JP4766892B2 - 車両用蓋体の製造装置 - Google Patents

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本発明は、車両に形成された開口部を開閉するための蓋体の製造装置に関する。
従来より、例えば自動車の側部には、該側部に形成された開口部を開閉する蓋体としてのドアが配設されており、このドアは、特許文献1に開示されているように、該ドアの車室内側を構成する蓋体構成部材としての鋼板製のインナパネルを備えている。このインナパネルのドア袋部側には、ドアラッチ機構の取付箇所を補強する蓋体構成部材としての鋼板製の補強部材が重ね合わされ、該補強部材と上記インナパネルとは一体化されている。従って、ドアラッチ機構をドアに固定するためのねじが挿通する挿通孔がインナパネルの被加工部に形成されるとともに、このインナパネルの挿通孔に対応して補強部材の被加工部にもねじの挿通孔が形成されている。
また、特許文献1のように鋼板製のドア構成部材に挿通穴を形成する場合には、プレス加工が広く用いられている。
特開2003−20845号公報(図1)
ところが、特許文献1のドアを製造する場合には、インナパネル及び補強部材の被加工部にねじの挿通孔を形成する工程、これらインナパネル及び補強部材を一体化する工程が必要になる。これらの工程は、作業内容が全く異なることから別の装置で行わなければならないので、特許文献1のドアを製造するには、各工程を受け持つ装置に中間成形品をセットする作業、該装置から中間成形品を外す作業及び中間成形品を装置間で搬送する作業が必要になる。一方、上記のような作業が必要になるドアの製造現場においては、組立作業者による作業工数をできるだけ削減して省力化を図りたいという要求がある。
また、特許文献1のようなインナパネルや補強部材を成形する際には、僅かではあるが誤差が生じてこれらインナパネルや補強部材の形状が正規の形状からずれることがある。こうなるとインナパネルに補強部材を重ねたときに設計の上では隙間が無い部分に実際には隙間ができてしまう。また、インナパネルと補強部材とを一体化する際には、これらの部材の位置が正規の位置から互いにずれてしまうことがある。このようになった場合には、インナパネルの挿通孔と補強部材の挿通孔とが正規の位置からずれて対応しなくなるので、これら挿通孔の形状や位置を対応させるための修正工数が必要になる。
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両用蓋体の製造現場で省力化を図り、しかも、互いに接合する蓋体構成部材に成形時の誤差が生じている場合や、両蓋体構成部材の接合時に位置ずれが生じている場合にも、両蓋体構成部材の加工跡の形状や位置を対応させることができるようにして、成形型等の修正工数を減少させることにある。
上記目的を達成するために、請求項1の発明では、車両に形成された開口部を開閉する車両用蓋体の製造装置であって、金属板を所定形状に成形してなる第1蓋体構成部材及び第2蓋体構成部材を厚み方向に重ねた状態でスポット溶接して一体化するスポット溶接装置と、上記スポット溶接装置で一体化された上記第1蓋体構成部材及び第2蓋体構成部材の厚み方向に重なる部分に、スポット溶接部分から離れてそれぞれ設定された第1被加工部及び第2被加工部に形状変更を伴うプレス加工を同時に施して最終形状を得るプレス加工装置とを備えている構成とする。
この構成によれば、スポット溶接装置により第1蓋体構成部材及び第2蓋体構成部材が一体化され、この一体化された第1蓋体構成部材及び第2蓋体構成部材を搬送装置によりプレス加工装置に搬送してプレス加工することが可能になる。これにより、蓋体の製造現場において、組立作業者は、第1構成部材及び第2構成部材をスポット溶接装置から外す作業、プレス加工装置まで搬送する作業及びプレス加工装置にセットする作業をしなくてもよくなる。
また、プレス加工装置は、第1蓋体構成部材及び第2蓋体構成部材が一体化されて互い重なった状態の第1被加工部及び第2被加工部にプレス加工を同時に施すので、第1被加工部の加工跡の形状及び位置と、第2被加工部の加工跡の形状及び位置とが対応するようになる。
請求項2の発明では、金属板を所定形状に成形してなる第1蓋体構成部材及び第2蓋体構成部材を厚み方向に重ねた状態で保持する治具と、上記治具に保持された第1蓋体構成部材及び第2蓋体構成部材をスポット溶接して一体化するスポット溶接装置と、上記治具に取り付けられ、上記第1蓋体構成部材及び第2蓋体構成部材の厚み方向に重なる部分に、スポット溶接部分から離れてそれぞれ設定された第1被加工部及び第2被加工部に形状変更を伴うプレス加工を同時に施して最終形状を得るプレス加工装置とを備えている構成とする。
この構成によれば、治具に保持されて一体化された第1蓋体構成部材と第2蓋体構成部とに対し、治具に取り付けられたプレス加工装置によりプレス加工を施すことが可能になる。これにより、組立作業者は、第1構成部材及び第2構成部材をスポット溶接装置から外す作業、プレス加工装置まで搬送する作業及びプレス加工装置にセットする作業をしなくてもよくなる。
また、第1被加工部の加工跡の形状及び位置と、第2被加工部の加工跡の形状及び位置とが対応するようになる。
請求項3の発明では、金属板を所定形状に成形してなる第1蓋体構成部材及び第2蓋体構成部材を厚み方向に重ねた状態で保持する治具と、上記治具に保持された第1蓋体構成部材及び第2蓋体構成部材をスポット溶接して一体化するスポット溶接装置と、上記第1蓋体構成部材及び第2蓋体構成部材の厚み方向に重なる部分に、スポット溶接部分から離れてそれぞれ設定された第1被加工部及び第2被加工部に形状変更を伴うプレス加工を同時に施して最終形状を得る可動タイプのプレス加工装置と、上記プレス加工装置を移動させる移動装置とを備えている構成とする。
この構成によれば、治具に保持されて一体化された第1蓋体構成部材と第2蓋体構成部とに対し、移動装置により移動させたプレス加工装置を用いて、第1被加工部及び第2被加工部にプレス加工を同時に施すことが可能になる。これにより、組立作業者は、第1構成部材及び第2構成部材をスポット溶接装置から外す作業、プレス加工装置まで搬送する作業及びプレス加工装置にセットする作業をしなくてもよくなる。
また、第1被加工部の加工跡の形状及び位置と、第2被加工部の加工跡の形状及び位置とが対応するようになる。
請求項1の発明によれば、スポット溶接装置により第1蓋体構成部材及び第2蓋体構成部材を一体化し、この一体化した第1蓋体構成部材及び第2蓋体構成部材をプレス加工装置にセットし、第1被加工部及び第2被加工部に形状変更を伴うプレス加工を同時に施すようにしたので、品質不良の発生を抑えることができて成形型等の修正工数を減少させることができる。
請求項2、3の発明によれば、品質不良の発生を抑えることができて成形型等の修正工数を減少させることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る車両用蓋体の製造装置1を示すものである。この製造装置1は、自動車(図示せず)の側部に配設される蓋体としてのドア2を製造する工場内に設置されている。
この実施形態の説明では、製造装置1の構成を説明する前にドア2の構造について説明する。ドア2は、図2に示すように、車両への装着状態で該ドア2の車室外側を構成するアウタパネル3、車室内側を構成するインナパネル4、該インナパネル4の上端部に取り付けられたサッシュ5及び上記インナパネル4のドア袋部側(アウタパネル3側)に取り付けられるラッチ取付部補強部材6等を組み合わせて構成されている。これらドア構成部材3〜6は、鋼板を所定形状にプレス成形してなるものである。
上記インナパネル4は、車体の開口部が形成された面に沿うように延びる本体面部4aと、該本体面部4aの周縁からドア2の車室外側へ向けて延びる縦面部4bとを備えている。図3及び図4に示すように、ドア2の車体後側に位置する縦面部4bと本体面部4aとの境界部分には、ドア袋部側に配置されるドアラッチ機構8が取り付けられるようになっている。インナパネル4におけるドアラッチ機構8の取付部には、ラッチ取付部補強部材6がドア袋部側から重ね合わされている。このラッチ取付部補強部材6の上下方向に離れた2箇所がインナパネル4の縦面部4bにスポット溶接により接合され、これらインナパネル4とラッチ取付部補強部材6とが一体化されている。該インナパネル4とラッチ取付部補強部材6とには、上記ドアラッチ機構8のラッチ部を露出させる貫通孔10、11がそれぞれ形成されている。尚、図3における符号Wは、スポット溶接された箇所を示す。
上記インナパネル4の貫通孔10は、本体面部4aから縦面部4bに亘って連続しており、そのうちの本体面部4aに形成されている部分は、インナパネル4をプレス成形する際に同時に形成され、縦面部4bに形成されている部分は、後述するプレス工程で形成されるようになっている。一方、上記ラッチ取付部補強部材6の貫通孔11は、上記インナパネル4の貫通孔10と同じ形状で、補強部材6をインナパネル4に重ねた状態で該インナパネル4の貫通孔10と一致するように形成されている。ラッチ取付部補強部材6の貫通孔11は、該補強部材6をプレス加工する際に同時に形成されるようになっている。
また、上記インナパネル4とラッチ取付部補強部材6とには、上記ドアラッチ機構8をこれらインナパネル4及び補強部材6に締結するためのねじ12(図5(c)にのみ示す)が挿通する挿通孔15、16がそれぞれ形成されている。インナパネル4の挿通孔15と補強部材6の挿通孔16とは、同じ形状で、インナパネル4と補強部材6とを重ねた状態で互いに同心上に位置している。上記インナパネル4の挿通孔15周縁には、縦面部4bからドア袋部側へ突出する形状のバーリング加工が施され、また、補強部材6の挿通孔16周縁にも同様なバーリング加工が施されており、これら挿通孔15、16の周縁同士は全周に亘って接触している。これら挿通孔15、16周縁のバーリング加工による形状は、上記ねじ12の頭部の形状に略合致する形状とされている。
尚、本発明の第1蓋体構成部材は上記ラッチ取付部補強部材6であり、第2蓋体構成部材はインナパネル4である。従って、ラッチ取付部補強部材6の挿通孔16形成箇所が第1被加工部であり、また、インナパネル4の縦面部4bにおける挿通孔15形成箇所及び貫通孔10形成箇所が第2被加工部である。
上記製造装置1は、図1に示すように、製造ラインの上流から下流へ向かって順に配置された複数の装置及び機器を備えており、上記インナパネル4、サッシュ5及びラッチ取付部補強部材6を一体化して所定のプレス加工を施した後、上記アウタパネル3がインナパネル4に接合されてドア2が得られるように構成されている。尚、図1における符号Fは、フェンスである。
具体的には、上記製造装置1は、上記ドア構成部材3〜6を保持するアッセンブリ治具20と、該アッセンブリ治具20に保持されたドア構成部材3〜6を溶接する一次スポット溶接装置21と、該一次スポット溶接装置21で溶接されて得られた中間成形品Sのドア構成部材3〜6をさらに溶接する二次スポット溶接装置22と、中間成形品Sにプレス加工を施すプレス加工装置23と、中間成形品Sを保持して搬送するマテハン(マテリアルハンドリング)ロボット24とを備えている。
上記アッセンブリ治具20の下部には旋回装置26が設けられており、この旋回装置26もアッセンブリ治具20を構成するものである。旋回装置26は、略鉛直に延びる旋回軸27と、この旋回軸27の上部に取り付けられた旋回台28とを備えている。アッセンブリ治具20の保持部材20a、20aは、旋回台28上で旋回軸27の回転中心を挟む対称位置に1つずつ固定されている。各保持部材20aは、上記インナパネル4、サッシュ5及び補強部材6等を接合可能な状態で位置決め保持しておくように構成されている。
上記一次スポット溶接装置21は、アッセンブリ治具20よりも製造ラインの下流側に2つ設置されている。これら2つの一次スポット溶接装置21は、一般にドア等の製造現場で鋼板のスポット溶接を行う際に用いられる周知のものであり、産業用ロボット29にスポット溶接機30を取り付けて構成されている。一方の一次スポット溶接装置21a及び他方の一次スポット溶接装置21bは、上記ドア構成部材3〜6の車両前後方向一方及び他方をそれぞれ溶接するように構成されている。
上記一方の一次スポット溶接装置21aのロボット29には、中間成形品Sを把持するマテハン(図示せず)が取り付けられるようになっている。この一方の一次スポット溶接装置21aは、中間成形品Sをアッセンブリ治具20から外して製造ラインの下流側に搬送するように構成されている。
上記マテハンロボット24は、一次スポット溶接装置21よりも製造ラインの下流側に設置されている。このマテハンロボット24は、一般に自動車等の製造現場で用いられている周知のものであり、産業用ロボット32の手首部にマテハン33が取り付けられて構成されている。
上記一方の一次スポット溶接装置21とマテハンロボット24との間には中間成形品Sを仮置きしておくための第1仮置台34が設置されている。この第1仮置台34には、上記一方の一次スポット溶接装置21aがマテハンで把持して搬送した中間成形品Sが置かれるようになっている。
上記第1仮置台34よりも製造ラインの下流側には、2つの二次スポット溶接装置22a、22bが製造ラインの流れ方向に並んで設置されている。これら製造ライン上流側及び下流側の二次スポット溶接装置22a、22bは、スポット溶接機35を基台36に固定してなるものである。二次スポット溶接装置22は、上記一次スポット溶接装置21で溶接した部位以外の被溶接部を溶接してドア補強部材3〜6同士の接合強度を確保する本溶接を行うように構成されている。
上記のように2つの二次スポット溶接装置22を設置しているのは、例えば車両の前側に配設される前側ドアと車両後側に配設される後側ドアとのように複数種のドアを本製造装置で製造するようにしているからである。すなわち、例えば、製造ラインの上流側に位置している二次スポット溶接装置22aで前側ドアの中間成形品Sを溶接し、下流側に位置している二次スポット溶接装置22bで後側ドアの中間成形品Sを溶接する。尚、二次スポット溶接装置22は、1つだけ設置してもよいし、3つ以上設置してもよい。
上記二次スポット溶接装置22よりも製造ラインの下流側には、2つのプレス加工装置23a、23bが製造ラインの流れ方向に並んで設置されている。該各プレス加工装置23は、図6に示すように、上型40と下型41とで構成された金型42を備えている。上型40は上型支持機構43を介して柱状部材44の上端部に支持され、下型41は下型支持機構45に支持されている。
上型支持機構43は、図示しないアクチュエータにより作動して、上型40を柱状部材44の上端部に保持する位置と、柱状部材44の上端部から離脱させる位置とに切り替えられるようになっている。柱状部材44の上端部には、下方に突出する位置決めピン(図示せず)が配設される一方、上型40の上面には上記位置決めピンが挿入される孔部(図示せず)が形成されている。上記位置決めピンを上型40の孔部に挿入することにより、上型40が所定位置に位置決めされる。
一方、下型支持機構45は、上下方向に伸縮する油圧シリンダ46のロッド47上端部に取り付けられており、従って、油圧シリンダ46の作動により下型41が上型40に対し接離する。ロッド47の上端部には上方へ突出する位置決めピン(図示せず)が配設される一方、下型41の下面には上記位置決めピンが挿入される孔部(図示せず)が形成されている。上記位置決めピンを下型41の孔部に挿入することにより、下型41が所定位置に位置決めされる。下型支持機構45は上記上型支持機構43と同様に図示しないアクチュエータにより作動して、下型41をロッド47の上端部に保持する位置と、ロッド47の上端部から離脱させる位置とに切り替えられる。上記上型支持機構43、柱状部材44、下型支持機構45及び油圧シリンダ46はプレス加工装置23を構成するものである。
上記下型41には、インナパネル4における貫通孔10用の被加工部50(図7に示す)に、プレス加工としての穴抜き加工により貫通孔10を形成するための貫通孔用の加工具(図示せず)が取り付けられている。さらに、下型41には、インナパネル4における挿通孔15用の被加工部51(図5及び図8に示す)に、穴抜き加工により挿通孔15を形成するとともに、該挿通孔15周縁にプレス加工としてのバーリング加工を施す挿通孔用の加工具52が取り付けられている。この挿通孔用の加工具52により補強部材6の被加工部53(図5及び図8に示す)に挿通孔16が形成されるようになっている。
上記挿通孔用の加工具52は、図8に示すように、上下方向に延びる棒状に形成され、下端部が下型41に固定されている。該加工具52の上端部には穴抜き加工用のピアス加工部52aが設けられ、下端側にはバーリング加工用のバーリング加工部52bが設けられている。ピアス加工部52aは、先端が尖った柱状をなしており、また、バーリング加工部52bは、ピアス加工部52aの下端に連続し下側へ拡径して延びるテーパ面で構成されている。
上記上型40には、該上型40と下型41とを接近させた状態で、上記貫通孔用の加工具を逃がすための第1孔部(図示せず)と、挿通孔用の加工具52を逃がすための第2孔部54とが形成されている。第2孔部54の周縁には、加工具52のバーリング加工部52bに対応するテーパ面54aが形成されており、このテーパ面54aと、上記加工具52のテーパ面52bとにより上記した形状のバーリング加工が施されるようになっている。
上記上型40及び下型41は、マテハンロボット24により交換されるようになっている。すなわち、例えば、車両の前側に配設される前側ドアと後側ドアとで挿通孔15、16の位置や形状が異なる場合には、前側ドア用の金型と、後側ドア用の金型とを用意し、図1に示すように、プレス加工装置23に支持されていない方の金型をマテハンロボット24の近傍に設けられた型置き台55に置いておく。尚、金型の種類は3種類以上であってもよい。
上記プレス加工装置23よりも製造ラインの下流側には、プレス加工装置23によるプレス加工が完了した中間成形品Sを仮置きしておくための第2仮置台56が設置されている。また、図示しないが、上記のようにしてインナパネル4、サッシュ5及び補強部材6が一体化されてなる中間成形品Sには、別の装置によりアウタパネル3が取り付けられてドア2が得られるようになっている。
次に、上記のように構成された製造装置1を用いてドア2を製造する場合について説明する。まず、インナパネル4、サッシュ5及び補強部材6を本製造装置1から離れたところに設置されている成形装置(図示せず)を用いてプレス加工により成形しておく。これが本発明の一次加工工程である。このときにインナパネル4の本体面部4aには、貫通孔10の本体面部4aに形成される部分が、本体面部4a及び縦面部4bの成形と同時に形成される。さらに、この一次加工工程でインナパネル4を成形する成形装置の成形型には、貫通孔10の縦面部4bに形成される部分及び挿通孔15を形成するためのカムダイが設けられていない。よって、一次加工工程では、縦面部4bに貫通孔10及び挿通孔15が形成されないようになっている。また、ラッチ取付部補強部材6を成形する成形型(図示せず)には、挿通孔16を形成するための構造が設けられていない。よって、一次加工工程では、ラッチ取付部補強部材6に挿通孔16が形成されないようになっている。
上記のようにして成形されたインナパネル4、サッシュ5及びラッチ取付部補強部材6は、パレットPに載置した状態でアッセンブリ治具20の近傍まで搬送しておく。この際、インナパネル4の縦面部4bには挿通孔15が形成されていないため、該縦面部4bには、図5(a)に示すように、バーリング加工も施されておらず、よって、挿通孔用の被加工部51には厚み方向に突出した形状が形成されていない。このため、インナパネル4を搬送する際、突出した形状が邪魔になることはなく、パレットPの限られたスペースに多数重ねて搬送することが可能になる。また、そのように搬送時に挿通孔用の被加工部51に突出した形状がないことにより、インナパネル4を重ねて縦面部4b同士が接触した場合、縦面部4bに打痕等の傷が付きにくい。これにより、搬送の際に、インナパネル4間にクッション材を介在させなくてもよくなり、このことによっても、インナパネル4を限られたスペースで多数重ねて搬送することが可能になる。また、同様に、ラッチ取付部補強部材6にも挿通孔16が形成されていないので、バーリング加工が施されておらず、該補強部材6の被加工部53には厚み方向に突出する形状がない。このため、ラッチ取付部補強部材6を限られたスペースで多数重ねて搬送することが可能である。
そして、図1に示すように、組立作業者Yが、一次スポット溶接装置21と反対側に位置する保持部材20aに、上記パレットP上のインナパネル4、サッシュ5及びラッチ取付部補強部材6を保持させる。このとき、図5(b)及び図9(a)に示すように、インナパネル4の被加工部51と、ラッチ取付部補強部材6の被加工部53とは厚み方向に重なっているとともに、図7(b)に示すように、インナパネル4の被加工部50と、ラッチ取付部補強部材6の貫通孔11とが重なっている。
その後、保持部材20aを旋回装置26により180゜回転させて、インナパネル4、サッシュ5及びラッチ取付部補強部材6を保持した保持部材20aを一次スポット溶接装置21側に向ける。この保持部材20aに保持されているインナパネル4、サッシュ5及びラッチ取付部補強部材6を、一次スポット溶接装置21が溶接して一体化し、これによって中間成形品Sが得られる。
しかる後、図1に仮想線で示すように、上記アッセンブリ治具20に保持されている中間成形品Sを一方の一次スポット溶接装置21aがマテハンで把持してアッセンブリ治具20から外し、第1仮置台34まで搬送した後、該第1仮置台34に置く。この第1仮置台34に置かれた中間成形品Sを、マテハンロボット24が把持して第1仮置台34から持ち上げ二次スポット溶接装置22まで搬送して、中間成形品Sの被溶接部をスポット溶接機35にセットする。この被溶接部がスポット溶接機35により溶接される。このようにして中間成形品Sをマテハンロボット24で搬送して複数の被溶接位置を二次スポット溶接装置22で順次溶接していき、ドア構成部材3〜6同士の溶接が完了する。上記一次スポット溶接装置21及び二次スポット溶接装置22が本発明の接合装置であり、これらスポット溶接装置21、22によって行われる溶接作業が本発明の接合工程である。
接合工程が完了すると、マテハンロボット24は中間成形品Sを保持したまま二次スポット溶接装置22から外してプレス加工装置23まで搬送し、中間成形品Sをプレス加工装置23にセットする。このとき、図8(a)及び図9(b)に示すように、中間成形品Sの被加工部50、51、53が上型40と下型41との間に位置する。上記マテハンロボット24が本発明の搬送装置であり、このマテハンロボット24により中間成形品Sをプレス加工装置23にセットする作業が本発明のセット工程である。このセット工程では、マテハン33を位置決めすることで、中間成形品Sを金型42に位置決めするようにしている。
セット工程が完了すると、油圧シリンダ46を作動させて下型41を上昇させる。この下型41が上型40に接近し、図8(b)に示すように、挿通孔用の加工具52によりインナパネル4の挿通孔用の被加工部51及びラッチ取付部補強部材6の挿通孔用の被加工部53に挿通孔15、16が形成されるとともに、図8(c)に示すように、バーリング加工部52b及びテーパ面54aにより、貫通孔15、16の周縁にバーリング加工が施される。さらに、図示しないが貫通孔用の加工具によりインナパネルの被加工部50に貫通孔10が形成される。これが本発明のプレス工程である。
このとき、インナパネル4の挿通孔用の被加工部51とラッチ取付部補強部材6の挿通孔用の被加工部53とは、挿通孔用の加工具52の移動方向に見て重複しているので、該加工具52のピアス加工部52aにより両被加工部51、53に挿通孔15、16が同時に成形される。さらに、挿通孔用の加工具52のバーリング加工部52bにより両被加工部51、53には、挿通孔15、16周縁にドア袋部側へ突出するバーリング形状が成形される。
このようにインナパネル4の被加工部51及びラッチ取付部補強部材6の被加工部53に同時に同じプレス加工を施すことにより、インナパネル4やラッチ取付部補強部材6に成形時の誤差が生じている場合や、インナパネル4とラッチ取付部補強部材6との接合位置が所期の位置からずれている場合に、インナパネル4の挿通孔15の形状及び位置と、ラッチ取付部補強部材6の挿通孔16の形状及び位置とが対応するようになり、品質不良の発生を抑えることができる。
また、インナパネル4の貫通孔用の被加工部50とラッチ取付部補強部材6の貫通孔11とは、貫通孔用の加工具の移動方向に見て重複している。このため、該加工具により被加工部50には貫通孔11の形状に対応したプレス加工が施される。これにより、インナパネル4やラッチ取付部補強部材6に成形時の誤差が生じている場合や、インナパネル4とラッチ取付部補強部材6との接合位置が所期の位置からずれている場合に、インナパネル4の貫通孔10の形状及び位置と、ラッチ取付部補強部材6の貫通孔11の形状及び位置とが対応するようになり、このことによっても品質不良の発生を抑えることができる。
上記プレス工程が完了した後、マテハンロボット24は中間成形品Sを保持したままプレス加工装置23から外して第2仮置台56に置く。該第2仮置台56に置かれた中間成形品Sは別の場所に運ばれてアウタパネル3と一体化されてドア2となる。
したがって、この実施形態1に係る製造装置1及び製造方法によれば、ドア構成部材3〜6を一次スポット溶接装置21及び二次スポット溶接装置22で一体化してなる中間成形品Sをマテハンロボット24でプレス加工装置23まで自動的に搬送するようにしたので、製造現場における組立作業者Yの作業工数を削減することができて省力化を図ることができる。また、一体化されたインナパネル4及びラッチ取付部補強部材6の両被加工部51、53にプレス加工を同時に施すとともに、貫通孔用の加工具によりラッチ取付部補強部材6の被加工部50に、インナパネル4の貫通孔10の形状に対応したプレス加工を施すことができる。これにより、品質不良の発生を抑えることができて、金型42等の修正工数を減少させることができる。
また、一次加工工程でインナパネル4に本体面部4aと縦面部4bとをプレス加工により成形しておき、その後のプレス工程で縦面部4bの被加工部51に穴抜き加工及びバーリング加工を施すことができる。これにより、一次加工工程でインナパネル4を成形する成形型の構造をシンプルにすることができる。その結果、該成形型に発生するトラブルを減少させることができるとともに、該成形型のメンテナンス性を向上させることができる。
また、プレス工程でインナパネル4の縦面部4b及びラッチ取付部補強部材6にバーリング加工を施すようにしたので、パレットPでの搬送時には、インナパネル4の縦面部4b及びラッチ取付部補強部材6にバーリング加工による突出した形状がない状態である。このため、該突出した形状が邪魔になることはなく、インナパネル4及びラッチ取付部補強部材6を限られたスペースで多数重ねて搬送することが可能になり、物流コストを低減することができる。
また、マテハンロボット24で中間成形品Sを搬送するので、該中間成形品Sをプレス加工装置23の所定位置に容易に位置決めすることができる。また、プレス工程が終了した後、マテハンロボット24が中間成形品Sをプレス加工装置23から外すので、製造現場でより一層省力化を図ることができる。
(実施形態2)
図10は本発明の実施形態2に係る製造装置1を示している。この実施形態2の製造装置1は、上記実施形態1の製造装置1とはプレス加工装置23の配置が異なるだけで他の部分は同じであるため、以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付し、異なる部分を詳細に説明する。
すなわち、この実施形態では、2台のプレス加工装置23が旋回装置70を介して設置されている。旋回装置70は、上記旋回装置26と同様に旋回軸71と旋回台72とを備えている。上記プレス加工装置23は、旋回台72上で旋回軸71の回転中心を挟む対称位置にそれぞれ固定されている。この場合、一方のプレス加工装置23に、例えば前側ドア用の金型を支持させておき、該プレス成形装置23をマテハンロボット24側に位置付けておくことで、該プレス加工装置23により中間成形品Sにプレス加工を施すことが可能になる。このとき、他方のプレス加工装置23は、マテハンロボット24と反対側に位置しているので、組立作業者Yが他方のプレス加工装置23の金型を容易に交換することができる。そして、旋回台を180゜回転させて他方のプレス加工装置23をマテハンロボット24側に位置付けることで、他方のプレス加工装置23を用いて別の中間成形品Sにプレス加工を施すことが可能になる。これにより、製造ラインの流れを止めることなく、金型の交換が行える。
この実施形態2に係る製造装置1及び製造方法によっても、実施形態1と同様に、製造現場で省力化を図ることができるとともに、品質不良の発生を抑えることができてプレス金型42等の修正工数を減少させることができる。
(実施形態3)
図11は本発明の実施形態2に係る製造装置1を示している。この実施形態3の製造装置1は、上記実施形態1の製造装置1とはプレス加工装置80の配置が異なるだけで他の部分は同じであるため、以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付し、異なる部分を詳細に説明する。
すなわち、この実施形態では、2台のプレス加工装置80が、アッセンブリ治具20の旋回軸27の回転中心を挟む対称位置に配置されて、保持部材20aにそれぞれ固定されている。各プレス加工装置80は、図12に示すように、金型81と、該金型81を駆動する駆動機構82とを備えている。金型81は、保持部材20aのインナパネル4等を保持する側に固定された固定型83と、該固定型83に対し水平方向に接離する可動型84とで構成されており、この可動型84に、穴抜き加工及びバーリング加工用の加工具(図示せず)が取り付けられている。
駆動機構82は、支持台85と、該支持台85に固定された第1油圧シリンダ86と、第1油圧シリンダ86のロッド87を案内する案内部材88とで構成されている。第1油圧シリンダ86のロッド87の伸縮方向は、固定型83に接離する方向(図12に矢印Xで示す)とされ、この第1油圧シリンダ86の作動により可動型84が固定型83に接離する。インナパネル4及びラッチ取付部補強部材6を保持部材20aに保持した状態で、被加工部50、51、53が固定型83の成形面と重なるようになっている。
上記支持台85は、回動機構89より保持部材20aに支持されている。この回動機構89は、支軸90と、該支軸90を保持部材20aの外周面に固定する固定部材91と、第2油圧シリンダ92とで構成されている。第2油圧シリンダ92は、保持部材20aの固定型83と反対側に取り付けられている。支持台85には、第2油圧シリンダ92側へ突出する突出部93が設けられている。支軸90は、上記突出部93の長手方向中間部に連結されている。第2油圧シリンダ92のロッド94の伸縮方向は、保持部材20aの内外方向とされ、該ロッド94の先端部が支持台85の突出部93先端に連結されている。従って、第2油圧シリンダ92の作動により支持台85が支軸90周り(図12に矢印Zで示す)に回動して第2油圧シリンダ86、案内部材88及び可動型84が移動するようになっている。
また、上記第1油圧シリンダ86及び第2油圧シリンダ92は、図示しない油圧シリンダコントローラにより制御されている。このコントローラには、少なくとも上記一次スポット溶接装置21のコントローラから溶接完了信号が入力されるようになっている。
この製造装置1を用いてドア2を製造する場合には、まず、組立作業者Yが一次加工工程で成形されたインナパネル4、サッシュ5及びラッチ取付部補強部材6を保持部材20aに保持させる。その後、一次スポット溶接装置21で、インナパネル4、サッシュ5及びラッチ取付部補強部材6を溶接することで、中間成形品Sが得られる。この工程が接合工程である。
次いで、一次スポット溶接装置21のコントローラから出力された溶接完了信号が、油圧シリンダ86、92のコントローラに入力される。この信号に基づいて、油圧シリンダ86,92のコントローラは、まず、第2油圧シリンダ92を作動させてロッド94を進出させることにより、退避位置にある可動型84及び駆動機構82をプレス可能位置に位置付ける。その後、油圧シリンダ86、92のコントローラが第1油圧シリンダ86を作動させて可動型84を移動させ、インナパネル4及びラッチ取付部補強部材6をアッセンブリ治具20に保持したままで被加工部50、51、53にプレス加工を施す。この工程がプレス工程であり、このプレス工程の後に、二次スポット溶接装置22で溶接を行うことが可能である。
つまり、この実施形態3では、インナパネル4及びラッチ取付部補強部材6をアッセンブリ治具20に保持した状態で、該アッセンブリ治具20に取り付けられたプレス加工装置80を用いて被加工部50、51、53にプレス加工を同時に施すことが可能になる。
この実施形態3に係る製造装置1及び製造方法によっても、実施形態1と同様に、製造現場で省力化を図ることができるとともに、品質不良の発生を抑えることができてプレス金型81等の修正工数を減少させることができる。
さらに、プレス加工装置80がアセンブリ治具20に取り付けられているので、実施形態1、2のようなセット工程を廃止することができる。
尚、この実施形態3においては、インナパネル4の開放側を保持部材20aに対向させた状態で該インナパネル4を保持部材20aに保持させて、中間成形品Sを得るようにしているが、これに限らず、インナパネル4の開放側を保持部材20aと反対側に向けた状態で該インナパネル4を保持部材20aに保持させて、中間成形品Sを得るようにしてもよい。
(実施形態4)
図13は本発明の実施形態4に係る製造装置1を示している。この実施形態4の製造装置1は、上記実施形態1の製造装置1とはプレス加工装置100の配置が異なるだけで他の部分は同じであるため、以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付し、異なる部分を詳細に説明する。
すなわち、この実施形態では、移動手段としてのロボット29により、可動タイプのプレス加工装置100を移動させてプレス加工を行うようにしている。ロボット29の付近にはスポット溶接機30を置くための第1置き台101と、プレス加工装置100を置くための第2置き台102とが設けられている。上記スポット溶接機30とプレス加工装置100とは、ATC103、いわゆるオートツールチェンジャーを介してロボット29に付け替えられるようになっている。
プレス加工装置100は、上記実施形態3と同様な固定型104及び可動型105からなる金型106と、可動型105を駆動する油圧駆動ユニット107とで構成されている。この可動型105に、穴抜き加工及びバーリング加工用の加工具(図示せず)が取り付けられている。油圧駆動ユニット107は、従来より各種駆動源として用いられている一般的なものであり、サーボモータや油圧ポンプ等(図示せず)を一体にしてコンパクトに構成されている。この油圧駆動ユニット107の油圧ポンプにより発生する油圧により、可動型105が移動して可動型104に接離するようになっている。
この製造装置1を用いてドア2を製造する場合には、まず、組立作業者Yが一次加工工程で成形されたインナパネル4、サッシュ5及びラッチ取付部補強部材6を保持部材20aに保持させる。その後、スポット溶接機30が取り付けられたロボット29で、インナパネル4、サッシュ5及びラッチ取付部補強部材6を溶接することで、中間成形品Sが得られる。この工程が接合工程である。
次いで、ロボット29に取り付けられているスポット溶接機30をATC103によりプレス加工装置100に付け替える。このプレス加工装置100をロボット29で移動させることにより、インナパネル4及びラッチ取付部補強部材6をアッセンブリ治具20に保持したままで、被加工部50、51にプレス加工を施す。
つまり、この実施形態4では、インナパネル4及びラッチ取付部補強部材6をアッセンブリ治具20に保持した状態で、ロボット29により移動させたプレス加工装置100を用いて被加工部50、51、53にプレス加工を施すことが可能になる。この工程がプレス工程であり、このプレス工程の後に、二次スポット溶接装置22で溶接を行うことが可能である。
この実施形態4に係る製造装置1及び製造方法によっても、実施形態1と同様に、製造現場で省力化を図ることができるとともに、品質不良の発生を抑えることができてプレス金型42等の修正工数を減少させることができる。
また、プレス加工装置100をロボット29で移動させるので、実施形態1、2のようなセット工程を廃止することができる。
また、プレス加工装置100をロボット29により移動させるようにしているので、1つの金型106を用いてドアの異なる箇所にプレス加工を施すことができるとともに、車種等によりドアの形状が異なる場合に、金型106を交換せずに単一のプレス加工装置100で対応することができて、設備費を低減することができる。
また、この実施形態4において、車種毎に専用の金型を備えたプレス加工装置を複数用意しておいてATC103により交換できるようにしてもよい。この場合、例えば複数の被加工部が接近しているドアを製造する際、これら被加工部を一度に加工できる金型を用いることで、製造工数を削減することができる。
尚、インナパネル4及びラッチ取付部補強部材6以外のドア構成部材に被加工部を設定し、該被加工部にプレス工程で加工を施すようにしてもよい。さらに、これらドア構成部材には、穴抜き加工やバーリング加工以外にも、凹凸形状を形成する加工(エンボス加工)や切欠を形成する加工(ノッチ加工)等のプレス加工を施す被加工部を設定し、プレス工程で該被加工部に対し該当する加工を施すようにしてもよい。
また、上記実施形態では、インナパネル4の挿通孔用の被加工部51と、ラッチ取付部補強部材6の挿通孔用の被加工部53とに同時にプレス加工を施すようにしているが、一次加工工程で一方の被加工部に所定形状のプレス加工を施しておき、その後のプレス工程で他方の被加工部に、一方の被加工部の加工跡に対応したプレス加工を施すようにしてもよい。具体的には、図15及び図16に示す参考例1のように、ラッチ取付部補強部材6の被加工部53にプレス工程の前に挿通孔16を予め形成しておき(図15(a)及び同図(b)に示す)、プレス工程において、インナパネル4の挿通孔用の被加工部51にラッチ取付部補強部材6の挿通孔16よりも小さい挿通孔15を形成するとともに、このインナパネル4の挿通孔15周縁にラッチ取付部補強部材6の挿通孔16の形状に対応したバーリング加工を施す(図15(c)及び図16に示す)。
このようにプレス工程でインナパネル4の被加工部51に、ラッチ取付部補強部材6の被加工部53の加工跡に対応したプレス加工を施す場合には、プレス加工装置23は、インナパネル4及びラッチ取付部補強部材6が一体化されて補強部材6の加工跡と重なったインナパネル4の被加工部51に、ラッチ取付部補強部材6の被加工部53の挿通孔16に対応したプレス加工を施すことになる。これにより、ラッチ取付部補強部材6の挿通孔16の形状及び位置と、インナパネル4の挿通孔15の形状及び位置とが対応するようになる。
また、上記のようにプレス工程でインナパネル4の被加工部51に、ラッチ取付部補強部材6の被加工部53の加工跡に対応したプレス加工を施す場合には、一次加工工程でインナパネル4に本体面部4aと縦面部4bとを予めプレス加工により成形しておき、その後のプレス工程で縦面部4bの被加工部51に穴抜き加工及びバーリング加工を施してもよい。これにより、一次加工工程でインナパネル4を成形する成形型の構造をシンプルにすることができる。その結果、該成形型に発生するトラブルを減少させることができるとともに、該成形型のメンテナンス性を向上させることができる。
また、この参考例1においても、プレス工程でインナパネル4の縦面部4bにバーリング加工を施すようにしたので、インナパネル4をパレットPで搬送する際、縦面部4bにはバーリング加工による突出した形状がない。このため、インナパネル4を限られたスペースで多数重ねて搬送することが可能になり、物流コストを低減することができる。
また、図17に示す変形例のように、一次加工工程で、インナパネル4の挿通孔用の被加工部51に挿通孔15を形成するとともに、ラッチ取付部補強部材6の挿通孔用の被加工部53に挿通孔16を形成するようにしてもよい(図17(a)に示す)。この変形例2では、挿通孔15、16を形成した後、インナパネル4とラッチ取付部補強部材6とを接合し(同図(b)に示す)、その後のプレス工程で、インナパネル4及び補強部材5にバーリング加工を施す。
この変形例では、一次加工工程でインナパネル4及びラッチ取付部補強部材6に挿通孔15、16が形成されているので、接合工程を経て得られた中間成形品Sをプレス加工装置23に位置決めする際、加工具52を用いて位置決めすることが可能になる。すなわち、加工具52の先端側(図8の上側)には、該加工具52が突出する方向に延びる位置決めピン(図示せず)が加工具52の同心上に設けられている。この位置決めピンの先端は先細形状とされ、基端側の外径は上記挿通孔15、16の内径よりも僅かに小さく設定されている。従って、この場合、まず、マテハンロボット24が中間成形品Sを把持した状態でプレス加工装置23まで搬送した後、ラッチ取付部補強部材6の被加工部53を上型40、即ち固定型の成形面に当接させる。その後、下型41を上昇させると、加工具52の位置決めピンが先端側から挿通孔15及び挿通孔16に順に挿通していく。この位置決めピンが挿通孔15及び挿通孔16に挿通した状態で、インナパネル4及びラッチ取付部補強部材6が金型42に対して位置決めされる。これにより、加工具52に位置決めピンを設けるというシンプルな構造で中間成形品Sの位置決めを確実に行うことができる。そして、位置決めされた状態の中間成形品Sに加工具52でバーリング加工が施される。
また、図18に示す参考例2のように、一次加工工程で、インナパネル4の挿通孔用の被加工部51に挿通孔15を形成するとともに、ラッチ取付部補強部材6の挿通孔用の被加工部53に上記挿通孔15よりも大径の挿通孔16を形成するようにしてもよい(図18(a))。この参考例2では、挿通孔15、16を形成した後、インナパネル4とラッチ取付部補強部材6とを接合し(同図(b)に示す)、その後のプレス工程で、インナパネル4にのみ、挿通孔16の形状に対応したバーリング加工を施す。
また、本発明は、スライド式のドアやハッチバックドアを製造する場合や、これらドア以外にも、例えばトランクリッドやボンネットフード等を製造する場合にも適用することができる。また、本発明は、自動車以外の車両の蓋体を製造する場合にも適用することができる。
以上説明したように、本発明に係る車両用蓋体の製造装置は、例えば、自動車の側部に配設されるドアを製造する場合に用いることができる。
実施形態1に係る製造装置の平面図である。 ドアの分解斜視図である。 ドアのドアラッチ機構取付部の近傍を車両後側から見た図である。 図3のA−A線における断面図である。 図3のB−B線における断面図であり、(a)はインナパネルとラッチ取付部補強部材とを接合する前の状態を示し、(b)はインナパネルとラッチ取付部補強部材とを接合した状態を示し、(c)はインナパネル及びラッチ取付部補強部材に挿通孔を形成した状態を示す図である。 プレス加工装置の側面図である。 図3のB−B線における断面図であり、(a)はインナパネルとラッチ取付部補強部材とを接合する前の状態を示し、(b)はインナパネルとラッチ取付部補強部材とを接合した状態を示す図である。 インナパネル及びラッチ取付部補強部材にプレス加工を施す要領を説明する図であり、(a)は加工具が両部材に接近した状態を示し、(b)は両部材に穴抜き加工を施した状態を示し、(c)は両部材にバーリング加工を施した状態を示す図である。 図5の部分拡大図であり、(a)は図5(b)に対応し、(b)は図5(c)に対応する図である。 実施形態2に係る図1相当図である。 実施形態3に係る図1相当図である。 実施形態3のプレス加工装置の概略構成を示す側面図である。 実施形態4に係る図1相当図である。 実施形態4のロボット及びプレス加工装置の概略構成を示す側面図である。 参考例1に係り、(a)〜(c)はそれぞれ図5(a)〜(c)の部分拡大図である。 参考例1に係る図5(c)相当図である。 実施形態の変形例に係る図11相当図である。 参考例2に係る図11相当図である。
1 製造装置
2 ドア(車両用蓋体)
4 インナパネル(第2蓋体構成部材)
4a 本体面部
4b 縦面部
6 補強部材(第1蓋体構成部材)
20 アッセンブリ治具
21 一次スポット溶接装置(接合装置)
22 二次スポット溶接装置(接合装置)
23 プレス加工装置
24 マテハンロボット(搬送装置)
29 ロボット(移動装置)
50 被加工部(第2被加工部)
51 被加工部(第2被加工部)
53 被加工部(第1被加工部)

Claims (3)

  1. 車両に形成された開口部を開閉する車両用蓋体の製造装置であって、
    金属板を所定形状に成形してなる第1蓋体構成部材及び第2蓋体構成部材を厚み方向に重ねた状態でスポット溶接して一体化するスポット溶接装置と、
    上記スポット溶接装置で一体化された上記第1蓋体構成部材及び第2蓋体構成部材の厚み方向に重なる部分に、スポット溶接部分から離れてそれぞれ設定された第1被加工部及び第2被加工部に形状変更を伴うプレス加工を同時に施して最終形状を得るプレス加工装置とを備えていることを特徴とする車両用蓋体の製造装置。
  2. 車両に形成された開口部を開閉する車両用蓋体の製造装置であって、
    金属板を所定形状に成形してなる第1蓋体構成部材及び第2蓋体構成部材を厚み方向に重ねた状態で保持する治具と、
    上記治具に保持された第1蓋体構成部材及び第2蓋体構成部材をスポット溶接して一体化するスポット溶接装置と、
    上記治具に取り付けられ、上記スポット溶接装置で一体化された上記第1蓋体構成部材及び第2蓋体構成部材の厚み方向に重なる部分に、スポット溶接部分から離れてそれぞれ設定された第1被加工部及び第2被加工部に形状変更を伴うプレス加工を同時に施して最終形状を得るプレス加工装置とを備えていることを特徴とする車両用蓋体の製造装置。
  3. 車両に形成された開口部を開閉する車両用蓋体の製造装置であって、
    金属板を所定形状に成形してなる第1蓋体構成部材及び第2蓋体構成部材を厚み方向に重ねた状態で保持する治具と、
    上記治具に保持された第1蓋体構成部材及び第2蓋体構成部材をスポット溶接して一体化するスポット溶接装置と、
    上記スポット溶接装置で一体化された上記第1蓋体構成部材及び第2蓋体構成部材の厚み方向に重なる部分に、スポット溶接部分から離れてそれぞれ設定された第1被加工部及び第2被加工部に形状変更を伴うプレス加工を同時に施して最終形状を得る可動タイプのプレス加工装置と、
    上記プレス加工装置を移動させる移動装置とを備えていることを特徴とする車両用蓋体の製造装置。
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