JP5194901B2 - 熱可塑性樹脂エラストマー組成物/ゴム積層体の製造方法 - Google Patents

熱可塑性樹脂エラストマー組成物/ゴム積層体の製造方法 Download PDF

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本発明は、熱可塑性樹脂エラストマー組成物/ゴム積層体の製造方法に関し、さらに詳しくは、耐候性と接着性とを両立するようにした熱可塑性樹脂エラストマー組成物/ゴム積層体の製造方法に関する。
熱可塑性樹脂とエラストマーとをブレンドした熱可塑性樹脂エラストマー組成物は、耐空気透過防止性と柔軟性に優れた特性を有していることから、近年では空気入りタイヤのインナーライナーとして使用されるようになっている。しかしながら、熱可塑性樹脂エラストマー組成物は、空気入りタイヤが屋外に暴露される状態で置かれたり、空気を充填した状態で走行中に発生する高温下に晒されたりすると、紫外線や熱、酸素、オゾンなどの影響を受けることにより老化して、クラックが発生する問題があった。そこで熱可塑性樹脂エラストマー組成物の耐老化性を高めるため、組成物中に予め老化防止剤を配合すると、熱可塑性樹脂とエラストマーとの混練中にゴムの焼けが発生するため、所望の物性を得ることができないという問題があった。
この対策として、特許文献1は、熱可塑性樹脂エラストマー組成物からなる層をゴム層と積層するときに、このゴム層に予め老化防止剤を多量に配合しておいて加熱処理することにより、ゴム層中の老化防止剤を熱可塑性樹脂エラストマー組成物層へ移行させることにより、上記のような混練中におけるゴム焼けの問題を解決し、熱可塑性樹脂エラストマー組成物の物性を維持することを可能にしている。しかしながら、この特許文献1の方法では、ゴム層に老化防止剤を多量に配合すると、熱可塑性樹脂エラストマー組成物の耐候性の向上には有効ではあるが、老化防止剤が積層体の界面にブルームすることにより熱可塑性樹脂エラストマー組成物層とゴム層との間の接着性が低下するという問題があった。
国際公開第2005/063482号パンフレット
本発明の目的は、耐候性と接着性とを両立するようにした熱可塑性樹脂エラストマー組成物/ゴム積層体の製造方法を提供することにある。
上記目的を達成する本発明の熱可塑性樹脂エラストマー組成物/ゴム積層体の製造方法は、熱可塑性樹脂とエラストマーとをブレンドした熱可塑性樹脂エラストマー組成物からなる層と老化防止剤を含有するゴム層との少なくとも2層を積層して熱処理を行なう積層体の製造方法において、前記ゴム層の老化防止剤の含有量をゴム100重量部当り0.1〜10重量部にすると共に、前記ゴム層側の温度を、前記熱可塑性樹脂エラストマー組成物層側の温度より、20〜150℃低くする温度差をつけて熱処理を行なうことを特徴とする。
前記ゴム層側の温度は、前記老化防止剤の融点より高くするとよく、この熱処理は、熱可塑性樹脂エラストマー組成物層とゴム層との積層体を予め加硫した後に行なうとよい。また、前記老化防止剤は、アミン系老化防止剤であるとよく、アミン系老化防止剤は、N−フェニル−N′−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N′−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニルナフチルアミン、N,N′−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、6−エトキシ−1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン、アルキル化ジフェニルアミンから選ばれるとよい。
前記熱可塑性樹脂エラストマー組成物中の熱可塑性樹脂(A)とエラストマー(B)との重量比(A/B)は、10/90〜90/10にするとよい。前記熱可塑性樹脂は、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリニトリル系樹脂、ポリメタアクリレート系樹脂、ポリビニル系樹脂、セルロース系樹脂、フッ素系樹脂、イミド系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種にするとよく、前記エラストマーは、ジエン系ゴム及びその水素添加物、オレフィン系ゴム、アクリルゴム、含ハロゲンゴム、シリコンゴム及び熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる少なくとも1種にするとよい。
前記ゴム層を構成するゴムは、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、ポリブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム及びエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体ゴムからなる群から選ばれる少なくとも1種のゴムにするとよい。
上述した製造方法により得られる熱可塑性樹脂エラストマー組成物/ゴム積層体は、空気入りタイヤのインナーライナーとして用いるのが好適である。
本発明の熱可塑性樹脂エラストマー組成物/ゴム積層体の製造方法によれば、ゴム層中の老化防止剤の含有量を、ゴム100重量部当り0.1〜10重量部に制限すると共に、このゴム層と熱可塑性樹脂エラストマー組成物層との積層体の両側に対し、ゴム層側の温度を熱可塑性樹脂エラストマー組成物層側の温度より低くする温度差を与えるように熱処理を行なうことにより老化防止剤の熱可塑性樹脂エラストマー組成物層側への移行を促進する。このため、熱可塑性樹脂エラストマー組成物層とゴム層との間の接着性を低下させないように老化防止剤を熱可塑性樹脂エラストマー組成物層に移行させることができ、耐候性と接着性とを両立する。
本発明の製造方法は、老化防止剤を配合したゴム層と、老化防止剤を配合していない熱可塑性樹脂エラストマー組成物層を積層した熱可塑性樹脂エラストマー組成物/ゴム積層体を形成し、この積層体の両側に対し、ゴム層側の温度を熱可塑性樹脂エラストマー組成物層の温度より低くする温度差をつけて熱処理を行なうことにより、老化防止剤の一部がゴム層から熱可塑性樹脂エラストマー組成物層へと移行するのを促進させる。
熱可塑性樹脂エラストマー組成物/ゴム積層体におけるゴム層は、特に制限されるものではないが、タイヤ用として使用される任意のジエン系ゴムにより構成される。ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、各種スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、各種ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)などを例示することができる。これらは単独又は任意のブレンドとして使用することができる。更にエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体ゴム(EPDM)などを少量成分として使用してもよい。このようにゴム層を構成するゴムは、好ましくは天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム及びエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体ゴムからなる群から選ばれる少なくとも1種のゴムにするとよい。
ゴム層に配合する老化防止剤は、アミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、硫黄系老化防止剤、リン系老化防止剤等から選ばれる少なくとも1種であればよい。なかでも耐候性を向上するため、アミン系老化防止剤が好ましい。アミン系老化防止剤としては、例えば、N−フェニル−2−ナフチルアミン、N−フェニル−1−ナフチルアミン等のN−ナフチルアミン系、4,4′−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、p−(p−トルエン・スルフォニルアミド)−ジフェニルアミン、アルキル化ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系、N,N′−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N′−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N′−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジフェニル−p−フェニレンジアミン等のp−フェニレンジアミン系、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体、6−エトキシ−1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン、ジフェニルアミンとアセトンの反応物等のアミン・ケトン系などを例示することができる。なかでも、アミン系老化防止剤としては、N−フェニル−N′−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N′−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニルナフチルアミン、N,N′−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、6−エトキシ−1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン、アルキル化ジフェニルアミンが好ましい。
老化防止剤の配合量は、ゴム層を構成するゴム100重量部に対し0.1〜10重量部、好ましくは3〜8重量部にするとよい。老化防止剤の配合量が0.1重量部未満の場合、ゴム層から熱可塑性樹脂エラストマー組成物層へ老化防止剤が移行する量が不足し、熱可塑性樹脂エラストマー組成物層の耐候性を向上することができない。また、老化防止剤の配合量が10重量部を超えると、積層体の界面に老化防止剤がブルームし、接着性が低下する。
上述した老化防止剤を配合したゴム層は、老化防止剤を配合していない熱可塑性樹脂エラストマー組成物層に積層させて熱可塑性樹脂エラストマー組成物/ゴム積層体を形成する。この積層体の両側に対しゴム層側の温度を低くし、熱可塑性樹脂エラストマー組成物層の温度を高くする温度差を与える熱処理を行なうことにより、老化防止剤の一部がゴム層から熱可塑性樹脂エラストマー組成物層へ移行するのを促進する。
熱可塑性樹脂エラストマー組成物層側の温度とゴム層側の温度との温度差は、20〜150℃、好ましくは50〜150℃、より好ましくは100〜150℃にする。両層の温度差が20℃より小さいと、老化防止剤の移行が不十分になり熱可塑性樹脂エラストマー組成物層の耐候性を向上することができない。両層の温度差が150℃より大きいと、高温側の熱可塑性樹脂エラストマー組成物が熱劣化する虞がある。
また、ゴム層側の温度は、老化防止剤の融点より高くするとよく、老化防止剤の一部がゴム層から熱可塑性樹脂エラストマー組成物層へと移行するのを促進する。ゴム層側の温度は、老化防止剤の融点より、高くするほど移行しやすくなる。ゴム層側の温度が、老化防止剤の融点より5℃高い温度より低いと、老化防止剤の移行が不十分になる。ただし、ゴム層側の温度が、老化防止剤の融点より150℃高い温度より高いと、熱可塑性樹脂エラストマー組成物層側の温度が高くなりすぎて材料が熱劣化する虞や、老化防止剤が気化し蒸散する等の好ましくない現象が生じる。
このような熱処理を行なう時間は、特に制限されるものではないが、好ましくは10〜60分間、より好ましくは10〜40分間、さらに好ましくは15〜30分間行なうとよい。熱処理の時間が10分間より短いと、ゴム層から熱可塑性樹脂エラストマー組成物層への老化防止剤の移行量が不足する。熱処理の時間が60分間より長くても、老化防止剤の移行量は頭打ちになり生産性が低下する。
この熱処理は、ゴム層と熱可塑性樹脂エラストマー組成物層との積層体の加硫工程の前、加硫工程中又は加硫工程の後のいずれの段階で行なってもよいが、好ましくは、ゴム層と熱可塑性樹脂エラストマー組成物層との積層体を予め加硫した後に熱処理を行なうとよい。ゴム層の表面に老化防止剤が移動しブルームする前に加硫を行なうことにより、ゴム層と熱可塑性樹脂エラストマー組成物層との接着性をより向上することができる。
ゴム層と熱可塑性樹脂エラストマー組成物層を熱処理する方法は、公知の手段を使用することができ、例えば、ヒーター、スチームによる熱交換等を使用して加熱する方法、冷却装置や液体窒素の吹きつけ等の手段を使用したり、冷却剤や冷却ドラムに接触させる方法などによりゴム層側の温度を下げる方法を例示することができる。
本発明で使用する熱可塑性樹脂エラストマー組成物は、熱可塑性樹脂とエラストマーとをブレンドして構成し、溶融混練するときに、老化防止剤を配合しないようにする。老化防止剤が共存しない状態で溶融混練することによりエラストマーが焼け等の不具合を起こすことがない。なお、原材料として使用する熱可塑性樹脂及びエラストマーは、老化防止剤を含まないことが好ましいが、成形加工時に必要な老化防止剤を含んでいてもよい。
熱可塑性樹脂エラストマー組成物において、熱可塑性樹脂(A)とエラストマー(B)との重量比(A/B)は、特に限定されるものではないが、好ましくは10/90〜90/10、より好ましくは20/80〜85/15にするとよい。重量比(A/B)が10/90より小さいと、マトリックスが熱可塑性樹脂である構造をとることができなくなる。また、重量比(A/B)が90/10より大きいと、柔軟性が損なわれてしまう。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂〔例えば、ナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)、ナイロン46(N46)、ナイロン11(N11)、ナイロン12(N12)、ナイロン610(N610)、ナイロン612(N612)、ナイロン6/66共重合体(N6/66)、ナイロン6/66/610共重合体(N6/66/610)、ナイロンMXD6(MXD6)、ナイロン6T、ナイロン6/6T共重合体、ナイロン66/PP共重合体、ナイロン66/PPS共重合体〕及びそれらのN−アルコキシアルキル化物、例えば、ナイロン6のメトキシメチル化物、ナイロン6/610共重合体のメトキシメチル化物、ナイロン612のメトキシメチル化物、ポリエステル系樹脂〔例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、PET/PEI共重合体、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、液晶ポリエステル、ポリオキシアルキレンジイミドジ酸/ポリブチレンテレフタレート共重合体などの芳香族ポリエステル〕、ポリニトリル系樹脂〔例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、(メタ)アクリロニトリル/スチレン共重合体、(メタ)アクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体〕、ポリメタクリレート系樹脂〔例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル〕、ポリビニル系樹脂〔例えば、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルアルコール/エチレン共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PDVC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体、塩化ビニリデン/アクリロニトリル共重合体(ETFE)〕、セルロース系樹脂〔例えば、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース〕、フッ素系樹脂〔例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロルフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフロロエチレン/エチレン共重合体〕、イミド系樹脂〔例えば、芳香族ポリイミド(PI)〕等を好ましく用いることができる。とりわけ、熱可塑性樹脂は、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリニトリル系樹脂、ポリメタアクリレート系樹脂、ポリビニル系樹脂、セルロース系樹脂、フッ素系樹脂、イミド系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種にするとよい。
本発明で使用する熱可塑性樹脂エラストマー組成物を構成するエラストマーとしては、例えば、ジエン系ゴム及びその水添物〔例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、エポキシ化天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR、高シスBR及び低シスBR)、ニトリルゴム(NBR)、水素化NBR、水素化SBR〕、オレフィン系ゴム〔例えば、エチレンプロピレンゴム(EPDM、EPM)、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴム(M−EPM)、ブチルゴム(IIR)、イソブチレンと芳香族ビニル又はジエン系モノマー共重合体、アクリルゴム(ACM)、アイオノマー〕、含ハロゲンゴム〔例えば、Br−IIR、CI−IIR、イソブチレンパラメチルスチレン共重合体の臭素化物(Br−IPMS)、クロロプレンゴム(CR)、ヒドリンゴム(CHR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、塩素化ポリエチレンゴム(CM)、マレイン酸変性塩素化ポリエチレンゴム(M−CM)〕、シリコンゴム〔例えば、メチルビニルシリコンゴム、ジメチルシリコンゴム、メチルフェニルビニルシリコンゴム〕、含イオウゴム〔例えば、ポリスルフィドゴム〕、フッ素ゴム〔例えば、ビニリデンフルオライド系ゴム、含フッ素ビニルエーテル系ゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレン系ゴム、含フッ素シリコン系ゴム、含フッ素ホスファゼン系ゴム〕、熱可塑性エラストマー〔例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、エステル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ボリアミド系エラストマー〕等を好ましく使用することができる。とりわけ、エラストマーは、ジエン系ゴム及びその水素添加物、オレフィン系ゴム、アクリルゴム、含ハロゲンゴム、シリコンゴム及び熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる少なくとも1種にするとよい。
熱可塑性樹脂エラストマー組成物には、上記必須ポリマー成分に加えて、第三成分として相溶化剤などの他のポリマーを混合することができる。他のポリマーを混合する目的は、熱可塑性樹脂とエラストマーとの相溶性を改良するため、材料の成型加工性をよくするため、耐熱性向上のため、コストダウンのため等があり、これに用いられる材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(SBS)、ポリカーボネート(PC)等を例示することができる。
熱可塑性樹脂エラストマー組成物の製造方法は、予め熱可塑性樹脂とエラストマー(ゴムの場合は未加硫物)とを2軸混練押出機等で溶融混練し、連続相(マトリックス)を形成する熱可塑性樹脂中に分散相(ドメイン)としてエラストマーを分散させることによる。エラストマーを加硫する場合には、混練下で加硫剤を添加し、エラストマーを動的加硫させてもよい。また、熱可塑性樹脂又はエラストマーへの各種配合剤(加硫剤を除く)は、上記混練中に添加してもよいが、混練の前に予め混合しておくことが好ましい。熱可塑性樹脂とエラストマーの混練に使用する混練機としては、特に限定はなく、スクリュー押出機、ニーダ、バンバリミキサー、2軸混練押出機等が使用できる。中でも熱可塑性樹脂とエラストマーの混練およびエラストマーの動的加硫には、2軸混練押出機を使用するのが好ましい。更に、2種類以上の混練機を使用し、順次混練してもよい。溶融混練の条件として、温度は熱可塑性樹脂が溶融する温度以上であればよい。また、混練時の剪断速度は2500〜7500sec−1であるのが好ましい。混練全体の時間は30秒から10分、また加硫剤を添加した場合には、添加後の混合時間は15秒から5分であるのが好ましい。
このようにして得られる熱可塑性樹脂エラストマー組成物は、熱可塑性樹脂のマトリクス中にエラストマーが不連続相として分散した構造をとる。かかる状態の分散構造をとることにより、ヤング率を1〜500MPaの範囲に設定し、タイヤ構成部材として適度な剛性を付与することが可能になる。
本発明に係る熱可塑性樹脂エラストマー組成物やゴム層を構成するゴムには、上述した必須成分に加えて、従来から熱可塑性エラストマー組成物やゴム組成物に配合し得る任意の添加剤を用いることができ、例えばカーボンブラックやシリカなどのその他の補強充填剤、加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤、各種オイル、可塑剤などのタイヤ用、その他一般ゴム用に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練、加硫して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
熱可塑性樹脂エラストマー組成物層とゴム層との積層は従来と同様一般的な方法よることができる。例えば、塗布、ラミネート、共押出し等の方法を用いることができる。また、熱可塑性樹脂エラストマー組成物層とゴム層の接着方法は、特に限定するものではなく、例えば接着剤、セメント、直接接着などの任意の方法を使用することができる。熱可塑性樹脂エラストマー組成物を含む層とゴム層は、必ずしも直接接触してなくてもよく、熱処理により老化防止剤がゴム層から熱可塑性樹脂エラストマー組成物に移行できれば両者の間に他の材料から成る層、例えば接着層を介在させて積層してもよい。
上述した製造方法により得られる熱可塑性樹脂エラストマー組成物/ゴム積層体は、空気入りタイヤのインナーライナーとして用いるのが好適である。積層体の熱可塑性樹脂エラストマー組成物は、空気透過防止層として機能し、積層体のゴム層は、空気透過防止層とカーカス層との間のタイゴム又は空気透過防止層の内面を覆うようにした保護ゴム層として機能する。
以下に、実施例を挙げて本発明を説明するが、これにより本発明の範囲が制限を受けるものではない。
熱可塑性樹脂エラストマー組成物層の調製
ポリイソブチレン−p−メチルスチレン共重合体の一部臭素化物(BIMS:エクソンモービルケミカル社製Exxpro89−4):100重量部に、酸化亜鉛:0.3重量部、ステアリン酸亜鉛:1.2重量部、ステアリン酸:0.6重量部を密閉式バンバリーミキサーにて初期温度40℃で5分間混合し、ゴムマスターバッチを調製した。次いで、このゴムマスターバッチをゴムペレタイザーにてペレット化した。得られたゴムペレットを50重量部、ナイロン6,66共重合体(東レ社製アミランCM6041)を13重量部、ナイロン11(アトフィナ社製リルサンBMNO)を25重量部とを2軸混練機にて温度220℃で5分間動的加硫を行い、ペレット化し、熱可塑性樹脂エラストマー組成物を得た。
この熱可塑性樹脂エラストマー組成物と接着層とを共押出しにより成形加工し、熱可塑性樹脂エラストマー組成物の厚さが170μm、接着層の厚さが30μmの熱可塑性樹脂エラストマー組成物層を作製した。なお、接着層の組成は、エポキシ変性スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(ダイセル化学社製エポフレンドAT501)50重量部、スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(クレイトンポリマー社製D1102JS)50重量部、テルペン樹脂(ヤスハラケミカル社製YSレジンD105)50重量部とした。
ゴム層の調製
表1に示す配合からなる6種類のゴム組成物(配合1〜6)を、それぞれ硫黄及び加硫促進剤を除く成分を1リットルの密閉型ミキサーで5分間混練し、165±5℃に達したときに放出してマスターバッチを得た。このマスターバッチに加硫促進剤と硫黄を加えオープンロールで混合し、シート状のゴム層を得た。
熱可塑性樹脂エラストマー組成物/ゴム積層体の作製
上記により得られた熱可塑性樹脂エラストマー組成物層に、6種類のゴム組成物(配合1〜6)からなるゴム層を、表2に示すように積層した10種類の積層体(実施例1〜6、比較例1〜4)を、180℃で10分間プレス加硫した。得られた積層体の厚さは2mmであった。
加硫した10種類の積層体(実施例1〜6、比較例1〜4)を、熱処理の有無、熱処理を行なうときはゴム層側の温度、熱可塑性樹脂エラストマー組成物層側の温度を表2に示すように異ならせて処理した。なお、熱処理の方法は、積層体の熱可塑性樹脂エラストマー組成物層側をヒーターと接触させることにより所定の温度にし、ゴム層側を冷却剤と接触させることにより所定の温度とした。ただし、比較例4は、ゴム層側もヒーターに接触させ所定の温度にした。
得られた10種類の積層体(実施例1〜6、比較例1〜4)の耐候性及び接着性を下記の方法により評価した。
耐候性
先ず、得られた積層体を、JIS K6266のSA法に準拠して、耐候性劣化試験を行なった。耐候性劣化試験は、積層体の熱可塑性樹脂エラストマー組成物層の側を光源(カーボンアーク灯)に向けるように取付け、試験温度は63℃、光照射は連続とし、積層体への水噴霧サイクルは102分毎に水を18分間噴霧した。この耐候性劣化試験を168時間行なった後、劣化試験後の積層体からJIS2号ダンベルを切り出し、定歪み疲労試験を行なった。定歪み疲労試験は、40%の繰返し伸長ひずみを6.7Hzの周期で与え、温度−30℃、繰返し疲労回数50万回の条件で行なった。結果は、ダンベル1本あたりの熱可塑性樹脂エラストマー面に発生した亀裂の数[本]を目視評価し、その数を表2に示した。亀裂の数が少ないほど、耐候性が優れている。
接着性
得られた積層体からJIS2号ダンベルを切り出し、予め伸長部の熱可塑性樹脂エラストマー組成物層にだけ切り込みを入れ、定歪み疲労試験を行なった。定歪み疲労試験は、40%の繰返し伸長ひずみを6.7Hzの周期で与え、温度70℃、繰返し疲労回数30万回の条件で行なった。各積層体についてダンベル10本ずつ定歪み疲労試験を行ない、熱可塑性樹脂エラストマー組成物層が剥離したダンベルの割合(不良率[%])を接着性とし、得られた結果を表2に示した。不良率が小さいほど、接着性が優れている。
Figure 0005194901
なお、表1において使用した原材料の種類を下記に示す。
NR:天然ゴム、RSS #3
SBR:スチレン−ブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol 1502
カーボンブラック:新日化カーボン社製HTC#G
ステアリン酸:日本油脂社製ビーズステアリン酸
アロマ系オイル:昭和シェル石油社製エキストラクト
亜鉛華:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
硫黄:油処理硫黄、鶴見化学工業社製金華印微粉硫黄、150mesh
加硫促進剤:大内新興化学工業社製ノクセラーCZ−G
老化防止剤:N−フェニル−N′−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、大内新興化学工業社製ノクラック6C(融点44℃)
Figure 0005194901

Claims (9)

  1. 熱可塑性樹脂とエラストマーとをブレンドした熱可塑性樹脂エラストマー組成物からなる層と老化防止剤を含有するゴム層との少なくとも2層を積層して熱処理を行なう積層体の製造方法において、前記ゴム層の老化防止剤の含有量をゴム100重量部当り0.1〜10重量部にすると共に、前記ゴム層側の温度を、前記熱可塑性樹脂エラストマー組成物層側の温度より、20〜150℃低くする温度差をつけて熱処理を行なう熱可塑性樹脂エラストマー組成物/ゴム積層体の製造方法。
  2. 前記ゴム層側の温度を、前記老化防止剤の融点より高くする請求項1に記載の熱可塑性樹脂エラストマー組成物/ゴム積層体の製造方法。
  3. 前記熱可塑性樹脂エラストマー組成物層とゴム層との積層体を予め加硫した後に、前記熱処理を行なう請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂エラストマー組成物/ゴム積層体の製造方法。
  4. 前記老化防止剤がアミン系老化防止剤である請求項1,2又は3に記載の熱可塑性樹脂エラストマー組成物/ゴム積層体の製造方法。
  5. 前記アミン系老化防止剤が、N−フェニル−N′−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N′−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニルナフチルアミン、N,N′−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、6−エトキシ−1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン、アルキル化ジフェニルアミンからなる群から選ばれる請求項に記載の熱可塑性樹脂エラストマー組成物/ゴム積層体の製造方法。
  6. 前記熱可塑性樹脂エラストマー組成物中の熱可塑性樹脂(A)とエラストマー(B)との重量比(A/B)が10/90〜90/10である請求項1〜のいずれかに記載の熱可塑性樹脂エラストマー組成物/ゴム積層体の製造方法。
  7. 前記熱可塑性樹脂が、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリニトリル系樹脂、ポリメタアクリレート系樹脂、ポリビニル系樹脂、セルロース系樹脂、フッ素系樹脂、イミド系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記エラストマーがジエン系ゴム及びその水素添加物、オレフィン系ゴム、アクリルゴム、含ハロゲンゴム、シリコンゴム及び熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜のいずれかに記載の熱可塑性樹脂エラストマー組成物/ゴム積層体の製造方法。
  8. 前記ゴム層を構成するゴムが天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、ポリブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム及びエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体ゴムからなる群から選ばれる少なくとも1種のゴムである請求項1〜のいずれかに記載の熱可塑性樹脂エラストマー組成物/ゴム積層体の製造方法。
  9. 請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法により得られる熱可塑性樹脂エラストマー組成物/ゴム積層体をインナーライナーとして用いた空気入りタイヤ。
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