JP4766591B2 - 顕微鏡 - Google Patents

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Description

本発明は、薄層状の光によって標本の内部を局所的に照明する薄層斜光照明装置を備えた顕微鏡に関し、特に、生物標本の蛍光観察(例えば細胞内の蛍光分子の微量検出)に好適な顕微鏡に関する。
標本の内部をコントラスト良く観察するために、薄層斜光照明法が提案されている(例えば特許文献1を参照)。この照明法では、視野絞りと対物レンズを介して標本の表面を斜光照明すると共に、表面に入射する照明光の角度を全反射条件の臨界角より僅かに小さくし、表面での照明光の屈折角を90度より僅かに小さくする。
また、特許文献1には、対物レンズの焦点面を標本の深さ方向に移動させて、これに合わせて薄層状の照明光Loを深さ方向に移動させることにより、標本の内部の異なる深さの観察を行うことも提案されている。
特開2003−185930号公報
しかしながら、対物レンズの焦点面の移動に応じて薄層状の照明光Loを移動させるだけでは、標本の内部の観察を良好に行うことはできなかった。対物レンズの焦点面を移動させると、照明光の導入側の標本の表面から焦点面までの距離Fが変化し、この距離Fと標本の屈折率nとの積に等しい光路長(F×n)が変化して、対物レンズの収差が大きくなってしまう。
この問題を回避するには、収差補正用のレンズ群を備えた対物レンズを用いて、光路長(F×n)の変化に起因する対物レンズの収差を良好に補正できるように、収差補正用のレンズ群を動かすことが考えられる。しかし、単に収差補正用のレンズ群を動かすと、その位置に応じて薄層状の照明光Loによる照明状態が変化し、標本像のコントラストが低下するため、両者の調整を最適化するには煩雑な作業が必要となってしまう。
本発明の目的は、標本の表面から焦点面までの光路長(F×n)の変化に対応し、収差補正用のレンズ群の調整と薄層状の照明光の調整とを迅速に最適化できる顕微鏡を提供することにある。
本願発明の顕微鏡では、収差補正用のレンズ群を有する対物レンズと、標本の内部に合焦するように対物レンズの合焦位置を設定する設定手段と、対物レンズを介して標本への照明光入射角度を前記対物レンズの光軸に垂直に近くすることにより標本の内部に薄層状の照明光を導入する導入手段と、標本の観察時に照明光の導入側の標本の表面から対物レンズの合焦位置までの光路長に関わる情報を取得する取得手段と、収差補正用のレンズ群の収差補正量を調整する第1調整手段と、薄層状の照明光が対物レンズの光軸に到達する導入位置を標本の深さ方向に調整する第2調整手段と、光路長に関わる情報と該光路長に基づいて決めた最適な前記収差補正用のレンズ群の収差補正量に関わる情報と前記収差補正量に基づいて決めた最適な前記照明光の導入位置に関わる情報とを関連づけて予め記憶する記憶手段と、取得手段が取得した光路長に関する情報に基づいて記憶手段に記憶した情報を参照し光路長に関する情報に関連づけられた収差補正量に関わる情報と照明光の導入位置に関わる情報とに基づいて第1及び第2調整手段をそれぞれ制御する制御手段と、を備えたものである。
取得手段としては、標本の表面から合焦位置までの距離に係る情報を取得し、距離に係る情報と標本の屈折率との積から標本の屈折率を考慮した光路長を取得する。この場合、記憶手段としては、標本の屈折率ごとに、光路長に関わる情報と、光路長に起因する収差を補正するための収差補正用のレンズ群の収差補正量に関わる情報と、収差補正量に基づいて予め決めた照明光の導入位置に関わる情報と、の関連づけを参照表として記憶するのが望ましい。
標本の屈折率を入力する入力手段を備えてもよい。この場合、制御手段は、入力手段によって入力された屈折率に基づいて参照表を選択し、選択した参照表にしたがって第1及び第2調整手段をそれぞれ制御すればよい。また、対物レンズを介して標本の画像を取り込む取込手段を備え、制御手段は、収差補正量と照明光の導入位置との組み合わせを変更しながら取込手段によって取り込まれた画像のコントラストが最適なときの前記組み合わせを含む参照表を選択し、選択した参照表にしたがって第1及び第2調整手段をそれぞれ制御するようにしてもよい。
さらに、照明光の導入位置に関わる情報としては、光路に基づいて決まる収差補正量を基準にして照明光の導入位置を変えながら取込手段により標本の画像を取り込み、取り込んだ標本の画像のうちのコントラストが最も高くなる画像を取り込んだときの位置に決めるのが望ましい。
本発明の顕微鏡によれば、標本の表面から焦点面までの光路長(F×n)の変化に対応し、収差補正用のレンズ群の調整と薄層状の照明光の調整とを迅速に最適化できる。
以下、図面を用いて本発明の実施形態を詳細に説明する。
ここでは、薄層斜光照明装置を備えた倒立型の蛍光顕微鏡を例に説明する。
図1に示す通り、本実施形態の蛍光顕微鏡30には、本体31の背面側から薄層斜光照明装置10が装着される。また、薄層斜光照明装置10の他に、ダイクロイックミラー32と、対物レンズ33と、ステージ34と、カメラ35と、接眼レンズ36と、手動操作部37と、コントローラ38とが設けられる。コントローラ38は、例えばコンピュータなどであり、メモリ39と不図示の入力装置とを備え、蛍光顕微鏡30の制御装置として機能する。
本実施形態の蛍光顕微鏡30では、標本40を支持するステージ34が本体31に固定され、このステージ34に対して対物レンズ33が上下方向に移動可能となっている(図2参照)。上下方向は対物レンズ33の光軸3Bに平行である。図2には蛍光顕微鏡30のうち対物レンズ33とステージ34の部分を拡大して示した。
対物レンズ33の上下動には図1に示す手動操作部37が用いられる。手動操作部37の回転に応じて対物レンズ33を上下動させるため、本体31の内部には図2に示す駆動系20が設けられる。また、対物レンズ33の上下方向の位置(以下「Z位置」)を検知するため、本体31の内部にはセンサ21が設けられる。センサ21の検知信号はコントローラ38に出力される。
駆動系20は、手動操作部37の回転に応じて対物レンズ33を上下動させ、図3に太い点線で示す通り、対物レンズ33の焦点面3Cを標本40の内部に設定する(請求項の「設定手段」に対応)。図3は標本40と対物レンズ33の先端付近を拡大した図である。ここで、標本40の深さ方向は対物レンズ33の光軸3Bに平行である。
2のセンサ21は、対物レンズ33のZ位置を検知し、コントローラ38に検知信号を出力する。対物レンズ33のZ位置は焦点面3CのZ位置に一対一で対応し、焦点面3CのZ位置は“標本40の表面4Bから焦点面3Cまでの距離F(図3)”に一対一で対応するため、センサ21は、対物レンズ33のZ位置を検知したことにより、距離Fに関わる情報を取得したことになる(請求項の「取得手段」)。さらに、距離Fは“距離Fと標本40の屈折率nとの積に等しい光路長(F×n)”と一対一で対応するため、センサ21による対物レンズ33のZ位置の検知を、光路長(F×n)に関わる情報の取得と考えることもできる。
ここで、標本40が生物標本(例えば水溶液中の生体細胞)である場合、標本40の下方(対物レンズ33の側)には、図3に示す通り、カバーガラス41が配置される。また、カバーガラス41と対物レンズ33の先端との間は、オイルなどの高屈折率の浸液42で満たされる。ちなみに、対物レンズ33は、高倍(例えば40倍以上)で高開口数(NA>1)の油浸系の対物レンズである。
対物レンズ33の先端から標本40の内部の焦点面3Cまでの屈折率の分布を説明すると、浸液42の屈折率は例えば1.51、カバーガラス41の屈折率は1.52、標本40の屈折率は例えば1.33となっている。つまり、対物レンズ33の先端から標本40の表面4Bまで屈折率が高く、表面4Bから焦点面3Cまでは屈折率が低くなっている。
このため、上記した駆動系20が焦点面3CのZ位置を調整したときに、この調整量に応じて表面4Bから焦点面3Cまでの距離F(深度)が変化し、光路長(F×n)が変化すると、対物レンズ33の収差が大きくなってしまう。
そこで、本実施形態では、対物レンズ33の内部(図4(a))に収差補正用のレンズ群22を設けると共に、対物レンズ33の外周部(図4(b))に補正環23を設けた。収差補正用のレンズ群22は、補正環23の回転に応じて光軸方向に移動可能である。さらに、コントローラ38の制御によって補正環23を回転させるため、補正環23の近傍には、図2に示す駆動系24を設けた。
駆動系24がコントローラ38からの指示にしたがって補正環23を回転させると、補正環23の回転量に応じて、図4(a)に示す収差補正用のレンズ群22が光軸方向に移動する。そして、収差補正用のレンズ群22の移動量に応じて、レンズ群22の収差補正量を調整することにより、対物レンズ33の収差(上記の光路長(F×n)に起因する収差)を補正できる。駆動系24は請求項の「第1調整手段」に対応する。駆動系24には、例えばステッピングモータ(補正環23の回転量を読み取るエンコーダ付)が用いられる。
また、対物レンズ33の収差を良好に補正するためには、レンズ群22の収差補正量の調整(つまりレンズ群22の移動量の調整)(つまり補正環23の回転量の調整)を最適化する必要がある。そして、上記の駆動系20が対物レンズ33のZ位置を変化させたときに光路長(F×n)が変化すると、その変化に対応して上記の調整を最適化することが必要になる。
さらに、光路長(F×n)の変化(つまり対物レンズ33のZ位置の変化)に拘わらず、常に、レンズ群22の収差補正量の調整(つまり補正環23の回転量の調整)を最適化するためには、コントローラ38から駆動系24に対して的確な指示を与えなければならない。的確な指示を与えることができれば、レンズ群22の収差補正量の調整(つまり補正環23の回転量の調整)を常に最適化することができ、対物レンズ33の収差(上記の光路長(F×n)に起因する収差)を良好に補正し続けることができる。
そのため、コントローラ38(図1)のメモリ39には、図5に示す「参照表」が予め記憶されている。「参照表」では、対物レンズ33のZ位置と、このZ位置に対応する光路長(F×n)において、補正環23の最適な回転量とが関連づけられている。他に、薄層斜光照明装置10(図1)の一体化ユニット10Aの最適な移動量も「参照表」に関連づけられているが、その説明は図6〜図10を説明した後で行う。
図5の「参照表」において、対物レンズ33のZ位置に関連づけられた補正環23の最適な回転量は、図4(a)に示すレンズ群22の最適な収差補正量に一対一で対応するため、メモリ39に補正環23の最適な回転量を記憶させたことは、レンズ群22の最適な収差補正量に関わる情報を記憶させたことと等価である。
また、図5の「参照表」における3つのパラメータ(Z位置,回転量,移動量)の関連づけは、対物レンズ33の複数の異なるZ位置(Z1,Z2,…)について成されている。対物レンズ33の複数のZ位置(Z1,Z2,…)は、標本40の内部における焦点面3C(図3)のZ位置の調整範囲を想定して決められている。
さらに、図5の「参照表」は、対物レンズ33の種類(例えば倍率)ごとに作成されると共に、各々の対物レンズ33において標本40の屈折率nごとに作成され、メモリ39に記憶される。「参照表」の作成に当たっては、対物レンズ33の種類や標本40の屈折率nの他、環境温度(例えば23℃)やカバーガラス41の厚さ(および屈折率)や浸液42の屈折率などの諸条件が考慮される。
各々の「参照表」において、補正環23の最適な回転量は、上記の諸条件を考慮した上で計算によって求めることができる。つまり、対物レンズ33の各々のZ位置ごとに、標本40の表面4B(図3)から焦点面3Cまでの光路長(F×n)に伴って発生する収差量を計算し、この収差量を打ち消すために必要な補正環23の最適な回転量を計算すればよい。あるいは、上記の計算の他、落射照明法での事前測定により、補正環23の最適な回転量を求めることもできる。
次に、本実施形態の蛍光顕微鏡30(図1)の本体31に装着された薄層斜光照明装置10について具体的に説明する。
薄層斜光照明装置10は、図1に示す略L字型の本体11の中に、図6に示す光源12とコリメートレンズ13と視野絞り14と反射ミラー15と集光レンズ16を設け、かつ、視野絞り14と反射ミラー15を共通の金物(不図示)に固定して一体化ユニット10Aを構成し、この一体化ユニット10Aに駆動系17を接続したものである。
光源12からの照明光は、コリメートレンズ13を介して平行光L1に変換され、視野絞り14を介して反射ミラー15に入射する。視野絞り14にはスリット開口4Aが設けられる。スリット開口4Aの長手方向は、図6の紙面に垂直である。スリット開口4Aを通過して反射ミラー15に向かう平行光L2の進行方向は、コリメートレンズ13の光軸1Bに平行である。
反射ミラー15は、コリメートレンズ13の光軸1Bに対して45度に傾けて配置され、視野絞り14からの平行光L2を入射して垂直方向に反射する。反射後の平行光L2は、後段の集光レンズ16に向けて進行する。図6では、反射ミラー15の法線方向が紙面に平行であり、反射ミラー15で反射した後の平行光L2の進行方向も紙面に平行であり、その平行光L2の断面の長手方向は紙面に垂直となる。また、反射ミラー15からの平行光L2の進行方向は、集光レンズ16の光軸1Cに平行である。
さらに、一体化ユニット10A(つまり視野絞り14,反射ミラー15)は、駆動系17に接続され、コリメートレンズ13の光軸1Bに沿って平行移動可能となっている。コントローラ38からの指示にしたがって駆動系17が一体化ユニット10Aを平行移動させると、視野絞り14と反射ミラー15は、互いの位置関係を変えることなく、光軸1Bに沿って平行移動することになる。
このとき、図7(a),(b)に示す通り、視野絞り14のスリット開口4Aも光軸1Bに沿って平行移動するため、反射ミラー15で反射した後の平行光L2の光量が変化することはない。また、反射後の平行光L2は、その進行方向を集光レンズ16の光軸1Cに対して平行に保ちながら、その進路が光軸1Cに対して垂直な方向へシフトすることになる。この平行光L2は、図6に示す集光レンズ16を介して集光光L3に変換された後、ダイクロイックミラー32を介して、対物レンズ33に入射する。
対物レンズ33の瞳面3Aでは、対物レンズ33の光軸3Bとの交点Q(瞳面3Aの中心)から外れた周辺部Rに集光光L3が到達し、そこで焦点を結ぶ。このような集光作用は、薄層斜光照明装置10の集光レンズ16による。
また、瞳面3Aにおける集光光L3の到達位置(周辺部R)は、瞳面3Aと集光レンズ16の光軸1Cとの交点に相当し、一体化ユニット10Aの平行移動によって平行光L2の進路を光軸1Cに対して垂直な方向へシフトさせた場合(図7)でも、瞳面3Aの常に同じ位置(周辺部R)に集光光L3を到達させることができる。
ただし、集光光L3が瞳面3Aに入射するときの角度(例えば光軸1Cに対する角度)は、図8に示すような変化を示す。図7,図8から分かるように、反射ミラー15で反射した後の平行光L2の進路が光軸1Cから離れるほど、瞳面3Aに対する集光光L3の入射角度は大きく傾くことになる。ちなみに、瞳面3Aは光源12に共役である。この共役関係は、一体化ユニット10A(つまり視野絞り14,反射ミラー15)の平行移動とは無関係に保たれる。
上記のように、集光レンズ16からの集光光L3は、対物レンズ33の瞳面3Aの周辺部Rに到達して焦点を結ぶと共に、一体化ユニット10Aの平行移動により、瞳面3Aにおける到達位置(周辺部R)を変化させることなく、瞳面3Aに対する入射角度のみが変化することになる(図8)。
そして、対物レンズ33の瞳面3Aに入射した集光光L3は瞳面3Aを通過した後、対物レンズ33の先端から出射し、標本40(図1)に対する照明光L4となる。そして、図9(a)に示す通り、浸液42とカバーガラス41とを介した後、標本40の表面4Bに入射する。瞳面3Aの周辺部Rに焦点を結んだ集光光L3が標本40に対する照明光L4となるため、この照明光L4は平行光である。ちなみに、標本40の表面4Bは、視野絞り14に共役である。この共役関係は、一体化ユニット10Aを平行移動させた場合でも保たれる。
また、標本40の表面4Bにはスリット開口4Aの像が形成され、このスリット像の範囲(照明光L4の入射範囲)が、照明範囲となる。表面4Bでのスリット像の範囲(照明範囲)は、図9(a)の表面4Bを対物レンズ33側から見た図(図9(b))に示す通り、スリット開口4Aと同様の細長い形状である。スリット像の長手方向は、図9(a)の紙面に垂直である。
一方、照明光L4が標本40の表面4Bに入射するときの角度φは、対物レンズ33の瞳面3Aにおける集光光L3の到達位置(図6,図8の周辺部Rの位置)、つまり、瞳面3Aと集光レンズ16の光軸1Cとの交点の位置に応じて決まる。したがって、集光レンズ16の光軸1Cを移動させなければ、標本40の表面4Bに対する照明光L4の入射角度φを略一定に保つことができる。
そして、薄層斜光照明装置10では、集光レンズ16の光軸1Cの位置を予め調整することにより、標本40の表面4Bに対する照明光L4の入射角度φを全反射条件の臨界角より僅かに小さくし、表面4Bでの照明光L4の屈折角が90度より僅かに小さくなるように設定する。このため、照明光L4は表面4Bで全反射することなく標本40の内部に向けて進行する。
さらに、標本40の表面4Bに対する照明光L4の入射角度φが全反射条件の臨界角より僅かに小さく、照明光L4の入射範囲(照明範囲)が図9(b)に示すようなスリット形状でかつ図9(a)の紙面に垂直方向に細長いため、標本40の内部における照明光Loは、対物レンズ33の光軸3Bに対して垂直に近い角度θで進行すると共に、図11に示す光軸方向の非常に狭い範囲d(=数μm程度)を進行する薄層状の光となる。
薄層状の照明光Loの角度θは、標本40の表面4Bに対する照明光L4の入射角度φによって(延いては集光レンズ16の光軸1Cの位置によって)決まる。また、薄層状の照明光Loの光軸方向の厚さ(つまり標本40の内部での照明範囲d)は、上記した照明光L4の入射角度φによって決まると共に、表面4Bにおける照明光L4の入射範囲によって(延いては視野絞り14のスリット開口4Aの大きさによって)決まる。
上記のように構成された薄層斜光照明装置10(図6)は、対物レンズ33を介して標本40の内部に薄層状の照明光Loを導入する手段(請求項「導入手段」)として機能する。そして、標本40の内部(図9)では、薄層斜光照明装置10によって導入された薄層状の照明光Loによって、非常に狭い範囲dのみが局所的に照明され、それ以外(照明光Loと表面4Bとの間など)が照明されることはない。以下、照明光Loが対物レンズ33の光軸3Bに到達する位置を「照明光Loの導入位置10B」という。
また、図9(a),図10(a)に示す通り、照明光Loの導入位置10Bを深さ方向に調整するためには、薄層斜光照明装置10(図6)の一体化ユニット10Aを光軸1Bに沿って平行移動させればよい。
コントローラ38からの指示にしたがって駆動系17が一体化ユニット10Aを平行移動させると、標本40の表面4Bでは、照明光L4が、その入射角度φ(図9(a),図10(a))と、入射範囲の大きさ(図9(b),図10(b))とを一定に保ちながら、入射範囲の短手方向に沿って入射位置がシフトする(つまり対物レンズ33の光軸3Bからの距離Dが変化する)。
このため、標本40の内部では、駆動系17による一体化ユニット10Aの平行移動に応じて、薄層状の照明光Loが、その角度θと光軸方向の厚さとを一定に保ちながら深さ方向にシフトし、照明光Loの導入位置10Bも深さ方向にシフトする。駆動系17は、請求項の「第2調整手段」に対応する。
標本40の観察時、本実施形態の蛍光顕微鏡30(図1)では、上記した通り、手動操作部37の回転に応じて駆動系20(図2)が対物レンズ33を上下動させ、図3のように対物レンズ33の焦点面3C(これが観察面となる)を標本40の内部に設定する。また、コントローラ38からの指示にしたがって駆動系24が対物レンズ33の補正環23を回転させ、図4(a)に示すレンズ群22の収差補正量の調整を最適化する。
さらに、標本40の内部の観察を良好に行うためには、レンズ群22の収差補正量の調整を最適化することに加えて、照明光Loの導入位置10B(図9,図10)の調整も最適化する必要がある。導入位置10Bの調整は、コントローラ38からの指示にしたがって薄層斜光照明装置10(図6)の駆動系17が一体化ユニット10Aを平行移動させることにより行われる。
本実施形態の蛍光顕微鏡30では、コントローラ38から図2の駆動系24と図6の駆動系17との各々に的確な指示を与えるため、図5に示す「参照表」をコントローラ38のメモリ39(図1)に予め記憶している。「参照表」では、対物レンズ33のZ位置と、対物レンズ33の補正環23の最適な回転量とが関連づけられ、さらに、薄層斜光照明装置10の一体化ユニット10Aの最適な移動量も関連づけられている。
なお、薄層斜光照明装置10の一体化ユニット10Aの最適な移動量は、照明光Loの最適な導入位置10B(図9,図10)に一対一で対応するため、メモリ39に一体化ユニット10Aの最適な移動量を記憶させたことは、照明光Loの最適な導入位置10Bに関わる情報を記憶させたことと等価である。
「参照表」を作成する際、一体化ユニット10Aの最適な移動量は、上記の計算または事前測定により求めた補正環23の最適な回転量を基準にして、一体化ユニット10Aを平行移動させながら標本40の画像を取り込み、そのコントラストが最も高くなるように決めることが望ましい。
「参照表」を作成する際の標本40としては、実際に観察対象となる標本を用いても構わないが、その標本と屈折率nが同一と見なせる別の標本を用いてもよく、予め屈折率nの分かっている標本であれば何でも用いることができる。一般的な生物標本の場合、その屈折率nの具体的な値を知るためには、事前に、同一標本(または同一と見なせる別の標本)にて屈折率nの測定を行うことが好ましい。
また、「参照表」における一体化ユニット10Aの最適な移動量を決める際、標本40の画像の取り込みは、蛍光顕微鏡30のカメラ35(図1)を用いて行われる。生物標本を用いる場合、標本40の内部(照明光Loの導入位置10B)からは蛍光が発生する。この蛍光は対物レンズ33を介して集光され、ダイクロイックミラー32を透過した後、カメラ35に入射する。さらに、カメラ35の内部では、撮影レンズを介して撮像素子に入射する。
そして、「参照表」における一体化ユニット10Aの最適な移動量を決める際には、対物レンズ33のZ位置を固定し、上記の計算または事前測定により求めた補正環23の回転量を固定した状態で、一体化ユニット10Aを平行移動させながら標本40の画像を取り込み、そのコントラストが最も高くなったときの移動量を“最適な移動量”とする。また、対物レンズ33のZ位置と補正環23の回転量との最適な組み合わせを変更して同様の測定を繰り返すことにより、対物レンズ33の複数のZ位置(Z1,Z2,…)における一体化ユニット10Aの最適な移動量を決めることができる。
上記の「参照表」は、対物レンズ33の種類(倍率)ごとに作成され、さらに、標本40の屈折率nごとに作成され、図1に示すコントローラ38のメモリ39に記憶された状態で、観察条件に応じて選択可能となっている。「参照表」の選択はコントローラ38が行う。「参照表」を選択するため、コントローラ38には、入力装置(不図示)から対物レンズ33の種類と標本40の屈折率nが入力される。
次に、本実施形態の蛍光顕微鏡30を用いた標本40の観察動作を説明する。
標本40の屈折率nが既知の場合、コントローラ38は、入力装置によって入力された情報(標本40の屈折率nと対物レンズ33の種類)に基づいて1つの「参照表」を選択し、その「参照表」にしたがって図2の駆動系24と図6の駆動系17とを制御する。駆動系24は対物レンズ33の補正環23の回転量を調整する手段である。
標本40の観察時に、手動操作部37の回転に応じて図2の駆動系20が対物レンズ33を上下動させ、図3のように対物レンズ33の焦点面3C(これが観察面となる)を標本40の内部に設定すると、センサ21は、対物レンズ33の現在のZ位置を検知して、コントローラ38に検知信号を出力する。以下、現在のZ位置が“Z2”であるとして説明する。
そして、コントローラ38は、センサ21からの検知信号に基づいてメモリ39を参照し、既に選択した1つの「参照表」において、対物レンズ33の現在のZ位置(ここではZ2)に関連づけられた補正環23の最適な回転量(θZ2)と、一体化ユニット10Aの最適な移動量(XZ2)とを読み出す。
次に、コントローラ38は、「参照表」から読み出した補正環23の回転量(θZ2)に基づいて図2の駆動系24に指示を出すと共に、同じ「参照表」から読み出した一体化ユニット10Aの移動量(XZ2)に基づいて図6の駆動系17に指示を出す。この指示は、メモリ39に予め記憶された「参照表」に基づいて成されるため、対物レンズ33の現在のZ位置(ここではZ2)に最適なものである。
図2の駆動系24は、コントローラ38からの的確な指示にしたがって補正環23を回転させ、指示通りの回転量(θZ2)となったところで回転を停止させる。その結果、図4(a)に示すレンズ群22の収差補正量の調整を最適化することができ、対物レンズ33の収差(上記の光路長(F×n)に起因する収差)を良好に補正することができる。
また同時に、図6の駆動系17は、コントローラ38からの的確な指示にしたがって一体化ユニット10Aを平行移動させ、指示通りの移動量(XZ2)となったところで平行移動を停止させる。その結果、図9,図10に示す照明光Loの導入位置10Bの調整を最適化することができ、照明光Loの導入位置10Bを標本40の内部に設定された現在の焦点面3Cと一致させることができる。
このとき、標本40の内部の現在の焦点面3Cとその近傍のみを薄層状の照明光Loによって局所的に照明することができる。標本40の内部で発生した蛍光は、良好に収差が補正された対物レンズ33とダイクロイックミラー32とを介してカメラ35に入射し、その内部の撮影レンズを介して撮像素子に入射する。撮像素子に形成される標本像は、背景光が少なくてコントラストが高く、収差が良好に補正された最適な像となる。
また、撮像素子の出力に基づいて、標本40の画像を取り込むこともできるし、標本40の細胞内の蛍光分子の微量検出を行うこともできる。観察面(3C)からの蛍光を接眼レンズ36に導いて目視観察することもできる。
さらに、標本40の内部の異なる深さで同様の観察を行う場合には、上記の手順を繰り返せばよい。
その結果、対物レンズ33の収差を良好に補正することができ、照明光Loの導入位置10Bを新たな焦点面3Cと一致させることができる。つまり、対物レンズ33の収差を良好に補正し続けながら、標本40の内部の焦点面3Cの移動に追従して、照明光Loの導入位置10Bも深さ方向に調整することができ、異なる焦点面での連続した画像の取得を良好に行える。したがって、新たな焦点面3Cでも、上記と同様の良好な観察を行うことができる。
このように、本実施形態の蛍光顕微鏡30では、コントローラ38のメモリ39に予め記憶させた「参照表」に基づいてコントローラ38から図2の駆動系24と図6の駆動系17に的確な指示を出すため、対物レンズ33の上下動に応じて、標本40の表面4Bから焦点面3Cまでの光路長(F×n)が変化した場合でも、その変化に連動して、対物レンズ33のレンズ群22(図4(a))の収差補正量の調整と薄層状の照明光Lo(図9,図10)の調整とを迅速に最適化することができる。
したがって、標本40の内部の観察を複数の観察面(3C)で良好かつ迅速に行うことができる。各々の観察面(3C)で標本40の画像を取り込んだ場合、空間的に構造を持った厚みのある標本40の三次元画像を取得できる。また、生物標本を観察対象とする場合、標本の状態が時間的に変化するため、短時間で効率よく観察を進めることが望まれる。そのような場合にも本実施形態の蛍光顕微鏡30は有効である。
(変形例)
なお、上記した実施形態では、「参照表」を対物レンズ33の種類と標本40の屈折率nとの組み合わせごとに作成し、メモリ39に記憶させたが、本発明はこれに限定されない。標本40の屈折率nとして予め定めた環境温度における基準値を用いる場合には、「参照表」の作成を、対物レンズ33の種類と標本40の屈折率n(基準値)と観察時の環境温度との組み合わせごとに行えばよい。その場合、「参照表」の選択のためには、入力装置から環境温度も入力させることが好ましい。
また、上記した実施形態では、コントローラ38のメモリ39から1つの「参照表」を選択する際、標本40の屈折率nが既知であることを前提に、入力装置(不図示)から屈折率nを入力させたが、本発明はこれに限定されない。標本40の屈折率nが未知の場合には、次のようにして「参照表」を選択すればよい。
実際の観察を始める前に、ステージ34に標本40が載置された状態で、対物レンズ33の焦点面3Cを標本40の内部に固定し、対物レンズ33の補正環23の回転量(θ)と一体化ユニット10Aの移動量(X)との組み合わせを変更しながら、カメラ25を用いて標本40の画像を取り込む。そして、各々の画像の評価値(例えばコントラストなど)を比較し、最適な画像が得られたときの回転量(θ)と移動量(X)との組み合わせを含む「参照表」を選択する。選択した「参照表」による制御は上記と同様である。また、このような選択方法を用いる場合、選択した「参照表」の屈折率が、標本40の未知の屈折率nに対応する。したがって、メモリ39に予め記憶した複数の「参照表」を用いることで、未知の屈折率nを正確に求めることもできる。
さらに、上記した実施形態では、対物レンズ33の上下動に応じて、標本40の表面4Bから焦点面3Cまでの距離Fが変化し、光路長(F×n)が変化したときに、レンズ群22の収差補正量の調整と薄層状の照明光Loの調整とを迅速に最適化する場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されない。対物レンズ33の上下動が行われず、表面4Bから焦点面3Cまでの距離Fが一定のときに、標本40の屈折率nが変化し、光路長(F×n)が変化した場合でも、同様の効果を得ることができる。
標本40の屈折率nの変化は、標本40のおかれた環境(例えば環境温度)の変化によって生じる場合や、標本自身の生理的・生化学的な変化(溶液変化)に起因して生じる場合もある。このような変化が受動的であっても能動的であっても本発明を適用できる。さらに、標本40の環境温度を連続的に変化させて、標本40の画像を順に取得するような観察方法にも、本発明を適用できる。請求項の「光路長に関わる情報」には、距離Fに関わる情報や、屈折率nに関わる情報や、環境温度に関わる情報などが含まれる。
また、上記した実施形態では、手動操作部37の回転に応じて対物レンズ33を上下動させる例を説明したが、本発明はこれに限定されない。対物レンズ33の上下動をモータ(例えばピエゾ)により電動で制御してもよい。この場合、図2の駆動系20は、コントローラ38からの指示にしたがって対物レンズ33を上下動させることになる。そして、コントローラ38のメモリ39に予め記憶させた「参照表」に基づいて、コントローラ38から図2の駆動系20,24と図6の駆動系17とに的確な指示を出すことにより、標本40の内部の観察を良好に行うことができる。
さらに、上記した実施形態では、薄層斜光照明装置10の視野絞り14をコリメートレンズ13と反射ミラー15との間に配置したが、本発明はこれに限定されない。視野絞り14を反射ミラー15と集光レンズ16との間に配置する場合にも、同様の効果を得ることができる。この場合にも、一体化ユニット10Aの移動方向は、コリメートレンズ13の光軸1Bに平行である。
また、上記した実施形態では、薄層斜光照明装置10の視野絞り14と反射ミラー15を平行移動させる例を説明したが、本発明はこれに限定されない。光源手段(12,13)と視野絞り14とを一体化して、コリメートレンズ13の光軸1Bに垂直に平行移動させる場合にも、本発明を適用できる。
さらに、上記した実施形態では、薄層斜光照明装置10を倒立型の蛍光顕微鏡30に組み込む例で説明したが、正立型の蛍光顕微鏡に組み込む場合にも本発明を適用できる。また、蛍光顕微鏡に限らず、一般的な光学顕微鏡にも本発明の薄層斜光照明装置を組み込むことができる。
薄層斜光照明装置10を備えた蛍光顕微鏡30の全体構成を示す図である。 対物レンズ33とステージ34の部分を拡大した図である。 対物レンズ33の上下動と標本40の内部における焦点面3Cの移動を説明する図である。 収差補正用のレンズ群22と補正環23について説明する図である。 メモリ39に記憶された「参照表」について説明する図である。 薄層斜光照明装置10の概略構成を示す図である。 一体化ユニット10A(つまり視野絞り14,反射ミラー15)の平行移動について説明する図である。 集光レンズ16からの集光光L3が瞳面3Aに入射するときの傾き角度の変化について説明する図である。 標本40と対物レンズ33の先端付近を拡大し、標本40に対する照明光L4を説明する図である。 図8とは標本40の内部の観察面が深さ方向に異なる場合において、標本40に対する照明光L4を説明する図である。
符号の説明
10 薄層斜光照明装置
10A 一体化ユニット
11,31 本体
12 光源
13 コリメートレンズ
14 視野絞り
4A スリット開口
15 反射ミラー
16 集光レンズ
17,20,24 駆動系
21 センサ
22 収差補正用のレンズ群
23 補正環
30 蛍光顕微鏡
32 ダイクロイックミラー
33 対物レンズ
3A 瞳面
34 ステージ
35 カメラ
36 接眼レンズ
37 手動操作部
38 コントローラ
39 メモリ
40 標本
4B 表面
41 スライドガラス
42 浸液

Claims (5)

  1. 収差補正用のレンズ群を有する対物レンズと、
    標本の内部に合焦するように前記対物レンズの合焦位置を設定する設定手段と、
    前記対物レンズを介して前記標本への照明光入射角度を前記対物レンズの光軸に垂直に近くすることにより、前記標本の内部に薄層状の照明光を導入する導入手段と、
    前記標本の観察時に、前記照明光の導入側の前記標本の表面から前記対物レンズの合焦位置までの光路長に関わる情報を取得する取得手段と、
    前記収差補正用のレンズ群の収差補正量を調整する第1調整手段と、
    前記薄層状の照明光が前記対物レンズの光軸に到達する導入位置を前記標本の深さ方向に調整する第2調整手段と、
    前記光路長に関わる情報と、該光路長に基づいて決めた最適な前記収差補正用のレンズ群の収差補正量に関わる情報と、前記収差補正量に基づいて決めた最適な前記照明光の導入位置に関わる情報と、を関連づけて予め記憶する記憶手段と、
    前記取得手段が取得した光路長に関する情報に基づいて前記記憶手段に記憶した前記情報を参照し、前記光路長に関する情報に関連づけられた前記収差補正量に関わる情報と前記照明光の導入位置に関わる情報とに基づいて、前記第1及び第2調整手段をそれぞれ制御する制御手段と、
    を備えたことを特徴とする顕微鏡。
  2. 請求項1に記載の顕微鏡において、
    前記取得手段は、前記標本の表面から前記合焦位置までの距離に係る情報を取得し、前記距離に係る情報と前記標本の屈折率との積から前記標本の屈折率を考慮した前記光路長を取得するとともに、
    前記記憶手段は、前記標本の屈折率ごとに、前記光路長に関わる情報と、前記光路長に起因する収差を補正するための前記収差補正用のレンズ群の収差補正量に関わる情報と、前記収差補正量に基づいて予め決めた前記照明光の導入位置に関わる情報と、の関連づけを参照表として記憶する、
    ことを特徴とする顕微鏡。
  3. 請求項2に記載の顕微鏡において、
    前記標本の屈折率を入力する入力手段を備え、
    前記制御手段は、前記入力手段によって入力された前記屈折率に基づいて前記参照表を選択し、選択した参照表にしたがって前記第1及び第2調整手段をそれぞれ制御する
    ことを特徴とする顕微鏡。
  4. 請求項2に記載の顕微鏡において、
    前記対物レンズを介して前記標本の画像を取り込む取込手段を備え、
    前記制御手段は、前記収差補正量と前記照明光の導入位置との組み合わせを変更しながら前記取込手段によって前記標本の画像を取り込み、取り込まれた複数の前記画像のうちのコントラストが最適なときの前記組み合わせを含む参照表を選択し、選択した参照表にしたがって前記第1及び第2調整手段をそれぞれ制御する、
    ことを特徴とする顕微鏡。
  5. 請求項2に記載の顕微鏡において、
    前記対物レンズを介して前記標本の画像を取り込む取込手段を備え、
    前記照明光の導入位置に関わる情報は、前記光路に基づいて決まる収差補正量を基準にして前記照明光の導入位置を変えながら前記取込手段によって前記標本の画像を取り込み、取り込んだ複数の前記画像のうちのコントラストが最も高くなる画像を取り込んだときの位置に決められている、
    ことを特徴とする顕微鏡。
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