JP4757405B2 - 耐劣化性のゴムまたは熱可塑性エラストマーの製造方法 - Google Patents

耐劣化性のゴムまたは熱可塑性エラストマーの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐劣化性のゴムまたは熱可塑性エラストマーの製造方法に関し、詳しくは、ゴムまたは熱可塑性エラストマーの物性や性能に影響無く、容易に耐酸化劣化性能を付与するものである。
【0002】
【従来の技術】
ゴムまたは熱可塑性エラストマーからなる材料の劣化、特に酸化劣化を改善するためには、耐劣化性に優れたポリマーを構成材料に加えるか、または老化防止剤を大量に配合することが一般に行われている。
【0003】
また、熱可塑性エラストマーは架橋ゴムがポリプロピレン(PP)等の熱可塑性樹脂に被覆された状態で存在するため、本来、ゴムよりも耐酸化劣化性に優れている。しかし、PPを透過した酸素により、繰り返し屈曲してエネルギー活性が高くなった状態では、熱可塑性エラストマーも酸化劣化する。特に,内部のゴムがアクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)等、比較的酸化しやすいゴムである場合には、この酸化劣化はより顕著となる。従って、熱可塑性エラストマーにも、上記ポリマーや老化防止剤を配合している。
【0004】
酸化劣化しにくい耐劣化性に優れたポリマーとして、具体的には、主鎖に二重結合をもたないエチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、X−IIR等のポリマーが挙げられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ゴムまたは熱可塑性エラストマーからなる材料に、上記ポリマーを多量に配合すると、上記ポリマーを配合したゴムまたは熱可塑性エラストマーからなる材料自身の物性が変化してしまい、所定の性能が得られないという問題がある。
【0006】
また、酸化劣化しにくいポリマーは、分子中に酸素の結合が容易な二重結合をもたないポリマーを使用しているが、これらは、二重結合をもたないため、三次元網目構造に架橋することが困難であり、上記ポリマーを配合した材料は、十分な機械的強度を得ることができないという問題がある。
【0007】
機械的強度を維持するために、上記ポリマーと二重結合を有するジエン系ゴムを併用することも考えられるが、二重結合をもたないポリマーを多量に配合しすぎると、上記ジエン系ゴムとの分散性に問題が生じて、ゴムまたは熱可塑性エラストマーの機械特性や疲労特性が低下するという問題がある。
【0008】
以上のように、二重結合をもたず、酸化劣化しにくい耐劣化性に優れたポリマーの配合量には限界があるため、上記ポリマーを配合することによって、ゴムまたは熱可塑性エラストマーの酸化劣化を改善するのは困難である。
【0009】
さらに、耐酸化劣化性を改善するために老化防止剤を配合する場合も、老化防止剤を多量に配合しすぎると、架橋速度に著しい影響を与えるという問題がある。具体的には、硫黄加硫では、アミン系の老化防止剤を配合すると、架橋速度が速くなり、フェノール系の老化防止剤を配合すると、架橋速度が遅くなる。よって、老化防止剤を多量に配合する場合には、架橋工程での架橋方法や老化防止剤の種類等の条件設定が困難となる。
【0010】
一方、過酸化物架橋の場合においても、老化防止剤は架橋密度そのものを低下させるという問題があるため、老化防止剤を多量に配合すると、ゴムまたは熱可塑性エラストマーからなる材料自身の物性が変化してしまい、所定の性能が得られないという問題がある。
【0011】
このように、従来のゴムまたは熱可塑性エラストマーの製造方法においては、耐酸化劣化性と、機械的特性や疲労特性の維持との両立は困難である。従って、優れた耐酸化劣化性と、機械的特性や疲労特性との維持とを両立して有するゴムまたは熱可塑性エラストマーを、より容易に製造可能な方法が要望されている。
【0012】
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、ゴムまたは熱可塑性エラストマーの配合・性能に影響を与えずに、かつ架橋条件設定にも影響を与えずに、その耐酸化劣化性を向上させ、優れた耐酸化劣化性と機械的特性や疲労特性の維持とを両立して有するゴムまたは熱可塑性エラストマーを、従来よりも容易に製造することができる耐劣化性のゴムまたは熱可塑性エラストマーの製造方法を提供することを課題としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、架橋が終了した後のブタジエンゴムとエチレン−プロピレン−ジエンゴムを主成分とするゴムの処理対象部分を、30〜70℃に加温させた粉末状のフェノール系老化防止剤に0.5〜1時間埋没または浸漬させることにより老化防止剤を浸透させる工程を含むことを特徴とする耐劣化性のゴムまたは熱可塑性エラストマーの製造方法を提供している。
【0014】
本発明者は、鋭意研究の結果、構成ポリマーの変更や老化防止剤の配合量の増量及びそれに伴う架橋剤の調整をする必要がなく、ゴムまたは熱可塑性エラストマーの耐酸化劣化性を向上させる方法として、架橋反応が終了した後のゴムまたは熱可塑性エラストマーに、老化防止剤を浸透させる工程が有効であることを見出した。即ち、耐劣化性に優れたポリマーや老化防止剤を予め配合せずに(あるいは少量配合して)、架橋反応を行い、その後に老化防止剤を浸透させることにより、材料物性(耐劣化性)を改善できるため、他の材料特性を妨げることが少なく、耐酸化劣化性を得ることができる。従って、上記工程を含む製造方法により製造されたゴムまたは熱可塑性エラストマーには、機械的特性や疲労特性を維持しながら、ゴムまたは熱可塑性エラストマーの所定の物性を変化させることなく、かつ容易に耐酸化劣化性を付与することができる。
【0015】
また、架橋後の後処理として老化防止剤を浸透させるため、予め老化防止剤を配合するのに比べ、耐酸化劣化性が特に要求されるゴムまたは熱可塑性エラストマーの表面に効率よく、耐劣化性を付与することができる。さらに、予め老化防止剤を配合する必要がないため、架橋後であればいつでも耐劣化性を付与することができ、ゴム・熱可塑性エラストマーの劣化に伴い再度、耐劣化性を付与することもできる。
【0016】
上記架橋が終了した後のゴムまたは熱可塑性エラストマーとは、架橋反応が完全に終了した、ブタジエンゴムとエチレン−プロピレン−ジエンゴムを主成分とするゴムを意味する。その他必要な、各種添加剤等を配合してもよい。
【0017】
上記老化防止剤を浸透させる工程が30℃以上に加温されて行われる。
30℃以上に加温して浸透させるのは、30℃以上に加温することにより、ゴムまたは熱可塑性エラストマーに老化防止剤が外部から浸透するための分子運動が促進され、浸透が早くなるためである。30℃以上であれば、より高い温度が好ましい。
なお、30℃より低い温度であれば、浸透に時間を要するという問題がある。
【0018】
上記老化防止剤を効率良く浸透させる方法としては、老化防止剤を浸透させ得る状態で30℃以上の条件下、暫く放置する方法が挙げられる。または、50℃〜70℃の高温中に、老化防止剤を浸透させ得る状態のゴムまたは熱可塑性エラストマーを速やかに通過させることによっても、老化防止剤を浸透させることができる。
【0019】
上記架橋には過酸化物架橋剤を用い、上記老化防止剤にはフェノール系老化防止剤を用いている。ゴムまたは熱可塑性エラストマーを過酸化物架橋により架橋すると、老化防止剤を浸透させたときに、架橋密度そのものを大きく低下するのを防ぐことができ、本発明の効果を大きくすることができる。また、老化防止剤としてフェノール系老化防止剤を用いると、ゴムまたは熱可塑性エラストマー表面への老化防止剤の析出が抑制され、よって、より長期間に渡り耐酸化劣化性を持続することができる。
【0020】
過酸化物架橋剤としては、ジ−tert−ブチルペルオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジ−tert−ブチルペルオキシド、tert−ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,3ビス−(tert−ブチルペルオキシ−イソプロピル)ベンゼン等が挙げられる。
【0021】
フェノール系老化防止剤としては、2,5−ジ−tert−アミルハイドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、4,4'−チオ−ビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、スチレン化フェノール、2,2'−メチレン−ビス−(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)等が挙げられる。
【0022】
上記老化防止剤を浸透させる工程が、ゴムまたは熱可塑性エラストマーの処理対象部分を、粉末状の老化防止剤に、埋没または浸漬させるものである。また、上記方法とすると、耐酸化劣化性を向上させたい処理対象部分のみ、埋没または浸漬させることで、部分的に、効率よくゴムまたは熱可塑性エラストマーの耐酸化劣化性を向上させることもできる。
【0024】
上記老化防止剤を浸透させる工程が、50℃以上に30分間以上加温された条件で行われるのが好ましい。上記老化防止剤を浸透させる工程の処理条件、すなわち加温の温度及び加温する時間の条件は30〜70℃及び0.5〜1時間の範囲内で任意に適切な条件を選択できるが、上記範囲がより好ましい。上記範囲とすると、短時間で耐酸化劣化性を付与することができる。このように、加温の温度が高いと、より短時間で老化防止剤が浸透し、より速やかに耐酸化劣化性を付与することができる。また、温度が低くても、加温時間が長いと、ゆっくりと時間をかけて浸透させることが可能となるため、老化防止剤の効果を材料内部まで十分に得ることができる。上記観点より浸透時間は長い方が好ましい。上記加温温度と加温時間の関係と、作業性、生産性を考慮すると、50℃以上に30分間以上に加温された条件が好ましい。
【0025】
架橋剤としては、上記過酸化物架橋剤以外にも任意の架橋剤が使用できる。例えば、イオウ、樹脂架橋剤等の架橋剤が挙げられる。
【0027】
本発明の製造方法により製造されるゴムまたは熱可塑性エラストマーは、その物性や性能に影響無く、かつ架橋条件設定にも影響を与えないので、容易に耐酸化劣化性能を向上させることができる。よって耐酸化劣化性に優れ、かつ機械特性や疲労特性も優れたゴムまたは熱可塑性エラストマーを、従来よりも容易に製造することができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の耐劣化性のゴムまたは熱可塑性エラストマーの製造方法の実施形態を説明する。まず、ブタジエンゴム80重量部と、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)20重量部と、その他必要に応じて各種添加剤を用いて、通常の方法で混練及び架橋して1mm厚みのゴムシートを作製し、次に、架橋が終了した後の上記ゴムシートを、50℃で1時間加温した状態で粉末状の老化防止剤中に浸漬させ、ゴムシートの処理対象部分に老化防止剤を浸透させる。
【0029】
架橋には過酸化物架橋剤である、ジクミルパーオキサイドを用い、老化防止剤にはフェノール系老化防止剤である、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)を用いている。
【0030】
このように、架橋後の後処理として、老化防止剤を浸透させる工程を含む、耐劣化性のゴムまたは熱可塑性エラストマーの製造方法により、多量の老化防止剤を配合することなく、機械的特性や疲労特性を維持しつつ、耐酸化劣化性を有するゴムまたは熱可塑性エラストマーを容易に得ることができる。
【0031】
化防止剤を浸透させるには、浸漬の他、埋没等の種々の方法が挙げられる。老化防止剤が材料の表面を覆い、ゴムまたは熱可塑性エラストマー中に浸透させることができる方法であればよい。
【0032】
また、本実施形態では、ブタジエンゴムとEPDMを主成分とするゴムに耐劣化性を付与しているが、その他必要な添加剤、配合剤を配合してもよいことはいうまでもない。
【0033】
以下、本発明の耐劣化性のゴムまたは熱可塑性エラストマーの製造方法の実施例、及び比較例について詳述する。
【0034】
まず、下記表1に示すように、実施例1〜5および比較例1〜5について、表1に記載の各配合からなるゴムをニーダーでゴム練りし、ロールでシートにし、170℃、20分間の架橋条件にて通常の方法で作成した。
即ち、ブタジエンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ポリプロピレン及び老化防止剤、架橋剤、シリカ等の所要の添加剤を2軸押出機HTM38(アイベック(株)製)に投入し、190℃の温度で加熱しながら5分間の速度でゴムを動的架橋しながら押し出した。
得られたゴムを通常の方法にて、ゴムシート金型内で加熱し、及びシートに4MPaとなる様に設定して加圧して、1mmの厚さの架橋済みのゴムシート(60mm×300mm)を得た。
【0035】
【表1】
Figure 0004757405
【0036】
表1中、架橋剤までの各配合の数値単位は重量部である。
使用した材料は下記の通りである。
ブタジエンゴム:JSR(株)製 BR01
EPDM:住友化学工業(株)製 エスプレン505
ポリプロピレン:日本ポリケム(株)製 ノバテックBC6
シリカ: 日本シリカ工業(株)製 ニプシルVN3
カーボンブラック:東海カーボン(株)製 シーストS0 N550
老化防止剤(フェノール系:2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)): 大内新興化学(株)製 ノクラックNS−6
架橋剤(過酸化物架橋剤、ジクミルパーオキサイド):日本油脂(株)製 パークミルD
【0037】
(実施例1〜実施例5)
実施例1〜4のゴムシートの配合は全て同じであるが、老化防止剤を浸透させる条件、すなわち、処理温度(℃)及び処理時間(時間)の各条件を表1に記載の様に変えて、老化防止剤を浸透させた。また、実施例5にはポリプロピレンを追加配合し、表1の処理条件とした。
具体的には、実施例1〜5のゴムシートには、以下のようにして老化防止剤を浸透させた。
上記の様に作製した加硫済みゴムシートを、該ゴムシートを埋め込むことができるほどに老化防止剤を充分過剰な量を入れた容器内に埋め込み、表1に記載の各処理温度において、表1に記載の各処理時間、埋め込んだ状態とした後、該容器内から取り出し、本発明の製造方法により作成された各実施例の耐劣化性のゴムを得た。
【0038】
(比較例1〜比較例5)
他方、比較例1〜比較例5は実施例と同じゴム成分及び添加物を使用したゴムであり、比較例1は実施例1〜実施例4と配合が全く同じである。各比較例においては互いにゴム成分の配合及び添加物の配合割合が多少異なる。すなわち、比較例2はブタジエンゴムとEPDMの配合割合のみが比較例1及び実施例1〜4と異なる。比較例3は老化防止剤の配合量が比較例1及び実施例1〜4の3倍量に増量されている点のみが異なる。比較例4は老化防止剤の配合量が比較例1の3倍であり、さらに、架橋剤の配合量も比較例1及び実施例1〜4の1.5倍である点が異なる。比較例5は実施例5と配合が全く同じである。
上記比較例1〜5においては、上記の実施例と同じ、混練り、架橋条件及びゴム金型内での加熱及び加圧条件にて1mm厚さのゴムシートを作製したが、老化防止剤を浸透させる工程は行わなかった。
【0039】
上記実施例1〜実施例5、比較例1〜比較例5のゴムシートを、以下の熱老化試験による硬度測定及び引張試験に関して試験し評価した。その結果を表1中の下欄に示す。表1中、熱老化試験による硬度測定の数値単位は日であり、引張試験の数値単位は%である。
【0040】
(熱老化試験による硬度測定)
熱による酸化劣化を評価するため、各ゴムシ―トを100℃のオーブン内に放置し、オーブンから一日毎に取り出して、高分子計器マイクロハードネステスターMD−1にて硬度を測定し、硬度が5ポイント上昇するのにかかる日数を観察した。
【0041】
(引張試験)
JIS K6251の記載に従い、引張試験を行い、破断時の伸び(%)を測定した。
【0042】
表1に示される様に、実施例1〜実施例5のゴムシ―トは上記の熱老化試験において、硬度が5ポイント上昇するのにかかる日数が、13日〜28日であり、比較例1〜5のゴムシ―トが7〜15日であるのと比べてより長く、より耐劣化性に優れていることが確認できた。
【0043】
また上記引張試験における破断時の伸び(%)も、実施例1〜実施例4のゴムシ―トは340%〜350%であり、比較例1、2、4のゴムシ―トが200%〜340%あるのと比べてより大きく、強度にも優れていることが確認できた。
【0044】
詳細には、実施例4(処理温度50℃で処理時間0.5時間)では熱老化試験における日数は13日、引張試験の結果も350%であり、全く同じ配合のゴムシートであるが、老化防止剤を浸透させる工程を行わなかった点のみが異なる比較例1の同試験結果が、各々7日、320%であるのと比較して、より耐劣化性、強度に優れていた。
【0045】
実施例4よりも処理温度が低いが(処理温度30℃)、処理時間がより長い(処理時間1時間)実施例1においては、熱老化試験の結果が実施例4よりも、さらに優れていた。
【0046】
また、実施例1と処理時間は1時間で同じであるが、より処理温度が高い実施例2(処理温度50℃)及び実施例3(処理温度70℃)では、実施例1の熱老化試験における日数が15日であるのと比べて、実施例2では21日、実施例3では28日とより長くなり、処理温度がより高いほど、より耐酸化劣化性能が優れていることが確認できた。また、実施例2にポリプロピレンを加えた以外は、実施例2と条件が全て同じである実施例5においては、実施例2に比べ、破断時の伸びは小さくなっているものの、熱老化試験における日数が25日であり、実施例2の21日に比べ、長くなっていることが確認できた。
【0047】
一方、比較例2は、ブタジエンゴムとEPDMとの配合比を比較例1とは変化させることにより、熱老化試験における日数は15日と長くすることができたが、上記配合比を変えたために、引張試験の結果が200%と非常に劣ってしまった。
【0048】
比較例3の配合においては、老化防止剤を比較例1の3倍量配合したところ、引張試験の結果は420%であったが、老化防止剤の配合量が多すぎるため、熱老化試験における日数が9日であり、逆に耐酸化劣化性能が非常に劣る結果となった。
【0049】
比較例4の配合においては、老化防止剤を比較例1の3倍量配合し、かつ架橋剤も実施例1〜4の1.5倍量配合したところ、引張試験の結果は340%であったが、老化防止剤の配合量が多すぎるため、熱老化試験における日数が7日であり、逆に耐酸化劣化性能が非常に劣る結果となった。
【0050】
以上より、本発明の製造方法により製造された実施例1〜5のゴムシートは、ゴムシートの性能(機械的特性や疲労特性)を低下させることなく、耐劣化性を有していることが確認できた。
【0051】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明によれば、耐劣化性に優れたポリマーを構成材料に加えたり、または老化防止剤を大量に配合する必要がないため、ゴムまたは熱可塑性エラストマーの配合を変えることなく、即ちゴムまたは熱可塑性エラストマーの物性や性能に影響無く、かつ架橋条件設定にも影響を与えずに、容易に耐酸化劣化性能を付与することができる。従って、本発明によると、耐酸化劣化性に優れ、かつ機械特性や疲労特性にも優れたゴムまたは熱可塑性エラストマーを従来よりも容易に製造することができる。
【0052】
また、本発明によると、架橋反応の終了したゴムまたは熱可塑性エラストマーに老化防止剤を後処理することにより、老化防止剤を予め多量配合した場合の架橋阻害による物性低下を少なくすることができると共に、耐酸化劣化性が特に必要とされる表面に近い部分に効率よく、架橋後であればいつでも、高い酸化防止効果を付与することができる。

Claims (2)

  1. 架橋が終了した後のブタジエンゴムとエチレン−プロピレン−ジエンゴムを主成分とするゴムの処理対象部分を、30〜70℃に加温させた粉末状のフェノール系老化防止剤に0.5〜1時間埋没または浸漬させることにより老化防止剤を浸透させる工程を含むことを特徴とする耐劣化性のゴムまたは熱可塑性エラストマーの製造方法。
  2. 上記架橋には過酸化物架橋剤を用い、上記老化防止剤には2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)を用いている請求項1に記載の耐劣化性のゴムまたは熱可塑性エラストマーの製造方法。
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