以下、本発明の実施の形態を、作業車両としての農作業用トラクタに適用した場合の図面について説明する。図1はトラクタの側面図、図2は同平面図、図3は油圧式の作業機用昇降機構の側面説明図、図4は同平面説明図、図5は図2のロータリ耕耘機のV−V線矢視側断面図、図6は同背面説明図、図7はトラクタの油圧回路図、図8は制御手段の機能ブロック図、図9は制御ゲイン適応制御のフローチャート、図10は耕耘深さ自動制御のフローチャート、図11は耕耘機を上昇させたときの耕耘機の対本機高さと経過時間との関係を表した線図、図12は耕耘機の耕耘深さ制御速度を演算するための制御ゲインと耕耘機の重量との関係(マップ)を表した線図である。
図1乃至図4に示す如く、作業車両としてのトラクタ1は、走行機体2を左右一対の前車輪3と同じく左右一対の後車輪4とで支持し、前記走行機体2の前部に搭載したエンジン5にて後車輪4及び前車輪3を駆動することにより、前後進走行するように構成される。エンジン5はボンネット6にて覆われる。また、前記走行機体2の上面にはキャビン7が設置され、該キャビン7の内部には、操縦座席8と、かじ取りすることによって前車輪3を左右に動かすようにした操縦ハンドル(丸ハンドル)9とが設置される。キャビン7の外側部には、オペレータが乗降するステップ10が設けられ、該ステップ10より内側で且つキャビン7の底部より下側には、エンジン5に燃料を供給する燃料タンク11が設けられている。
また、図1乃至図4に示されるように、前記走行機体2は、前バンパ12及び前車軸ケース13を有するエンジンフレーム14と、エンジンフレーム14の後部にボルトにて着脱自在に固定する左右の機体フレーム16とにより構成される。機体フレーム16の後部には、前記エンジン5の回転を適宜変速して後車輪4及び前車輪3に伝達するためのミッションケース17が連結されている。この場合、後車輪4は、前記ミッションケース17に対して、当該ミッションケース17の外側面から外向きに突出するように装着された後車軸ケース18を介して取付けられている。
図3及び図4に示されるように、前記ミッションケース17の後部における上面には、作業機としてのロータリ耕耘機24を昇降動するための油圧式の作業機用昇降機構20が着脱可能に取付けられている。ロータリ耕耘機24は、ミッションケース17の後部に、一対の左右ロワーリンク21及びトップリンク22からなる3点リンク機構を介して連結される。左右ロワーリンク21の前端側を、ミッションケース17の後部の左右側面にロワーリンクピン25を介して回動可能に連結する。トップリンク22の前端側は、作業機用昇降機構20の後部のトップリンクヒッチ26にトップリンクピン27を介して連結する。さらに、ミッションケース17の後側面に、前記ロータリ耕耘機24にPTO駆動力を伝達するためのPTO軸23が後向きに突出するように設けられている。
図3及び図4及び図7に示されるように、油圧式の作業機用昇降機構20には、後述する単動形の昇降制御油圧シリンダ28にて回動させるための1対の左右リフトアーム29が設置されている。進行方向に向かって左側のロワーリンク21とリフトアーム29とが、左リフトロッド30を介して連結されている。進行方向に向かって右側のロワーリンク21とリフトアーム29とは、右リフトロッド31、及びそのロッド31の一部を形成する複動形の傾斜制御油圧シリンダ32、及びそのシリンダ32のピストンロッド33とを介して連結されている。
図1に示すように、ロータリ耕耘機24における下リンクフレーム34の前端と左右一対のロワーリンク21とが、下ヒッチピン35aを介して連結され、トップリンク22の各後端側と上リンクフレーム34の前端側とが、上ヒッチピン34aを介して連結されている。
図1、図2、図5及び図6に示すように、ロータリ耕耘機24は、横長筒状のメインビーム36と、メインビーム36の左右側端部にそれぞれ上端側が連結されたチェンケース37及び軸受板38と、チェンケース37及び軸受板38の下端側に左右両端部が回転自在に軸支された耕耘爪軸39と、耕耘爪軸39に放射状にて着脱可能に取付く複数の耕耘爪40と、耕耘爪40の回転軌跡の上方を覆うように配置された耕耘上面カバー41と、耕耘爪40の回転軌跡の左右側方を覆うように配置された左右耕耘サイドカバー42と、耕耘爪40の回転軌跡の後方を覆うように配置された耕耘リヤカバー43と、メインビーム36に前端側が取付けられて後方に長く伸びる耕深調節フレーム44と、上リンクフレーム34の後端側と耕深調節フレーム44の前後方向の中間部とに連結された伸縮調節可能な耕深調節軸45等からなる。
なお、下リンクフレーム35はメインビーム36に一体的に連結され(図2及び図6参照)。トップリンク22は、ターンバックル22aの回転にて伸縮させて、そのリンク22の長さを変更調節可能となるように構成されている(図3及び図4参照)。上リンクフレーム34の前後方向の中間部は、耕深調節支点軸34bを介してメインビーム36に連結されている(図1参照)。耕深調節フレーム44の前端側をメインビーム36に連結する。耕深調節ハンドル45aの回転操作にて耕深調節軸45を伸縮させたときには、ロワーリンク21及びトップリンク22にて支持されるロータリ耕耘機24が前傾姿勢または後傾姿勢に変化して、耕耘爪40による耕耘深さが変更可能に構成されている。
図1、図5及び図6に示されるように、メインビーム36の左右中央部には、PTO軸23からの駆動力を入力するためのギヤケース46が配置されている。PTO軸23と、ギヤケース46の前面側のPTO入力軸46aとを、両端に自在継手が備えられた伸縮自在な伝動軸46bを介して連結する。PTO軸23からの動力が、ギヤケース46に内蔵したベベルギヤ(図示省略)、メインビーム36に内蔵した回転軸(図示省略)、チェンケース37に内蔵したスプロケット及びチェン(図示省略)等を介して耕耘爪軸39に伝えられ、耕耘爪40を図1及び図5において反時計方向に回転させることになる。
図5及び図6に示されるように、耕耘上面カバー41の後端部には、枢着軸47を介して耕耘リヤカバー43の前端側が連結されている。走行機体1の幅方向に長い耕耘上面カバー41の上面の後部には、後傾姿勢の一対の左右ハンガーフレーム48が立設されている。耕耘リヤカバー43の上面の後端側と左右ハンガーフレーム48とは1対の左右ハンガー機構49を介して上下動可能に連結されている。各ハンガーフレーム48の上端部には、受圧軸体48aが水平軸線(中心線)回りに回動可能に配置されている。
各ハンガー機構49における細長い丸棒形のハンガーロッド50は、受圧軸体48aに水平軸線(中心線)と直交する方向に摺動可能に貫通しており、図5に示されるように、ハンガーロッド50の下端部は、支軸53を介して、耕耘リヤカバー43の後部上面のブラケット54に回動自在に連結されている。ハンガーロッド50の上端側には、下降規制ピン51が設けられ、受圧軸体48aと下降規制ピン51の間のハンガーロッド50には、ドーナツ形の下降規制板52がハンガーロッド50の軸線方向に摺動可能に被嵌されている。また、ハンガーロッド50の下部側(支軸53より上側)には、上昇規制ピン55が配置され、受圧軸体48aと上昇規制ピン55との間のハンガーロッド50には、ドーナツ形の上下座板56,57を介して、耕耘リヤカバー43に鎮圧力を付与するための鎮圧用圧縮バネ58が被嵌されている。
この構成により、ロータリ耕耘機24が地表面から離れた高さに持上げられたときには、耕耘リヤカバー43の後端側が枢着軸47回りに下方側に回動し、下降規制ピン51が下降規制板52に当接し、下降規制板52が受圧軸体49に当接し、耕耘リヤカバー43がこの後端側を最下降させた姿勢に維持されることになる。一方、ロータリ耕耘機24が耕地上面に降ろされて、耕耘爪40が着地しているときや、耕耘作業中では、耕耘リヤカバー43の後端側が、耕耘された耕土との接地圧にて枢着軸47回りに上方に回動することになる。また、耕耘リヤカバー43の後端側が枢着軸47回りに上方に回動したときには、上昇規制ピン55及び下座板57を介して鎮圧用圧縮バネ58が圧縮されて、耕耘リヤカバー43の後端側の上方への回動が鎮圧用圧縮バネ58の付勢力にて規制されることになる。そのため、耕耘爪40から耕耘リヤカバー43の後方に排出される耕土量が制限されたり、耕土表面が耕耘リヤカバー43の移動にて均平に均されることになる。
図7は本実施形態のトラクタ1の油圧回路100を示し、エンジン5の回転力により作動する作業機用油圧ポンプ101を備える。作業機用油圧ポンプ101は、作業機用昇降機構20における昇降制御油圧シリンダ28に作動油を供給制御するための電磁比例弁構造の上昇制御電磁弁102及び下降制御電磁弁103と、傾斜制御油圧シリンダ32に作動油を供給制御するための傾斜制御電磁弁104とに、分流弁105を介して接続している。昇降制御油圧シリンダ28の作動油の圧力を電気的信号に変換して検出するためのダイヤフラム式油圧センサ106と、昇降制御油圧シリンダ28の作動油の温度を電気的信号に変換して検出するための熱電対式油温センサ107とを備える。この油圧回路100には、図7に示すように、リリーフ弁や流量調整弁、チェック弁、オイルクーラ、オイルフィルタ等を備えている。
次に、本実施形態のロータリ耕耘機24の耕耘制御(左右方向の傾斜角度制御、耕耘爪40の耕耘深さ制御)について説明する。図8は、ロータリ耕耘機24の耕耘制御手段の機能ブロック図であり、制御プログラムを記憶したROMと各種データを記憶したRAMとを備えたマイクロコンピュータ等の耕耘制御コントローラ110は、電源印加用キースイッチ111を介してバッテリ112に接続される。キースイッチ111は、エンジン5を始動するためのスタータ113に接続される。
また、図8に示されるように、耕耘制御コントローラ110には、エンジン5の回転を制御する電子ガバナコントローラ114が接続されている。電子ガバナコントローラ114には、エンジン5の燃料を調節するガバナ115と、エンジン5の回転数を検出するエンジン回転センサ116とが接続される。ガバナ115に設けた燃料調節ラック(図示省略)が、手動操作するスロットルレバー117にて位置調節される。一方、スロットルレバー117の回動位置をスロットルポテンショメータ118にて検出し、その検出値に基づいて、エンジン5の回転数が設定されたとき、電子ガバナコントローラ114からの信号にてスロットルレバー117の設定回転数とエンジン5の回転数が一致するように、ガバナ115の燃料調節ラックが、スロットルソレノイド119を介して自動的に位置調節され、負荷変動などによってエンジン5の回転が変化するのを防ぐ、換言すると、負荷の変動に拘らずエンジン5の回転数が略一定回転を保持するように構成されている。
さらに、耕耘制御コントローラ110には、図8に示すように、入力系の各種センサ及びスイッチ類、即ち、トラクタ1の左右方向の傾斜角を検出する振子式のローリングセンサ120と、トラクタ1が左右方向に傾動開始したときの角速度を検出するガスレート式のローリングジャイロセンサ121と、トラクタ1に対するロータリ耕耘機24の相対的な左右方向の傾斜角を検出するポテンショメータ型の作業機ポジションセンサ122と、トラクタ1に対するロータリ耕耘機24の左右方向の相対傾斜角をオペレータが設定する傾斜設定ダイヤル123と、耕耘爪40の耕耘深さ変動にて変化する耕耘リヤカバー43の回動角度を検出するポテンショメータ型のリヤカバーセンサ124と、リヤカバーセンサ124の出力から限定された帯域の信号出力を取出すローパスフィルタまたはノッチフィルタ等のフィルタ125と、耕耘爪40の耕耘深さをオペレータが設定する耕深設定ダイヤル126と、前後車輪3,4の回転速度(走行速度)を検出するための車速センサ127と、油圧センサ106と、リフトアーム29の回動角度を検出するポテンショメータ型のリフト角センサ129と、ロワーリンク21の歪を検出する歪ゲージ型のリンク歪センサ130と、ロワーリンク21を本機側に連結するためのロワーリンクピン25の支持荷重を検出する感圧ダイオード型のピン感圧センサ131と、トラクタ1の前後方向の傾斜角を検出する振子式のピッチングセンサ132が接続されている。
耕耘制御コントローラ110には、図8に示すように、出力系の各種電磁弁、即ち、上昇制御電磁弁102と、下降制御電磁弁103と、傾斜制御電磁弁104とが接続されている。そして、上昇制御電磁弁102または下降制御電磁弁103のいずれかを切換えて、昇降制御油圧シリンダ28を作動させ、耕耘爪40の耕耘深さが耕深設定ダイヤル126の耕耘深さ設定値になるように、耕耘爪40の耕耘深さを自動的に制御するための耕耘深さ自動制御が実行されることになる。一方、ローリングジャイロセンサ121の検出結果と、ローリングセンサ120の検出結果に基づき、傾斜制御電磁弁104を切換えて、ロータリ耕耘機24の左右方向の傾斜角を自動的に制御する傾斜角自動制御が実行されることになる。
本実施形態では、図1及び図2及び図8に示されるように、運転部(キャビン)7内の操縦座席8の前方の床板59から突出する操縦コラム60上に丸ハンドル型の操縦ハンドル9が配置され、操縦コラム60より右方にスロットルレバー117と左右ブレーキペダル61とが配置されている。また、操縦コラム60より左方にクラッチペダル62が配置されている。操縦座席8の右側コラム上には、作業機昇降レバー63と、PTO変速レバー64と、傾斜設定ダイヤル123と、耕深設定ダイヤル126とが配置されている。操縦座席8の左側コラム上には走行変速レバー65が配置されている。操縦座席8の左側コラムの前にはデフロックペダル66が配置されている。操縦座席8の後方側で、作業機用昇降機構20の上面側には、ローリングセンサ120と、ローリングジャイロセンサ121と、ピッチングセンサ132とが配置されている。また、図2及び図5に示されるように、耕耘上面カバー41の後部の上面には、リヤカバーセンサ124が配置されている。耕耘リヤカバー43と、リヤカバーセンサ124とを、センサアーム67及びセンサリンク68等を介して連結する。図3及び図4に示されるように、リンク歪センサ130をロワーリンク21の側面に貼り付ける。また、ピン感圧センサ131を、ミッションケース17のロワーリンクピン25設置部に配置する。
次に、図11及び図12を参照して、耕耘機24の昇降態様を説明する。例えば往復移動する耕耘作業での1行程が終わって圃場の枕地に到達した場合、または耕耘作業が完了した場合、または圃場間の移動に際して路上走行を開始する場合、作業機昇降レバー63をオペレータが上げ操作したときに、上昇制御電磁弁102が切換わり、昇降制御油圧シリンダ28に作動油が供給されて、昇降制御油圧シリンダ28が上昇側に作動し、耕耘機24を地上(圃場の枕地で方向転換が可能な旋回高さ、または路上走行が可能な高さ等)に持上げることになる。
一方、例えばトラクタ1が耕耘作業を開始する位置に移動した場合、作業機昇降レバー63をオペレータが下げ操作したときに、下降制御電磁弁103が切換わり、昇降制御油圧シリンダ28内の作動油をミッションケース17に戻し、昇降制御油圧シリンダ28を下降側に作動させ、耕耘機24を耕耘高さに下ろして、耕耘爪40を地面に着地させることになる。そして、耕耘爪40がPTO軸23からの動力によって駆動され、耕耘作業を開始した場合、リヤカバーセンサ124を耕耘制御コントローラ110に読み込み、耕耘爪40の耕耘深さを耕深設定ダイヤル126値と一致させるように、耕耘深さ自動制御が実行される。
耕耘深さ自動制御が実行された場合、図11に示されるように、耕耘機24を上昇させたときの耕耘機24の対本機高さHvと経過時間Tとの関係は、耕耘機24の対本機高さHvを縦軸に採り、経過時間Tを横軸に採ってみると、図10に実線で示される細長い(幅狭)S字形の曲線であり、且つ時間Tの経過につれて対本機高さHvの増大の割合(二次曲線に対する接線の角度)が大きくなるように比例変化する二次曲線と、時間Tの経過につれて対本機高さHvが比例して増大する一次直線(最も上昇速度が速い区間)と、時間Tの経過につれて対本機高さHvの増大の割合(二次曲線に対する接線の角度)が小さくなるように比例変化する二次曲線とで表される。即ち、耕耘機24の対本機高さが低い現在高さ付近と、耕耘機24の対本機高さが高い目標高さ(耕深設定ダイヤル126値)付近のときには、上昇作動時間Tの経過に対して耕耘機24の対本機高さHvの変化率が小さい。一方、耕耘機24が現在高さから目標高さ(耕深設定ダイヤル126値)に上昇する途中の耕耘機24の対本機高さHvのときには、上昇作動時間Tの経過に対して耕耘機24の対本機高さHvの変化率が大きい。
一方、耕耘制御コントローラ110からの上昇指令に対して上昇制御電磁弁102の開度が同一の場合、図11の実線で表されたときの耕耘機24の重量に比べて、耕耘機24の重量が大きいときには、図11の二点鎖線で表されるように、経過時間Tに対して耕耘機24の対本機高さHvの変化率が低くなり(二点鎖線の傾斜角が、実線で表した中間の重さの傾斜角θよりも小さい)、図11の実線のときに比べて耕耘機24の上昇動作が愚鈍になる(下降動作が愚鈍になる)。また、図11の実線で表されたときの耕耘機24の重量に比べて、耕耘機24の重量が小さいときには、図11の一点鎖線で表されるように、経過時間Tに対して耕耘機24の対本機高さHvの変化率が高くなり(一点鎖線の傾斜角が、実線で表した中間の重さの傾斜角θよりも大きい)、図11の実線のときに比べて耕耘機24の上昇動作が過敏になる(下降動作が愚鈍になる)。
上述のように、耕耘機24の上昇動作速度は、上昇制御電磁弁102を増速側または減速側に作動制御するから、耕耘機24の重量変化に関係なく、略一定に維持できることになる。これに対し、昇降制御油圧シリンダ28が単動構造であるから、耕耘機24の下降動作速度を制御する場合、耕耘機24が最軽量(下降動作が愚鈍になる)のときの耕耘機24の下降速度を基準にすることにより、下降制御電磁弁103を減速側に作動制御して、耕耘機24の下降動作速度を略一定に維持できることになる。
そこで、その耕耘機24の重量変化の影響を打ち消すため、図12に示されるように、耕耘機24の重量の増大につれて制御ゲインGv(耕耘爪40の耕耘深さ制御の作動速度を演算するための比例定数)が比例して増大するように、耕耘機24の重量Dvに比例して変化する一次直線にて表される制御ゲインGvのパターン(マップ)または数式の少なくともいずれか一方または両方を耕耘制御コントローラ110のRAMに記憶させる。
次に、制御速度適応制御のフローチャート(図9)を参照しながら、ロータリ耕耘機24の耕耘深さ制御を実行するための昇降制御油圧シリンダ28の作動速度を決定する制御態様を説明する。
ロータリ耕耘機24を、ロワーリンク21及びトップリンク22を介してトラクタ1の後側に昇降可能に連結し、トラクタ1のエンジン5が始動され、自動制御作動(図示しない自動制御スイッチのON操作)中は、車速センサ127とリフト角センサ129値とが読み込まれる(S1)。そして、トラクタ1が一定場所に停止し、且つ耕耘機24が地上に大きく持上げられた上昇位置(少なくとも耕耘爪40が地面から離れた高さ)に上昇しているか否かを判断する(S2)。
作業機昇降レバー63が上昇位置に維持され、耕耘機24が地上に大きく持上げられた上昇位置にある場合(S2;yes)、油圧センサ106値と、リンク歪センサ130値と、ピン感圧センサ131値と、ピッチングセンサ132値とを読み込む(S3)。そして、耕耘機24の重量センサとしての、油圧センサ106、またはリンク歪センサ130、またはピン感圧センサ131の少なくともいずれか1つまたは全部の検出値に基づき、現在の耕耘機24の重量を演算する。また、その演算から求められた現在の耕耘機24の重量を、ピッチングセンサ132値に基づき補正する。そして、ピッチングセンサ132値に基づき補正された現在の耕耘機24の補正重量Dvと、図12の制御ゲインGvのパターン(または数式)とから、耕耘深さ自動制御における昇降制御油圧シリンダ28の上昇側の作動速度を決定する制御ゲインGvを演算する(S4)。
一方、耕耘機24が下降した位置にあるか否かを、リフト角センサ129値の変動に基づき判断する(S5)。作業機昇降レバー63がオペレータによって下降位置に操作され、耕耘機24が下降した位置のときには(S5;yes)、耕耘深さ自動制御が開始される(S6)。耕耘機24が下降していないときには(S5;no)、耕耘深さ自動制御が停止状態に維持される(S7)。
次に、耕耘深さ自動制御のフローチャート(図10)を参照しながら、ロータリ耕耘機24の耕耘制御態様を説明する。
上述のステップ6における耕耘深さ自動制御が開始された場合、耕深設定ダイヤル126値が読み込まれる(S8)。また、リヤカバーセンサ124値と、重量センサとしての油圧センサ106値、またはリンク歪センサ130値、またはピン感圧センサ131値と、ピッチングセンサ132値とを読み込む(S9)。そして、耕耘機24が上昇し、リヤカバー43が全閉位置(リヤカバー43が耕耘爪40に最接近した位置)に移動したか否かを判断する(S10)。
リヤカバー43が全閉位置(リヤカバー43が耕耘爪40に最接近した位置)に移動していない場合(S10;no)、即ち、耕耘作業が続行されている場合、現在の耕耘爪40の耕耘深さを、リヤカバーセンサ124値から演算する(S11)。そして、耕耘爪40の耕耘深さが、耕深設定ダイヤル126の耕耘深さ設定値と一致するか否かを判断する(S12)。
上述のステップ11にて演算された耕耘爪40の耕耘深さが、耕深設定ダイヤル126の耕耘深さ設定値と一致していないときには(S12;no)、耕耘深さ制御を実行する(S13)。上昇制御電磁弁102、または下降制御電磁弁103のいずれかを、耕耘爪40の耕耘深さを修正する方向に作動させ、昇降制御油圧シリンダ28を上昇動作または下降動作させ、耕耘爪40の耕耘深さを修正する。
そのときの昇降制御油圧シリンダ28の上昇または下降の動作速度は、上述のステップ4で補正された制御ゲインと、リヤカバーセンサ124値から求めた偏差値(リヤカバーセンサ124値と耕深設定ダイヤル126値との差)とから演算される。したがって、耕耘機24の重量が機種または仕様の変更などによって変化しても、耕耘機24の重量変化に影響されることなく、昇降制御油圧シリンダ28の上昇または下降の動作速度が、リヤカバーセンサ124値から求められた同一の偏差値に対して略一定になる。例えば、薬剤散布機または施肥機などが耕耘機24に配置されて、その耕耘機24の重量が変化しても、また耕耘機24が仕様が異なる耕耘機または対地作業機と交換されても、昇降制御油圧シリンダ28の上昇または下降の動作速度は、その支持荷重(耕耘機24重量)またはトラクタ1のピッチングによって変化しない。
なお、昇降制御油圧シリンダ28の上昇または下降の動作速度は、その偏差値に比例して変化するように決定される。例えば、その偏差値が大きいときには、昇降制御油圧シリンダ28の上昇または下降の動作速度が速くなる。一方、例えば、その偏差値が小さいときには、昇降制御油圧シリンダ28の上昇または下降の動作速度が遅くなる。したがって、上述のステップ13における耕耘深さ制御が、大きな耕耘深さ変化のときに遅れるのを防止でき、且つ小さな耕耘深さ変化のときにハンチングするのを防止できることになる。
そして、上述のステップ11にて演算された耕耘爪40の耕耘深さが、耕深設定ダイヤル126の耕耘深さ設定値と一致した場合(S12;yes)、上昇制御電磁弁102及び下降制御電磁弁103を中立位置に維持して(S14)、昇降制御油圧シリンダ28を停止させる。
一方、例えばトラクタ1が圃場内を往復移動する耕耘作業において、トラクタ1が圃場の枕地に到達し、トラクタ1が方向転換可能な高さ(旋回高さ)に耕耘機24を上昇させる。リヤカバー43が、耕耘機24の上昇によって、全閉位置(リヤカバー43が耕耘爪40に最接近した位置)に移動した場合(S10;yes)、耕耘機24の重量センサとしての、油圧センサ106、またはリンク歪センサ130、またはピン感圧センサ131の少なくともいずれか1つまたは全部の検出値に基づき、現在の耕耘機24の重量を演算する。また、その演算から求められた現在の耕耘機24の重量を、ピッチングセンサ132値に基づき補正する。そして、ピッチングセンサ132値に基づき補正された現在の耕耘機24の補正重量Dvと、図12の制御ゲインGvのパターン(または数式)とから、耕耘深さ自動制御における昇降制御油圧シリンダ28の上昇側の作動速度を決定する制御ゲインGvを演算する(S15)。
したがって、トラクタ1が方向転換して次行程位置に移動し、耕耘作業を再開し、上述したステップ13の耕耘深さ制御が再び実行された場合、圃場の泥土及び藁草などが耕耘作業中に耕耘機24に付着してその耕耘機24の重量が変化しても、または薬剤及び肥料などが耕耘作業中の散布によって増減して耕耘機24の重量が変化しても、そのときの昇降制御油圧シリンダ28の上昇または下降の動作速度は、上述のステップ15で補正された制御ゲインと、リヤカバーセンサ124値から求めた偏差値(リヤカバーセンサ124値と耕深設定ダイヤル126値との差)とから演算されることになる。そのため、耕耘機24の重量が泥土の付着などによって変化しても、耕耘機24の重量変化に影響されることなく、昇降制御油圧シリンダ28の上昇または下降の動作速度が、リヤカバーセンサ124値から求められた同一の偏差値に対して略一定になる。例えば、薬剤散布機または施肥機などが前記耕耘機に配置されてその耕耘機の重量が変化しても、また耕耘機24が仕様が異なる耕耘機または対地作業機と交換されても、昇降制御油圧シリンダ28の上昇または下降の動作速度は、その支持荷重(耕耘機24重量)またはトラクタ1のピッチングによって変化しない。
上記の記載並びに図8などから明らかなように、前車輪3及び後車輪4にて走行自在に支持された作業車両としてのトラクタ1に、耕耘機24をリンク機構としてのロワーリンク21及びトップリンク22を介して昇降可能に装着し、前記耕耘機24を昇降動する昇降制御アクチュエータとしての昇降制御油圧シリンダ28と、前記耕耘機24のリヤカバー43の回動角度を検出するリヤカバーセンサ124と、前記耕耘機24の耕耘深さを設定する耕耘深さ設定器としての耕深設定ダイヤル126と、前記昇降制御アクチュエータ28を作動させる耕耘制御手段としての耕耘制御コントローラ110とを備えてなる農作業機の耕耘制御装置において、前記耕耘機24の重量を検出する重量センサ106,130,131を備え、前記耕耘制御手段110は、前記耕耘機24の耕耘爪40の耕耘深さ制御の作動速度を演算するための制御ゲインを、前記重量センサ106,130,131値にて補正し、前記重量センサ106,130,131値にて補正された制御ゲインと、前記リヤカバーセンサ124値とに基づき、前記耕耘機24の耕耘深さ制御速度と、前記耕耘爪40の耕耘深さとを演算し、前記昇降制御アクチュエータ28を作動させるように制御するものであるから、例えば薬剤散布機または施肥機などが前記耕耘機24に配置されてその耕耘機24の重量が変化しても、または薬剤及び肥料などが耕耘作業中に増減して前記耕耘機24の重量が変化しても、または圃場の泥土及び藁草などが耕耘作業中に前記耕耘機24に付着してその耕耘機24の重量が変化しても、前記制御ゲインが前記耕耘機24の重量の変化に応じて補正され、前記耕耘爪40の耕耘深さ制御の動作速度を高精度に算出できる。したがって、前記耕耘機24の重量に適応した制御ゲインと、前記リヤカバーセンサ124にて計測された前記耕耘爪40の耕耘深さ検出値と、耕耘深さ設定値とに基づき、前記耕耘機24の実際の重量に適応した耕耘深さ制御速度を算出でき、その耕耘深さ制御速度に基づいて、前記耕耘爪40の耕耘深さ自動制御を実行できる。前記耕耘爪40が圃場を耕耘する深さを所定深さに維持する耕耘深さ自動制御の性能を向上できるものである。
上記の記載並びに図8などから明らかなように、前記重量センサとしての油圧センサ106は、前記昇降制御アクチュエータ28(油圧シリンダ)の油圧(静止油圧)を計測して前記耕耘機24の重量を検出するように構成されているものであるから、前記耕耘機24の重量が変化しても、前記制御ゲインを、前記耕耘機24の重量変化に応じて高精度に補正できる。前記耕耘爪40が圃場を耕耘する深さを略一定に維持する耕耘深さ自動制御の性能を向上できるものである。
上記の記載並びに図8などから明らかなように、前記リンク機構は、ロワーリンク21及びトップリンク22からなり、前記重量センサとしてのリンク歪センサ130は、前記ロワーリンク21の歪を計測して前記耕耘機24の重量を検出するように構成されているものであるから、前記耕耘機24の重量が変化しても、前記制御ゲインを、前記耕耘機24の重量変化に応じて高精度に補正できる。前記耕耘爪40が圃場を耕耘する深さを略一定に維持する耕耘深さ自動制御の性能を向上できるものである。
上記の記載並びに図8などから明らかなように、前記リンク機構は、ロワーリンク21及びトップリンク22からなり、前記重量センサとしてのピン感圧センサ131は、前記ロワーリンク21を本機側に連結するためのロワーリンクピン25の支持荷重を計測して前記耕耘機24の重量を検出するように構成されているものであるから、前記耕耘機24の重量が変化しても、前記制御ゲインを、前記耕耘機24の重量変化に応じて高精度に補正できる。前記耕耘爪40が圃場を耕耘する深さを略一定に維持する耕耘深さ自動制御の性能を向上できるものである。
上記の記載並びに図8などから明らかなように、前記作業車両1の前後方向の傾斜を検出する姿勢センサとしてのピッチングセンサ132を備え、前記耕耘制御手段110は、前記重量センサ106,130,131値を、前記姿勢センサ132値に基づき補正し、前記姿勢センサ132値にて補正された前記重量センサ106,130,131値に基づき、前記耕耘機24の耕耘爪40の耕耘深さを演算するための制御ゲインを補正するように制御するものであるから、前記耕耘機24の前後方向の傾斜角度が変化して前記昇降制御アクチュエータ28の支持荷重が変化しても、前記制御ゲインを、前記昇降制御アクチュエータ28の支持荷重の変化に応じて高精度に補正できる。前記耕耘爪40が圃場を耕耘する深さを略一定に維持する耕耘深さ自動制御の性能を向上できるものである。
上記の記載並びに図8などから明らかなように、前記作業車両1の移動速度を検出する車速センサ127を備え、前記耕耘制御手段110は、前記作業車両1が略一定位置に停止しているときに、前記制御ゲインを前記重量センサ106,130,131値にて補正するように制御するものであるから、例えば薬剤散布機または施肥機などが前記耕耘機24に配置されてその耕耘機24の重量が変化しても、前記制御ゲインを、前記耕耘機24の重量変化に応じて高精度に補正できる。前記耕耘爪40が圃場を耕耘する深さを略一定に維持する耕耘深さ自動制御の性能を向上できるものである。
上記の記載並びに図8などから明らかなように、前記耕耘機24の対本機高さを検出するリフト角センサ129を備え、前記耕耘制御手段110は、前記耕耘機24が大きく地上に持上げられて略一定高さに維持されているときに、前記制御ゲインを前記重量センサ106,130,131値にて補正するように制御するものであるから、例えば薬剤及び肥料などが耕耘作業中に増減して前記耕耘機24の重量が変化しても、または圃場の泥土及び藁草などが耕耘作業中に前記耕耘機24に付着してその耕耘機24の重量が変化しても、前記制御ゲインを、前記耕耘機24の重量変化に応じて高精度に補正できる。前記耕耘爪40が圃場を耕耘する深さを略一定に維持する耕耘深さ自動制御の性能を向上できるものである。