JP3934826B2 - 多層配線板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の絶縁層と複数の回路が積層されて形成される多層プリント配線板等の多層配線板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、一種類あるいは機能の異なる複数種の内層材1を複数枚組み合わせて用いて多層配線板を形成することが行なわれている。図7(a)は、複数枚の内層材をその厚み方向に対して直交する方向(水平方向)に並べて形成される多層配線板の製造方法を示すものであって、まず、内層材1の端面に他の内層材1の端面を突き合わせるようにして複数枚の内層材1をその厚み方向に対して直交する方向に並べて配置する。ここで使用される内層材1の突き合わせられる端部は結合部10として形成されていると共にその他の部分は製品部11として形成されており、内層材1として機能するために必要な回路等は製品部11に形成されている。次に隣り合う結合部10に亘るように耐熱性の接着テープ12を貼り付けて隣り合う内層材1を接着する。次に全部の内層材1に亘るようにプリプレグを内層材1の外側に重ねると共にプリプレグの外側に金属箔を重ねる。次にこの重ね合わせたものの全体をハーフサイズ(1m角サイズのプレスの半分の大きさ)または1m角サイズのプレス機を用いて加熱加圧し、プリプレグを硬化させて絶縁層を形成すると共にプリプレグの硬化により内層材1と金属箔を接着して一体化する。この後、金属箔にエッチング処理等を施して回路を形成すると共にスルーホール及びスルーホールメッキを施すことによって、多層配線板を形成するのである。
【0003】
また、図8(a)は、複数枚の内層材1をその厚み方向に対して直交する方向及び厚み方向(垂直方向)に並べて形成される多層配線板の製造方法を示すものであって、まず、内層材1に他の内層材1を重ねるようにして上記と同様の複数枚の内層材1をその厚み方向に並べて配置すると共に、上下に隣り合う内層材1の間にプリプレグ2を介在させる。次に、図8(b)に示すように、内層材1の四隅において、結合部10及びプリプレグ2を貫通させるようにハトメ15を取り付けて内層材1及びプリプレグ2を固定することによって組み合わせ体16を形成する。次に複数個の組み合わせ体16をその厚み方向に対して直交する方向に並べると共に、図8(a)のように内層材1の外側にプリプレグ2を重ね、さらに最外のプリプレグ2の外側に金属箔を重ねる。次に図7(a)のものと同様に、加熱加圧、回路形成、スルーホール及びスルーホールメッキを行うことによって、多層配線板を形成するのである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし図7(a)の従来例では、接着テープ12にて内層材1を接着しているので、内層材1同士の接着力が弱く、加熱加圧成形による内層材1の変形が抑えられなかった。つまり例えば、三枚の内層材1を用いて多層配線板を製造する場合、三枚の内層材1を同時に加圧加熱成形すると、プレス板の真中付近で加熱加圧される箇所では温度や圧力が他の箇所よりも大きくなって収縮変形しやすくなる。従って、図7(b)に示すように、内層材1の厚み方向に対して直交する方向に隣り合う内層材1の端面の間に大きな隙間13が生じるように変形することになり、すなわち、真中に位置する内層材1ではその両端部が収縮変形し、他の両端に位置する内層材1ではその一方の端部(真中の内層材1と隣接する端部)のみが収縮変形することになり、内層材1の間で成形ずれが生じて、内層材1の回路のパターンが設計時の回路のパターンに対して位置ずれを起こしたり歪んだりするという問題があった。
【0005】
また、接着テープ12の貼り位置の精度が低いと、製品部11に接着テープ12が貼られることがあり、このために内層材1や絶縁層や回路より耐熱性の低い接着テープ12が製品部11に残留することになって、多層配線板に耐熱性の低下などの品質劣化が生じる恐れがあった。
【0006】
さらに、図8の従来例では、隣り合う組み合わせ体16同士を接着テープ等で結合していないので、図8(b)と同様に、内層材1の厚み方向に対して直交する方向に隣り合う内層材1の端面の間に大きな隙間13が生じるように変形することになり、内層材1の間で成形ずれが生じて内層材1の回路のパターンが設計時の回路のパターンに対して位置ずれして歪むという問題があり、しかも、内層材1の厚み方向に並ぶ内層材1の間で上記の変形度合いが異なるので、内層材1の厚み方向に並ぶ内層材1の間で成形ずれが生じて、内層材1の回路のパターンが層間ずれを起こしたり歪んだりするという問題があった。
【0007】
また、内層材1及びプリプレグ2はハトメ15により固定されているので、加熱加圧成形の際に組み合わせ体16を挟む成形プレートにハトメ15が当たって、成形プレートが傷付くという問題があった。
【0008】
さらに、図7(a)や図8の従来例では、接着テープ12やハトメ15を用いて内層材1を結合しているために、内層材1として機能するために必要な製品部11以外に結合部10が必要となって、多層配線板が大型化するという問題があった。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、内層材の回路のパターンの位置ずれと層間ずれと歪みを小さくすることができ、また、耐熱性を高くすることができると共に小型化することができ、さらに、成形プレートが傷付かないようにすることができる多層配線板の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る多層配線板の製造方法は、内層材1の厚み方向に対して直交する方向に並んだ複数枚の内層材1に亘ってプリプレグ2を重ねることによって、プリプレグ2を複数枚の内層材1に接触させて配置し、内層材1と他の内層材1との隣接する端部の中心付近を含む複数箇所とプリプレグ2とを加熱加圧して接着させた後、各内層材1の端部以外とプリプレグ2を加熱加圧して接着させることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の請求項2に係る多層配線板の製造方法は、請求項1の構成に加えて、内層材1の厚み方向に並んだ内層材1の間に上記プリプレグ2を介在させることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の請求項3に係る多層配線板の製造方法は、請求項1又は2の構成に加えて、各内層材の端部とプリプレグを加熱加圧するにあたって、温度200〜300℃、圧力1〜5kg/cm2、時間20〜50秒で加熱加圧することを特徴とするものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0015】
内層材1としては従来から多層配線板の製造に使用されているものをそのまま用いることができ、例えば、絶縁層の片面あるいは両面に導体の回路を形成したものなどを用いることができる。絶縁層は任意な材料で形成されるものであって、ガラス織布やガラス不織布や紙などの基材にエポキシ樹脂やフェノール樹脂などの樹脂を含有して形成されるプリプレグを硬化させて絶縁層を形成することができる。また回路は銅箔などの金属箔にエッチングなどの回路形成処理を施して形成することができる。具体的には、銅張り積層板の銅箔に回路形成処理を施して回路板を形成して内層材1として用いることができる。また絶縁層の内部に回路が形成された内層材1やスルーホールを有する内層材1を用いることもできる。本発明で使用される内層材1は上記従来例の製品部11に相当する部分で全体が構成されている。つまり内層材1はその電気的な機能を発揮するのに必要な部分のみから構成されている。また内層材1の両面において、内層材1の端部は幅が3〜15mmの接合部3として形成されている。
【0016】
プリプレグ2としては従来から多層配線板の製造に使用されているものをそのまま用いることができ、例えば、ガラス織布やガラス不織布や紙などの基材に、エポキシ樹脂やフェノール樹脂などの樹脂を含有する樹脂ワニスを含浸させ、基材中の樹脂ワニスを乾燥させると共に樹脂を半硬化させて形成されるものを使用することができる。
【0017】
そして多層配線板を製造するにあたっては、まず内層材1の横に他の内層材1を近接させて配置することによって、内層材1の厚み方向と直交する方向(水平方向)に複数枚の内層材1を並べて配置する。この時、図3に示すように、内層材1の接合部3とこの内層材1に隣り合う他の内層材1の接合部3とを隣接させて内層材1を並べる。また、内層材1の端面同士を突き合わせるようにしてもよいし、端面の間に若干の隙間を設けるようにしてもよい。次に全ての内層材1に亘るように内層材1の上下両方の外側にプリプレグ2を重ね合わせることによって、複数枚の内層材1にプリプレグ2を接触させて配置し、さらに、このプリプレグ2の外側に他のプリプレグ2を一枚ずつ重ねて配置する。
【0018】
次に内層材1の接合部3の複数箇所において、内層材1とプリプレグ2を上下から挟んで加熱加圧し、プリプレグ2の樹脂を溶融硬化させることによって、図1(b)に示すように、点状の接着部4を複数個形成し、この接着部4で内層材1とプリプレグ2を接着(溶着)すると共にプリプレグ2で複数枚の内層材1を連結固定する。この加熱加圧は図1(a)に示すような棒状のヒーター5で内層材1とプリプレグ2を上下から挟んで行う。また加熱加圧の条件は、温度を200〜300℃、圧力を1〜5kg/cm2、時間を20〜50秒にそれぞれ設定することができる。温度が200℃未満であったり、圧力が1kg/cm2未満であったり、時間が20秒未満であったりすると、接着部4の硬化不足などが生じて接着部4で強固に内層材1とプリプレグ2を接着することができなくなる恐れがあり、温度が300℃を超えたり、圧力が5kg/cm2を超えたり、時間が50秒を超えたりすると、内層材1が熱や圧力で破損したり、生産性が低下したりする恐れがある。また加熱加圧は上下両方から行なう必要はなく、上側または下側のいずれか一方から行なうようにしてもよい。
【0019】
次にプリプレグ2の外側に銅箔等の金属箔を重ね合わせ、次にこの重ね合わせた物の全体をハーフサイズまたは1m角サイズのプレス機を用いて上下から挟んで加熱加圧成形することによって、プリプレグ2を硬化させて絶縁層を形成すると共にプリプレグ2の硬化により内層材1と金属箔を接着して一体化する。この後、金属箔にエッチング処理等を施して回路を形成すると共にスルーホール及びスルーホールメッキを施すことによって、多層配線板を形成するのである。尚、金属箔は接着部4を形成する前にプリプレグ2に重ねておいてもよい。つまりプリプレグ2に金属箔を重ねてからヒーター5を用いて加熱加圧し接着部4を形成するようにしてもよい。
【0020】
この実施の形態では、内層材1の厚み方向に対して直交する方向に並んだ複数枚の内層材1に亘ってプリプレグ2を重ねることによって、プリプレグ2を複数枚の内層材1に接触させて配置し、各内層材1の端部の接合部3の複数箇所において、内層材1とプリプレグ2を点状に上下から加熱加圧し、プリプレグ2の樹脂を溶融硬化させることによって、所定の間隔を介して点在する接着部4を複数個形成し、この接着部4で内層材1とプリプレグ2を部分的に接着した後、内層材1の全体(端部の接合部3を含む)とプリプレグ2の全体を加熱加圧して接着するので、樹脂の溶融硬化により形成される接着部4で接着テープ12よりも強固に隣接する内層材1同士を予め接合接着した状態で、内層材1とプリプレグ2を全体に亘って加熱加圧により接合接着することができ、内層材1の厚み方向に対して直交する方向に並んで隣接する内層材1の間に大きな成形ずれが生じないようにすることができると共に内層材1に形成された回路のパターンが設計時の回路のパターンに対して位置ずれや歪みを起こさないようにすることができるものであり、金属箔から形成される回路やスルーホールメッキと内層材1の回路との接続を確実に行うことができるものである。しかも、接着部4の形成時には内層材1の端部が局所的に小さい熱量で加熱されるだけであって、接着部4の形成時の加熱によって内層材1の端部が収縮変形する量を少なくすることができるものである。また、接着テープ12を用いないので、内層材1の端部に結合するためだけの結合部10を設ける必要がなく、従来のものよりも多層配線板を小さく形成することができるものである。
【0021】
図2に他の実施の形態を示す。この実施の形態では複数枚の内層材1を、内層材1の厚み方向に対して直交する方向と内層材1の厚み方向に並べて配置して多層配線板を形成するものである。すなわち、多層配線板を製造するにあたっては、まず内層材1の横に他の内層材1を近接させて配置することによって、内層材1の厚み方向と直交する方向(水平方向)に複数枚の内層材1を並べて配置する。この時、図3に示すように、内層材1の接合部3とこの内層材1に隣り合う他の内層材1の接合部3とを隣接させて内層材1を並べる。また、内層材1の端面同士を突き合わせるようにしてもよいし、端面の間に若干の隙間を設けるようにしてもよい。次に全ての内層材1に亘るように内層材1の外側(上側)にプリプレグ2を重ね合わせることによって、複数枚の内層材1にプリプレグ2を接触させて配置し、さらに、このプリプレグ2の外側(上側)に他のプリプレグ2を一枚重ねて配置する。
【0022】
次にプリプレグ2の外側(上側)に、複数枚の内層材1をその厚み方向に対して直交する方向に並べて配置する。つまり、内層材1の厚み方向(上下方向)に対向するように並んだ内層材1の間にプリプレグ2を介在させることによって、プリプレグ2を複数枚の内層材1に接触させて配置する。この時、内層材1の接合部3と、この内層材1に隣り合う他の内層材1の接合部3とを隣接させて内層材1を厚み方向と直交する方向に並べる。従って、上下に対向する内層材1の接合部3も上下に対向することになる。次に、上側に並ぶ全ての内層材1に亘るようにこれら内層材1の外側(上側)にプリプレグ2を重ね合わせると共に、下側に並ぶ全ての内層材1に亘るようにこれら内層材1の外側(下側)にプリプレグ2を重ね合わせる。次に図2に示すように、内層材1の接合部3の複数箇所において、内層材1とプリプレグ2を棒状のヒーター5を上下から挟んで加熱加圧し、プリプレグ2の樹脂を溶融硬化させることによって、図1(b)に示すように、点状の接着部4を複数個形成し、この接着部4で内層材1とプリプレグ2を接着(溶着)すると共にプリプレグ2で複数枚の内層材1を連結固定する。加熱加圧条件は上記と同様である。
【0023】
次に最外のプリプレグ2の外側に銅箔等の金属箔を重ね合わせ、次に重ね合わせた物の全体をハーフサイズまたは1m角サイズのプレス機を用いて上下から挟んで加熱加圧成形することによって、プリプレグ2を硬化させて絶縁層を形成すると共にプリプレグ2の硬化により内層材1と金属箔を接着して一体化する。この後、金属箔にエッチング処理等を施して回路を形成すると共にスルーホール及びスルーホールメッキを施すことによって、多層配線板を形成するのである。
【0024】
尚、金属箔は接着部4を形成する前にプリプレグ2に重ねておいてもよい。つまりプリプレグ2に金属箔を重ねてからヒーター5を用いて加熱加圧し接着部4を形成するようにしてもよい。また、最外のプリプレグ2は接着部4で固定する必要はなく、最外のプリプレグ2を内層材1に重ねる前に、ヒーター5を用いて加熱加圧して内層材1に介在させたプリプレグ2に接着部4を形成した後、最外のプリプレグ2を内層材1に重ねるようにしてもよい。
【0025】
この実施の形態では、内層材1の厚み方向及び厚み方向に対して直交する方向に並んだ複数枚の内層材1に亘ってプリプレグ2を重ねることによって、プリプレグ2を複数枚の内層材1に接触させて配置し、各内層材1の端部の接合部3の複数箇所において、内層材1とプリプレグ2を点状に上下から加熱加圧し、プリプレグ2の樹脂を溶融硬化させることによって、所定の間隔を介して点在する接着部4を複数個形成し、この接着部4で内層材1とプリプレグ2を部分的に接着した後、内層材1の全体(端部の接合部3を含む)とプリプレグ2の全体を加熱加圧して接着するので、樹脂の溶融硬化により形成される接着部4で接着テープ12よりも強固に隣接する内層材1同士を予め接合接着した状態で、内層材1とプリプレグ2を全体に亘って加熱加圧により接合接着することができ、内層材1の厚み方向及び厚み方向に対して直交する方向に並んで隣接する内層材1の間に大きな成形ずれが生じないようにすることができると共に内層材1に形成された回路のパターンが設計時の回路のパターンに対して層間ずれや位置ずれや歪みを起こさないようにすることができるものであり、金属箔から形成される回路やスルーホールメッキと内層材1の回路との接続を確実に行うことができるものである。しかも、接着部4の形成時には内層材1の端部が局所的に小さい熱量で加熱されるだけであって、接着部4の形成時の加熱によって内層材1の端部が収縮変形する量を少なくすることができるものである。また、ハトメや接着テープを用いないので、従来のように内層材1の端部に結合するためだけの結合部10を設ける必要がなく、従来のものよりも多層配線板を小さく形成することができるものである。また、ハトメを用いないので、加圧加熱成形の際に用いる成形プレートが傷付かないようにすることができるものである。
【0026】
【実施例】
以下本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0027】
(実施例1乃至7)
内層材1としては、両方の表面に厚み35μmの銅箔回路を有する厚み0.6mmで510×340mmの大きさの回路板を用いた。プリプレグ2としては厚みが0.18mmでレジンコンテント48%のエポキシ樹脂含浸ガラス不織布基材のものを用いた。
【0028】
そして、まず図4(a)に示すように、端面を突き合わせて接合部3を隣接させるようにして三枚の内層材1をその厚み方向と直交する方向に並べて配置した。次に全ての内層材1に亘るように内層材1の両方の外側(上側と下側)にプリプレグ2を二枚ずつ重ね合わせた。次に表1に示す加熱加圧条件で内層材1の接合部3の箇所においてヒーター5を用いて加熱加圧成形し、接着部4を形成して内層材1を接合接着した。次に両方のプリプレグ2の外側に厚み18μmの銅箔6を重ね合わせた後、上記と同条件で全体を加熱加圧成形してプリプレグ2を硬化させて絶縁層を形成すると共にプリプレグ2の硬化により内層材1と銅箔6を接着して一体化した。この後、銅箔6にエッチング処理等を施して回路を形成することによって、図4(b)に示すような層構成を有する多層配線板を形成した。
【0029】
(比較例1)
内層材1とプリプレグ2と銅箔6は実施例1乃至7と同様のものを用いた。そしてまず図4(a)に示すように、端面を突き合わせて三枚の内層材1を横に並べて配置した。次に図7(a)に示すように、内層材1の突き合わされた端部同士を接着テープ12で接着した。次に内層材1の両方の外側にプリプレグ2を二枚ずつ重ね合わせた。次に両方のプリプレグ2の外側に銅箔6を重ね合わせた後、表1に示す加熱加圧条件で全体を加熱加圧成形してプリプレグ2を硬化させて絶縁層を形成すると共にプリプレグ2の硬化により内層材1と銅箔6を接着して一体化した。この後、銅箔6にエッチング処理等を施して回路を形成することによって多層配線板を形成した。
【0030】
上記の実施例1乃至7と比較例1において、多層配線板を10シートずつ形成し、各多層配線板の内層材1の端面間の開き量を測定し、これを成形ずれとした。そして実施例及び比較例ごとに平均値(X)、最大値(max)、最小値(min)、ばらつき(σ)をそれぞれ求めた。表1に結果を示す。
【0031】
また実施例1と比較例1について、設計時の回路のパターンの位置と実際の回路のパターンの位置とを比較し、位置ずれがどの程度生じているかを測定した。この測定は一番左に置かれた内層材1の中央部と端部(図5に▲1▼〜▲6▼で示す)で行ない、平均値(X)、最大値(max)、最小値(min)、ばらつき(σ)をそれぞれ求めた。結果をパターン精度として表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
表1から明らかなように、比較例1よりも実施例1のほうが成形ずれが少なく、パターン精度も高くなった。また比較例1よりも実施例2乃至7のほうが成形ずれが少なく、パターン精度も高くなる傾向にあるが、実施例3、4のように温度や圧力が所定の範囲よりも小さいと、成形ずれが大きくなる傾向にあるので、所定の温度や圧力の範囲で成形を行なうのが好ましい。
【0034】
(実施例8)
内層材1としては、両方の表面に厚み35μmの銅箔回路を有する厚み0.2mmで510×340mmの大きさの回路板を用いた。プリプレグ2としては厚みが0.1mmでレジンコンテント44%のエポキシ樹脂含浸ガラス不織布基材のものを用いた。
【0035】
そしてまず図3に示すように、端面を突き合わせて接合部3を隣接させるようにして三枚の内層材1をその厚み方向と直交する方向に並べて配置した。次に、全ての内層材1に亘るように内層材1の両方の上側にプリプレグ2を二枚重ね合わせた。次に、このプリプレグ2の上側に、端面を突き合わせて接合部3を隣接させるようにして三枚の内層材1をその厚み方向と直交する方向に並べて配置した。この時、上下に対向する内層材1の接合部3も上下に対向するように配置した。次に、上側の全ての内層材1に亘るように上側の内層材1の外側(上側)にプリプレグ2を一枚重ね合わせると共に、下側の全ての内層材1に亘るように下側の内層材1の外側(下側)にプリプレグ2を一枚重ね合わせる。
【0036】
次に、温度300℃、圧力1kg/cm2、時間30秒の加熱加圧条件で、図2に示すように内層材1の接合部3の箇所において直径が8mmのヒーター5を用いて加熱加圧成形し、接着部4を形成して内層材1を接合接着した。この時、図6(b)に示すように、内層材1の並ぶ方向と直交する方向に接着部4が並んで形成される。次に最外のプリプレグ2の外側に厚み18μmの銅箔6を重ね合わせた後、上記と同条件で全体を加熱加圧成形してプリプレグ2を硬化させて絶縁層を形成すると共にプリプレグ2の硬化により内層材1と銅箔6を接着して一体化した。この後、銅箔6にエッチング処理等を施して回路を形成することによって、六層を有する多層配線板を形成した。
【0038】
(比較例2)
内層材1に他の内層材1を重ねるようにして二枚の内層材1をその厚み方向に並べて配置すると共に、上下に隣り合う内層材1の間にプリプレグ2を介在させる。次に内層材1の四隅において、結合部10及びプリプレグ2を貫通させるようにハトメ15を取り付けて内層材1及びプリプレグ2を固定することによって組み合わせ体16を形成する。次に三個の組み合わせ体16をその厚み方向に対して直交する方向に並べる。この時、図6(a)に示すように、ハトメ15が組み合わせ体16の並ぶ方向と同方向に並ぶように配置する。次に、上側の全ての内層材1に亘るように上側の内層材1の外側(上側)にプリプレグ2を一枚重ね合わせると共に、下側の全ての内層材1に亘るように下側の内層材1の外側(下側)にプリプレグ2を一枚重ね合わせる。次に、最上のプリプレグ2の上側及び最下のプリプレグ2の下側に銅箔6を重ねる。この後、実施例8と同条件で全体を加熱加圧成形してプリプレグ2を硬化させて絶縁層を形成すると共にプリプレグ2の硬化により内層材1と銅箔6を接着して一体化した。この後、銅箔6にエッチング処理等を施して回路を形成することによって、六層を有する多層配線板を形成した。
【0039】
上記の実施例8と比較例2について、設計時の回路のパターンの位置と実際の回路のパターンの位置とを比較し、層間ずれ及び位置ずれがどの程度生じているかを測定した。結果を層間ずれ及びパターン精度(位置ずれ)として表2に示す。
【0040】
【表2】
【0041】
表2から明らかなように、比較例2よりも実施例8の方が層間ずれが小さくてパターン精度も高くなった。また、隣り合う内層材1の接合部3同士が隣接するように内層材1を並べて連結固定するのが好ましい。
【0042】
【発明の効果】
上記のように本発明の請求項1の発明は、内層材の厚み方向に対して直交する方向に並んだ複数枚の内層材に亘ってプリプレグを重ねることによって、プリプレグを複数枚の内層材に接触させて配置し、内層材と他の内層材との隣接する端部の中心付近を含む複数箇所とプリプレグとを加熱加圧して接着させた後、各内層材の端部以外とプリプレグを加熱加圧して接着させるので、内層材が局所的に小さい熱量で加熱されることになって、加熱によって内層材の端部が収縮変形する量を少なくすることができると共に、共通のプリプレグに内層材を接触させて固定することによって、接着テープを用いるよりも隣り合う内層材を強固に接合接着することができ、内層材の厚み方向に対して直交する方向において、内層材の回路のパターンの位置ずれと歪みを小さくすることができるものである。しかも接着テープを用いないために、結合部を設ける必要がなくなって小型の多層配線板を形成することができると共に耐熱性に優れる多層配線板を形成することができるものである。また、ハトメを用いないので、加熱加圧成形の際に用いる成形プレートが傷付かないようにすることができるものである。
【0044】
また、本発明の請求項2の発明は、内層材の厚み方向に並んだ内層材の間に上記プリプレグを介在させるので、内層材の厚み方向において、内層材の回路のパターンの層間ずれと歪みを小さくすることができるものである。
【0045】
また本発明の請求項3の発明は、各内層材の端部とプリプレグを加熱加圧するにあたって、温度200〜300℃、圧力1〜5kg/cm2、時間20〜50秒で加熱加圧するので、内層材の回路の層間ずれや位置ずれや歪みを確実に小さくすることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態の一例を示し、(a)は断面図、(b)は平面図である。
【図2】 同上の他の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図3】 同上の他の実施の形態の一例を示す平面図である。
【図4】 同上の実施例1乃至7及び比較例1を示し、(a)は内層材の平面図、(b)は層構成を示す断面図である。
【図5】 同上のパターン精度を測定する位置を示す説明図である。
【図6】 同上の(a)は比較例2を示す平面図、(b)は実施例8を示す平面図である。
【図7】 従来例を示し、(a)は平面図、(b)は問題点を示す平面図である。
【図8】 他の従来例を示し、(a)は断面図、(b)は平面図である。
【符号の説明】
1 内層材
2 プリプレグ
Claims (3)
- 内層材の厚み方向に対して直交する方向に並んだ複数枚の内層材に亘ってプリプレグを重ねることによって、プリプレグを複数枚の内層材に接触させて配置し、内層材と他の内層材との隣接する端部の中心付近を含む複数箇所とプリプレグとを加熱加圧して接着させた後、各内層材の端部以外とプリプレグを加熱加圧して接着させることを特徴とする多層配線板の製造方法。
- 内層材の厚み方向に並んだ内層材の間に上記プリプレグを介在させることを特徴とする請求項1に記載の多層配線板の製造方法。
- 各内層材の端部とプリプレグを加熱加圧するにあたって、温度200〜300℃、圧力1〜5kg/cm2、時間20〜50秒で加熱加圧することを特徴とする請求項1又は2に記載の多層配線板の製造方法。
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