JP4398840B2 - ジルコニア複合焼結体およびそれを用いた生体材料 - Google Patents

ジルコニア複合焼結体およびそれを用いた生体材料 Download PDF

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本発明は、摺動部材や刃物、医療器材、食器、機械部品などの構造用材料、或いは特に人工骨や人工関節、人工歯根などの生体材料として好適に用いることのできるジルコニア複合焼結体に関するものである。
純粋なジルコニア(ZrO2)は、高温側から順に、立方晶(cubic)、正方晶(tetragonal)、単斜晶(monoclinic)の三つの結晶相を示す。平衡論上は、1170℃以下の低温では単斜晶、1170〜2370℃の間では正方晶、2370℃から融点(2715℃)までは立方晶になるとされている。単斜晶と正方晶との間の相転位はマルテンサイト変態であり、約4.6%の体積変化を伴う。純粋なジルコニアは転移温度を通過する際の上記体積変化によって破壊するため安定性を欠く。そこで一般的には、安定化剤としてY23やCaO、MgOなどの酸化物をZrO2に対して1.5〜15mol%程度添加することで立方晶として加熱によっても転移を生じ難い安定化ZrO2として広く使用されてきた。
中でも準安定な正方晶を一部残した部分安定化ジルコニアは、高強度・高靱性を持つことが明らかとなり、注目されている。例えば、正方晶ジルコニア多結晶体(Tetragonal Zirconia Polycrystal:TZP)、特にY23を固溶し、正方晶ジルコニア(t−ZrO2)の安定領域の温度(1300〜1550℃)で焼結した正方晶(または正方晶と立方晶)からなるY−TZPは、高強度・高靱性であるため、構造用部材として用いられている。この高強度・高靱性の発現は応力誘起相変態によってもたらされる。つまり、構造用部材の使用中に生じる応力場における亀裂先端で、準安定相である正方晶から単斜晶へ相変態することで破壊エネルギーを緩和するため、高強度・高靭性が発現するのである。しかしこのようなTZPは、t−ZrO2が単斜晶ジルコニアに変化すると同時に体積膨張を生じるため、変態しすぎると表面性状の荒れを引き起こしたり、かえって強度が低下するなどの問題があった。特に水分存在下の100〜300℃付近の温度域(以下、「水熱環境下」と称することがある)では相変態を起こしやすい。
また、CeO2を固溶した正方晶(または正方晶と立方晶)のCe−TZPは、応力が負荷される状況下で相変態を起こすしきい値が低いため、比較的低応力で相変態が誘起され、Y23で安定化する場合よりも広い相変態ゾーンがクラック先端で得られる。そのためY23で安定化したZrO2(即ち、Y−TZP)に比べて、CeO2で安定化したZrO2(即ち、Ce−TZP)は、10MPa・m1/2以上の高い破壊靱性を示す。また、Ce−TZPは水分存在下の100〜300℃付近の温度域でもほとんど相変態せず、さらに広い固溶範囲を持つなど優れた特性を有する材料としても知られている。しかし応力誘起相変態を起こすしきい値が低いため、逆に強度低下を起こしやすく、Y−TZPと比べて強度不足になることがある。
そこで本発明者らは、上記Y−TZPおよびCe−TZPの夫々の欠点を改善し、水熱環境下でも特性劣化せず、高強度で高靭性を有するジルコニア焼結体の提供を目指して先に特許文献1の技術を提案した。この技術では、上記Y−TZPとCe−TZPを特定の割合で含有させることによって、水熱環境下で相変態を起こしにくく、しかも高強度と高靭性を両立できた。しかしこの技術では、上記ジルコニア焼結体の耐摩耗性について考慮されておらず、本発明者らが更に検討を重ねたところ、上記ジルコニア焼結体を摺動部に使用すると摩耗することがあった。
また特許文献2には、耐摩耗性を有するジルコニア−アルミナ複合セラミックス材料が提案されている。この複合セラミックス材料は、セリアを含むジルコニア粒子からなる第1相と、アルミナ粒子からなる第2相を含むものである。この文献によると、アルミナの含有量を増やせば、複合セラミックス材料の耐摩耗性が改善されると記載されている。しかし本発明者らが検討したところ、アルミナの含有量を増加させても耐摩耗性が改善されない場合があった。
特開2004−75532号公報([特許請求の範囲]、[0007]参照) 特開2004−51481号公報([特許請求の範囲]、[0006]参照)
本発明は、この様な状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、上記Y−TZPとCe−TZP夫々の欠点を改善し、更には耐摩耗性にも優れたジルコニア複合焼結体、並びに該ジルコニア複合焼結体によって形成された構造部材、摺動部材、特には生体材料を提供することにある。
本発明者らは、Y−TZPの強度レベルとCe−TZPの靭性レベルを兼ね備えており、更には耐摩耗性にも優れたジルコニア複合焼結体を実現すべく鋭意検討を重ねた。その結果、安定化剤としてY23とCeO2を併用すると共に、強度を一層高めるために所定量のAl23を配合し、且つ、ジルコニア複合焼結体に含まれるAl23系析出物の形態を適切に制御してやれば、こうした課題が見事に解決されたジルコニア複合焼結体、並びにそれを用いた構造部材、摺動部材、特には生体材料を提供できることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明に係るジルコニア複合焼結体とは、Al23を含むジルコニア複合焼結体であって、全ZrO2に対し、Y23:0.2〜1.5mol%と、CeO2:4.7〜12mol%を含むほか、全量中に占める比率で、Al23:1〜30質量%と、MgOおよび/またはCaO:合計で0.15〜7.5質量%を含み、且つ、Al23系析出物が分散していると共に、全Al23系析出物の個数の3%以上が、長軸が1〜10μmで短軸/長軸比が0.5以下である点に要旨を有する。
上記範囲を満足するAl23系析出物の析出を促進させる観点から、更に、全量中に占める比率で、La23:2質量%以下(0質量%を含まない)を含有させることが好ましい。応力負荷状況下における相変態を低減する観点から、更に、全ZrO2に対し、TiO2:1mol%以下(0mol%を含まない)を含有させることが好ましい。なお、本発明の範囲には、上記ジルコニア複合焼結体によって形成された生体材料も包含される。
本発明によれば、ジルコニアの安定化剤としてY23とCeO2を併用することによって、高強度と高靭性を両立でき、更にAl23を含有させることによって強度を一層高めたジルコニア複合焼結体を提供できる。しかも本発明によれば、ジルコニア複合焼結体に含まれるAl23系析出物の形態を適切に制御することによって、耐摩耗性も改善されたジルコニア複合焼結体、およびそれを用いた生体材料を提供できる。
本発明者らが種々検討を重ねたところ、ジルコニア焼結体の強度と靭性の両方を高めるには、ジルコニア焼結体の結晶相が重要であることが分かった。そして強度を一層高めるにはジルコニア焼結体に所定量のAl23を複合化させるのが有効であるが、Al23を複合化させると耐摩耗性が劣化することがあった。そこでジルコニア複合焼結体の耐摩耗性を向上させるべく更に検討したところ、ジルコニア複合焼結体に含まれるAl23系析出物の形態制御が重要となることを知った。以下、本発明の作用効果について説明する。
まず、ジルコニア複合焼結体の強度と靭性を高める手段について説明する。ジルコニア複合焼結体の強度と靭性を高めるには、ジルコニアの正方晶をどのように存在させるかがポイントとなる。安定化剤を多く含有させると、立方晶が多くなるため強度と靭性共に低下する。一方、安定化剤が不足すると水熱環境下や応力負荷状況下で正方晶から単斜晶に相変態が生じやすくなり、ジルコニア複合焼結体の強度を劣化させる。
そこで本発明者らは、ジルコニア複合焼結体中にジルコニアの正方晶をどのように存在させればよいかについて検討した。その結果、ジルコニアの安定化剤としてY23とCeO2を併用してやれば高強度と高靭性を両立できることを見出した。
酸化物系のセラミックスはイオン結合性が強いため、結晶構造の安定化度合いは、陽イオンと陰イオンの半径比と、イオンの価数によってある程度近似的に定まる。Shannonによれば、主な元素のイオン半径は次の通りである。O2-:140pm、Zr4+:84pm、Y3+:101.5pm、Ce4+:114.3pm、Ti4+:60.5pm。従って、O2-に対するZr4+のイオン半径比は0.6となる。これに対し、ジルコニアの立方晶の理想イオン半径比は0.732であるため、O2-に対するZr4+のイオン半径比は、立方晶の理想イオン半径比と比べるとかなり小さくなり、結晶相は不安定になる。そこで結晶相を安定化させるために、安定化剤としてY23やCeO3などを添加する。
23については、O2-に対するY3+のイオン半径比は0.725であり、この値はジルコニアの立方晶の理想イオン半径比(0.732)とほぼ等しいため、結晶構造の歪みは殆ど生じず、応力誘起相変態を起こすしきい応力が高くなるため、高強度化する。しかしその反面、靭性は低下する。
これに対しCeO2については、O2-に対するCe4+のイオン半径比が0.816であり、この値はジルコニアの立方晶の理想イオン半径比(0.732)よりもやや大きいため、結晶構造に歪みを生じる。そのため応力誘起相変態を起こすしきい応力が低くなって靭性が向上する。しかしその反面、強度は低下する。
そこで本発明者らは、安定化剤としてY23とCeO2を併用すれば、夫々の安定化剤を単独で添加することによる欠点を互いに補うことができるのではないかと考えた。即ち、Y23を添加することにより強度を高め、CeO2を添加することにより靭性を高めるのである。
こうした知見を基に、安定化剤の好適配合量を明確にすべく更に研究を進めた結果、全ZrO2に対し、Y23:0.2〜1.5mol%とCeO2:4.7〜12mol%を含有させることが好ましいことをつきとめた。以下、このような範囲を定めた理由について説明する。
23:0.2〜1.5mol%
23は、ジルコニア焼結体の強度を確保するために含有させる安定化剤であり、0.2mol%以上とする。好ましくは0.5mol%以上である。しかし多すぎるとジルコニア焼結体の靭性が低下し、さらに水熱環境下における相変態を誘起するため1.5mol%以下とする。好ましくは1.0mol%以下である。
CeO2:4.7〜12mol%
CeO2は、ジルコニア焼結体の靭性を確保すると共に、水熱環境下における相変態を防止するために含有させる安定化剤であり、4.7mol%以上とする。好ましくは5mol%以上、更に好ましくは7mol%以上である。しかし多すぎると立方晶を形成してジルコニア焼結体の強度や靭性を低下させるため、12mol%以下とする。好ましくは11mol%以下である。
次に、本発明者らはジルコニア複合焼結体の強度を一層高めるべく検討した。その結果、ジルコニア複合焼結体の全量中に占める比率で、Al23を1〜30質量%を含有させることが有効であることをつきとめた。このような範囲を定めた理由は次の通りである。
Al23:1〜30質量%
Al23を混合、分散させると、ジルコニア粒子とAl23粒子とが複合化してジルコニア複合焼結体が高強度化する。こうした効果を発揮させるには1質量%以上含有させる必要がある。好ましくは3質量%以上である。しかしAl23が30質量%を超えるとAl23自体が凝集しやすくなり、却って強度や靭性の低下を招くので、30質量%以下に抑えるのがよい。好ましくは20質量%以下である。
なお、本発明のジルコニア焼結体には、Al23粒子がZrO2粒子内に分散しているか、あるいはZrO2粒子がAl23粒子内に分散しているナノコンポジット、または、それらが複合した相互ナノコンポジット組織が見られることもあるが、これらの組織が存在しても本発明の特性に悪影響を与えるものではない。
ところで、Al23を含有させるとジルコニア複合焼結体の耐摩耗性が劣化する場合があった。そこで本発明者らはジルコニア複合焼結体の耐摩耗性が劣化する現象について検討した。その結果、ジルコニア複合焼結体を構成する成分としてAl23を含有させると、該ジルコニア複合焼結体中にAl23系析出物が生成するが、この析出物が使用時にマトリックス(ZrO2)から脱落するために耐摩耗性が劣化することが判明した。即ち、マトリックスから脱落したAl23系析出物が研磨剤として作用し、ジルコニア複合焼結体表面の摩耗が促進されるのである。マトリックスからAl23系析出物が脱落する原因はAl23系析出物とZrO2は互いに結晶構造が異なるため結晶粒界に整合性が無いところにある。例えばジルコニアが相変態するとAl23系析出物とZrO2の結晶粒界に剪断応力が作用し、このときAl23系析出物とZrO2の結晶粒界には整合性がないため拘束力が弱くなり、容易にAl23系析出物がマトリックスから剥がれてしまい脱落するのである。
そこで本発明者らはAl23系析出物がマトリックスから脱落するのを防止し、ジルコニア複合焼結体の耐摩耗性を向上させる手段について検討した。その結果、ジルコニア複合焼結体の耐摩耗性を向上させるには、ジルコニア複合焼結体中に分散しているAl23系析出物の形態を制御することが重要であることを見出した。
即ち、本発明のジルコニア複合焼結体には、Al23系析出物が分散しており、且つ全Al23系析出物の個数の3%以上を、長軸が1〜10μmで長軸と短軸の比(短軸/長軸比)が0.5以下のものとすることが重要である。
本件でいうAl23系析出物とは、ジルコニア複合焼結体内に分散している析出物のうちAlが含まれている酸化物を指す。Al23系としたのは、後述するように、MgOやCaOなどがAl23析出物中に固溶することがあるため、Al23からなる(即ち、Al23が100質量%の)析出物ではないことと、析出物中に占めるAl23の割合は後述するように走査型電子顕微鏡(SEM)で確認するが、その分析の際にマトリックスであるZrO2の影響を受けるため、析出物中に占めるAl23の割合を厳密に確認することは困難なためである。
そして本発明のジルコニア複合焼結体は、こうしたAl23系析出物のうち、長軸が1〜10μmで長軸と短軸の比(短軸/長軸比)が0.5以下であるものの個数が、全Al23系析出物の個数の3%以上であることが重要である。Al23系析出物の形態を細長い棒状とすることで、該析出物とZrO2との接触面積が大きくなり、アンカー効果も相まって析出物はマトリックス中に強固に固定される。そのため摩擦を生じたり、相変態を起こしても析出物がマトリックスから脱落し難くなる。
但し、長軸の長さが1μm未満ではAl23系析出物のサイズが小さすぎるため、こうした効果を得ることができず、耐摩耗性向上に寄与しない。一方、長さが10μmを超えるとAl23系析出物のサイズが大きすぎるため、却って靭性が損なわれることがある。本発明のジルコニア複合焼結体中には、長さが10μmを超えるAl23系析出物はできるだけ分散していないことが好ましいが、こうしたAl23系析出物の個数は、全Al23系析出物の個数に対して1%以下であれば許容できる。
Al23系析出物の短軸/長軸比が0.5を超えると、析出物は球状に近くなるためこうした効果を有効に発揮し得ない。
本発明のジルコニア複合焼結体では、こうした細長いAl23系析出物の個数が、全Al23系析出物の個数の3%以上存在している。上述した細長いAl23系析出物が少な過ぎると、耐摩耗性向上効果を発揮しないからである。好ましくは5%以上である。
Al23系析出物の総体積は、Al23の添加量を調整することによって制御できる。このとき長軸の長さが1μm未満のAl23系析出物が多数析出することがある。しかし本発明で制御対象とするAl23系析出物の形態は大きく、粗大であるため、例えば、長軸が1〜10μmで長軸と短軸の比(短軸/長軸比)が0.5以下であるものの個数が、全Al23系析出物の個数の3%であっても、制御対象とするAl23系析出物の総体積は、ジルコニア複合焼結体中に存在している全Al23系析出物の総体積の大部分を占めることになる。そのため長軸の長さが1μm未満のAl23系析出物が多数存在していても本発明の効果を阻害することはない。
こうしたAl23系析出物の形状や個数は、ジルコニア複合焼結体の切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した写真し、画像解析することにより観察できる。詳細は後記する実施例で述べる。
以上説明した通り、本発明のジルコニア複合焼結体は、該焼結体に含まれるAl23系析出物の形態を適切に制御することが重要となるが、形態を適切に制御するには、ジルコニア複合焼結体の全量中に占める比率で、MgOおよび/またはCaO:合計で0.15〜7.5質量%を含有させる必要がある。こうした範囲を定めた理由は次の通りである。
MgOおよび/またはCaO:合計で0.15〜7.5質量%
MgOとCaOは、Al23系析出物に固溶して該析出物の形態を制御する作用を有している。その理由は明らかではないが、MgOやCaOがAl23系析出物に固溶すると、析出物の形態が変化するのである。またMgOやCaOは焼結助剤としても作用し、ジルコニア複合焼結体の密度を高め、強度・靱性共に向上させる。こうした作用を有効に発揮させるには合計で0.15質量%以上含有させる必要がある。好ましくは0.5質量%以上である。しかし過剰に含有させると凝集するため、却って強度や靭性の低下を招くため、上限は合計で7.5質量%とする。好ましくは5質量%以下である。MgOまたはCaOは夫々単独で添加してもその効果を充分に発揮するが、もちろん併用しても構わない。
Al23系析出物の形態を適切に制御するには、前記Al23と、前記MgOおよび/またはCaOの配合比[Al23/(MgO+CaO)]を、質量基準で、4〜6とすることが好ましい。その理由は明らかではないが、配合比が4未満では、MgOやCaOの配合量が過剰となり、一方、配合比が6を超えると、Al23の配合量が過剰となり、いずれにしてもAl23系析出物の形態を充分に制御できないのである。
なお、上述したように、MgOとCaOは夫々単独で用いても充分その効果を発揮するため、MgO単独使用の場合は、前記Al23と前記MgOの配合比を、下記(1)式で算出し、CaO単独使用の場合は、前記Al23と前記CaOの配合比を、下記(2)式で算出する。
配合比=[Al23/MgO] …(1)
配合比=[Al23/CaO] …(2)
上記範囲を満足するAl23系析出物の析出を促進させるには、更に、全量中に占める比率で、La23:2質量%以下(0質量%を含まない)を含有させることが好ましい。
La23:2質量%以下(0質量%を含まない)
La23は、Al23系析出物の形態を細長い棒状として析出させるのを促進するのに有効に作用する酸化物である。しかし添加量が多すぎると凝集し、ジルコニア複合焼結体の強度や靭性を低下させるため上限は2質量%とする。なお、こうした効果を有効に発揮させるには、0.005質量%以上含有させるとよい。
ところで、本発明のジルコニア複合焼結体は、ジルコニアの安定化剤としてY23とCeO2を含むものである。ところが、Y23を使用すると、Y3+はZr4+よりも低原子価の元素であるため、電気的に中性を保つために、Y23の添加量に応じて酸素イオンに基づく空孔を形成しようとする。そのため水熱環境下ではこの酸素イオンに基づく空孔が水分と反応し、H+を生成するためZr−Oの結合が切断されて格子歪みが生じ、この歪みが変態の核生成を容易にして相変態を起こしやすくなる。
これに対しCeO2を使用すると、Ce4+はZr4+と等価元素のため、電気的に中性を保つことができる。そのため酸素イオンに基づく空孔を形成して電気的な釣り合いを保とうとはせず、結果的には、Zr−Oの結合は切断されず、水熱環境下においても相変態を起こし難い。
以上の通り、安定化剤としてY23とCeO2を併用すれば、夫々の安定化剤を単独で添加することによる欠点を互いに補うことができる。即ち、安定化剤としてY23のみを使用した場合は、水熱環境下で相変態を起こしやすくなるが、水熱環境下で相変態を起こしにくいCeO2を併用すれば、その添加分だけY23の使用量を低減できる。そのためジルコニア複合焼結体全体として見た場合、安定化剤としてY23を単独で使用するのと比べて水熱環境下における相変態を起こす程度を低減できる。
また応力負荷状況下で生じる相変態についても、同様に結晶構造に歪みを殆ど生じさせないY23と歪みを生じさせるCeO2を併用すれば、ジルコニア複合焼結体全体として見た場合、安定化剤としてCeO2を単独で使用するのと比べて応力負荷環境下で生じる相変態を抑制できる。しかし仮にY23とCeO2を併用したとしても、応力負荷環境下における相変態を防止する根本的な解決にはならない。つまり、CeO2は、O2-に対するCe4+のイオン半径比が、ジルコニアの立方晶の理想イオン半径比よりもやや大きいため、結晶構造に歪みを生じるが、Y23は、O2-に対するY3+のイオン半径比と、ジルコニアの立方晶の理想イオン半径比がほぼ等しいため、結晶構造に歪みを生じさせない。従ってCeO2とY23を併用したとしても、CeO2を添加することによって生じる結晶構造の歪み量は低減できない。
そこで本発明者らは、CeO2を添加することによって生じるイオン半径比の違いによる結晶構造の歪みを緩和する方策について検討した。その検討過程で、イオン半径比がジルコニアの立方晶の理想イオン半径比よりもやや小さい安定化剤を併用すれば、CeO2を添加することによる結晶構造の歪みを緩和できるのではないかと考え、安定化剤のイオン半径比に注目して検討を重ねた。その結果、TiO2はこうした目的に合致する優れた安定剤になり得ることが判明した。
TiO2は、O2-に対するTi4+のイオン半径比が0.432であり、この値はジルコニアの立方晶の理想イオン半径比(0.732)よりも小さい。そのため、上述したように、CeO2を添加することによる結晶格子の歪みを緩和でき、結晶相が安定化する。
しかもTi4+はZr4+と等価元素であるため、電気的に中性を保つことができる。そのため酸素イオンに基づく空孔を形成して電気的な釣り合いを保とうとはしないので、結果的にZr−O結合の切断も起こらず、水熱環境下において相変態を起こすこともなくなる。よってTiO2を併用したとしても、水熱環境下での相変態は誘起されないため、応力誘起相変態に対する耐性のみが適度に発揮される。
こうした知見を基に、安定化剤の好適配合量を明確にすべく更に研究を進めた結果、全ZrO2に対し、TiO2:1mol%以下(0mol%を含まない)を含有させることが好ましいことをつきとめた。
TiO2:1mol%以下(0mol%を含まない)
TiO2は、上記CeO2を添加することによる結晶構造の歪みを低減し、応力誘起相変態を抑制する安定化剤である。こうした効果を有効に発揮させるには、少なくとも0.01mol%含有させる。好ましくは0.03mol%以上である。しかしTiO2のO2-に対するTi4+のイオン半径比は、ジルコニアの立方晶の理想イオン半径比よりも小さいため、TiO2を過剰に添加すると、却って結晶構造に歪みを生じ、応力負荷状況下で相変態を起こし易くなる。そこでTiO2の上限は1mol%とした。好ましい上限は0.5mol%である。
なお、本発明のジルコニア複合焼結体は、上述した成分のみから形成されることが好ましく、不可避的不純物はできるだけ少ない方がよいが、特性に影響を及ぼさない範囲として3質量%程度以下であれば、不可避的不純物の含有を許容できる。特に、ZrO2原料中に存在し、分離することの難しい例えばHfO2の混入は特性に全く影響を及ぼさない。
本発明に係るジルコニア複合焼結体の製法は特に限定されないが、例えば以下のように、(1)原料粉末の混合、(2)混合粉末の圧粉成形、(3)成形体の焼結、の各工程を通して製造される。これらの各工程について順に説明する。
(1)原料粉末の混合方法は常法に従えばよい。湿式混合した後、乾燥および造粒して二次粒子としておけば作業上の取り扱い性や成分偏析防止上好ましい。即ち、(a)湿式法で、Y23粉末、CeO2粉末、Al23粉末、並びにMgO粉末および/またはCaO粉末を含む混合ジルコニア粉末を予め調製しておき、この粉末を(必要に応じて、La23粉末やTiO2粉末を混合した粉末を)原料粉末として用いればよい。また、(b)湿式法でY23を含有するYジルコニア粉末、CeO2を含有するCeジルコニア粉末、Al23粉末、並びにMgO粉末および/またはCaO粉末を(必要に応じて、La23粉末やTiO2粉末を配合した粉末を)予め混合しておき、これを乾燥させたものを原料粉末として用いてもよい。なお、上記Yジルコニア粉末やCeジルコニア粉末としてTiO2を含有する粉末を使用してもよい。このときYジルコニア粉末やCeジルコニア粉末に含まれるTiO2量に応じて上記TiO2粉末を混合すればよい。更に、(c)湿式法でY23およびCeO2(必要に応じてTiO2)を含有するジルコニア粉末を予め調整しておき、このジルコニア粉末にAl23粉末、並びにMgO粉末および/またはCaO粉末を(必要に応じて、La23粉末を配合した粉末を)湿式法で混合した後、乾燥し、これを原料粉末として用いてもよい。なお、La23についても上記ジルコニア粉末に予め含有させてもよい。
なお、上記(a)〜(c)の方法を比べると、本発明では上記(b)の方法を採用して原料粉末を調整することが推奨される。上記(b)の方法によって得られる原料粉末を用いて得られるジルコニア焼結体は、高強度で高靭性のものとなり、しかも水熱変態も起こし難くなる。
(b)の方法で原料粉末を調製する際には、Yジルコニア粉末とCeジルコニア粉末を、体積比で、1:9〜4:6の範囲で混合することが好ましい。より好ましくは2:8〜3:7の範囲である。
Yジルコニア粉末を用いる場合は、Y23を2〜5mol%含有していることが好ましい。このYジルコニア粉末の比表面積(B.E.T.値)は10〜20m2/g程度であることが推奨される。Ceジルコニア粉末を用いる場合は、CeO2を8〜15mol%含有していることが好ましい。このCeジルコニア粉末の比表面積(B.E.T.値)は10〜20m2/g程度であることが推奨される。Al23粉末は、純度が2N(nine)以上であれば限定されないが、比表面積(B.E.T.値)は10〜20m2/g程度であることが推奨される。
MgOやCaOを添加する形態は特に限定されず、例えば、MgCO3、Mg(OH)2、CaCO3、Ca(OH)2などの化合物の形態で添加してもよい。これらの化合物として添加する場合は、その添加量がMgOまたはCaOに換算した量で8質量%以下であればよい。
La23粉末は、純度が2N(nine)以上であれば限定されない。TiO2粉末は、純度が2N(nine)以上であれば限定されないが、比表面積(B.E.T.値)は25〜100m2/g程度の粉末が推奨される。
上記湿式法では、φ10mm程度以下の混合ボールを用いて混合することが好ましい。大きすぎると均一に混合し難いからである。混合ボールとしてはジルコニア製のものを用いることが好ましい。混合時間については特に限定されないが、均一に混合するには10時間以上が好ましい。
(2)所望組成となるように配合され、混合された原料粉末は、成形圧98〜196MPa(1〜2ton/cm2)で静水圧プレス法により圧粉成形される。成形圧が低すぎると成形体の密度が高くならない。一方、成形圧が高すぎると脱脂時にバインダー成分が成形体から抜けにくくなる。
(3)このジルコニア成形体は、1350〜1550℃程度(好ましくは1450〜1550℃程度)の正方晶安定域で1〜4時間程度(例えば、2時間程度)焼結して焼結体とし、次いで熱間静水圧加圧焼結(HIP)する。但し、Arのみの雰囲気下でHIPするとCeO2が還元されて表面にクラックを生じるため、酸素含有雰囲気下でHIPすることが好ましい。具体的には、前記焼結体を1400℃、1500気圧、80%Ar−20%O2雰囲気中で2時間HIP焼結すればよい。
本発明のジルコニア複合焼結体は、摺動部材や刃物、医療器材、食器、機械部品などの構造用材料として用いることができるが、人工骨や人工関節、人工歯根などの生体材料としても好適に用いることができる。本発明のジルコニア複合焼結体は、特に、人工関節のような摺動部を有する部位の材料として好適に使用できる。
本発明のジルコニア複合焼結体を生体材料として用いる場合は、例えばインプラントと骨との接合性を強固にするために、材料の表面部に多孔質層が形成されていることが好ましい。上記ジルコニア複合焼結体の表面部に形成される多孔質層は、厚み:0.1〜3mm、気孔率:25〜75%程度とすることが好ましい。
多孔質層(多孔質構造)の製法は特に限定されないが、次のような方法を採用できる。例えば、原料粉末と、アクリル樹脂やポリエチレンなどの有機物(気孔形成剤)などと共に成形し、その後、焼結時の加熱により前記気孔形成剤を除去すればよい。気孔形成剤のサイズ(粒子径)や添加量等により気孔率や気孔径を制御できる。
また、ラウリルベタインやノニルフェノール系界面活性剤などの起泡剤を原料粉末の混合時に添加しておき、この起泡剤を焼結時に加熱発砲させて気孔を形成させてもよい。この場合も起泡剤の添加量等により気孔率や気孔径を制御できる。
本発明のジルコニア複合焼結体を生体材料として用いる場合は、前記多孔質層の表面に、生体親和性材料によって形成されたコーティング層を有することが推奨される。前記多孔質層の表面に、ハイドロキシアパタイトなどのリン酸カルシウム系材料によってコーティング層を形成すれば生体親和性を向上させることができる。
多孔質層の表面にコーティングする方法は特に制限されないが、次のような方法が挙げられる。上記多孔質層の表層部のうち、表面のみをコーティングするにはプラズマスプレー法やプラズマ溶射法などを適用できる。また、多孔質層の表層部のうち、内部の表面までコーティングするには、コーティング剤をスラリー塗布法やゾルゲル法などにより塗布した後、焼結する方法が好ましく、この方法であれば強固な薄膜を形成できる。なお、被覆強度を確保するために、被覆前処理として、サンドブラストや化学エッチングなどにより、焼結体表面を粗面化しておくことが望ましい。
以下、本発明を実験例によって更に詳細に説明するが、下記実験例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
実験例1
23を3mol%含有するYジルコニア粉末、CeO2を12mol%含有するCeジルコニア粉末、Y23粉末、CeO2粉末、ZrO2粉末、Al23粉末、MgO粉末およびCaCO3粉末、La23粉末、TiO2粉末を準備した。
上記Yジルコニア粉末の比表面積(比表面積については、B.E.T.値。以下同じ)は16m2/gである。上記Ceジルコニア粉末の比表面積は11m2/gである。上記Y23粉末の比表面積は4m2/g、純度は2N(nine)である。上記CeO2粉末の比表面積は4m2/g、純度は2N(nine)である。上記ZrO2粉末の比表面積は15.6m2/g、純度は98%以上である。上記Al23粉末の比表面積は14.5m2/g、純度は3N(nine)である。上記MgO粉末の比表面積は160m2/g、純度は3N(nine)である。上記CaCO3粉末の比表面積は2.5m2/g、純度は3N(nine)である。なお、表1には、CaO量に換算して示した。
上記La23粉末の純度は3N(nine)である。上記TiO2粉末の比表面積は50m2/g、純度は2N(nine)である。
下記表1の試料No.1〜12、20〜21、23〜25については、Yジルコニア粉末とCeジルコニア粉末を表1に示す体積割合で配合したものと、Al23粉末、MgO粉末、CaCO3粉末、La23粉末、TiO2粉末を、下記表2に示す成分組成となるようにφ3mmのジルコニア製ボールと共にポリエチレン製容器に入れ、エタノール溶媒で24時間湿式混合した。湿式混合後、乾燥したものをメッシュパスして原料粉末を得た。
下記表1の試料No.13、14および22については、予備処理としてY23粉末、CeO2粉末およびZrO2粉末を湿式法で混合する場合に、エタノール溶媒で24時間湿式混合した粉末を乾燥した後、1000℃で3時間仮焼して粉末を得、この粉末を粉砕し、メッシュパスして得られたものに、下記表2に示す成分組成となるようにAl23粉末やMgO粉末を混合してφ3mmのジルコニア製ボールと共にポリエチレン製容器に入れ、エタノール溶媒で24時間湿式混合した。湿式混合後、乾燥したものをメッシュパスして原料粉末を得た。
なお、下記表2に示した成分組成のうち、Y23量、CeO2量およびTiO2量については、全ZrO2に対するmol%で、Al23量、MgO量、CaO量、La23量については、全粉末量に対する質量%で夫々示した。表中のAl23量と、MgO量およびCaO量から、配合比([Al23]/[MgO+CaO])を算出して表2に示す。
得られた原料粉末を、冷間静水圧プレスにより147MPa(1.5ton/cm2)で成形した。次いで、得られた成形体を大気中で、1450℃、2時間焼結して焼結体を得た。
次に、下記表1の試料No.1〜14については、得られた焼結体を更に1350℃、1500気圧、80%Ar−20%O2雰囲気下で2時間HIP焼結した。
焼結して得られたジルコニア焼結体の一部を粉砕し、その成分組成を下記ICP法で確認した。その結果、得られたジルコニア焼結体の成分組成は、下記表2に示した原料粉末の成分組成と等しいことを確認した。具体的な測定手順は次の通りである。供試材を白金るつぼに測り取り、アルカリ融剤(Na2CO3+Na247)を加えて溶融し、溶融物を塩酸で抽出した後、メスフラスコに移し入れ測定溶液とする。その測定溶液をICP質量分析装置(セイコーインスツルメンツ社製「SPQ8000」)にて金属成分を定量分析し、その値を酸化物換算して各酸化物量を求める。
次に、上記のようにして製作された各種ジルコニア複合焼結体の密度を、アルキメデス法により測定し、相対密度が99%以上であることを確認したものに対して、ジルコニア複合焼結体内に分散しているAl23系析出物の形態を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。観察条件は次の通りである。
供試材を切り出し、切断面を鏡面研磨した。研磨後の断面を走査型電子顕微鏡(SEM:日立製作所社製「S−4500」)にて観察した。観察時の加速電圧は20kVとし、0.002mm2の領域を5000倍で写真撮影した。試料No.12のSEM写真を図面代用写真として図1(a)に示す。
次に、SEM写真を画像解析してZrO2部分とAl23部分に2値化した。画像解析には、ナノシステム株式会社製「Nano Hunter NS2K−Lt」を用いた。画像解析後のSEM写真を図面代用写真として図1(b)に示す。図中、白い部分がZrO2であり、黒い部分がAl23である。
画像解析したSEM写真から、全Al23系析出物の個数に対する、長軸が1〜10μmで短軸/長軸比が0.5以下のAl23系析出物の個数の比率を算出し、結果を下記表2に示す。このとき長軸が0.03μm未満のAl23系析出物の個数は含めない。検出限界以下であるし、こうした微細析出物が脱落しても耐摩耗性には殆ど影響を与えないからである。
次に、相対密度が99%以上であることを確認した各種ジルコニア複合焼結体を用いて(1)曲げ試験、(2)靭性試験、および(3)摺動試験を行った。
(1)曲げ試験は、JIS R1601に準じて行った。即ち、上記ジルコニア複合焼結体を3×4×40mmのテストピースに加工し、上スパン10mm、下スパン30mmの4点曲げ試験を行った。テストピースは15本用意し、これらの平均値を曲げ試験の結果とした。
(2)靱性試験は、JIS R1607に準じて行った。テストピースとしては、上記ジルコニア複合焼結体を平面研削機で研削した後,表面を3μmダイヤモンド砥粒で鏡面仕上げしたサンプルを用いた。5点の平均値を靭性試験の結果とした。
(3)摺動試験は、ピンオンディスク試験により行った。試験片のピンのサイズは、直径:5mm×高さ:15mmの試験片の先端に、接触面圧を高めるために直径:1.5mm×長さ:2mmの凸部を設けた。一方、ディスクは直径:40mm×厚み:5mmである。ピン(試験片)とディスクの摩擦面は、鏡面研磨によりRa=0.01μmに仕上げたものを用いた。
摩耗試験機としては神鋼造機製の摩擦摩耗T試験機を用い、上部アンビルに、直径:40mmの円周上に3本の試験片を等間隔に取り付け、容器の底に固定するように取り付けられたディスクに荷重343N(35kgf)を加え、面圧を64.7MPaで接触させてアンビルを回転させた。摺動時間は40時間、摺動速度は120mm/secとした。なお、容器内には生理食塩水を循環させた。
各試験結果を表2に示す。
Figure 0004398840
Figure 0004398840
表2から明らかなように、試料No.1〜14は、900MPa以上の高強度と、8MPa・m1/2以上の高靭性を達成でき、しかもピンの摩耗量を50mg以下に抑制でき、耐摩耗性に優れている。これに対して、試料No.20〜25では、強度、靱性、耐摩耗性のいずれかが劣っている。
試料No.12を電子顕微鏡で撮影した写真を、画像解析した図面代用写真である。

Claims (4)

  1. Al23を含むジルコニア複合焼結体であって、
    全ZrO2に対し、
    23:0.2〜1.5mol%と、
    CeO2:4.7〜12mol%を含むほか、
    全量中に占める比率で、
    Al23:1〜30質量%と、
    MgOおよび/またはCaO:合計で0.15〜7.5質量%を含み、且つ、
    Al23系析出物が分散していると共に、全Al23系析出物の個数の3%以上が、長軸が1〜10μmで短軸/長軸比が0.5以下であることを特徴とするジルコニア複合焼結体。
  2. 更に、全量中に占める比率で、La23:2質量%以下(0質量%を含まない)を含むものである請求項1に記載のジルコニア複合焼結体。
  3. 更に、全ZrO2に対し、TiO2:1mol%以下(0mol%を含まない)を含むものである請求項1または2に記載のジルコニア複合焼結体。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のジルコニア複合焼結体によって形成された生体材料。
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