.2%含
有することを特徴とする上記(1)から(5)のいずれ
か1項に記載の長時間クリープ特性に優れた高強度低C
rフェライト系ボイラ用鋼管。 (7)質量%で、C:0.01〜0.20%、Si:
0.01〜1.0%、Mn:0.10〜2.0%、C
r:0.5〜3.5%、B:0.0003〜0.01
%、N:0.001〜0.08%、Al:0.0005
〜0.01%下を含有し、Mo:0.01〜2.0%お
よびW:0.01〜3.0%のうちの1種または2種を
含有し、P:0.030%以下、S:0.010%以
下、O:0.020%以下に制限し、残部がFeおよび
不可避不純物からなる鋼材を用いて造管後、焼入れまた
は焼ならしを行った後、さらに、焼き戻しを行い、か
つ、前記焼入れまたは焼ならし後の冷却をフェライト分
率が20%以上80%以下となる冷却速度で行うことを
特徴とする長時間クリープ特性に優れた高強度低Crフ
ェライト系ボイラ用鋼管の製造方法。 (8)前記焼き戻しを、焼戻し加熱温度が500〜80
0℃、保持時間が5分以上となるように行うことを特徴
とする上記(7)に記載の長時間クリープ特性に優れた
高強度低Crフェライト系ボイラ用鋼管の製造方法。 (9)前記鋼材中に、質量%で、さらに、Nb:0.0
01〜0.5%およびV:0.02〜1.0%のうちの
1種または2種を含有することを特徴とする上記(7)
または(8)に記載の長時間クリープ特性に優れた高強
度低Crフェライト系ボイラ用鋼管の製造方法。 (10)質量%で、さらに、Ti:0.001〜0.0
5%を含有することを特徴とする上記(7)から(9)
の何れか1項に記載の長時間クリープ特性に優れた高強
度低Crフェライト系ボイラ用鋼管の製造方法。 (11)質量%で、さらに、Cu、NiおよびCoのう
ちの1種または2種以上を総量で0.1〜2.0%含有
することを特徴とする上記(7)から(10)のいずれ
か1項に記載の長時間クリープ特性に優れた高強度低C
rフェライト系ボイラ用鋼管の製造方法。 (12)質量%で、さらに、La、Ca、Y、Ce、Z
r、Ta、Hf、Re、Pt、Ir、PdおよびSbの
うちの1種または2種以上を総量で001〜0.2%含
有することを特徴とする上記(7)から(11)のいず
れか1項に記載の長時間クリープ特性に優れた高強度低
Crフェライト系ボイラ用鋼管の製造方法。
イト系ボイラ用鋼管の550℃以上の高温・長時間のク
リープ環境下でのクリープ強度の低下が金属組織中の可
動転位密度が非常に高いマルテンサイトまたはベイナイ
ト組織によるものであることを知見し、金属組織中のフ
ェライト分率を20%以上80%以下とすることによっ
て、金属組織中の可動転位密度を低減し、高温・長時間
のクリープ環境下でのクリープ強度の低下を抑制できる
ことが分かった。
量%以上にすることによって、金属組織中のフェライト
分率が高い場合に生じる初期強度の低下を抑制し、それ
により充分な高温・長時間クリープ特性を維持できるこ
とが分かった。
Crフェライト系ボイラ用鋼管を対象とし、これらの鋼
中の成分組成を前記のように限定した理由は次の通りで
ある。
炭化物を形成し、高温強度の向上に寄与すると共、それ
自体がオーステナイト安定化元素として組織を安定化す
る。本発明鋼は、焼入れ焼戻し処理または焼ならし焼戻
し処理によってフェライトとマルテンサイト、ベイナイ
トおよびパーライトの混合した組織になるが、Cはこれ
らの組織のバランス制御のためにも必要である。C含有
量が0.01%未満では炭化物の析出量が不十分となる
と共に、δフェライト量が多くなりすぎて初期強度とク
リープ破断強度を損なう。一方、C含有量が0.20%
を超えると炭化物が過剰に析出し、鋼が著しく硬化して
加工性と溶接性を損なう。従って、C含有量は0.01
%以上0.20%以下とした。
水蒸気酸化特性を高める元素である。Si含有量が0.
01%未満ではこれらの効果が不十分となる。一方、
1.0%を超えると靭性が著しく低下し、粒界脆化によ
るクリープ破断強度の低下の原因となる。従って、Si
含有量は0.01%以上1.0%以下とした。
保持する上で必要な元素である。その効果を十分得るた
めには0.10%以上の添加が必要であり、2.0%を
超すとクリープ破断強度が低下する場合がある。従って
Mn含有量は0.10%以上2.0%以下とした。
と高温耐食性の改善のために不可欠な元素であり、Cr
含有量が0.5%未満ではこれらの作用が得られず、酸
化によって鋼材が減肉してその結果クリープ破断強度が
低下する。一方、Cr含有量が3.5%を超えると、靭
性、溶接性、熱伝導性が低くなって低合金鋼の利点が少
なくなる。従って、Cr含有量は0.5%以上3.5%
以下とした。
b(C,N)の微細炭窒化物を形成し、高温長間側のク
リープ破断強度の向上に寄与する。特に、625℃以下
の温度では安定な微細析出物を形成してクリープ破断強
度を著しく改善する効果がある。さらに、Nbは結晶粒
を微細化し、靭性の改善にも有効である。しかし、Nb
含有量が0.001%未満ではこれらの効果が得られな
い。一方、Nb含有量が0.5%を超えると鋼が著しく
硬化し、靭性、加工性、溶接性を損なうようになる。従
って、Nb含有量は0.001%以上0.5%以下とし
た。
結合してV(C,N)の微細炭窒化物を形成し、高温長
間側のクリープ破断強度の向上に寄与するが、その含有
量が0.02%未満ではその効果は十分ではない。しか
し、1.0%を超えてVが添加されるとV(C,N)の
析出量が過剰となり、かえってクリープ破断強度と靭性
を損なうようになる。従って、V含有量は0.02%以
上1.0%以下とした。
N、NbN等の窒化物、または、V(C,N)、Nb
(C,N)等の炭窒化物として析出し、固溶強化および
析出強化の何れにも寄与する。また、本発明では、Ti
と結合してTiN、さらにBと結合してBNとして析出
し、それぞれクリープ破断強度向上に寄与する。N含有
量が0.001%未満の場合では上記強化機構への寄与
が殆どなく、またNを0.08%を超えて添加すると、
母材靭性とクリープ破断強度の低下が著しい。従って、
N含有量は0.001%以上0.08%以下とした。
6等の微細炭化物を形成し安定化する。低Crフェライ
ト系鋼のような低合金鋼においては、高温で長時間加熱
されるとM23C6炭化物にWやMoが濃化することによ
って、M23C6等の微細炭化物からM6C等の粗大炭化物
へと変化し、クリ−プ強度および靭性の低下を招き易く
なるが、Bの添加によりM23C6等の微細炭化物が安定
化するのでM6C等の粗大炭化物の析出が抑えられ、高
温長時間側でのクリ−プ強度の低下が抑制される。B含
有量が0.0003%未満では上記の効果が得られず、
一方、B含有量が0.01%を超えるとBが結晶粒界に
過剰に偏析し、Cとの共偏析によって炭化物が凝集粗大
化する場合があり、その結果として加工性、靭性および
溶接性を著しく損ねることになる。従って、B含有量は
0.0003%以上0.01%以下とした。
果を得るためには0.0005%以上添加する必要があ
るが、特に0.01%を超えると高温強度が低下する
で、Al含有量を0.0005%以上0.01%以下と
した。なお、Alは、本発明では脱酸剤であるSiの脱
酸作用を補完するようにSiの含有量に応じてその含有
量を調整するのが好ましい。
明鋼のクリープ破断強度向上のために必要な元素であ
り、MoおよびWのうちの1種または2種を以下の含有
量で添加する。
強化の作用を有していてクリープ破断強度の向上に有効
な元素であるので、必要に応じて含有できる。しかし、
Mo含有量が0.01%未満では上記効果が得られず、
一方、Mo含有量が2.0%を超えるとその効果が飽和
するばかりか、溶接性、靭性を損なうようになる。従っ
て、Moを添加する場合にはその含有量を0.01%以
上2.0%以下とする。なお、MoとWとを複合添加す
る場合には、単独添加の場合に比べて鋼の強度が一段と
向上し、特に高温クリープ破断強度が改善される。
析出による強化作用を発揮するので、クリープ破断強度
の向上に有効な元素であるが、W含有量が0.01%未
満ではこれらの効果は得られない。一方、W含有量が
3.0%を超えると鋼が著しく硬化し、靭性、加工性、
溶接性を損なう。従って、Wを添加する場合にはその含
有量を0.01以上3.0%以下とした。なお、WはM
oと複合添加することによって鋼の強度向上効果が顕著
化することは既に述べた通りである。
混入されるが、P,Sは強度を低下させ、Oは酸化物と
して析出して靭性を低下させるので、本発明鋼では、そ
れぞれ上限値を0.030%、0.010%、0.02
0%と制限した。
量の限定理由であるが、本発明では、本発明鋼の基本特
性を損なうことなく、さらに、機械特性を改善させるた
めに以下のような成分を目的に応じて選択的に添加する
ことができる。
時間側のクリープ破断強度を向上させるために有効な元
素であり、これらの成分のうちの1種または2種を以下
の含有量で添加することができる。
i(C,N)の炭窒化物を形成するが、特に、Nとの結
合力が強いため、固溶Nの固定に有効である。後述する
ようにBも固溶Nを固定する作用を有しているが、Cと
の結合形態はTiとは大きく異なる。即ち、BはFe,
Cr,Wを主要成分とする炭化物中に偏析しやすく、過
剰のBが存在する場合にはこれら炭化物の凝集粗大化を
促進する場合がある。これに対し、TiはCと単独に結
合すると共にTiNと複合析出するが、それ以上凝集粗
大化が進むことはない。従って、Tiは、Nを有効に固
定し、同時に炭化物の相安定性に影響しない点で好まし
い。このようなTiの作用を利用して固溶N量を抑える
ことにより焼入れ性を向上させ、靭性、クリ−プ強度を
向上させるためには、Tiを0.001%以上添加する
必要がある。一方、その含有量が0.05%を超えると
Ti(C,N)の析出量が多くなって靭性が著しく損な
われるようになる。従って、Tiの含有量は0.001
〜0.05%とする。
ステナイト安定化元素であり、特に大量のフェライト安
定化元素、すなわちCr、W、Mo、Ti、Si等を添
加する場合において、焼入れ組織もしくは焼入れ・焼き
もどし組織を得るために必要であり、かつ有用である。
これらの効果に加えてCuは高温耐食性の向上、Niは
靭性の向上、Coは強度の向上にそれぞれ効果がある。
Cu、NiおよびCoのうちの1種または2種以上の含
有量の総量が0.1%以下では上記効果が不十分であ
り、4.0%を超えて添加する場合には、粗大な金属間
化合物の析出もしくは粒界への偏析に起因する脆化が避
けられない。従って、Cu、NiおよびCoのうちの1
種または2種以上を添加する場合の含有量の総量は0.
1%以上4.0%以下とした。
f、Re、Pt、Ir、Pd、Sbの元素は、不可避不
純物元素(P、S、O)とそれらの析出物(介在物)の
形態制御を目的として必要に応じて添加される。これら
の元素のうち1種または2種以上を総量で0.001%
以上添加することによって上記不可避不純物を安定で無
害な析出物として固定し、強度と靭性を向上させること
ができる。その含有量の総量が0.001%未満では上
記の効果が充分に得られず、0.2%を超えると介在物
が増加し、かえって靭性を損なうので、これらの1種ま
たは2種以上の含有量の総量を0.001〜0.2%と
する。
5%以下の低Crフェライト系低合金ボイラ用鋼管の成
分を規定すると共に、さらに、従来の高強度低Crフェ
ライト系低合金鋼管には例のない金属組織中のフェライ
ト分率が20%以上80%以下であることを重要な要件
とする。
50℃および600℃×10万時間のクリープ破断強度
との関係を示すグラフである。
間のクリープ破断強度は、550℃および600℃で最
長15000hrのクリープ破断試験を行い、これら試験
データを外挿して550℃および600℃×10万時間
のクリープ破断強度を求めた。この図1から、金属組織
中のフェライト分率が20%未満では、金属組織中の可
動転位密度が大きく、そのために初期の強度は良好にも
かかわらず、高温・長時間での使用環境下で極度のクリ
ープ強度低下が見られる。一方、金属組織中のフェライ
ト分率が80%を越える場合では、高温長時間での使用
環境下における初期強度からの顕著なクリープ強度の低
下はみられないものの、初期強度自体が著しく低くなる
ため、結果的に充分な高温・長時間側クリープ強度は得
られなくなる。したがって、本発明では、充分な高温・
長時間側クリープ強度を得るために金属組織中のフェラ
イト分率を20%以上80%以下となるようにを規定す
る。
ライト以外の組織は、マルテンサイト、ベイナイト組織
およびパーライト組織である。
80%以下に制御する方法は、本発明で規定する前記成
分組成の鋼材を用いて造管した後、焼入れ、または焼な
らしのいずれかを行った後、さらに、焼き戻しを行い、
かつ、前記焼入れ、または焼ならし後の冷却速度をフェ
ライト分率が20%以上80%以下となるように制御す
ることによって可能である。具体的には、例えば、実際
の鋼材成分および板厚に応じて事前に図2に示すCCT
曲線図を作成し、フェライトノーズを横切り、かつフェ
ライト分率が20%以上80%以下となるような所定の
冷却速度(図2の曲線bと曲線cの間)を見出し、焼入
れまたは焼ならし後に、この冷却速度で冷却することに
よって実施できる。合金元素が比較的多く焼き入れ性が
高い成分系では、マルテンサイト、ベイナイトおよびパ
ーライトが主体の組織となるため、本発明が規定するフ
ェライト分率が得られる冷却速度は、従来の焼入れ、ま
たは焼ならし後の冷却時の冷却速度に比べ遅いものとな
る。
規定に加えて、さらに、金属間化合物の析出総量を0.
5質量%以上とすることにより、金属組織中のフェライ
ト分率が高い場合の強度の低下分を補完し初期強度を高
め、一層の高温・長時間クリープ特性の向上が可能とな
る。
での金属間化合物の析出総量と550℃および600℃
の10万時間推定クリープ破断強度との関係を示す。
では、Mo、W、NiおよびCuのうちの何れか1種ま
たは2種以上とFeとからなる化合物であり、この中で
特にFe2MoおよびFe2Wなどが多く存在する。こ
れらの金属間化合物の析出総量が0.5質量%未満の場
合には、金属間化合物による強化機能が低下し初期強度
が著しく低くなるため、結果的に高温・長時間でのクリ
ープ強度が低下する。したがって、本発明では、初期強
度を向上させ、高温・長時間クリープ特性をより向上さ
せるために、金属組織中の金属間化合物の析出総量を
0.5質量%以上にする。
0.5質量%以上にする方法は、本発明で規定する前記
成分組成の鋼材を用いて造管した後、焼入れ、または焼
ならしを行った後、さらに、焼き戻しを、図4の金属間
化合物の析出曲線図に示すような焼戻し加熱温度が50
0〜800℃、保持時間が5分以上となるように行うこ
とで可能となる。本発明では、金属間化合物の析出量お
よびそれによる析出強化機構を安定して得るために、焼
戻し加熱温度の下限を5O0℃とし、強度確保および鋼
材の変態点(Ac3)以下とするために、その上限を8
00℃とする。
に規定する必要はないが、Nbなどの添加合金元素を十
分に固溶させるために、焼き入れおよびならしのいずれ
の加熱温度もAc3以上、好ましくは、850〜125
0℃とし、その保持時間は、鋼材の均熱を完了させるた
めに5分以上とするのが、望ましい。
する。
2)、表7(表2のつづき)に示す化学成分の鋼を15
0kg真空溶解炉で溶解し、鋳造してインゴットを得た
後、そのインゴットを1100〜1300℃で加熱後、
圧延終了温度が900〜1000℃になるような圧延を
行い、厚さ2、4、6、8および10mmの鋼板を得た。
さらに、これらの鋼板を造管して、外径50.8mmの
鋼管を得た後、表2(表1のつづき)、表4(表1のつ
づき)、表6(表2のつづき)、表8(表2のつづ
き)、表10(表2のつづき)に示す条件で焼入れ焼戻
し、または、焼ならし焼戻し処理を施した。
材特性は、クリープ破断試験により評価した。なお、ク
リープ破断試験はφ6mm×GL30mmの引張試験片を用
い、550℃および600℃で最長15000hrの試験
を行い、そのデータから外挿して550℃および600
℃×10万時間のクリープ破断強度を求めた。
学顕微鏡を用いた組織観察を10カ所以上行い、組織写
真を画像処理することによって測定した。
分析によって測定された。なお、抽出残渣分析時に用い
るフィルターのメッシュサイズは約1μmであり、溶媒
抽出後に得られた析出物を蛍光X線にて元素分析し、か
つX線回折によって析出物の同定を行った。
分、組織および熱処理条件が本発明範囲内である発明例
の評価結果、また表9(表3)、表10(表3のつづ
き)には化学成分、組織および熱処理条件のうちの少な
くとも何れかが本発明範囲から外れている比較例を示
す。
よび600℃×10万時間のクリープ破断強度特性が充
分高く高温・長時間クリープ強度に優れていることが判
る。
含有量が0.01%未満であり鋼の耐水蒸気酸化特性が
不十分となり、また、鋼番103、110および117
は、Si含有量が1.0%を超えているため靭性が著し
く低下し粒界脆化が発生し、その結果何れもクリープ破
断強度が低下した。
は、Mn含有量が0.10%未満であり、充分な初期強
度を得ることができずクリープ破断強度が低下し、鋼番
107、112、115および122は、Mn含有量が
2.0%を超えているためクリープ破断強度が低下し
た。なお、比較鋼の鋼番111および118の場合は、
金属間化合物の析出総量が0.5%未満となり、初期ク
リープ強度自体が低くなり、その結果、長時間クリープ
強度も著しく低下する。
16および119は、Cr含有量が0.5%未満であ
り、低合金鋼の耐酸化性と高温耐食性の充分な向上作用
が得られず鋼材が減肉してクリープ破断強度が低下し、
鋼番102は、Cr含有量が3.5%を超えているた
め、靭性が低くなり粒界脆化し、いずれもクリープ破断
強度が低下した。なお、特に上記比較鋼の鋼番105の
場合は、金属組織中のフェライト分率が20%未満とな
ったため、可動転位密度が大きくなり、長時間クリープ
中の強度低下が著しかった。
1%未満であり、炭化物の析出が不十分とるると共に、
δフェライト量が多くなり過ぎて初期強度とクリープ強
度が低下した。鋼番113、114、119、120お
よび122は、C含有量が0.20%を超えているため
に、炭化物が過剰に析出し、鋼が著しく硬化して加工性
と溶接性が低下し、その結果、クリープ破断強度が低下
した。
中のフェライト分率が80%よりも大きいため、初期ク
リープ強度自体が低く、その結果、長時間クリープ強度
も著しく低下する。
度が大きかったため、金属組織中のフェライト分率が2
0%未満となったため、可動転位密度が大きくなり、長
時間クリープ中の強度低下が顕著だった。
本発明範囲内ではあるが高目であるため金属間化合物析
出サイトの転位が少なく、かつ金属間化合物形成元素の
MoとW添加量が少ないため、金属間化合物析出量が少
なく、そのため長時間クリープ強度の低下が顕著だっ
た。
種々な冷却速度にも係わらず、いずれもフェライトノー
ズを横切る様な冷速のため、フェライト分率が本発明範
囲から高く外れるか、またはフェライト分率が本発明範
囲内ではあるが高目であり金属間化合物析出サイトが少
ないため、析出量が少なくその結果長時間クリープ強度
の低下が見られた。
度低Crフェライト系低合金鋼管に比べて高温・高圧環
境下でのクリープ破断強度に優れたボイラ用鋼管を得る
ことができるため、ボイラ鋼管の耐久性の向上及びメン
テナンスコストの低減可能となる。
600℃×10万時間のクリープ破断強度との関係を示
すグラフである。
℃および600℃×10万時間のクリープ破断強度との
関係を示すグラフである。
Claims (12)
- 【請求項1】 質量%で、C:0.01〜0.20%、
Si:0.01〜1.0%、Mn:0.10〜2.0
%、Cr:0.5〜3.5%、B:0.0003〜0.
01%、N:0.001〜0.08%、Al:0.00
05〜0.01%を含有し、Mo:0.01〜2.0%
およびW:0.01〜3.0%のうちの1種または2種
を含有し、P:0.030%以下、S:0.010%以
下、O:0.020%以下に制限し、残部がFeおよび
不可避不純物からなり、かつ組織中のフェライト分率が
20%以上80%以下であることを特徴とする長時間ク
リープ特性に優れた高強度低Crフェライト系ボイラ用
鋼管。 - 【請求項2】 さらに、Mo、W、NiおよびCuのう
ちの何れか1種または2種以上とFeとからなる金属間
化合物の析出総量が0.5質量%であることを特徴とす
る請求項1に記載の長時間クリープ特性に優れた高強度
低Crフェライト系ボイラ用鋼管。 - 【請求項3】 質量%で、さらに、Nb:0.001〜
0.5%およびV:0.02〜1.0%のうちの1種ま
たは2種を含有することを特徴とする請求項1または2
に記載の長時間クリープ特性に優れた高強度低Crフェ
ライト系ボイラ用鋼管。 - 【請求項4】 質量%で、さらに、Ti:0.001〜
0.05%を含有することを特徴とする請求項1から3
のいずれか1項に記載の長時間クリープ特性に優れた高
強度低Crフェライト系ボイラ用鋼管。 - 【請求項5】 質量%で、さらに、Cu、NiおよびC
oのうちの1種または2種以上を総量で0.1〜4.0
%含有することを特徴とする請求項1から4のいずれか
1項に記載の長時間クリープ特性に優れた高強度低Cr
フェライト系ボイラ用鋼管。 - 【請求項6】 質量%で、さらに、La、Ca、Y、C
e、Zr、Ta、Hf、Re、Pt、Ir、Pdおよび
Sbのうちの1種または2種以上を総量で001〜0.
2%含有することを特徴とする請求項1から5のいずれ
か1項に記載の長時間クリープ特性に優れた高強度低C
rフェライト系ボイラ用鋼管。 - 【請求項7】 質量%で、C:0.01〜0.20%、
Si:0.01〜1.0%、Mn:0.10〜2.0
%、Cr:0.5〜3.5%、B:0.0003〜0.
01%、N:0.001〜0.08%、Al:0.00
05〜0.01%を含有し、Mo:0.01〜2.0%
およびW:0.01〜3.0%のうちの1種または2種
を含有し、P:0.030%以下、S:0.010%以
下、O:0.020%以下に制限し、残部がFeおよび
不可避不純物からなる鋼材を用いて造管後、焼入れ、ま
たは焼ならしを行った後、さらに、焼き戻しを行い、か
つ、前記焼入れ、または焼ならし後の冷却をフェライト
分率が20%以上80%以下となる冷却速度で行うこと
を特徴とする長時間クリープ特性に優れた高強度低Cr
フェライト系ボイラ用鋼管の製造方法。 - 【請求項8】 前記焼き戻しを、焼戻し加熱温度が50
0〜800℃、保持時間が5分以上で行うことを特徴と
する請求項7に記載の長時間クリープ特性に優れた高強
度低Crフェライト系ボイラ用鋼管の製造方法。 - 【請求項9】 前記鋼材中に、質量%で、さらに、N
b:0.001〜0.5%およびV:0.02〜1.0
%のうちの1種または2種を含有することを特徴とする
請求項7または8に記載の長時間クリープ特性に優れた
高強度低Crフェライト系ボイラ用鋼管の製造方法。 - 【請求項10】 質量%で、さらに、Ti:0.001
〜0.05%を含有することを特徴とする請求項7から
9の何れか1項に記載の長時間クリープ特性に優れた高
強度低Crフェライト系用鋼管の製造方法。 - 【請求項11】 質量%で、さらに、Cu、Niおよび
Coのうちの1種または2種以上を総量で0.1〜2.
0%含有することを特徴とする請求項7から10のいず
れか1項に記載の長時間クリープ特性に優れた高強度低
Crフェライト系ボイラ用鋼管の製造方法。 - 【請求項12】 質量%で、さらに、La、Ca、Y、
Ce、Zr、Ta、Hf、Re、Pt、Ir、Pdおよ
びSbのうちの1種または2種以上を総量で001〜
0.2%含有することを特徴とする請求項7から11の
いずれか1項に記載の長時間クリープ特性に優れた高強
度低Crフェライト系ボイラ用鋼管の製造方法。
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