以下、発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態とする)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(可変焦点距離レンズ系)
2.数値実施例(第1数値実施例乃至第4数値実施例)
3.撮像装置及びデジタルスチルカメラ
4.他の実施の形態
<1.実施の形態>
[1−1.可変焦点距離レンズ系の構成]
本発明では、焦点距離の変化と共に合焦点も変化するようなレンズ系を可変焦点距離レンズ系と呼ぶ。これに対してズームレンズは焦点距離が変化したときでも合焦点が変化しないようになされたレンズ系であるため、可変焦点距離レンズ系の一つという位置付けになる。
本発明の可変焦点距離レンズ系では、物体側から順に、正屈折力を有する第1レンズ群、負屈折力を有する第2レンズ群、正屈折力を有する第3レンズ群、負屈折力を有する第4レンズ群、正屈折力を有する第5レンズ群を有している。
具体的に可変焦点距離レンズ系は、広角端状態から望遠端状態までレンズ位置状態が変化する際、第1レンズ群と第2レンズ群との空気間隔が増大し、第2レンズ群と第3レンズ群との空気間隔が減少し、第3レンズ群と第4レンズ群との空気間隔が変化し、第4レンズ群と第5レンズ群との空気間隔が増大して、第1レンズ群が単調に物体側へ移動して、第2レンズ群が光軸方向に固定され、第3レンズ群及び第4レンズ群が物体側へ移動する構成である。
そして、この可変焦点距離レンズ系は、第1レンズ群、第3レンズ群、第4レンズ群の移動に伴う像面位置の変動を補償するように第5レンズ群を別駆動により移動するようになされている。
一般に、ズームレンズを構成しているレンズ数を増やせば、収差補正の自由度が増えるため、変倍比を高くしても充分に高い光学性能を実現することができる。ところが、単純にレンズ数を増やしただけでは、レンズ駆動機構が複雑化してしまう問題点があった。これを解決する方法として、光軸方向へ固定したレンズ群を追加する方法が知られている。
例えば、交換レンズでは、正負正負正の5群構成として、第4レンズ群を光軸方向に固定したズームタイプが知られており、具体的には特開2003−241093号広報がある。この交換レンズでは、第1レンズ群の移動量を減らす目的で第4レンズ群を光軸方向へ固定していた。
これに対して、カメラ一体型レンズにおいては、広角端状態におけるレンズ全長を短くした方が、広角端状態で第1レンズ群を通過する軸外光束が光軸に近づくので、レンズ径の小型化を図り易い利点がある。
そこで本発明の可変焦点距離レンズ系においては、広角端状態におけるレンズ全長を短くすべく、広角端状態及び望遠端状態で第2レンズ群を光軸方向に固定することにより、可動レンズ群を減らしてレンズ系の簡易構成化を図るようになされている。
これにより本発明の可変焦点距離レンズ系においては、可動レンズ群を5個から4個に減らしながらも、各レンズ群間の可変間隔を増やすことができるので、レンズ系全体を簡易な構成とした小型化を達成すると共に高変倍比化を達成し得るようになされている。
まず、本発明の可変焦点距離レンズ系を構成する各レンズ群の機能について説明する。本発明における可変焦点距離レンズ系は、広角端状態において、第1レンズ群と第2レンズ群とを近接して配置することにより、レンズ径の小型化を図っている。
これは、第1レンズ群が正屈折力を有するため光を強く曲げ、なす角度が大きくなるので、第1レンズ群と第2レンズ群との距離が離れていればいるほど、第1レンズ群を通過した軸外光束が外側に拡がってしまうからである。
また、このとき本発明における可変焦点距離レンズ系では、広角端状態において、第1レンズ群と第2レンズ群とを近接して配置したことにより、結果的に第1レンズ群に入射する軸外光束を光軸から離れないようにできるので、画面周辺部において発生する軸外収差を抑制し得るようになされている。
同時に、本発明の可変焦点距離レンズ系では、望遠端状態へ向かってレンズ位置状態が変化する際、第1レンズ群と第2レンズ群との空気間隔を広げることにより、第1レンズ群を通過する軸外光束が光軸から離れ、その高さの変化を利用してレンズ位置状態の変化に伴う軸外収差の変動を良好に補正するようになされている。
特に、本発明の可変焦点距離レンズ系では、レンズ全長を広角端状態で短くして、望遠端状態で長くすることにより、画角の広い広角端状態で第1レンズ群に入射する軸外光束が光軸から離れ過ぎないようにしている。
また本発明の可変焦点距離レンズ系では、広角端状態で第2レンズ群と第3レンズ群との空気間隔を広げることにより、第2レンズ群を通過する軸外光束が光軸から離れるようにでき、軸上収差と軸外収差とを独立して補正し得るようになされている。
さらに本発明の可変焦点距離レンズ系では、望遠端状態へ向かってレンズ位置状態が変化する際、第2レンズ群と第3レンズ群との空気間隔を狭めることにより、第2レンズ群を通過する軸外光束が光軸に近づくため、レンズ位置状態の変化に伴う軸外収差の変動を良好に補正でき、高性能化を図ることができるようになされている。
このとき本発明の可変焦点距離レンズ系では、第2レンズ群を光軸方向へ固定すると同時に、レンズ位置状態の変化に伴う軸外収差の変動を良好に補正するために、第3レンズ群と第4レンズ群との空気間隔を変化させている。
さらに本発明の可変焦点距離レンズ系では、レンズ位置状態の変化に合わせて、像面位置を補償するように第5レンズ群を移動させることにより、レンズ位置状態の変化に伴う軸外収差の変動を一段と良好に補正している。
なお本発明の可変焦点距離レンズ系では、第3レンズ群の像側に負屈折力を有する第4レンズ群と、正屈折力を有する第5レンズ群とを配置しているが、第2レンズ群及び第4レンズ群の2つの負レンズ群を配置することにより、レンズ系全体での屈折力配置を対称型に近づけ、特に広角端状態で発生し易い負の歪曲収差や倍率色収差を良好に補正している。
ところが本発明の可変焦点距離レンズ系においては、第2レンズ群を光軸方向へ固定するため、ズーム軌道の選択の自由度が低下することになり、2つの問題点が生じる。
1つ目の問題点は、レンズ位置状態が変化する際に発生する諸収差の変動を良好に補正できないことであり、2つ目の問題点は小型化を充分に図れないことである。一般に小型化とは、レンズ径の小径化とレンズ全長の短縮化に分類されるが、本発明においてはレンズ全長の短縮化が問題となる。
1つ目の問題点に対して本発明の可変焦点距離レンズ系は、第2レンズ群の変倍作用を弱めることにより、諸収差の変動を良好に補正している。しかしながら、第2レンズ群の変倍作用を単純に弱めただけでは、レンズ系全体の変倍比が低下してしまうため、本発明の可変焦点距離レンズ系は第3レンズ群の変倍作用を高めることにより所定の変倍比を得るようになされている。
より具体的には、所定の変倍比を得るために、第3レンズ群の移動量を増やすか、第3レンズ群の屈折力を強めれば良いが、屈折力を強めると第3レンズ群において発生する負の球面収差を良好に補正できなくなってしまう。
そこで本発明の可変焦点距離レンズ系は、第3レンズ群の移動量を増やすことにより変倍作用を高めて、所定の変倍比を得ながら高い光学性能を達成するようになされている。なお、変倍作用を高めるとは、広角端状態と望遠端状態とにおける横倍率の変化量を大きくするということである。
一方、2つ目の問題点に対して本発明の可変焦点距離レンズ系は、負屈折力を有する第2レンズ群の屈折力を弱めることにより、発散作用が弱まり、その結果、レンズ系全体の長さの短縮化を図るようになされている。
なお、本発明の可変焦点距離レンズ系においては、一段と効果的に小型化を図るため、負屈折力を有する第2レンズ群の屈折力を弱め、かつ負屈折力を有する第4レンズ群の屈折力を強めることにより、第1レンズ群乃至第3レンズ群における焦点距離を更に短縮化し得るようになされている。
ところが、本発明の可変焦点距離レンズ系において、第4レンズ群の屈折力を強め過ぎると、射出瞳位置を適切な位置とすることができない、或は、第2レンズ群の屈折力を弱め過ぎると、広角端状態において第1レンズ群に入射する軸外光束が光軸から離れて、レンズ径の小径化を損ねてしまうという問題があった。
以上のことから、本発明の可変焦点距離レンズ系においては、第1の特徴として、広角端状態における第2レンズ群と第3レンズ群との間隔を適切に設定し、第2の特徴として、第2レンズ群の焦点距離と第4レンズ群の焦点距離を適切に設定するようになされている。
これにより本発明の可変焦点距離レンズ系においては、レンズ位置状態に拘わらず高い光学性能を得、小型・高倍率でありながら高性能化を図るようになされている。
具体的には、本発明の可変焦点距離レンズ系においては、物体側から順に、正屈折力を有する第1レンズ群、負屈折力を有する第2レンズ群、正屈折力を有する第3レンズ群、負屈折力を有する第4レンズ群、正屈折力を有する第5レンズ群を有し、さらに第3レンズ群の物体側の近傍に配置されレンズ位置状態が変化する際に第3レンズ群と一体的に移動する開口絞りを有し、広角端状態から望遠端状態までレンズ位置状態が変化する際、第1レンズ群と第2レンズ群との空気間隔が増大し、第2レンズ群と第3レンズ群との空気間隔が減少し、第3レンズ群と第4レンズ群との空気間隔が変化し、第4レンズ群と第5レンズ群との空気間隔が増大して、第1レンズ群が単調に物体側へ移動して、第2レンズ群が光軸方向に固定され、第3レンズ群及び第4レンズ群が物体側へ移動するとともに、以下の条件式(1)乃至(2)を満足するように構成されている。
(1)0.2<D23w/ft<0.4
(2)0.1<f2/f4<0.4
但し、
D23w:広角端状態における第2レンズ群と開口絞りとの空気間隔
ft :望遠端状態におけるレンズ系全体の焦点距離
f2 :第2レンズ群の焦点距離
f4 :第4レンズ群の焦点距離
とする。
この条件式(1)は、広角端状態における第2レンズ群と第3レンズ群との空気間隔を規定するものであり、上述した第1の特徴を数値限定することにより表したものである。
すなわち望遠端状態では、第2レンズ群と第3レンズ群とが隣接し、また、レンズ位置状態が変化する際に第2レンズ群が光軸方向に固定されているため、広角端状態における第2レンズ群と第3レンズ群との空気間隔が、実質的にレンズ位置状態の変化に伴う第3レンズ群の移動量と等しくなる。
この条件式(1)の上限値を上回った場合、本発明の可変焦点距離レンズ系では、第1レンズ群及び第2レンズ群を通過する軸外光束が光軸から離れてしまう。特に、広角端状態において画面周縁部に急激にコマ収差が発生し、所定の光学性能を得ることが困難になる。
また、この条件式(1)の下限値を下回った場合、第2レンズ群を通過する軸外光束が光軸に近づくため、軸上収差と軸外収差とを同時に補正することが困難になり、その結果、画角の変化に伴って発生する軸外収差の変動を良好に補正することができない。
なお、本発明の可変焦点距離レンズ系では、条件式(1)の上限値以下であれば、充分なる光学性能を得ることが可能であるが、更に、第1レンズ群を通過する軸外光束を光軸に近付けて、レンズ径の小型化を図るには上限値を「0.35」とすることが望ましい。
また条件式(2)は、第2レンズ群の焦点距離と第4レンズ群の焦点距離を適切に設定するものであり、上述した第2の特徴を数値限定することにより表したものである。
この条件式(2)の下限値を下回った場合、本発明の可変焦点距離レンズ系では、第2レンズ群の屈折力が強まるか、或は第4レンズ群の屈折力が弱まる。前者の場合、本発明の可変焦点距離レンズ系では、上述した通り、レンズ系全長が長くなり、その結果、充分な小型化が図れなくなってしまう。
一方、後者の場合、本発明の可変焦点距離レンズ系では、広角端状態において発生する負の歪曲収差を良好に補正できなくなり、良好なる結像性能を得ることが出来なくなってしまう。
また、この条件式(2)の上限値を上回った場合、第2レンズ群の屈折力が弱まるか、或は第4レンズ群の屈折力が強まる。前者の場合、本発明の可変焦点距離レンズ系では、第2レンズ群の屈折力が弱くなって、所定の変倍比を得るのに必要な第1レンズ群及び第3レンズ群の移動量が多くなる。
その結果、広角端状態において、移動量の多くなった第1レンズ群と、光軸方向に固定された第2レンズ群とが干渉してしまう、或は望遠端状態において、光軸方向に固定された第2レンズ群と、移動量の多くなった第3レンズ群とが干渉してしまう。そうなると、第2レンズ群を光軸方向に固定しておくことが出来なくなり、本発明の主旨に反することになる。
一方、後者の場合、本発明の可変焦点距離レンズ系では、望遠端状態におけるレンズ系全長を短縮することができず、充分な小型化を図ることができない。
ところで本発明の可変焦点距離レンズ系における第4レンズ群は、第1レンズ群乃至第3レンズ群により形成される被写体像を拡大する作用を成している。このため、本発明の可変焦点距離レンズ系では、第4レンズ群の負屈折力が強まるに連れて、第1レンズ群乃至第3レンズ群による被写体像の拡大率が高まることになる。
その結果、本発明の可変焦点距離レンズ系では、第1レンズ群乃至第3レンズ群において、製造時に発生する微小なる偏心に伴う像の劣化も拡大されてしまい、このため量産時に安定した光学品質を維持できなくなってしまう。
そこで本発明の可変焦点距離レンズ系では、レンズ系全長の短縮化を維持しながら、量産時に安定した光学品質を得るためには、条件式(2)の上限値を「0.3」とすることが望ましい。
また、本発明の可変焦点距離レンズ系においては、レンズ位置状態の変化に伴う軸外収差の変動を抑えて、一段と高い光学性能を得るために、以下の条件式(3)を満足することが望ましい。
(3)0.3<|f2|/(fw・ft)1/2<0.55
但し、
f2 :第2レンズ群の焦点距離
fw :広角端状態におけるレンズ系全体での焦点距離
ft :望遠端状態におけるレンズ系全体での焦点距離
とする。
ここで条件式(3)は、第2レンズ群の屈折力を規定する条件式である。この条件式(3)の下限値を下回った場合、本発明の可変焦点距離レンズ系では、第2レンズ群の屈折力が負に強まるため、レンズ位置状態が変化する際に、第2レンズ群単独で発生する軸外収差の変動を良好に補正することが困難になってしまう。
逆に、条件式(3)の上限値を上回った場合、本発明の可変焦点距離レンズ系では、所定の変倍比を得るのに必要な第1レンズ群や第3レンズ群の移動量が多くなってしまうため、レンズ系全長の短縮化を充分に図れなくなってしまう。
また本発明の可変焦点距離レンズ系では、第3レンズ群と第4レンズ群との間隔を変化させることにより、レンズ位置状態の変化に伴う軸外収差の変動を抑えているが、小型化と高性能化とのバランスを図るために以下の条件式(4)を満足することが望ましい。
(4)0.3<Δ4/Δ3<0.9
但し、
Δ4 :広角端状態から望遠端状態までの第4レンズ群の移動量
Δ3 :広角端状態から望遠端状態までの第3レンズ群の移動量
とする。
ここで条件式(4)は、第3レンズ群と第4レンズ群との空気間隔の変化量を規定するものである。この条件式(4)の下限値を下回った場合、本発明の可変焦点距離レンズ系では、第4レンズ群の変倍作用が弱くなるため、他のレンズ群による変倍作用を強くする必要が生じる。その結果、本発明の可変焦点距離レンズ系では、レンズ位置状態の変化に伴う軸外収差の変動が大きくなってしまうので、好ましくない。
逆に、条件式(4)の上限値を上回った場合、本発明の可変焦点距離レンズ系では、望遠端状態において第3レンズ群と第4レンズ群との空気間隔が狭まるためバックフォーカスが伸びてレンズ系全長が大型化してしまう。
更に本発明の可変焦点距離レンズ系では、レンズ位置状態の変化に伴う軸外収差の変動を抑えると同時に、第2レンズ群の厚みを減らすために、当該第2レンズ群が、物体側から順に、像側に凹面を向けた負レンズL21、両凹形状の負レンズL22、物体側に凸面を向けた正レンズL23の3枚レンズで構成されるとともに、以下の条件式(5)を満足することが望ましい。
(5)1<|f21|/fw<1.7
但し、
f21 :負レンズL21の焦点距離
とする。
ここで条件式(5)は、第2レンズ群中に配置される負レンズL21の屈折力を規定するものである。この条件式(5)の下限値を下回った場合、本発明の可変焦点距離レンズ系では、第2レンズ群の負レンズL21に入射する軸外光束が光軸に近づくため、レンズ径の小型化が可能となる。
しかしながら、この場合、本発明の可変焦点距離レンズ系では、広角端状態において画角の変化に伴って発生するコマ収差の変動が極めて大きくなり、高性能化を充分に図ることが出来なくなってしまう。
逆に、条件式(5)の上限値を上回った場合、本発明の可変焦点距離レンズ系では、広角端状態における第2レンズ群の負レンズL21に入射する軸外光束が光軸から離れる、すなわち、第1レンズ群に入射する軸外光束が光軸から大きく離れる。このため、本発明の可変焦点距離レンズ系では、第1レンズ群において発生するコマ収差が極めて大きくなり、高性能化を充分に図ることが出来なくなってしまう。
更に本発明の可変焦点距離レンズ系では、各レンズ群のレンズ径を小型化して、レンズ位置状態の変化に伴う軸外収差の変動を良好に補正するため、開口絞りを第3レンズ群近傍に配置することが望ましい。
一般に、レンズ位置状態が変化する際、開口絞りとの距離を変化させるレンズ群が増えるほど、各レンズ群を通過する軸外光束の高さが変化し易い。そして、その高さを利用して、レンズ位置状態の変化に伴う軸外収差の変動を補正するが、軸外光束の高さを積極的に変化させることにより、一段と良好に補正することが可能となる。
特に、本発明の可変焦点距離レンズ系では、第3レンズ群近傍に開口絞りを配置すると、当該開口絞りの前後にそれぞれ複数の可動レンズ群をバランス良く配置することができるため、コマ収差を一段と良好に補正することが可能となって、高性能化を図り得るようになされている。
また本発明の可変焦点距離レンズ系では、開口絞りがレンズ全系の中央付近に位置するため、各レンズ群を通過する軸外光束の高さが極端に離れないようにでき、その結果、レンズ径の小型化を図り得るようになされている。
なお、本発明の可変焦点距離レンズ系では、第3レンズ群の物体側に開口絞りを配置すると共に、レンズ位置状態が変化する際に、開口絞りと第3レンズ群とを一体的に移動させることにより、レンズ径の更なる小型化と鏡筒構造の簡略化を図り得るようになされている。
因みに本発明の可変焦点距離レンズ系では、第3レンズ群の物体側に開口絞りを配置することにより、特に、広角端状態で第1レンズ群を通過する軸外光束の高さを光軸に近づけて小型化を図ることができる。
同時に、本発明の可変焦点距離レンズ系は、広角端状態で第1レンズ群を通過する軸外光束が光軸に近づくため、画面周辺部で発生するコマ収差を抑えることが可能となり、高性能化を図ることができる。
ところで、無限遠に位置する被写体から近距離に位置した被写体まで合焦を行う(以下、これを近接合焦と呼ぶ。)際、本発明の可変焦点距離レンズ系においては、第5レンズ群を光軸方向へ移動させることが望ましい。
これは、第5レンズ群は像面位置に近い場所に配置され、軸上光束と軸外光束とが離れた状態で通過するため、軸上光束と軸外光束とを独立して補正することが可能であり、被写体位置の変化に伴う軸外収差の変動を補正するのに適しているからである。
更に本発明の可変焦点距離レンズ系では、レンズ径の小型化とレンズ系全長の短縮化とをバランス良く達成するため、以下の条件式(6)を満足することが望ましい。
(6)1.8<f1/(fw・ft)1/2<2.7
但し、
f1 :第1レンズ群の焦点距離
fw :広角端状態におけるレンズ系全体での焦点距離
ft :望遠端状態におけるレンズ系全体での焦点距離
とする。
ここで条件式(6)は、第1レンズ群を規定するものである。この条件式(6)の上限値を上回った場合、本発明の可変焦点距離レンズ系では、第1レンズ群による収斂作用が弱まるため、望遠端状態におけるレンズ系全長が大型化してしまう。
逆に、この条件式(6)の下限値を下回った場合、本発明の可変焦点距離レンズ系では、第1レンズ群による収斂作用が強まり、広角端状態における軸外光束が光軸から離れてレンズ径が大型化してしまう。
ところで、第1レンズ群の屈折力が強くなるほど、望遠端状態において第1レンズ群単独で発生する高次の球面収差を良好に補正できなくなってしまう。この場合、開口絞りを可変絞りとして、レンズ位置状態が変化する際に開放径を変化させることも可能であるが、低照度の被写体を撮影する際にノイズが増大する等の問題が発生してしまう。
このため、本発明の可変焦点距離レンズ系では、第1レンズ群単独で発生する高次の球面収差を更に良好に補正して、望遠端状態における開放F値を明るくするには、条件式(6)の下限値を「2.0」とすることが望ましい。
さらに本発明の可変焦点距離レンズ系では、第1レンズ群単独で発生する球面収差を補正して、特に、望遠端状態で良好なる光学性能を実現するために、第1レンズ群が像側に凹面を向けた負レンズと物体側に凸面を向けた正レンズとの接合レンズにより構成されることが望ましい。
なお、この接合レンズは、負レンズと正レンズとに分離することも可能であり、これにより本発明の可変焦点距離レンズ系では、第1レンズ群で発生する色収差や球面収差を良好に補正することもできる。
しかしながら、本発明の可変焦点距離レンズ系では、負レンズと正レンズとに分離した場合、製造時に発生する微小なる偏心によっても光学性能が著しく劣化してしまうため、接合レンズの方が望ましい。
さらに本発明の本発明の可変焦点距離レンズ系では、第1レンズ群が上述したレンズ構成の基で、以下の条件式(7)を満足することにより、広角端状態における画角を広げた際にも充分なる光学性能を得るようになされている。
(7)0.01<fw/R13<0.12
但し、
R13 :第1レンズ群の最も像側のレンズ面の曲率半径
とする。
ここで条件式(7)は、第1レンズ群の形状を規定するものである。この条件式(7)の上限値を上回った場合、本発明の可変焦点距離レンズ系では、望遠端状態で第1レンズ群により発生する負の球面収差を良好に補正することが困難になって、充分な高性能化を図ることができない。
逆に、この条件式(7)の下限値を下回った場合、本発明の可変焦点距離レンズ系では、第1レンズ群に入射する軸外光束が光軸から離れ、第1レンズ群を射出する軸外光束が急激に屈折された状態となってしまう。
その結果、本発明の可変焦点距離レンズ系では、製造時に発生する第1レンズ群と第2レンズ群との相互偏心による光学性能の低下を充分に抑えられず、安定した光学品質を確保することが困難になってしまう。
また本発明の可変焦点距離レンズ系では、非球面レンズを用いることにより一段と高い光学性能を実現するようになされている。特に、本発明の可変焦点距離レンズ系では、第2レンズ群に非球面レンズを用いることにより、広角端状態において発生する画角によるコマ収差の変動を良好に補正することが可能となる。
また本発明の可変焦点距離レンズ系では、第3レンズ群乃至第5レンズ群に非球面レンズを導入することにより、中心性能の更なる高性能化が可能となる。更に本発明の可変焦点距離レンズ系では、複数の非球面を1つの光学系に用いることにより、一段と高い光学性能が得られることは言うまでもない。
加えて本発明の可変焦点距離レンズ系では、レンズ系を構成するレンズ群のうち、1つのレンズ群、あるいは、1つのレンズ群を構成する一部のレンズを光軸に対してほぼ垂直な方向へシフトさせることにより、像をシフトさせることが可能である。
そして本発明の可変焦点距離レンズ系では、カメラの倒れを検出する検出系、当該検出系からのブレ情報に基づいて移動量を算出する演算系、当該演算系からの移動量情報に従って所定のレンズをシフトさせる駆動系と、当該レンズとを組み合わせるようになされている。
これにより本発明の可変焦点距離レンズ系では、シャッターレリーズ時に生じるカメラブレによる像ブレをレンズシフトによって相殺又は緩和させ得るようになされている。特に本発明の可変焦点距離レンズ系では、第3レンズ群を光軸にほぼ垂直な方向へシフトさせる際に生じる性能変化を小さくすることができる。
さらに本発明の可変焦点距離レンズ系では、第3レンズ群の近傍に開口絞りを配置した場合、軸外光束が光軸付近を通過するため、第3レンズ群を光軸にほぼ垂直な方向へシフトさせた際に生じる軸外収差の変動を抑えることが可能となる。
なお、本発明の可変焦点距離レンズ系では、レンズ系の像側に所謂モアレ縞の発生を防ぐためにローパスフィルタを配置したり、受光素子の分光感度特性に応じて赤外カットフィルタを配置することも勿論可能であることは言うまでもない。
<2.数値実施例>
次に、本発明の可変焦点距離レンズ系に対して具体的な数値を適用した数値実施例について、以下、図面及び図表を用いて説明する。ここで、各数値実施例において、非球面は次式の数1で表される。
x=cy2/(1+(1−(1+k)c2y2)1/2)+Ay4+By6+
……(1)
ここで、yは光軸からの高さ、xはサグ量、cは曲率、kは円錐定数、A,B,……は非球面係数である。
図1において、1は全体として本発明の各数値実施例による可変焦点距離レンズ系の屈折力配分を示しており、物体側から順に、正屈折力を有する第1レンズ群G1、負屈折力を有する第2レンズ群G2、正屈折力を有する第3レンズ群G3、負屈折力を有する第4レンズ群G4、正屈折力を有する第5レンズ群G5によって構成されている。
この可変焦点距離レンズ系1では、広角端状態から望遠端状態への変倍に際して、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との空気間隔が増大し、第2レンズ群G2及び第3レンズ群G3との空気間隔が減少して、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との空気間隔が増大する。
このとき可変焦点距離レンズ系1では、第1レンズ群G1、第3レンズ群G3及び第4レンズ群G4が物体側へ移動するのに対して第2レンズ群G2が光軸方向に固定され、第5レンズ群G5が各レンズ群の移動に伴う像面位置の変動を補償するように移動すると共に、近距離合焦時に物体側へ移動するようになされている。
[2−1.第1数値実施例]
図2において、11は全体として第1数値実施例における可変焦点距離レンズ系を示し、物体側から順に、正屈折力を有する第1レンズ群G1、負屈折力を有する第2レンズ群G2、正屈折力を有する第3レンズ群G3、負屈折力を有する第4レンズ群G4、正屈折力を有する第5レンズ群G5によって構成されている。
この可変焦点距離レンズ系11において、第1レンズ群G1は、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の負レンズと物体側に凸面を向けた正レンズとの接合レンズL1により構成されている。
また可変焦点距離レンズ系11において、第2レンズ群G2は、像側に凹面を向けたメニスカス形状の負レンズL21、両凹形状の負レンズL22、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の正レンズL23により構成されている。
また可変焦点距離レンズ系11において、第3レンズ群G3は、両凸形状の正レンズL3により構成され、第4レンズ群G4は、物体側に凹面を向けたメニスカス形状の正レンズと物体側に凹面を向けたメニスカス形状の負レンズとの接合レンズL4により構成されている。
さらに可変焦点距離レンズ系11において、第5レンズ群G5は、両凸形状の正レンズL5により構成されている。
なお可変焦点距離レンズ系11は、開口絞りSが第3レンズ群G3の近傍であって、かつ物体側に配置されていると共に、第5レンズ群G5と像面IMGとの間には、像面IMGを保護するためのシールガラスSGが配置されている。
このように可変焦点距離レンズ系11では、上述したようなレンズエレメント構成とすることによって、高変倍比化及び広角化を実現すると共に、レンズ系の諸収差を良好に補正し得るようになされている。
以下の表1に、本発明における第1数値実施例の諸元値を掲げる。ここで第1数値実施例における諸元表中のfは焦点距離、FNOはFナンバー、2ωは画角を表し、屈折率はd線(波長587.6nm)に対する値である。なお、表1中で曲率半径0とは平面を意味する。
なお、第4面、第5面、第11面、第12面、第15面、第16面は非球面形状であり、その非球面係数は表2に示す通りである。なお、例えば0.26029E−05とは、0.26029×10−5を意味する。
続いて、可変焦点距離レンズ系11においてレンズ位置状態が変化する際の可変間隔を以下の表3に示す。
そして、以下の表4に第1数値実施例の可変焦点距離レンズ系11における条件式対応値を示す。
続いて、図3は第1数値実施例の無限遠合焦状態での諸収差図をそれぞれ示し、図3(A)では広角端状態(f=1.000)、図3(B)では中間焦点距離状態(f=3.117)、図3(C)では望遠端状態(f=6.592)における諸収差図を示す。
この図3において、球面収差図の実線は球面収差を示し、非点収差図中の実線はサジタル像面、破線はメリディオナル像面を示し、歪曲収差図中の実線は歪曲収差を示し、横収差図のAは画角、yは像高をそれぞれ示している。この各収差図から、第1数値実施例の可変焦点距離レンズ系11では諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有していることが明らかである。
[2−2.第2数値実施例]
図4において、12は全体として第2数値実施例における可変焦点距離レンズ系を示し、物体側から順に、正屈折力を有する第1レンズ群G1、負屈折力を有する第2レンズ群G2、正屈折力を有する第3レンズ群G3、負屈折力を有する第4レンズ群G4、正屈折力を有する第5レンズ群G5によって構成されている。
この可変焦点距離レンズ系12において、第1レンズ群G1は、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の負レンズと物体側に凸面を向けた正レンズとの接合レンズL1により構成されている。
また可変焦点距離レンズ系12において、第2レンズ群G2は、像側に凹面を向けたメニスカス形状の負レンズL21、両凹形状の負レンズL22、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の正レンズL23により構成されている。
また可変焦点距離レンズ系12において、第3レンズ群G3は、両凸形状の正レンズL3により構成され、第4レンズ群G4は、物体側に凹面を向けたメニスカス形状の正レンズと物体側に凹面を向けたメニスカス形状の負レンズとの接合レンズL4により構成されている。
さらに可変焦点距離レンズ系12において、第5レンズ群G5は、両凸形状の正レンズL5により構成されている。
なお可変焦点距離レンズ系12は、開口絞りSが第3レンズ群G3の近傍であって、かつ物体側に配置されていると共に、第5レンズ群G5と像面IMGとの間には、IRカットフィルタCFと、像面IMGを保護するためのシールガラスSGが配置されている。
このように可変焦点距離レンズ系12では、上述したようなレンズエレメント構成とすることによって、高変倍比化及び広角化を実現すると共に、レンズ系の諸収差を良好に補正し得るようになされている。
以下の表5に、本発明における第2数値実施例の諸元値を掲げる。ここで第2数値実施例における諸元表中のfは焦点距離、FNOはFナンバー、2ωは画角を表し、屈折率はd線(波長587.6nm)に対する値である。なお、表5中で曲率半径0とは平面を意味する。
なお、第5面、第11面、第12面、第15面、第16面は非球面形状であり、その非球面係数は表6に示す通りである。なお、例えば0.26029E−05とは、0.26029×10−5を意味する。
続いて、可変焦点距離レンズ系12においてレンズ位置状態が変化する際の可変間隔を以下の表7に示す。
そして、以下の表8に第2数値実施例の可変焦点距離レンズ系12における条件式対応値を示す。
続いて、図5は第2数値実施例の無限遠合焦状態での諸収差図をそれぞれ示し、図5(A)では広角端状態(f=1.000)、図5(B)では中間焦点距離状態(f=2.525)、図5(C)では望遠端状態(f=5.651)における諸収差図を示す。
この図5において、球面収差図の実線は球面収差を示し、非点収差図中の実線はサジタル像面、破線はメリディオナル像面を示し、歪曲収差図中の実線は歪曲収差を示し、横収差図のAは画角、yは像高をそれぞれ示している。この各収差図から、第2数値実施例の可変焦点距離レンズ系12では諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有していることが明らかである。
[2−3.第3数値実施例]
図6において、13は全体として第3数値実施例における可変焦点距離レンズ系を示し、物体側から順に、正屈折力を有する第1レンズ群G1、負屈折力を有する第2レンズ群G2、正屈折力を有する第3レンズ群G3、負屈折力を有する第4レンズ群G4、正屈折力を有する第5レンズ群G5によって構成されている。
この可変焦点距離レンズ系13において、第1レンズ群G1は、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の負レンズと物体側に凸面を向けた正レンズとの接合レンズL1により構成されている。
また可変焦点距離レンズ系13において、第2レンズ群G2は、像側に凹面を向けたメニスカス形状の負レンズL21、両凹形状の負レンズL22、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の正レンズL23により構成されている。
また可変焦点距離レンズ系13において、第3レンズ群G3は、両凸形状の正レンズと物体側に凹面を向けたメニスカス形状の負レンズとの接合正レンズL3により構成されている。
さらに可変焦点距離レンズ系13において、第4レンズ群G4は、物体側に凹面を向けたメニスカス形状の正レンズと物体側に凹面を向けたメニスカス形状の負レンズとの接合レンズL4により構成されている。
さらに可変焦点距離レンズ系13において、第5レンズ群G5は、両凸形状の正レンズL5により構成されている。
なお可変焦点距離レンズ系13は、開口絞りSが第3レンズ群G3の近傍であって、かつ物体側に配置されていると共に、第5レンズ群G5と像面IMGとの間には、IRカットフィルタCFと、像面IMGを保護するためのシールガラスSGが配置されている。
このように可変焦点距離レンズ系13では、上述したようなレンズエレメント構成とすることによって、高変倍比化及び広角化を実現すると共に、レンズ系の諸収差を良好に補正し得るようになされている。
以下の表9に、本発明における第3数値実施例の諸元値を掲げる。ここで第3数値実施例における諸元表中のfは焦点距離、FNOはFナンバー、2ωは画角を表し、屈折率はd線(波長587.6nm)に対する値である。なお、表5中で曲率半径0とは平面を意味する。
なお、第5面、第11面、第16面、第17面は非球面形状であり、その非球面係数は表10に示す通りである。なお、例えば0.26029E−05とは、0.26029×10−5を意味する。
続いて、可変焦点距離レンズ系13においてレンズ位置状態が変化する際の可変間隔を以下の表11に示す。
そして、以下の表12に第3数値実施例の可変焦点距離レンズ系13における条件式対応値を示す。
続いて、図7は第3数値実施例の無限遠合焦状態での諸収差図をそれぞれ示し、図7(A)では広角端状態(f=1.000)、図7(B)では中間焦点距離状態(f=2.230)、図7(C)では望遠端状態(f=5.180)における諸収差図を示す。
この図7において、球面収差図の実線は球面収差を示し、非点収差図中の実線はサジタル像面、破線はメリディオナル像面を示し、歪曲収差図中の実線は歪曲収差を示し、横収差図のAは画角、yは像高をそれぞれ示している。この各収差図から、第3数値実施例の可変焦点距離レンズ系13では諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有していることが明らかである。
[2−4.第4数値実施例]
図8において、14は全体として第4数値実施例における可変焦点距離レンズ系を示し、物体側から順に、正屈折力を有する第1レンズ群G1、負屈折力を有する第2レンズ群G2、正屈折力を有する第3レンズ群G3、負屈折力を有する第4レンズ群G4、正屈折力を有する第5レンズ群G5によって構成されている。
この可変焦点距離レンズ系14において、第1レンズ群G1は、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の負レンズと物体側に凸面を向けた正レンズとの接合レンズL11、及びその像側に配置され物体側に凸面を向けたメニスカス形状の正レンズL12により構成されている。
また可変焦点距離レンズ系14において、第2レンズ群G2は、像側に凹面を向けたメニスカス形状の負レンズL21、両凹形状の負レンズL22、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の正レンズL23により構成されている。
また可変焦点距離レンズ系14において、第3レンズ群G3は、両凸形状の正レンズと物体側に凹面を向けたメニスカス形状の負レンズとの接合正レンズL3により構成されている。
さらにまた可変焦点距離レンズ系14において、第4レンズ群G4は、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の負レンズL4により構成されている。
さらに可変焦点距離レンズ系14において、第5レンズ群G5は、両凸形状の正レンズL5により構成されている。
なお可変焦点距離レンズ系14は、開口絞りSが第3レンズ群G3の近傍であって、かつ物体側に配置されていると共に、第5レンズ群G5と像面IMGとの間には、IRカットフィルタCFと、像面IMGを保護するためのシールガラスSGが相互に接合された状態で配置されている。
このように可変焦点距離レンズ系14では、上述したようなレンズエレメント構成とすることによって、高変倍比化及び広角化を実現すると共に、レンズ系の諸収差を良好に補正し得るようになされている。
以下の表13に、本発明における第4数値実施例の諸元値を掲げる。ここで第4数値実施例における諸元表中のfは焦点距離、FNOはFナンバー、2ωは画角を表し、屈折率はd線(波長587.6nm)に対する値である。なお、表13中で曲率半径0とは平面を意味する。
なお、第7面、第8面、第13面、第18面、第19面は非球面形状であり、その非球面係数は表14に示す通りである。なお、例えば0.26029E−05とは、0.26029×10−5を意味する。
続いて、可変焦点距離レンズ系14においてレンズ位置状態が変化する際の可変間隔を以下の表15に示す。
そして、以下の表16に第4数値実施例の可変焦点距離レンズ系14における条件式対応値を示す。
続いて、図9は第4数値実施例の無限遠合焦状態での諸収差図をそれぞれ示し、図9(A)では広角端状態(f=1.000)、図9(B)では中間焦点距離状態(f=2.905)、図9(C)では望遠端状態(f=11.283)における諸収差図を示す。
この図9において、球面収差図の実線は球面収差を示し、非点収差図中の実線はサジタル像面、破線はメリディオナル像面を示し、歪曲収差図中の実線は歪曲収差を示し、横収差図のAは画角、yは像高をそれぞれ示している。この各収差図から、第4数値実施例の可変焦点距離レンズ系14では諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有していることが明らかである。
<3.撮像装置及びデジタルスチルカメラ>
[3−1.撮像装置の構成]
次に、本発明の撮像装置について説明する。この撮像装置は、本発明の可変焦点距離レンズ系1(又は11、12、13、14)と、当該可変焦点距離レンズ系1によって形成された光学像を電気的信号に変換するための例えばCCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ等でなる撮像素子とを具えている。
この可変焦点距離レンズ系1(図1)は、物体側から順に、正屈折力を有する第1レンズ群G1、負屈折力を有する第2レンズ群G2、正屈折力を有する第3レンズ群G3、負屈折力を有する第4レンズ群G4、正屈折力を有する第5レンズ群G5を有している。
具体的には、広角端状態から望遠端状態までレンズ位置状態が変化する際、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との空気間隔が増大し、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との空気間隔が減少し、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との空気間隔が変化し、第4レンズ群G4と第5レンズ群G5との空気間隔が増大して、第1レンズ群G1が単調に物体側へ移動して、第2レンズ群G2が光軸方向に固定され、第3レンズ群G3及び第4レンズ群G4が物体側へ移動する構成である。
そして、この可変焦点距離レンズ系1は、第1レンズ群G1、第3レンズ群G3、第4レンズ群G4の移動に伴う像面位置の変動を補償するように第5レンズ群G5を別駆動により移動させるようになされている。
また、この可変焦点距離レンズ系1は、広角端状態から望遠端状態まで第2レンズ群G2を光軸方向に固定することにより、可動レンズ群を5個から4個に減らしながらも、可変間隔を増やすことができるので、その結果、レンズ系全体を簡易な構成とした小型化を達成すると共に高変倍比化を達成するようになされている。
この可変焦点距離レンズ系1では、広角端状態において、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2とを近接して配置することにより、第1レンズ群G1に入射する軸外光束が光軸から離れないようにすることができるので、レンズ径の小型化を図っている。
これは、第1レンズ群G1が正屈折力を有するため光を強く曲げ、なす角度が大きくなるので、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との距離が離れていればいるほど、第1レンズ群G1を通過した軸外光束が外側に拡がってしまうからである。
同時に、本発明の可変焦点距離レンズ系1では、望遠端状態へ向かってレンズ位置状態が変化する際、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との空気間隔を広げることにより、第1レンズ群G1を通過する軸外光束が光軸から離れ、その高さの変化を利用してレンズ位置状態の変化に伴う軸外収差の変動を良好に補正するようになされている。
特に、可変焦点距離レンズ系1では、レンズ全長は広角端状態で短くして、望遠端状態で長くすることにより、画角の広い広角端状態で第1レンズ群G1に入射する軸外光束が光軸から離れ過ぎないようにしている。
また可変焦点距離レンズ系1では、広角端状態で第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との空気間隔を広げることにより、第2レンズ群G2を通過する軸外光束が光軸から離れるようにでき、軸上収差と軸外収差とを独立して補正し得るようになされている。
さらに可変焦点距離レンズ系1では、望遠端状態へ向かってレンズ位置状態が変化する際、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との空気間隔を狭めることにより、第2レンズ群G2を通過する軸外光束が光軸に近づくため、レンズ位置状態の変化に伴う軸外収差の変動を良好に補正でき、高性能化を図ることができるようになされている。
このとき可変焦点距離レンズ系1では、第2レンズ群G2を光軸方向へ固定すると同時に、レンズ位置状態の変化に伴う軸外収差の変動を良好に補正するために、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との空気間隔を変化させている。
さらに可変焦点距離レンズ系1では、レンズ位置状態の変化に合わせて、像面位置を補償するように第5レンズ群G5を移動させることにより、レンズ位置状態の変化に伴う軸外収差の変動を一段と良好に補正している。
なお可変焦点距離レンズ系1では、第3レンズ群G3の像側に負屈折力を有する第4レンズ群G4と、正屈折力を有する第5レンズ群G5とを配置しているが、第2レンズ群G2及び第4レンズ群G4の2つの負レンズ群を配置することにより、レンズ系全体での屈折力配置を対称型に近づけ、特に広角端状態で発生し易い負の歪曲収差や倍率色収差を良好に補正している。
ところが可変焦点距離レンズ系1においては、第2レンズ群G2を光軸方向へ固定するため、ズーム軌道の選択の自由度が低下することになり、2つの問題点が生じる。
1つ目の問題点は、レンズ位置状態が変化する際に発生する諸収差の変動を良好に補正できないことであり、2つ目の問題点は小型化を充分に図れないことである。一般に小型化とは、レンズ径の小径化とレンズ全長の短縮化に分類されるが、本発明においてはレンズ全長の短縮化が問題となる。
1つ目の問題点に対して可変焦点距離レンズ系1は、第2レンズ群G2の変倍作用を弱めることにより、諸収差の変動を良好に補正している。しかしながら、第2レンズ群G2の変倍作用を単純に弱めただけでは、レンズ系全体の変倍比が低下してしまうため、可変焦点距離レンズ系1は第3レンズ群G3の変倍作用を高めることにより所定の変倍比を得るようになされている。
より具体的には、所定の変倍比を得るために、第3レンズ群G3の移動量を増やすか、第3レンズ群G3の屈折力を強めれば良いが、屈折力を強めると第3レンズ群G3において発生する負の球面収差を良好に補正できなくなってしまう。
そこで可変焦点距離レンズ系1は、第3レンズ群G3の移動量を増やすことにより変倍作用を高めて、所定の変倍比を得ながら高い光学性能を達成するようになされている。なお、変倍作用を高めるとは、広角端状態と望遠端状態とにおける横倍率の変化量を大きくするということである。
一方、第2の問題点に対して可変焦点距離レンズ系1は、負屈折力を有する第2レンズ群G2の屈折力を弱めることにより、発散作用が弱まり、その結果、レンズ系全体の長さの短縮化を図るようになされている。
なお、可変焦点距離レンズ系1においては、一段と効果的に小型化を図るため、負屈折力を有する第2レンズ群G2の屈折力を弱め、かつ負屈折力を有する第4レンズ群G4の屈折力を強めることにより、第1レンズ群G1乃至第3レンズ群G3における焦点距離を更に短縮化している。
ところが、可変焦点距離レンズ系1において、第4レンズ群G4の屈折力を強め過ぎると、射出瞳位置を適切な位置とすることができない、或は、第2レンズ群G2の屈折力を弱め過ぎると、広角端状態において第1レンズ群G1に入射する軸外光束が光軸から離れて、レンズ径の小径化を損ねてしまうという問題があった。
以上のことから、可変焦点距離レンズ系1においては、第1の特徴として、広角端状態における第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔を適切に設定し、第2の特徴として、第2レンズ群G2の焦点距離と第4レンズ群G4の焦点距離を適切に設定するようになされている。
これにより可変焦点距離レンズ系1においては、レンズ位置状態に拘わらず高い光学性能を得、小型・光倍率でありながら高性能化を図るようになされている。
具体的には、可変焦点距離レンズ系1においては、物体側から順に、正屈折力を有する第1レンズ群G1、負屈折力を有する第2レンズ群G2、正屈折力を有する第3レンズ群G3、負屈折力を有する第4レンズ群G4、正屈折力を有する第5レンズ群G5を有し、さらに第3レンズ群G3の物体側の近傍に配置されレンズ位置状態が変化する際に第3レンズ群と一体的に移動する開口絞りを有し、広角端状態から望遠端状態までレンズ位置状態が変化する際、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との空気間隔が増大し、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との空気間隔が減少し、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との空気間隔が変化し、第4レンズ群G4と第5レンズ群G5との空気間隔が増大して、第1レンズ群G1が単調に物体側へ移動して、第2レンズ群G2が光軸方向に固定され、第3レンズ群G3及び第4レンズ群G4が物体側へ移動するとともに、以下の条件式(1)乃至(2)を満足するように構成されている。
(1)0.2<D23w/ft<0.4
(2)0.1<f2/f4<0.4
但し、
D23w:広角端状態における第2レンズ群G2と開口絞りとの空気間隔
ft :望遠端状態におけるレンズ系全体の焦点距離
f2 :第2レンズ群G2の焦点距離
f4 :第4レンズ群G4の焦点距離
とする。
この条件式(1)は、広角端状態における第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との空気間隔を規定するものであり、上述した第1の特徴を数値限定することにより表したものである。
すなわち望遠端状態では、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3とが隣接し、また、レンズ位置状態が変化する際に第2レンズ群G2が光軸方向に固定されているため、広角端状態における第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との空気間隔が、実質的にレンズ位置状態の変化に伴う第3レンズ群G3の移動量と等しくなる。
この条件式(1)の上限値を上回った場合、本発明の可変焦点距離レンズ系1では、第1レンズ群G1及び第2レンズ群G2を通過する軸外光束が光軸から離れてしまう。特に、広角端状態において画面周縁部に急激にコマ収差が発生し、所定の光学性能を得ることが困難になる。
また、この条件式(1)の下限値を下回った場合、第2レンズ群G2を通過する軸外光束が光軸に近づくため、軸上収差と軸外収差とを同時に補正することが困難になり、その結果、画角の変化に伴って発生する軸外収差の変動を良好に補正することができない。
なお、可変焦点距離レンズ系1では、条件式(1)の上限値以下であれば、充分なる光学性能を得ることが可能であるが、更に、第1レンズ群G1を通過する軸外光束を光軸に近付けて、レンズ径の小型化を図るには上限値を「0.35」とすることが望ましい。
また条件式(2)は、第2レンズ群G2の焦点距離と第4レンズ群G4の焦点距離を適切に設定するものであり、上述した第2の特徴を数値限定することにより表したものである。
この条件式(2)の下限値を下回った場合、本発明の可変焦点距離レンズ系1では、第2レンズ群G2の屈折力が強まるか、或は第4レンズ群G4の屈折力が弱まる。前者の場合、可変焦点距離レンズ系1では、上述した通り、レンズ系全長が長くなり、その結果、充分な小型化が図れなくなってしまう。
一方、後者の場合、可変焦点距離レンズ系1では、広角端状態において発生する負の歪曲収差を良好に補正できなくなり、良好なる結像性能を得ることが出来なくなってしまう。
また、この条件式(2)の上限値を上回った場合、第2レンズ群G2の屈折力が弱まるか、或は第4レンズ群G4の屈折力が強まる。前者の場合、可変焦点距離レンズ系1では、第2レンズ群G2の屈折力が弱くなって、所定の変倍比を得るのに必要な第1レンズ群G1及び第3レンズ群G3の移動量が多くなる。
その結果、広角端状態において、移動量の多くなった第1レンズ群G1と、光軸方向に固定された第2レンズ群G2とが干渉してしまう、或は望遠端状態において、光軸方向に固定された第2レンズ群G2と、移動量の多くなった第3レンズ群G3とが干渉してしまう。そうなると、第2レンズ群G2を光軸方向に固定しておくことが出来なくなり、本発明の主旨に反することになる。
一方、後者の場合、可変焦点距離レンズ系1では、望遠端状態におけるレンズ系全長を短縮することができず、充分な小型化を図ることができない。
ところで可変焦点距離レンズ系1における第4レンズ群G4は、第1レンズ群G1乃至第3レンズ群G3により形成される被写体像を拡大する作用を成している。このため、可変焦点距離レンズ系1では、第4レンズ群G4の負屈折力が強まるに連れて、第1レンズ群G1乃至第3レンズ群G3による被写体像の拡大率が高まることになる。
その結果、可変焦点距離レンズ系1では、第1レンズ群G1乃至第3レンズ群G3において、製造時に発生する微小なる偏心に伴う像の劣化も拡大されてしまい、このため量産時に安定した光学品質を維持できなくなってしまう。
そこで可変焦点距離レンズ系1では、レンズ系全長の短縮化を維持しながら、量産時に安定した光学品質を得るためには、条件式(2)の上限値を「0.3」とすることが望ましい。
また、可変焦点距離レンズ系1においては、レンズ位置状態の変化に伴う軸外収差の変動を抑えて、一段と高い光学性能を得るために、以下の条件式(3)を満足することが望ましい。
(3)0.3<|f2|/(fw・ft)1/2<0.55
但し、
f2 :第2レンズ群G2の焦点距離
fw :広角端状態におけるレンズ系全体での焦点距離
ft :望遠端状態におけるレンズ系全体での焦点距離
とする。
ここで条件式(3)は、第2レンズ群G2の屈折力を規定する条件式である。この条件式(3)の下限値を下回った場合、可変焦点距離レンズ系1では、第2レンズ群G2の屈折力が負に強まるため、レンズ位置状態が変化する際に、第2レンズ群G2単独で発生する軸外収差の変動を良好に補正することが困難になってしまう。
逆に、条件式(3)の上限値を上回った場合、可変焦点距離レンズ系1では、所定の変倍比を得るのに必要な第1レンズ群G1や第3レンズ群G3の移動量が多くなってしまうため、レンズ系全長の短縮化を充分に図れなくなってしまう。
また可変焦点距離レンズ系1では、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との空気間隔を変化させることにより、レンズ位置状態の変化に伴う軸外収差の変動を抑えているが、小型化と高性能化とのバランスを図るために以下の条件式(4)を満足することが望ましい。
(4)0.3<Δ4/Δ3<0.9
但し、
Δ4 :広角端状態から望遠端状態までの第4レンズ群G4の移動量
Δ3 :広角端状態から望遠端状態までの第3レンズ群G3の移動量
とする。
ここで条件式(4)は、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との空気間隔の変化量を規定するものである。この条件式(4)の下限値を下回った場合、可変焦点距離レンズ系1では、第4レンズ群G4の変倍作用が弱くなるため、他のレンズ群による変倍作用を強くする必要が生じる。その結果、可変焦点距離レンズ系1では、レンズ位置状態の変化に伴う軸外収差の変動が大きくなってしまうので、好ましくない。
逆に、条件式(4)の上限値を上回った場合、可変焦点距離レンズ系1では、望遠端状態において第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との空気間隔が狭まるためバックフォーカスが伸びてレンズ系全長が大型化してしまう。
更に可変焦点距離レンズ系1では、レンズ位置状態の変化に伴う軸外収差の変動を抑えると同時に、第2レンズ群G2の厚みを減らすために、当該第2レンズ群G2が、物体側から順に、像側に凹面を向けた負レンズL21、両凹形状の負レンズL22、物体側に凸面を向けた正レンズL23の3枚レンズで構成されるとともに、以下の条件式(5)を満足することが望ましい。
(5)1<|f21|/fw<1.7
但し、
f21 :負レンズL21の焦点距離
とする。
ここで条件式(5)は、第2レンズ群G2中に配置される負レンズL21の屈折力を規定するものである。この条件式(5)の下限値を下回った場合、可変焦点距離レンズ系1では、第2レンズ群G2の負レンズL21に入射する軸外光束が光軸に近づくため、レンズ径の小型化が可能となる。
しかしながら、この場合、可変焦点距離レンズ系1では、広角端状態において画角の変化に伴って発生するコマ収差の変動が極めて大きくなり、高性能化を充分に図ることが出来なくなってしまう。
逆に、条件式(5)の上限値を上回った場合、可変焦点距離レンズ系1では、広角端状態における第2レンズ群G2の負レンズL21に入射する軸外光束が光軸から離れる、すなわち、第1レンズ群G1に入射する軸外光束が光軸から大きく離れる。このため、可変焦点距離レンズ系1では、第1レンズ群G1において発生するコマ収差が極めて大きくなり、高性能化を充分に図ることが出来なくなってしまう。
更に可変焦点距離レンズ系1では、各レンズ群のレンズ径を小型化して、レンズ位置状態の変化に伴う軸外収差の変動を良好に補正するため、開口絞りSを第3レンズ群G3近傍に配置することが望ましい。
一般に、レンズ位置状態が変化する際、開口絞りSとの距離を変化させるレンズ群が増えるほど、各レンズ群を通過する軸外光束の高さが変化し易い。そして、その高さを利用して、レンズ位置状態の変化に伴う軸外収差の変動を補正するが、軸外光束の高さを積極的に変化させることにより、一段と良好に補正することが可能となる。
特に、可変焦点距離レンズ系1では、第3レンズ群G3近傍に開口絞りSを配置すると、当該開口絞りSの前後にそれぞれ複数の可動レンズ群を配置することができるため、コマ収差を一段と良好に補正することが可能となって、高性能化を図り得るようになされている。
また可変焦点距離レンズ系1では、第3レンズ群G3がレンズ系の中央付近に位置するため、各レンズ群を通過する軸外光束の高さが極端に離れないようにでき、その結果、レンズ径の小型化を図り得るようになされている。
なお、可変焦点距離レンズ系1では、第3レンズ群G3の物体側に開口絞りSを配置すると共に、レンズ位置状態が変化する際に、開口絞りSと第3レンズ群G3とを一体的に移動させることにより、レンズ径の更なる小型化と鏡筒構造の簡略化を図り得るようになされている。
因みに可変焦点距離レンズ系1では、第3レンズ群G3の物体側に開口絞りSを配置することにより、特に、広角端状態で第1レンズ群S1を通過する軸外光束の高さを光軸に近づけて小型化を図ることができる。
同時に、可変焦点距離レンズ系1は、広角端状態で第1レンズ群G1を通過する軸外光束が光軸に近づくため、画面周辺部で発生するコマ収差を抑えることが可能となり、高性能化を図ることができる。
ところで、無限遠に位置する被写体から近距離に位置した被写体まで合焦を行う(以下、これを近接合焦と呼ぶ。)際、可変焦点距離レンズ系1においては、第5レンズ群G5を光軸方向へ移動させることが望ましい。
これは、第5レンズ群G5は像面位置に近い場所に配置され、軸上光束と軸外光束とが離れた状態で通過するため、軸上光束と軸外光束とを独立して補正することが可能であり、被写体位置の変化に伴う軸外収差の変動を補正するのに適しているからである。
更に可変焦点距離レンズ系1では、レンズ径の小型化とレンズ系全長の短縮化とをバランス良く達成するため、以下の条件式(6)を満足することが望ましい。
(6)1.8<f1/(fw・ft)1/2<2.7
但し、
f1 :第1レンズ群G1の焦点距離
fw :広角端状態におけるレンズ系全体での焦点距離
ft :望遠端状態におけるレンズ系全体での焦点距離
とする。
ここで条件式(6)は、第1レンズ群G1を規定するものである。この条件式(6)の上限値を上回った場合、可変焦点距離レンズ系1では、第1レンズ群G1による収斂作用が弱まるため、望遠端状態におけるレンズ系全長が大型化してしまう。
逆に、この条件式(6)の下限値を下回った場合、可変焦点距離レンズ系1では、第1レンズ群G1による収斂作用が強まり、広角端状態における軸外光束が光軸から離れてレンズ径が大型化してしまう。
ところで、第1レンズ群G1の屈折力が強くなるほど、望遠端状態において第1レンズ群G1単独で発生する高次の球面収差を良好に補正できなくなってしまう。この場合、開口絞りSを可変絞りとして、レンズ位置状態が変化する際に開放径を変化させることも可能であるが、低照度の被写体を撮影する際にノイズが増大する等の問題が発生してしまう。
このため、可変焦点距離レンズ系1では、第1レンズ群G1単独で発生する高次の球面収差を更に良好に補正して、望遠端状態における開放F値を明るくするには、条件式(6)の下限値を「2.0」とすることが望ましい。
さらに可変焦点距離レンズ系1では、第1レンズ群G1単独で発生する球面収差を補正して、特に、望遠端状態で良好なる光学性能を実現するために、第1レンズ群G1が像側に凹面を向けた負レンズと物体側に凸面を向けた正レンズとの接合レンズにより構成されることが望ましい。
なお、この接合レンズは、負レンズと正レンズとに分離することも可能であり、これにより、第1レンズ群G1で発生する色収差や球面収差を良好に補正することもできる。
しかしながら、可変焦点距離レンズ系1では負レンズと正レンズとに分離した場合、製造時に発生する微小なる偏心によっても光学性能が著しく劣化してしまうため、接合レンズの方が望ましい。
さらに可変焦点距離レンズ系1では、第1レンズ群G1が上述したレンズ構成の基で、以下の条件式(7)を満足することにより、広角端状態における画角を広げた際にも充分なる光学性能を得るようになされている。
(7)0.01<fw/R13<0.12
但し、
R13 :第1レンズ群G1の最も像側のレンズ面の曲率半径
とする。
ここで条件式(7)は、第1レンズ群G1の形状を規定するものである。この条件式(7)の上限値を上回った場合、可変焦点距離レンズ系1では、望遠端状態で第1レンズ群G1により発生する負の球面収差を良好に補正することが困難になって、充分な高性能化を図ることができない。
逆に、この条件式(7)の下限値を下回った場合、可変焦点距離レンズ系1では、第1レンズ群G1に入射する軸外光束が光軸から離れ、第1レンズ群G1を射出する軸外光束が急激に屈折された状態となってしまう。
その結果、可変焦点距離レンズ系1では、製造時に発生する第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との相互偏心による光学性能の低下を充分に抑えられず、安定した光学品質を確保することが困難になってしまう。
また可変焦点距離レンズ系1では、非球面レンズを用いることにより一段と高い光学性能を実現するようになされている。特に、可変焦点距離レンズ系1では、第2レンズ群G2に非球面レンズを用いることにより、広角端状態において発生する画角によるコマ収差の変動を良好に補正することが可能となる。
また可変焦点距離レンズ系1では、第3レンズ群G3乃至第5レンズ群G5に非球面レンズを導入することにより、中心性能の更なる高性能化が可能となる。更に可変焦点距離レンズ系1では、複数の非球面を1つの光学系に用いることにより、一段と高い光学性能が得られることは言うまでもない。
加えて可変焦点距離レンズ系1では、レンズ系を構成するレンズ群のうち、1つのレンズ群、あるいは、1つのレンズ群を構成する一部のレンズを光軸に対してほぼ垂直な方向へシフトさせることにより、像をシフトさせることが可能である。
そして可変焦点距離レンズ系1では、カメラの倒れを検出する検出系、当該検出系からのブレ情報に基づいて移動量を算出する演算系、当該演算系からの移動量情報に従って所定のレンズをシフトさせる駆動系と、当該レンズとを組み合わせるようになされている。
これにより可変焦点距離レンズ系1では、シャッターレリーズ時に生じるカメラブレによる像ブレをレンズシフトによって相殺又は緩和させ得るようになされている。特に可変焦点距離レンズ系1では、第3レンズ群G3を光軸にほぼ垂直な方向へシフトさせる際に生じる性能変化を小さくすることができる。
さらに可変焦点距離レンズ系1では、第3レンズ群G3の近傍に開口絞りSを配置した場合、軸外光束が光軸付近を通過するため、第3レンズ群G3を光軸にほぼ垂直な方向へシフトさせた際に生じる軸外収差の変動を抑えることが可能である。
なお、可変焦点距離レンズ系1では、レンズ系の像側に所謂モアレ縞の発生を防ぐためにローパスフィルタを配置したり、受光素子の分光感度特性に応じて赤外カットフィルタを配置することも勿論可能であることは言うまでもない。
[3−2.デジタルスチルカメラの構成]
図10に示すように、上述した撮像装置を搭載するデジタルスチルカメラ100は、撮像機能を担うカメラブロック15と、当該カメラブロック15により撮像された画像信号に対してアナログデジタル変換処理等の信号処理を行うカメラ信号処理部20とを有する。
またデジタルスチルカメラ100は、画像信号の記録再生処理等を行う画像処理部30と、撮影された画像等を表示するLCD(Liquid Crystal Display)40と、メモリーカード51への書込/読出を行うリーダライタ50とを有する。
更に加えてデジタルスチルカメラ100は、当該カメラ全体を制御するCPU(Central Processing Unit)60と、ユーザによる操作入力のための入力部70と、カメラブロック15内のレンズの駆動を制御するレンズ駆動制御部80とを有するようになされている。
カメラブロック15は、可変焦点距離レンズ系1(又は11、12、13、14)を含む光学系と、例えばCCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ等でなる撮像素子16とが組み合わされた構成を有している。
カメラ信号処理部20は、撮像素子16からの出力信号に対するデジタル信号への変換処理、ノイズ除去、画質補正、輝度・色差信号への変換処理等の信号処理を行うようになされている。
画像処理部30は、所定の画像データフォーマットに基づく画像信号の圧縮符号化・伸張復号化処理や、解像度等のデータ仕様の変換処理等を行うようになされている。
メモリーカード51は、着脱自在な半導体メモリから構成されている。リーダライタ50は、画像処理部30によって符号化された画像データをメモリーカード51に書き込み、またメモリーカード51に記録された画像データを読み出すようになされている。
CPU60は、デジタルスチルカメラ100内の各回路ブロックを統括的に制御するようになされており、入力部70からの指示入力信号等に基づいて各回路ブロックを制御するようになされている。
入力部70は、例えば、シャッタ操作を行うためのシャッタレリーズボタンや、動作モードを選択するための選択スイッチ等により構成され、ユーザによる操作に応じた指示入力信号をCPU60へ出力する。
レンズ駆動制御部80は、CPU60からの制御信号に基づいて、可変焦点距離レンズ系1(又は11、12、13、14)内のレンズを駆動する図示しないモータ等を制御するようになされている。
次に、デジタルスチルカメラ100の動作を簡単に説明する。デジタルスチルカメラ100では、撮影の待機状態のとき、CPU60による制御の下で、カメラブロック15により撮像された画像信号をカメラ信号処理部20を介してLCD40へ出力し、カメラスルー画像として表示するようになされている。
またデジタルスチルカメラ100は、入力部70からのズーミングのための指示入力信号が入力されると、CPU60がレンズ駆動制御部80に制御信号を出力し、レンズ駆動制御部80の制御に基づいて可変焦点距離レンズ系1内の所定のレンズを移動する。
そしてデジタルスチルカメラ100は、入力部70からの指示入力信号によりカメラブロック15の図示しないシャッタが切られると、撮像された画像信号をカメラ信号処理部20から画像処理部30へ出力する。
画像処理部30では、カメラ信号処理部20から供給された画像信号に対して所定の圧縮符号化した後、所定のデータフォーマットのデジタルデータに変換し、これをリーダライタ50を介してメモリーカード51に書込むようになされている。
なおフォーカシングは、例えばシャッタレリーズボタンが半押し、或は記録のために全押しされた場合に、CPU60からの制御信号に基づいてレンズ駆動制御部80が可変焦点距離レンズ系1(又は11、12、13、14)を駆動制御することにより行われる。
またメモリーカード51に記録された画像データを再生する場合、CPU60が入力部70に対する操作に応じてリーダライタ50によりメモリーカード51から画像データを読み出し、画像処理部30により伸張復号化処理した後、これをLCD40へ出力する。
LCD40では、画像処理部30により伸張復号化処理された画像データに基づいて再生画像を表示するようになされている。
因みに、この実施の形態では、本発明の撮像装置をデジタルスチルカメラに適用するようにした場合について説明したが、例えば、デジタルビデオカメラといった他の撮像装置等に適用することも可能である。
<4.他の実施の形態>
その他、上述した実施の形態及び第1数値実施例乃至第4数値実施例において示した各部の具体的な形状や構造並びに数値は、本発明を実施するに際して行う具体化のほんの一例を示したものに過ぎず、これらによって、本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならないものである。
また上述の実施の形態においては、各レンズ群のレンズ径を小型化して、レンズ位置状態の変化に伴う軸外収差の変動を良好に補正するため、開口絞りSを第3レンズ群G3近傍で、当該第3レンズ群G3よりも物体側に配置するようにした場合について述べた。
しかしながら、本発明はこれに限らず、開口絞りSを第3レンズ群G3近傍で、当該第3レンズ群G3よりも像側に配置するようにしても良い。
さらに上述の実施の形態においては、撮像装置を例えばデジタルスチルカメラ100に搭載する場合を一例として示したが、撮像装置を搭載する対象としては、これに限られるものではなく、デジタルビデオカメラ、携帯電話機、カメラが搭載されたパーソナルコンピュータ、カメラが組み込まれたPDA等のその他種々の電子機器に広く適用することができる。