JP4752034B2 - インクジェット用記録液およびそれを用いた記録方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェットプリンターに用いられる分散安定性、ノズルでの吐出安定性に優れ、発色性の良好なインクジェット用記録液、およびそれを用いた普通紙へのインクジェット記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、インクジェット用記録液としては、水性染料を含有する水性染料インキが用いられてきた。しかしながら、水性染料インキは、優れた吐出安定性、保存安定性および高鮮明性を有するが、印字物の耐水性、耐候性に劣るという問題があった。
これに対し、印字物に耐水性、耐候性を付与するために、近年、顔料を分散剤と共に水性の液体中に分散させ、さらに各種添加剤などを加えた水性顔料インキが検討されている。
【0003】
水性顔料インキとしては、例えば、特開昭64−6074号公報、特開昭64−31881号公報、特開平3−134073号公報に、顔料を界面活性剤や水溶性樹脂を用いて水性の液体中に分散させたインキが開示されている。また、特開平8−3498号公報には、表面を酸化処理したカーボンブラックを分散剤なしに水性の液体中に自己分散させたインキが開示されている。
しかしながら、界面活性剤を多量に用いた従来の水性顔料インキは、分散安定性に劣るものが多く、保存安定性に問題があった。また、水溶性樹脂を多量に用いた従来の水性顔料インキは、遊離した水溶性樹脂の影響で、吐出安定性に問題があった。さらに、インキ中の顔料の粒度分布は一般に広く、粗大粒子の影響で保存安定性を確保するのが困難なため、顔料の微細化、均質化が望まれていた。
【0004】
一方、一般に、水性顔料インキは、水性染料インキに比べ、特に普通紙に印字した場合に発色性が劣ることが指摘されている。その原因として、インクジェット用記録液としての吐出安定性、保存安定性を持たせようとすると、顔料の分散粒径を小さくする、あるいは分散剤の量を比較的多くする必要があったが、その結果、インキ中の顔料粒子が印字する際に普通紙の内部に沈み込み、発色性が損なわれることが観察された。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、安定な分散性を有し、ノズルでの吐出安定性が良好で、記録紙の内部に沈み込まず記録紙上での発色性が良好な水性インクジェット用記録液、およびそれを用いたインクジェット記録方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、水性の液体中に自己分散型顔料を分散してなるインクジェット用記録液または水性の液体中に顔料を分散剤と共に分散してなるインクジェット用記録液は、上記自己分散型顔料および水のみからなる顔料分散体としたときに高い表面張力を有している顔料分散体、または上記顔料、上記分散剤および水のみからなる顔料分散体としたときに高い表面張力を有している顔料分散体を水性の液体で希釈してなり、さらにインクジェット用記録液中の上記自己分散型顔料または上記顔料がある程度以上の分散粒子径を有しながら粗大粒子を含まないように調整することにより、記録紙、特に普通紙上で高発色性を示すことを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明は、水性の液体中に自己分散型有機顔料を分散してなるインクジェット用記録液であって、上記自己分散型有機顔料および水のみからなり顔料濃度20重量%としたときの顔料分散体の表面張力が60dyne/cm以上である顔料分散体を水性の液体で希釈してなり、上記自己分散型有機顔料のレーザー光散乱粒度分布計による体積累積50%粒子径が100nm以上、体積累積99%粒子径が400nm以下であることを特徴とするインクジェット用記録液に関する。また、本発明は、ベック平滑度20〜80秒の普通紙に、上記インクジェット用記録液を用いて記録することを特徴とするインクジェット記録方法に関する。
【0008】
本発明の水性の液体中に自己分散型顔料を分散してなるインクジェット用記録液は、上記自己分散型顔料および水のみからなり顔料濃度20重量%としたときの顔料分散体の表面張力が60dyne/cm以上、好ましくは65dyne/cm以上であり、75dyne/cm以下である顔料分散体を水性の液体で希釈してなるものである。
また、本発明の水性の液体中に顔料を分散剤と共に分散してなるインクジェット用記録液は、上記顔料、上記分散剤および水のみからなり顔料濃度20重量%としたときの顔料分散体の表面張力が60dyne/cm以上、好ましくは65dyne/cm以上であり、75dyne/cm以下である顔料分散体を水性の液体で希釈してなるものである。
上記顔料分散体の表面張力が60dyne/cm未満であると、不純物、自己分散型顔料の副生成物である水溶性物質、または遊離の分散剤の量が多いため、記録液の安定性が損なわれ、記録紙上での発色性も低下する。
【0009】
また、本発明のインクジェット用記録液中の自己分散型顔料または顔料の粒度分布は、レーザー光散乱粒度分布計による体積累積50%粒子径が100nm以上、好ましくは120nm以上であり、体積累積99%粒子径が400nm以下、好ましくは350nm以下である。体積累積50%粒子径が100nm未満になると、記録紙上で顔料粒子が紙の内部に入り込み、発色力が低下する。また、体積累積99%粒子径が400nmを越えると、粗大粒子の影響で、記録液の安定性、ノズルでの吐出安定性が低下し、記録液として満足しない。
【0010】
自己分散型有機顔料は、水に容易に分散できる有機顔料であり、自己分散型有機顔料としては、表面を処理した有機顔料が好適に用いられる。顔料の表面処理としては、酸化処理、スルホン化処理が挙げられる。顔料表面の酸化処理は、水系媒体中で、硝酸、硫酸、過硫酸カリウム、過マンガン酸カリウム、次亜ハロゲン酸塩などの酸化剤と共に顔料を加熱処理した後、水洗する方法により行うことができる。また、顔料表面のスルホン化処理は、スルホン化ピリジン塩、スルファミン酸、アミド硫酸、フルオロ硫酸、クロロ硫酸、三酸化硫黄、発煙硫酸、硫酸等のスルホン化剤と共に顔料を加熱処理をした後、水洗する方法により行うことができる
【0012】
本発明に用いられる有機顔料としては、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザエロー、ベンジジンエロー、ピラゾロンレッドなどの不溶性アゾ系顔料、リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2Bなどの溶性アゾ系顔料、アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーンなどの建染染料からの誘導体、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系顔料、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタなどのキナクリドン系顔料、ペリレンレッド、ペリレンスカーレットなどのペリレン系顔料、イソインドリノンエロー、イソインドリノンオレンジなどのイソインドリノン系顔料、ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジなどのピランスロン系、チオインジゴ系顔料、縮合アゾ系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、フラバンスロンエロー、アシルアミドエロー、キノフタロンエロー、ニッケルアゾエロー、銅アゾメチンエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等が例示できる。
なかでも、キナクリドン系顔料、フタロシアニン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、イソインドリノン系顔料およびキノフタロン系顔料からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機顔料を用いることが耐光性等の点から好ましい。
【0013】
また、分散剤としては、樹脂型分散剤、界面活性剤型分散剤が用いられ、分散剤は、顔料100重量部に対して、1〜15重量部の量でインクジェット用記録液中に含有されることが好ましい。分散剤の量が1重量部未満の場合は、顔料の分散安定性を著しく損なう恐れがあり、15重量部を越える場合は、記録紙上での発色性が低下する。
樹脂型分散剤は、例えば、溶媒中で重合性モノマー、必要に応じて添加剤等を溶解させた後、重合開始剤を添加し熱重合させるビニル重合法により得られる水溶性樹脂である。
【0014】
重合性モノマーは、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物であれば特に制限はない。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
また、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性モノマー、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ジN−メチロール(メタ)アクリルアミド、ビニルアセトアミド、ビニルピロリドン等のアミド系重合性モノマー、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、(無水)マレイン酸、3−スルホプロピルアクリレート等のアニオン性官能基含有重合性モノマーが挙げられる。
【0015】
さらに、N、N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N−ジエチルアミノ(メタ)アクリレート、ビニルピリジン等のカチオン性官能基含有重合性モノマー、グリシジル(メタ)アクリレート、アクロレイン等の他の反応性官能基含有重合性モノマー、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル等が挙げられる。
特に、上記モノマー中のイタコン酸、無水マレイン酸等の二塩基酸モノマーを構成成分として含むビニル重合体は、得られるインクジェット用記録液の普通紙上での発色性が良好となるため、分散剤として好適である。
【0016】
界面活性剤型分散剤としては、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が用いられる。
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、フッ素系、シリコン系等のノニオン性活性剤が例示できる。
【0017】
アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩、ナフタレンスルホン酸フォルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩、グリセロールボレイト脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステル等が例示できる。
【0018】
カチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルイミダゾリウム塩等が例示できる。
両イオン性界面活性剤としては、アルキルベタイン、アルキルアミンオキサイド、ホスファジルコリン等が例示できる。
界面活性剤型分散剤のうち、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤は、浸透性のある被印刷体への記録液の浸透性をはやめ見かけの乾燥性を早くする浸透剤としての働きもする。これらの浸透剤としても働くアニオン性界面活性剤の記録液中の含有量は、1〜5重量%の範囲であることが好ましい。浸透剤としても働くアニオン性界面活性剤は、上記使用量で十分な効果があり、これよりも多いと印字の滲み、紙抜け(プリントスルー)を起こし好ましくなくなる。
【0019】
水性の液体は、水および必要に応じて水性溶剤から構成される。
水としては、金属イオン等を除去したイオン交換水あるいは蒸留水が、記録液の49〜95重量%の範囲で用いられる。
水性溶剤には、記録液のノズル部分での乾燥、記録液の固化を防止し、安定に記録液の噴射を行わせ、ノズルの経時での乾燥を防止するための保湿剤として働く水性溶剤と、記録液の被印刷体が紙のような浸透性のある材料のときに、紙への記録液の浸透をはやめ見掛けの乾燥性を早くする浸透剤として働く水性溶剤と、記録液の紙での乾燥を速めるための乾燥促進剤として働く水性溶剤とがある。
【0020】
保湿剤として働く水性溶剤としては、1,3−プロパンジオール、1,2−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2,4,6−ヘキサントリオール、グリセリン、テトラフルフリルアルコール、ケトンアルコール、N−メチル−2−ピロリドン、置換ピロリドン、4−メトキシ−4−メチルペンタノン等が例示できる。これらの水性溶剤は、単独ないし混合して記録液の1〜50重量%、好ましくは2〜25重量%の範囲で用いられる。
【0021】
浸透剤として働く水性溶剤としては、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等、ポリエチレングリコールモノラウリルエーテルのグリコールエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルキレングリコールが例示できる。これらの水性溶剤は、単独ないし混合して記録液の0〜5重量%、好ましくは1〜5重量%の範囲で用いられる。浸透剤として働く水性溶剤は、上記使用量で十分な効果があり、これよりも多いと印字の滲み、紙抜け(プリントスルー)を起こし好ましくなくなる。
【0022】
乾燥促進剤として働く水性溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類が例示できる。これらの水性溶剤は、単独ないし混合して記録液の0.1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%の範囲で用いられる。 本発明のインクジェット記録液には、防黴剤、キレート剤をはじめとする種々の添加剤を添加することができる。
防黴剤は、記録液への黴の発生を防止するものであり、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ソジウムビリジンチオン−1−オキサイド、ジンクピリジンチオン−1−オキサイド、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、1−ベンズイソチアゾリン−3−オンのアミン塩等が用いられる。これらは、記録液の0.05〜1.0重量%の範囲で用いられる。
【0023】
キレート剤は、記録液中の金属イオンを封鎖し、ノズル部での金属の析出や記録液中で不溶解性物の析出等を防止するものであり、エチレンジアミンテトラアセティックアシ、エチレンジアミンテトラアセティックアシドのナトリウム塩、エチレンジアミンテトラアセティックアシドのジアンモニウム塩、エチレンジアミンテトラアセティックアシドのテトラアンモニウム塩等が用いられる。これらは、記録液の0.005〜0.5重量%の範囲で用いられる。
また、色相の調整、濃度の付与等を目的として、耐水性、耐光性に問題の無いような形で、染料を用いることができる。
【0024】
また、記録液のpHを調整し、記録液の安定ないし記録装置中の記録液配管との安定性を得るため、アミン、無機塩、アンモニア等のpH調整剤、リン酸等の緩衝液を用いることができる。
また、記録液の循環、移動、あるいは記録液製造時の泡の発生を防止するため、消泡剤を添加することもできる。
また、耐水性、記録紙への定着性を付与する目的で、水溶性樹脂、水分散性樹脂を添加することができる。
【0025】
本発明のインクジェット記録液は、水性の液体中に自己分散型顔料または顔料と分散剤とを分散してなる顔料分散体に、必要に応じて水、添加剤を混合し,サンドミル、ホモジナイザー、ボールミル、ペイントシェーカー、超音波分散機等で分散することにより製造できる。顔料分散体の製造は、ディスパー、サンドミル、ホモジナイザー等を用いて行うことができる。
あるいは、本発明のインクジェット記録液は、顔料と分散剤と、必要に応じて添加剤とをニーダー、二本ロールミルであらかじめ良く混練したのち、上記サンドミル等でさらに水性の液体中に分散してなる顔料分散体を、適宜水にて希釈し、必要に応じて添加剤を混合攪拌することにより製造できる。混合攪拌は、通常の羽を用いた攪拌機による攪拌のほか、高速の分散機,乳化機等により行うことができる。
【0026】
顔料分散体は、希釈の前または後に、孔径0.65μm以下のフィルター、さらには孔径0.45μm以下のフィルターで十分濾過することが好ましい。フィルター濾過に先立ち遠心分離による濾過を行うこともでき,これにより、フィルター濾過における目詰まりを少なくし,フィルター交換を少なくできる。
記録液の粘度は、記録装置の方式にもよるが、25℃において0.8〜20センチポイズであることが好ましい。
本発明のインクジェット用記録液は、ベック平滑度20〜80秒の普通紙に記録した場合にも、記録液中の顔料粒子が普通紙の内部に沈み込まず、発色性の良好な記録物が得られる。
【0027】
【実施例】
以下、実施例に基づき、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、実施例に特に限定されるものではない。実施例中、部および%は、重量部および重量%をそれぞれ表す。
なお、実施例中、記録液の粘度は、トキメック社製E粘度計「ビスコニックELD」により、25℃において測定した。また、記録液中の顔料の体積累積50%粒子径および体積累積99%粒子径は、レーザー光散乱粒度分布計(大塚電子社製「DLS−700」)により測定した。また、記録物の反射濃度(OD値)は、マクベス社製反射濃度計「RD918」により測定した。
【0028】
参考例)還流冷却器およびガラス製撹拌羽根を取り付けた4つ口フラスコに、カーボンブラック(デグサ社製「プリンテックス#75」)20部および濃硝酸80部を仕込み、油浴中120℃で10時間還流させ、酸化処理を行った。その後冷却し、遠心分離、デカンテーションを繰り返し、遠心分離しても沈殿がでないようになった後、さらに限外濾過を行い、イオン交換水にて顔料濃度を調整して顔料濃度20%の自己分散型顔料分散体を得た。得られた顔料分散体の表面張力は、71.6dyne/cmであった。
【0029】
ステンレス容器に、上記顔料分散体20部、保湿剤としてグリセリン20部、浸透剤としてジエチレングリコールモノブチルエーテル5部、防かび剤としてデグサ社製「プロクセルGXL」0.01部を仕込み、ディスパーで撹拌した後、0.45μmのメンブランフィルターで濾過を行うことにより、インクジェット用記録液を得た。この記録液は、粘度が2.2cps、顔料の体積累積50%粒子径が120nmであり、体積累積99%粒子径が380nmであった。
【0030】
得られた記録液を、セイコーエプソン社製インクジェットプリンター「マッハジェットMJ−700」のインキカートリッジに注入し、ベック平滑度30.6秒のゼロックス社製普通紙「4024紙」に記録した。記録液の吐出安定性は良好で、記録物のOD値は1.3であった。また、この記録液は、室温で1年保存後も沈殿の生成、粘度変化、粒径変化がなく、良好な安定性を示した。
【0031】
(実施例)還流冷却器およびガラス製撹拌羽根を取り付けた4つ口フラスコに、フタロシアニン顔料(東洋インキ製造社製「リオノールブルーFG−7351」)20部およびスルホラン70部を仕込み、油浴中で120℃にした後、スルファミン酸10部を加えて120℃で5時間スルホン化処理を行った。その後冷却し、遠心分離、デカンテーションを繰り返し、遠心分離しても沈殿がでないようになった後、さらに限外濾過を行い、イオン交換水にて顔料濃度を調整して顔料濃度20%の自己分散型顔料分散体を得た。得られた顔料分散体の表面張力は、72.0dyne/cmであった。
【0032】
得られた顔料分散体を用い、参考例と同様にしてインクジェット用記録液を得た。この記録液は、粘度が2.2cps、顔料の体積累積50%粒子径が109nmであり、体積累積99%粒子径が280nmであった。得られた記録液を用い、参考例と同様にしてインクジェット記録を行ったところ、記録液の吐出安定性は良好で、記録物のOD値は1.2であった。また、この記録液は、室温で1年保存後も沈殿の生成、粘度変化、粒径変化がなく、良好な安定性を示した。
【0036】
(比較例1)キナクリドン顔料(クラリアント社製「ホスタパームピンク−E」)20部、スチレン−アクリル酸共重合樹脂(ジョンソンポリマー社製「ジョンクリル586」)5部、14%アンモニア水0.5部およびイオン交換水74.5部をサンドミルで分散し、顔料濃度20%の顔料分散体を得た。得られた顔料分散体の表面張力は、58.0dyne/cmであった。得られた顔料分散体を用い、参考例と同様にしてインクジェット用記録液を得た。この記録液は、粘度が2.8cps、顔料の体積累積50%粒子径が125nmであり、体積累積99%粒子径が350nmであった。得られた記録液を用い、参考例と同様にしてインクジェット記録を行ったところ、記録液はノズル目詰まりを起こし、記録物のOD値は1.0であった。また、この記録液は、室温で1年保存後も沈殿の生成、粘度変化、粒径変化がなく、良好な安定性を示した。
【0037】
(比較例2)フタロシアニン顔料(東洋インキ製造社製「リオノールブルーFG−7351」)20部、界面活性剤型分散剤(日本乳化剤社製アニオン性界面活性剤「ニューコール565SNC」)4部およびイオン交換水76部をサンドミルで分散し、顔料濃度20%の顔料分散体を得た。得られた顔料分散体の表面張力は、48dyne/cmであった。この記録液は、粘度が2.2cps、体積累積50%粒子径が115nmであり、体積累積99%粒子径が280nmであった。得られた記録液を用い、参考例と同様にしてインクジェット記録を行ったところ、記録液の吐出安定性は非常に良好であったが、記録物のOD値は0.9であった。また、この記録液は、室温で1年保存後も沈殿の生成、粘度変化、粒径変化がなく、良好な安定性を示した。
【0038】
【発明の効果】
本発明の記録液は、顔料を水性の液体中に分散した水性顔料分散型のインクジェット用記録液でありながら、分散安定性に優れ、ノズルでの吐出安定性が良好で、さらに普通紙上での発色性が良好であるため、オフィスにおける書類の作成、マーキング、ナンバリング、バーコード印刷、オンデマンド印刷、簡易印刷等の分野で利用することができる。

Claims (2)

  1. 水性の液体中に自己分散型有機顔料を分散してなるインクジェット用記録液であって、上記自己分散型有機顔料および水のみからなり顔料濃度20重量%としたときの顔料分散体の表面張力が60dyne/cm以上である顔料分散体を水性の液体で希釈してなり、上記自己分散型有機顔料のレーザー光散乱粒度分布計による体積累積50%粒子径が100nm以上、体積累積99%粒子径が400nm以下であることを特徴とするインクジェット用記録液。
  2. ベック平滑度20〜80秒の普通紙に、請求項記載のインクジェット用記録液を用いて記録することを特徴とするインクジェット記録方法。
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