JP3608311B2 - 架橋ゴム組成物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、架橋ゴム組成物の製造方法に関するものである。更に詳しくは、本発明は、エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴムを主成分とするゴム組成物を、有機過酸化物の存在下、熱空気中で架橋する架橋ゴム組成物の製造方法であって、表面処理剤を用いることなく架橋ゴム組成物における表面粘着性の発生を防止し得るという特徴を有する架橋ゴム組成物の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴムは、耐熱性、耐候性、耐オゾン性、耐薬品性などに優れ、広い分野において使用されている。
【0003】
ところで、ゴムの架橋剤として有機過酸化物を用いた架橋ゴム製品は、硫黄加硫製品に比べ、熱老化性に優れる、圧縮永久ひずみが小さい、金属や塗装鈑への汚染性が少ない、架橋時の着色や長期使用後の変色の少ないカラーゴム製品が得られる等の特徴を有しており、従来より自動車用部品、工業用部品、建築用ゴム材、電気絶縁材料等に応用されている。しかし、これら有機過酸化物を用いた架橋ゴム製品の製造方法としては、空気の介在しない熱プレスや射出成形機等の金型内、又は溶融金属塩中などの空気の存在しない雰囲気下で連続架橋を達成する方法が適用されており、熱空気加熱装置、高周波加熱装置、流動床加熱装置のような空気の介在する加熱装置は適用されていなかった。その理由は、従来の技術では酸素存在下、すなわち空気の介在する加熱装置を用いて有機過酸化物架橋を試みた結果、得られる架橋ゴム製品の表面に著しい粘着性を生じるために製品としての価値がないためである。また蒸気缶加熱装置を使用して架橋を行う場合でも加熱源である水蒸気により加硫缶中の空気を置換、除去する必要があり、とくにバッチ式缶加硫では実用上大きな制限を受けていた。
【0004】
こうした架橋ゴム製品表面の粘着防止法として、非架橋成形品の表面を特定の化合物により表面処理した後架橋する方法が知られているが(米国特許4334043号公報、ヨーロッパ特許公開73037号公報等参照。)、表面処理化合物の除去が必要であり、とくに複雑形状品では完全な洗浄が困難であり、また洗浄水の廃水処理問題もあり汎用化されるまでには至っていない。
【0005】
したがって従来、有機過酸化物架橋は酸素存在下で達成することはできず、酸素存在下で有機過酸化物架橋ゴム製品を製造することは不可能であるとされてきた。このことはゴム製品を製造する者にとっては極めて常識的事項であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
かかる現状の下、本発明が解決しようとする課題は、エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴムを主成分とするゴム組成物を、有機過酸化物の存在下、熱空気中で架橋する架橋ゴム組成物の製造方法であって、表面処理剤を用いることなく架橋ゴム組成物における表面粘着性の発生を防止し得るという特徴を有する架橋ゴム組成物の製造方法を提供する点に存するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、下記(A)成分〜(E)成分を含有し、(A)の含有量が50〜95重量%であり、(B)の含有量が50〜5重量%であり(ここで、(A)+(B)=100重量%とする。)、(A)と(B)の合計量100重量部あたりの(C)の含有量が10〜300重量部であり、(A)と(B)の合計量100重量部あたりの(D)の含有量が1〜30重量部であり、かつ(A)と(B)の合計量100重量部あたりの(E)の含有量が10重量部以下であるゴム組成物を成形し、金型を用いることなく、熱空気中で架橋する架橋ゴム組成物の製造方法に係るものである。
(A):エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴム
(B):数平均分子量が700〜4000である液状ポリブタジエン
(C):補強剤及び/又は充填剤
(D):有機過酸化物
(E):プロセスオイル
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の(A)成分は、エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴムである。α−オレフィンとしてはプロピレン、1−ブテン、1−ヘキサン、1−デセン、1−ヘプタンなどがあげられ、非共役ジエンとしては1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネンなどがあげられる。
【0009】
本発明の(B)成分は、数平均分子量が700〜4000である液状ポリブタジエンである。(B)成分の数平均分子量は700〜4000であるが、好ましくは1300〜3000である。該数平均分子量が過小であると架橋ゴム組成物の表面粘着が大となり、一方該数平均分子量が過大であると未加硫ゴム組成物の粘度が高くなり、加工性が悪化する。なお、数平均分子量が700〜4000の範囲にあるポリブタジエンは室温で液状を有する。
【0010】
本発明の(C)成分は、補強剤及び/又は充填剤である。すなわち、(C)成分としては補強剤及び充填剤の両方を用いてもよく、またはその一方のみを用いてもよい。補強剤としては、たとえばカーボンブラック、シリカなどをあげることができる。充填剤としては、たとえば炭酸カルシウム、クレー、タルクなどをあげることができる。補強剤及び充填剤は、二種以上を混合して用いてもよい。
【0011】
本発明の(D)成分は、有機過酸化物である。有機過酸化物としては、パーオキシケタール型、ハイドロパーオキサイド型、ジアルキルパーオキサイド型、ジアシルパーオキサイド型、パーオキシエステル型などいずれも使用することができ、たとえばジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシクメン、ベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ラウロイルパーオキサイドなどがあげられ、使用するゴムの種類、取扱い上の安全性、臭気などを考慮して選択される。
【0012】
本発明の(E)成分は、プロセスオイルである。プロセスオイルとしては、たとえば石油系のプロセスオイルなどをあげることができる。
【0013】
本発明の架橋に供するゴム組成物は、上記の(A)成分〜(E)成分を含有し、(A)の含有量は50〜95重量%、好ましくは70〜95重量%であり、(B)の含有量は50〜5重量%、好ましくは30〜5重量%であり(ここで、(A)+(B)=100重量%とする。)、(A)と(B)の合計量100重量部あたりの(C)の含有量は10〜300重量部、好ましくは50〜150重量部であり、(A)と(B)の合計量100重量部あたりの(D)の含有量は1〜30重量部、好ましくは2〜10重量部であり、かつ(A)と(B)の合計量100重量部あたりの(E)の含有量は10重量部以下であり、架橋ゴム組成物の表面の粘着性を抑制するという観点からは(E)を含有しないことが好ましい。(A)が過少であると耐熱性及び耐候性が悪く、一方(A)が過多であると粘度が上がり、加工性が悪くなる。(B)が過少であると粘度が上がり、加工性が悪くなり、一方(B)が過多であると耐熱性及び耐候性が悪くなる。(C)が過少であると架橋ゴム組成物の強度が低くなり、一方(C)が過多であるとこれも同様に架橋ゴム組成物の強度が低くなる。(D)が過少であると架橋ゴム組成物の硬度及び強度が低くなり、一方(D)が過多であると架橋ゴム組成物の伸びが低くなる。(E)は必須成分ではないが、前記の範囲内で用いることにより、加工性を一層好ましい状態に維持することができる。ただし(E)を過多に用いると架橋ゴム組成物の表面に粘着性を生じる。
【0014】
本発明の架橋に供するゴム組成物には、通常、有機過酸化物架橋時に架橋効率を向上させるための従来より公知の架橋助剤、たとえばp,p′−ジベンゾイルキノンジオキシム、キノンジオキシム、トリアリルシアヌレート、硫黄、エチレンジメタアクリレート、N,N′−m−フェニレンビスマレイミド、トリアリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどを添加してもよい。更に必要に応じて、ゴム業界で公知の他の各種添加剤、たとえば加工助剤、老化防止剤、酸化防止剤、発泡剤、発泡助剤、難燃剤、着色剤、酸化亜鉛、スチアリン酸、酸化カルシウムなどを加えることができる。
【0015】
本発明の架橋に供するゴム組成物は、上記の成分を、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、ミキシングロールなどの混練機を用いて混練することにより得られる。
【0016】
上記のゴム組成物は、所望の形状に成形され、金型を用いることなく、熱空気中で架橋される。架橋の条件としては、たとえば150〜250℃の熱空気中に5〜30分間放置することで、表面粘着のない架橋ゴムを得ることができる。
【0017】
かくして、本発明の方法によれば、空気の介在する各種加熱装置の実用上の使用が可能となり、従来までのような架橋に用いる加熱装置の制約というものがなくなる。本発明はとくに、従来技術では有機過酸化物架橋ゴム製品を製造することができなかった熱空気加熱装置、高周波加熱装置などを用いた連続加硫において、表面粘着のないゴム製品の製造を可能ならしめた業績は大きい。とりわけ成形から架橋処理を連続的に行なう連続加熱装置を用いて有機過酸化物による架橋ゴムの製造を可能とならしめた意義は大なるものである。
【0018】
本発明を用いることにより、ウェザーストリップ、建築用ガスケット、各種シール材、耐熱シートなど有機過酸化物架橋の特徴を生かした各種ゴム製品を得ることができる。
【0019】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明する。
実施例1〜8及び比較例1〜3
表1〜表2に示す(A)、(B)、(C)、(E)、酸化亜鉛、ステアリン酸及び酸化カルシウムを、110℃に調整した1500mlのバンバリーミキサーを用い、ローター回転数60rpmで5分間混練した。その後、8インチのオープンロールを用いて、表1〜表2に示す上記以外の成分並びに比較例2についてのみ住友化学工業社製の加硫促進剤であるソクシノールCZ、ソクシノールBZ、ソクシノールTT、ソクシノールTRAを添加・混練し、コンパウンドを得た。次に、該コンパウンドを220℃×10分間で熱空気中で架橋し、架橋ゴム組成物を得た。架橋ゴム組成物の評価は、JIS K 6301に準拠して行った。加工性は、コンパウンドのムーニー粘度ML1+4 100℃で評価した。結果を表1〜表2に示した。
【0020】
結果から次のことがわかる。本発明の条件を充足する全ての実施例は全ての評価項目において満足すべき結果をしめしている。一方、オイルの量が過多な比較例1及び3は架橋ゴムの表面の粘着性に劣る。また、硫黄架橋をした比較例2は圧縮永久歪性に劣る。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
*1 配合
表記載の成分の他、すべての実施例及び比較例についての共通配合として、酸化亜鉛5重量部、ステアリン酸1重量部及び酸化カルシウム5重量部を用いた。また、比較例2についてのみ、住友化学工業社製の加硫促進剤であるソクシノールCZ1.0重量部、ソクシノールBZ2.0重量部、ソクシノールTT0.5重量部、ソクシノールTRA0.5重量部を用いた。
*2 (A)EPDM−1:住友化学工業社製 エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネン共重合体ゴム(E−512F)
(A)EPDM−2:住友化学工業社製 エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネン共重合体ゴム(E−501A)
*3 (B)LPB:日本石油社製 液状ポリブタジエン B3000、数平均分子量3000、1,2−ビニル結合70%、ホモタイプ
*4 (C)CB:カーボンブラック
*5 (D)DCP:ジクミルパーオキサイド(40%濃縮品)
*6 (E)OIL:出光興産社製「PW−90」
*7 AE−ED:アクリエステルED(三菱レイヨン社製) エチレングリコールジメタクリレート
*8 架橋物物性:220℃×10分間 熱空気中架橋
*9 圧縮永久歪:220℃×15分間 熱空気中架橋、100℃×22時間(25%圧縮)
*10 表面の粘着性:架橋ゴム表面を手で触り観察することにより評価し、その結果を○(粘着性なし)及び×(粘着性あり)で表した
【0024】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明により、エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴムを主成分とするゴム組成物を、有機過酸化物の存在下、熱空気中で架橋する架橋ゴム組成物の製造方法であって、表面処理剤を用いることなく架橋ゴム組成物における表面粘着性の発生を防止し得るという特徴を有する架橋ゴム組成物の製造方法を提供することができた。
Claims (1)
- 下記(A)成分〜(E)成分を含有し、(A)の含有量が50〜95重量%であり、(B)の含有量が50〜5重量%であり(ここで、(A)+(B)=100重量%とする。)、(A)と(B)の合計量100重量部あたりの(C)の含有量が10〜300重量部であり、(A)と(B)の合計量100重量部あたりの(D)の含有量が1〜30重量部であり、かつ(A)と(B)の合計量100重量部あたりの(E)の含有量が10重量部以下であるゴム組成物を成形し、金型を用いることなく、熱空気中で架橋する架橋ゴム組成物の製造方法。
(A):エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴム
(B):数平均分子量が700〜4000である液状ポリブタジエン
(C):補強剤及び/又は充填剤
(D):有機過酸化物
(E):プロセスオイル
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JP27016496A JP3608311B2 (ja) | 1996-10-11 | 1996-10-11 | 架橋ゴム組成物の製造方法 |
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