JP4774216B2 - 電子伝導イオン伝導物質の製造方法、複合体、燃料電池、電源及び電子機器 - Google Patents
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Description
(1) 少なくとも非イオン伝導性共重合樹脂を含む液中で、リン酸基を有する1種類以上のモノマーを重合する工程を有することを特徴とする電子伝導イオン伝導物質の製造方法。これにより、複雑な合成工程を経ることなく、安価で、製造しやすく、安定な電子伝導イオン伝導物質の製造方法を提供することがきる。
非イオン伝導性共重合樹脂の溶液又は溶融物に対して、“イオン伝導性モノマー及び/又は非イオン伝導性モノマー”並びに炭素材料を添加し、十分に攪拌混合する。従来例のように樹脂同士の混合ではないので、より短時間で分散状態を達成することができる。この混合物を攪拌しながら熱的又は光的等により外部エネルギーを与え、モノマー重合反応を開始させることにより電子伝導イオン伝導体を作製することができる。炭素や非イオン伝導性樹脂の分子レベルの近傍でこの重合が行われることになるため、作製される電子伝導イオン伝導体は、分散性がきわめて良好な状態をたもつことが可能である。分散性が良好であるため、この液から作製される電子伝導イオン伝導体の諸特性は、この伝導体全体で、均質で良好とすることが可能である。
本発明で使用するリン酸基を有するモノマーとは、アシッドホスホオキシ(アルキル)メタクリレート、アシッドホスホオキシ(アルキル)アクリレート、アシッドホスホオキシ(オキシアルキル)メタクリレート及びアシッドホスホオキシ(オキシアルキル)アクリレート並びにこれらの誘導体が使用できる。さらに具体的には、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、アシッドホスホオキシ(クロロイソプロピル)メタクリレート、アシッドホスホオキシイソプロピルメタクリレート、アシッドホスホオキシエチルアクリレート、アシッドホスホオキシ(ポリオキシエチレングリコール)メタクリレート、アシッドホスホ(ポリオキシプロピレングリコール)メタクリレート等を使用することが好ましい。
本発明で使用する非イオン伝導性共重合樹脂とは、電子伝導イオン伝導体の成膜性をよくするためや、機械特性の増強、イオン伝導性樹脂の会合を防止し、イオン解離能力を向上させるために使用されるもので、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの飽和炭化水素系高分子や、ポリカーボネート、ポリエステルがあり、さらにポリベンズイミダゾールなどの主鎖に置換又は非置換のアリーレン基を有する高分子などを用いることができる。化学的安定性の面からはポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニール、ポリフッ化アルコールなどが使用できるが、化学組成としては単純な繰り返し単位を有する樹脂よりも、共重合体であることが好ましく、相溶性、分散性及び液安定性の面から、3種以上の構造単位よりなる樹脂がより好ましい。フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン‐エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体が使用できる。特にテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとビニリデンフロライドの共重合体が好ましい。
本発明に使用する炭素材料は、電子伝導性を有する材料が挙げられる。具体的には、天然黒鉛や、黒鉛系炭素体が使用できるほか、“石炭、ピッチ、合成高分子、又は天然高分子を800〜1300℃での還元雰囲気で焼成することにより得られる導電性炭素体”、“ピッチ、合成高分子又は天然高分子を2000℃以上の温度で還元雰囲気下焼成することにより得られる導電性炭素体”などの合成炭素体も使用できる。さらにこれらは単独又は二種類以上を混合して用いてもよい。炭素材料は、本発明による製造方法に用いる非イオン伝導性共重合樹脂を含む液に含有させてもよく、或いは、本発明による製造方法により調製した後、得た組成物に炭素材料を混合して、本発明による電子伝導イオン伝導物質を調製してもよい。これらの炭素材料に触媒材料を複合することにより、触媒反応を行うことが可能となり、触媒反応で発生した電子やイオンを伝播し得る物質を提供できる。
ここで本発明の電解質膜が適用可能であるデバイスの一例として、プロトン伝導型固体高分子電解質を使用した燃料電池を例にとり、その発電概念図を図1に示す。基本的構成要素として、中心にイオン伝導体(図の場合はプロトン伝導体)が存在し、その両側にアノード及びカソードが配置された構成を有している。プロトン伝導型の電解質が使用される場合はアノード側にプロトン源となる燃料(水素、アルコールなど)が供給され、アノード内の触媒作用により、燃料から水素イオンが発生する。この時、発生する電子は外部回路に流れ出る。発生した水素イオンはプロトン伝導体中を伝搬してカソードに達する。カソードでは、カソードに供給される酸化剤(空気、酸素など)と、アノードから発生した水素イオンと、外部回路を通して流れてくる電子とが反応し、水が生成する。以上が発電の概念で、これを反応式として現すと以下のようになる
カソード反応;2H++1/2O2+2e−→H2O
全反応;H2+1/2O2→H2O
C2H5OH+3H2O→12H++12e−+2CO2
本発明の実施の形態を図2、図3、図4および図5に基づいて説明する。本実施の形態では、燃料電池を有する電子機器について説明する。なお、本実施の形態の電子機器の一例として、携帯可能なパーソナルコンピュータ等の情報処理装置について説明する。
実施例に使用した非イオン伝導性共重合樹脂は以下の通りである。
(ポリマー電解液の製造)
(ポリマー電解液(1))
ジメチルホルムアミド10.5gにフッ素樹脂(1)を1.5g加え、溶解させた。これにアシッドホスホオキシ(クロロプロピル)メタクリレート0.88gを加え、均一な溶液とした後、アゾビスイソブチロニトリル0.018gを加えた。攪拌しながら、80度24時間、85度1時間保持し、徐冷しポリマー電解液を得た。作製直後の液は乳白色で均一状態であった。
アシッドホスホオキシ(クロロプロピル)メタクリレートを0.5gとする以外はポリマー電解液(1)と同様に操作した。作製直後の液は乳白色で均一状態であった。
アシッドホスホオキシ(クロロプロピル)メタクリレートを0.24gとする以外はポリマー電解液(1)と同様に操作した。作製直後の液は乳白色で均一状態であった。
アシッドホスホオキシ(クロロプロピル)メタクリレートに代えて、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート0.88gを使用する以外はポリマー電解液(1)と同様に操作し、ポリマー電解液を得た。作製直後の液は、乳白色で均一状態であった。
アシッドホスホオキシエチルメタクリレートを0.5gとする以外はポリマー電解液(4)と同様に操作した。作製直後の液は乳白色で均一状態であった。
アシッドホスホオキシエチルメタクリレートを0.24gとする以外はポリマー電解液(4)と同様に操作した。作製直後の液は乳白色で均一状態であった。
アシッドホスホオキシ(クロロプロピル)メタクリレートに代えてアシッドホスホオキシ(ポリオキシエチレングリコール)メタクリレート0.88gを使用する以外はポリマー電解液(1)と同様に操作し、ポリマー電解液を得た。作製直後の液は、乳白色で均一状態であった。
アシッドホスホオキシ(ポリオキシエチレングリコール)メタクリレートを1.5gとする以外はポリマー電解液(7)と同様に操作した。作製直後の液は乳白色で均一状態であった。
メチルエチルケトン10.5gにフッ素樹脂(2)を0.88g加え、溶解させた。これにアシッドホスホオキシ(クロロプロピル)メタクリレート0.88gを加え、均一な溶液としたのち、アゾビスイソブチロニトリルを加えた。攪拌しながら、75度24時間保持し、徐冷しポリマー電解液を得た。作製直後の液は乳黄白色で均一状態であった。
アシッドホスホオキシ(クロロプロピル)メタクリレートを0.5gとする以外はポリマー電解液(9)と同様に操作した。作製直後の液は乳黄白色で均一状態であった。
(ポリマー電解液:比較例)
ジメチルホルムアミド10.5gにフッ素樹脂(3)を1.5g加え、溶解させた。これにアシッドホスホオキシエチルメタクリレート0.88gを加え、均一な溶液としたのち、アゾビスイソブチロニトリルを加えた。攪拌しながら、80度24時間、85度1時間保持し、徐冷した。作製直後に得られた液は、凝集したと考えられる白色固形物が沈降した状態となった。
上記のポリマー電解液(1)乃至(10)及び(ポリマー電解液:比較例)を離型性プラスチック上に塗布した。真空下、加熱することにより溶剤を除去した。それぞれ得られた膜(以下、膜(1)乃至(10)及び膜比較例1と略す)を、加熱したメタノール中で数回充分洗浄した後、沸騰水中で膜を加熱、イオン交換水中に保存した。
膜(2) 2.3×10−3 S/cm
膜(3) 5.4×10−4 S/cm
膜(4) 2.9×10−3 S/cm
膜(5) 9.5×10−4 S/cm
膜(6) 6.2×10−4 S/cm
膜(7) 1.7×10−4 S/cm
膜(8) 4.8×10−4 S/cm
膜(9) 8.0×10−4 S/cm
膜(10) 5.2×10−4 S/cm
膜比較例1 測定できず
●イオン伝導電子伝導体分散液(1)の製造
ジメチルホルムアミド10.5gにフッ素樹脂(1)を1.5g加え、溶解させた。これにアシッドホスホオキシ(クロロプロピル)メタクリレート0.88gを加え、均一な溶液としたのち、アゾビスイソブチロニトリルを加えた。さらに、PtRu(元素比1:1)を炭素に対し40wt%担持した触媒担持カーボンを2.2g加え、混合したのち、攪拌ミリングしながら、80度24時間、85度1時間保持し、徐冷しイオン伝導電子伝導体分散液(1)を得た。
上記イオン伝導電子伝導体分散液(1)を離型性プラスチック上に塗布し、真空下、加熱することにより溶剤を除去した。得られた膜を、加熱したメタノール中で数回充分洗浄したのち、沸騰水中で膜を加熱、イオン交換水中に保存した。得た膜の電気伝導度は89mS/cmであった。
●イオン伝導電子伝導体分散液(2)の製造
アシッドホスホオキシ(クロロプロピル)メタクリレートに代えて、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート0.88gを使用する以外は実施例1と同様に操作し、イオン伝導電子伝導体分散液(2)を得た。
上記イオン伝導電子伝導体分散液(2)を離型性プラスチック上に塗布し、真空下、加熱することにより溶剤を除去した。得られた膜を、加熱したメタノール中で数回充分洗浄したのち、沸騰水中で膜を加熱、イオン交換水中に保存した。得た膜の電気伝導度は90mS/cmであった。
(炭素ポリマー電解液:比較例)
ジメチルホルムアミド10.5gにフッ素樹脂(3)を1.5g加え、溶解させた。これにアシッドホスホオキシエチルメタクリレート0.88gを加え、均一な溶液としたのち、アゾビスイソブチロニトリル0.018gを加えた。さらに、PtRu(元素比1:1)を炭素に対し40wt%担持した触媒担持カーボンを2.2g加え、混合した後、攪拌ミリングしながら、80度24時間、85度1時間保持し、徐冷した。作製直後に得られた液は、凝集したと考えられる固形物が存在した。
実施例1のイオン伝導電子伝導体分散液(1)を溶剤で6.3倍に希釈した。ついで、この液を50mm×50mm、厚さ50μmのフッソ樹脂シート上にスプレイ塗布し、乾燥させた。これを2枚用意した。蒸留水を含んだパーフルオロスルフォン酸膜80mm×80mm、厚さ180μm(商標、Nafion)を、先の作製した2枚のフッ素樹脂シートではさみ、100度、4.5Mpaの圧力でホットプレスをおこなった。フッ素樹脂シートを剥離洗浄し、“電子伝導イオン伝導物質層”/“固体電解質層”/“電子伝導イオン伝導物質層”の積層構造を有する複合体を得た。
実施例2のイオン伝導電子伝導体分散液(2)を溶剤で6.3倍に希釈した。ついで、この液を50mm×50mm、厚さ50μmのフッソ樹脂シート上にスプレイ塗布し、乾燥させた。これを2枚用意した。蒸留水を含んだパーフルオロスルフォン酸膜80mm×80mm、厚さ180μm(商標、Nafion)を、先の作製した2枚のフッ素樹脂シートではさみ、100度、4.5Mpaの圧力でホットプレスをおこなった。フッ素樹脂シートを剥離洗浄し、“電子伝導イオン伝導物質層”/“固体電解質層”/“電子伝導イオン伝導物質層”の積層構造を有する複合体を得た。
51 情報処理装置
52 CPU
53 ROM
54 RAM
55 バス
56 HDD
57 表示装置
58 入力装置
59 記憶媒体
60 データ読取装置
61 電源部
71 液体燃料カートリッジ
72 混合器
73 バルブ
74 燃料ポンプ
75 燃料濃度センサ
76 気液分離器
77 温度センサ
78 冷却素子
79 熱交換器
80 空気ポンプ
81 温度センサ
82 冷却素子
83 水分凝縮器
84 水タンク
85 バルブ
86 制御回路
87 DCDCコンバータ
Claims (13)
- 少なくとも、フッ化ビニリデンとフッ化アルキレンとを構造単位に含む非イオン伝導性共重合樹脂と、リン酸基を有する1種類以上のモノマーと、炭素材料と、を含む混合物を、攪拌しながら加熱又光照射することでモノマー重合反応させることを特徴とする電子伝導イオン伝導物質の製造方法。
- 前記炭素材料は、触媒成分を有していることを特徴とする請求項1に記載の電子伝導イオン伝導物質の製造方法。
- 前記触媒成分は、Pt又はPtと、Ru若しくはIrとからなる金属を含有していることを特徴とする請求項2に記載の電子伝導イオン伝導物質の製造方法。
- 前記触媒成分は、Ptと、Ru、Ir、W及びSnからなる群から選択された金属とからなる3種以上の金属を含有することを特徴とする請求項3に記載の電子伝導イオン伝導物質の製造方法。
- 前記非イオン伝導性共重合樹脂は、グラフト構造を形成していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電子伝導イオン伝導物質の製造方法。
- 前記グラフト構造が形成された前記非イオン伝導性共重合樹脂は、93〜95mol%のフッ化ビニリデン単位、約3〜4mol%のクロロフルオロエチレン単位及び約2〜3mol%のイソプロピレート単位を有し、前記フッ化ビニリデン単位は側鎖部にあるグラフト共重合体である、請求項5に記載の電子伝導イオン伝導物質の製造方法。
- 前記非イオン伝導性共重合樹脂は、約40mol%のフッ化ビニリデン単位、約10mol%のフッ化イソプロピレン単位及び約50mol%の四フッ化エチレン単位を有する直鎖状共重合体である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電子伝導イオン伝導物質の製造方法。
- 請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電子伝導イオン伝導物質の製造方法により製造された電子伝導イオン伝導物質を含有する第1の層と、固体電解質層と、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電子伝導イオン伝導物質の製造方法により製造された電子伝導イオン伝導物質を含有する第2の層と、を積層したことを特徴とする複合体。
- 請求項8に記載の複合体を含有することを特徴とする燃料電池。
- アルコールを燃料に用いることを特徴とする請求項9に記載の燃料電池。
- 前記アルコールは、エタノールであることを特徴とする請求項10に記載の燃料電池。
- 請求項9乃至11のいずれか一項に記載の燃料電池を備えたことを特徴とする電源。
- 請求項12に記載の電源を搭載したことを特徴とする電子機器。
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