JP2006221874A - 拡散層及びその製造方法、電解質膜・電極接合体、燃料電池並びに電子機器 - Google Patents

拡散層及びその製造方法、電解質膜・電極接合体、燃料電池並びに電子機器 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は、発電特性及び接着性が良好な拡散層、該拡散層の製造方法、該拡散層を有する電解質膜・電極接合体、該電解質膜・電極接合体を有する燃料電池及び該燃料電池を有する電子機器を提供することを目的とする。
【解決手段】 拡散層は、多孔質体内に非イオン性高分子及びイオン性高分子を有する。拡散層の製造方法は、非イオン性高分子と、イオン性モノマーを含有する液体を多孔質体に含浸させる工程と、イオン性モノマーを重合する工程を有する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、拡散層及びその製造方法、電解質膜・電極接合体、燃料電池並びに電子機器に関する。
温暖化ガスに代表される環境問題の観点から、クリーンエネルギー源としての燃料電池が急ピッチで開発されている。特に、固体電解質型燃料電池は、低温で作動できることや小型で高い出力密度を有することから、研究開発が活発に進められている。燃料電池は、電解質膜、電極触媒層、拡散層等の要素で構成されており、各構成要素の性能向上が検討されている。
撥水性樹脂を用いて拡散層を撥水処理することにより、接着性が向上することが知られているが、発電特性が低下するという問題がある。そこで、拡散層の撥水性領域と親水性領域が交互に隣接する構成とする方法が知られている(特許文献1参照)。しかしながら、パターンにより撥水性領域を形成していることから、拡散層の膜厚が均一ではなくなるため、接着性が低下する問題がある。
特許第3356465号公報
本発明は、上記の従来技術が有する問題に鑑み、発電特性及び接着性が良好な拡散層、該拡散層の製造方法、該拡散層を有する電解質膜・電極接合体、該電解質膜・電極接合体を有する燃料電池及び該燃料電池を有する電子機器を提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、拡散層において、多孔質体内に非イオン性高分子及びイオン性高分子を有することを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、多孔質体内に非イオン性高分子及びイオン性高分子を有するので、発電特性及び接着性が良好な拡散層を提供することができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の拡散層において、前記非イオン性高分子は、フッ素系樹脂であると共にグラフト共重合体であることを特徴とする。
請求項2に記載の発明によれば、前記非イオン性高分子は、フッ素系樹脂であると共にグラフト共重合体であるので、イオン性高分子がより均一に分散された拡散層を得ることができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の拡散層において、前記イオン性高分子は、リン酸基を有することを特徴とする。
請求項3に記載の発明によれば、前記イオン性高分子は、リン酸基を有するので、プロトン伝導性が高い拡散層を得ることができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の拡散層において、前記非イオン性高分子及び前記イオン性高分子の少なくとも一方は、架橋されていることを特徴とする。
請求項4に記載の発明によれば、前記非イオン性高分子及び前記イオン性高分子の少なくとも一方は、架橋されているので、熱的安定性及び機械的強度が高い拡散層を得ることができる。
請求項5に記載の発明は、拡散層を製造する拡散層の製造方法において、非イオン性高分子と、イオン性モノマーを含有する液体を多孔質体に含浸させる工程と、前記イオン性モノマーを重合する工程を有することを特徴とする。
請求項5に記載の発明によれば、非イオン性高分子と、イオン性モノマーを含有する液体を多孔質体に含浸させる工程と、前記イオン性モノマーを重合する工程を有するので、発電特性及び接着性が良好な拡散層の製造方法を提供することができる。
請求項6に記載の発明は、拡散層において、請求項5に記載の拡散層の製造方法を用いて製造されていることを特徴とする。
請求項6に記載の発明によれば、請求項5に記載の拡散層の製造方法を用いて製造されているので、発電特性及び接着性が良好な拡散層を提供することができる。
請求項7に記載の発明は、少なくとも電解質膜及び電極が接合されている電解質膜・電極接合体において、前記電極は、請求項1乃至4及び6のいずれか一項に記載の拡散層を有することを特徴とする。
請求項7に記載の発明によれば、前記電極は、請求項1乃至4及び6のいずれか一項に記載の拡散層を有するので、発電特性及び接着性が良好な拡散層を有する電解質膜・電極接合体を提供することができる。
請求項8に記載の発明は、燃料電池において、請求項7に記載の電解質膜・電極接合体を有することを特徴とする。
請求項8に記載の発明によれば、請求項7に記載の電解質膜・電極接合体を有するので、発電特性及び接着性が良好な拡散層を有する燃料電池を提供することができる。
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の燃料電池において、アルコールを含有する燃料を用いて発電することを特徴とする。
請求項9に記載の発明によれば、アルコールを含有する燃料を用いて発電するので、堆積エネルギー密度に優れる燃料電池を得ることができる。
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の燃料電池において、前記アルコールは、エタノールであることを特徴とする。
請求項10に記載の発明によれば、前記アルコールは、エタノールであるので、環境保全性及び安全性が高い燃料電池を得ることができる。
請求項11に記載の発明は、電子機器において、請求項8乃至10のいずれか一項に記載の燃料電池を有することを特徴とする。
請求項11に記載の発明によれば、請求項8乃至10のいずれか一項に記載の燃料電池を有するので、長期間安定稼動することが可能な電子機器を提供することができる。
本発明によれば、発電特性及び接着性が良好な拡散層、該拡散層の製造方法、該拡散層を有する電解質膜・電極接合体、該電解質膜・電極接合体を有する燃料電池及び該燃料電池を有する電子機器を提供することができる。
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面と共に説明する。
図1に、プロトン伝導型固体高分子電解質を使用した燃料電池の発電概念図を示す。基本的構成要素として、中心に電解質膜11が存在し、その両側にアノード12及びカソード13が配置された電解質膜・電極接合体(以下、MEAという)と、セパレータ14を有している。また、アノード12及びカソード13は、電極触媒層と拡散層を有する。プロトン伝導型の電解質膜11が使用される場合は、アノード12側にプロトン源となる燃料(水素、アルコール等)が供給され、アノード12の電極触媒により燃料からプロトンが発生する。この時、発生する電子は、外部回路に流れ出る。発生したプロトンは、電解質膜11中を伝搬し、カソード13に達する。カソード13に酸化剤(空気、酸素等)が供給されることにより、プロトンと酸素と外部回路を流れて来る電子とが反応し、水を生成する。以上が発電の概念で、燃料として、水素を用いた場合の反応式は、以下のようになる。
アノード反応:H→2H+2e
カソード反応:2H+1/2O+2e→H
全反応:H+1/2O→H
また、発生したプロトンが電解質膜中を伝搬するためには、電解質膜が水を含有している必要があり、その含水を維持するために、カソードから水分が供給される。
さらに、燃料として、メタノール及びエタノールを用いた場合のアノード反応には、水がそれぞれ同等量及び3倍当量必要であり、反応式は、以下のようになる。
CHOH+HO→6H+6e+CO
OH+3HO→12H+12e+2CO
上記の反応が進行するのは、燃料と、電子を発生、伝搬する電極触媒と、プロトンを伝搬する電解質の三相の界面であり、この三相界面が形成されていることが燃料電池の発電特性において重要である。三相界面は、MEAの各界面においても形成されるため、MEAの界面における接合が均一であることが望ましい。
本発明の拡散層は、多孔質体内に非イオン性高分子とイオン性高分子を有する。イオン性高分子を有することにより、水分を含有する液体燃料や気体燃料の拡散性が良好となる。また、本発明の拡散層は、電極触媒層に配して乾燥、圧着又は加熱を行うことにより、良好に接着させることができる。このため、高い接着強度を有するMEAが得られる。
また、運転の状況に応じて、電解質膜の体積が膨張収縮を繰り返すような場合においても、本発明の拡散層は、電極触媒層との接着強度を良好に保つことができる。これは、溶液中で混合された非イオン性高分子とイオン性高分子が、拡散層と電極触媒層との界面において、より均一な構造を形成することができるためである。これにより、拡散層と電極触媒層との間で、より均一な接着強度を得ることができる。
さらに、拡散層がイオン性高分子を有することにより、電極触媒層との界面において、三相界面を多く形成することができ、発電特性を向上させることができる。
本発明において、イオン性高分子と非イオン性高分子を含有する液体を多孔質体に含浸させてもよいが、非イオン性高分子とイオン性モノマーを含有する液体を含浸させることが好ましい。これにより、非イオン性高分子とイオン性モノマーは、より均一に短時間で溶解又は分散させることができると共に、より均一に単時間で多孔質体に含浸させることができる。これにより、重合後のイオン性高分子の分散状態も良好とすることができる。なお、多孔質体に含浸させたイオン性モノマーは、光重合、熱重合等の重合法を用いて重合することができる。これにより、拡散層と電極触媒層との界面において、より均一な接着強度を有すると共に、接着強度を向上させることができる。なお、拡散層を、電極触媒層で挟持された電解質膜の両面に配して、接合処理を行うことにより、MEAが得られる。
本発明において、イオン性モノマーとは、イオン化が可能な官能基を有するモノマーを意味する。イオン化が可能な官能基としては、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アルキレンオキシド基、アルキレンイミン基等が挙げられる。イオン性モノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、マレイン酸、アシッドホスホオキシ(アルキル)メタクリレート、アシッドホスホオキシ(アルキル)アクリレート、アシッドホスホオキシ(オキシアルキル)メタクリレート、アシッドホスホオキシ(オキシアルキル)アクリレート及びその誘導体が挙げられる。中でも、リン酸基を有するモノマーが好ましく、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、アシッドホスホオキシ(クロロプロピル)メタクリレート、アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート、アシッドホスホオキシエチルアクリレート、アシッドホスホオキシ(ポリオキシエチレングリコール)メタクリレート、アシッドホスホ(ポリオキシプロピレングリコール)メタクリレート等が挙げられる。なお、イオン性モノマーは、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。
本発明において、イオン性モノマーとして、リン酸基を有するモノマーを使用した時に顕著な効果が現れるのは、重合系に加えられている非イオン性高分子がリン酸基を有するモノマーの会合状態に影響を与えているためであると考えられる。
リン酸基を有するモノマーは、単独ではリン酸基を介した水素結合により会合状態を形成しやすいモノマーであり、このような会合状態で重合することにより得られる高分子は、プロトン伝導性を発現しにくい傾向にある。これは、キャリアであるプロトンが会合により、解離しにくいためであると考えられる。
したがって、リン酸基を有するモノマーの単独重合は、会合が起こりにくい希薄な溶液中で実施されるのが一般的である。本発明によれば、非イオン性高分子を添加することにより、高濃度のリン酸基を有するモノマーを含有する液体から高いプロトン伝導性を有する高分子を合成することが可能である。これは、非イオン性高分子には、リン酸基を有するモノマーの会合を抑制する効果があるためと推測される。
本発明において、イオン性高分子としては、上述のイオン性モノマーの重合体等が挙げられる。具体的には、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリエステルホスホン酸、ポリフルオロアルキルスルホン酸、ポリフルオロアルキルカルボン酸等が挙げられる。なお、イオン性高分子は、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。
また、リン酸基を有する高分子を有する拡散層は、電極触媒層との界面において発生したプロトンの伝搬性が高く、MEAの電気特性が良好となる。
本発明において、非イオン性高分子は、成膜性の向上、機械特性の増強、イオン性高分子の会合の抑制、イオン解離性の向上等のために使用することができる。非イオン性高分子としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等の飽和炭化水素系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリベンズイミダゾール等の主鎖に置換又は無置換のアリーレン基を有する樹脂等が挙げられる。中でも、化学的安定性の面から、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化アルコール等が好ましい。また、非イオン性高分子は、共重合体であることが好ましく、3種以上の構造単位からなる共重合体が、相溶性、分散性、液安定性の面で好ましい。このような共重合体の具体例としては、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体等が挙げられる。中でも、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体が好ましい。
相溶性、分散性、液安定性の面から、非イオン性高分子は、フッ素系樹脂であると共に、グラフト共重合体であることが好ましい。具体的には、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、クロロフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等のモノマーのグラフト共重合体が挙げられる。中でも、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン及びクロロフルオロエチレンのグラフト共重合体が好ましく、主鎖長と側鎖長が同等程度の長さを有するものがさらに好ましい。
本発明において、非イオン性高分子は、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。
本発明においては、非イオン性高分子とイオン性高分子を含有する液体を多孔質体に含浸させた後、架橋処理を行うことにより、拡散層の熱的安定性、機械的特性を向上させることができる。なお、多孔質体に含浸させる工程においては、非イオン性高分子とイオン性高分子は、架橋されていないことが望ましい。これは、架橋されている高分子は、溶媒に対して難溶であるためである。また、多孔質体に含浸させるためには、高分子の形状の自由度が要求されるためである。
高分子を架橋する方法としては、溶媒に予め架橋剤を混合して、溶媒が揮発する前に、熱、光等の外部エネルギーを加える方法、溶融状態の高分子に、高分子の溶融温度より高い分解温度を有する架橋剤を混合して、熱、光等の外部エネルギーを加える方法が挙げられる。
高分子を架橋する方法は、上記以外にも、公知の方法を用いることができる。具体的には、紫外線や放射線を照射する方法、過酸化物等の開始剤を混合して、熱又は光によってラジカルを発生させる方法、高分子中の極性基と金属を用いて、イオン結合を生じさせる方法、予め架橋性モノマーや架橋剤を添加する方法が挙げられる。
水酸基を有する高分子に対する架橋剤としては、エポキシ化合物、イソシアネート化合物等が挙げられる。また、酸基を有する高分子に対する架橋剤としては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリアミノベンゼン等の多官能性塩基化合物が挙げられる。
非イオン性高分子は、成膜性が良好で、拡散層の強度を制御することができるため、熱的、機械的強度を向上する効果は、イオン性高分子を架橋する場合より、非イオン性高分子を架橋する場合の方が高い。
一方、イオン性高分子を架橋することにより、イオン性高分子の強度を補強したり、燃料等の有機溶剤との接触によるイオン性高分子の拡散層からの溶出を抑制したりすることができる。その一方で、プロトン伝導性を低下させてしまうことがあるが、架橋性モノマーや架橋剤にイオン解離性基を有する化合物を用いることで、イオン性高分子の架橋によるプロトン伝導性の低下を抑制することができる。
架橋の形態は、上記に限定されず、イオン性高分子と非イオン性高分子とが架橋されていてもよい。
本発明において、多孔質体としては、カーボン繊維を押し固めたカーボンペーパー、カーボン繊維織布等を用いることができる。
本発明の燃料電池は、本発明のMEAを有する。この場合に、電極触媒の種類により適性があるが、燃料は、特に限定されない。しかしながら、燃料は、通常、有限な空間(容器等)に収められているため、体積エネルギー密度及び重量エネルギー密度に優れることが好ましく、体積エネルギー密度に優れることが特に好ましい。気体燃料は、体積エネルギー密度に劣るため好ましくなく、液体燃料や固体燃料が好ましい。
例えば、水素、メタノール及びエタノールをアノードで1分子酸化させることにより発生する電子数がそれぞれ2個、6個及び12個であることから、水素、メタノール及びエタノール1molから発生する電荷は、それぞれ理論値として、96500×2C、96500×6C及び96500×12Cとなる。常温常圧における密度、分子量を考慮し、水素、メタノール及びエタノール1cmから発生する電荷量に換算すると、それぞれ約9C/cm、約14400C/cm及び約15200C/cmとなる。このことから、常温常圧における水素の体積エネルギー密度は、著しく低くなる。メタノール及びエタノールの酸化反応においては、反応式
CHOH+HO→6H+6e+CO
OH+3HO→12H+12e+2CO
に示すように、水分子がそれぞれ1分子及び3分子必要であるが、このことを加味しても液体燃料が優れることは明らかである。
高圧状態の水素又は液体水素を使用することも可能であるが、容器を堅牢にする必要があり、容器込みのエネルギー密度を考慮すると、液体燃料や固体燃料の方が優れている。
本発明の燃料電池には、水素吸蔵合金に蓄えた水素、ガソリン、炭化水素、アルコール等の固体燃料又は液体燃料が使用できるが、燃料電池の小型化が可能な点、体積エネルギー密度に優れる点より、アルコールを使用することが好ましい。中でも、炭素数が4以下であるアルコールを使用することが好ましく、安全性が高く、生合成が可能である点(環境面)からエタノールを使用することがさらに好ましい。これにより、駆動時間を向上させた小型の燃料電池を得ることができる。このような燃料電池は、体積エネルギー密度及び重量エネルギー密度に優れることから、比較的小型の電子機器に使用する場合に、特に好ましい。
また、液体燃料の直接酸化ではなく、液化天然ガス(LNG)、メタンガス等の炭化水素系燃料、メタノール等の液体燃料を改質して水素を得て燃料電池の燃料とする、いわゆる改質燃料型の燃料電池も検討されている。この場合には、原燃料の改質によって得られる水素ガス燃料中に微量存在する一酸化炭素(CO)や、その他の微量な不純物により燃料電池の機能を損なう問題(触媒被毒)がある。このため、電極触媒のCO被毒の問題は従来から検討されており、これを低減するために提案されている電極触媒として、白金−ルテニウム合金触媒がある。
しかしながら、溶液中のメタノール、エタノールの酸化における触媒化学反応の阻害要因は、CO被毒では説明できないことも多い。これは、メタノールやエタノールが多数の素反応を経て酸化されるためである。
本発明においては、メタノールの酸化には、白金と、ルテニウム又はイリジウムからなる電極触媒が好ましく、エタノールの酸化には、ルテニウム、イリジウム、タングステン及びスズからなる二種以上の金属並びに白金からなる電極触媒を使用することが好ましい。これらの電極触媒が好適な理由は、メタノール、エタノールの複雑な反応素過程の進行促進に寄与しているためである。
本発明において、エタノールは、人体に対する有害性が低いこと、生合成が可能なことから、炭酸ガス負荷を低減できる燃料として好ましく用いられる。
本発明の電子機器を図2〜5に基づいて説明する。本発明の電子機器は、本発明の燃料電池を有する。なお、本発明の電子機器の一例として、携帯可能なパーソナルコンピュータ等の情報処理装置について説明する。
図2は、パーソナルコンピュータを示す図であり、電源部21が搭載されている。
図3は、情報処理装置の構成を概略的に示すブロック図である。情報処理装置は、各種演算を行って各部を集中的に制御するCPU(Central Processing Unit)22、BIOS等を記憶しているROM(Read Only Memory)23及びCPU22の作業エリアとなるRAM(Random Access Memory)24がバス25により接続されて構成されている。バス25には、大容量記憶装置であるHDD(Hard Disk Drive)26、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示装置27、キーボード、マウス等の入力装置28、CD、DVD等の記憶媒体29からデータを読み取る光ディスク装置等のデータ読取装置30及び電力を供給する電源部21等が各種のコントローラ(図示せず)等を介して接続されている。
記憶媒体29には、各種のプログラムが記憶されている。これらのプログラムは、データ読取装置30で読み取られ、HDD26にインストールされる。なお、記憶媒体29としては、CD、DVD等の光ディスク、光磁気ディスク、フレキシブルディスク等の各種方式のメディアを用いることができる。データ読取装置30も記憶媒体29の方式に応じて、光ディスク装置、光磁気ディスク装置、FDD等が用いられる。また、各種のプログラムは、記憶媒体29から読み取るのではなく、ネットワーク(図示せず)からダウンロードしてHDD26にインストールされるものであっても良い。
図4は、電源部21の構成を概略的に示す図であり、図5は、電源部21の構成を概略的に示すブロック図である。なお、図5の矢印は、燃料等の流れを示す。
図4及び5に示すように、電源部21は、燃料電池31、液体燃料を収容する液体燃料カートリッジ41、液体燃料カートリッジ41に接続された混合器42、液体燃料カートリッジ41と混合器42との間に設けられたバルブ43、液体燃料を燃料電池31に供給するための液体燃料ポンプ44、液体燃料の濃度を検知する濃度センサー45、発電後の液体燃料を気体と液体とに分離する気液分離器46、温度センサー47と冷却素子48とを有する熱交換器49、空気を燃料電池31に供給するための空気ポンプ50、温度センサー51と冷却素子52とを有する水分凝縮器53、水分凝縮器53からの水分を収容する水タンク54、水タンク54と混合器42との間に設けられたバルブ55、これらの各部を制御するための制御回路56及び燃料電池31の正負極が接続されたDCDCコンバーター57等から構成されている。なお、液体燃料等が通過する各部は、チューブ等の流路により接続されている。
このような電源部21では、混合器42を通過した液体燃料は、液体燃料ポンプ44を経て、濃度センサー45に導かれる。濃度センサー45により検知された液体燃料の濃度が所定の濃度より低い場合には、制御回路56は、液体燃料カートリッジ41のバルブ43を開ける。このようにして、液体燃料は、燃料電池31に導かれる。発電後の液体燃料は、気液分離器46により気体成分(炭酸ガス)と液体成分(液体燃料)とに分けられ、液体成分は、熱交換器49に導かれる。温度センサー47により検知された液温が所定の温度より低い場合には、制御回路56は、冷却素子48により液体成分を冷却せず、液温が所定の温度より高い場合には、制御回路56は、冷却素子48により液体成分を冷却する。熱交換器49を通過した液体成分は、再び混合器42に戻される。このような流れが燃料ラインとして機能する。
空気ポンプ50からの空気は、燃料電池31に導かれる。発電後の空気は、水分を含有する気液混合ガスとなり、水分凝縮器53に導かれる。温度センサー51により検知されたガス温度が所定の温度より低い場合には、制御回路56は、冷却素子52により気液混合ガスを冷却せず、ガス温度が所定の温度より高い場合には、制御回路56は、冷却素子52により気液混合ガスを冷却する。なお、排ガスは、電源部21の外部に排出される。ここで、排ガスを排出するための排出口(図示せず)は、情報処理装置に対する電源部21の装着位置により異なるが、情報処理装置の外部に面した位置に設けることが好ましい。水分凝縮器53により凝縮された水分は、水タンク54を介して混合器42に戻される。このような流れが酸化剤ライン(空気ライン)として機能する。
このようにして、液体燃料及び空気が燃料電池31に供給されることで、燃料電池31は、発電し、所定の電力(起電力)をDCDCコンバーター57に付与する。なお、ここでは、蓄電素子を用いていないが、蓄電素子を電源部21の内部、電源部21の外部等に設けてもよい。
(電解質膜と電極触媒層の準備)
パーフルオロスルホン酸(Nafion、Dupont社製)からなる電解質膜の両面に白金担持カーボンからなる電極触媒層を形成することにより、MEA前駆体を作製した。
(実施例1)
ジメチルホルムアミド10gと、フッ化ビニリデン90重量%以上、クロロフルオロエチレン約4重量%、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート約3重量%を含有するモノマーを共重合することにより得られるグラフト共重合体1.3gと、ポリスチレンスルホン酸0.88gの混合液を24時間攪拌し、高分子溶液を調製した。
高分子溶液を、多孔質体としてのカーボンペーパーに含浸させ、加熱乾燥することにより、拡散層を作製した。MEA前駆体の両面に拡散層を配してホットプレスを行い、MEA1を作製した。
MEA1にセパレータを装着して燃料電池1を作製した。開放電圧は、0.66Vであった。
(実施例2)
ジメチルホルムアミド10gと、フッ化ビニリデン90重量%以上、クロロフルオロエチレン約4重量%、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート約3重量%を含有するモノマーを共重合することにより得られるグラフト共重合体1.3gと、アシッドホスホオキシクロロプロピルメタクリレート0.88gの混合液にアゾビスイソブチロニトリル0.018gを加え、80℃で24時間重合し、高分子溶液を得た。
高分子溶液をカーボンペーパーに含浸させ、加熱乾燥することにより、拡散層を作製した。MEA前駆体の両面に拡散層を配してホットプレスを行い、MEA2を作製した。
MEA2にセパレータを装着して燃料電池2を作製した。開放電圧は、0.67Vであった。
(実施例3)
ジメチルホルムアミド10gと、ポリスチレンスルホン酸0.88gと、ポリプロピレン1.3gの混合液を24時間攪拌した後、1、4−ブタンジオールジアクリレートを添加して高分子溶液を得た。高分子溶液をカーボンペーパーに含浸させ、放射線を照射することにより、ポリプロピレンを架橋して拡散層を作製した。MEA前駆体の両面に拡散層を配してホットプレスを行い、MEA3を作製した。
MEA3にセパレータを装着して燃料電池Eを作製した。開放電圧は、0.66Vであった。
(実施例4)
ジメチルホルムアミド10gと、フッ化ビニリデン90重量%以上、クロロフルオロエチレン約4重量%、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート約3重量%を含有するモノマーを共重合することにより得られるグラフト共重合体1.3gと、アシッドホスホキシクロロプロピルメタクリレート0.88gと、2,5−ジメチル−2,5−ジブチルパーオキシ−3−ヘキシン0.018gの混合液を重合して高分子溶液を得た。高分子溶液をカーボンペーパーに含浸させ、加熱乾燥することにより、拡散層を作製した。拡散層をMEA前駆体の両面に配してホットプレスを行い、MEA4を作製した。
MEA4にセパレータを装着して燃料電池4を作製した。開放電圧は、0.65Vであった。
(実施例5)
ジメチルホルムアミド10gと、フッ化ビニリデン90重量%以上、クロロフルオロエチレン約4重量%、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート約3重量%を含有するモノマーを共重合することにより得られるグラフト共重合体1.3gと、アシッドホスホオキシクロロプロピルメタクリレート0.88gと、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンの混合溶液をカーボンペーパーに含浸させた。紫外線を照射することにより、重合し、加熱乾燥をして拡散層を作製した。拡散層をMEA前駆体の両面に配してホットプレスを行い、MEA5を作製した。
MEA5にセパレータを装着して燃料電池5を作製した。開放電圧は、0.65Vであった。
(比較例1)
ポリテトラフルオロエチレンの分散液をカーボンペーパーに含浸させ、加熱乾燥することにより、拡散層を作製した。MEA前駆体の両面に拡散層を配してホットプレスを行い、MEA6を作製した。
MEA6にセパレータを装着して燃料電池6を作製した。開放電圧は、0.64Vであった。
(比較例2)
フッ化ビニリデン90重量%以上、クロロフルオロエチレン約4重量%、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート約3重量%を含有するモノマーを共重合することにより得られるグラフト共重合体の分散液をカーボンペーパーに含浸させ、加熱乾燥することにより、拡散層を作製した。MEA前駆体の両面に拡散層を配してホットプレスを行い、MEA7を作製した。
MEA7にセパレータを装着して燃料電池7を作製した。開放電圧は、0.62Vであった。
(評価方法及び評価結果)
MEAの接合強度として、5%メタノール水溶液を用いて2時間発電した燃料電池を1日室温で乾燥させてから、MEAの接着状態を確認した。各MEAとも拡散層の剥がれは無く、接着力が維持されていた。MEAの接着状態は、実施例及び比較例共に、接着力が維持されていたが、フッ素樹脂のみを用いた比較例と比べ、イオン性高分子を用いた実施例は、燃料電池の発電特性が良好であることがわかった。また、架橋を行ったMEA3とMEA4を比較すると、イオン性高分子が架橋されていないMEA3の発電特性が良好であることがわかった。
アノード及びカソードに、それぞれメタノール及び空気を供給し、燃料電池の初期電気特性(80mA/cmにおける電池電圧)を測定した。その結果、燃料電池2>燃料電池3、燃料電池1>燃料電池5、燃料電池4>燃料電池6>燃料電池7の順に電圧が大きく、リン酸基を有する高分子を用いた燃料電池の初期発電特性が良好であることがわかった。
燃料電池の発電概念を示す図である。 パーソナルコンピュータを示す図である。 情報処理装置を概略的に示すブロック図である。 電源部を概略的に示す図である。 電源部を概略的に示すブロック図である。
符号の説明
11 電解質膜
12 アノード
13 カソード
14 セパレータ
21 電源部
22 CPU
23 ROM
24 RAM
25 バス
26 HDD
27 表示装置
28 入力装置
29 記録媒体
30 データ読取装置
31 燃料電池
41 液体燃料カートリッジ
42 混合器
43、55 バルブ
44 液体燃料ポンプ
45 濃度センサー
46 気液分離器
47、51 温度センサー
48、52 冷却素子
49 熱交換器
50 空気ポンプ
53 水分凝縮器
54 水タンク
56 制御回路
57 DCDCコンバーター
58 端子

Claims (11)

  1. 多孔質体内に非イオン性高分子及びイオン性高分子を有することを特徴とする拡散層。
  2. 前記非イオン性高分子は、フッ素系樹脂であると共にグラフト共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の拡散層。
  3. 前記イオン性高分子は、リン酸基を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の拡散層。
  4. 前記非イオン性高分子及び前記イオン性高分子の少なくとも一方は、架橋されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の拡散層。
  5. 拡散層を製造する拡散層の製造方法において、
    非イオン性高分子と、イオン性モノマーを含有する液体を多孔質体に含浸させる工程と、
    前記イオン性モノマーを重合する工程を有することを特徴とする拡散層の製造方法。
  6. 請求項5に記載の拡散層の製造方法を用いて製造されていることを特徴とする拡散層。
  7. 少なくとも電解質膜及び電極が接合されている電解質膜・電極接合体において、
    前記電極は、請求項1乃至4及び6のいずれか一項に記載の拡散層を有することを特徴とする電解質膜・電極接合体。
  8. 請求項7に記載の電解質膜・電極接合体を有することを特徴とする燃料電池。
  9. アルコールを含有する燃料を用いて発電することを特徴とする請求項8に記載の燃料電池。
  10. 前記アルコールは、エタノールであることを特徴とする請求項9に記載の燃料電池。
  11. 請求項8乃至10のいずれか一項に記載の燃料電池を有することを特徴とする電子機器。
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