JP4768150B2 - 電子部品包装用成形体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はゴム状重合体を分散粒子として含有するゴム変性スチレン系樹脂とゴム状重合体を含有しないスチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂とを特定の割合で配合したゴム変性スチレン系樹脂組成物からなる、透明性、耐衝撃性と剛性のバランスに優れた電子部品包装用成形体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
IC、LSIその他電子部品を包装するためのキャリアテープ、マガジンレールなどの電子部品包装用成形体の材料として、従来から透明性を必要とするものは塩化ビニル樹脂が使用されている。しかしながら、塩化ビニル樹脂は、廃棄物として焼却する際に発生する塩化水素による焼却炉の腐食間題、大気中に放出された塩化水素による大気汚染間題に加え、焼却炉で発生するダイオキシン類の原因物質のひとつとして考えられており、このような問題から塩化ビニル樹脂に代わる材料が求められてきている。これらの問題が生じない代替材料としてポリカーボネート、透明ABS等が一部市場で実績はあるものの、両者ともにコストが高く低価格の塩化ビニル樹脂の代替材料としての実用性に欠ける欠点があった。また、電子部品包装用成形体の材料としては剛性、耐衝撃性の良好なことも必要とされ、透明で、衝撃強度に優れ、剛性が高く、低価格の代替材料が望まれていた。
【0003】
一方、低価格の材料としてスチレン系重合体が存在する。スチレン系重合体は、透明性、成形性、剛性に優れた合成樹脂であるところから、家庭用品、電気製品、包装等の成形材料として広く用いられてきた。そして、利用分野が拡大するにつれてスチレン系重合体の衝撃強度向上が強く求められるようになってきた。スチレン系重合体の衝撃強度を向上させるために、ゴム状弾性体を分散粒子として含有するスチレン系重合体、即ちゴム変性スチレン系重合体(HIPS)が知られている。しかしながら、このゴム変性スチレン系重合体はゴム変性しないスチレン系重合体に比べて透明性が劣り、透明性をとくに求められる分野では使用できない欠点があった。
【0004】
従来、HIPSの透明性を上げる方法として、特許2637176にはスチレン−ブタジエンブロック共重合体の存在下、スチレン系単量体を重合して得られるゴム変性スチレン系樹脂が提案されている。しかしながら、この方法によって得られたゴム変性スチレン系樹脂は通常のゴム変性スチレン系樹脂と比較すると高い透明性は有するものの、満足のいくレベルに達しておらず、さらに高い透明性を得るためには、ゴム粒子径を0.2μm以下にするか、又はゴム含有量を大幅に減量しなければならず、耐衝撃性が著しく低下するといった問題があった。また、特許2906962には分散粒子径の粒度分布を狭くすることにより、高い透明性が得られることが提案されているが、これにおいても、満足のいくレベルに達していなかった。
【0005】
また、スチレン−ブタジエンブロック共重合体の存在下、スチレン系単量体と比較的低屈折率である(メタ)アクリレート系単量体を共重合させることにより、スチレン−ブタジエンブロック共重合体に屈折率を近づけ、透明性を高める方法も公知であり、特開2000−154257にはこの方法によって得られたゴム変性スチレン系樹脂を用いた電子部品包装用成形体が提案されている。しかしながら、この方法で高い透明性を得るためには、比較的高価な(メタ)アクリレート系単量体をより多く共重合させなければならず、結果としてコストが高くなるといった問題点や、スチレン系樹脂との相容性が低下するため、一般のスチレン系樹脂とブレンドしてリサイクルできないといった問題があった。
【0006】
また、特開平7−309992、特開平10−279755にはスチレン−ブタジエンブロック共重合体にスチレン−アクリル酸エステル系共重合樹脂とHIPSをブレンドする技術が提案されている。しかし、スチレン−ブタジエンブロック共重合体は高価であるとともに、配合割合を増やすと、熱履歴によりスチレン−ブタジエンブロック共重合体が架橋し、いわゆるゲル状物質が生成し、成形品外観を悪化させるという欠点を有している。また、該特許に記載されている一般のHIPSでは透明性を悪化させるため、配合割合を増やすことが困難である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記に述べた課題を解決し、透明性を高水準に維持し、かつ耐衝撃性とのバランスに優れた電子部品包装用成形体を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる現状に鑑み、鋭意検討した結果、特定のゴム変性スチレン系樹脂とゴム成分を含有しない特定のスチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂からなり、特定の条件を満たすゴム変性スチレン系樹脂組成物を電子部品包装用成形体に用いることによって、上記問題点が解決することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、スチレン系単量体単位の含有量が30〜50質量%であるスチレン−ブタジエン共重合体の存在下、スチレン系単量体をグラフト重合してなるゴム変性スチレン系樹脂であって、該樹脂の分散相を形成するゴム状重合体粒子の80体積%以上がコア/シェル構造を有し、該ゴム状重合体粒子の体積中位粒子径(dv)が0.3〜1.0μmであり、かつ体積中位粒子径(dv)と個数中位粒子径(dn)の比(dv/dn)が1.5以下であり、該樹脂のゴム分が6〜15質量%であるゴム変性スチレン系樹脂(A)45〜85質量%と、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂(B)15〜55質量%からなり、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂(B)中のスチレン系単量体単位の含有量SB、ゴム変性スチレン系樹脂(A)の連続相を形成するスチレン系樹脂の還元粘度ηA、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂(B)の還元粘度ηBとの関係が式(1)において、57≦K≦77を満足することを特徴とするスチレン系樹脂組成物からなる電子部品包装用成形体に関する。
K=SB−12.4×ηA−6.01×ηB (1)
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳しく説明する。本発明を構成するゴム変性スチレン系樹脂(A)は、スチレン−ブタジエン共重合体の存在下、スチレン系単量体をグラフト重合してなる。スチレン系単量体とは、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン等の単独または混合物をいい、好ましくはスチレンである。また、これらのスチレン系単量体を共重合可能な単量体、例えばアクリロニトリル、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル等の単量体も、ゴム変性スチレン系樹脂(A)の性能を損なわない程度、すなわちスチレン系単量体100質量部に対し、3質量部以下なら添加して重合したものであってもよい。
【0011】
本発明を構成するゴム変性スチレン系樹脂(A)はスチレン−ブタジエン共重合体の存在下、スチレン系単量体をグラフト重合してなるが、重合方法としては公知の方法、例えば、塊状重合法、塊状・懸濁二段重合法、溶液重合法等により製造することができる。そして、公知の技術、例えば重合反応時の攪拌速度、温度などの調整、重合開始剤、連鎖移動剤の添加等により、本発明の条件を充足するゴム変性スチレン系樹脂(A)を得ることができる。重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル、t−ブチルパーオキシベンゾネート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、エチル−3,3−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブチレート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等が挙げられる。また、連鎖移動剤としてはt−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、α−メチルスチレンダイマー等が挙げられる。
【0012】
本発明におけるスチレン−ブタジエン共重合体としては、スチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体等が挙げられる。スチレン−ブタジエンブロック共重合体のブロック率には特に制約はなく、スチレンブロック部、ブタジエンブロック部の他、スチレン−ブタジエンテーパー部、スチレン−ブタジエンランダム部を有していても差し支えない。スチレン−ブタジエン共重合体中のスチレン系単量体単位の含有量は30〜50質量%であり、好ましくは35〜50質量%である。またこれらは1種又は2種以上用いてもよく、ポリブタジエンを混合しても良い。ただし2種以上混合する場合は、混合物全体でのスチレン系単量体単位の含有量が30〜50質量%であり、好ましくは35〜50質量%である。
【0013】
本発明を構成するゴム変性スチレン系樹脂(A)はマトリックスであるスチレン系樹脂と分散相を形成するゴム状重合体粒子からなる。ゴム状重合体粒子中のコア/シェル構造の割合は80体積%以上であり、好ましくは85体積%以上である。コア/シェル構造が80体積%未満である場合は透明性が劣り好ましくない。なお、本発明において、ゴム状重合体粒子中のコア/シェル構造ゴム状重合体粒子の含有割合はゴム変性スチレン系樹脂を四酸化オスミウムで染色し、超薄切片法により試料を形成し、電子顕微鏡で10000倍に拡大した写真を撮影し、この拡大写真中の1000個以上の分散ゴム粒子についてその粒子径を測定し、次式により求める。
コア/シェル構造ゴム状重合体粒子の含有割合(体積%)=ΣmiDi3/ΣniDi3
(式中、niは粒子径Diのゴム状重合体粒子の個数を示し、miは粒子径Diのコア/シェル構造ゴム状重合体粒子の個数を示す。)
【0014】
本発明を構成するゴム変性スチレン系樹脂(A)におけるゴム状重合体粒子の体積中位粒子径(dv)は0.3〜1.0μmであり、好ましくは0.35〜0.8μmである。体積中位粒子径(dv)が0.3μm未満であると、得られるゴム変性スチレン系樹脂組成物の耐衝撃性が著しく低下する。また、1.0μmを越えるようなコア/シェル構造ゴム状重合体粒子を有するゴム変性スチレン系樹脂は通常得られにくい。
【0015】
本発明を構成するゴム変性スチレン系樹脂(A)におけるゴム状重合体粒子の体積中位粒子径(dv)と個数中位粒子径(dn)の比(dv/dn)は1.5以下、好ましくは1.3以下であることが必要である。dv/dnが1.5を越えると、得られるゴム変性スチレン系樹脂組成物の透明性が著しく損なわれる。なお、本発明において、体積中位粒子径(dv)と個数中位粒子径(dn)はゴム変性スチレン系樹脂(A)をジメチルホルムアミドに溶解させ、レーザー回折方式粒度分布測定装置(コールター社製レーザー回折方式粒子アナライザーLS−230型)により測定してそれぞれ求めることができ、体積基準の粒径分布曲線の中位粒子径をもって体積中位粒子径(dv)とし、個数基準の粒径分布曲線の中位粒子径をもって個数中位粒子径(dn)とする。
【0016】
本発明を構成するゴム変性スチレン系樹脂(A)のゴム分は6〜15質量%であり、好ましくは8〜13質量%である。ゴム分が6質量%未満であると得られるゴム変性スチレン系樹脂組成物の耐衝撃性が著しく低下する。また、ゴム分が15質量%を越えるとゴム状重合体が粒子状の分散相を形成するように制御することが製造上困難となる。なおゴム分はゴム変性スチレン系樹脂(A)をクロロホルムに溶解させ、一定量の一塩化ヨウ素/四塩化炭素溶液を加え暗所に約1時間放置後、ヨウ化カリウム溶液を加え、過剰の一塩化ヨウ素を0.1Nチオ硫酸ナトリウム/エタノール水溶液で滴定し、付加した一塩化ヨウ素量から求めることができる。
【0017】
本発明を構成するスチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂(B)は、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル系単量体とを共重合してなる。ここで、本発明における(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル等が例示される。特に耐衝撃性、透明性の改良効果から、メタクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチルが好適に用いられる。スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂(B)の好ましい例として、スチレン−メタクリル酸メチル−アクリル酸n−ブチル共重合体が挙げられる。重合方法としては、従来から公知の方法、例えば、塊状重合法、懸濁重合法、溶液重合法等により製造することができる。そして、公知の技術、例えば重合反応時の温度の調整、重合開始剤、連鎖移動剤の添加等により、本発明の条件を充足するスチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂(B)を得ることができる。
【0018】
本発明を構成するスチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂(B)のスチレン系単量体単位の含有量SBは好ましくは75〜95質量%、更に好ましくは77〜90質量%である。含有量が75質量%未満であると、ゴム変性スチレン系樹脂(A)との相容性が低下し、ゴム変性スチレン系樹脂組成物の透明性、衝撃強度が低下する。95質量%を越えるとゴム変性スチレン系樹脂組成物の透明性が低下する。
【0019】
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物は、必要に応じて衝撃強度向上の為にスチレン系ブロック共重合体(C)を配合することが好ましい。スチレン系ブロック共重合体(C)の配合量は0.1〜10質量%、好ましくは1〜10質量%、更に好ましくは3〜8質量%である。配合量が0.1質量%未満であると、衝撃強度向上の効果が低く、好ましくない。また10質量%以上であると透明性や剛性が低下し、好ましくない。
【0020】
本発明を構成するスチレン系ブロック共重合体(C)は、スチレン系単量体を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックと、共役ジエンを主体とする少なくとも1個の重合体ブロックからなる。このポリマー構造についての制限はなく、例えば線状又は星型ブロック共重合体が使用できる。また、スチレン系単量体を主体とする重合体ブロックあるいは共役ジエンを主体とする重合体ブロックの他にスチレン系単量体と共役ジエンのランダム共重合の部分、またはテーパー状の共重合部分が共存していてもよい。さらにスチレン系ブロック共重合体は、二種以上混合しても差し支えない。
【0021】
共役ジエンとしては、例えばブタジエン、イソプレン等が挙げられ、スチレン系ブロック共重合体としては、例えばスチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体等が挙げられる。
【0022】
スチレン系ブロック共重合体(C)のスチレン系単量体の含有量は15〜80質量%、好ましくは20〜60質量%である。スチレン系単量体の含有量が15質量%未満では、他の成分との相容性が悪く、透明性が悪化するので好ましくない。また80質量%を越えると耐衝撃性向上の効果が低く、好ましくない。
【0023】
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物において、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂(B)中のスチレン系単量体単位の含有量SB、ゴム変性スチレン系樹脂(A)の連続相を形成するスチレン系樹脂の還元粘度ηA、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂(B)の還元粘度ηBとの関係は式(1)において、57≦K≦77、好ましくは59≦K≦73を満足する必要がある。
K=SB−12.4×ηA−6.01×ηB (1)
この範囲を外れると、透明性が低下したり、衝撃強度が低下したりする。また、ゴム変性スチレン系樹脂(A)成分の割合は、45〜85質量%、好ましくは50〜80質量%であり、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂(B)成分の割合は、15〜55質量%、好ましくは20〜50質量%である。なお、本発明における還元粘度は、該樹脂をメチルエチルケトンに溶解し、次いで遠心分離によりゴム状重合体を含有するゲル分を分離し、その上澄みのポリマー溶液をメタノールで再沈殿し、メタノール不溶分を濾過して取り出し、これを乾燥したものをトルエンに溶解(濃度0.4g/100mL)し、ウベローデ粘度計を用いて30℃で測定した値である。
【0024】
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物には、必要により高級脂肪酸、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸アミド、ミネラルオイル、シリコーンオイル、酸化防止剤、耐侯剤、帯電防止剤、難燃剤、摺動剤、着色剤、顔料等を添加することができる。これらの添加剤は樹脂に配合する際に、単独で配合してもよいし、複数種類を配合してもよい。また、これらの添加剤の配合時期については、重合開始前、重合反応途中、重合体の造粒、成形等任意の段階を選ぶことが出来る。
【0025】
本発明の電子部品包装用成形体としてはIC、LSIその他電子部品を包装するための材料であり、例えばキャリアテープ、射出成形トレー、真空成形トレー、マガジンレールなどが挙げられる。またこれらの成形体は、公知の成形方法で得ることが出来る。
【0026】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0027】
ゴム変性スチレン系樹脂((A)―1)の重合
内容積50Lの完全混合タイプの攪拌機付きオートクレーブ中に、スチレン34kg、スチレン−ブタジエン共重合体として旭化成社製アサプレン670A(商品名、スチレン単量体単位含有量:40質量%)6kgを溶解し、原料液とした。この原料液にt−ドデシルメルカプタン48gを加え、窒素置換後密閉して157rpmで攪拌しながら115℃で6時間、塊状重合し、予備重合液を得た。次いで、内容積100Lの攪拌機付きオートクレーブに純水40kg、第三リン酸カルシウム140g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2gを加えて攪拌し、前記の予備重合液35kg及びアゾビスイソブチロニトリル61g、エチル−3,3−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブチレート5gを加えて、窒素置換後密閉して温度80℃で5時間、132℃で4時間重合し、重合を完結させた。得られたビーズを洗浄、脱水、乾燥した後、単軸押出機を用いて230℃にて押出を行いペレット形状のゴム変性スチレン系樹脂((A)―1)を得た。得られた樹脂の物性を表1に示す。
【0028】
ゴム変性スチレン系樹脂((A)―2)の重合
スチレン−ブタジエン共重合体として、旭化成社製アサプレン670Aを4.8kg、旭化成社製タフデン2000AS(商品名、スチレン単量体単位含有量:25質量%)を1.2kgとした以外はゴム変性スチレン系樹脂((A)―1)と同様の方法にてゴム変性スチレン系樹脂((A)―2)を得た。得られた樹脂の物性を表1に示す。
【0029】
ゴム変性スチレン系樹脂((A)―3)の重合
予備重合時の攪拌機の回転数を250rpmとした以外はゴム変性スチレン系樹脂((A)―1)と同様の方法にてゴム変性スチレン系樹脂((A)―3)を得た。得られた樹脂の物性を表1に示す。
【0030】
ゴム変性スチレン系樹脂((A)―4)の重合
予備重合時の攪拌機の回転数を130rpmとした以外はゴム変性スチレン系樹脂((A)―2)と同様の方法にてゴム変性スチレン系樹脂((A)―4)を得た。得られた樹脂の物性を表1に示す。
【0031】
スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂((B)−1)の重合
内容積100Lの攪拌機付きオートクレーブに純水40kg、第三リン酸カルシウム140g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.02gを加えて攪拌し、スチレン30.8kg、メタクリル酸メチル3.6kg、アクリル酸n−ブチル5.6kg及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート71.2g、t−ブチルパーオキシアセテート20gを加えて、窒素置換後密閉して温度92℃で6時間、130℃で3時間重合し、重合を完結させた。得られたビーズを洗浄、脱水、乾燥した後、単軸押出機を用いて230℃にて押出を行いペレット形状のスチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂((B)−1)を得た。得られた樹脂の物性を表2に示す。
【0032】
スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂((B)−2)の重合
スチレンの量を32kg、メタクリル酸メチルの量を8kgとし、アクリル酸n−ブチルを添加しなかった以外はスチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂((B)−1)と同様の方法にてスチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂((B)−2)を得た。得られた樹脂の物性を表2に示す。
【0033】
スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂((B)−3)の重合
スチレンの量を28kg、メタクリル酸メチルの量を6.4kg、アクリル酸n−ブチルの量を5.6kgとした以外はスチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂((B)−1)と同様の方法にてスチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂((B)−3)を得た。得られた樹脂の物性を表2に示す。
【0034】
スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂((B)−4)の重合
スチレンの量を38.8kg、アクリル酸n−ブチルの量を1.2kgとし、メタクリル酸メチルを添加しなかった以外はスチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂((B)−1)と同様の方法にてスチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂((B)−4)を得た。得られた樹脂の物性を表2に示す。
【0035】
スチレン系ブロック共重合体(C)としては、電気化学工業(株)製「デンカSTR1602」(商品名:スチレン系単量体含有量40%)を使用した。
【0036】
実施例1〜実施例6及び比較例1〜比較例6
表3に示す割合で各成分をブレンドし、単軸押出機を用いて230℃にて押出を行いペレット形状のゴム変性スチレン系樹脂組成物を得た。次いでこのペレットを単軸押出機にてシリンダー温度190℃にて異形押出成形し、厚さ0.3mm、横40mm、縦20mmの切断面が長方形状の押出成型品であるマガジン成形体を得た。このマガジン成形体を長さ60mmに切断し、試験試料に用いて衝撃強度及び透明性測定を行った。測定値を表3に示す。
【0037】
参考例として、一般のゴム変性スチレン系樹脂(東洋スチレン社製:商品名H240(参考例1)、商品名XL10(参考例2))を用いて、実施例と同様にマガジン成形体を成形し、試験試料に用いて衝撃強度及び透明性測定を行った。測定値を表3に示す。
【0038】
なお、本発明における物性評価法を以下に示す。
▲1▼落錘衝撃強度:長さ60mmに切断したマガジン成形体を試験片として、40mm×60mm面に 錘先端5R、質量50gの錘を落下させ、50%破壊高さで破壊エネルギーを示した。
▲2▼曇度:マガジン成形体の40mm×60mmの平面部を切り出し、試験片として、ASTM D1003に準拠して測定した。
【0039】
表3に示すように、特定のゴム変性スチレン系樹脂と特定のスチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂からなり、特定の条件を満たすゴム変性スチレン系樹脂組成物からなる成形体は、実施例1〜6に示すように透明性を高水準に維持し、かつ耐衝撃性とのバランスに優れている。一方、これらの条件を満たさない場合は、比較例1〜比較例6に示すように透明性が高い場合は耐衝撃性に劣り、耐衝撃性が高い場合は透明性が著しく低下している。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、特定のゴム変性スチレン系樹脂とゴム成分を含有しない特定のスチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂からなり、特定の条件を満たすゴム変性スチレン系樹脂組成物を用いることによって、透明性を高水準に維持し、かつ耐衝撃性とのバランスに優れた電子部品包装用成形体を提供することが出来る。
Claims (2)
- 下記の成分(A)45〜85質量%と、成分(B)15〜55質量%からなり、成分(B)であるスチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂中のスチレン系単量体単位の含有量SBと、成分(B)の還元粘度ηB、及び成分(A)であるゴム変性スチレン系樹脂の連続相を形成するスチレン系樹脂の還元粘度ηAの関係が式(1)において、57≦K≦77を満足することを特徴とするゴム変性スチレン系樹脂組成物からなる電子部品包装用成形体
K=SB−12.4×ηA−6.01×ηB (1)
(A)スチレン系単量体単位の含有量が30〜50質量%であるスチレン−ブタジエン共重合体の存在下、スチレン系単量体をグラフト重合してなるゴム変性スチレン系樹脂であって、該樹脂の分散相を形成するゴム状重合体粒子の80体積%以上がコア/シェル構造を有し、該ゴム状重合体粒子の体積中位粒子径(dv)が0.3〜1.0μmであり、かつ体積中位粒子径(dv)と個数中位粒子径(dn)の比(dv/dn)が1.5以下であるゴム変性スチレン系樹脂
(B)スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂 - 下記の成分(A)45〜85質量%と、成分(B)15〜55質量%と、成分(C)0.1〜10質量%からなり、成分(B)であるスチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂中のスチレン系単量体単位の含有量SBと、成分(B)の還元粘度ηB、及び成分(A)であるゴム変性スチレン系樹脂の連続相を形成するスチレン系樹脂の還元粘度ηAの関係が式(1)において、57≦K≦77を満足することを特徴とするゴム変性スチレン系樹脂組成物からなる電子部品包装用成形体
K=SB−12.4×ηA−6.01×ηB
(1)
(A)スチレン系単量体単位の含有量が30〜50質量%であるスチレン−ブタジエン共重合体の存在下、スチレン系単量体をグラフト重合してなるゴム変性スチレン系樹脂であって、該樹脂の分散相を形成するゴム状重合体粒子の80体積%以上がコア/シェル構造を有し、該ゴム状重合体粒子の体積中位粒子径(dv)が0.3〜1.0μmであり、かつ体積中位粒子径(dv)と個数中位粒子径(dn)の比(dv/dn)が1.5以下であるゴム変性スチレン系樹脂
(B)スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂
(C)スチレン系単量体単位の含有量が20〜85質量%であり、スチレン系単量体を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックと、共役ジエンを主体とする少なくとも1個の重合体ブロックからなるスチレン系ブロック共重合体
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