JP4761490B2 - フルオロアルキル基含有ホスホン酸重合体、その製造方法、高分子電解質及びリチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、新規なフルオロアルキル基含有ホスホン酸重合体、その製造方法、優れたイオン伝導度を有する高分子電解質、及びそれを用いたリチウムイオン二次電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
フルオロアルキル基を含有する化合物は、耐候性、撥水撥油性、更には生理活性等の有用な性質を示す化合物として注目を集めている。
【0003】
従来よりペルフルオロオクタン酸等のフルオロアルキル基含有カルボン酸が、水溶液中において高い界面特性を示すことは、広く知られており、フッ素系界面活性剤として利用されている。
【0004】
しかしながら、公知のフッ素系界面活性剤は、親水性基及び撥水性基のみにより構成された化合物であるため、撥水撥油性等のフッ素原子に起因する優れた特性と、親水性とを種々の環境下において交互に発現させることが困難であった。
【0005】
そこで、界面活性剤の分野において、フッ素、特に長鎖のフルオロアルキル基が導入された界面活性剤は、従来の炭化水素系界面活性剤に比べて、フッ素に起因した優れた性能を有することがことが注目されており、低分子量界面活性剤についてその報告は非常に多い。しかしながら、フルオロアルキル基を導入した高分子量界面活性剤の知見はほとんどない。
【0006】
近年、イオン伝導度の高い高分子材料が注目され、固体状態でイオン伝導度の高い高分子材料は、高分子固体電解質と呼ばれ、次世代のリチウムイオン二次電池用電解質として、特に注目されている。
【0007】
また、高性能電池として電解質に電解質溶液ではなくポリマーを利用したポリマー電池が注目を集めている(芦田勝二「電池材料」No.11、109頁、1993年)。例えば、下記の化学式;
【0008】
【化5】
【0009】
における高分子固体電解質中のイオン移動に示すように、ポリマー電池中では、ポリエチレンオキシドに代表される高分子固体電解質のイオン伝導はリチウムイオンなど、カチオンのイオン伝導をエーテル酸素の非共有電子対が媒体となって行われる(小野勝道「日本ゴム協会誌」9、61頁、1993年)。
【0010】
このようなポリマー電池は、高エネルギー密度であるため電池を小さく薄くすることが可能である(市野敏弘「高分子」45、868頁、1996年)。また、下記構造式;
【0011】
【化6】
【0012】
における高分子ゲル電解質の構造に示すように、固体の高分子電解質より高いイオン伝導性を目的として高分子ゲル電解質の開発が最近積極的に展開されている(小山昇、波戸崎修「現代化学」No.10、34頁、1996年)。しかし、液漏れや耐薬品性、耐候性が低いなどの欠点が指摘されており、これらの問題点を解決することが急務となっている。したがって、これらの問題点を解決するためにもフッ素の機能が付与された新しい高分子ゲル電解質を開発することは重要な研究項目である。
【0013】
本発明者らは、先にフルオロアルキル基の利点を生かしつつ、新規な機能性材料を種々提案してきた。例えば、抗菌性を有するフルオロアルキル基含有ホスホニウム塩オリゴマー類(特開平11−246577号公報、特開平11−246578号公報、特開平11−246579号公報)、界面活性剤として有用なフロオロアルキル基含有ホスホネートオリゴマー類(特開平11−246573号公報、特開平11−246574号公報)及びフロオロアルキル基含有ホスフィン酸オリゴマー類(特願平11−45901号公報、特願平11−45915号公報)を提案した。
【0014】
また、本発明者らはフルオロアルキル基が両末端に導入されたオリゴマー類の合成と性質に関する研究を積極的に行っている(H.Sawada(沢田英夫)、“Chem.Rev.”,Vol.96、pp1779、1996年)。特に最近、下記に示す反応により合成された両末端にフルオロアルキル基が導入されたポリ(オキシエチレン)ユニット含有コオリゴマー類のリチウムイオン存在下におけるキャストフィルムは、イオン伝導性を示すことを報告した(H.Sawada(沢田英夫) et al.,“J.Jpn.Oil Chem Soc.”,Vol.47,pp685、1998年)。
反応式(1);
【0015】
【化7】
【0016】
また、下記に示す反応により、両末端にフルオロアルキル基が導入されたオリゴマーにおいて、ベタインセグメントあるいはトリオールセグメントを導入させることにより、フルオロアルキル基の凝集作用以外にベタインセグメント間のイオン的相互作用あるいはトリオールセグメント間の水素結合が相乗的に作用し、架橋剤を用いない系にも関わらず水さらには極性有機溶媒中にてゲルを形成することを報告した(H.Sawada(沢田英夫) et al.,“Polymer”,Vol.38,pp743,1998年)、(H.Sawada(沢田英夫) et al.,“Bull.Chem.Soc.Jpn.”、Vol.70、pp2839、1997年)。
【0017】
【化8】
【0018】
しかしながら、上記の化合物は、いずれも、高分子電解質として十分なイオン伝導性を有するものではなかった。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
即ち、本発明は、優れたイオン伝導度を有する新規なフルオロアルキル基含有ホスホン酸重合体、その製造方法及びゲル電解質等の高分子電解質、並びにこれを用いたリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは、フッ素の優れた機能が付与された新規な高分子ゲル電解質を開発するため鋭意研究を重ねた結果、フルオロアルキル基含有オリゴマー類にテトラオールセグメント(グルコシル基)と、特定のホスホン酸基(ホスホノエチレン基)とを導入したフルオロアルキル基含有重合体が、高いイオン伝導性を持ち、高分子電解質として有用な重合体となり、更には、この高分子電解質をゲル電解質として用いたリチウムイオン二次電池は優れた放電特性を有することを知見し、本発明を完成するに至った。
【0021】
本発明の第1の発明は、下記一般式(1):
【0022】
【化9】
【0023】
{式中、R1及びR2は同一叉は異なって、(CF2)nY、又はCF(CF3)−〔OCF2CF(CF3)〕p−OC3F7(但し、Yは水素原子、フッ素原子又は塩素原子を示す。nは1〜10の整数、pは0〜10の整数を示す。)を示し、R3は水素原子又はメチル基を示し、Aはホスホノエチレン基を示し、a:bのモル比は1:99〜99:1である}で表されることを特徴とするフルオロアルキル基含有ホスホン酸重合体を提供するものである。
【0024】
また、本発明の第2の発明は、下記一般式(2);
【0025】
【化10】
【0026】
(式中、R1、R2は前記と同義。)で表される過酸化フルオロアルカノイル類と、下記一般式(3);
【0027】
【化11】
【0028】
(式中、R3は前記と同義。)で表される2−グルコシルオキシエチル(メタ)アクリレートと、ビニルホスホン酸とを反応させて前記フルオルアルキル基含有ホスホン酸重合体を製造する方法を提供するものである。
【0029】
また、本発明の第3の発明は、前記フルオロアルキル基含有ホスホン酸重合体を含有する高分子電解質を提供するものである。
【0030】
また、本発明に第4の発明は、前記高分子電解質を電解質として用いたリチウムイオン二次電池を提供するものである。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0032】
本発明に係るフルオロアルキル基含有ホスホン酸重合体は、上記一般式(1)で表されるフルオロアルキル基含有ホスホン酸重合体である。上記一般式(1)で表されるフルオロアルキル基含有ホスホン酸重合体の式中、R1及びR2の好ましいものとしては、式−CF(CF3)−[OCF2CF(CF3)]p−OC3F7で表されるものを挙げることができ、式中、pが0〜8のものが好ましく、pが0または2であるものが特に好ましく、R3としては、メチル基が特に好ましい。前記一般式(1)で表されるフルオロアルキル基含有ホスホン酸重合体の式中のa:bのモル比は、好ましくは99:1〜1:99、特に好ましくは80:1〜1:20である。
【0033】
本発明のフルオロアルキル基含有ホスホン酸重合体は、ゲル状物であり、該ゲル状物は、水、クロロホルム、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、ベンゼン、トルエン、ジメチルホルムアミド、又はテトラヒドロ−1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパンと1,3−ジクロロ−1,2,2,3,3−ペンタフルオロプロパンとの混合溶媒のそれぞれに不溶の高分子及びその膨潤体を指す。
【0034】
また、前記一般式(1)で表されるフルオロアルキル基含有ホスホン酸重合体中、R1及びR2で示されるフルオロアルキル基が片末端のみに導入されたホスホン酸重合体を任意の割合で含んでいてもよい。
【0035】
次いで、本発明に係る前記一般式(1)で表されるフルオロアルキル基含有ホスホン酸重合体の製造方法について説明する。
【0036】
前記一般式(1)で表されるフルオロアルキル基含有ホスホン酸重合体は、前記一般式(2)で表される過酸化フルオロアルカノイル類と、前記一般式(3)で表される2−グルコシルオキシエチル(メタ)アクリレートと、ビニルホスホン酸とを反応させることにより容易に製造することができる。
【0037】
第1の反応原料の上記一般式(2)で表される過酸化フルオロアルカノイル類の具体的な化合物例としては、過酸化ジペルフルオロー2−メチル−3−オキサヘキサノイル、過酸化ジペルフルオロ−2,5−ジメチル−3,6−ジオキサノナノイル、過酸化ジペルフルオロ−2,5,8−トリメチル−3,6,9−トリオキサドデカノイル、過酸化ジペルフルオロブチリル、過酸化ジペルフルオロヘプタノイル、過酸化ジペルフルオロオクタノイル等を例示することができ、これらのうち、過酸化ジペルフルオロー2−メチル−3−オキサヘキサノイル、過酸化ジペルフルオロ−2,5−ジメチル−3,6−ジオキサノナノイルが好ましい。
【0038】
かかる過酸化フルオロアルカノイル類の製造方法としては、広く公知の方法を用いることができ、一例を示せば、フルオロアルキル基含有ハロゲン化アシルに、含フッ素芳香族溶媒又は代替フロンのような含フッ素脂肪族溶媒の存在下、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムなどのアルカリの存在下で過酸化水素を反応させる方法等により容易に目的とする過酸化フルオロアルカノイル類を得ることができる。
【0039】
また、第2の反応原料の前記一般式(3)で表される2−グルコシルオキシエチル(メタ)アクリレートとしては、具体的には、2−グルコシルオキシエチルアクリレート、2−グルコシルオキシエチルメタクリレートであり、かかる2−グルコシルオキシエチル(メタ)アクリレートは、日本精化株式会社等で市販されているものを用いることができる。
【0040】
第3の原料のビニルホスホン酸は、特に限定されず市販のものを使用することができる。
【0041】
次いで、反応条件について説明する。前記一般式(1)で表されるフルオロアルキル基含有ホスホン酸重合体の製造方法において、第1〜第3の原料の配合モル比は、前記一般式(2)で表される過酸化フルオロアルカノイル類1モルに対して、前記一般式(3)で表される2−グルコシルオキシエチル(メタ)アクリレートが1モル以上、好ましくは2〜30モルであり、また、第3の原料のビニルホスホン酸は、前記一般式(2)で表される過酸化フルオロアルカノイル類1モルに対して、1モル以上、好ましくは1〜20モルである。
【0042】
上記の反応は常圧で行うことが可能であり、反応温度は、通常−20〜150℃、好ましくは0〜100℃である。反応温度が−20℃未満になると、反応に長時間要する傾向があり、一方、150℃を越えると反応系内の圧力が高くなって、反応操作が困難になる傾向があるので好ましくない。反応時間は、通常、0.5〜20時間、好ましくは3〜10時間である。この反応は、無溶媒化で行うこともできるが、過酸化フルオロアルカノイル類との反応をより円滑に行うため、溶媒下で反応を行うことが望ましい。反応溶媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、2−クロロ−1,2−ジブロモ−1,1,2−トリフルオルエタン、1,2−ジブロモヘキサフルオロプロパン、1,2−ジブロモテトラフルオロエタン、フルオロトリクロロメタン、ヘプタフルオロ−2,3,3−トリクロロブタン、1,1,1,3−テトラクロロテトラフルオロプロパン、1,1,2−トリクロロトリフルオロプロパン、1,1,2−トリクロロトリフルオロエタン、1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,3−ジクロロ−1,2,2,3,3−ペンタフルオルプロパン、水等の1種又は2種以上で用いることができる。この中、特に1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,3−ジクロロ−1,2,2,3,3−ペンタフルオルプロパン及び水との混合溶媒が好ましく用いられる。
【0043】
過酸化アルカノイル類のこれら溶媒中の濃度は、0.5〜30重量%の範囲とすることが好ましい。
【0044】
かくして、目的とするフルオロアルキル基含有ホスホン酸重合体が容易に得られるが、本発明では所望により、透析、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の常法の精製手段により精製することができる。
【0045】
本発明のフルオロアルキル基含有ホスホン酸重合体は、優れたイオン伝導性を有することから、高分子電解質として有用であり、リチウムイオンポリマー電池の電解質、可塑剤として用いることが出来る。
【0046】
次いで、本発明の高分子電解質について説明する。本発明の高分子固体電解質は、水又は非プロトン性溶媒に前記一般式(1)で表されるフルオロアルキル基含有ホスホン酸重合体を電解質として含有させたものであり、好ましくは、水又は非プロトン性溶媒に該重合体を電解質として含有させてゲル化させたものである。
【0047】
用いることが出来る非プロトン性溶媒としては、特に制限されないが、例えば、N−メチル−2−ピロリジノン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロキシフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、蟻酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、ジエチルエーテル、1,3−プロパンサルトン、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等の非プロトン性有機溶媒の1種または2種以上を混合した溶媒が挙げられる。
【0048】
これらの水及び非プロトン性溶媒のうち、水、ジメチルスルフォキシド、ジメチルホルムアミドは、上記一般式(1)で表されるフルオロアルキル基含有ホスホン酸重合体を電解質として含有させる際に均一ゲル化して、液漏れの無い高分子電解質を調製できるため好ましく、ジメチルスルホキシド及びジメチルホルムアミドが特に好ましく、ジメチルスルホキシドが最も好ましい。
【0049】
水又は非プロトン性溶媒に対する前記一般式(1)で表されるフルオロアルキル基含有ホスホン酸重合体の添加量は、用いるフルオロアルキル基含有ホスホン酸重合体の種類及び用いる溶媒によっても異なるが、通常0.1〜80wt%、好ましくは1〜50wt%である。
【0050】
更に、本発明の高分子電解質は、他の電解質と併用することが出来る。他の電解質としては、水叉は非プロトン性溶媒に溶解するものであれば特に限定されないが、例えば、LiClO4 、LiCl、LiBr、LiI、LiBF4 、LiPF6 、LiCF3 SO3 、LiAsF6 、LiAlCl4 、LiB(C6 H6 )4 、CF3 SO3 Li、LiSbF6 、LiB10Cl10、LiSiF6、LiN(SO2CF3)2、LiC(SO2CF3)2、LiN(CF3SO3)2、低級脂肪酸カルボン酸リチウム、クロロボランリチウム及び4フェニルホウ酸リチウム等が挙げられ、これらのリチウム塩は、1種又は2種以上で用いられる。これらのリチウム塩のうち、LiN(CF3SO3)2、LiPF6 、CF3 SO3 Li、LiPF6が電解質のイオン伝導性の点から好ましく、LiN(CF3SO3)2が特に好ましい。これらのリチウム塩の好ましい添加量は、上記溶媒に対して添加する上記一般式(1)で表されるフルオロアルキル基含有ホスホン酸重合体1gに対して、0.1〜20mmol、好ましくは1.0〜10mmolである。また、本発明の高分子電解質は、リチウムイオン二次電池の電解質や、可塑剤として用いることが出来る。
【0051】
次いで、本発明のリチウムイオン二次電池について説明する。本発明のリチウムイオン二次電池は、正極、負極、セパレータ、及びリチウム塩を含有する非水電解質からなるリチウムイオン二次電池において、前記一般式(1)で表されるフルオロアルキル基含有ホスホン酸重合体を含有する電解質を用いたものである。リチウム塩を含有する非水電解質は、上記した高分子電解質とリチウム塩とからなるものである。本発明の高分子電解質は、上記した高分子電解質の内、非プロトン性溶媒に前記一般式(1)で表されるフルオロアルキル基含有ホスホン酸重合体を含有させる電解質を用いるものである。
【0052】
非水電解質に含有させるリチウム塩としては、上記非プロトン性溶媒に溶解するものが用いられ、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO4 、LiBF6 、LiPF6 、LiCF3 SO3 、LiCF3 CO2 、LiAsF6 、LiSbF6 、LiB10Cl10、LiAlCl4 、CH3SO3Li、CF3SO3Li、LiN(CF3SO2)2、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、四フェニルホウ酸リチウム等の1種または2種以上を混合した塩が挙げられる。これらのリチウム塩の好ましい添加量は、上記溶媒1Kgに対して0.1〜3モル、好ましくは0.5〜2モルである。
【0053】
また、非水電解質には、放電、充電特性、難燃性を改良する目的で、以下に示す化合物を1種又は2種以上添加することができる。例えば、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n−グライム、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N−置換オキサゾリジノンとN,N−置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ポリエチレングルコール、ピロール、2−メトキシエタノール、三塩化アルミニウム、導電性ポリマー電極活物質のモノマー、トリエチレンホスホンアミド、トリアルキルホスフィン、モルフォリン、カルボニル基を持つアリール化合物、ヘキサメチルホスホリックトリアミドと4−アルキルモルフォリン、二環性の三級アミン、オイル、ホスホニウム塩及び三級スルホニウム塩、ホスファゼン、炭酸エステル等が挙げられる。
【0054】
上記のリチウム塩を含有する非水電解質は、まず、前記リチウム塩と非プロトン性溶媒及び必要により添加させる添加剤とを混合して均一溶液とし、前記一般式(1)で表されるフルオロアルキル基含有ホスホン酸重合体を該溶液に添加して含有させることにより、好ましくは含有させてゲル化させることにより、得ることができる。
【0055】
正極は、例えば、正極集電体上に正極合剤を塗布乾燥等して形成されるものであり、正極合剤は正極活物質、導電剤、結着剤、及び必要により添加されるフィラー等からなる。
【0056】
正極活物質としては、特に限定はなく公知のものを用いることができ、例えば、V2 O5 、V3 O13、V6 O13、MnO2 、MoO3等の金属酸化物 、LiCoO2 、LiNiO2 、LiMn2 O4 、LiMnO2、LiFeO2 、リチウムと、Co、Ni、Mn、Fe、V、Mo、Cu、Zr、Ge、Ti、Cr及びZn等の遷移金属から選ばれた2種以上のリチウム複合金属酸化物、これらの複合金属酸化物にハロゲン化合物等の添加剤が添加されたもの、TiS2 、MoS2、FeS2 、NbS2等の金属硫化物、ポリピロール誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリチオフェン誘導体等の導電性ポリマー、黒鉛等が挙げられ、これらの中、リチウム複合金属酸化物を用いることが好ましい。
【0057】
正極集電体としては、構成された電池において化学変化を起こさない電子伝導体であれば特に制限されるものでないが、例えば、ステンレス鋼、ニッケル、アルミニウム、チタン、焼成炭素、アルミニウムやステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀を表面処理させたもの等が挙げられる。
【0058】
導電剤としては、構成された電池において化学変化を起こさない電子伝導材料であれば特に限定はない。例えば、天然黒鉛及び人工黒鉛等の黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維や金属、ニッケル粉、金属繊維或いはポリフェニレン誘導体等の導電性材料が挙げられ、天然黒鉛としては、例えば、鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛及び土状黒鉛等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。導電剤の配合比率は、正極合剤中、1〜50重量%、好ましくは2〜30重量%である。
【0059】
結着剤としては、例えば、デンプン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ジアセチルセルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフロオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、ポリエチレンオキシドなどの多糖類、熱可塑性樹脂、ゴム弾性を有するポリマー等が挙げられ、これらは1種または2種以上組み合わせて用いることができる。なお、多糖類のようにリチウムと反応するような官能基を含む化合物を用いるときは、例えば、イソシアネート基のような化合物を添加してその官能基を失活させることが好ましい。結着剤の配合比率は、正極合剤中、1〜50重量%、好ましくは5〜15重量%である。
【0060】
フィラーは正極合剤において正極の体積膨張等を抑制するものであり、必要により添加される。フィラーとしては、構成された電池において化学変化を起こさない繊維状材料であれば何でも用いることができるが、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系ポリマー、ガラス、炭素等の繊維が用いられる。フィラーの添加量は特に限定されないが、正極合剤中、0〜30重量%が好ましい。
【0061】
負極は、負極集電体上に負極材料を塗布乾燥等して形成される。負極集電体としては、構成された電池において化学変化を起こさない電子伝導体であれは特に制限されるものでないが、例えば、ステンレス鋼、ニッケル、銅、チタン、アルミニウム、焼成炭素、銅やステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀を表面処理させたもの、及び、アルミニウム−カドミウム合金等が挙げられる。
【0062】
負極材料としては、特に制限されるものではないが、例えば、炭素質材料、金属複合酸化物、リチウム金属、リチウム合金、ケイ素系合金、錫系合金、金属酸化物、導電性高分子、カルコゲン化合物、Li−Co−Ni系材料等が挙げられる。炭素質材料としては、例えば、難黒鉛化炭素材料、黒鉛系炭素材料等が挙げられる。金属複合酸化物としては、例えば、Snp M1 1-pM2 q Or (式中、M1 はMn、Fe、Pb及びGeから選ばれる1種以上の元素を示し、M2 はAl、B、P、Si、周期律表第1族、第2族、第3族及びハロゲン元素から選ばれる1種以上の元素を示し、0<p≦1、1≦q≦3、1≦r≦8を示す。)、LixFe2O3、LixWO2等の化合物が挙げられる。金属酸化物としては、GeO、GeO2、SnO、SnO2、PbO、PbO2、Pb2O3、Pb3O4、Sb2O3、Sb2O4、Sb2O5、Bi2O3、Bi2O4、Bi2O5等が挙げられる。導電性高分子としては、ポリアセチレン、ポリ‐p−フェニレン等が挙げられる。
【0063】
セパレータとしては、大きなイオン透過度を持ち、所定の機械的強度を持った絶縁性の薄膜が用いられる。耐有機溶剤性と疎水性からポリプロピレンなどのオレフィン系ポリマーあるいはガラス繊維あるいはポリエチレンなどからつくられたシートや不織布が用いられる。セパレーターの孔径としては、一般的に電池用として有用な範囲であればよく、例えば、0.01〜10μm である。セパレターの厚みとしては、一般的な電池用の範囲であればよく、例えば5〜300μm である。なお、後述する電解質としてポリマーなどの固体電解質が用いられる場合には、固体電解質がセパレーターを兼ねるようなものであってもよい。
【0064】
電池の形状はボタン、シート、シリンダー、角、コイン型等いずれにも適用でき、本発明に係るリチウムイオン二次電池の用途は、特に限定されないが、例えば、ノートパソコン、ラップトップパソコン、ポケットワープロ、携帯電話、コードレス子機、ポータブルCDプレーヤー、ラジオ、液晶テレビ、バックアップ電源、電気シェーバー、メモリーカード、ビデオムービー等の電子機器、自動車、電動車両、ゲーム機器等の民生用電子機器が挙げられる。
【0065】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。
【0066】
実施例1
コンデンサー、温度計、攪拌機、滴下ロートを備えた200ml四つ口フラスコに、ビニルホスホン酸31.6mmol(3.41g)及び2−グルコシルオキシエチルメタクリレート(日本精化株式会社製)31.6mmolを含有する50重量%水溶液18.5gを、AK−255(商品名、旭硝子株式会社製、Cl2CHCF2CF3とCClF2CF2CHClの混合溶液、以下同じ)に添加し、過酸化ジペルフルオロ−2−メチル−3−オキサヘキサノイル6.3mmol(4.2g)を含んだAK−255溶液50gを室温下、窒素気流中で、すばやく滴下した。45℃に加熱し、5時間攪拌させた。反応後、得られたゲル状物質をメタノール100ml中にて十分な撹拌下で未反応のモノマー類を除去した。次いで吸引濾過により得られたゲルを真空乾燥させることにより、重合体8.52g(収率33%)を得た。IRによりフルオロアルキル基含有重合体の確認を行った。
【0067】
<IR(KBr、cm-1)>
3300(OH)、1709(C=O)、1310(CF3)、1240(CF2)
【0068】
以上の分析結果より、得られた生成物は表1中の試料Aの構造を有するフルオロアルキル基含有ホスホン酸重合体であることを確認した。
【0069】
実施例2
ビニルホスホン酸14mmol(1.51g)、2−グルコシルオキシエチルメタクリレート14mmolを含有する50%重量水溶液8.18g、過酸化ジペルフルオロ−2,5−ジメチル−3,6−ジオキサノナノイル2.8mmol(2.77g)を用いる以外は実施例1と同様に合成することにより、重合体2.9g(収率32%)を得た。IRによりフルオロアルキル基含有重合体の確認を行った。
【0070】
<IR(KBr、cm-1)>
3350(OH)、1710(C=O)、1310(CF3)、1243(CF2)
【0071】
以上の分析結果より、得られた生成物は表1中の試料Bの構造を有するフルオロアルキル基含有ホスホン酸重合体であることを確認した。
【0072】
実施例3
ビニルホスホン酸31.6mmol(3.41g)、2−グルコシルオキシエチルメタクリレート15.8mmolを含有する50重量%水溶液9.25g、過酸化ジペルフルオロ−2−メチル−3−オキサヘキサノイル6.3mmol(4.2g)を用いる以外は実施例1と同様に合成することにより、重合体4.56g(収率39%)を得た。IRによりフルオロアルキル基含有重合体の確認を行った。
【0073】
<IR(KBr、cm-1)>
3450(OH)、1710(C=O)、1320(CF3)、1242(CF2)
【0074】
以上の分析結果より、得られた生成物は表1中の試料Cの構造を有するフルオロアルキル基含有ホスホン酸重合体であることを確認した。
【0075】
【表1】
【0076】
<溶解性の評価>
実施例1〜3で得られた試料(A〜C)のフルオロアルキル基含有ホスホン酸重合体について、30℃における各種溶剤に対する溶解性を試験した。その結果を表2に示した。表中の記号は下記のことを示す。
○;非常によく溶ける、△;あまりよく溶けない、×;全く溶けない
G;ゲル化
【0077】
【表2】
【0078】
<ゲル化特性>
実施例1〜3で得られた試料(A〜C)のフルオロアルキル基含有ホスホン酸重合体について、DMSO、DMF及び水に対する30℃での最小ゲル化濃度(Cmin)を測定した。その結果を表3に示した。
【0079】
【表3】
【0080】
<高分子ゲル電解質の作成>
表4に示す試料A1〜A8、B1、B2、C1、及びC2においては、表4に示される割合で、それぞれ、溶媒(水またはDMSO)に対してLiN(CF3SO2)2を添加した。次いで得られた溶媒を超音波洗浄器により60分間混合して均一溶液を得た。該均一溶液に表4試料A1〜A8においては実施例1で得られたフルオロアルキル基含有ホスホン酸重合体Aを、B1、及びB2においては実施例2で得られたフルオロアルキル基含有ホスホン酸重合体Bを、C1及びC2においては実施例3で得られたフルオロアルキル基含有ホスホン酸重合体Cを、それぞれ、表4に示される割合で添加し、超音波洗浄器により60分間混合してゲル電解質A1〜A8を得た。さらに、測定用ゲルをパイレックスガラスセルに入れ、真臘で作製した上部電極と下部電極ではさみこみ導電率を測定し、これらによりイオン伝導度を算出した。求めたイオン伝導度の結果を表4に示す。
【0081】
【表4】
【0082】
<リチウムイオン二次電池としての評価>
・リチウムイオン二次電池の作製
LiCoO270重量%、黒鉛粉末20重量%、ポリフッ化ビニリデン10重量%混合して正極合剤とし、これをN−メチル−2−ピロリジノンに分散させて混練ペーストを調製した。該混練ペーストをアルミ箔に塗布した後、乾燥、プレスして正極板を得た。この正極板を用いて、セパレーター、負極、集電板、取り付け金具、外部端子、電解液等の各部材を用いてリチウムイオン二次電池(図1参照。)を作製した。符号1は、マイクロヘッド、2はガラスセル、3は測定ゲル、4は下部電極、5はコバルト酸リチウム、6はカーボン、7は上部電極である。負極としてはカーボンを、高分子電解質としてはDMSO1gに、Li塩としてLiN(CF3SO2)2を0.09g溶解して超音波洗浄器により60分間撹拌し、次いで実施例1で得られたフルオロアルキル基含有ホスホン酸重合体0.725g添加して超音波洗浄器により撹拌し、均一ゲル化させたものを用いた。得られたリチウムイオン二次電池を25℃で作動させ、以下の条件で放電特性を評価し、その結果を図2に示した。
【0083】
・放電特性
4Vで30分間充電した後、放電して開放電圧と放電時間の関係を求めた。
【0084】
【発明の効果】
上記したとおり、本発明のフルオロアルキル基含有ホスホン酸重合体は、新規な化合物であり、優れたイオン伝導度を有することから、リチウムイオンポリマー電池の電解質や可塑剤として利用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例で作製したリチウムイオン二次電池の概略図。
【図2】実施例で作製したリチウムイオン二次電池の開放電圧と放電時間の関係を示す図。
Claims (4)
- 下記一般式(1):
- 下記一般式(2):
- 請求項1に記載のフルオロアルキル基含有ホスホン酸重合体を含有することを特徴とする高分子電解質。
- 請求項3に記載の高分子電解質を電解質として用いることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
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