JP4764110B2 - 積層型圧電素子の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、積層型圧電素子の製造方法に関し、特に内部電極層に低コストなCu等の卑金属を用いた積層型圧電素子の製造方法に関するものである。
従来から圧電素子は電気的エネルギーを逆圧電効果により機械的エネルギーに変換できる特性を利用して、種々の装置の駆動源として用いられている。一般的な圧電素子は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電体層の両面に導体ペーストを印刷・焼成して電極層を形成した構造を有している。しかし、圧電体層が1層では得られる変位量が小さいため、大きな変位量を得たい場合には、圧電体層と内部電極層とを積層して変位量を増やしている。これが積層型圧電素子である。
従来、内部電極層を構成する導電材料として、Ag、Ag−Pd合金等の貴金属が用いられていた。しかし、貴金属材料は積層型圧電素子のコストを上昇させる要因の一つであることから、Cu、Ni等の卑金属材料を導電材料として用いることが試みられている(例えば、特許文献1)。
Cu等の卑金属材料は積層型圧電素子を大気中で焼成すると酸化してしまい、電極としての機能を果たさなくなる。したがって、Cu等の卑金属材料を用いて内部電極層を形成する場合には、還元性雰囲気中での焼成が必要となる。還元性雰囲気での加熱は焼成工程だけでなく、脱バインダ工程においても行われる。この脱バインダ工程は、よく知られているように、成形体を構成するためにセラミックス粉末とともに添加される有機バインダを除去することを目的として行われる。ところが、還元性雰囲気での脱バインダ、焼成を行ったとしても、Cu等の卑金属材料の酸化を完全に防止することは困難である。特に、脱バインダを還元性雰囲気で行うと、十分な脱バインダ効果を得ることが困難なため、卑金属材料を導電材料として用いる場合の耐酸化性が課題となる。
特に焼成中、少なくとも有機ビヒクルが完全に燃焼、除去される温度まで酸化しない金属粒子として、特許文献2は、表面の少なくとも一部にガラス質薄膜を有する金属粒子を提案している。また、同様の提案は特許文献3においてもなされている。
一方で、特許文献4は、金属粒子の表面を膜で覆った場合の課題として、焼成時の収縮率を掲げている。特許文献4は、表面を誘電体(圧電体)層で覆った金属粒子を用いると、誘電体層を介して2次粒子を形成しやすくなり、2次粒子内部の空隙により焼成時の収縮率が増大することを指摘している。この焼成時の収縮率の増大は、圧電体層と内部電極層との剥離の問題を招来する。
この問題を解決するために特許文献4は、金属粉末と、焼成により誘電体を形成する少なくとも1種以上の誘電体前駆化合物を含有する電極ペーストを提案している。この提案は、金属微粒子は誘電体前駆化合物に束縛されないから融合・焼結して導電性の高い電極膜が形成され、同時に形成される誘電体により電極膜の焼結が抑制されて熱収縮が防止される利点がある。誘電体前駆化合物の大きさは分子サイズであるから、任意サイズの金属微粒子により形成される空隙は誘電体により自在に充填される。従って、金属微粒子の超微粒子化にも対応でき、電極膜の薄層化を通して積層型圧電素子の小型化、高密度化及び高多層化を実現できるというものである。
特開2004−266260号公報 特開平10−330802号公報 米国特許出願公開第2002/0079622号明細書 特開2004−259500号公報
前述したように、内部電極により安価なCuに代表される卑金属を使用することも検討されているが、Cuの融点は1085℃であるので、Cuを用いるには焼成温度を1050℃以下にする必要がある。しかし、Cuはさらに低温から焼結し始めるため、できるだけ焼成温度を低くする必要がある。加えてCuは卑金属であるので、大気雰囲気中で焼成すると酸化してしまい電極として使用できなくなる。よって、低酸素還元雰囲気中での焼成が必要である。
従って、要求される圧電磁器組成物としては、大気雰囲気中もしくは低酸素還元雰囲気中において、1050℃以下、好ましくは1000℃以下、より好ましくは980℃以下、さらに好ましくは950℃以下で焼成しても、高い圧電特性が得られることである。
本発明は以上の技術的課題に鑑みてなされたもので、その目的は、低酸素還元雰囲気中において低温で焼成しても高い圧電特性を得ることができ、しかも内部電極層と圧電体層が剥離することのない積層型圧電素子の製造方法を提供することにある。
本発明は、圧電磁器組成物粒子を含む圧電体層前駆体と、導電粒子を含む内部電極層前駆体とが交互に積層された積層体を作製する工程と、この積層体を950〜1050℃で焼成する工程と、を備え、圧電磁器組成物粒子が、式(1)で表される組成物に対して、鉛(Pb)を酸化物(PbO)に換算して0.01〜2質量%の範囲内で含有すると共に、亜鉛(Zn)を酸化物(ZnO)に換算して2質量%以下(ただし、0を含まず)の範囲内で含有し、(Pba-b Meb )[(Zn1/3 Nb2/3 x Tiy Zrz ]O3 …(1)(式(1)において、a、b、x、y、zは、0.96≦a≦1.03、0≦b≦0.1、x+y+z=1、0.05≦x<0.125、0.275<y≦0.5、0.375<z≦0.6をそれぞれ満たす範囲内の値である。Meは、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)およびバリウム(Ba)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。)、内部電極層前駆体が、卑金属粒子と、焼成により圧電体を構成する圧電体前駆化合物とを含むことを特徴とする積層型圧電素子の製造方法により前記目的を達成する。
本発明の積層型圧電素子の製造方法において、内部電極層前駆体に含まれる卑金属粒子がCu粒子である場合に、積層体を焼成する前に、積層体中に含まれる樹脂成分を除去する熱処理を大気中で行うことが可能である。
また、本発明の積層型圧電素子の製造方法において、積層体の焼成を還元性雰囲気下で行うことが好ましい。
さらに、(1)式で表される組成物の仮焼成物に対して、鉛(Pb)を酸化物(PbO)に換算して0.01〜2質量%の範囲内で添加するとともに、亜鉛(Zn)を酸化物(ZnO)に換算して2質量%以下(ただし、0を含まず)の範囲内で添加し、圧電磁器組成物粒子を得ることが本発明において好ましい。
本発明の圧電磁器組成物として上記の組成を採用することにより、焼成温度を低くしても、又は低酸素還元雰囲気で焼成しても、高い圧電特性を得ることができる。また、本発明は、内部電極層前駆体として、卑金属粒子と、焼成により圧電体を構成する圧電体前駆化合物とを含むことにより、内部電極層と圧電体層とが剥離することがない。また、内部電極層前駆体として、卑金属粒子と、焼成により圧電体を構成する圧電体前駆化合物とを含むことにより、焼成前の脱バインダ工程において、積層体のクラック及び剥離の発生を防止することができる。
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、本発明により得られる積層型圧電素子100の構成例を示す断面図である。なお、図1はあくまで一例を示すものであって、本発明が図1の積層型圧電素子100に限定されないことはいうまでもない。この積層型圧電素子100は、複数の圧電体層11と複数の内部電極層12とを交互に積層した積層体10を備えている。圧電体層11の一層当たりの厚さは例えば1〜200μm、好ましくは20〜150μm、さらに好ましくは50〜100μmとする。なお、圧電体層11の積層数は目標とする変位量に応じて決定される。
圧電体層11を構成する圧電磁器組成物に本発明の特徴がある。この圧電磁器組成物は、以下の式(1)で表される組成物を主成分として含有している。
(Pba-bMeb)[(Zn1/3Nb2/3xTiyZrz]O3 …(1)
なお、式(1)において、a、b、x、y、zは、0.96≦a≦1.03、0≦b≦0.1、x+y+z=1、0.05≦x<0.125、0.275<y≦0.5、0.375<z≦0.6をそれぞれ満たす範囲内の値である。Meは、ストロンチウム、カルシウムおよびバリウムからなる群のうちの少なくとも1種を表す。酸素の組成は化学量論的に求めたものであり、化学量論組成からずれていてもよい。
式(1)で表される組成物はペロブスカイト構造を有しており、鉛、ストロンチウム、バリウムおよびカルシウムはいわゆるペロブスカイト構造のAサイトに位置し、亜鉛、ニオブ、チタンおよびジルコニウムはいわゆるペロブスカイト構造のBサイトに位置している。
なお、式(1)で表される組成物は、式(1)で表される組成物における鉛の一部をストロンチウム、バリウムおよびカルシウムからなる群のうちの少なくとも1種で置換することにより、圧電特性および機械的強度をより向上させることができるようにした形態を含んでいる。
式(1)における鉛又は鉛とストロンチウム、バリウムおよびカルシウムからなる群のうちの少なくとも1種との組成aは、いわゆるBサイトに位置する元素、すなわち[(Zn1/3Nb2/3x Tiy Zrz]の組成を1とした場合におけるいわゆるAサイトに位置する元素の組成比である。aを0.96以上1.03以下とするのは、この範囲内において高い圧電特性を得ることができるからである。
式(1)におけるb、すなわちストロンチウム、バリウムおよびカルシウムからなる群のうちの少なくとも1種の置換量は、0.1以下であることが好ましい。0.1を超えると焼結性が低下してしまい、それにより圧電特性も低下してしまうからである。
式(1)における亜鉛およびニオブ(Zn1/3Nb2/3)は圧電特性を向上させるためのものである。その組成xを0.05以上とするのは、0.05未満では十分に圧電特性を向上させることができず、組成xを0.125未満とするのは、0.125以上になると高価な酸化ニオブを多量に用いなければならず、製造コストが高くなってしまうと共に、圧電特性も低下してしまうからである。
式(1)におけるチタンの組成yを0.275より多く0.5以下、ジルコニウムの組成zを0.375より多く0.6以下とするのは、この範囲内においてモルフォトロピック相境界(MPB)付近の構造を得ることができ、高い圧電特性を得ることができるからである。
また、この圧電磁器組成物は、副成分として鉛および亜鉛を含有しており、これにより、焼成温度を低くしても、または低酸素還元雰囲気中で焼成しても、高い圧電特性が得られるようになっている。鉛の含有量は、式(1)に示した組成物に対して、酸化物(PbO)に換算して0.01〜2質量%の範囲内であることが好ましく、0.05〜1.5質量%、更には0.1〜0.8質量%の範囲内であればより好ましい。亜鉛の含有量は、式(1)に示した組成物に対して、酸化物(ZnO)に換算して2質量%以下の範囲内であることが好ましく、0.005〜1.5質量%、更には0.01〜1質量%の範囲内であればより好ましい。これらの範囲内においてより高い圧電特性を得ることができるからである。
更に、この圧電磁器組成物は、他の副成分として、タンタル、アンチモン、ニオブ、タングステンおよびモリブデンからなる群のうちの少なくとも1種を含有していることが好ましい。圧電特性をより向上させることができるからである。これらの含有量は、主成分となる式(1)に示した組成物に対して、酸化物(Ta2 5 、Sb2 3 、Nb2 5 、WO3 、MoO3 )に換算して、それぞれ1質量%以下の範囲内であることが好ましい。1質量%を超えると焼結性が低下してしまい、圧電特性が低下してしまうからである。
更にまた、この圧電磁器組成物は、他の副成分として銅を含有していることが好ましい。焼成温度をより低くすることができるからである。銅の含有量は、主成分に対して、酸化物(CuO)に換算して0.5質量%以下の範囲内であることが好ましく、0.005〜0.1質量%の範囲内であればより好ましい。これらの範囲内においてより優れた圧電特性を得ることができるからである。なお、以上の副成分は、主成分の組成物に固溶していてもよく、固溶していなくてもよい。
内部電極層12は、導電材料を含有している。本発明は、この導電材料としてCuを用いることが好ましい。導電材料としてCuを用いると、例えば1050℃以下の低温焼成に有益である。本実施の形態では、この内部電極層12を作製するために、特徴的な内部電極層用ペーストを用いる。この内部電極層用ペーストについては、積層型圧電素子100の製造方法の説明において言及する。
複数の内部電極層12は例えば交互に逆方向に延長されており、その延長方向には内部電極層12と電気的に接続された一対の端子電極21、22がそれぞれ設けられている。端子電極21、22は、例えば、図示しないリード線を介して図示しない外部電源に対して電気的に接続される。
また、端子電極21、22は、例えばCuをスパッタリングすることにより形成されていてもよく、また端子電極用ペーストを焼き付けることにより形成されていてもよい。端子電極21、22の厚さは用途等に応じて適宜決定されるが、通常、10〜50μmである。
以上が本発明の積層型圧電素子100の基本的な構成であるが、次に、積層型圧電素子100の製造方法について図2を参照しつつ説明する。図2は積層型圧電素子100の製造工程を示すフローチャートである。
まず、主成分の出発原料として、例えば、PbO粉末、ZrO2粉末、TiO2粉末、SrCO3粉末、Nb25粉末及びZnO粉末等の酸化物を用意し、秤量する(ステップS101)。出発原料としては、酸化物でなく、炭酸塩あるいはシュウ酸塩のように焼成により酸化物となるものを用いてもよい。これらの原料粉末は、通常、平均粒子径0.5〜10μm程度のものが用いられる。
必要に応じて副成分の出発原料をそれぞれ用意し、秤量する(ステップS101)。副成分の出発原料としては、例えば、Ta25粉末、Sb23粉末、CuO粉末等の酸化物を用いることができる。ただし、酸化物でなく、炭酸塩あるいはシュウ酸塩のように焼成により酸化物となるものを用いてもよい。これら副成分は、焼結性を向上させ、焼成温度をより低くする効果を奏する。
続いて、主成分および副成分の出発原料を例えばボールミルを用いて湿式粉砕・混合して、原料混合物とする(ステップ S102)。
なお、副成分の出発原料は、後述する仮焼成(ステップS103)の前に添加してもよいが、仮焼成後に添加するようにしてもよい。特に、副成分としてのPbO粉末、ZnO粉末は仮焼成後に添加することが好ましい。PbO粉末、ZnO粉末は焼結助剤として働き、低温焼結化に効果的なためである。
次いで、原料混合物を乾燥し、例えば、750〜950℃の温度で1〜6時間にわたり仮焼成する(ステップS103)。この仮焼成は、大気中で行っても良く、また大気中よりも酸素分圧の高い雰囲気または純酸素雰囲気で行ってもよい。仮焼成したのち、例えば、この仮焼成物をボールミルにて湿式粉砕・混合し仮焼成粉とする(ステップS104)。前述したように、この仮焼成粉に対して副成分としてのPbO粉末及びZnO粉末を、式(1)に示した組成物に対して、0.01〜2質量%、2質量%以下の範囲で添加することが好ましい。この副成分としてのPbO粉末及びZnO粉末を添加することにより、焼成温度を低くしても、または低酸素還元雰囲気で焼成しても、高い圧電特性が得られるようになっている。この場合、再度仮焼成することも有効である。
次に、この仮焼成粉にバインダを加えて圧電体層用ペーストを作製する(ステップS105)。具体的には以下の通りである。はじめに、例えばボールミル等を用いて、湿式粉砕によりスラリを得る。このとき、スラリの溶媒として、水もしくはエタノールなどのアルコール、または水とエタノールとの混合溶媒を用いることができる。湿式粉砕は、仮焼成粉の平均粒径が0.5〜2.0μm程度となるまで行うことが好ましい。
次いで、得られたスラリを有機ビヒクル中に分散させる。有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものであり、有機ビヒクルに用いられるバインダは、特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、アクリル等の通常の各種バインダから適宜選択すればよい。また、このとき用いられる有機溶剤も特に限定されず、印刷法やシート成形法など、利用する方法に応じてテルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン、MEK(メチルエチルケトン)、ターピネオール等の有機溶剤から適宜選択すればよい。
圧電体層用ペーストを水系の塗料とする場合には、水溶性のバインダや分散剤などを水に溶解させた水系ビヒクルと、仮焼成粉とを混練すればよい。水系ビヒクルに用いる水溶性バインダは特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性アクリル樹脂などを用いればよい。
圧電体層用ペーストの有機ビヒクルの含有量は、特に限定されず、通常の含有量、たとえば、バインダは5〜10質量%程度、溶剤は10〜50質量%程度とすればよい。また、ペースト中には必要に応じて各種分散剤、可塑剤、誘電体、絶縁体等から選択される添加物が含有されてもよい。
また、内部電極層用ペーストを作製する(ステップS106)。
内部電極層用ペーストは、図3に示すように、金属微粒子1からなる金属粉末と、圧電体前駆化合物3と、金属微粒子1と圧電体前駆化合物3を一様に分散させる有機溶媒4と、粘度を調整する樹脂5を混錬して内部電極層用ペースト6が構成される。金属微粒子1としては、Cu微粒子やNi微粒子といった卑金属微粒子が用いられる。
図4に示されるように、内部電極層用ペースト6は4種類の物質を均一に混合攪拌されて構成されている。金属微粒子1の表面は被覆層2により囲繞され、圧電体前駆化合物3は分子状であるから、被覆層2の中には無数の圧電体前駆化合物3が存在する。なお、ペーストの形態としてではなく、金属微粒子1と被覆層2とからなる粒子の形態として、圧電体前駆化合物3を備えた金属微粒子1を取り扱うことができる。この粒子の形態のものに有機溶媒4を添加することにより、内部電極層用ペースト6を作製することもできる。
本発明で使用される金属微粒子1の断面直径(粒径)は、μmオーダーの金属微粒子でもよいし、nmオーダーの金属超微粒子でもよい。より詳細には、1〜10μmのミクロンサイズの金属微粒子や0.1〜1μmのサブミクロンサイズの金属微粒子に限られず、1〜100nmのナノサイズの金属超微粒子も本発明では使用できる。
特に、本発明では分子状の圧電体前駆化合物3を使用するから、ナノサイズの金属超微粒子間に形成される空隙であっても、分子状の圧電体前駆化合物3を充填することができる。金属超微粒子を内部電極層用ペースト6に使用すると、ナノサイズ膜厚の内部電極層12を形成でき、しかも金属超微粒子間の空隙を圧電体で充填した構造になるから、電極膜の超薄膜化を実現でき、積層型圧電素子100の高密度化と小型化に貢献できる。
本発明に使用される圧電体前駆化合物3とは、焼成することによって圧電体を生成する原料化合物を意味している。まず圧電体について説明する。本発明で使用される圧電体は、上述した圧電体層11を構成する圧電磁器組成物と同一の組成を有することが最も好ましいが、これに限定されない。例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3、略称はBT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3、略称はST)、チタン酸バリウムストロンチウム((Ba/Sr)TiO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Ti/Zr)O3)等を用いることができる。
従って、圧電体前駆化合物3とは、焼成によって前述した圧電体を生成する原料化合物であり、焼成により圧電体を形成できる全ての化合物が利用できる。この圧電体前駆化合物3として、有機金属化合物、有機金属錯体、有機金属レジネート、金属酸化物、金属炭酸塩などの金属化合物が使用できる。ここで、金属とは圧電体を構成する金属原子を意味しており、例えばBaTiO3のBaとTi、SrTiO3のSrとTi、Pb(Ti/Zr)O3のPbとTiとZrである。
主要な圧電体であるBaTiO3を生成する方法には、TiO2とBaO又はBaCO3の混合融解、シュウ酸チタン酸バリウムの熱分解、チタンアルコキシドとバリウムアルコキシドのゾルゲル法、水酸化チタンと水酸化バリウムの縮重合、ナフテン酸チタンとナフテン酸バリウムの焼成、水熱合成法など種々の方法が存在する。従って、これらの方法の原料成分、即ち、TiO2とBaO又はBaCO3、シュウ酸チタン酸バリウム、チタンアルコキシドとバリウムアルコキシド、水酸化チタンと水酸化バリウム、ナフテン酸チタンとナフテン酸バリウムなどの原料化合物が圧電体前駆化合物3を構成する。
これらの圧電体前駆化合物3を分類すれば、金属原子と炭素原子が直接結合する有機金属化合物、金属原子に配位子が配位結合した有機金属錯体、粘性を有した高級脂肪酸金属塩などからなる有機金属レジネート、金属酸化物や金属炭酸塩などからなる無機金属化合物などから構成される。
これらの中でも有機金属レジネートが、本実施の形態の圧電体前駆化合物3として好適である。有機金属レジネートとして、例えば、ナフテン酸塩、オクチル酸塩、ステアリン酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、安息香酸塩、パラトイル酸塩、n−デカン酸塩、金属アルコキシド、金属アセチルアセトネートなどが使用される。
有機溶媒4としては、圧電体前駆化合物3を均一に分散できる全ての溶剤が使用できる。例えば、アルコール、アセトン、プロパノール、エーテル、石油エーテル、ベンゼン、酢酸エチル、その他の石油系溶剤、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ブチルカルビトール、セロソルブ類、芳香族類、ジエチルフタレートなどが使用できる。圧電体前駆化合物3が完全に分散(溶解)した状態では溶液は着色透明状態となる。
まず、本発明では、圧電体前駆化合物3を均一に分散・溶解させた中間溶液を作製する。この溶液が着色透明状態になっていることを確認して、圧電体前駆化合物3が分子状態で有機溶媒に均一に分散・溶解していることを判別する。圧電体前駆化合物3として有機金属レジネートを使用した場合には、この中間溶液をレジネート溶液と称する。
この中間溶液に金属微粒子1を均一に分散させると、金属微粒子1の添加量にも依存するが、中間溶液は金属微粒子1に特有の金属色を発色する。この金属色が溶液全体にムラ無く広がっていることによって、金属微粒子1が溶液内に均一に分散していることが判別できる。
本発明で使用できる樹脂5は、内部電極層用ペースト6の粘度を調整できる有機樹脂で、金属微粒子1と圧電体前駆化合物3と有機溶媒4と均一に混錬できる材料が好ましい。 例えば、エチルセルロース、ニトロセルロース、ブチラール、アクリルコパイバルサム、ダンマーなどが利用できる。このような樹脂5を前記溶液と混錬して内部電極層用ペースト6に適当な粘度を与える。
さらに、端子電極用ペーストも内部電極層用ペースト6と同様のものを使用できるし、他のものを用いることができる(ステップS107)。
以上では圧電体層用ペースト、内部電極層用ペースト6及び端子電極用ペーストを順番に作製しているが、並行して作製してもよいし、逆の順番でもよいことは言うまでもない。
次に、以上のペーストを用いて焼成の対象であるグリーンチップ(積層体)を作製する(ステップS108)。
印刷法を用いグリーンチップを作製する場合は、圧電体層用ペーストを、ポリエチレンテレフタレート等の基板上に所定厚さで複数回印刷して、図1に示すように、グリーン状態の外側圧電体層11aを形成する。次に、このグリーン状態の外側圧電体層11aの上に、内部電極層用ペースト6を所定パターンで印刷して、グリーン状態の内部電極層(内部電極層前駆体)12aを形成する。次に、このグリーン状態の内部電極層12aの上に、前記同様に圧電体層用ペーストを所定厚さで複数回印刷して、グリーン状態の圧電体層(圧電体層前駆体)11bを形成する。次に、このグリーン状態の圧電体層11bの上に、内部電極層用ペースト6を所定パターンで印刷して、グリーン状態の内部電極層12bを形成する。グリーン状態の内部電極層12a、12b…は、対向して相異なる端部表面に露出するように形成する。以上の作業を所定数繰り返し、最後に、グリーン状態の内部電極層12の上に、前記同様に圧電体層用ペーストを所定厚さで複数回印刷して、グリーン状態の外側圧電体層11cを形成する。その後、加熱しながら加圧、圧着し、所定形状に切断してグリーンチップ(積層体)とする。
以上では、印刷法によりグリーンチップを作製する例を説明したが、シート成形法を用いてグリーンチップを作製することもできる。
次に、グリーンチップについて脱バインダ処理を行う(ステップS109)。
脱バインダ処理において、内部電極層前駆体中の導電材料の酸化を考慮して、還元性雰囲気下での加熱を採用することが好ましいが、本実施の形態では大気中で脱バインダを行うこともできる。導電材料の周囲を圧電体前駆化合物3が取り囲んでおり、導電材料の酸化を抑制できるためである。
脱バインダ処理の後に、焼成(ステップS110)を行う。焼成は還元性雰囲気で行う。内部電極層12に用いるCu等の卑金属の酸化を防止又は抑制するためである。
ここで、還元焼成条件としては、例えば、焼成温度950〜1050℃、酸素分圧1×10-12〜1×10-6気圧である。焼成温度が950℃未満では焼成が十分に進行せず、また1050℃を超えるとCuの酸化が懸念される
酸素分圧が1×10-12気圧未満ではセラミック中の酸化鉛が金属鉛に還元してしまう。また1×10-6気圧を超えると導電材料であるCuの酸化が懸念される。好ましい酸素分圧は10-10〜10-7気圧、さらに好ましい酸素分圧は10-9〜10-8気圧である。
以上の工程を経て作製された積層体10は、例えばバレル研磨やサンドブラストなどにより端面研磨を施し、前述した端子電極用ペーストを印刷又は焼き付けることにより端子電極21、22を形成する(ステップS112)。なお、印刷又は焼き付けの他に、スパッタリングすることにより端子電極21、22を形成することもできる。
以上により、図1に示した積層型圧電素子100が得られる。
始めに本発明の圧電磁器組成物の組成限定の根拠となった実験結果について説明する。
<実験1>
まず、酸化鉛(PbO)粉末、炭酸ストロンチウム(SrCO3)粉末、酸化チタン(TiO2)粉末、酸化ジルコニウム(ZrO2)粉末、酸化亜鉛(ZnO)粉末および酸化ニオブ(Nb25)粉末を式(2)に示した組成となるように秤量すると共に、酸化タンタル(Ta25)粉末を式(2)に示した組成物に対して0.4質量%となるように秤量し、これらをボールミルを用いて16時間湿式混合したのち、大気中において700〜900℃で2時間仮焼して仮焼粉とした。
(Pb0.965Sr0.03)[(Zn1/3Nb2/30.1Ti0.43Zr0.47]O3 …(2)
次いで、酸化鉛(PbO)粉末と酸化亜鉛(ZnO)粉末とを秤量し、500〜700℃で2時間仮焼して添加粉とした。その際、酸化鉛(PbO)粉末および酸化亜鉛(ZnO)粉末の添加量を、式(2)に示した組成物に対して、表1〜8に示したように変化させた。
続いて、仮焼粉と添加粉とをボールミルを用いて16時間混合粉砕して乾燥させたのち、バインダとしてポリビニルアルコールを加えて造粒し、一軸プレス成形機を用いて約245MPaの圧力で直径17mm、厚み1mmの円板状に成形した。成形したのち、熱処理を行ってバインダを揮発させ、次いで、低酸素還元雰囲気中において950〜1050℃で2〜8時間焼成した。そののち、得られた焼結体をスライス加工およびラップ加工により厚み0.6mmの円板状とし、両面に銀ペーストを印刷して650℃で焼き付け、120℃のシリコーンオイル中で3kV/mmの電界を15分間印加して分極処理を行って圧電磁器を得た。
得られた圧電磁器について、24時間放置したのち、密度、径方向振動の電気機械結合係数krおよび比誘電率εrを測定した。それらの測定にはインピーダンスアナライザー(ヒューレット・パッカード社製HP4194A)を用い、比誘電率εrを測定する際の周波数は1kHzとした。それらの結果を表1〜8に示す。
Figure 0004764110
Figure 0004764110
Figure 0004764110
Figure 0004764110
Figure 0004764110
Figure 0004764110
Figure 0004764110
Figure 0004764110
表1〜8に示したように、式(2)に示した組成物に対して鉛を酸化物(PbO)に換算して0.01〜2質量%の範囲内で含有すると共に、亜鉛を酸化物(ZnO)に換算して2質量%以下の範囲内で含有するようにすれば、焼成温度を低くしても、または低酸素還元雰囲気中において焼成しても、高い圧電特性を得ることができることが分かった。
また、鉛の含有量を、式(2)に示した組成物に対して、酸化物(PbO)に換算して0.05〜1.5質量%の範囲内、更には0.1〜0.8質量%の範囲内とするようにすれば、または、亜鉛の含有量を、式(2)に示した組成物に対して、酸化物(ZnO)に換算して0.005〜1.5質量%の範囲内、更には0.01〜1質量%の範囲内とするようにすれば、より好ましいことも分かった。
<実験2>
式(3)に示した組成物に対して酸化タンタル(Ta25)、酸化鉛(PbO)および酸化亜鉛(ZnO)を添加したことを除き、他は実験1と同様にして圧電磁器を作製した。その際、酸化鉛(PbO)の添加量は式(3)に示した組成物に対して0.01〜2質量%の範囲内で変化させ、酸化亜鉛の添加量は式(3)に示した組成物に対して0.15質量%、酸化タンタルの添加量は式(3)に示した組成物に対して0.4質量%とした。
(Pb0.95Sr0.03)[(Zn1/3Nb2/30.1 Ti0.42Zr0.48]O3 …(3)
得られた圧電磁器についても、実験1と同様にして、密度、径方向振動の電気機械結合係数krおよび比誘電率εrを測定した。それらの結果を表9に示す。
Figure 0004764110
表9に示したように、式(4)に示す組成物の主成分とする場合においても、鉛を酸化物(PbO)に換算して0.01〜2質量%の範囲内で含有すると共に、亜鉛を酸化物(ZnO)に換算して2質量%以下の範囲内で含有するようにすれば、焼成温度を低くしても、または低酸素還元雰囲気中において焼成しても、高い圧電特性を得ることができることが分かった。
<実験3>
副成分の種類および含有量を表10に示したように変化させたことを除き、他は試料No.4−4と同様にして圧電磁器を作製した。すなわち、添加粉として添加する酸化鉛の添加量は式(2)に示した組成物に対して0.5質量%とし、酸化亜鉛の添加量は式(2)に示した組成物に対して0.15質量%とした。
得られた圧電磁器についても、試料No.4−4と同様にして、密度、径方向振動の電気機械結合係数krおよび比誘電率εrを測定した。それらの結果を表10に示す。なお、表10に示した副成分の含有量は、式(2)に示した組成物に対する酸化物に換算した値である。
Figure 0004764110
表10に示したように、試料No.10−1〜10−12によれば、試料No.10−13〜10−24に比べて圧電特性kr×εr1/2を大きくすることができた。また、他の副成分を添加していない試料No.10−1に比べて、他の副成分を添加した試料No.10−2〜10−12の方が圧電特性kr×εr1/2をより向上させることができた。すなわち、他の副成分として、タンタル、アンチモン、ニオブ、タングステンおよびモリブデンからなる群のうちの少なくとも1種を添加するようにすれば、より好ましいことが分かった。
<実験4>
炭酸ストロンチウム(SrCO3)粉末を添加しなかったことを除き、または炭酸ストロンチウム(SrCO3)粉末に代えて、炭酸バリウム(BaCo3)粉末あるいは炭酸カルシウム(CaCO3)粉末を添加したことを除き、他は試料No.4−4と同様にして圧電磁器を作製した。すなわち、式(2)に示した組成物に代えて、式(4)または式(5)に示した組成物が仮焼粉に含まれるようにした。
これら圧電磁器についても、試料No.4−4と同様にして、密度、径方向振動の電気機械結合係数krおよび比誘電率εrを測定した。それらの結果を表11に示す。なお、表11に示した副成分の含有量は、式(4)または式(5)に示した組成物に対する酸化物に換算した値である。
Pb0.995[(Zn1/3Nb2/30.1Ti0.43Zr0.47]O3 …(4)
(Pb0.965 Me0.03)[(Zn1/3Nb2/30.1Ti0.43Zr0.47]O3 …(5)
Figure 0004764110
表11に示したように、試料No.11−1〜11−3によれば、試料No.11−4〜11−6に比べて圧電特性kr×εr1/2を大きくすることができた。また、鉛の一部を他の元素で置換していない試料No.11−1に比べて、置換した試料No.11−2及び11−3の方が圧電特性kr×εr1/2をより向上させることができた。すなわち、鉛の一部をストロンチウム、カルシウムおよびバリウムからなる群のうちの少なくとも1種で置換するようにすれば、より好ましいことが分かった。
<実験5>
試料No.12−1、13−1、14−1では焼成温度を930℃にしたことを除き、試料No.12−2〜12−4、13−2〜13−6、14−2〜14−4では添加粉を作製する際に酸化銅(CuO)粉末を添加して仮焼すると共に、焼成温度を930℃としたことを除き、試料No.1−4、4−4、7−4と同様にして圧電磁器を作製した。その際、酸化銅(CuO)の添加量は式(3)に示した組成物に対して0.005〜0.5質量%の範囲内で変化させた。
これら圧電磁器についても、以上と同様にして、密度、径方向振動の電気機械結合係数krおよび比誘電率εrを測定した。それらの結果を表12〜14に示す。なお、試料No.12−1は密度が低く、他の特性を評価することができなかった。
Figure 0004764110
Figure 0004764110
Figure 0004764110
表12〜14に示したように、酸化銅を添加した試料No.12−2〜12−4、13−2〜13−6、14−2〜14−4によれば、酸化銅を添加していない試料No.12−1、13−1、14−1に比べて圧電特性kr×εr1/2を大きくすることができた。すなわち、他の副成分として、銅を添加するようにすれば、焼成温度をより低くすることができることが分かった。また、銅の添加量は、主成分に対して、酸化物(CuO)に換算して0.5質量%以下、更には0.005〜0.1質量%の範囲内とすることが好ましいことも分かった。
<実験6>
まず、酸化鉛(PbO)粉末、炭酸ストロンチウム(SrCO3)粉末、酸化チタン(TiO2)粉末、酸化チタン(ZrO2)粉末、酸化チタン(ZnO)粉末および酸化チタン(Nb25)粉末を式(2)に示した組成となるように秤量すると共に、酸化タンタル粉末を式(2)に示した組成物に対して0.4質量%となるように秤量し、これらをボールミルを用いて16時間湿式混合したのち、大気中において700〜900℃で2時間仮焼して仮焼粉とした。
(Pb0.965Sr0.03)[(Zn1/3 Nb2/30.1Ti0.43Zr0.47]O3 …(2)
次いで、酸化鉛(PbO)粉末と酸化チタン(ZnO)粉末とを式(3)に示した組成物に対して0.5質量%、0.15質量%となるように秤量し、500〜700℃で2時間仮焼して添加粉とした。
続いて、仮焼粉と添加粉とをボールミルを用いて16時間混合粉砕(比表面積(BET)=2.0m2/g)して乾燥させたのち、ビヒクルを加え、混練して圧電体層用ペーストを作製した。ビヒクルは、アクリル樹脂:10質量%、アセトンとメチルエチルケトンの混合溶液:90質量%である。
一方、内部電極層用ペースト(本発明)を以下の要領で作製した。
すなわち、オクチル酸バリウムとオクチル酸マグネシウムとオクチル酸チタンとオクチル酸ジルコニウムとオクチル酸ホルミウムを、金属質量比が、Ba:Ti=1.0: 1.0になるように混合した。これらの混合有機金属レジネート5質量部をターピネオール40質量部に分散溶解させた。また、Ba・Tiの酸化物に対してSiO2を0.5質量%添加した。この中間溶液は透明な黄色を示した。0.4μmのCu粉末50質量部と、中間溶液45質量部と、エチルセルロース5質量部を混合して内部電極層用ペーストを作製した。
また、従来例として、Cu粉末(D50=0.5μm、タップ密度3.8g/cm3)に対して、エチルセルロースを2質量%、具体的にはターピネオールを36質量%、その他、粒子の分散性を向上するための分散剤や塗膜表面を平滑にするためのレベリング剤、脱法効果を得るための消泡剤を総量で1質量%以下となるように添加した内部電極層用ペーストを用意した。
圧電体層用ペーストをドクターブレード法で、乾燥後厚さ120μmになるように成形した。次いでこのシート上に、内部電極層用ペーストをスクリーン印刷法で、乾燥後厚み5μmに成形し100℃で10分間乾燥した。次に、内部電極層用ペーストを塗布したシートと、内部電極層用ペーストを塗布していないシートを交互に積層した。この時、内部電極層用ペースト塗布層が交互に対向側に突出するように積み重ね、内部電極層に挟まれた圧電体層が20層になるように積層した。この積層体をホットプレス加工後、5×5mmでチップ形状にした後に大気中で脱バインダを行った。脱バインダは、室温から200℃までを5℃/分、350℃までを0.5℃/分の速度で昇温し、350℃で3時間保持した。
脱バインダ後の積層体の外観を図5(実施例)及び図6(従来例)に示すが、本発明の実施例では脱バインダ後の積層体が健全であるのに対して、従来例は積層体にクラックが発生するとともに断面に剥離が生じていることがわかる。これは、実施例の場合にはCu粉末の周囲に圧電体前駆体が存在しているためにCuの酸化が抑制されるのに対して、従来例の場合にはCu粉末が酸化することにより体積膨張を起こすことによりクラックも剥離が発生したものと解される。図7は、実施例にかかる積層体についてTG/DTA(熱重量/示差熱分析装置)による測定結果を示すが、銅の酸化による重量増加の傾向がないことが確認できる。
脱バインダを行った積層体を酸素分圧が1.0×10-8の低酸素還元性雰囲気中、950℃で8時間焼成を行った。得られた焼成体(積層体)には内部電極層と圧電体層との間に剥離は観察されなかった。また焼成体の比誘電率εsを測定したところ、1256であった。
比誘電率εsは、積層体の非活性面(2面)にガラスフリットを含有する銀ペーストを塗布、焼き付けて外部端子との接続電極を形成した後、LCRメーターを用いて電気容量測定を行い以下の式により算出した。
εs= Cp×d/A×1/ε0
εs:比誘電率、Cp(F):電気容量、d(m):圧電体層厚、A(m2):圧電体層総面積、
ε0:8.854×10-12
得られた焼成体(積層体)に対して60V、0.1Hzでサイン波形の駆動電圧を印可したときの変位量は0.7μmであった。なお、この変位量は、焼成体(積層体)上部に赤外線レーザーを照射しながら上記駆動電圧を印加し、光源と焼成体(積層体)との距離から算出した。
本発明により得られる積層型圧電素子の構成例を示す断面図である。 積層型圧電素子の製造工程を示すフローチャートである。 内部電極層用ペーストの構成を示す図である。 内部電極層用ペーストの構成を示す図である。 本発明による積層体の脱バインダ後の外観を示す図である。 比較例による積層体の脱バインダ後の外観を示す図である。 実施例にかかる積層体についてTG/DTA(熱重量/示差熱分析装置)による測定結果を示す図である。
符号の説明
1…金属微粒子、2…被覆層、3…圧電体前駆化合物、4…有機溶媒、5…樹脂、6…内部電極層用ペースト、100…積層型圧電素子、10…積層体、11…圧電体層、12…内部電極層、21、22…端子電極

Claims (4)

  1. 圧電磁器組成物粒子を含む圧電体層前駆体と、
    導電粒子を含む内部電極層前駆体とが交互に積層された積層体を作製する工程と、
    前記積層体を950〜1050℃で焼成する工程と、
    を備え、
    前記圧電磁器組成物粒子が、
    式(1)で表される組成物に対して、
    鉛(Pb)を酸化物(PbO)に換算して0.01〜2質量%の範囲内で含有すると共に、
    亜鉛(Zn)を酸化物(ZnO)に換算して2質量%以下(ただし、0を含まず)の範囲内で含有し、
    (Pba-b Meb )[(Zn1/3 Nb2/3 x Tiy Zrz ]O3 …(1)
    (式(1)において、a、b、x、y、zは、0.96≦a≦1.03、0≦b≦0.1、x+y+z=1、0.05≦x<0.125、0.275<y≦0.5、0.375<z≦0.6をそれぞれ満たす範囲内の値である。Meは、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)およびバリウム(Ba)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。)
    前記内部電極層前駆体が、
    卑金属粒子と、焼成により圧電体を構成する圧電体前駆化合物とを含むことを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
  2. 前記内部電極層前駆体に含まれる前記卑金属粒子がCu粒子であり、
    前記積層体を焼成する前に、前記積層体中に含まれる樹脂成分を除去する熱処理を大気中で行うことを特徴とする請求項1に記載の積層型圧電素子の製造方法。
  3. 前記積層体の焼成を還元性雰囲気下で行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の積層型圧電素子の製造方法。
  4. 前記(1)式で表される組成物の仮焼成物に対して、鉛(Pb)を酸化物(PbO)に換算して0.01〜2質量%の範囲内で添加するとともに、亜鉛(Zn)を酸化物(ZnO)に換算して2質量%以下(ただし、0を含まず)の範囲内で添加し、前記圧電磁器組成物粒子を得ることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層型圧電素子の製造方法。
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