JP4751054B2 - フィンプレス用潤滑油及びプレートフィンの製造方法 - Google Patents
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すなわち、上記特許文献1、2に記載のフィンプレス用潤滑油、あるいは市販のフィンプレス用潤滑油においては、(1)プレス加工工程の一つである穴開け加工(剪断加工)において、ポンチにアルミ粉が凝着しやすい、(2)プレス加工後に潤滑油を除去するために乾燥させるが、乾燥がなかなか進まない、(3)臭いがあり作業環境を悪化させる、(4)皮膚に触れるとかゆみや肌荒れが生じやすい、などの問題を少なからず有していた。
特に、アルミ粉の凝着は、ポンチの手入れを頻繁にすることによって回避するしかなく、根本的な解決策を見出し得ていなかった。
しかしながら、近年、生産性の向上に対する要求がますます厳しくなり、生産スピードをより一層高くすることにより大量のアルミ摩耗粉が発生するという問題が生じてきた。この大量に発生したアルミ摩耗粉は、金型に付着して、熱交換器用のプレートフィンに種々の品質問題を引き起こす場合があった。
そこで、生産性の向上をさらに図るべく、アルミ磨耗粉の発生を抑制できるフィンプレス用潤滑油の開発が強く望まれている。
ノンアロマ鉱油または/およびイソパラフィンよりなる基油と、
一般式R1−COO−R2(ただし、R1は炭素数7〜17のアルキル基、R2は炭素数1〜4のアルキル基)により示される脂肪酸エステルよりなる第1添加剤と、
炭素数4〜20の炭化水素基を有する脂肪族アミン、炭素数4〜20の炭化水素基を有するアルカノールアミン、炭素数4〜20の炭化水素基を有する脂環式アミン、及びそれらのアルキレンオキシド付加物から選ばれる少なくとも1種以上からなる第2添加剤とを含有してなり、
上記第1添加剤と上記第2添加剤と上記基油との合計量に対する上記第1添加剤の含有割合は1〜10重量%であり、
上記第1添加剤と上記第2添加剤と上記基油との合計量に対する上記第2添加剤の含有割合は0.01〜2.0重量%であり、
かつ、上記フィンプレス用潤滑油の粘度は、温度40℃における動粘度で1.0〜3.5mm2/sであることを特徴とするフィンプレス用潤滑油にある(請求項1)。
すなわち、本発明のフィンプレス用潤滑油は、臭いや肌荒れ等の問題がなく、低コストで、乾燥性もよく、特に、剪断加工を伴う穴開け加工を行う際には、ポンチへのアルミ粉の凝着を従来よりも大幅に抑制することができると共に、さらにアルミ磨耗粉の発生量を大幅に抑制することができる。
それ故、本発明によれば、工具寿命、作業効率、作業環境、加工精度等の総合的なプレス加工を、従来に比べ格段に向上させることができる。
上記熱交換器用フィン材のプレス加工時に、請求項1又は2に記載の上記フィンプレス用潤滑油を用いることを特徴とするプレートフィンの製造方法にある(請求項3)。
そのため、上記フィンプレス用潤滑油の優れた特徴を生かして、高速でプレス加工を行ってもポンチへのアルミ粉の凝着をほとんど生じることなく、さらにアルミ摩耗粉の発生量を抑制することができる。それ故、高い生産性で高品質のプレートフィンを製造することができる。また、臭いや肌荒れ等の問題を生じることなく、より良い作業環境で熱交換器用フィン材を作製することができる。さらに、上記フィンプレス用潤滑油は、低コストであるため、低コストで上記プレートフィンを作製することができる。また、上記フィンプレス用潤滑油の優れた乾燥性を生かして、プレス後の乾燥により上記潤滑油を簡単に除去することができるため、より高品質のプレートフィンを作製することができる。
上記ノンアロマ鉱油は、アロマ系の鉱油を全く含まない鉱油であり、ナフテン若しくはパラフィンの1種または2種の鉱油が採用され得る。また、上記基油は、上記のごとく、合成油であるイソパラフィン単独であってもよいし、イソパラフィンとノンアロマ鉱油との混合であってもよい。これらの基油を採用することにより、低コストで、かつ臭いや肌荒れによる作業環境の悪化を好適に防止し得る。
上記一般式に含まれるアルキル基R1としては、上記のごとく、その炭素数を7〜17とする。R1の炭素数が7未満の場合には、潤滑性不良、アルミ粉凝着による成形不良、および臭気がきつく作業環境を悪化させるという問題がある。一方、R1の炭素数が17を超える場合には、乾燥性が悪化(乾燥しにくい)し、かつ融点が高くなり常温で固化しやすくなることによる作業性の悪化という問題がある。これらの、潤滑性、アルミ粉凝着性、臭気、乾燥性、作業性の理由から、アルキル基R1の炭素数の範囲は、7〜17であることが好ましい。より好ましくは9〜13である。
上記第2添加剤として用いられるアミン類としては、例えば脂肪族アミン、アルカノールアミン、脂肪族ポリアミン、芳香族アミン、脂環式アミン、及び複素環アミン等がある。また、これらのアミン類には、ヒドロキシル基、エーテル基が含まれていても良い。
芳香族アミンの具体例としては、アニリン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン等がある。
また、アルキレンオキシドの付加モル数は1〜6が好ましく、より好ましくは1〜4がよい。アルキレンオキシドの付加モル数が6を越える場合には、基油への溶解性が悪くなるおそれがある。
特に好ましくは、工業的に安価なジアルキルスルホコハク酸ナトリウムがよい。そのアルキル基の炭素数(C数)としては、4〜18であることが好ましい。アルキル基の炭素数が4未満の場合には、上記第2添加剤の基油に対する分散性が低下するおそれがある。一方18を越える場合には、粘度が高くなりすぎるため、取り扱いが困難になり、上記フィンプレス用潤滑油の調整が困難になるおそれがある。
上記第1添加剤の含有割合が1重量%未満の場合には、潤滑不良、およびアルミ粉凝着によるフレア割れや工具寿命低下という問題が生じるおそれがある。一方、10重量%を超える場合には、乾燥性の悪化、および高コストという問題が生じるおそれがある。
上記第2添加剤の含有割合が0.01重量%未満の場合には、アルミ摩耗粉の凝集を抑制することができず、また、アルミ摩耗粉の発生量が増大するおそれがある。その結果、アルミ摩耗粉がプレス加工時の金型に凝集付着して、加工後に得られるプレートフィン等のアルミニウム製品の品質が低下するおそれがある。一方2重量%を越えて上記第2添加剤を加えても、アルミ摩耗粉の凝集効果は向上せず、ムダにコストが高くなってしまうおそれがある。また、2重量%を越える場合には、乾燥により上記フィンプレス用潤滑油を除去する際に、基油の揮発後に残留する成分が多くなり、プレートフィン等のアルミニウム製品の品質を低下させるおそれがある。好ましくは、上記第2添加剤の含有割合は0.1〜1.0重量%がよい。
上記フィンプレス用潤滑油の温度40℃における動粘度は、例えばキャノン・フェンスケ粘度計(毛管粘度計の一種)により、一定量の試験油(フィンプレス用潤滑油)が毛管を通過するのに要する時間から測定することができる(キャノン・フェンスケ粘度測定方法)。
上記フィンプレス用潤滑油の沸点が150℃未満の場合には、常温での乾燥速度が速く、潤滑油の消費量が増加し、高コスト化するおそれがある。一方、300℃を超える場合には、フィンプレス後の乾燥時に、乾燥し難くなるおそれがある。
上記第2の発明においては、これらのプレス加工時に、上記第1の発明のフィンプレス用潤滑油を用いてプレートフィンを作製することができる。
また、上記第2の発明によって得られるプレートフィンは、複数のプレートフィンとチューブとを組み合わせて熱交換器(プレートフィンチューブ熱交換器)として用いることできる。
本発明のフィンプレス用潤滑油にかかる実施例につき、具体的に説明する。
本例では、表1に示すごとく、本発明の実施例として、複数種類のフィンプレス用潤滑油(試料E1〜E16)と、比較例として複数種類のフィンプレス用潤滑油(試料C1〜C24)を作製し、各種性能の比較試験を行った。
各種試験の結果は、表3(試料E1〜試料E16)及び表4(試料C1〜試料C24)に示す。なお、本例では、素材の材質として上記のJISA1050を用いたが、フィン材として一般に用いられているJISA1100、JISA1200、Al−Mn系合金を用いても本例と同様の結果が得られる。
上記素材(フィン材)をφ25mmの平底カップに加工し、その中に10g/m2となるように供試油(試料E1〜E16及び試料C1〜C24)を加えた後、温度100℃にて5分間加熱保持し、加熱前後の重量差を求め、乾燥後の残油量を測定した。
判定基準は、加熱による乾燥後の残油量が0.1g/m2以下の場合を合格とした。そのうち、0.05g/m2超えの場合を「○」印で示し、0.05g/m2以下の場合を「◎」印で示した。0.1g/m2超えの場合は不合格とし、「×」印で示した。
図1に示すごとく、ピンオンディスク試験装置5を用いて、アルミ粉凝着性及び摩擦係数を評価した。ピンオンディスク試験装置5は、ピン状の供試材59を固定する支持部51と、これに対面して回動可能に配設されたディスク部52とを有している。供試材59としては、上記フィン材と同材質で断面積が5mm2の棒状(ピン状)部材を用いた。また、ディスク部52にはSKDを使用した。そして、供試油(試料E1〜E16及び試料C1〜C24)をディスク部52と供試材59との間の摺動部に滴下して供給し、ディスク部52を回転させて、アルミ粉凝着量及び摩擦係数を測定した。測定は、常温で行い、支持部51に付与した荷重Fは10kgf、回転半径(ディスク部52の中心から供試材59の中心までの距離)は15mm、回転数は30rpm、測定時間は20minという条件にて行った。
また、摩擦係数は、0.2以下の場合を合格とした。
フィンプレスにおいて発生するアルミ磨耗粉の定量評価を行った。
具体的には、まず、図2に示すごとく、上記加工性評価試験にて使用したものと同様のピンオンディスク試験装置5を準備した。次いで、該ピンオンディスク試験装置5のディスク部52及び供試材59をカップ部60内に配置し、該カップ部60内に、ディスク部52と供試材59とが浸漬するように供試油(試料E1〜E16及び試料C1〜C24)を一定量(100ml)供給した。そして、支持部51に荷重F(10kgf)を付与し、常温下でディスク部52を回転数30rpmで20分間回転させた。なお、回転半径(ディスク部52の中心から供試材59の中心までの距離)は15mmであった。その後、各供試油中に発生したアルミ磨耗粉を塩酸に溶解し、そのアルミ摩耗粉の量を原子吸光分光分析により定量した。
供試油(試料E1〜試料E16及び試料C1〜C24)6mLと蒸留水50mL、銅粉1gを100mLビーカー中に加え、90℃の恒温乾燥機中で48時間加熱した。冷却後、水層の約2mLを抜き取り、水層に溶出している有機酸イオン濃度をイオンクロマトグラフ法により分析した。分析元素は、ギ酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、酪酸イオンとした。
判定基準は、水層への溶出量が、5ppm(mg/L)以下の場合を合格とし、「◎」で示した。5ppm(mg/L)を超える場合を不合格とし、「×」印で示した。
上記素材表面へ供試油(試料E1〜試料E16及び試料C1〜試料24)を滴下し、素材表面と油滴間で形成される接触角を測定し、評価した。
判定基準は、接触角が35°以下の場合を合格とし、「◎」印で示した。35°を超える場合を不合格とし、「×」印で示した。
各供試油(試料E1〜試料E16及び試料C1〜試料24)について、無差別に選定した10人に臭気を嗅がせて臭気無し、臭気有りの判定をしてもらい、人数により評価した。◎○印を合格とした。
判定基準は、臭気無しと判定した人が10人の場合を「◎」とし、臭気無しと判定した人が9人以下5人以上の場合を「○」とし、臭気無しと判定した人が4人以下1人以上の場合を「△」とし、臭気無しと判定した人が0人の場合を「×」とし、人数が多いほど良好とした。
各供試油(試料E1〜試料E16及び試料C1〜試料24)について、無差別に選定した10人に素手で触らせて、かゆみ等の違和感無し、違和感有りの判定をしてもらい、人数により評価した。◎○印を合格とした。
判定基準は、違和感無しと判定した人が10人の場合を「◎」とし、違和感無しと判定した人が9人以下5人以上の場合を「○」とし、違和感無しと判定した人が4人以下1人以上の場合を「△」とし、違和感無しと判定した人が0人の場合を「×」とし、人数が多いほど良好とした。
各供試油(試料E1〜試料E16及び試料C1〜試料24)について、低温用DTA装置によりDTA曲線を求めて凝固点を測定し、20℃以下であれば合格とした。そのうち、10℃以下の場合を◎とし、10℃を超え20℃以下の場合を「○」とした。また、20℃を超える場合を不合格とし「×」印で示した。
また、表3及び表4から知られるごとく、上記試料E1〜E16は、第2添加剤を含有していない試料C14〜C24に比べてアルミ摩耗粉の発生を抑制できることがわかる。
59 供試材
Claims (3)
- アルミニウム板よりなる熱交換器用フィン材をプレス加工する際に用いられるフィンプレス用潤滑油において、
ノンアロマ鉱油または/およびイソパラフィンよりなる基油と、
一般式R1−COO−R2(ただし、R1は炭素数7〜17のアルキル基、R2は炭素数1〜4のアルキル基)により示される脂肪酸エステルよりなる第1添加剤と、
炭素数4〜20の炭化水素基を有する脂肪族アミン、炭素数4〜20の炭化水素基を有するアルカノールアミン、炭素数4〜20の炭化水素基を有する脂環式アミン、及びそれらのアルキレンオキシド付加物から選ばれる少なくとも1種以上からなる第2添加剤とを含有してなり、
上記第1添加剤と上記第2添加剤と上記基油との合計量に対する上記第1添加剤の含有割合は1〜10重量%であり、
上記第1添加剤と上記第2添加剤と上記基油との合計量に対する上記第2添加剤の含有割合は0.01〜2.0重量%であり、
かつ、上記フィンプレス用潤滑油の粘度は、温度40℃における動粘度で1.0〜3.5mm2/sであることを特徴とするフィンプレス用潤滑油。 - 請求項1において、上記フィンプレス用潤滑油の沸点は、150〜300℃であることを特徴とするフィンプレス用潤滑油。
- アルミニウム板よりなる熱交換器用フィン材をプレス加工して熱交換器のプレートフィンを作製するプレートフィンの製造方法において、
上記熱交換器用フィン材のプレス加工時に、請求項1又は2に記載の上記フィンプレス用潤滑油を用いることを特徴とするプレートフィンの製造方法。
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