JP4751054B2 - フィンプレス用潤滑油及びプレートフィンの製造方法 - Google Patents

フィンプレス用潤滑油及びプレートフィンの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、親水性プレコートアルミニウム板あるいはコーティング処理を施していない無処理のアルミニウム板よりなる熱交換器用フィン材をプレス加工する際に用いるフィンプレス用潤滑油に関する。なお、ここでいうアルミニウムは、アルミニウム及びアルミニウム合金を含む。
空調機における熱交換器としては、多数のプレートフィンとチューブとを組み合わせて構成されるプレートフィンチューブ熱交換器が多用されている。上記プレートフィンは、アルミニウム板よりなる熱交換器用フィン材(以下、単にフィン材という)に、上記チューブを挿通して固定するための1〜4mm高さのフィンカラー部をプレス加工して作製する。
そのフィンカラーのプレス加工方法は、ドロー方式、しごき方式およびドロー・しごき併用方式があり、最近では、揮発性潤滑油に対応できるドロー・しごき併用方式がある。一例として、ドロー・しごき併用方式の加工方法は、図3に示すごとく、素材9に対する加工として、張出し・絞り加工S1、S2→穴開け・バーリング加工S3→しごき加工S4→フレア加工S5の順で実施する(非特許文献1参照)。
プレス加工速度は毎分200〜350ストロークであり、さらに高速化の方向にある。また、工具の手直しなしで数1000万回ストロークもの加工をすることから、プレス加工の全工程に亘り、素材と加工金型の間の良好な潤滑性が要求される。潤滑性に劣ると、特にしごき加工の際にフィンカラーが破断する所謂「カラー飛び」という致命的な不具合を引き起こす。
さらに穴開け加工の場合は、剪断加工によるため、剪断面から発生するアルミ粉がポンチに凝着する問題が生じる。この凝着は、初期のストロークでは問題にならないが、ストローク回数が増すと、ポンチに凝着したアルミ粉により素材の剪断面にノッチを生じせしめ、最終のフレア工程において先端に割れを生じる所謂「フレア割れ」という致命的な不具合を引き起こす。更に工具寿命も縮めてしまう。
これらの不具合を解決するために、素材側からの改良、潤滑油の改良が種々なされてきた。さらに、上記フィン材としては、アルミニウム板に親水性塗膜などを施したプレコートタイプのものや、塗膜等を設けていない無処理タイプのものがある。プレコートタイプのものは、塗膜中あるいは塗膜上に潤滑油を付加することができることから、親水性と潤滑性の両方の機能を有するものとして多用されている。
ところが、最近のプレス加工速度の高速化に伴い、さらなる工具寿命の向上、成形精度の向上というハイレベルな要求がなされており、潤滑油のより一層の改良が不可欠となってきた。そのために、これまで多数のフィンプレス用潤滑油(例えば、特許文献1、2参照)が提案され、また種々の市販品が流通している。
しかしながら上記従来のフィンプレス用潤滑油においては、次のような問題がある。
すなわち、上記特許文献1、2に記載のフィンプレス用潤滑油、あるいは市販のフィンプレス用潤滑油においては、(1)プレス加工工程の一つである穴開け加工(剪断加工)において、ポンチにアルミ粉が凝着しやすい、(2)プレス加工後に潤滑油を除去するために乾燥させるが、乾燥がなかなか進まない、(3)臭いがあり作業環境を悪化させる、(4)皮膚に触れるとかゆみや肌荒れが生じやすい、などの問題を少なからず有していた。
特に、アルミ粉の凝着は、ポンチの手入れを頻繁にすることによって回避するしかなく、根本的な解決策を見出し得ていなかった。
これらを解決するために、臭いや肌荒れ等の問題がなく、低コストで、乾燥性もよく、特にポンチへのアルミ粉の凝着を有効に抑制することができるフィンプレス用潤滑剤が提案されている(特許文献3参照)。
しかしながら、近年、生産性の向上に対する要求がますます厳しくなり、生産スピードをより一層高くすることにより大量のアルミ摩耗粉が発生するという問題が生じてきた。この大量に発生したアルミ摩耗粉は、金型に付着して、熱交換器用のプレートフィンに種々の品質問題を引き起こす場合があった。
そこで、生産性の向上をさらに図るべく、アルミ磨耗粉の発生を抑制できるフィンプレス用潤滑油の開発が強く望まれている。
特開平6−41573号公報 特開平8−157851号公報 特開2004−263056号公報 住友軽金属技報「家庭用及び業務用空調機の熱交換器に用いられるアルミニウムフィン材の開発状況」1994年11月
本発明はかかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、臭いや肌荒れ等の問題がなく、低コストで、乾燥性もよく、ポンチへのアルミ粉の凝着を有効に抑制できると共に、アルミ磨耗粉の発生を抑制できるフィンプレス用潤滑油及びプレートフィンの製造方法を提供しようとするものである。
第1の発明は、アルミニウム板よりなる熱交換器用フィン材をプレス加工する際に用いられるフィンプレス用潤滑油において、
ノンアロマ鉱油または/およびイソパラフィンよりなる基油と、
一般式R1−COO−R2(ただし、R1は炭素数7〜17のアルキル基、R2は炭素数1〜4のアルキル基)により示される脂肪酸エステルよりなる第1添加剤と、
炭素数4〜20の炭化水素基を有する脂肪族アミン、炭素数4〜20の炭化水素基を有するアルカノールアミン、炭素数4〜20の炭化水素基を有する脂環式アミン及びそれらのアルキレンオキシド付加物から選ばれる少なくとも1種以上からなる第2添加剤とを含有してなり、
上記第1添加剤と上記第2添加剤と上記基油との合計量に対する上記第1添加剤の含有割合は1〜10重量%であり、
上記第1添加剤と上記第2添加剤と上記基油との合計量に対する上記第2添加剤の含有割合は0.01〜2.0重量%であり、
かつ、上記フィンプレス用潤滑油の粘度は、温度40℃における動粘度で1.0〜3.5mm2/sであることを特徴とするフィンプレス用潤滑油にある(請求項1)。
本発明のフィンプレス用潤滑油は、上記のごとく、ノンアロマ鉱油または/およびイソパラフィンを基油とし、上記特定の脂肪酸エステルよりなる第1添加剤と上記特定の物質からなる第2添加剤とを上記特定の割合で含有してなる。この構成によって、上述した従来の問題を一気に解消することができる。
すなわち、本発明のフィンプレス用潤滑油は、臭いや肌荒れ等の問題がなく、低コストで、乾燥性もよく、特に、剪断加工を伴う穴開け加工を行う際には、ポンチへのアルミ粉の凝着を従来よりも大幅に抑制することができると共に、さらにアルミ磨耗粉の発生量を大幅に抑制することができる。
それ故、本発明によれば、工具寿命、作業効率、作業環境、加工精度等の総合的なプレス加工を、従来に比べ格段に向上させることができる。
特に、本発明のフィンプレス用潤滑油においては、上記第2添加剤を上記特定量含有している。そのため、アルミ摩耗粉の凝集を抑制すると共に、上記のごとくアルミ摩耗粉の発生量を低減させることができる。それ故、発生したアルミニウム摩耗粉がプレス加工時に用いる金型等に付着し、プレス加工後に得られるプレートフィン等のアルミニウム製品の品質に悪影響を及ぼすことを防止できる。
第2の発明は、アルミニウム板よりなる熱交換器用フィン材をプレス加工して熱交換器のプレートフィンを作製するプレートフィンの製造方法において、
上記熱交換器用フィン材のプレス加工時に、請求項1又は2に記載の上記フィンプレス用潤滑油を用いることを特徴とするプレートフィンの製造方法にある(請求項3)。
本発明のプレートフィンの製造方法においては、フィンプレス時、即ち上記熱交換器用フィン材のプレス加工時に上記第1の発明のフィンプレス用潤滑油を用いる。
そのため、上記フィンプレス用潤滑油の優れた特徴を生かして、高速でプレス加工を行ってもポンチへのアルミ粉の凝着をほとんど生じることなく、さらにアルミ摩耗粉の発生量を抑制することができる。それ故、高い生産性で高品質のプレートフィンを製造することができる。また、臭いや肌荒れ等の問題を生じることなく、より良い作業環境で熱交換器用フィン材を作製することができる。さらに、上記フィンプレス用潤滑油は、低コストであるため、低コストで上記プレートフィンを作製することができる。また、上記フィンプレス用潤滑油の優れた乾燥性を生かして、プレス後の乾燥により上記潤滑油を簡単に除去することができるため、より高品質のプレートフィンを作製することができる。
本発明のフィンプレス用潤滑油に用いる上記基油としては、上記のごとく、ノンアロマ鉱油または/およびイソパラフィン、つまり、ノンアロマ鉱油またはイソパラフィンのいずれか一方、あるいは、ノンアロマ鉱油とイソパラフィンとの両方を含む基油を用いる。
上記ノンアロマ鉱油は、アロマ系の鉱油を全く含まない鉱油であり、ナフテン若しくはパラフィンの1種または2種の鉱油が採用され得る。また、上記基油は、上記のごとく、合成油であるイソパラフィン単独であってもよいし、イソパラフィンとノンアロマ鉱油との混合であってもよい。これらの基油を採用することにより、低コストで、かつ臭いや肌荒れによる作業環境の悪化を好適に防止し得る。
また、上記フィンプレス用潤滑油における上記第1添加剤としては、一般式R1−COO−R2(ただし、R1は炭素数7〜17のアルキル基、R2は炭素数1〜4のアルキル基)により示される脂肪酸エステルを用いる。
上記一般式に含まれるアルキル基R1としては、上記のごとく、その炭素数を7〜17とする。R1の炭素数が7未満の場合には、潤滑性不良、アルミ粉凝着による成形不良、および臭気がきつく作業環境を悪化させるという問題がある。一方、R1の炭素数が17を超える場合には、乾燥性が悪化(乾燥しにくい)し、かつ融点が高くなり常温で固化しやすくなることによる作業性の悪化という問題がある。これらの、潤滑性、アルミ粉凝着性、臭気、乾燥性、作業性の理由から、アルキル基Rの炭素数の範囲は、7〜17であることが好ましい。より好ましくは9〜13である。
また、上記一般式に含まれるアルキル基R2としては、その炭素数を1〜4とする。R2の炭素数が4を超える場合には、乾燥性が悪化し、かつ融点が高くなり常温で固化しやすくなるために加熱設備の追加が必要となり作業性が悪化するという問題がある。これらの、乾燥性、作業性の理由から、アルキル基R2の炭素数の範囲は1〜4であることが好ましい。
そして、上記第1添加剤に適用可能な脂肪酸エステルの具体例としては、例えば、カプリル酸メチル、カプリル酸エチル、カプリル酸プロピル、カプリル酸ブチル、ペラルゴン酸メチル、ペラルゴン酸エチル、ペラルゴン酸プロピル、ペラルゴン酸ブチル、カプリン酸メチル、カプリン酸エチル、カプリン酸プロピル、カプリン酸ブチル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸プロピル、ラウリン酸ブチル、ミリスチン酸メチル、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸プロピル、ミリスチン酸ブチル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸プロピル、パルミチン酸ブチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸プロピル、ステアリン酸ブチル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸プロピル、オレイン酸ブチル等がある。
また、上記フィンプレス用潤滑油における上記第2添加剤は、アミン類、そのアルキレンオキシド付加物から選ばれる1種以上からなる。
上記第2添加剤として用いられるアミン類としては、例えば脂肪族アミン、アルカノールアミン、脂肪族ポリアミン、芳香族アミン、脂環式アミン、及び複素環アミン等がある。また、これらのアミン類には、ヒドロキシル基、エーテル基が含まれていても良い。
脂肪族アミンの具体例としては、例えばメチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、カプリルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、牛脂アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジオクチルアミン、ブチルオクチルアミン、ジステアリルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルミリスチルアミン、ジメチルパルミチルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジメチルベヘニルアミン、ジラウリルモノメチルアミン、トリオクチルアミン等がある。
アルカノールアミンの具体例としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−イソプロピルエタノールアミン、N,N−ジイソプロピルエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−メチルイソプロパノールアミン、N,N−ジメチルイソプロパノールアミン、N−エチルイソプロパノールアミン、N,N−ジエチルイソプロパノールアミン、N−イソプロピルイソプロパノールアミン、N,N−ジイソプロピルイソプロパノールアミン、モノn−プロパノールアミン、ジn−プロパノールアミン、トリn−プロパノールアミン、N−メチルn−プロパノールアミン、N,N−ジメチルn−プロパノールアミン、N−エチルn−プロパノールアミン、N,N−ジエチルn−プロパノールアミン、N−イソプロピルn−プロパノールアミン、N,N−ジイソプロピルn−プロパノールアミン、モノブタノールアミン、ジブタノールアミン、トリブタノールアミン、N−メチルブタノールアミン、N,N−ジメチルブタノールアミン、N−エチルブタノールアミン、N,N−ジエチルブタノールアミン、N−イソプロピルブタノールアミン、N,N−ジイソプロピルブタノールアミン等がある。
脂肪族ポリアミンの具体例としては、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン 、トリエチレンテトラアミン、ヘキサメチレンジアミン、硬化牛脂プロピレンジアミン等がある。
芳香族アミンの具体例としては、アニリン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン等がある。
脂環式アミンの具体例としては、例えばN−シクロヘキシルアミン、N,N−ジシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチル−シクロヘキシルアミン、N,N−ジエチル−シクロヘキシルアミン、N,N−ジ(3−メチル−シクロヘキシル)アミン、N,N−ジ(2−メトキシ−シクロヘキシル)アミン、N,N−ジ(4−ブロモーシクロヘキシル)アミン等がある。
複素環アミンの具体例としては、例えばピロリジン、ピペリジン、2−ピペコリン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ピペコリン、2,6−ピペコリン、3,5−ルペチジン、ピペラジン、ホモピペラジン、N−メチルピペラジン、N−エチルピペラジン、N−プロピルピペラジン、N−メチルホモピペラジン、N−アセチルピペラジン、N−アセチルホモピペラジン、1−(クロロフェニル)ピペラジン、N−アミノエチルピペリジン、N−アミノプロピルピペリジン、N−アミノエチルピペラジン、N−アミノプロピルピペラジン、N−アミノエチルモルホリン、N−アミノプロピルモルホリン、N−アミノプロピル−2−ピペコリン、N−アミノプロピル−4−ピペコリン、1,4−ビス(アミノプロピル)ピペラジン等がある。
上記のアミン類の中でも、上記第2添加剤としては、油に対する溶解性の面から分枝鎖を有する全炭素数4以上の炭化水素基を有するアミン類が好ましい。また、全炭素数が20を超える場合には、焼鈍工程でオイルステインが発生し易くなるおそれがある。
また、上記第2添加剤として用いられるアミン類のアルキレンオキシド付加物は、上記のアミン類に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、α−オレフィンオキシド、スチレンオキシド等のアルキレンオキシド等を付加重合することにより得ることができる。付加させるアルキレンオキシド等の重合形態は特に限定されず、1種類のアルキレンオキシド等の単独重合、2種類以上のアルキレンオキシド等のランダム共重合、ブロック共重合又はランダム/ブロック共重合等であってよい。
また、アルキレンオキシドの付加モル数は1〜6が好ましく、より好ましくは1〜4がよい。アルキレンオキシドの付加モル数が6を越える場合には、基油への溶解性が悪くなるおそれがある。
またアルキルスルホン酸及びその塩としては、例えばアルキルスルホン酸、アルキルアリルスルホン酸、アミドスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム等がある。
特に好ましくは、工業的に安価なジアルキルスルホコハク酸ナトリウムがよい。そのアルキル基の炭素数(C数)としては、4〜18であることが好ましい。アルキル基の炭素数が4未満の場合には、上記第2添加剤の基油に対する分散性が低下するおそれがある。一方18を越える場合には、粘度が高くなりすぎるため取り扱いが困難になり、上記フィンプレス用潤滑油の調整が困難になるおそれがある。
また、上記フィンプレス用潤滑油は、上記第1添加剤と上記第2添加剤と上記基油との合計量に対して、上記第1添加剤を1〜10重量%含有する。
上記第1添加剤の含有割合が1重量%未満の場合には、潤滑不良、およびアルミ粉凝着によるフレア割れや工具寿命低下という問題が生じるおそれがある。一方、10重量%を超える場合には、乾燥性の悪化、および高コストという問題が生じるおそれがある。
また、上記フィンプレス用潤滑油は、上記第1添加剤と上記第2添加剤と上記基油との合計量に対して、上記第2添加剤を0.01〜2.0重量%含有する。
上記第2添加剤の含有割合が0.01重量%未満の場合には、アルミ摩耗粉の凝集を抑制することができず、また、アルミ摩耗粉の発生量が増大するおそれがある。その結果、アルミ摩耗粉がプレス加工時の金型に凝集付着して、加工後に得られるプレートフィン等のアルミニウム製品の品質が低下するおそれがある。一方2重量%を越えて上記第2添加剤を加えても、アルミ摩耗粉の凝集効果は向上せず、ムダにコストが高くなってしまうおそれがある。また、2重量%を越える場合には、乾燥により上記フィンプレス用潤滑油を除去する際に、基油の揮発後に残留する成分が多くなり、プレートフィン等のアルミニウム製品の品質を低下させるおそれがある。好ましくは、上記第2添加剤の含有割合は0.1〜1.0重量%がよい。
次に、上記フィンプレス用潤滑油の粘度は、温度40℃における動粘度で1.0〜3.5mm2/sである。上記粘度が1.0mm2/s未満の場合には、潤滑不良による焼き付きが生じ、カラー飛びしやすく、かつ工具寿命も縮めてしまうおそれがある。一方、3.5mm2/sを超える場合には、乾燥性が悪化するという問題が生じるおそれがある。
上記フィンプレス用潤滑油の温度40℃における動粘度は、例えばキャノン・フェンスケ粘度計(毛管粘度計の一種)により、一定量の試験油(フィンプレス用潤滑油)が毛管を通過するのに要する時間から測定することができる(キャノン・フェンスケ粘度測定方法)。
また、上記フィンプレス用潤滑油の沸点は、150〜300℃であることが好ましい(請求項2)。
上記フィンプレス用潤滑油の沸点が150℃未満の場合には、常温での乾燥速度が速く、潤滑油の消費量が増加し、高コスト化するおそれがある。一方、300℃を超える場合には、フィンプレス後の乾燥時に、乾燥し難くなるおそれがある。
また、上記第2の発明において、上記プレートフィンは、例えばドロー方式、しごき方式およびドロー・しごき併用方式等によって、アルミニウム板よりなる熱交換器用フィン材にプレス加工を施すことによって作製することができる。プレス加工のより具体的な方法としては、例えば住友軽金属技報「家庭用及び業務用空調機の熱交換器に用いられるアルミニウムフィン材の開発状況」(1994年11月)等に記載の方法がある。
上記第2の発明においては、これらのプレス加工時に、上記第1の発明のフィンプレス用潤滑油を用いてプレートフィンを作製することができる。
また、上記第2の発明によって得られるプレートフィンは、複数のプレートフィンとチューブとを組み合わせて熱交換器(プレートフィンチューブ熱交換器)として用いることできる。
(実施例1)
本発明のフィンプレス用潤滑油にかかる実施例につき、具体的に説明する。
本例では、表1に示すごとく、本発明の実施例として、複数種類のフィンプレス用潤滑油(試料E1〜E16)と、比較例として複数種類のフィンプレス用潤滑油(試料C1〜C24)を作製し、各種性能の比較試験を行った。
各試料E1〜E16及び試料C1〜C24のフィンプレス用潤滑油について、基油、第1添加剤及び第2添加剤の種類、基油と第1添加剤と第2添加剤との合計量に対する第1添加剤の割合及び第2添加剤の割合(重量%)、粘度等を、表1及び表2にそれぞれ示す。なお、各試料の粘度は、上述のキャノン・フェンスケ粘度測定方法によって測定した。
Figure 0004751054
Figure 0004751054
次に、本例では、上記試料E1〜E16、および試料C1〜C24を用い、各種試験を次のようにして行った。なお、素材としてフィン材を用いる試験においては、JISA1050−H28の0.10mm厚のアルミニウム板を用いて行った。また、試験によっては、同材質で形態の違う棒材等によって代用した。
各種試験の結果は、表3(試料E1〜試料E16)及び表4(試料C1〜試料C24)に示す。なお、本例では、素材の材質として上記のJISA1050を用いたが、フィン材として一般に用いられているJISA1100、JISA1200、Al−Mn系合金を用いても本例と同様の結果が得られる。
<乾燥性評価試験>
上記素材(フィン材)をφ25mmの平底カップに加工し、その中に10g/m2となるように供試油(試料E1〜E16及び試料C1〜C24)を加えた後、温度100℃にて5分間加熱保持し、加熱前後の重量差を求め、乾燥後の残油量を測定した。
判定基準は、加熱による乾燥後の残油量が0.1g/m2以下の場合を合格とした。そのうち、0.05g/m2超えの場合を「○」印で示し、0.05g/m2以下の場合を「◎」印で示した。0.1g/m2超えの場合は不合格とし、「×」印で示した。
<加工性評価試験>
図1に示すごとく、ピンオンディスク試験装置5を用いて、アルミ粉凝着性及び摩擦係数を評価した。ピンオンディスク試験装置5は、ピン状の供試材59を固定する支持部51と、これに対面して回動可能に配設されたディスク部52とを有している。供試材59としては、上記フィン材と同材質で断面積が5mm2の棒状(ピン状)部材を用いた。また、ディスク部52にはSKDを使用した。そして、供試油(試料E1〜E16及び試料C1〜C24)をディスク部52と供試材59との間の摺動部に滴下して供給し、ディスク部52を回転させて、アルミ粉凝着量及び摩擦係数を測定した。測定は、常温で行い、支持部51に付与した荷重Fは10kgf、回転半径(ディスク部52の中心から供試材59の中心までの距離)は15mm、回転数は30rpm、測定時間は20minという条件にて行った。
アルミ粉凝着性の判定基準は、アルミ粉凝着量の量によって、合格(◎、○)、不合格(△、×)を判断した。アルミ粉凝着量が0.0001mg/m以下の場合を「◎◎」で示し、0.0001mg/mを超え0.0002mg/m以下の場合を「◎」で示し、0.0002mg/m超え0.0004mg/m以下の場合を「○」で示した。また、0.0004mg/m超え0.0006mg/m以下の場合を「△」、0.0006mg/m超える場合を「×」で示した。
また、摩擦係数は、0.2以下の場合を合格とした。
<アルミ磨耗粉評価>
フィンプレスにおいて発生するアルミ磨耗粉の定量評価を行った。
具体的には、まず、図2に示すごとく、上記加工性評価試験にて使用したものと同様のピンオンディスク試験装置5を準備した。次いで、該ピンオンディスク試験装置5のディスク部52及び供試材59をカップ部60内に配置し、該カップ部60内に、ディスク部52と供試材59とが浸漬するように供試油(試料E1〜E16及び試料C1〜C24)を一定量(100ml)供給した。そして、支持部51に荷重F(10kgf)を付与し、常温下でディスク部52を回転数30rpmで20分間回転させた。なお、回転半径(ディスク部52の中心から供試材59の中心までの距離)は15mmであった。その後、各供試油中に発生したアルミ磨耗粉を塩酸に溶解し、そのアルミ摩耗粉の量を原子吸光分光分析により定量した。
判定は、アルミ摩耗粉の量によって行った。アルミ摩耗粉が10ppm以上の場合を「×」で示し、5〜10ppmの場合を「△」で示し、5ppm未満の場合を「○」で示した。「△」、「×」を不合格、「○」を合格とした。
<銅管蟻の巣腐食性評価試験>
供試油(試料E1〜試料E16及び試料C1〜C24)6mLと蒸留水50mL、銅粉1gを100mLビーカー中に加え、90℃の恒温乾燥機中で48時間加熱した。冷却後、水層の約2mLを抜き取り、水層に溶出している有機酸イオン濃度をイオンクロマトグラフ法により分析した。分析元素は、ギ酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、酪酸イオンとした。
判定基準は、水層への溶出量が、5ppm(mg/L)以下の場合を合格とし、「◎」で示した。5ppm(mg/L)を超える場合を不合格とし、「×」印で示した。
<油残存性>
上記素材表面へ供試油(試料E1〜試料E16及び試料C1〜試料24)を滴下し、素材表面と油滴間で形成される接触角を測定し、評価した。
判定基準は、接触角が35°以下の場合を合格とし、「◎」印で示した。35°を超える場合を不合格とし、「×」印で示した。
<臭気性評価試験>
各供試油(試料E1〜試料E16及び試料C1〜試料24)について、無差別に選定した10人に臭気を嗅がせて臭気無し、臭気有りの判定をしてもらい、人数により評価した。◎○印を合格とした。
判定基準は、臭気無しと判定した人が10人の場合を「◎」とし、臭気無しと判定した人が9人以下5人以上の場合を「○」とし、臭気無しと判定した人が4人以下1人以上の場合を「△」とし、臭気無しと判定した人が0人の場合を「×」とし、人数が多いほど良好とした。
<手荒れ性評価試験>
各供試油(試料E1〜試料E16及び試料C1〜試料24)について、無差別に選定した10人に素手で触らせて、かゆみ等の違和感無し、違和感有りの判定をしてもらい、人数により評価した。◎○印を合格とした。
判定基準は、違和感無しと判定した人が10人の場合を「◎」とし、違和感無しと判定した人が9人以下5人以上の場合を「○」とし、違和感無しと判定した人が4人以下1人以上の場合を「△」とし、違和感無しと判定した人が0人の場合を「×」とし、人数が多いほど良好とした。
<作業性(凝固点)>
各供試油(試料E1〜試料E16及び試料C1〜試料24)について、低温用DTA装置によりDTA曲線を求めて凝固点を測定し、20℃以下であれば合格とした。そのうち、10℃以下の場合を◎とし、10℃を超え20℃以下の場合を「○」とした。また、20℃を超える場合を不合格とし「×」印で示した。
Figure 0004751054
Figure 0004751054
表4より知られるごとく、試料C1〜C24の潤滑油は、少なくとも一つの評価項目が不合格となった。これに対し、表3から知られるごとく、試料E1〜E16の潤滑油は、全ての評価項目において合格する優れたものであることがわかった。
また、表3及び表4から知られるごとく、上記試料E1〜E16は、第2添加剤を含有していない試料C14〜C24に比べてアルミ摩耗粉の発生を抑制できることがわかる。
このように、本発明の実施例にかかるフィンプレス用潤滑油(試料E1〜試料E16)は、臭いや肌荒れ等の問題がなく、低コストで、乾燥性もよく、ポンチへのアルミ粉の凝着を有効に抑制できると共に、アルミ磨耗粉の発生を抑制できることがわかる。
実施例にかかる、ピンオンディスク試験装置の構成を示す斜視説明図。 実施例にかかる、ピンオンディスク試験装置をカップ内に配置したときの構成を示す正面説明図。 従来例における、フィン材のドロー・しごき併用方式の加工方法を示す説明図。
符号の説明
5 ピンオンディスク試験装置
59 供試材

Claims (3)

  1. アルミニウム板よりなる熱交換器用フィン材をプレス加工する際に用いられるフィンプレス用潤滑油において、
    ノンアロマ鉱油または/およびイソパラフィンよりなる基油と、
    一般式R1−COO−R2(ただし、R1は炭素数7〜17のアルキル基、R2は炭素数1〜4のアルキル基)により示される脂肪酸エステルよりなる第1添加剤と、
    炭素数4〜20の炭化水素基を有する脂肪族アミン、炭素数4〜20の炭化水素基を有するアルカノールアミン、炭素数4〜20の炭化水素基を有する脂環式アミン及びそれらのアルキレンオキシド付加物から選ばれる少なくとも1種以上からなる第2添加剤とを含有してなり、
    上記第1添加剤と上記第2添加剤と上記基油との合計量に対する上記第1添加剤の含有割合は1〜10重量%であり、
    上記第1添加剤と上記第2添加剤と上記基油との合計量に対する上記第2添加剤の含有割合は0.01〜2.0重量%であり、
    かつ、上記フィンプレス用潤滑油の粘度は、温度40℃における動粘度で1.0〜3.5mm2/sであることを特徴とするフィンプレス用潤滑油。
  2. 請求項1において、上記フィンプレス用潤滑油の沸点は、150〜300℃であることを特徴とするフィンプレス用潤滑油。
  3. アルミニウム板よりなる熱交換器用フィン材をプレス加工して熱交換器のプレートフィンを作製するプレートフィンの製造方法において、
    上記熱交換器用フィン材のプレス加工時に、請求項1又は2に記載の上記フィンプレス用潤滑油を用いることを特徴とするプレートフィンの製造方法。
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