JP2931906B2 - 生体補綴用セラミックス - Google Patents

生体補綴用セラミックス

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は生体の組織の一部を置換したり補綴する為に
用いる生体補綴用セラミックスに関するものである。
〔従来の技術及びその問題点〕
従来から、Al2O3多結晶体、Al2O3単結晶体が人工骨、
人工関節、人工歯根などに応用されてきた。又、最近
は、ZrO2多結晶体も同様の目的で開発されている。
そして、このようなセラミックスの人工歯根、人工
骨、人工関節はステンレス鋼、Co−Cr合金などにより作
られた以前のものに比べて、生体親和性、摺動特性(人
工関節に応用された場合)、審美性(人工歯根などに応
用された場合)の面ですぐれたものであることが、実験
室的にも、臨床的にも示されてきた。
しかしながら、これらの生体補綴用セラミックスとい
えども以下に詳述する様な、多くの改善されるべき問題
点がある。即ち、Al2O3多結晶体、単結晶は、化学的に
極めて安定でしかも、生体親和性にすぐれているが、靱
性に乏しく、応用部位によっては、強度的信頼性が十分
ではなかった。又、生体に比し、ヤング率が高すぎる事
も、生体補綴部材としては好ましくなかった。
一方、ZrO2多結晶体は、こういった問題点を克服する
ものとして、期待されている。事実このセラミックスは
Al2O3多結晶体、単結晶体に比し、靱性にすぐれ、強度
的信頼性は大幅に改善されている。又、ヤング率もAl2O
3多結晶体、単結晶体の約半分である。
半面、化学的安定性、生体親和性の点ではAl2O3多結
晶体、単結晶体に劣る。又、人工関節などの摺動面に応
用された場合、硬度が低すぎて、傷が付きやすいという
問題点がある。
〔問題点を解決するための手段〕
上記に鑑みて、Al2O3多結晶体、単結晶体、ZrO2多結
晶体の各々の長所を活用し、短所を改善すべく、Al
2O3,ZrO2,Y2O3などを混合した生体補綴用セラミック
スを開発した。
〔実施例〕
(実施例1) モル%でAl2O320%、ZrO277%、Y2O32%の化学組成
のセラミックスとなる様に配合された原料粉末を、CIP
成形した後、1400〜1450℃で常圧焼成し、1425℃、2000
kgf/cm2の条件でHIP処理をほどこした。これから、3mm
×2.5mm×15mmの試験片をダイヤモンド砥石により切り
出し、アルキメデス法による密度、3点曲げ試験法によ
る抗折強度、ビッカース硬度、超音波パルス法によるヤ
ング率を評価した。結果は第1表に示した。
(実施例2) モル%で、Al2O382%、ZrO218%の化学組成となる様
に配合された原料粉末を金型成形した後、1400〜1450℃
で常圧焼成し、1425℃、2000kgf/cm2の条件でHIP処理を
ほどこした。
得られた焼結体より3mm×2.5mm×15mmの試験片を切り
出し、実施例1と全く同様な方法で密度、抗折強度、ビ
ッカース硬度、ヤング率を評価した。結果は第1表に示
した。
又、比較の為、従来のAl2O3多結晶体、Al2O3単結晶
体、ZrO2多結晶体についても、実施例1と同一形状の試
験片を作り、特性を評価した。これを各々、比較例1,2,
3として第1表に示した。
(実施例3) 第1表の結果から明らかなごとく、Al2O3,ZrO2,Y2O
3を混合したセラミックス(実施例1,2)においては、従
来のAl2O3多結晶体、Al2O3単結晶体、ZrO2多結晶体(各
々、比較例1,2,3)のもつ、生体補綴部材用セラミック
スとしての問題点の解決が期待される。
そこで、Al2O3,ZrO2,Y2O3の組成を変えたセラミッ
クスを試作し、密度、抗折強度、ヤング率、ビッカーズ
硬度、破壊靱性値を調べた。又、同時に生体親和性の評
価の為、3mmφ×6mmの円柱上の試験片を作り、家兎の大
腿骨に埋入し、4週間後に屠殺し、硬組織標本を作製
し、トルイジンブルー染色標本を光顕的に観察し、セラ
ミックの周囲に形成される結合組織膜の厚さと量で、生
体親和性を評価した。
又、セラミックとUHMWPE(超高分子量ポリエチレン)
との摩擦摩耗特性を調べるべく、40mmφ×6mmのセラミ
ック円板の片面を鏡面研磨した試験片と、9mmφ×13mm
のUHMWPEの試験片を作り、37℃疑似人体液中で荷重20kg
f、速度1Hzの条件で往復動によるピン オン フラット
摩擦摩耗試験を行った。そして、20万回終了時の摩擦計
数と摩耗量を評価した。尚、摩耗量はUHMWPEの重量変化
率でもって示した。試験片は第2表に示す10種(比較例
4,5,6,7と実施例3−1〜3−6)の化学組成となる様
な原料粉末をCIP成形し、1300℃〜1450℃で常圧焼成し
た後、1300〜1450℃、2000kgf/mm2の条件でHIP処理した
材料から、ダイヤモンド砥石により研削加工にして製作
された。
結果は全て第2表に示されている。
先ず、Al2O3,ZrO2の組織からなる実施例3−1,3−2,
3−3,と比較例4,5について、諸特性とAl2O3/ZrO2のモ
ル比の関係を検討すると、Al2O3/ZrO2のモル比が2.33
〜9.00の範囲ならば、総合的に見て比較例1〜3の従来
品に比べて、顕著な改善が認められる。即ち、この範囲
において従来のZrO2多結晶体と同等レベルの抗折強度、
破壊靱性値が維持されながら、ビッカース硬度が上が
り、鏡面部が傷つきがたくなっている。又、生体親和性
は、従来のZrO2多結晶体に比べ大幅に改善されている。
これはAl2O3の存在及び、Y2O3の除去の効果と考えられ
る。しかも、摩擦摩耗特性も、Al2O3多結晶体より改善
されている。
次に、Al2O3,ZrO2,Y2O3の組成からなり、Y2O3/ZrO
2のモル比が約0.031の実施例3−4,3−5,3−6と比較例
6,7について、諸特性とAl2O3/ZrO2のモル比の関係に注
目して検討したところ、Al2O3/ZrO2のモル比が0.115〜
0.442の範囲で、比較例1〜3で示される従来の生体補
綴用セラミックスに比べ、諸特性の大幅な向上が認めら
れた。
とりわけ、抗折強度、破壊靱性値の向上は顕著であ
る。この範囲では、生体親和性がAl2O3多結晶体より、
若干見劣りするが、それを補って余りある改善である。
又、摩擦摩耗特性も従来品と同等以上である。
〔発明の効果〕 途上の様に、Al2O3−ZrO2系生体補綴用セラミックス
において、Al2O3/ZrO2のモル比を2.33〜9.00に保った
場合に生体補正用セラミックスとしての諸特性の改善が
確認された。又、Al2O3−ZrO2−Y2O3系生体補綴用セラ
ミックスにおいてAl2O3/ZrO2のモル比を0.115〜0.442
に保った場合にも生体補綴用セラミックスとしての諸特
性の改善が確認された。
したがって、この範囲の化学組成の生体補綴用セラミ
ックスを、人工骨、人工関節、人工歯根などに応用する
ならば、旧来のステンレス鋼、Co−Cr合金のそれと比較
すれば、もちろん現行のAl2O3多結晶体Al2O3単結晶体、
ZrO2多結晶体に比べても、大幅な治療成績の向上が望め
る。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Al2O3およびZrO2の組成から成り、Al2O3
    ZrO2のモル比が2.33〜9.00の範囲にある生体補綴用セラ
    ミックス。
  2. 【請求項2】Al2O3,ZrO2及びY2O3の組成から成り、Al2
    O3/ZrO2のモル比が0.115〜0.442の範囲にある生体補綴
    用セラミックス。
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