JP4765010B2 - 硝酸イオン吸着剤を含有する成形体およびその製造方法 - Google Patents
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Description
一方、各種活性物質の担体として、種々の中空ないし多孔質構造の膜状、マイクロカプセル状の成形体が提案されている。例えば、スピノーダル分離模様の連続多孔構造を有する膜が提案されている(特許文献2参照)。また、各種触媒の担持体、電子写真のトナー、表示機器などの電子材料、クロマトグラフィー、吸着材などとして、多孔質球状粒子が知られている(特許文献3参照)。また、微生物、細菌、酵素に代表される活性物質の固定化担体として、中空および多孔質のカプセル壁を有し、カプセル壁の多孔質が、カプセルの内部の中空と微細孔を通してつながっている構造のマイクロカプセルが提案されている(特許文献4参照)。また、カプセル樹脂壁材の緻密性を制御することにより、所望の徐放特性を有するマイクロカプセルが提案されている(特許文献5参照)。さらに、活性物質のバインダーを多孔構造とする方法として、無機塩や澱粉等の有機物を造孔剤として用いる方法が提案されている(特許文献6参照)。
(1)セル中には硝酸イオン吸着剤が内包され、
(2)ポリマー中には細孔が存在し、細孔は他の細孔とポリマー中で連通し、それらの孔径が1nm〜1μmの範囲にあり、
(3)セルの内壁と硝酸イオン吸着剤とは実質的に接触していない、成形体であって、
ポリマーがアラミドポリマーまたはアクリルポリマーであり、
硝酸イオン吸着剤は、下記式(1)
M(II) 1−x Fe(III) x (OH) 2 A n− x/n ・mH 2 O (1)
(式(1)中、M(II)は主として、Ni(II)、Co(II)、Zn(II)、Fe(II)およびCu(II)からなる群より選ばれる少なくとも一種の二価金属であり、A n− はn価の陰イオンであり、xおよびmは、0<x≦0.67、0≦m≦2を満足する数である)
で表される複合金属水酸化物を水熱処理することにより得られたものである、
前記成形体である。
(1)ドープは、ポリマー、該ポリマーの良溶媒である溶媒(B)および硝酸イオン吸着剤を含有し、
(2)凝固液は、該ポリマーの貧溶媒である溶媒(D)を含有し、
ポリマーがアラミドポリマーまたはアクリルポリマーであり、
硝酸イオン吸着剤は、下記式(1)
M(II) 1−x Fe(III) x (OH) 2 A n− x/n ・mH 2 O (1)
(式(1)中、M(II)は主として、Ni(II)、Co(II)、Zn(II)、Fe(II)およびCu(II)からなる群より選ばれる少なくとも一種の二価金属であり、A n− はn価の陰イオンであり、xおよびmは、0<x≦0.67、0≦m≦2を満足する数である)
で表される複合金属水酸化物を水熱処理することにより得られたものである、
ことを特徴とする方法である。
(ポリマー)
本発明の成形体は、ポリマーにより形成される。ポリマーは疎水性である。ポリマーとして、アラミドポリマー、アクリルポリマーなどが挙げられる。アラミドポリマーは、アミド結合の85モル%以上が芳香族ジアミンおよび芳香族ジカルボン酸成分よりなるポリマーが好ましい。その具体例としては、ポリパラフェニレンテレフタルアミド、ポリメタフェニレンテレフタルアミド、ポリメタフェニレンイソフタルアミド、ポリパラフェニレンイソフタルアミドを挙げることができる。アクリルポリマーは、85モル%以上のアクリロニトリル成分を含むポリマーが好ましい。共重合成分として、酢酸ビニル、アクリル酸メチル、メタクリ酸メチル、および硫化スチレンスルホン酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種の成分が挙げられる。
(細孔)
本発明の成形体は、ポリマー自体に細孔を有する。細孔は他の細孔とポリマー中で連通しており、細孔同士が連結した網目構造を形成している。細孔の孔径は1nm〜1μm、好ましくは10nm〜500nmの範囲にある。細孔は、ドープをポリマーの貧溶媒である溶媒(D)を含有する凝固液中で凝固させることによりスピノーダル現象により形成される。細孔は、走査型電子顕微鏡写真、透過型電子顕微鏡写真により観察することができる。
(セル)
本発明の成形体中には複数のセルを有する。セル中には硝酸イオン吸着剤が内包されている。セルの形状は一定ではないが、硝酸イオン吸着剤を含むことが出来る大きさである。本発明の成形体においては、セルの内壁と硝酸イオン吸着剤は実質的に接触していない。即ち本発明の成形体においては、セルの内壁と、硝酸イオン吸着剤との間には隙間が存在する。セル中の硝酸イオン吸着剤は、ちょうど鈴の中にある珠に相当すると言える。以下この構造を鈴構造ということがある。
硝酸イオン吸着剤は、下記式(1)
M(II)1−xFe(III)x(OH)2An− x/n・mH2O (1)
で表される複合金属水酸化物であることが好ましい。
式(1)中のM(II)は主として、Ni(II)、Co(II)、Zn(II)、Fe(II)およびCu(II)からなる群より選ばれる少なくとも一種の二価金属からなる。上記の金属は、全二価金属に対しモル基準で、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上である。併用してもよい他の二価金属としては、MgやCaなどが挙げられる。また、硝酸イオン吸着剤中のM(II)の含有割合はモル基準で、好ましくは50%以上、より好ましくは66%以上である。
硝酸イオン吸着剤中のFe(III)の含有割合はモル基準で、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上である。
xは、0<x≦0.67、好ましくは0.1≦x≦0.5を満足する。mは、0≦m≦2、好ましくは0.1≦m≦1.5を満足する。
(i) 式(1)中、M(II)が、Ni(II)および/またはCo(II)である硝酸イオン吸着剤。
(ii) 式(1)中、An−がCl−、HCO3−およびOH−からなる群より選ばれる少なくとも一種である硝酸イオン吸着剤。
硝酸イオン吸着剤は、粒子状のものが好ましい。粒子の粒径は、好ましくは1nm〜500μm、より好ましくは1nm〜100μm、さらにより好ましくは1nm〜50μmである。
硝酸イオン選択的吸着剤およびその製造方法の詳細は、特開2004−130200号公報に記載されている。本発明の成形体は、球状、楕円状のような塊状のもの、紐状、パイプ状、中空糸状のような繊維状のもの、また膜状のものが好ましい。
(ドープ)
本発明の成形体は、ドープを凝固液中で凝固させ製造することができる。ドープは、ポリマー、該ポリマーの良溶媒である溶媒(B)および硝酸イオン吸着剤を含有する。ポリマー、硝酸イオン吸着剤は成形体の項で説明した通りである。ドープ中に2種以上の硝酸イオン吸着剤を含有させることもできる。
溶媒(B)は、ポリマーの良溶媒である。良溶媒とは一般に言われるように、ポリマーに対し大きな溶解能を有する溶媒である。たとえば、ポリマーがポリメタフェニレンテレフタルアミドのとき、溶媒(B)はN−メチル−2−ピロリドン(NMP)が好ましい。またポリマーがアクリルポリマーのとき、ポリマー(C)溶媒(B)はジメチルスルホオキサド(DMSO)が好ましい。さらにはポリマーがポリ乳酸のとき、溶媒(B)はジクロロメタン(DCM)が好ましい。
溶媒(B)の含有量は、100質量部のポリマーに対し、好ましくは100〜10,000質量部、より好ましくは1,000〜5,000質量部である。硝酸イオン吸着剤の含有量は、ポリマー100質量部に対し、好ましくは100〜10,000質量部、さらに好ましくは100〜1900質量部である。
ドープの温度は、好ましくは5〜80℃、さらに好ましくは20〜50℃である。ドープは、溶媒(B)にポリマーを混入し、充分に攪拌して溶解させた後に、硝酸イオン吸着剤を添加して調製しても良いし、溶媒(B)中にポリマーと硝酸イオン吸着剤を同時に混入させて調製しても良い。
凝固液は、ポリマーの貧溶媒である溶媒(D)を含有する。貧溶媒とは一般に言われるように、ポリマーに対し溶解能を僅かしか持たない溶媒である。ポリマーがポリメタフェニレンテレフタルアミドであるとき、溶媒(D)は水が好ましい。凝固液は、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは85〜100質量%の溶媒(D)を含有する。他の成分は、N−メチル−2−ピロリドンやジメチルスルホオキサドが好ましい。
凝固液は、界面活性剤を含有していても良い。界面活性剤としてアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤および非イオン界面活性剤が挙げられる。アニオン性界面活性剤として、高級脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩等が挙げられる。カチオン界面活性剤としては、炭素数12〜16の直鎖モノアルキル第4級アンモニウム塩、炭素数20〜28の分岐アルキル基を有する第4級アンモニウム塩等が挙げられる。両性界面活性剤としては、アルキル基およびアシル基が8〜18個の炭素原子を有するアルキルアミンオキシド、カルボベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン、アミドスルホベタイン等が挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、アルキレンオキシド、好ましくはエチレンオキシド(EO)等を挙げることができる。界面活性剤の含有量は、溶媒(D)100質量部に対し、好ましくは0.05〜30質量部、さらに好ましくは5〜10質量部である。凝固液の温度は、好ましくは10〜80℃、さらに好ましくは20〜50℃である。
本発明の硝酸イオンの除去方法は、上記成形体と被処理液とを接触させることからなる。被処理液として、河川、湖沼、海水、地下水、上下水等の硝酸イオン含有溶液が挙げられる。
硝酸イオンの除去は、成形体を被処理液に添加し、十分撹拌混合して硝酸イオンを吸着させ、さらにはほぼ吸着平衡に達しめたのち、固液分離すればよい。それにより、被処理液中の硝酸イオンは成形体に取り込まれ成形体ごと固体として液体より分別除去される。このような吸着処理において、被処理液のpHは4〜10の範囲に調整するのが好ましい。処理時間は、成形体の粒径によっても異なってくるが、粉末の場合、通常30分〜2時間の範囲である。
(参考例1)硝酸イオン吸着剤の合成
塩化ニッケル12ミリモルと塩化鉄3ミリモルとを含む水溶液15mlと、1M水酸化ナトリウム水溶液とを、pH10の水酸化ナトリウム水溶液50mlにpH10に保ちながら30分かけて同時に滴下し、1時間撹拌し、析出物を生成させたのち、これを120℃で3日間水熱処理させて沈殿生成物を得た。沈殿生成物は遠心分離し、中性になるまで水洗いし、50℃で1日間乾燥した。生成物は粉末X線構造解析、組成分析、熱分析により、[Ni(II)0.79Fe(III)0.21(OH)2][(Cl)0.21・0.63H2O]の化学組成の複合金属水酸化物と同定された。これを400メッシュの篩で分級して、400メッシュ以下の粒子を選別し硝酸イオン吸着剤とした。図1に水熱処理前後のX線回折測定結果を示す。
室温で、10重量部のポリメタフェニレンテレフタルアミド(PMPTA)を1400重量部のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解させて、ポリマー溶液を調製した。15質量部の参考例1で調製した硝酸イオン吸着剤を、50重量部のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に添加し、−0.097MpaGで3時間減圧下に保持して脱気を行った。その後、全量をポリマー溶液に加え、攪拌棒で全体を充分に攪拌してドープを調製した。室温の水を凝固液とした。図1に示す装置で、室温にてドープをギヤポンプからキャップを介して凝固液中に吐出し、ローラーで巻き取って繊維状成形体を得た。繊維状成形体の断面の透過型電子顕微鏡写真を図2に示す。
実施例1で得られた繊維状成形体0.1gに対して、0.01M硝酸ナトリウム水溶液50mlを加え、3日間かきまぜた。吸着前後の硝酸イオン濃度の差から硝酸イオンの吸着量を求めた。吸着容量は37mg−NO3 −/g−繊維状成形体で、原粉当たりの吸着容量は62mg−NO3 −/原粉gであった。硝酸イオン濃度はイオンクロマトで測定した。
参考例1で得られた硝酸イオン吸着剤の原粉0.1gに対して、0.01M硝酸ナトリウム水溶液50mlを加え、3日間かきまぜた。吸着前後の硝酸イオン濃度の差から硝酸イオンの吸着量を求めた。吸着容量は67mg−NO3 −/g−原粉であった。実施例2と比較例1とを比べると、繊維状成形体の吸着容量は、原粉とほぼ同等であることが分かる。
2 ドープ
3 吐出部
4 紡出糸
5 凝固浴槽
6 凝固液
7 抑えローラー
8 巻き取りローラー
9 硝酸イオン吸着剤
10 隙間
11 ポリマー
Claims (6)
- 硝酸イオン吸着剤とポリマーとを含有するドープを凝固液中で凝固させて得られ、ポリマー中に形成された複数のセルを有する成形体であって、
(1)セル中には硝酸イオン吸着剤が内包され、
(2)ポリマー中には細孔が存在し、細孔は他の細孔とポリマー中で連通し、それらの孔径が1nm〜1μmの範囲にあり、
(3)セルの内壁と硝酸イオン吸着剤とは実質的に接触していない、成形体であって、
ポリマーがアラミドポリマーまたはアクリルポリマーであり、
硝酸イオン吸着剤は、下記式(1)
M(II) 1−x Fe(III) x (OH) 2 A n− x/n ・mH 2 O (1)
(式(1)中、M(II)は主として、Ni(II)、Co(II)、Zn(II)、Fe(II)およびCu(II)からなる群より選ばれる少なくとも一種の二価金属であり、A n− はn価の陰イオンであり、xおよびmは、0<x≦0.67、0≦m≦2を満足する数である)
で表される複合金属水酸化物を水熱処理することにより得られたものである、
前記成形体。 - ドープを凝固液中で凝固させることからなる、ポリマー中に形成された複数のセルを有する成形体であって、セル中には硝酸イオン吸着剤が内包されている成形体の製造方法であって、
(1)ドープは、ポリマー、該ポリマーの良溶媒である溶媒(B)および硝酸イオン吸着剤を含有し、
(2)凝固液は、該ポリマーの貧溶媒である溶媒(D)を含有し、
ポリマーがアラミドポリマーまたはアクリルポリマーであり、
硝酸イオン吸着剤は、下記式(1)
M(II) 1−x Fe(III) x (OH) 2 A n− x/n ・mH 2 O (1)
(式(1)中、M(II)は主として、Ni(II)、Co(II)、Zn(II)、Fe(II)およびCu(II)からなる群より選ばれる少なくとも一種の二価金属であり、A n− はn価の陰イオンであり、xおよびmは、0<x≦0.67、0≦m≦2を満足する数である)
で表される複合金属水酸化物を水熱処理することにより得られたものである、
ことを特徴とする方法。 - ドープが、100質量部のポリマーに対して100〜10,000質量部の溶媒(B)を含有する請求項2記載の方法。
- ポリマーがポリメタフェニレンテレフタルアミドであり、溶媒(B)がN−メチル−2−ピロリドンであり、溶媒(D)が水である請求項2記載の方法。
- ポリマーがアクリルポリマーであり、溶媒(B)がジメチルスルホオキサドであり、溶媒(D)が水である請求項2記載の方法。
- 請求項1記載の成形体と被処理液とを接触させることからなる被処理液中の硝酸イオンの除去方法。
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