JP4761749B2 - 生体部材およびそれを用いた人工関節 - Google Patents

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本発明は、ZrOを含む高強度のセラミックからなる生体部材それを用いた人工関節に関するものである。
アルミナセラミックスやジルコニアセラミックスは生体不活性な材料である上、機械的強度、耐摩耗性に優れることから人工関節や人工歯根といった医療用材料としての適用が進んでいる。例えば、人工股関節では、金属に比べ、アルミナもしくはジルコニアセラミックス/超高分子量ポリエチレンの組合せが摩耗しにくく、且つ欠陥も生じにくいとされていることから、骨頭にセラミックスが、臼蓋ソケットに超高分子ポリエチレンが採用されてきた(特許文献1参照)。
さらに、アルミナセラミックス同士の摺動部を有した人工股関節も開発されている(特許文献2参照)。
また近年、アルミナ、ジルコニア系の酸化物セラミックスは、高強度、耐摩耗性及び耐食性が要求される構造部材として広く利用されている。特に、アルミナとジルコニアを一定の比率で複合化する場合は、結晶粒の微細化効果によりそれぞれの単体よりも高い強度が得られることが注目されている(非特許文献1参照)。そして、前記アルミナセラミックスは非常に優れた生体材料であるが、強度・靭性の点でジルコニアセラミックスに遠く及ばない。例えば、前述のアルミナセラミックス同士の摺動部を有した人工股関節では、アルミナセラミックスの強度、靭性では不十分で、残念ながら破壊に至った症例が報告されている。その破壊の原因は、マイクロセパレーションとよばれる臼蓋カップと骨頭との亜脱臼状態から骨頭が臼蓋カップに入る際に骨頭と臼蓋カップがあたり、場合によっては衝撃により破壊することが判明している。衝撃による破壊は、材料の靱性により改善されることは周知の事実である(例えば、特許文献3)。
特公平06−22572号公報 特開2000−16836号公報 特開平8−72200号公報 四方良一他、「粉体および粉末冶金」、(社)粉体粉末冶金協会、1991年4月10日、第38巻、第3号 p.57−61
方、ジルコニアセラミックスは、アルミナセラミックスに比べて高強度・高靭性であるが、金属の靭性には遠く及ばない。しかし、前述したように金属と超高分子ポリエチレンの組合せはセラミックスと超高分子ポリエチレンの組合せよりも摩耗しやすい傾向がある。よって、より高い安全性を目指して、さらに高い強度・靭性を有する生体材料が望まれていた。
また、ジルコニアセラミックスは、Yを安定化剤として用いた場合、水が存在する環境下で相変態が起こり易く、強度や表面粗さが悪化する場合がある。表面粗さが悪化した場合、摺動部での摩耗に伴って摩耗粉が発生し、この摩耗粉が人工股関節近傍の組織内に蓄積されると、骨吸収を引き起こす。この骨吸収は、人工股関節と骨とのルーズニングの原因になる。このような摩耗粉の発生は、特に、ジルコニアセラミックス同士の摺動部で顕著となる。また、この対策のためにCeOを安定化剤に使用した場合、水による相変態は無くなるが、Yと比較し、結晶が成長するため、摺動特性、強度が良好なジルコニアセラミックスは得られていない。
前述の複合材については、形状異方性粒子の生成によって破壊靭性が向上する一方で、強度と硬度が低下することが知られている。破壊靭性をより高くする為には形状異方性粒子をより細長く成長させる必要があるが、粒子が大きくなるほど強度と硬度が低下する。前記特許文献1では、アルミナの異方性成長により靭性改善効果が見られたものの、曲げ強度が1050MPa以下となり、形状異方性粒子の生成によって強度が低下している。従って、高強度、高靭性材料を得るには、粒成長を抑えながら、靭性を向上する方法を検討する必要がある。
アルミナ磁器中にジルコニアが、準安定相である正方晶結晶として分散した存在、外部応力が作用することにより、安定な単斜晶へ相変態する(応力誘起変態)。この相変態による体積膨張により、クラックの進展が妨げられ、靭性が向上する。しかし、ジルコニアは本来常温では単斜晶であり、準安定な正方晶として分散させるためには、安定化剤を微量添加しなければ正方晶を安定して分散させることは難しい。アルカリ土類、稀土類元素の8配位の際のイオン半径が、ジルコニウムのイオン半径の140%以下の時、固溶し、安定化剤となると言われており、安定化剤となる物質は、Mg、Ca、Y等、安定化剤とならない物質はSr、Ba等が知られている。
本発明は、そのような従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、非常に高い強度・靭性を有する生体部材を提供することを目的とする。また、本発明の別の目的は、生体内環境下で耐摩耗性を有した人工関節を提供することである。
Al を65質量%以上、ZrO を4〜34質量%、及びSrOを0.1〜4質量%含有し、SiO を0.20質量%以上、TiO を0.22質量%以上、MgOを0.12質量%以上含有し、かつSiO 、TiO 及びMgOを合計で0.6〜4.5質量%含有しており、前記Al の粒子が、SEM画像において細長形状であるとともに、前記Al の粒子の最長方向を長軸及びその長さを長軸径とし、該長軸に対して垂直な方向を短軸及びその長さを短軸径としたときに、前記長軸径の平均が1.5μm以下であり、前記短軸径に対する前記長軸径の比の平均が2.5以下であり、前記短軸径の平均と前記長軸径の平均との中間値が1μm以下であり、シャルピー衝撃試験におけるシャルピー衝撃値が45kJ/m以上のセラミックスからなる生体部材が、靭性のみで
なく、生体内のような水分の多い環境下でも強度劣化を起こしにくく、また、耐摩耗性の劣化を起こしにくいことを見出し、本発明に至った。
また、本発明者らはアルミナ主体のAl−ZrOセラミックスにSrOを添加して、低温で焼成し、形状異方性粒子の生成を抑えつつ、同時に、分散させたジルコニアの粒成長を抑制し、ジルコニア粒子に歪みが残存するため、本来固溶しないと言われているSrをZrOに微量固溶させることが可能となる事を発見した。その結果、SrOに安定化剤としての効果が発現し、正方晶ZrOの準安定化を実現し、単斜晶への応力誘起相転移によって強度と破壊靭性を向上できること、更に焼結助剤としてTiO、MgO及びSiOを添加することによりZrOへのSrの固溶が促進され、応力誘起相転移強化の効果が大きくできることを見出した。
また、本発明の生体部材を構成するセラミックスは、Al、Zr及びSrを金属として、又はこれらを金属化合物として含む主原料を、これらの金属又は金属化合物を金属酸化物に換算して、複合セラミックス中でAlを65質量%以上、ZrOを4〜34質量%、及びSrOを0.1〜4質量%含有するように混合して、所定形状に成形した後、1300℃〜1500℃の温度範囲で焼成し、更に前記焼成温度より30℃以上低い温度で熱間静水圧処理することにより作製することができる。
この場合、Al、Zr及びSrを金属として、又はこれらを金属化合物として含む前記主原料に、更にTi、Mg及びSiを金属として、又はこれらを金属化合物として含む焼結助剤を、これらの金属又は金属化合物を金属酸化物に換算して、複合セラミックス中でSiOが0.20質量%以上、TiOが0.22質量%以上、MgOが0.12質量%以上で、かつSiO、TiO及びMgOが合計で0.6〜4.5質量%含有するように混合することが望ましい。
本発明の生体部材を構成するセラミックスは、前記ZrOの粒子の一部にSrが固溶していることを特徴とする。
セラミックスが上記組成範囲で、かつZrO粒子の一部にSrOが溶解していることにより、SrOによる正方晶ZrOの安定化効果が発現し、強度と靭性が向上する。また、ジルコニア含有量の増加や形状異方性粒子生成による強度と硬度の低下も少なく、実用に耐え得るものが得られるようになる。
本発明の生体部材の製造方法は、先ず、原料を所定の割合で混合し、所定形状に成形する。ここでいう原料とは、金属、金属酸化物、金属水酸化物,金属炭酸塩などの塩類等を粉末あるいは水溶液等として使用することが可能である。前記粉末として使用する場合その平均粒径は、1.0μm以下が好ましい。
また、成形には、プレス成形、鋳込み、冷間静水圧成形、或いは冷間静水圧処理などの成形法を使用可能である。
次に、本発明によれば、1300〜1500℃の温度範囲で焼成し、更に前記焼成温度より30℃以上低い温度で熱間静水圧処理することを特徴とする。これによりアルミナ、ジルコニアが微粒で、アルミナの異方粒成長を抑えた緻密体を作製することが可能となる。
本発明により、Srの固溶したZrOにおいて応力誘起相転移の効果が大きく、更に焼結助剤としてSiO、TiOおよびMgOを添加することでその効果が更に顕著になる。またSiO、TiOおよびMgOの添加により、焼成温度が下がり、高緻密化、組織微細化が起こり高強度、高靭性、高硬度の複合セラミックスからなる生体部材を提供できる。
本発明によれば、ZrOを含み、且つシャルピー衝撃試験におけるシャルピー衝撃値が45kJ/m以上のセラミックスからなる生体部材を構成したことにより、靭性のみでなく、生体内のような水分の多い環境下でも強度劣化を起こしにくい。
また、前記複合セラミックス同士の摺動では、121℃の飽和水蒸気中で152時間の条件で行う加速劣化試験後のピンオンディスク試験法による比摩耗量を0.3×10−10mm/N以下にすることができる。したがって、前記複合セラミックスで相互に摺動する人工関節の摺動部を構成することにより、人工関節において、高強度、高靭性、高耐摩耗性を実現することができる。
また、Srの固溶したZrOでは正方晶が準安定化され、応力誘起相転移の効果によって高強度、高靭性材料となる。更に焼結助剤としてSiO、TiO及びMgOを同時に添加することでその効果が更に顕著になり、またこれらの焼結助剤の添加により、焼成温度が下がり、形状異方性粒子が生成せず高緻密化、組織微細化が起こる。その結果、高強度、高靭性、高硬度の複合セラミックスからなる生体部材およびそれを用いた人工関節を得ることが可能となる。
以下に本発明を詳述する。
図1乃至2に本発明の生体部材の実施形態を例示する。図1によれば、人工関節の摺動部に前記セラミックスが用いられている。具体的には、金属ステム並びにセラミックス製の骨頭ボール及び臼蓋ソケットにより人工股関節が構成されている。本発明は、人工股関節などの人工関節において、対をなす摺動部が前記セラミックスからなり、これら摺動部を含む一対の生体部材が人工関節を構成する場合のみでなく、一方の摺動部のみが前記セラミックスからなる場合を含む。
また、本発明の生体部材は摺動部を有しないものも含む。例えば、関節部分を含まない人工骨であっても構わない。
通常ZrOは、Yなどの安定化剤を適量ZrOに固溶させることで機械的特性を向上させることができる。しかし、Al−ZrOセラミックスにおいてYの配合量が多すぎると立方晶が多くなり相変態の破壊靭性への寄与が小さくなる。一方、Yの配合量が少なすぎると単斜晶ZrOが多くなり、強度、靭性ともに低下する。またAl含有量の増加によって硬度が高くなるが強度と靭性が低下する。
これを補う目的でSrOを添加し形状異方性粒子生成による破壊靭性向上を行なうが、高温焼成を必要とし、粒成長や緻密化阻害等により強度、硬度は大きく低下する。
本発明で開発された材料は、Srの固溶による正方晶ZrOの安定化が起こるが、SrではZrOへの固溶量が少ない為、立方晶は生成し難くなる。この結果、応力誘起相転移効果が大きく、形状異方性粒子生成によらず破壊靭性を向上でき、強度と硬度も高くなる。
本発明の生体部材をなす複合セラミックスは、少なくともAlとZrOとSrOとを含有する複合セラミックスであって、Alを65質量%以上、ZrOを4〜34質量%、及びSrOを0.1〜4質量%含有し、更に該ZrO粒子の一部にSrが固溶していることを特徴とするが、Alの含有量は65質量%以上、好ましくは67〜90質量%、特に好ましくは76〜84質量%であり、ZrOの含有量は4〜34質量%、好ましくは10〜34質量%、特に好ましくは11〜20質量%である。
Alを65質量%以上含有させることにより、高強度でかつ高硬度という効果が得られ、ZrOの含有量が4質量%未満では強度が低下し、低靭性となり、一方、34質量%を超えるとヤング率低下により硬度が低下する。
又、SrOの添加量は、複合セラミックス中で0.1〜4質量%、好ましくは0.5〜3質量%、特に好ましくは0.7〜1.5質量%である。
SrOの添加量を上記0.1〜4質量%とすることは重要である。
SrOの添加量が0.1質量%未満のとき、ZrOの単斜晶系が多くなり、強度が低下する。またSrOの添加量が4質量%を超えるときは、焼成温度が高くなり、形状異方性粒子生成による緻密化阻害、ジルコニア粒成長による強度あるいは硬度の低下がおきる。
上記組成範囲に更にSiO、TiO及びMgOを一定割合添加することにより、AlとZrOの結晶粒成長を抑制しながら、低い温度条件で焼結体を緻密化でき、微粒、高密度の組織形成により高強度化の実現が可能となる。
すなわち、Alを65%質量%以上、ZrOを4〜34質量%、SrOを0.1〜4質量%含有し、更にSiOを0.20質量%以上、TiOを0.22質量%以上、MgOを0.12質量%以上含有して、かつSiO、TiO及びMgOが総量で0.6〜4.5質量%含有する組成において高強度、高靭性、高硬度が実現される。
ここで、SiOの含有量は、0.20質量%以上、好ましくは0.4〜1.5質量%であり、TiOの含有量は、0.22質量%以上、好ましくは0.3〜0.7質量%であり、MgOの含有量は、0.12質量%以上、好ましくは0.2〜1.4質量%である。
SiOの含有量が0.20質量%未満、あるいはTiOの含有量が0.22質量%未満、あるいはMgOの含有量が0.12質量%未満では、液相が不足し、Alが緻密化しにくいという不都合を生ずる。
焼結助剤としてSiO、TiO、及びMgOを上記割合添加することにより、SrOのZrOへの固溶が促進され強度、靭性が向上すると共に共晶点が1300℃以下になり、焼結時に液相が生成して材料の焼結が大きく促進される。この為、より低い温度でも高い緻密性の焼結体が得られる。また比較的低温で焼結することによって異方粒成長を抑制し、微細な組織となり強度と硬度が低下しない。
次に、高強度、高靭性、及び高硬度の材料特性を得るには、1500℃以下の低温焼成によりAlとZrOの粒成長を抑制することが重要であり、特に1490℃以下とするのが望ましい。SrOを添加した状態で高温焼成した場合Alが異方粒成長し、強度、靭性、硬度が低下する。これは、ZrOの粒成長によって単斜晶ZrO量が増加して、強度と硬度が低下するからである。
以上の説明から理解されるように、上記のような組成を有する前記セラミックスは、形状異方性粒子による緻密化阻害や、ジルコニア粒成長による強度あるいは硬度の低下が有効に回避されている。
例えば、セラミックス中のAl粒子は、複合セラミックスにおけるAlの粒子が、SEM画像において細長形状を呈するとともに、各Alの粒子の最長方向を長軸、その長さを長軸径とし、長軸に対して垂直な方向を短軸、その長さを短軸径としたときに、長軸径の平均(長軸平均径)が1.5μm以下であり、短軸径に対する長軸径の比であるアスペクト比の平均が2.5以下であり、短軸径の平均と長軸径の平均平均粒径との中間値がμm以下であることが好ましい。即ち、Al粒子の平均アスペクト比が2.5をえるとき或いはその長軸径の平均が1.5μmよりも大きいときには、形状異方性粒子による緻密化阻害を生じ、強度低下を生じ。また、ZrO 粒子の短軸径の平均と長軸径の平均との中間値が1.0μmよりも大きいと、正方晶の安定性が低下し、相変態によるクラックが発生し、強度や靭性の低下を生じてしまう。
例えば、該セラミックス中のAl粒子は、平均アスペクト比が2.5以下であり、且つその長軸平均粒径が1.5μm以下、特に1μm以下であり、ZrO粒子の平均粒径が0.7μm以下、特に0.5μm以下であることが好ましい。即ち、Al粒子の平均アスペクト比が2.5を越えるとき或いはその長軸平均粒径が1.5μmよりも大きいときには、形状異方性粒子による緻密化阻害を生じ、強度低下を生じてしまい。また、ZrO粒子の平均粒径が0.7μmよりも大きいと、正方晶の安定性が低下し、相変態によるミクロクラックが発生し、強度や靭性の低下を生じてしまう。
よって1500℃以下で焼成し、Al,ZrOの粒成長を抑制しつつ、熱間静水圧焼成によって緻密化させることが重要である。この熱間静水圧焼成条件としては、本焼成温度よりも30℃以上低い温度、特に50℃以上低い温度、更には100℃以上低い温度が好ましい。
純度が99.95質量%で平均粒径0.22μmのAl粉末に、純度が99.95質量%で平均粒径0.4μmのZrO粉末、平均粒径0.6μmのMg(OH)、平均粒径0.5μmのSiO粉末、及び平均粒径0.2μmのSrO粉末を表1に示すような組成になるように秤量混合して混合粉末を得た。そして、この混合粉末を1t/cmの圧力で金型成形し、さらに3t/cmの圧力で静水圧処理を加えて成形体を作製し、表2に示す温度にて本焼成及び熱間静水圧焼成(表中にHIPと表示)を行なった。
得られた各焼結体に対して、JIS−R1601による室温における抗折強度、及びJIS−R1607によるSEPB法により破壊靱性値、JIS−R1610によるビッカース硬度を測定した。シャルピー衝撃試験は、試験片を3mm×3mm×14mmに加工し中央部に0.5mmの切きを入れたものを使用し、JIS K 7111に規定されている衝撃試験に準拠して行った。また、結晶粒径の測定方法は、試験片を鏡面研磨後、焼成温度より50℃程度低い温度でサーマルエッチング処理し、SEMによる研磨面上の写真をAl粒子及びZrO粒子がそれぞれ100個以上写るように撮影し、その写真から完全な粒子の形状を有するAl 粒子結晶を抜き出し、形状の最も長い部分を長軸、それに直交している方向で最も長い部分を短軸として直接測定して、アスペクト比を算出した。さらに、121℃の飽和水蒸気中で152時間の条件で行う加速劣化試験
後に、ピンオンディスク試験法(JIS−T0303:但し、試験片の材料を複合セラミックスとした)を用いて耐摩耗性を評価した。得られた結果を表2に示す。また、X線回折(XRD)によってSrOによる正方晶ZrOが安定化されていることを確認し、電子線プローグマイクロアナライザー(EPMA)によりZrOへのSrの固溶を確認した。
表2より、SrOを含み、他の焼結助剤を含まない材料(試料No.8)ではSrOを添加していない材料(試料No.12)よりも強度と破壊靭性が高かった。しかし、SrOと焼結助剤SiO、TiO、MgOを含み、更に、より低温で焼結した材料(試料No.1,2,6,14)は強度1410〜1540MPa、破壊靭性5.1〜5.4MPa√m、硬度1740〜1790Hvの特性を示し、試料No.8の材料よりも特性が向上した。
試料No.4の材料では焼成温度が高く、僅かに形状異方性粒子が生成するため、強度と硬度が多少低下したが試料No.8の材料よりも破壊靭性は高かった。Y23の固溶したZrOを含む材料(試料No.12)では、立方晶ZrO含有量が増加し、SrOによる正方晶ZrO安定化の効果が小さくなるため、SrOとSiO、TiO、MgOを含有するにも関わらず強度と靭性が小さかった。
また、試料No.1と11の材料のX線回折(XRD)測定結果を比較することで、試料No.1の材料ではSrOの添加によって正方晶ZrOが安定化されていることを確認し、試料No.1の材料の組成分析を行うことでZrOにSrが固溶していることを確認した。
試料Noシャルピー衝撃試験が45kJ/m 以下であり、No15と比較し、破壊靭性が4.5MPa√mと低かった。
また、試料No.21〜23においては焼結助剤であるTiO、MgO、SiOのいずれかが少ないか多いものであるが、いずれかが少ないと焼結温度が高くなり、結晶粒径が大きくなるために曲げ強度が低い結果となり、いずれかが多いものは焼結温度が低いものの液相成分が多くなり、曲げ強度が低い結果となった。
Figure 0004761749
Figure 0004761749
人工股関節の模式図である。 人工膝関節の模式図である。
符号の説明
符号なし

Claims (9)

  1. Al を65質量%以上、ZrO を4〜34質量%、及びSrOを0.1〜4質量%含有し、SiO を0.20質量%以上、TiO を0.22質量%以上、MgOを0.12質量%以上含有し、かつSiO 、TiO 及びMgOを合計で0.6〜4.5質量%含有しており、前記Al の粒子が、SEM画像において細長形状であるとともに、前記Al の粒子の最長方向を長軸及びその長さを長軸径とし、該長軸に対して垂直な方向を短軸及びその長さを短軸径としたときに、前記長軸径の平均が1.5μm以下であり、前記短軸径に対する前記長軸径の比の平均が2.5以下であり、前記短軸径の平均と前記長軸径の平均との中間値が1μm以下であり、シャルピー衝撃試験におけるシャルピー衝撃値が45kJ/m以上であることを特徴とするセラミックスからなる生体部材。
  2. 前記セラミックスが、121℃の飽和水蒸気中で152時間の条件で行う加速劣化試験前後のシャルピー衝撃試験におけるシャルピー衝撃値の低下率が10%以下であることを特徴とする請求項1記載の生体部材。
  3. 記ZrOの粒子の一部にSrが固溶していることを特徴とする請求項1または2記載の生体部材。
  4. 前記セラミックスは、121℃の飽和水蒸気中で152時間の条件で行う加速劣化試験後のピンオンディスク試験法による比摩耗量が0.3×10−10mm/N以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の生体部材。
  5. 前記セラミックス人工関節の摺動部に用いられることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の生体部材。
  6. 前記人工関節が人工股関節であることを特徴とする請求項に記載の生体部材。
  7. 記摺動部が前記人工股関節の骨頭であることを特徴とする請求項に記載の生体部材。
  8. 記摺動部が前記人工股関節の臼蓋ソケット摺動部であることを特徴とする請求項に記載の生体部材。
  9. 前記摺動部を一対備え、前記一対の摺動部が相互に摺動することを特徴とする請求項5乃至8のいずれかに記載の人工関節。
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