以下に、本発明を具体化した実施形態を図面(図1〜図16)に基づいて説明する。
図1〜図10はトラクタに本発明を適用した第1実施形態を示している。図1はトラクタの側面図、図2はトラクタの平面図、図3は作業機用昇降機構の概略側面図、図4は作業機用昇降機構の概略平面図、図5は図2のV−V視側断面図、図6はロータリ耕耘機の概略背面図、図7はトラクタの油圧回路図、図8は制御手段の機能ブロック図、図9は耕耘深さ自動制御のフローチャート、図10は制御ゲインとPTO回転数との関係を示す制御マップの図である。
図1乃至図4に示すように、第1実施形態におけるトラクタ1の走行機体2は、左右一対の前車輪3と同じく左右一対の後車輪4とで支持されている。前記走行機体2の前部に搭載したエンジン5にて後車輪4及び前車輪3を駆動することにより、トラクタ1は前後進走行するように構成される。エンジン5はボンネット6にて覆われる。また、前記走行機体2の上面にはキャビン7が設置され、該キャビン7の内部には、操縦座席8と、かじ取りすることによって前車輪3の操向方向を左右に動かすようにした操縦ハンドル(丸ハンドル)9とが設置されている。キャビン7の外側部には、オペレータが乗降するステップ10が設けられ、該ステップ10より内側で且つキャビン7の底部より下側には、エンジン5に燃料を供給する燃料タンク11が設けられている。
また、図1乃至図4に示すように、前記走行機体2は、前バンパ12及び前車軸ケース13を有するエンジンフレーム14と、エンジンフレーム14の後部にボルトにて着脱自在に固定する左右の機体フレーム16とにより構成される。機体フレーム16の後部には、前記エンジン5の回転を適宜変速して後車輪4及び前車輪3に伝達するためのミッションケース17が連結されている。後車輪4は、ミッションケース17の外側面から外向きに突出するように装着された後車軸ケース18を介して取り付けられている。
図3及び図4に示すように、ミッションケース17の後部上面には、作業機としてのロータリ耕耘機24を昇降動するための油圧式の作業機用昇降機構20が着脱可能に取り付けられている。ロータリ耕耘機24は、ミッションケース17の後部に、一対の左右ロワーリンク21及びトップリンク22からなる3点リンク機構を介して連結される。左右ロワーリンク21の前端側は、ミッションケース17の後部の左右側面にロワーリンクピン25を介して回動可能に連結されている。トップリンク22の前端側は、作業機用昇降機構20の後部のトップリンクヒッチ26にトップリンクピン27を介して連結されている。さらに、ミッションケース17の後側面には、ロータリ耕耘機24にPTO駆動力を伝達するためのPTO軸23が後向きに突出するように設けられている。
ミッションケース17には、エンジン5からの回転動力の一部をPTO軸23に伝達するPTO変速機構70が内蔵されている(図3参照)。PTO変速機構70は、ロータリ耕耘機24の回転伝動系への入口において、回転動力の大きさを無段階又は段階的に調節する(適宜変速させる)ためのものである。
図3、図4及び図7に示すように、油圧式の作業機用昇降機構20には、後述する単動形の昇降制御油圧シリンダ28にて回動させるための一対の左右リフトアーム29が設置されている。進行方向に向かって左側のロワーリンク21とリフトアーム29とは、左リフトロッド30を介して連結されている。進行方向に向かって右側のロワーリンク21とリフトアーム29とは、右リフトロッド31、及び該ロッド31の一部を形成する複動形の傾斜制御油圧シリンダ32、及び該シリンダ32のピストンロッド33とを介して連結されている。
図1に示すように、ロータリ耕耘機24における下リンクフレーム34の前端と左右一対のロワーリンク21とは、下ヒッチピン35aを介して連結されている。トップリンク22の各後端側と上リンクフレーム34の前端側とは、上ヒッチピン34aを介して連結されている。
図1、図2、図5及び図6に示すように、ロータリ耕耘機24は、横長筒状のメインビーム36と、メインビーム36の左右側端部にそれぞれ上端側が連結されたチェンケース37及び軸受板38と、チェンケース37及び軸受板38の下端側に左右両端部が回転自在に軸支された耕耘爪軸39と、耕耘爪軸39に放射状にて着脱可能に取り付けられた複数の耕耘爪40と、耕耘爪40の回転軌跡の上方を覆うように配置された耕耘上面カバー41と、耕耘爪40の回転軌跡の左右側方を覆うように配置された左右耕耘サイドカバー42と、耕耘爪40の回転軌跡の後方を覆うように配置された耕耘リヤカバー43と、メインビーム36に前端側が取り付けられて後方に長く伸びる耕深調節フレーム44と、上リンクフレーム34の後端側と耕深調節フレーム44の前後方向の中間部とをつなぐ伸縮調節可能な耕深調節軸45等を備えている。
下リンクフレーム35はメインビーム36に一体的に連結されている(図2及び図6参照)。トップリンク22は、ターンバックル22aの回転にて伸縮させて、該トップリンク22の長さを変更調節可能となるように構成されている(図3及び図4参照)。上リンクフレーム34の前後方向の中間部は、耕深調節支点軸34bを介してメインビーム36に回動可能に連結されている(図1参照)。耕深調節フレーム44の前端側はメインビーム36に一体的に連結されている。耕深調節ハンドル45a(図1参照)の回転操作にて耕深調節軸45を伸縮させたときには、一対の左右ロワーリンク21及びトップリンク22にて支持されるロータリ耕耘機24が前傾又は後傾姿勢に変化して、耕耘爪40による耕耘深さRDが変更可能に構成されている。
図1、図5及び図6に示すように、メインビーム36の左右中央部には、PTO軸23からの駆動力を入力するためのギヤケース46が配置されている。PTO軸23とギヤケース46の前面側のPTO入力軸46aとは、両端に自在継手が備えられた伸縮自在な伝動軸46bを介して連結されている。PTO軸23からの動力は、ギヤケース46に内蔵されたベベルギヤ(図示せず)、メインビーム36に内蔵された回転軸(図示せず)、チェンケース37に内蔵されたたスプロケット及びチェン(図示せず)等を介して耕耘爪軸39に伝達され、耕耘爪40を図1及び図5において反時計方向に回転させる。
図5及び図6に示すように、走行機体2の左右幅方向に長い耕耘上面カバー41の後端部には、枢着軸47を介して耕耘リヤカバー43の前端側が連結されている。耕耘上面カバー41の上面後部には、後傾姿勢の一対の左右ハンガーフレーム48が立設されている。耕耘リヤカバー43の上面の後端側と左右ハンガーフレーム48とは1対の左右ハンガー機構49を介して上下動可能に連結されている。各ハンガーフレーム48の上端部には、受圧軸体48aが水平軸線(中心線)回りに回動可能に配置されている。
各ハンガー機構49における細長い丸棒形のハンガーロッド50は、受圧軸体48aに水平軸線(中心線)と直交する方向に摺動可能に貫通している。ハンガーロッド50の下端部は、支軸53を介して、耕耘リヤカバー43の後部上面に設けられたブラケット54に回動自在に連結されている(図5参照)。ハンガーロッド50の上端側には下降規制ピン51が設けられている。受圧軸体48aと下降規制ピン51の間のハンガーロッド50には、ドーナツ形の下降規制板52がハンガーロッド50の軸線方向に摺動可能に被嵌されている。また、ハンガーロッド50の下部側(支軸53より上側)には、上昇規制ピン55が配置されている。受圧軸体48aと上昇規制ピン55との間のハンガーロッド50には、ドーナツ形の上下座板56,57を介して、耕耘リヤカバー43に鎮圧力を付与するための鎮圧用圧縮バネ58が被嵌されている。
ロータリ耕耘機24が地面Gから離れた高さに持ち上げられたときには、耕耘リヤカバー43の後端側が枢着軸47の回りに下方側に回動する。すると、下降規制ピン51が下降規制板52に当接して、下降規制板52が受圧軸体48aに当接する。その結果、耕耘リヤカバー43はその後端側を最下降させた姿勢に維持されることになる。
一方、ロータリ耕耘機24を地面Gに降ろして耕耘爪40を着地させたときや耕耘作業中においては、耕耘リヤカバー43の後端側が、耕耘された耕土との接地圧にて枢着軸47回りに上方に回動することになる。また、耕耘リヤカバー43の後端側が枢着軸47回りに上方に回動したときには、上昇規制ピン55及び下座板57を介して鎮圧用圧縮バネ58が圧縮されて、耕耘リヤカバー43の後端側の上向き回動が鎮圧用圧縮バネ58の付勢力にて規制されることになる。これにより、耕耘爪40から耕耘リヤカバー43の後方に排出される耕土量が制限されたり、地面が耕耘リヤカバー43の移動にて均平に均されたりすることになる。
図7はトラクタ1の油圧回路100を示している。該油圧回路100には、エンジン5の回転力により作動する作業機用油圧ポンプ101を備える。作業機用油圧ポンプ101は、作業機用昇降機構20における昇降制御油圧シリンダ28に作動油を供給制御するための上昇制御電磁弁102及び下降制御電磁弁103と、傾斜制御油圧シリンダ32に作動油を供給制御するための傾斜制御電磁弁104とに、分流弁105を介して接続されている。また、油圧回路100には、リリーフ弁や流量調整弁、チェック弁、オイルクーラ、オイルフィルタ等も備えている(図7参照)。
次に、キャビン7内に配置された各種操作手段の構成について説明する。図1及び図2に示すように、キャビン7内にある丸ハンドル型の操縦ハンドル9は、操縦座席8の前方に位置する操縦コラム60上に設けられている。操縦コラム60の右方には、エンジン5の回転数(出力)を調節するためのスロットルレバー117と、走行機体2を制動操作するための左右ブレーキペダル61とが設けられている。操縦コラム60の左方にはクラッチペダル62が配置されている。
操縦座席8の右側コラム上には、ロータリ耕耘機24の高さ位置を手動で変更調節するための作業機昇降レバー63、PTO変速操作手段としてのPTO変速レバー64、走行機体2に対するロータリ耕耘機24の相対的な目標左右傾斜角度を予め設定するための可変抵抗器等からなる傾斜設定器123、及びロータリ耕耘機24の目標耕耘深さRD0を予め設定するための可変抵抗器等からなる耕深設定器126等が配置されている。
PTO変速レバー64は、作業状態に応じてPTO変速機構70の変速段を無段階又は段階的に変速操作するためのものである。傾斜設定器123及び耕深設定器126は、その摘み(指針)の位置を連続的(アナログ的)又は段階的(デジタル的)に変更し得るように構成されている。操縦座席8の左側コラム上には、走行変速レバー65が配置されている。操縦座席8の左側コラムの前方には、デフロックペダル66が配置されている。
次に、図8を参照しながら、ロータリ耕耘機24の耕耘制御(耕耘深さ自動制御及びローリング自動制御)のための構成について説明する。
制御プログラム等を記憶したROM110aと各種データを記憶可能なRAM110bとを備えた制御手段としての耕耘制御コントローラ110は、電源印加用のキースイッチ111を介してバッテリ112に接続されている。キースイッチ111は、エンジン5を始動するためのスタータ113にも接続可能に構成されている。
耕耘制御コントローラ110のROM110aには、昇降制御油圧シリンダ28を駆動させるとき(より詳しくはロータリ耕耘機24の耕耘深さRDの算出時)に用いる制御ゲインGaと後述するPTO回転センサ128の検出値(PTO軸23の回転数ES、以下PTO回転数ESという)との関係を示す関係式又は制御マップが予め記憶されている。第1実施形態のROM110aは特許請求の範囲に記載した記憶手段に相当する。
この場合の関係式としてはGa=A×ES+Bが挙げられる。ここで、Aは比例定数、Bは定数である。かかる関係式は実験等により求められる。また、この関係式を制御マップとした場合を、図10に示している。図10では、PTO回転センサ128の検出値(PTO回転数ES)を横軸に採り、制御ゲインGaを縦軸に採っている。
図10に示すように、第1実施形態では、比例定数Aが負(マイナス)の値になっており、制御ゲインGaとPTO回転数ESとの関係が負の傾きを持つ直線で表されている。すなわち、制御ゲインGaとPTO回転数ESとは、PTO回転数ESが大きくなる(高速になる)ほど制御ゲインGaの値が小さくなるという関係にある。
なお、PTO回転センサ128の検出値(PTO回転数ES)とこれに対応する制御ゲインGaとの対のデータを、テーブルマップとして耕耘制御コントローラ110のROM110aに記憶させるようにしてもよい。
耕耘制御コントローラ110には、エンジン5の回転を制御する電子ガバナコントローラ114が接続されている。電子ガバナコントローラ114には、エンジン5の燃料を調節するガバナ115と、エンジン5の回転数を検出するエンジン回転センサ116とが接続されている。
オペレータがスロットルレバー117を手動操作すると、電子ガバナコントローラ114は、スロットルレバー117の回動位置を検出するスロットルポテンショメータ118の検出情報に基づいて、スロットルレバー117の設定回転数とエンジン5の回転数とが一致するように、スロットルソレノイド119にて燃料調節ラックの位置を自動的に調節する制御を実行する。これにより、エンジン5の回転数は、負荷の変動に拘らず、スロットルレバー117の位置に応じた所定回転数に保持される。
また、耕耘制御コントローラ110には、入力系の各種スイッチ及びセンサ類、例えば前述した傾斜設定器123及び耕深設定器126のほか、走行機体2の左右傾斜角度を検出するための振子式の機体ローリングセンサ120、走行機体2に対するロータリ耕耘機24の相対的な左右傾斜角度を検出するためのポテンショメータ型の作業機ポジションセンサ122、前後四輪3,4の回転速度(走行速度)を検出する車速検出手段としての車速センサ127、リフトアーム29の回動角度を検出するポテンショメータ型のリフト角センサ129、耕耘リヤカバー43の鉛直に対する上下回動角度を検出する耕深検出手段としてのポテンショメータ型のリヤカバーセンサ124、PTO軸23の回転数を検出するPTO回転数検出手段としてのPTO回転センサ128、及びPTO変速機構70における現在の変速段を検出するPTO変速段検出手段としてのPTO変速段センサ130等が接続されている。
機体ローリングセンサ120は、作業機用昇降機構20の上面で且つ操縦座席8の後方の箇所に配置されている(図1〜図4参照)。また、詳細は図示していないが、作業機ポジションセンサ122は、耕耘上面カバー41の上方に位置するメインビーム36の左右中央箇所に配置されている。リフト角センサ129は、作業機用昇降機構20と左リフトアーム29との連結箇所に配置されている(図3及び図4参照)。
耕深検出手段としてのリヤカバーセンサ124は、耕耘上面カバー41の後部上面に配置されている(図2、図5及び図6参照)。リヤカバーセンサ124と耕耘リヤカバー43とは、センサアーム67及びセンサリンク68等を介して連結されている。リヤカバーセンサ124は、例えば低域フィルタ(ローパスフィルタ)等からなるフィルタ部125を介して耕耘制御コントローラ110に接続されている。
さらに、耕耘制御コントローラ110には、出力系の各種電磁弁、すなわち上昇制御電磁弁102、下降制御電磁弁103、傾斜制御電磁弁104、及びPTO変速レバー64の操作位置に対応した変速段となるようにPTO変速機構70を駆動させるための変速制御電磁弁106も接続されている。
耕耘制御コントローラ110は、PTO回転センサ128の検出値(PTO回転数ES)に応じて制御ゲインGaを変更し、この変更された制御ゲインGaとリヤカバーセンサ124の検出値θとに基づいて、上昇制御電磁弁102又は下降制御電磁弁103を切り換えて昇降制御油圧シリンダ28を伸縮駆動させることにより、ロータリ耕耘機24の耕耘深さRDが目標耕耘深さRD0になるように、ロータリ耕耘機24の耕耘深さ自動制御を実行する(詳細な態様は後述する)。
また、耕耘制御コントローラ110は、機体ローリングセンサ120及び作業機ポジションセンサ122の検出情報に基づいて、傾斜制御電磁弁104を切り換えて傾斜制御油圧シリンダ32を伸縮駆動させることにより、ロータリ耕耘機24の左右傾斜角度が傾斜設定器123にて設定された目標左右傾斜角度になるように、ロータリ耕耘機24のローリング自動制御を実行する。
次に、図9に示すフローチャートを参照しながら、第1実施形態におけるロータリ耕耘機24の耕耘深さ制御の一例について説明する。
まず、ロータリ耕耘機24を、ロワーリンク21及びトップリンク22を介してトラクタ1の後側に昇降調節可能に連結してから、トラクタ1のエンジン5を始動し、自動制御スイッチ(図示せず)のON操作により、耕耘深さ自動制御を実行する(スタート)。
スタートに続き、オペレータが耕深設定器126を操作して、ロータリ耕耘機24の目標耕耘深さRD0を設定し、該目標耕耘深さRD0を耕耘制御コントローラ110のRAM110bに記憶させる(ステップS1)。
次いで、耕深設定器126の設定値(目標耕耘深さRD0)と、リフト角センサ129の検出値と、リヤカバーセンサ124の検出値θと、PTO回転センサ128の検出値(PTO回転数ES)とを読み込む(ステップS2)。リフト角センサ129の検出値は、ロータリ耕耘機24の対機体高さ(走行機体2に対するロータリ耕耘機24の相対高さ)を求めるためのものである。
次いで、ステップS2で読み込まれたPTO回転センサ128の検出値(PTO回転数ES)と、耕耘制御コントローラ110のROM110aに予め記憶された関係式又は制御マップとから、制御ゲインGaを求める(ステップS3)。この場合の制御ゲインGaは、PTO回転センサ128の検出値(PTO回転数ES)が小→大(低速→高速)になるに連れて小さな値になる(図10参照)。
ステップS3で制御ゲインGaを算出した後は、この算出された制御ゲインGaとリヤカバーセンサ124の検出値θとから、ロータリ耕耘機24における現在の耕耘深さRD(図1参照)を演算する(ステップS4)。
次いで、ロータリ耕耘機24における現在の耕耘深さRDが耕深設定器126の設定値である目標耕耘深さRD0と一致するか否かを判別する(ステップS5)。現在の耕耘深さRDが目標耕耘深さRD0と一致していないと判断されたときは(S5:NO)、上昇制御電磁弁102又は下降制御電磁弁103のいずれか一方の駆動にて、昇降制御油圧シリンダ28を伸縮駆動させることにより、ロータリ耕耘機24における現在の耕耘深さRDを、目標耕耘深さRD0と一致するように調節・修正する(ステップS6)。その後は、耕耘深さ自動制御の1サイクルが完了しリターンする。
ステップS5に戻り、現在の耕耘深さRDが目標耕耘深さRD0と一致していると判断されたときは(S5:YES)、上昇制御電磁弁102及び下降制御電磁弁103を中立位置に復帰・維持して、昇降制御油圧シリンダ28を停止させる(ステップS7)。その後は、耕耘深さ自動制御の1サイクルが完了しリターンするのである。
以上の制御によると、例えば耕耘作業時のPTO回転数ESが高速であるときは、該PTO回転数ESは、圃場の土質や硬軟度等の圃場条件によって変動する作業負荷の影響を敏感に受けて大きく変動するので、該PTO回転数ESの変動によりロータリ耕耘機24に余計な揺れや衝撃が作用する。このため、リヤカバーセンサ124の検出値θ(検出情報)は、前記揺れや衝撃が原因で生ずるノイズ(外乱)の影響を大きく受けることになる(検出精度が低くなる)。
これに対して、このときの制御ゲインGaは、PTO回転数ES(PTO回転センサ128の検出値)に対応した小さな値となる。換言すると、制御ゲインGaは、ロータリ耕耘機24の耕耘深さRDを算出する際に、リヤカバーセンサ124の検出情報中に入り込んだノイズ(外乱)の影響を小さくするような小さな値となる。
そうすると、耕耘制御コントローラ110は、小さな値の制御ゲインGaとリヤカバーセンサ124の検出値θとによりロータリ耕耘機24の耕耘深さRDを算出し、この算出された耕耘深さRDが目標耕耘深さRD0となるように、昇降制御油圧シリンダ28を伸縮駆動させたり停止させたりするので、リヤカバーセンサ124の検出情報中に含まれるノイズに起因したロータリ耕耘機24のハンチング現象は、なくなるか又は著しく抑制されることになる。すなわち、PTO回転数ESの変動に起因したノイズ(外乱)による悪影響を、このときのPTO回転数ESに見合った制御ゲインGaで補償するから、PTO回転数ES、ひいては圃場の土質や硬軟度等の圃場条件に左右されることなく、高精度な耕耘深さ自動制御を実行できるのである。
ところで、耕耘制御コントローラ110に接続されたPTO変速段センサ130は、PTO変速機構70における現在の変速段を検出するためのものであるが、該現在の変速段の情報からは、PTO回転数ESの大まかな値の範囲を推定することができる。
そこで、第1実施形態における第1の変形例として、PTO変速段センサ130にて検出された変速段の制御情報に応じて制御ゲインGaを変更するように制御してもよい。かかる制御を実行した場合も、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
また、第1実施形態における第2の変形例として、PTO回転数ES(PTO回転センサ128の検出値)が所定回転数以上か、又はPTO変速段センサ130にて検出された変速段が所定の高速段になると、制御ゲインGaを、ロータリ耕耘機24の耕耘深さRDを算出するに際してノイズ(外乱)の影響を小さくするような小さな値に変更するようにしてもよい。これは、PTO回転数ESが高速な場合にロータリ耕耘機24のハンチング現象が起こり易いことに鑑みてなされた構成である。
図11には、PTO変速段センサ130にて検出された変速段が所定の高速段になると制御ゲインGaを変更する場合の例を示している。図11はPTO変速機構の変速段と制御ゲインとの関係を示す図である。
図11に示す変形例では、PTO変速機構70の変速段を所定の高速段(第4段)に昇段させると、制御ゲインGaがGa1からGa2(Ga1>Ga2)に切り替わるように構成されている。このような制御を採用した場合も、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
次に、図12を参照しながら、PTO回転センサ128と車速センサ127との検出情報を制御ゲインGa変更の指針とした第2実施形態について説明する。図12は第2実施形態における耕耘深さ自動制御のフローチャートである。ここで、第2実施形態以降の実施形態において構成及び作用が第1実施形態と変わらないものには、第1実施形態と同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
第2実施形態は、PTO回転センサ128の検出値ES及び車速センサ127の検出値V(走行機体2の車速)と、制御ゲインGaとの関係を示す関係式又は制御マップが、耕耘制御コントローラ110のROM110aに予め記憶されている点で、第1実施形態と相違している。かかる関係式又は制御マップは実験等により求められる。制御ゲインGaとPTO回転数ESとは、PTO回転数ESが大きくなる(高速になる)ほど制御ゲインGaの値が小さくなるという関係にある。また、制御ゲインGaと走行機体2の車速Vとについても、車速Vが大きくなる(高速になる)ほど制御ゲインGaの値が小さくなるという関係にある。
以上の構成において、第2実施形態におけるロータリ耕耘機24の耕耘深さ制御は、例えば次のように実行される。
耕耘深さ自動制御のスタートに続き、オペレータが耕深設定器126を操作して、ロータリ耕耘機24の目標耕耘深さRD0を設定し、該目標耕耘深さRD0を耕耘制御コントローラ110のRAM110bに記憶させる(ステップT1)。
次いで、耕深設定器126の設定値(目標耕耘深さRD0)と、リフト角センサ129の検出値と、リヤカバーセンサ124の検出値θと、PTO回転センサ128の検出値(PTO回転数ES)と、車速センサ127の検出値(車速V)とを読み込んだのち(ステップS2)、PTO回転数ES及び車速Vと、耕耘制御コントローラ110のROM110aに予め記憶された関係式又は制御マップとから、制御ゲインGaを求める(ステップT3)。この場合の制御ゲインGaは、PTO回転数ES及び走行機体2の車速Vが小→大(低速→高速)になるに連れて小さな値になる。
すなわち、第2実施形態では、PTO回転センサ128の検出値ESだけから制御ゲインGaを求めるのではなく、PTO回転センサ128の検出値ESと車速センサ127の検出値Vという2つの指針を用いて制御ゲインGaを算出する点において、第1実施形態と異なっているのである。
制御ゲインGaを算出した後(ステップT4以降)の制御態様は、第1実施形態におけるステップS4以降の制御態様(図9参照)と変わらないので、その詳細な説明を省略する。
以上の制御によると、PTO回転センサ128の検出値ESと車速センサ127の検出値Vという2つの指針に応じて、制御ゲインGaを変更することにより、PTO回転数ESの変動に起因したノイズ(外乱)による悪影響を、このときのPTO回転数ESだけでなく車速Vの影響も加味した制御ゲインGaで補償するので、PTO回転数ESからだけで制御ゲインGaを設定する場合よりも、ロータリ耕耘機24のハンチング現象を効果的に防止することができる。
従って、ロータリ耕耘機24の耕耘深さRDを略一定に保持する耕耘深さ自動制御の性能が向上し、該耕耘深さ自動制御を安定的に実行できるのである。
第2実施形態の変形例として、PTO変速段センサ130にて検出された変速段の制御情報と、車速センサ127の検出値Vとに応じて制御ゲインGaを変更するように制御してもよい。かかる制御を実行した場合も、第2実施形態と同様の作用効果を奏することはいうまでもない。
次に、図13及び図14を参照しながら、PTO回転数ESの変動に起因したノイズの影響を抑制するために不感帯を採用した第3実施形態について説明する。図13は第3実施形態における耕耘深さ自動制御のフローチャート、図14は耕耘深さ自動制御における不感帯変更制御の説明図である。
第3実施形態は、耕耘制御コントローラ110のROM110aに、例えば標準的な幅の不感帯ΔF1、及び広幅の不感帯ΔF2という2種類の不感帯ΔFに関するデータが予め記憶されている点において、第1実施形態と相違している。
ここで、不感帯ΔFとは、ロータリ耕耘機24の耕耘深さRDが目標耕耘深さRD0を中心とする所定の上下幅範囲内にあれば、昇降制御油圧シリンダ28を非駆動とし、耕耘深さRDが前記上下幅範囲から外れていれば、昇降制御油圧シリンダ28を昇降動させて耕耘深さRDを目標耕耘深さRD0に近付ける動作隙間のことをいう。
標準幅の不感帯ΔF1は小さい値(低速な場合)のPTO回転数ESに対応し、広幅の不感帯ΔF2は大きい値(高速な場合)のPTO回転数ESに対応している。なお、不感帯ΔFとPTO回転センサ128の検出値(PTO回転数ES)との関係式又は制御マップを、ROM110aに記憶させるようにしてもよい。
以上の構成において、第3実施形態におけるロータリ耕耘機24の耕耘深さ自動制御は例えば次のように実行される。
耕耘深さ自動制御のスタートに続き、オペレータが耕深設定器126を操作して、ロータリ耕耘機24の目標耕耘深さRD0を設定し、該目標耕耘深さRD0を耕耘制御コントローラ110のRAM110bに記憶させる(ステップE1)。
次いで、耕深設定器126の設定値(目標耕耘深さRD0)と、リフト角センサ129の検出値と、リヤカバーセンサ124の検出値θと、PTO回転センサ128の検出値(PTO回転数ES)とを耕耘制御コントローラ110に読み込む(ステップE2)。
次いで、ステップE2で読み込んだPTO回転数ESに対応する不感帯ΔFを、ROM110aのデータ中から選び出す(ステップE3)。このとき、PTO回転数ESが高速であれば、広幅の不感帯ΔF2が選択される。PTO回転数ESが低速であれば、標準幅の不感帯ΔF1が選択される(図14参照)。
ステップE3で最適な不感帯ΔFを選出した後は、リヤカバーセンサ124の検出値θから、ロータリ耕耘機24における現在の耕耘深さRD(図1参照)を演算する(ステップE4)。
次いで、ロータリ耕耘機24における現在の耕耘深さRDが目標耕耘深さRD0を中心とする不感帯±ΔFの範囲内(RD0−ΔF≦RD≦RD0+ΔF)にあるか否かを判別する(ステップE5)。現在の耕耘深さRDが目標耕耘深さRD0を中心とする不感帯±ΔFの範囲から外れていると判断されたときは(E5:NO)、上昇制御電磁弁102又は下降制御電磁弁103のいずれか一方の駆動にて、昇降制御油圧シリンダ28を伸縮駆動させることにより、ロータリ耕耘機24における現在の耕耘深さRDを、目標耕耘深さRD0に近付けるように調節・修正する(ステップE6)。その後は、耕耘深さ自動制御の1サイクルが完了しリターンする。
ステップE5に戻り、現在の耕耘深さRDが目標耕耘深さRD0を中心とする不感帯±ΔFの範囲内にあると判断されたときは(E5:YES)、上昇制御電磁弁102及び下降制御電磁弁103を中立位置に復帰・維持して、昇降制御油圧シリンダ28を停止させる(ステップE7)。その後は、耕耘深さ自動制御の1サイクルが完了しリターンするのである。
以上の制御によると、例えば耕耘作業時のPTO回転数ESが高速であるときは、リヤカバーセンサの検出値θ(検出情報)が、PTO回転数ESの変動に起因したノイズ(外乱)の影響を大きく受けるものの、高速なPTO回転数ESに対応した広幅の不感帯ΔF2が採用されるので(図14(a)参照)、広幅の不感帯±ΔF2の範囲内(RD0−ΔF2≦RD≦RD0+ΔF2)では、PTO回転数ESの変動に起因したノイズ(外乱)の影響でリヤカバーセンサ124の検出値θが小刻みに変化するのを無視することができる。
これにより、PTO回転数ESの変動に起因したノイズ(外乱)の影響によるロータリ耕耘機24のハンチング現象がなくなるか又は著しく抑制され、その結果、第1実施形態と同様に、PTO回転数ESが高速な場合の耕耘深さ自動制御を適切に実行できる。
また、耕耘作業時のPTO回転数ESが低速であるときは、作業負荷によるPTO回転数ESの変動幅が小さくなるので、このPTO回転数ESの変動に起因したノイズ(外乱)がリヤカバーセンサ124の検出値θに対して与える影響は小さくなる。
これに対して第3実施形態では、低速なPTO回転数ESに対応した標準幅の不感帯ΔF1を採用することで、リヤカバーセンサ124の検出値θに対する不感帯ΔF1の影響を極力小さくしているから、PTO回転数ESが低速な場合の耕耘深さ自動制御の精度を維持できる。
要するに、第3実施形態では、PTO回転センサ128の検出値ESに応じて不感帯ΔFを変更することにより、PTO回転数ESの変動に起因したノイズ(外乱)による悪影響を、このときのPTO回転数ESに見合った不感帯ΔFで補償するから、第1実施形態と同様に、PTO回転数ES、ひいては圃場の土質や硬軟度等の圃場条件に左右されることなく、高精度な耕耘深さ自動制御を実行できるのである。
もちろん、第3実施形態における第1の変形例として、PTO変速段センサ130にて検出された変速段の制御情報に応じて不感帯ΔFを変更するように制御してもよい。かかる制御を実行した場合も、第3実施形態ひいては第1実施形態と同様の作用効果を奏することはいうまでもない。
また、第3実施形態における第2の変形例として、PTO回転数ES(PTO回転センサ128の検出値)が所定回転数以上か、又はPTO変速段センサ130にて検出された変速段が所定の高速段になると、不感帯ΔFを変更するようにしてもよい。
図15には、PTO変速段センサ130にて検出された変速段が所定の高速段になると不感帯ΔFを変更する場合の例を示している。図15はPTO変速機構の変速段と不感帯との関係を示す図である。
図15に示す変形例では、PTO変速機構70の変速段を所定の高速段(第4段)に昇段させると、不感帯ΔFが、標準幅の不感帯ΔF1から高速なPTO回転数ESに見合った広幅の不感帯ΔF2に切り替わるように構成されている。このような制御を採用した場合も、第3実施形態ひいては第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
図16には、PTO回転センサ128と車速センサ127との検出情報を不感帯ΔF変更の指針とした第4実施形態を示している。図16は第4実施形態における耕耘深さ自動制御のフローチャートである。
第4実施形態は、PTO回転センサ128の検出値ES及び車速センサ127の検出値V(走行機体2の車速)と、不感帯ΔFとの関係を示す関係式又は制御マップが、耕耘制御コントローラ110のROM110aに予め記憶されている点で、第3実施形態と相違している。かかる関係式又は制御マップは実験等により求められる。
不感帯ΔFとPTO回転数ESとは、PTO回転数ESが大きい(高速な)ほど不感帯ΔFが広幅になるという関係にある。また、不感帯ΔFと走行機体2の車速Vとについても、車速Vが大きい(高速な)ほど不感帯ΔFが広幅になるという関係にある。その他の構成は第3実施形態と同様である。
以上の構成において、第4実施形態におけるロータリ耕耘機24の耕耘深さ自動制御は例えば次のように実行される。
耕耘深さ自動制御のスタートに続き、オペレータが耕深設定器126を操作して、ロータリ耕耘機24の目標耕耘深さRD0を設定し、該目標耕耘深さRD0を耕耘制御コントローラ110のRAM110bに記憶させる(ステップP1)。
次いで、耕深設定器126の設定値(目標耕耘深さRD0)と、リフト角センサ129の検出値と、リヤカバーセンサ124の検出値θと、PTO回転センサ128の検出値(PTO回転数ES)と、車速センサ127の検出値(車速V)とを読み込んだのち(ステップP2)、PTO回転数ES及び車速Vと、耕耘制御コントローラ110のROM110aに予め記憶された関係式又は制御マップとから、耕耘深さ自動制御のための不感帯ΔFを求める(ステップP3)。この場合の不感帯ΔFは、PTO回転数ES及び走行機体2の車速Vが小→大(低速→高速)になるに連れて大きな値になる。
すなわち、第4実施形態では、PTO回転センサ128の検出値ESだけから不感帯ΔFを求めるのではなく、PTO回転センサ128の検出値ESと車速センサ127の検出値Vという2つの指針を用いて不感帯ΔFを求める点において、第3実施形態と異なっているのである。
不感帯ΔFを求めた後(ステップP4以降)の制御態様は第3実施形態におけるステップE4以降の制御態様(図13参照)と変わらないので、その詳細な説明を省略する。
以上の制御によると、PTO回転センサ128の検出値ESと車速センサ127の検出値Vという2つの指針に応じて、不感帯ΔFを変更することにより、PTO回転数ESの変動に起因したノイズ(外乱)による悪影響を、このときのPTO回転数ESだけでなく車速Vの影響も加味した不感帯ΔFで補償するので、PTO回転数ESからだけで不感帯ΔFを設定する場合よりも、ロータリ耕耘機24のハンチング現象を効果的に防止することができる。
従って、この場合も、ロータリ耕耘機24の耕耘深さRDを略一定に保持する耕耘深さ自動制御の性能が向上し、該耕耘深さ自動制御を安定的に実行できるのである。
いうまでもないが、第4実施形態の変形例として、PTO変速段センサ130にて検出された変速段の制御情報と、車速センサ127の検出値Vとに応じて不感帯ΔFを変更するように制御してもよい。
本発明は、前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化することができる。例えば本発明に係る記憶手段としては、ROM110a以外に、例えば記憶内容を書き換え得るEEPROM等の不揮発性メモリであってもよい。
その他、各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。