JP4762390B2 - 化粧紙 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、家具、器物の表面や建築物の内装材もしくは床材の表面等に使用する化粧紙に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、上記用途の化粧紙として、薄葉紙又はチタン紙等の原紙の表面に木目等の所望の絵柄模様を印刷形成してなるものや、その絵柄模様上に更に、各種の表面物性の向上を目的として、透明又は半透明の樹脂組成物からなる表面保護層を形成してなるものなどが、広く用いられている。
【0003】
これらの化粧紙は、適宜の接着剤を介して、例えば木材単板、合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)等の木質基材や、石膏ボード、珪酸カルシウム板、木質セメント板、軽量気泡コンクリート板等の無機質系基材、その他、金属系基材や合成樹脂系基材等、各種の基材の表面に貼着され、家具材、建具、壁材等、各種の用途に合わせて加工されて使用されている。
【0004】
係る化粧紙の中には、例えば机又は家具の天板や床材等の水平面用を中心として、用途により特に厳しい耐摩耗性や耐擦傷性、耐汚染性、耐溶剤性等の表面物性を要求されるものがある。その様な用途の化粧紙としては、前記した表面保護層を、特に架橋密度が高く各種物性に優れた被膜を与える電離放射線硬化型樹脂から形成したものが使用されている。
【0005】
しかし、表面保護層の強度をいかに向上したところで、下地の原紙の強度が伴わなければ、化粧紙総体として優れた表面物性を実現することはできない。つまり、加えられた外力が表面保護層自体としては十分に耐えられる程度のものであっても、原紙がそれに耐えることができなければ、原紙の変形により傷が付いたり、原紙の破壊により剥離したりする現象が発生するからである。
【0006】
係る観点から、原紙として繊維の空隙に樹脂を充填して強度を向上した樹脂含浸紙を使用することによって、化粧紙総体としての強度を向上した化粧紙も既に実用化されている。この手法は、一般に比較的低粘度の液状樹脂組成物が使用される電離放射線硬化型樹脂の塗工液の一部が、塗工時に原紙中に浸透することによって、表面保護層の表面が平滑にならずに艶ムラを発生する問題の解決にも有効である。
【0007】
しかるに、上記の如く樹脂含浸紙を原紙とした場合にあっても、電離放射線硬化型樹脂の塗工液が絵柄模様のインキ層中に浸透することによる、表面平滑性の低下や艶ムラ等の問題を解決することはできない。また、高物性の被膜を与える高架橋密度の電離放射線硬化型樹脂は、一般に硬化時の硬化収縮が大きく、大きな内部応力を発生するので、原紙上に設けた絵柄模様のインキ層がその応力に耐えられずに破壊される結果、表面保護層が原紙から剥離してしまう場合があるという問題もある。この問題に関しては、樹脂含浸紙を原紙としてこれに絵柄模様の印刷を施した場合の方が、未含浸の原紙に直接絵柄模様を印刷した場合と比較して、絵柄模様のインキ層の原紙との密着性が劣るので、寧ろ不利でさえある。
【0008】
係る問題から、電離放射線硬化型樹脂からなる表面保護層を設ける場合には、電離放射線硬化型樹脂の硬化収縮応力が絵柄模様のインキ層に直接作用するのを防ぐ為に、原紙上への絵柄模様の印刷形成後に、該印刷面上に適度の柔軟性を有する樹脂からなるプライマー層を緩衝層として設ける手法も提案されている。しかしながら、この手法によると製造工程が増加して生産が煩雑となる他、含浸樹脂と電離放射線硬化型樹脂との両方に良く密着するプライマー層の樹脂の選択が難しい等の問題点があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の技術における上記した問題点を解決する目的でなされたものであり、その目的とするところは、電離放射線硬化型樹脂からなる表面保護層の特有の優れた耐摩耗性や耐擦傷性、耐汚染性等の表面物性を下地の原紙や絵柄模様によって減殺されることなく十分に発現することができ、またプライマー層を設けなくても十分に原紙や絵柄模様との密着性が確保でき、電離放射線硬化型樹脂の下地への吸収による艶ムラや硬化収縮による絵柄模様の破壊の虞もなく、簡便且つ安定的に製造可能な化粧紙を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために、吸水性の良い原紙に絵柄模様を施した後、樹脂を水中に溶解又は分解した水中に侵漬して樹脂を含浸してなる樹脂含浸模様紙の絵柄模様面に、電離放射線硬化型樹脂からなる表面保護層を設けてなることを特徴とする化粧紙を提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の化粧紙の実施の形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は本発明の化粧紙の実施の形態を示す模式断面図であり、図2は本発明の化粧紙の実施の形態の製造工程を示す模式断面図である。
【0012】
本発明の化粧紙の一例を挙げれば、図1に示す様に、吸水性の良い原紙1の表面に絵柄模様2が設けられ、該絵柄模様2を含む原紙1の全体に樹脂が含浸され(該樹脂の一部は原紙1及び絵柄模様2上に樹脂層3を形成する)、これによって樹脂含浸模様紙4が構成されており、該樹脂含浸模様紙4の絵柄模様2面に、電離放射線硬化型樹脂からなる表面保護層5が設けられて構成されるものである。
【0013】
原紙1は本発明の化粧紙の支持体となるものであって、本発明においては後に樹脂の含浸が可能な吸水性の良い紙であれば良く、例えば薄葉紙、チタン紙、上質紙、クラフト紙等が使用可能である。中でも印刷適性と樹脂含浸適性の両面で優れたチタン紙が最も好適である。その厚さには特に制約はないが、一般的には坪量20〜100g/m2程度の範囲内のものが使用される。
【0014】
絵柄模様2は、本発明の化粧紙に所望の色彩絵柄による意匠性を付与する目的で設けられるものであって、その絵柄の種類には特に制約はなく、例えば木目柄、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学図形、文字、記号等、或いはそれらの2種以上の組み合わせ等、所望により任意である。また、特定の柄を必要としない場合には、単色無地であっても良い。
【0015】
上記絵柄模様2は、通常の印刷インキを使用して通常の印刷方法で設けることができる。印刷インキの種類には特に制約はなく、油性インキであっても良いが、樹脂含浸適性を考慮すると水性インキを使用することが望ましい。それは、水性インキの方が油性インキと比較して含浸樹脂の水溶液との馴染みが良く、後の含浸工程において迅速且つ均一に含浸可能であり、しかも含浸樹脂との一体化によって優れた強度を発現することができるからである。
【0016】
上記水性インキの種類にも特に制約はないが、特にそのバインダー樹脂がカゼイン、エマルジョン樹脂及び/又はラテックス樹脂を主成分とするものを使用することが最も望ましい。これらのバインダー樹脂は、インキの印刷後に乾燥工程を経ることによって難水溶化する性質を有しており、後の樹脂含浸工程において含浸樹脂の水溶液に再溶解しにくいので、絵柄模様を損なうことがなく、且つ含浸樹脂の汚染のおそれもないからである。
【0017】
上記エマルジョン樹脂としては、例えばアクリル系、酢酸ビニル系、スチレン系、ウレタン系等、上記ラテックス樹脂としては、例えばスチレン−ブタジエン系、アクリロニトリル−ブタジエン系、メチルメタクリレート−ブタジエン系等を使用することができる。
【0018】
また、これらカゼイン、エマルジョン樹脂及び/又はラテックス樹脂の他に、インキの安定性の向上を目的として、例えばポリビニルアルコール等の水溶性樹脂や、多糖類、セルロース誘導体等の水溶性高分子等を併用したものであっても良い。
【0019】
絵柄模様2の形成方法にも特に制約はなく、例えばグラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、凸版印刷法、インクジェット印刷法等の任意の印刷方法によることができる。またベタインキ層を設ける場合には、該ベタインキ層の形成方法として、上記各種の印刷方法の他、例えばロールコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、スプレーコート法、リップコート法、ダイコート法等の任意のコーティング方法によることもできる。
【0020】
上記絵柄模様2を含む原紙1に含浸する樹脂は、水中に溶解又は分散して含浸可能な樹脂であれば特に制約はなく、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であっても良いが、製造された化粧紙の後加工適性を考慮すると、柔軟性に優れた含浸紙を与える熱可塑性樹脂を主体として含有する樹脂組成物を使用することが望ましい。
【0021】
係る熱可塑性樹脂としては、例えば水溶性アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、膠、デキストリン等の水溶性樹脂や、例えばスチレン−ブタジエンゴム系、アクリロニトリル−ブタジエンゴム系、メチルメタクリレート−ブタジエンゴム系等の合成ゴムラテックス、または例えばアクリル系、スチレン系、塩化ビニル系、酢酸ビニル系、アクリル−スチレン系、塩化ビニル−エチレン系、塩化ビニル−エチレン−酢酸ビニル系、酢酸ビニル−マレイン酸系、アクリル−マレイン酸系等の合成樹脂エマルジョン等、或いはこれらから選ばれる2種以上の混合物等を使用することができる。
【0022】
また、含浸後の化粧紙に適度の硬度(強度)や耐熱性、耐水性、耐溶剤性を与える目的で、上記した熱可塑性樹脂に加えて、例えばメラミン樹脂、尿素樹脂等の熱硬化性樹脂、及び/又は、アジリジン、エポキシ化合物、ブロックイソシアネート化合物等の架橋剤等を併用することもできる。これら熱硬化性樹脂及び/又は架橋剤の使用量は、多すぎると化粧紙の柔軟性が低下し後加工適性が悪化するので、熱可塑性樹脂100重量部(固形分)当たり30重量部(同)以下とすることが望ましい。
【0023】
樹脂の含浸は、絵柄模様2を設けた原紙1の絵柄模様2面側から行っても良いし、反対面側から行っても良い。また、片面ずつ2回に分けて含浸させたり、両面から同時に含浸させたりしても良い。樹脂の含浸率(含浸後の重量にしめる含浸樹脂の重量の比率)は、絵柄模様2の形成前の原紙に樹脂が含浸される通常の樹脂含浸紙の場合と概略同様で、通例10〜60%程度であり、中でも25〜40%程度の範囲内が最も望ましい。重要なことは、絵柄模様2を含む原紙1の全体に均一に樹脂が含浸されることである。
【0024】
この樹脂含浸処理によって、原紙1の紙間が強化されると共に、絵柄模様2のインキ層と原紙1とが含浸樹脂によって一体化される。更に、含浸樹脂の一部は原紙1及び絵柄模様2上に樹脂層3を形成する。この樹脂層3は、後に塗工される表面保護層5形成用の電離放射線硬化型塗工液の原紙1中または絵柄模様2中への浸透を防止すると共に、電離放射線硬化型樹脂の硬化収縮による内部応力の原紙1や絵柄模様2への影響を緩和する緩衝層としての作用をなし、絵柄模様2のインキ層の破壊を防止する。
【0025】
上記の様にして構成された樹脂含浸模様紙4の表面に、電離放射線硬化型樹脂からなる表面保護層5が設けられる。この表面保護層5は一般に、電離放射線硬化型樹脂を主成分とする無溶剤型又は溶剤型の液状体である電離放射線硬化型塗工液を適宜の塗工方法によって塗工して塗工被膜を形成し、これに紫外線又は電子線等の電離放射線を照射して架橋硬化させることによって形成される。
【0026】
表面保護層5の形成のための電離放射線硬化型塗工液の主成分たる電離放射線硬化型樹脂組成物とは、紫外線又は電子線等の電離放射線の照射により重合架橋反応可能なラジカル重合性二重結合を分子中に少なくとも一つ有するプレポリマー、オリゴマー及び/又はモノマーを適宜配合してなるものである。
【0027】
係るプレポリマー、オリゴマーとしては、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリオールアクリレート等のアクリレート類、ポリエステルメタクリレート、ウレタンメタクリレート、エポキシメタクリレート、ポリエーテルメタクリレート、ポリオールメタクリレート等のメタクリレート類があげられる。
【0028】
上記モノマーとしては、n−アルキルアクリレート、イソ・プロピルアクリレート、イソ・ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、β−ヒドロキシエチルアクリレート、ジエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、β−ヒドロキシプロピルアクリレート、グリシジルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジアルキルアミノエチルアクリレート、2−シアノエチルアクリレート、β−エトキシ・エチルアクリレート、アリールアクリレート、ベンゾイルオキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシ・ジエチレングリコールアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアルコールとε−カプロラクトン付加物アクリレート、イソ・ボロニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオ・ペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトレエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、アセタールグリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールとε−カプロラクトン付加物ジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパン・ポリエトキシレイト・トリアクリレート、トリメチロールプロパン・ポリプロポキシレイト・トリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールとε−カプロラクトン付加物ヘキサアクリレート、アクリロキシエチルフォスフェート、フロロアルキルアクリレート、スルホプロピルアクリレート、等のアクリレートモノマー類や、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソ・ブチルメタクリレート、セカンダリー・ブチルメタクリレート、ターシャリー・ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、イソ・オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、デシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ジメチルアミノエチルメタクリレート、2−ジエチルアミノエチルメタクリレート、2−ターシャリー・ブチルアミノエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニールメタクリレート、ノニールフェニールメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、ボルニルメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、グリセロールメタクリレート、メタクリロキシエチルフォスフェート、ビス・メタクリロキシエチルフォスフェート、等のメタクリレートモノマー類などがあげられる。
【0029】
上記電離放射線硬化型塗工液の塗工被膜を紫外線の照射によって硬化させる場合には、当該電離放射線硬化型塗工液には、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン又はそのアルキルエーテル類、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルアセトフェノン等のアセトフェノン類、チオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類、アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルメチルケタール等のケタール類、ベンゾフェノン、4,4−ビスメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、アゾ化合物等から選ばれる1種以上の光ラジカル重合開始剤が添加される。また必要に応じて、例えばトリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン等の第3級アミン類、2−ジメチルアミノエチル安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル等の安息香酸誘導体等から選ばれる1種以上の光増感剤が併用される。
【0030】
さらに、上記電離放射線硬化型塗工液の副成分として、着色剤、充填剤、艶消剤、消泡剤、離型剤、耐磨剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、抗菌剤、防黴剤、希釈溶剤その他の添加物を、必要に応じて適宜含有させても良い。希釈溶剤を含有する電離放射線硬化型塗工液を使用する場合には、塗工後希釈溶剤を揮発除去した後に電離放射線を照射して硬化させることが望ましい。
【0031】
電離放射線硬化型塗工液の塗工方法には特に制約はなく、例えばグラビアコート法、ダイコート法、リップコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、スプレーコート法、フローコート法、ロールコート法、ディップコート法等の従来公知の任意の塗工方法から、電離放射線硬化型塗工液の性状や樹脂含浸模様紙4の性状に合致した適切な方法を選択して実施すれば良い。
【0032】
また、電離放射線硬化型塗工液を塗工する前に、樹脂含浸模様紙4の塗工面に予め例えばコロナ処理、オゾン処理、プラズマ処理、電離放射線処理、酸処理又はアルカリ処理等の適宜の表面処理を施して濡れ性を高めておくことによって、樹脂含浸模様紙4と表面保護層5との密着性の更なる向上を図ることもできる。また、電離放射線硬化型塗工液を塗工する前に、樹脂含浸模様紙4の表面に研磨又はスーパーキャレンダー仕上げ等の平滑化処理を施しておくと、塗工硬化後の表面保護層5の表面を更に平滑に仕上げることが可能である。
【0033】
表面保護層5の厚さには特に制限はないが、薄すぎると必要な表面強度や耐汚染性が達成できず、逆に厚すぎると可撓性が低下し巻取適性や後加工適性を損なう結果となるから、両者のバランスの取れる厚さ範囲を選択する必要がある。具体的には、電離放射線硬化型樹脂の組成にもよるが、硬化後の厚さを1μm以上50μm以下の範囲とすることが望ましく、中でも3μm以上20μm以下の範囲とすることが最も望ましい。
【0034】
表面保護層5を構成する電離放射線硬化型樹脂の硬化の為に使用する電離放射線の種類には特に制約はなく、要するに電離放射線硬化型樹脂又はそれに添加された光ラジカル重合開始剤又は増感剤等に作用してこれらを電離(ラジカル化)させ、ラジカル重合反応を開始せしめるに十分なエネルギーを有する電離放射線であれば良く、具体的には、例えば可視光線、紫外線、X線、γ線等の電磁波や、電子線、α線、β線等の荷電粒子線等が考えられるが、感度や硬化能力、照射装置(光源・線源)の簡便性等から見て、最も実用性の高いのは紫外線又は電子線である。
【0035】
紫外線照射の光源としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ、ブラックライト、カーボンアーク灯等の光源が適用できる。照射量は、50〜1000mJ/cm2が好ましい。50mJ/cm2未満では硬化不十分のおそれがある一方、1000mJ/cm2を越えると原紙1の劣化の原因となるおそれがあるからである。通常この処理は50〜500m/minのライン速度で可能であるから極めて生産効率が高い。
【0036】
電子線照射の線源としては、コックロフトワルトン型、ハンデグラフ型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種の電子線加速器を使用した電子線照射装置が適用できる。電子線照射装置より照射する電子線の加速電圧は150〜250kV、照射量は0.5〜5Mrad程度が良い。0.5Mrad未満では硬化不十分のおそれがある一方、5Mradを越えると原紙1の劣化の原因となるおそれがあるからである。通常この処理は50〜500m/minのライン速度で可能であるから極めて生産効率が高い。
【0037】
表面保護層5の表面は、鏡面状等の平滑面であっても良いし、艶消剤等の添加による砂目状等の艶消面であっても良い。また、所望により適宜の模様のエンボスを設けることもできる。エンボスの模様の種類には特に制約はなく、例えば木目調、石目調、布目調、和紙調、幾何学模様状、砂目状、ヘアライン状、スウェード調等、所望により任意である。エンボスの模様を絵柄模様2と同調させると、更に意匠性を向上させることができる。
【0038】
上記エンボスの形成方法にも特に制約はなく、エンボス版若しくはエンボス賦型フィルムを使用して賦型するのが一般的である。具体的には、例えば電離放射線硬化型塗工液の塗工被膜に少量の電離放射線を照射して半硬化状態とし、これにエンボス版等を圧接してエンボスを賦型した後に完全硬化させる方法、電離放射線硬化型塗工液を樹脂含浸模様紙4とエンボス版等との間に挟持した状態で硬化させる手法などが採用される。また、常温で熱可塑性固体状の電離放射線硬化型樹脂を主成分とする溶剤型の塗工液を使用する場合には、乾燥固化させた塗工被膜にエンボス版等を圧接してエンボスを賦型した後に硬化させる手法なども採用可能である。なお、エンボスの凹部にワイピング法等の手法により着色剤を充填することにより、更なる意匠性の向上を図ることもできる。
【0039】
【実施例】
以下に、本発明の化粧紙の具体的な実施例及び比較例を示し、本発明を更に詳細に説明する。
【0040】
実施例1
吸水性の良い坪量60g/m2の化粧紙用チタン紙を原紙とし、その表面に、カゼインを主成分とする水性グラビア印刷インキを使用して、ダイレクトグラビア印刷方式によって木目の絵柄模様を印刷形成し、熱乾燥によって十分に乾燥させ巻き取った。
【0041】
引き続き、得られた印刷紙を水溶性アクリル系樹脂を主成分とする水性含浸樹脂液中をくぐらせて樹脂を浸漬含浸し、熱乾燥によって樹脂を乾燥硬化させて巻き取った。その際、含浸乾燥後の樹脂含浸模様紙の坪量が、90g/m2となるように樹脂含浸量を調節した。
【0042】
上記樹脂含浸模様紙の絵柄模様面に、エポキシアクリレート系樹脂を主成分とする粘度約500cpsの電離放射線硬化型塗工液をグラビアオフセット方式にて硬化後の膜厚が10μmとなる様に塗工し、引き続き電子線照射装置にてライン速度150m/minの条件で加速電圧200kV、照射線量3Mradの電子線を照射して電離放射線硬化型塗工液の塗工被膜を架橋硬化させて、本発明の化粧紙を作製した。
【0043】
比較例1
上記実施例1において、樹脂の含浸の工程を省略し、他は実施例1と同一条件で化粧紙を作製した。
【0044】
比較例2
上記実施例1において、絵柄模様の印刷形成の工程と、樹脂の含浸の工程との順序を逆にし、他は実施例1と同一条件で化粧紙を作製した。
【0045】
性能評価
上記実施例1、比較例1及び比較例2の化粧紙の仕上がり状態を目視にて評価したところ、実施例1の化粧紙には異状は認められなかったが、比較例1の化粧紙は艶ムラが著しく、比較例2の化粧紙も若干の艶ムラが認められた。
【0046】
また、上記実施例1、比較例1及び比較例2の化粧紙を、それぞれ2液硬化型ウレタン樹脂系接着剤を使用して耐水合板の表面に貼着し、養生硬化後、セロハンテープ剥離試験を行ったところ、実施例1の化粧紙は合格であったのに対し、比較例1の化粧紙は原紙の材破により剥離し、比較例2の化粧紙は絵柄模様部において剥離が認められ、いずれも不合格の結果であった。
【0047】
【発明の効果】
本発明の化粧紙は、吸水性の良い原紙に絵柄模様を施した後、更に樹脂を含浸してなる樹脂含浸模様紙の絵柄模様面に、電離放射線硬化型樹脂からなる表面保護層を設けたので、以下に列挙する様に種々の優れた効果を奏するものである。
【0048】
まず、原紙に絵柄模様を施した後に樹脂を含浸したことにより、原紙及びその表面に施した絵柄模様が、含浸した樹脂によって強化されると共に強固に一体化されている。そして、その上に電離放射線硬化型樹脂からなる表面保護層が設けられるので、表面保護層の表面強度(表面硬度、耐擦傷性、耐摩耗性、耐セロハンテープ性等)が下地の原紙や絵柄模様のインキ層によって大幅に減殺されることなく存分に発揮されるので、化粧紙総体としての表面強度が格段に向上する。
【0049】
また、予め絵柄模様を施した原紙に樹脂含浸処理を施すことによって、絵柄模様のインキ層が含浸樹脂によって強化され原紙と一体化すると共に、絵柄模様上に残存した含浸樹脂による薄膜状の樹脂層が形成され、これが電離放射線硬化型樹脂からなる表面保護層に対して緩衝層として作用するので、表面保護層を形成する電離放射線硬化型樹脂の硬化収縮応力の絵柄模様のインキ層への影響が緩和され、絵柄模様のインキ層の破壊を防止し、以て化粧紙総体としての優れた表面強度を得ることができる。
【0050】
しかも、表面保護層形成用の電離放射線硬化型塗工液の塗工時には、絵柄模様を含む原紙全体に樹脂が含浸され一体化しており、電離放射線硬化型塗工液が原紙中や絵柄模様のインキ層中に浸透することがないので、電離放射線硬化型塗工液の塗工被膜には平滑な塗工面が容易に得られ、艶ムラのない意匠品質に優れた化粧紙を容易に得ることができる。
【0051】
以上を総括すると、本発明の化粧紙は、従来の同種の化粧紙と比較して、電離放射線硬化型樹脂からなる表面保護層の特有の優れた耐摩耗性や耐擦傷性、耐汚染性等の表面物性を下地の原紙や絵柄模様によって減殺されることなく十分に発現することができ、またプライマー層を設けなくても十分に原紙や絵柄模様との密着性が確保でき、電離放射線硬化型樹脂の下地への吸収による艶ムラや硬化収縮による絵柄模様の破壊の虞もなく、簡便且つ安定的に製造可能である等、数々の優れた利点を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の化粧紙の実施の形態を示す模式断面図である。
【図2】本発明の化粧紙の実施の形態の製造工程を示す模式断面図である。
【符号の説明】
1‥‥原紙
2‥‥絵柄模様
3‥‥樹脂層
4‥‥樹脂含浸模様紙
5‥‥表面保護層

Claims (1)

  1. 吸水性の良い原紙に絵柄模様を施した後、樹脂を水中に溶解又は分散した水中に浸漬して樹脂を含浸してなる樹脂含浸模様紙の絵柄模様面に、電離放射線硬化型樹脂からなる表面保護層を設けてなり、
    前記絵柄模様が、カゼインを主成分とし水溶性樹脂又は水溶性高分子を併用して、かつ乾燥によって難水溶化するバインダー樹脂を含む水溶性インキによって施された絵柄模様であり、前記水溶性樹脂がポリビニルアルコールから成り、前記水溶性高分子が多糖類又はセルロース誘導体から成ることを特徴とする化粧紙。
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