JP4753329B2 - 熱硬化性樹脂組成物および半導体装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体装置における配線回路基板と半導体素子との間の空隙を封止するために用いられるシート状の熱硬化性樹脂組成物に関する。さらに、本発明は、かかる樹脂組成物を用いて半導体素子をフェイスダウン構造で配線回路基板上に実装する方式による半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近の半導体デバイスの性能向上に伴う要求として、半導体素子をフェイスダウン構造で、配線回路基板に実装する方法(フリップチップ、ダイレクトチップアタッチ方式等)がある。フリップチップ方式においては、互いの線膨張係数が異なる半導体素子と配線回路基板とをダイレクトに電気接続することから、接続部分の信頼性が問題となっている。この対策としては、半導体素子と配線回路基板との空隙に液状樹脂材料を充填し硬化させて樹脂硬化体を形成し、電気接続部に集中する応力を上記樹脂硬化体にも分散させることにより接続信頼性を向上させる方法が採られている。従来の半田バンプを用いたフリップチップ方式における液状材料の充填方法では、まずフリップチップを配線回路基板に実装し半田溶融工程による金属接合を形成した後、半導体素子と配線回路基板との空隙に液状樹脂材料を注入している。上記液状樹脂材料による半導体素子と配線回路基板との間の空隙の充填は、液状樹脂材料の毛細管効果によって行うものであるため、液状樹脂材料の粘度を低い値に設定する必要がある。よって、低粘度を得るために、材料選定の幅が狭まり、低応力効果の高いゴム成分や、信頼性の高いフェノール樹脂等の使用が困難な状況にあった。さらに、上記液状樹脂材料は低い粘度を安定に保つために、超低温(−40℃前後)での保管が必要であることに加えて、上記半導体素子とボートとの空隙への注入においては注射器で行う必要があり、注入ポジション、注入量コントロールが困難である等の問題を抱えている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、半導体素子と配線回路基板および接続用電極に生ずる応力の緩和効果に優れ、半導体素子と配線回路基板との空隙に容易に封止樹脂層を形成することができかつフラックスの洗浄工程を必要としない、フラックス活性を有するシート状の熱硬化性樹脂組成物の提供をその目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、
(1)フェイスダウン構造の半導体パッケージの配線回路基板と半導体素子との間の空隙を封止するために用いる、フラックス活性を有するシート状の熱硬化性樹脂組成物であって、下記一般式(1):
R1 −(COO−CH(CH3 )−O−R2 )n (1)
(式中、nは正の整数であり、R1 は1価以上の有機基であり、R2 は1価の有機基であり、互いに同じであっても異なっていてもよい)
により表される化合物を含有することを特徴とする、シート状の熱硬化性樹脂組成物、
(2)さらに、硬化剤としてフェノール樹脂を含有することを特徴とする、前記(1)記載の熱硬化性樹脂組成物、
(3)前記(1)又は(2)記載の熱硬化性封止用樹脂組成物で封止されてなる半導体装置、
に関する。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明のフラックス活性を有するシート状の熱硬化性樹脂組成物は、フェイスダウン構造の半導体素子の封止に好適に使用されるものである。詳細には、配線回路基板上に、複数の接続用電極部を介してフェイスダウン構造の半導体素子が搭載される半導体装置において、配線回路基板と半導体素子との間の空隙を封止するのに使用される。本発明のフラックス活性を有するシート状の熱硬化性樹脂組成物を配線回路基板と半導体素子との間に介在させ、熱圧着により半導体素子を配線回路基板上に仮固着させ、その後半田溶融を行うことにより半導体素子と配線回路基板との空隙の封止および金属接合を形成させる。
【0006】
これにより、従来技術によるフラックスを用いて半導体素子バンプと配線回路基板電極とを金属接続した後に空隙に封止樹脂を注入するという煩雑な工程と比べて、配線回路基板と半導体素子との樹脂封止および金属接続の工程が簡易となり、製造工程時間の大幅な短縮化が図れる。また、封止樹脂として液状樹脂を用いずに保存性に優れた固形樹脂を用いるため、空隙内に注入する際に生じる種々の問題を回避することができる。さらに、半導体素子と配線回路基板との電気的接続の安定性に優れ、種々の信頼性試験、例えば冷熱サイクル下等で優れた封止信頼性を発揮する。
【0007】
本発明のシート状の熱硬化性樹脂組成物は、フラックス活性剤として、下記一般式(1):
R1 −(COO−CH(CH3 )−O−R2 )n (1)
(式中、nは正の整数であり、R1 は1価以上の有機基であり、R2 は1価の有機基であり、互いに同じであっても異なっていてもよい)
または一般式(2):
−(OCO−R3 −COO−CH(CH3 )−OR4 −O−CH(CH3 ))n − (2)
(式中、nは正の整数であり、R3 およびR4 は2価の有機基であり、互いに同じであっても異なっていてもよい)
のいずれかの化合物を含有することを特徴とする。
【0008】
ここで、フラックス活性とは、半田付けの際に、接合すべき金属表面の酸化膜、有機物等を除去し、加熱中の酸化進行を防止し、溶解半田の表面張力を低下させる能力をいい、フラックス活性剤とは、半導体封止用組成物にフラックス活性を付与する化合物または組成物をいう。
【0009】
本発明のシート状の熱硬化性樹脂組成物に含有されるフラックス活性剤は、カルボン酸類とビニルエーテル化合物との反応により得ることができる。カルボン酸類としては、例えば、酢酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、アクリル酸、イソシアヌル酸、カルボキシル基含有ポリブタジエン等が挙げられ、また上記ビニルエーテル化合物としては、例えば、ブチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル、シクロヘキシル基等を有するビニルエーテル類が挙げられる。
【0010】
上記一般式(1)のR1具体例としては、炭素数1〜6のアルキル基またはアルキレン基、ビニル基、アリル基、フェニル基、フェニレン基、3価以上の芳香環基、C 3 O 3 N 3 (CH 2 CH 2 ) 3 基が挙げられる。上記一般式(1)のR2の具体例としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基が挙げられる。
【0011】
上記一般式(2)のR3 の具体例としては、式(3)〜(6)で示される構造を有する官能基が挙げられる。
【0012】
【化1】
【0013】
(式中、nは正の整数であり、Xは2価の有機基である)
上記一般式(2)のR4 の具体例としては、式(7)〜(9)で示される構造を有する官能基が挙げられる。
【0014】
【化2】
【0015】
(式中、nは正の整数である)
このような化合物は、半導体実装プロセスにおいてフラックス活性を発揮した後にエポキシ樹脂と反応しうるので、フラックス活性剤と硬化剤としての機能とを兼ね備えた材料として好適に用いられる。また、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0016】
本発明のシート状の熱硬化性樹脂組成物における上記フラックス活性剤の配合割合は、半田接続性、耐熱性および耐湿信頼性の観点から、全樹脂量100重量部に対して特に0.1〜20重量部の範囲が好ましく、なかでも0.5〜15重量部、さらには1〜10重量部の範囲が好適に用いられる。
【0017】
本発明の熱硬化性樹脂組成物の主材となる樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フェノキシ樹脂等を挙げることができる。また、耐熱性、加工性、接着性という観点から、エポキシ樹脂が好ましい。
【0018】
かかるエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、テルペン型エポキシ樹脂など1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物であれば何ら限定することなく用いることができる。フラックス活性の向上、接着性、ボイドの低減という観点から、なかでも150℃で0.5Pa・s以下の溶融粘度であるものはより好適に用いられる。
【0019】
また、溶解時に濡れ性が良好な低粘度のものを用いることが好ましく、かかる観点から、式(10)〜(12)で表される構造のエポキシ樹脂が特に好ましい。これらは単独でもしくは2種以上併用してもよい。
【0020】
【化3】
【0021】
また、本発明のシート状の熱硬化性樹脂組成物には、必要によりエポキシ樹脂の硬化剤を配合することができる。このような硬化剤としては、例えば、フェノール樹脂、酸無水物、アミン化合物等が挙げられ、信頼性等の観点から、特にフェノール樹脂が好ましく、なかでも150℃で0.5Pa・s以下の溶融粘度であるものはより好適に用いられ、また、水酸基当量が60〜200のものが好ましく、80〜180のものがより好ましい。
【0022】
かかる硬化剤としてフェノール樹脂を用いた場合、その含有量は、硬化性や耐熱性、耐湿信頼性の観点から、シート状の熱硬化性樹脂組成物中のエポキシ樹脂に対して0.6〜1.4当量が好ましく、0.7〜1.1当量が特に好ましい。
【0023】
本発明のシート状の熱硬化性樹脂組成物における全樹脂の含有量は、半田付け性、流動性、接着性の観点から、シート状の熱硬化性樹脂組成物の40重量%以上が好ましく、60重量%以上がより好ましく、80重量%以上が特に好ましい。
【0024】
本発明のシート状の熱硬化性樹脂組成物に用いられるゴム成分としては、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(NBR)が好適に用いられるが、NBRとともに他の共重合体成分を含んでいてもよい。他の共重合体成分としては、例えば、水添アクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリル酸、アクリル酸エステル、スチレン、メタクリル酸等が挙げられ、なかでも、金属、プラスチックとの接着性が優れる等の点で、アクリル酸、メタクリル酸が好適である。また、上記NBRにおけるアクリロニトリルの含有量は、エポキシ樹脂との相溶性や可撓性付与の観点から、10〜50重量%が好ましく、15〜40重量%がさらに好ましい。本発明のシート状の熱硬化性樹脂組成物の全有機成分中における上記アクリロニトリル−ブタジエン系共重合体の配合割合は、熱硬化性樹脂組成物のシート化が可能であれば特に限定されるものではない。
【0025】
本発明のシート状の熱硬化性樹脂組成物には、上記エポキシ樹脂の硬化剤の他に、エポキシ樹脂の硬化促進剤を配合することもできる。このような硬化促進剤としては、従来からエポキシ樹脂の硬化促進剤と知られている種々の硬化促進剤が使用可能であり、例えば、トリフェニルホスフィン、2−メチルイミダゾール、DBU(1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7)、DBN(1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノネン−5)、4P4B(テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート)等のアミン系、リン系、ホウ素系、リン−ホウ素系等の硬化促進剤が挙げられる。また、保存性、溶解粘度の低下という観点から、これらをマイクロカプセルに封入したものからなる潜在性硬化触媒はより好適に用いられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0026】
本発明のシート状の熱硬化性樹脂組成物には、必要に応じて他の材料(有機材料、無機材料)を加えることもできる。有機材料としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、表面調整剤、酸化防止剤、粘着付与剤等が挙げられ、無機材料としては、アルミナ、シリカ、窒化珪素等の各種充填剤、銅、銀、アルミ、ニッケル、半田等の金属粒子、その他、顔料、染料等が挙げられる。無機材料の混合割合は特に限定されるものではないが、半導体素子の電極と配線回路基板の電極との電気的接合性の観点から、組成物中の85重量%以下が好ましく、80重量%以下がより好ましい。
【0027】
本発明のシート状の熱硬化性樹脂組成物の大きさ(面積)は、搭載される半導体素子の大きさにより適宜に設定され、通常、半導体素子の大きさとほぼ同じに設定することが好ましい。同様に、シート状の熱硬化性樹脂組成物の厚みおよび重量は、搭載される半導体素子の大きさおよび半導体素子に設けられた球状の接続用電極の大きさ、すなわち、半導体素子と配線回路基板との空隙を充填し封止することにより形成される封止樹脂層の占める容積により適宜に設定される。
【0028】
本発明のシート状の熱硬化性樹脂組成物は、例えば、以下のようにして製造することができる。エポキシ樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン系共重合体、上記一般式(1)または(2)で表される化合物の各成分を所定量配合し、これに必要に応じて各種成分、例えば、硬化剤、硬化促進剤、各種充填剤等を所定量配合した組成物を、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等の溶剤に混合溶融し、この混合溶液を離型処理したポリエステルフィルム等の基材フィルム上に塗布する。つぎに、この塗布した基材フィルムを50〜160℃で乾燥させ、トルエン等の溶剤を除去することにより、上記基材フィルム上に目的とするシート状の熱硬化性樹脂組成物を製造することができる。また、他の方法としては、トルエン等の溶剤を用いることなく加熱溶融押し出しすることによっても目的とするシート状の熱硬化性樹脂組成物を製造することができる。
【0029】
本発明のシート状の熱硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物は、例えば、次のようにして製造することができる。すなわち、上記方法により得られたシート状の熱硬化性樹脂組成物を100〜225℃、好ましくは、120〜200℃で、3〜300分間、好ましくは5〜180分間加熱硬化することにより、目的とする硬化物を製造することができる。
【0030】
本発明のシート状の熱硬化性樹脂組成物により製造される半導体装置は、図1に示すように、配線回路基板1の片面に、複数の接続用電極部2を介して半導体素子3が搭載された構造をとり、上記配線回路基板1と半導体素子3との間に封止樹脂層4が形成されている。
【0031】
なお、上記配線回路基板1と半導体素子3とを電気的に接続する上記複数の接続用電極部2は、予め配線回路基板1面に配設されていてもよいし、半導体素子3面に配設されていてもよい。さらには、予め配線回路基板1面および半導体素子3面の双方にそれぞれ配設されていてもよい。
【0032】
配線回路基板1の材質としては、特に限定するものではないが、大別してセラミック基板、プラスチック基板があり、上記プラスチック基板としては、例えばエポキシ基板、ビスマレイミドトリアジン基板、ポリイミド基板等が挙げられる。本発明のフラックス活性を有するシート状の熱硬化性樹脂組成物は、プラスチック基板と、低融点半田による接続用電極部等の組み合わせのように耐熱性の問題で接合温度を高温に設定することができないような場合においても特に限定されることなく好適に用いられる。
【0033】
接続用電極部2は、電極のみでもよく、あるいは電極にジョイントボール等の伝導体が設けられた構造であってもよい。接続用電極部2の材質としては、特に限定するものではないが、例えば、半田による低融点および高融点バンプ、錫バンプ、銀−錫バンプ等が挙げられ、また配線回路基板上の電極部が上記の材質からなるものに対しては金バンプ、銅バンプ等であってもよい。
【0034】
半導体素子3は、特に限定されず、通常使用されるものが使用できる。例えば、シリコン、ゲルマニウム等の元素半導体、ガリウムヒ素、インジウムリン等の化合物半導体等の各種の半導体が使用される。半導体素子3の大きさは、通常、幅2〜20mm×長さ2〜20mm×厚み0.1〜0.6mmに設定される。また、半導体素子3を搭載する配線回路が形成された配線回路基板1の大きさは通常、半導体素子3のサイズに合わせて、幅10〜70mm×長さ10〜70mm×厚み0.05〜3.0mmの範囲に設定される。また、マップタイプの基板(1つの配線回路基板に多くの半導体素子を実装するもの)の場合は、幅及び長さとも40mm以上に設定することができる。そして、溶解した封止樹脂が充填される、半導体素子3と配線回路基板1との間の距離は、通常、5〜100μmである。
【0035】
本発明のシート状の熱硬化性樹脂組成物を用いた半導体装置は、先に述べたように、配線回路基板と半導体素子との間に層状の固形樹脂を介在させてこの固形樹脂を溶融させ、封止樹脂層を形成させることにより製造される。本発明の半導体装置の製法の態様の一例を図面に基づき順を追って説明する。
【0036】
まず、図2に示すように、配線回路基板1上に、本発明のシート状の熱硬化性樹脂組成物5を載置する。ついで、図3に示すようにシート状の熱硬化性樹脂組成物5の上の所定位置に、複数の球状の接続用電極部(ジョイントボール)2が設けられた半導体素子3を載置し、シート状の熱硬化性樹脂組成物5を加熱溶融して溶融状態とし、加圧して半導体素子3の接続用電極部2が溶融状態のシート状の熱硬化性樹脂組成物5を押しのけ、配線回路基板1と接続用電極部2が接触し、かつ半導体素子3と配線回路基板1との間の空隙内に溶融状態の樹脂が充填し、半田リフローによる金属接合を行った後、樹脂を硬化させることにより空隙を封止して封止樹脂層4を形成する。この時半田リフロー方式はリフロー炉を用いた接合方式であっても、チップ搭載と同時に半田融点以上にヒーター部分を加熱し半田溶融を行う接合方式であってもよい。このようにして、図1に示す半導体装置を製造する。
【0037】
なお、上記半導体装置の製法では、複数の球状の接続用電極部(ジョイントボール)2が設けられた半導体素子3を用いた場合について述べたが、これに限定するものではなく、予め配線回路基板1に複数の球状接続用電極部2が配設されたものを用いてもよい。
【0038】
上記半導体装置の製造方法において、シート状の熱硬化性樹脂組成物5を加熱溶融して溶融状態とする際の加熱温度としては、半導体素子3および配線回路基板1の耐熱性および、接続用電極部2の融点、および、シート状の熱硬化性樹脂組成物5の軟化点、耐熱性等を考慮して適宜に設定されるものである。
【0039】
溶融状態のシート状の熱硬化性樹脂組成物を半導体素子3と配線回路基板との間の空隙内に充填する際には、上記のように加圧することが好ましく、その加圧条件としては、接続用電極部(ジョイントボール)2の材質および個数等によって適宜に設定され、具体的には0.1〜50gf/個の範囲に設定されて、好ましくは0.2〜20gf/個の範囲に設定される。
【0040】
【実施例】
実施例および比較例に先立ち、下記に示すエポキシ樹脂、カルボン酸誘導体、フェノール樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、硬化促進剤、無機充填剤を準備した。
<エポキシ樹脂(a1)>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量:185g/eq、液状(室温)粘度:0.1ポイズ以下/150℃)
【0041】
<エポキシ樹脂(a2)>
トリフェノールメタン型エポキシ樹脂(エポキシ当量:170g/eq、軟化点:63℃、粘度:0.8ポイズ/150℃)
【0042】
<フラックス活性剤(b1)>
アジピン酸−ジ−n−プロピルビニルエーテル
【0043】
<フラックス活性剤(b2)>
トリメリット酸−1,2,4−トリ−2−エチルヘキシルビニルエーテル
【0044】
<フラックス活性剤(b3)>
トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート−トリ−n−プロピルビニルエーテル
【0045】
<アクリロニトリル−ブタジエン>
ムーニー粘度:50
結合アクリロニトリル含量:30wt%
【0046】
<フェノール樹脂>
フェノールノボラック樹脂
(水酸基当量:104g/eq、軟化点:60℃、粘度:0.4ポイズ/150℃)
【0047】
<硬化促進剤>
マイクロカプセル化トリフェニルホスフィン(シェル/触媒比:50/50wt%)
【0048】
<無機充填剤>
球状シリカ(平均粒径:0.5μm、最大粒径:1.0μm)
【0049】
以下に実施例および比較例における、半導体装置の評価方法をまとめて示す。
【0050】
(1)初期通電試験および吸湿半田後通電試験
アドバンテスト製デジタルマルチメーター(TR6847)にて、室温および125℃で電気抵抗値を測定し、2バンプ当たりの接続抵抗値が20mmΩ以下の時に、初期通電および吸湿半田後通電を合格と判定し、半導体装置8個当たりの不良品の個数で表した。
【0051】
(2)熱衝撃試験による導通性
熱衝撃装置を用い、半導体装置を−50℃で5分間維持後、125℃で5分間維持する操作を行った。この操作を1000回行った後の半導体装置の導通性(T∽1000∽後の導通性)、および2000回行った後の半導体装置の導通性(T∽2000∽後の導通性)を測定し、半導体装置8個当たりの不良品の個数で表した。導通性の評価方法は、アドバンテスト製デジタルマルチメーター(TR6847)にて、室温および125℃で電気抵抗値を測定し、2バンプ当たりの接続抵抗値が50mmΩ以上となったものを不良品としてカウントした。
【0052】
実施例1〜5および比較例1
表1に示す各成分を、同表に示す割合で配合した組成物をトルエンに混合溶解し、この混合溶液を離型処理したポリエステルフィルム上に塗布した。次に、上記混合溶液を塗布したポリエステルフィルムを120℃で乾燥させ、トルエンを除去することにより、上記ポリエステルフィルム上に目的とする厚み80μmのシート状の熱硬化性樹脂組成物を作製した。
【0053】
このようにして得られた実施例1〜5および比較例1のシート状の熱硬化性樹脂組成物を用い、前述の半導体装置の製法に従って半導体装置を製造した。すなわち、図2に示すように、配線回路基板1(ガラスエポキシ基板厚み:1mm)上にシート状の熱硬化性樹脂組成物5を載置した後、図3に示すように、シート状の熱硬化性樹脂組成物の上の所定の位置に、接続用電極部2(共晶半田:融点183℃、電極高さ:120μm)を設けた半導体素子3(厚み:600μm、大きさ13mm×9mm)を載置した。その後、加熱温度150℃×荷重1.5gf/電極個数×3秒の条件でシート状の熱硬化性樹脂組成物を加熱溶融して、配線回路基板1と半導体素子3との空隙内に溶融状態の樹脂を充填し、その後、半田リフロー、樹脂キュアー(条件150℃×30分)させることにより、図1に示すような空隙が封止樹脂層4で封止された半導体装置を作製した(各実施例、比較例につき8ケずつ作製)。得られた半導体装置について、初期の通電試験を行い、さらに、その半導体装置を30℃60%RHの環境下で168hr吸湿させた後、半田リフロー(Jedecコンディション)を行った後、通電試験を行なった。その結果を表1に示す。その後、サーマルショックテスト(TST:−50℃×5分間および125℃×5分間の繰り返し)を、1000および2000サイクル行った(各例8ケずつ)後に通電試験を行った。その結果を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
表1から、実施例1〜5は、初期通電試験、吸湿半田試験後通電試験、TST1000サイクル後通電試験、TST2000サイクル後通電試験の各試験の全てにおいて、不良が発生していないことが確認された。これに対して、比較例は、初期通電試験あるいはTST2000サイクル後通電試験において不良が発生しているものが確認された。従って、本発明のシート状の熱硬化性樹脂組成物を用いてなる半導体装置が、初期通電や、TSTや吸湿半田等のストレス試験に関して安定した通電を確保していることが確認された。
【0056】
【発明の効果】
本発明のシート状の熱硬化性樹脂組成物は、フェイスダウン構造の半導体装置の半導体素子と配線回路基板間の封止に本発明のシート状の熱硬化性樹脂組成物を用いた際に、半導体素子と配線回路基板間との電気的接続が冷熱サイクル下において安定して得られる半導体装置を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の半導体装置の一例を示す概略断面図である。
【図2】図2は半導体装置の製造工程を示す説明断面図である。
【図3】図3は半導体装置の製造工程を示す説明断面図である。
【符号の説明】
1 配線回路基板
2 接続用電極部
3 半導体素子
4 封止樹脂層
5 熱硬化性樹脂組成物
Claims (3)
- フェイスダウン構造の半導体パッケージの配線回路基板と半導体素子との間の空隙を封止するために用いる、フラックス活性を有するシート状の熱硬化性樹脂組成物であって、下記一般式(1):
R1 −(COO−CH(CH3 )−O−R2 )n (1)
(式中、nは正の整数であり、R1 は1価以上の有機基であり、R2 は1価の有機基であり、互いに同じであっても異なっていてもよい)
により表される化合物を含有することを特徴とする、シート状の熱硬化性樹脂組成物。 - さらに、硬化剤としてフェノール樹脂を含有することを特徴とする、請求項1記載のシート状の熱硬化性樹脂組成物。
- 請求項1又は2記載のシート状の熱硬化性樹脂組成物で封止されてなる半導体装置。
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