JP4766772B2 - 多層プリント配線板の製造に使用される一次積層体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱プレスなどによって多層プリント配線板を製造する際に使用される一次積層体の製造方法に関し、さらに詳しくは、マスラミネーション法の改良に係る。
【0002】
【従来の技術】
片面又は両面に電気回路を有する内層コア材の複数枚と、プリプレグの複数枚をを交互に積層させて多層プリント配線板の製造方法としては、40層程度の多層プリント配線板を一挙に製造できるピンラミネーション法(ピンラミ法)と、4〜8層程度の積層させて一旦一次積層体を作成し、この一次積層体を2枚の銅箔間に挟んで加熱プレスするマスラメネーション法(マスラミ法)が知られている。
ピンラミ法は、内層コア材、プリプレグに予め位置合わせ用の穴を開け、冶具板に設けられている基準ピンに、銅箔、プリプレグ、内層コア材、プリプレグ、内層コア材、プリプレグ、内層コア材、プリプレグ、銅箔と積層してから加熱プレスする方法であって、この方法によれば、一次積層体を経ることなく、40層程度の多層プリント配線板を一挙に製造できる利点がある。
【0003】
しかしながら、ピンラミ法では冶具板に垂直に立てられた複数本のピンに、複数枚の内層コア材とプリプレグを挿入させるため、その作業に時間を要する欠点がある。これに加えて、ピンラミ法では、加熱プレス時にプリプレグが融けてピンに絡まるため、製造された多層プリント配線板を冶具板から取り外す際のピン抜きに専用工具を必要とし、プリプレグの溶解硬化した残滓が冶具板のピン穴に詰まった場合には、その除去にも専用工具を必要とする。
また、ピンラミ法では製造せんとする多層プリント配線板の寸法に合わせて冶具板を製作するので、冶具板の種類が多くなり、その保守管理が面倒な不都合がある。
【0004】
一方、マスラミ法は、複数枚のプリプレグと内層コア材を交互に積層させ、プリプレグと内層コア材との界面をスポット接合して一次積層体をまず作製する。次いで、この一次積層体を典型的には2枚の銅箔で挟み、全体を熱プレスして各積層部材間を面接着させることによって多層プリント配線板を製造する方法である。一次積層体を製造する際しては、その最外層の両面又は片面に、銅箔を予め配設しておく場合もあるが、いずれにしても、従来のマスラミ法は、各積層部材をそれぞれの界面で部分的に接合させる手段の違いによって次の二つに大別される。その一つは、プリプレグと内層コア材とを熱溶着によってスポット接合する熱溶着法であり、他の一つはハトメを使用して各積層部材を一括してスポット接合するハトメ法である。ここで、スポット接合とは、各積層部材間の界面が局部的に、換言するば、部分的に接合され、面接着していないことを意味する。
熱溶着法による一次積層体は、積層部材同士の接着力が必ずしも充分でなく、内層コア材やプリプレグの枚数が増加すると、一次積層体の厚さ方向中央部で接着力が一段と低下するため、積層部材間で剥離を起こし易い。これに対して、ハトメ法は各積層部材を一次積層体の厚さ方向に貫通するハトメで固定するものであるから、部材間で剥離を起こす心配はないものの、ハトメをかしめる際のハトメ胴部の変形により、ハトメ穴の内壁が圧迫されることに起因して部材間にずれが発生し易く、この傾向は内層コア材やプリプレグの枚数が増加すると増大する。
こうした理由から、従来のマスラミ法で製造できる一次積層体は、12層程度が限度であるのが通例である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来のマスラミ法を改良し、一次積層体の層間をスポット接合する手段として、熱溶着とハトメ固定を併用し、上記した不都合を解消すると共に、従来法では製造することができなかった、40層程度の一次積層体を製造する方法を提供する。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る一次積層体の製造方法の一つは、複数枚のプリプレグと内層コア材を交互に積層させ、各積層部材間の界面をスポット接合させて一次積層体を製造する方法において、各積層部材間の界面を熱溶着によってスポット接合し、さらに、各積層部材を貫通し、内径がハトメ胴部の外径に等しい寸法にある挿入穴に、ハトメを差し込んでその先端部をかしめることを特徴とする。
本発明に係る一次積層体製造法の他の一つは、複数枚のプリプレグと内層コア材を交互に積層させ、各積層部材間の界面をスポット接合させて一次積層体を製造する方法において、各積層部材間の界面を熱溶着によってスポット接合し、さらに、各積層部材を貫通し、内径がハトメ胴部の外径より大きく、ハトメのフランジ直径より小さいハトメ挿入穴に、ハトメを差し込んでその先端部をかしめることを特徴とする。
上記した二つのいずれの方法でも、ハトメによるスポット接合に際しては、プリプレグがCステージに至る温度にハトメを予め加熱して挿入穴に差し込むか、あるいは挿入穴にハトメを差し込んだ後、プリプレグがCステージに至る温度にこれを加熱してハトメ先端部をかしめることができる。このようなハトメ加熱の手法を採用すれば、ハトメ接合部は結果的に熱溶着されることになるので、単純な熱溶着によりスポット接合を省略することができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態を添付図面に沿って説明する。
図1は、プリプレグ1と、両面に回路パターンが形成された内層コア材2を交互に積層させ、本発明の方法によって製造された一次積層体を示す斜視図であって、符号3は各積層部材の界面をスポット接合している熱溶着接合部を示し、符号4は各積層部材を一括して機械的にスポット接合しているハトメ接合部を示す。
便宜上、図1ではプリプレグを3枚、内層コア材を2枚使用し、最外層にプリプレグを配した6層構造の一次積層体を示したが、本発明によれば、プリプレグ及び内層コア材の使用枚数を増加させて、40層程度の一次積層体を一挙に製造することができる。また、図示を省略したが、一次積層体の最外層の片面又は両面に銅箔を配し、その銅箔をプリプレグ1及び内層コア材と共にスポット接合させることができることは、先に説明したとおりである。また、図1の一次積層体は、最外層にそれぞれプリプレグが配されているが、本発明方法によれば、最外層にそれぞれ内層コア層が位置する一次積層体を製造することもできる。
図1に示す一次積層体では、対向する2辺周縁部それぞれに、2つの熱溶着接合部とハトメ接合部を設けているが、板状を呈する一次積層体のXY方向の寸法(二次元的な広がりの大小を言い、Z方向の寸法は一次積層体の厚さに相当する。)に応じて、一次積層体の周縁部任意個所に任意の個数で、熱溶着接合部3とハトメ接合部4を設けることができる。
【0008】
個々の積層部材を積層させるに当り、複数枚の内層コア材相互の位置合わせは、常法通り、基準ピンを用いて行うことができるほか、予め内層コア材に付けた基準マークを光学的に認識して各層の位置を合わせることができる。積層させる各部材には、所定の位置にハトメ挿入穴が設けられる。ハトメ挿入穴は、各部材を積層させるに先立って、各積層部材に予め穿設しておくことができるが、積層後に各部材を貫通するように穿設することも可能である。ハトメ挿入穴の内径は、ここに差し込まれるハトメの胴部外径と同一寸法であるか、あるいはハトメ胴部の外径より大きく、ハトメのフランジ部の直径より小さい寸法のいずれかが選ばれるが、これについては後述する。
【0009】
積層された各部材間相互を熱溶着によってスポット接合させるには、各積層部材を局部的に加熱する必要がある。加熱手段としては、当業界での常套手段であるハンダごて等による直接加熱や誘電加熱を任意に採用することができる。8層以上の多層一次積層体を製造する場合には、誘電加熱を採用することが好ましい。各積層部材は、この加熱によって局部的にBステージからCステージに移行してスポット接合される。
本発明では、各積層部材相互を熱溶着によってスポット接合させることに加えて、積層部材全てを厚さ方向に貫通するハトメによってスポット接合させる。このハトメ接合は、積層された各部材を貫通するハトメ挿入穴に、ハトメの胴部を差し込み、先端をかしめることで行われる。
前述したとおり、ハトメ挿入穴の内径は、挿入されるハトメの胴部外径と同一寸法とすることでき、また、ハトメ胴部の外径より大きく、しかも、ハトメのフランジ部の直径より小さい寸法とすることもできる。挿入穴の内径をハトメ胴部の外径と同一寸法とする場合には、ハトメによるスポット接合に先立って、熱溶着によるスポット接合を先行させることが好ましい。熱溶着によるスポット接合を先行させておけば、ハトメをかしめる際にハトメ胴部がたとえ変形しても、積層部材間における層間ずれを未然に防止できるからである。
【0010】
挿入穴の内径をハトメ胴部の外径より大きく、しかも、ハトメのフランジ部の直径より小さい寸法とした場合には、熱溶着によるスポット接合とハトメによるスポット接合のいずれを先行させても差し支えなく、また、両者を同時に行なっても差し支えない。
図2は、ハトメ胴部5の外径dより大きく、ハトメのフランジ部6の直径Dより小さい寸法にある挿入穴に、ハトメを差し込んだ状態を示す断面図である。ハトメ胴部の外周とその挿入穴の内壁との間のクリアランスは、ハトメ胴部の外径及びフランジ部の幅の大小に応じて選ぶことが好ましいが、一般的には100〜400ミクロン程度の範囲で選ばれる。クリアランスの存在は、ハトメ先端部をかしめる際にハトメ胴部が万一変形しても、その変形による挿入穴内壁への圧迫を防止ないしは軽減させる。
ハトメには、真鍮(黄銅)製、アルミニウム製などの金属製ハトメが使用でき、また、金属粉を混在させた合成樹脂製のハトメが使用できる。
【0011】
本発明のハトメ接合では、上記したクリアランスの有無に拘わりなく、ハトメに熱を付与してその温度をプリプレグ及び/又は内層コア材がCステージに至る温度に加熱することができる。ハトメへの熱の付与は、ハトメを挿入孔に差し込む前であっても、差し込んだ後であっても差し支えない。ハトメの加熱手段としては、ハトメが電気的良導体である場合には、通電加熱、直接加熱、高周波誘導加熱などが、絶縁体の場合には、直接加熱、高周波誘電加熱などが任意に採用可能である。
ハトメに熱を付与してハトメ接合を行うハトメ溶着接合法を利用すると、当然のことながら、ハトメに付与された熱によって挿入穴の内壁近傍は液状化させてCステージに移行させることができるので、そのハトメ接合部は熱溶着されることになる。ハトメ先端部のかしめ操作を行う時期は、挿入穴近傍がCステージに移行する前又は移行した後のいずれであっても差し支えないが、Cステージに移行する以前にかしめ操作を行えば、ハトメ胴部は液状化樹脂に取り囲まれた状態にあるので、万一ハトメ胴部が変形してもその変形は液状化樹脂で緩衝させ、積層部材にずれが起こることがない。
図1に例示した一次積層体は、その周縁部に熱溶着接合部4とハトメ接合部5が併設されているが、上記したハトメ溶着接合法を採用すれば、ハトメを全く使用しない熱溶着接合部3の一部又は全部を、ハトメ溶着接合法による接合部に置き換えることができ、同様にして、加熱なしのハトメ接合部4の一部又は全部を、ハトメ溶着接合法による接合部に置き換えることができる。
【0012】
【発明の効果】
本発明の方法は、各積層部材を熱溶着接合とハトメ接合とによって接合する方法であるため、従来のマスラミ法では実質的に製造できない40層程度の多層一次積層体を、積層部材間の剥離やずれを懸念することなく一挙に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法の一実施例によって製造された一次積層体の斜視図。
【図2】本発明の方法で採用されるハトメ接合を説明するためのハトメ挿入穴附近の部分拡大断面図。
【符号の説明】
1 プリプレグ
2 内層コア材
3 熱溶着接合部
4 ハトメ接合部
5 ハトメ胴部
6 ハトメフランジ部
7 ハトメ先端部
Claims (3)
- 複数枚のプリプレグと内層コア材を交互に積層させ、各積層部材間の界面を部分的に接合させて一次積層体を製造する方法において、
各積層部材に穿設された貫通孔であって内径がハトメ胴部の外径と等しい寸法にある挿入穴にプリプレグがCステージに至る温度に予め加熱されたハトメを差し込むか、あるいは挿入穴に差し込まれたハトメをプリプレグがCステージに至る温度に加熱してハトメ先端部をかしめることを特徴とする
一次積層体の製造方法。 - 複数枚のプリプレグと内層コア材を交互に積層させ、各積層部材間の界面を部分的に接合させて一次積層体を製造する方法において、
各積層部材に穿設された貫通孔であって内径がハトメ胴部の外径より大きくハトメフランジ部の直径より小さい挿入穴にプリプレグがCステージに至る温度に予め加熱されたハトメを差し込むか、あるいは挿入穴に差し込まれたハトメをプリプレグがCステージに至る温度に加熱してハトメ先端部をかしめることを特徴とする
一次積層体の製造方法。 - ハトメの加熱手段に、直接加熱、通電加熱、誘電加熱又は誘導加熱の何れかを利用する請求項1又は請求項2に記載の方法。
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