JP4750424B2 - 含フッ素ケテンシリルアセタールを用いたマイケル付加体の製造方法 - Google Patents

含フッ素ケテンシリルアセタールを用いたマイケル付加体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、パーフルオロアルキル基、ポリフルオロアルキル基、又はフルオロアルキル基を有するケテンシリルアセタールを用いたマイケル付加体の製造方法に関する。該マイケル付加体は、医農薬及び精密化成品を含む各種の有機化合物、並びにそれらの中間体として用いることができる。
パーフルオロアルキル基、ポリフルオロアルキル基、又はフルオロアルキル基を有する化合物は、これらの官能基に由来する特徴的な生物学的活性を有することから、その製造方法が検討されている。中でも、パーフルオロアルキル基、ポリフルオロアルキル基、又はフルオロアルキル基、そしてカルボキシル又はカルボアルコキシ基を有するマイケル付加体は、マイケル付加により導入された末端官能基を有するため、有用な中間体となる。そこで、これらのマイケル付加体は、医農薬及び精密化成品を含む各種の有機化合物の中間体として注目されている。
マイケル反応は、有機合成における重要な炭素−炭素結合生成反応の一つとして古くから知られており、一般的には塩基性条件下で反応が行なわれているが、強塩基に由来した副反応を抑制するために、求核剤としてシリルエノラートを用い、温和な条件下でルイス酸を作用させる反応が報告されている(非特許文献1を参照)。ここで、シリルエノラートとしては、シリルエノールエーテル及びケテンシリルアセタールが知られているが、ケテンシリルアセタールは求核力が高いため、マイケル付加以外の種々の増炭反応にも有用である。
含フッ素アルキル基を有するケテンシリルアセタールの反応としては、トリフルオロメチル基を有する
CF3CH=C(OSiMe3)(OMe)
を特定の脂肪族ジメチルアセタール又は脂肪族酸クロライドと反応させて、アルドール誘導体を合成することが報告されている。(非特許文献2を参照)。
しかし、該ケテンシリルアセタールとα,β−不飽和アルデヒド及びα,β−不飽和ケトンとの1,4−付加(マイケル反応)に関する反応例はこれまで報告されていない。その理由は、トリフルオロメチル基を有するケテンシリルアセタールの反応性が低く、反応させうる求電子剤が大幅に限定されているためである。この低い反応性は、トリフルオロメチル基の強い静電反発による立体障害及びカルボアニオンの求核力が低いことが原因と考えられる。上記のケテンシリルアセタールでは、トリフルオロメチル基の結合するα炭素は3級炭素であるが、α炭素を4級とすると立体障害の影響はさらに大きくなる。従って、パーフルオロアルキル基、ポリフルオロアルキル基、又はフルオロアルキル基のα炭素を多くの官能基で置換した、より複雑な化合物の合成、すなわち、α炭素が4級炭素となるマイケル付加体の合成は、これまで一般的に非常に困難であるとされてきた。
そこで、パーフルオロアルキル基、ポリフルオロアルキル基、又はフルオロアルキル基を有するマイケル付加体の製造方法、特にα炭素が4級炭素であるマイケル付加体の製造方法が求められている。
T. Mukaiyama, Angew. Chem., Vol.16, P.817 (1977) T. Yokozawa et al., Tetrahedron Lett., Vol.25, P.3991 (1984)
本発明は上記の事情に鑑みなされたものであり、パーフルオロアルキル基、ポリフルオロアルキル基、又はフルオロアルキル基を有し、かつこれらの置換基のα炭素が4級炭素となるマイケル付加体の製造方法を提供する。
本発明者らはこれらの課題を解決すべく鋭意検討を進めた結果、2位に置換シリル基とパーフルオロアルキル基、ポリフルオロアルキル基、又はフルオロアルキル基とを有するケテンシリルアセタールを原料として使用することによって、α,β−不飽和アルデヒド及びα,β−不飽和ケトンとの反応が可能で、かつパーフルオロアルキル基、ポリフルオロアルキル基等のα炭素が4級炭素となるマイケル付加体を簡便に高収率で得られることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下のものを提供する。
[1] 式(1):
若しくは式(1’):
(式中、Rはパーフルオロアルキル基、ポリフルオロアルキル基、又はフルオロアルキル基を表し、
11は水素又は1価の有機基を表し、
12、R13、R14、R15、R16、及びR17は、独立して、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロシクロアルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキルアルキル基、シクロアルケニルアルキル基、ヘテロシクロアルキルアルキル基、ヘテロシクロアルケニルアルキル基、アリールアルキル基、ヘテロアリールアルキル基、アリールアルケニル基、及びヘテロアリールアルケニル基からなる群より選択され、同一であっても異なってもよい。)
で表されるケテンシリルアセタール又はこれらの混合物を、
式(2):
21(R22)C=C(R23)−CHO (2)
(式中、R21、R22及びR23は、独立して、水素、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキルアルキル基、ヘテロシクロアルキルアルキル基、アリールアルキル基、及びヘテロアリールアルキル基からなる群より選択され、同一であっても異なってもよい。)
で表されるα,β−不飽和アルデヒドと、ルイス酸、ニトリル又はこれらの組み合わせの存在下で反応させる工程を含む、式(4):
(式中、Rf、R11、R12、R13、R14、R21、R22及びR23は前記の通りである)
で表される化合物の製造方法。
[2] 式(1)若しくは式(1’)で表されるケテンシリルアセタール又はこれらの混合物を、式(3):
(式中、R21、R22及びR23は前記の通りである。R24、R25、R26、R27及びR28は、R21、R22及びR23と同様の置換基を表し、独立して、水素、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキルアルキル基、ヘテロシクロアルキルアルキル基、アリールアルキル基、及びヘテロアリールアルキル基からなる群より選択され、同一であっても異なってもよい。)
で表されるα,β−不飽和ケトンと、ルイス酸、ニトリル、又はこれらの組み合わせの存在下で反応させる工程を含む、式(5):
(式中、R、R11、R12、R13、R14、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR28は、前記の通りである)
で表される化合物の製造方法。
[3] R12、R13、R14、R15、R16及びR17が、独立して、アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキルアルキル基、ヘテロシクロアルキルアルキル基、アリールアルキル基、及びヘテロアリールアルキル基からなる群より選択される、[1]又は[2]の製造方法。
[4] R12、R13、R14、R15、R16及びR17が、独立して、置換又は未置換のメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ベンジル基、フェネチル基、及びフェニル基からなる群より選択される、[1]−[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5] R11が、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、及びヘテロアリールアルキル基からなる群より選択される、[1]−[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6] R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR28が、水素、アルキル基、アルコキシアルキル基、カルボアルコキシアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、及びヘテロアリールアルキル基からなる群より選択される、[1]−[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7] ルイス酸がトリメチルシリルトリフルオロメタンスルフォネート、三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、塩化スズ、塩化亜鉛、及び臭化亜鉛からなる群より選択される1種以上である、[1]−[6]の何れかに記載の製造方法。
[8] ニトリルがアセトニトリルである[1]−[7]の何れかに記載の製造方法。
[9] 式(1)若しくは(1’)のケテンシリルアセタール又はそれらの混合物と式(2)又は(3)の化合物との反応が溶媒中で行われ、該溶媒が置換若しくは未置換の脂肪族炭化水素、置換若しくは未置換の芳香族炭化水素、エーテル、非プロトン性極性溶媒、又はそれらの混合物である、[1]−[8]の何れかに記載の製造方法。
[10] 式(1)若しくは(1’)のケテンシリルアセタール又はそれらの混合物と式(2)又は(3)の化合物との反応が−90℃から100℃の範囲で行われる、[1]−[9]の何れかに記載の製造方法。
[11] 式(1)若しくは(1’)のケテンシリルアセタール又はそれらの混合物と式(2)又は(3)の化合物との反応が常圧から200kPaまでの範囲で行われる、[1]−[10]の何れかに記載の方法。
本発明に使用される式(1):
又は式(1’):
のケテンシリルアセタールにおいて、Rfはパーフルオロアルキル基、ポリフルオロアルキル基、又はフルオロアルキル基を表す。ここでパーフルオロアルキル基とは、H原子が全てF原子で置換されたアルキル基を指し、ポリフルオロアルキル基とは、2つ以上のH原子がF原子で置換されたアルキル基を指し、また、フルオロアルキル基とは、1つのH原子がF原子で置換されたアルキル基を指す。
fの炭素数に特に制限はないが、好ましくはC1-8、さらに好ましくはC1-6、より好ましくはC1-4である。Rfとして、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、テトラフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘキサフルオロプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロn−プロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ノナフルオロn−ブチル基、ノナフルオロt−ブチル基などが例示されるが、これらに限定されない。
11は、水素原子基又は一価の有機基を表し、反応条件下で不活性であることが好ましい。R11として、一価の有機基とは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルケニル基、シクロアルキルアルキル基、ヘテロシクロアルキルアルキル基、シクロアルケニルアルキル基、ヘテロシクロアルケニルアルキル基、アミノアルキル基、アシルアルキル基、アルコキシアルキル基、チオアルコキシアルキル基、アリールオキシアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アシルオキシアルキル基、有機シリル基が挙げられる。
本明細書において、単独で又は他の基の一部として用いられる「アルキル基」は未置換であっても1以上の置換基で置換されていても良く、直鎖であっても分岐状であっても良い。アルキル基の炭素数に特に制限はなく、好ましくはC1-20、さらに好ましくはC1-12、より好ましくはC1-8、さらにより好ましくはC1-6、なお好ましくはC1-4である。アルキル基として、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソアミル、ヘキシル、オクチルが挙げられる。該アルキル基が置換されている場合、置換基としてハロゲン(F,Cl,Br,I)、SH、アミノ、アルコキシ、アルキルチオ、ハロアルコキシ、ハロアルキルチオが挙げられる。
ここでアルコキシ基とは、前記のアルキル基に酸素が結合した一価の基を指し、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、及びtert−ブトキシ基が含まれる。アルコキシ基の炭素数は、典型的にはC1-6である。アルキルチオ基は該アルコキシ基の−O−を−S−で置換した基を指し、ハロアルコキシ基及びハロアルキルチオ基は該アルコキシ基及び該アルキルチオ基の少なくとも1つのHをハロゲンで置換した基を指す。
本明細書において、単独で又は他の基の一部として用いられる「アルケニル基」は未置換であっても1以上の置換基で置換されていても良く、直鎖であっても分岐状であっても良い。アルケニル基の炭素数に特に制限はなく、好ましくはC2-20、さらに好ましくはC2-12、より好ましくはC2-8、さらにより好ましくはC2-6、なお好ましくはC2-4である。アルケニル基として、アリル、プロペニル、ブテニル及び3−メチルブテニルが挙げられる。アルケニル基の置換基としては、アルキル基の置換基として上に述べた基が挙げられる。
本明細書において、単独で又は他の基の一部として用いられる「アルキニル基」は未置換であっても1以上の置換基で置換されていても良く、直鎖であっても分岐状であっても良い。アルキル基の炭素数に特に制限はなく、好ましくはC2-20、さらに好ましくはC2-12、より好ましくはC2-8、さらにより好ましくはC2-6、なお好ましくはC2-4である。アルキニル基として、エチニル、プロピニル、プロパルギル、ブチニル、イソブチニル、ペンチニル、ヘキシニルが挙げられる。アルキニル基の置換基としては、アルキル基の置換基として上に述べた基が挙げられる。
本明細書において、単独で又は他の基の一部として用いられる「アリール基」は芳香族炭化水素基を指し、縮合していても良い。アリール基には、フェニル、インデニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル及びビフェニルが含まれる。アリール基の炭素数に特に制限はなく、好ましくはC6-18、より好ましくはC6-12である。アリール基は未置換であっても良く、1以上の置換基で置換されていても良い。置換基として、ハロゲン、アミノ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、アシル、アシルアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、アルキル、パーフルオロアルキル、ポリフルオロアルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、アルキルチオ、ハロアルコキシ、ハロアルキルチオが挙げられる。
本明細書において、単独で又は他の基の一部として用いられる「ヘテロアリール基」は、1つ以上のヘテロ原子を環中に有する芳香環を含有する基を意味し、縮合していても良い。ヘテロ原子には、窒素、酸素、硫黄が含まれる。ヘテロアリール基に2つ以上のヘテロ原子が含まれる場合、ヘテロ原子は同一であっても良く、異なっても良い。ヘテロアリール基は未置換であってもよく、1以上の基で置換されていても良い。置換基には、アリール基の置換基として上に記載した基やオキソ基が含まれる。ヘテロアリール基の炭素数に特に制限はなく、好ましくはC3-18、より好ましくはC4-12である。ヘテロアリール基には、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、トリアジニル、テトラゾリル、オキサゾリル、インドリジニル、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、プリニル、キノリジニル、イソキノリル、キノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、オキサジアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、ベンズイミダゾリル、フリル、チエニルが挙げられる。
本明細書において、単独で又は他の基の一部として用いられる「シクロアルキル基」は、非芳香族の飽和環式炭化水素を指す。シクロアルキル基は未置換であってもよく、1以上の置換基で置換されていても良い。置換基には、アルキル基の置換基として前述した基が含まれる。シクロアルキル基の炭素数に特に制限はなく、典型的にはC3-10、好ましくはC3-8である。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルが挙げられる。
本明細書において、単独で又は他の基の一部として用いられる「シクロアルケニル基」は、非芳香族の不飽和環式炭化水素を指す。環内の不飽和結合は1つであってもよく、2以上でもよい。シクロアルケニル基は未置換であってもよく、1以上の置換基で置換されていても良い。置換基には、シクロアルキル基の置換基として前述した基が含まれる。シクロアルケニル基の炭素数に特に制限はなく、典型的にはC3-10、好ましくはC4-8である。シクロアルケニル基の例としては、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル及びシクロブタジエニルが挙げられる。
本明細書において、単独で又は他の基の一部として用いられる「ヘテロシクロアルキル基」は、シクロアルキル基の1つ以上の炭素原子がヘテロ原子で置換されている基を指す。ヘテロ原子には、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子が含まれる。ヘテロシクロアルキル基は未置換であってもよく、1以上の置換基で置換されていてもよい。置換基には、シクロアルキル基の置換基として前述した基及びオキソ基が含まれる。ヘテロシクロアルキル基の炭素数に特に制限はなく、典型的にはC2-9である。ヘテロシクロアルキル基の例として、テトラヒドロフリル、モルホリニル、ピペラジニル、ピペリジル、ピロリジニルが挙げられる。
本明細書において、単独で又は他の基の一部として用いられる「ヘテロシクロアルケニル基」は、シクロアルケニル基の1つ以上の炭素原子がヘテロ原子で置換されている基を指す。ヘテロ原子には、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子が含まれる。ヘテロシクロアルケニル基は未置換であってもよく、1以上の置換基で置換されていてもよい。置換基には、ヘテロシクロアルキル基の置換基として上に記載した基が含まれる。ヘテロシクロアルケニル基の炭素数に特に制限はなく、典型的にはC2-9である。ヘテロシクロアルケニル基の例として、ジヒドロフリル、イミダゾリル、ピロリニル、ピラゾリニルが挙げられる。
アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、及びヘテロシクロアルキル基、ヘテロシクロアルケニル基は、2以上の環を含んでもよい。その様な場合、2以上の環は縮合していてもよく、スピロ原子によって結合していてもよく、1つの環が他の環の側鎖として結合していてもよい。
アリールアルキル基、ヘテロアリールアルキル基、シクロアルキルアルキル基、シクロアルケニルアルキル基、ヘテロシクロアルキルアルキル基、ヘテロシクロアルケニルアルキル基、アミノアルキル基、アシルアルキル基、アルコキシアルキル基、チオアルコキシアルキル基、アリールオキシアルキル、アルコキシカルボニルアルキル基、及びアシルオキシアルキル基は、アルキル基がそれぞれ1以上のアリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロシクロアルケニル基、アミノ基、アシル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、及びアシルオキシアルキル基で置換された基を指す。ここで、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、シクロアルケニル基、及びヘテロシクロアルケニル基は前述の通りであるが、アルキル基は直鎖であることが好ましい。
アミノ基は未置換であってもよく、置換されていてもよい。置換基としては、アルキル基及びアリール基が挙げられる。置換アミノ基の例としては、N−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N−フェニルアミノ基が挙げられる。
アシル基には、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、及びトリフルオロアセチル基が含まれる。アシル基の炭素数は典型的にはC1-6である。
有機シリル基は、シリル基の1以上のHが1価の有機基で置換された官能基であり、1価の有機基としてはR11について前述の基が挙げられる。有機シリル基には、後述するSiR121314で表される基が含まれる。
好ましいR11として、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、ヘテロアリールアルキル基、及び有機シリル基が例示される。
12、R13、R14、R15、R16、及びR17は、独立して、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロシクロアルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキルアルキル基、シクロアルケニルアルキル基、ヘテロシクロアルキルアルキル基、ヘテロシクロアルケニルアルキル基、アリールアルキル基、ヘテロアリールアルキル基、アリールアルケニル基、及びヘテロアリールアルケニル基からなる群より選択され、同一であっても異なってもよい。これらの基は、上に定義の通りである。
好ましくは、R12、R13、R14、R15、R16、及びR17は、独立して、アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキルアルキル基、ヘテロシクロアルキルアルキル基、アリールアルキル基、及びヘテロアリールアルキル基からなる群より選択され、同一であっても異なってもよい。
さらに好ましくは、R12、R13、R14、R15、R16、及びR17は、独立して、置換又は未置換のメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ベンジル基、フェネチル基、フェニル基から独立して選択され、同一であっても異なってもよい。
12、R13、及びR14は、全てアルキル基であってもよく、2つがアルキル基であり残りの1つがアリール基であってもよく、2つがアリール基であり残りの1つがアルキル基であってもよく、全てアリール基であってもよい。つまり、R121314Si−は、トリアルキルシリル、ジアルキルアリールシリル、アルキルジアリールシリル、またはトリアリールシリルでありうる。
15、R16、及びR17は、全てアルキル基であってもよく、2つがアルキル基であり残りの1つがアリール基であってもよく、2つがアリール基であり残りの1つがアルキル基であってもよく、全てアリール基であってもよい。つまり、R151617Si−は、トリアルキルシリル、ジアルキルアリールシリル、アルキルジアリールシリル、またはトリアリールシリルでありうる。
121314Si−及びR151617Si−は、同一であっても異なってもよい。
式(1)で表されるケテンシリルアセタールの例としては、1−メトキシ−1−トリメチルシロキシ−2−トリフルオロメチル−2−トリメチルシロキシエテン、1−メトキシ−1−トリメチルシロキシ−2−ペンタフルオロエチル−2−トリメチルシロキシエテン、1−メトキシ−1−トリメチルシロキシ−2−ヘプタフルオロプロピル−2−トリメチルシロキシエテン、1−iso−プロポキシ−1−トリメチルシロキシ−2−トリフルオロメチル−2−トリメチルシロキシエテン、1−n−ブトキシ−1−トリメチルシロキシ−2−トリフルオロメチル−2−トリメチルシロキシエテン、1−sec−ブトキシ−1−トリメチルシロキシ−2−トリフルオロメチル−2−トリメチルシロキシエテン、1−tert−ブトキシ−1−トリメチルシロキシ−2−トリフルオロメチル−2−トリメチルシロキシエテン、1−トリス(n−ヘキシル)シロキシ−1−トリメチルシロキシ−2−トリフルオロメチル−2−トリメチルシロキシエテン、1−シクロヘキシロキシ−1−トリメチルシロキシ−2−トリフルオロメチル−2−トリメチルシロキシエテン、1−フェノキシ−1−トリメチルシロキシ−2−トリフルオロメチル−2−トリメチルシロキシエテン、1−トリス(フェネチル)シロキシ−1−トリメチルシロキシ−2−トリフルオロメチル−2−トリメチルシロキシエテンを挙げることができるが、これらに限定されない。これらケテンシリルアセタールは、E体及びZ体のいずれの幾何異性体も本発明に使用することができる。
式(2):
21(R22)C=C(R23)−CHO (2)
で表されるカルボニル化合物において、R21、R22及びR23は、水素、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素など)、アルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキルアルキル基、ヘテロシクロアルキルアルキル基、アリールアルキル基、及びヘテロアリールアルキル基からなる群より選択され、R21、R22及びR23は同一であっても異なってもよい。これらの基は、上に定義の通りである。
好ましくは、R21、R22及びR23は、水素、アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキルアルキル基、ヘテロシクロアルキルアルキル基、アリールアルキル基、及びヘテロアリールアルキル基からなる群より選択され、R21及びR22は同一であっても異なってもよい。
さらに好ましくは、R21、R22及びR23は、水素、並びに置換又は未置換のメチル基、エチル基、プロピル基、アリル基、フェニル基、フェネチル基、アルコキシカルボニルアルキル基、フリル基、ピロリル基、チエニル基から選択され、R22は、水素、置換又は未置換のメチル基、エチル基、プロピル基、アリル基、フェニル基、フェネチル基、アルコキシカルボニルアルキル基、フリル基、ピロリル基、チエニル基からなる群より選択され同一であっても異なってもよい。
21、R22及びR23は、全てアルキル基であってもよく、2つがアルキル基であり残りの1つがアリール基又は水素であってもよく、2つがアリール基又は水素であり残りの1つがアルキル基であってもよく、全てアリール基又は水素であってもよい。つまり、R21(R22)C=C(R23)−CHOは、3置換α,β−不飽和アルデヒド、2置換α,β−不飽和アルデヒド、1置換α,β−不飽和アルデヒド、又は無置換のα,β−不飽和アルデヒドでありうる。
式(2)の化合物の例としては、アクロレイン、ジクロロアクロレイン、トリクロロアクロレイン、3−フェニルアクロレイン、2−ヘキセナールなどを挙げることができる。これらの内、脂肪族アルデヒドは反応性が高いという点で好ましい。
式(3)
(式中、R21、R22及びR23は前記の通りである。R24、R25、R26、R27及びR28は、R21、R22及びR23と同様の置換基を表し、独立して、水素、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキルアルキル基、ヘテロシクロアルキルアルキル基、アリールアルキル基、及びヘテロアリールアルキル基からなる群より選択され、、同一であっても異なってもよい。)
で表されるα,β−不飽和ケトンにおいて、R21、R22及びR23は前述の通りである。
また、R24、R25、R26、R27及びR28は、R21、R22及びR23と同様の置換基を表し、水素、アルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキルアルキル基、ヘテロシクロアルキルアルキル基、アリールアルキル基、及びヘテロアリールアルキル基からなる群より選択され、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR28は同一であっても異なってもよい。これらの基は、上に定義の通りである。
好ましくは、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR28は、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びシクロアルキルアルキル基からなる群より選択され、これらは同一であっても異なってもよい。
さらに好ましくは、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR28は、水素、並びに置換又は未置換のメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基から選択され同一であっても異なってもよい。
21、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR28は、全て水素であってもよく、1つがアルキル基又はアリール基であり残りの置換基が全て水素であってもよく、全てアルキル基又はアリール基であってもよい。つまり、式(3)は、無置換脂環式α,β−不飽和ケトン、1置換脂環式α,β−不飽和ケトン、2置換脂環式α,β−不飽和ケトン、3置換脂環式α,β−不飽和ケトン、4置換脂環式α,β−不飽和ケトン又は5から8置換脂環式α,β−不飽和ケトンでありうる。
式(3)の化合物の例としては、2−シクロヘキセン−1−オン、2−エチル−2−シクロヘキセン−1−オン、5−メチル−2−シクロヘキセン−1−オン、4−フェニル−2−シクロヘキセン−1−オン、3−メチル−2−シクロヘキセン−1−オン、6,6−ジメチル−2−シクロヘキセン−1−オン、5−フェニル−6−メチル−2−シクロヘキセン−1−オンなどを挙げることができる。これらの内、不飽和結合部位が無置換のα,β−不飽和ケトンは反応性が高いという点で好ましい。
式(1)の化合物、式(1’)の化合物、又はそれらの組み合わせと式(2)又は(3)の化合物とを反応させることにより、式(2)からは式(4)、式(3)からは式(5)のマイケル付加体が得られる。式(4)及び(5)ではα炭素が光学中心となるが、これらはR体であってもS体であってもそれらの混合物であってもよい。
これらの反応は、ルイス酸の存在下で行うことができる。使用するルイス酸に特に制限はなく、一般的なルイス酸を挙げることができる。中でも、含水率の低いルイス酸が好ましく、非水系のルイス酸がさらに好ましい。ここで非水系とは、不純物としての水分を除き、水和水や配位子としての水を化学式中に含まないことをいう。非水系のルイス酸には、有機ルイス酸、無機ルイス酸、ランタノイド系ルイス酸、有機リガンドが金属に配位したルイス酸又は有機カウンターアニオンが金属とイオン結合したルイス酸が挙げられる。
有機ルイス酸としては、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルフォネート、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランが挙げられる。無機ルイス酸としては、臭化亜鉛、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、四塩化チタン、四塩化スズ、ヨウ化銀が挙げられる。ランタノイド系ルイス酸としては、三塩化セリウム及びイットリビウムトリフラートが挙げられる。有機リガンドとしては、BINAP、BINOL、ペンタメチルシクロペンタジエニル及びテトラメチルピナコールが挙げられ、これらのリガンドがアルミニウム、チタン、ニッケル、鉄、亜鉛、ロジウム、パラジウム、ジルコニウム、ハフニウム、ユーロピウムなどの金属または非金属であるホウ素及びケイ素に配位したルイス酸を用いることができる。有機カウンターアニオンとしては、トリフラート、アセテート、シアニド、ヘキサフルオロホスホネート及びテトラフルオロボレートが挙げられ、これらのカウンターアニオンがチタン、銅、スズ、スカンジウム及び銀などの金属とイオン結合したルイス酸を用いることができる。これらの成分は単独で用いてもよく、組み合わせで用いてもよい。また、上記以外の成分と組み合わせて用いてもよい。そのような例としては、スカンジウムトリフラート−ジブチルチンアセテート、有機ルイス酸−金属ルイス酸系、有機ルイス酸−有機ルイス酸系、金属ルイス酸−金属ルイス酸系などが挙げられる。これらのうちで、有機ルイス酸又は有機リガンドを含む系、例えばトリメチルシリルトリフルオロメタンスルフォネート、BINOL−金属チタン系などが好ましい。
ルイス酸の形状に特に制限はなく、代表的な形状としては固体、液体などが挙げられ、ルイス酸の形状としては、溶媒に可溶で式(1)の化合物と効率的に接触できる形状が好ましい。
使用されるルイス酸の量は、式(1)及び(1’)のケテンシリルアセタールにも依存するが、一般には式(1)及び(1’)のケテンシリルアセタールの総和に対して、0.001当量以上、好ましくは0.01当量以上であり、また、10当量以下、好ましくは5当量以下である。ルイス酸の量が上記範囲未満では反応の進行が遅くなることがあり、上記範囲を超えると副反応の影響が生じやすい。
式(1)若しくは(1’)のケテンシリルアセタール又はそれらの混合物と式(2)又は式(3)の化合物との反応は、溶媒中で行なわれることが好ましい。溶媒としては、反応条件下で不活性なものであれば特に制限はなく、置換又は未置換の脂肪族炭化水素、置換又は未置換の芳香族炭化水素、ニトリル、酸アミド、エーテルが挙げられる。置換脂肪族炭化水素には、ハロゲン化脂肪族炭化水素、例えば塩化脂肪族炭化水素(例えば、ジクロロメタン、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン)が挙げられる。未置換脂肪族炭化水素には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンが含まれる。置換芳香族炭化水素には、ハロゲン化芳香族炭化水素(例えば、クロロベンゼンを含む塩化芳香族炭化水素)、及びアルキル置換芳香族炭化水素(例えば、トルエン及びキシレン)が挙げられる。ニトリルには、アセトニトリル、プロピオニトリル、フェニルアセトニトリル、イソブチロニトリル、ベンゾニトリルが含まれる。酸アミドには、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルホルムアミド、ホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノンが含まれる。エーテルには、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、1,2−エポキシエタン、ジブチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、置換テトラヒドロフランが含まれる。エーテルは、炭素数8以下、好ましくは6以下であることが好ましい。非プロトン性極性溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)が挙げられる。これらの溶媒の中でも、塩化メチレン、トルエンが好ましい。これらの溶媒は単独で使用してもよく、組み合わせて使用してもよい。
溶媒を適宜選択すると、ルイス酸を使用しなくても反応が充分な速度で進行する。このような溶媒としては、ニトリル、例えばアセトニトリルが挙げられる。これらの溶媒は、ルイス酸とともに使用してもよい。
溶媒の量は、出発原料の総和の1重量部に対して1重量部以上、好ましくは2重量部以上、100重量部以下、好ましくは10重量部以下である。
式(1)若しくは(1’)の化合物又はそれらの混合物と式(2)及び式(3)の化合物との反応は、−90℃以上、好ましくは−78℃以上、さらに好ましくは−50℃以上、150℃以下、好ましくは80℃以下、さらに好ましくは30℃以下で行われる。反応温度が上記範囲を超えると、副反応により収率低下を招くことがあり、上記範囲未満では、フッ化物イオン源の溶解度が下がるため反応速度が低下することがある。
反応時間は、反応体、ルイス酸、及びニトリルの種類、並びに反応条件に依存するが、通常10分以上、24時間以下、好ましくは10時間以下である。反応時間が上記範囲未満では反応が十分に進行しないことがあり、上記範囲を超えると副反応が生じやすい。
反応雰囲気に特に制限はないが、不活性ガス雰囲気が好ましい。不活性ガスは、窒素、ヘリウム、アルゴン等の一般的なガスを用いることができ、工業的には、安価な窒素ガスが好ましい。
反応圧力は、目的生成物が得られる限り特に制限はなく、常圧付近でもよく、常圧から200kPaの範囲、好ましくは常圧から150kPaの範囲の圧力下で行ってもよい。反応圧力が上記範囲未満では、水分の混入により収率の低下を招くことがあり、上記範囲を超えると反応操作が煩雑となって好ましくない。
その他の反応条件は、当業者に公知のルイス酸を用いる反応の条件が適用できる。
原料である式(1)、式(1’)、式(2)、及び式(3)、並びに生成物である式(4)及び式(5)の化合物は、水との反応性が高いことが多いため、使用する溶媒は水含有量が低いことが好ましい。もっとも、工業的に入手可能な溶媒に通常混入している程度の水分は、本製造方法の実施において特に問題にならず、従って水分を除去することなくそのまま使用できる。
式(1)若しくは式(1’)の化合物又はそれらの混合物と式(2)又は式(3)の化合物との反応を促進するため、反応は撹拌下で行なわれることが好ましい。反応剤が全て液体である場合は、各種公知の撹拌手段を用いることができる。反応剤又は助剤の一部が固体である場合、例えばルイス酸が固体又は坦持型である場合には、一般的に行なわれている各種公知のスラリー撹拌手段をとることができる。例えば、メカニカルスターラーによる撹拌、ルイス酸を充填した筒における液状の反応剤の循環、または超音波の照射などを挙げることができる。これらの方法により、反応剤同士の接触効率が増加し、反応速度が増大するとも考えられる。
生成する式(4)及び式(5)の化合物が水と反応しやすい場合には、脱水剤として作用する化合物を添加することが好ましい。
本発明の製造方法によると、簡便に合成可能な2−パーフルオロアルキル−2−トリアルキルシロキシケテンシリルアセタール類を原料として、従来では合成できなかった、パーフルオロアルキル基を有し、かつパーフルオロアルキル基のδ位にカルボニル官能基を有するマイケル付加体を、収率よく、かつ簡便に製造できる。本法によって得られるマイケル付加体は医薬、農薬ならびに精密化学品の合成中間体として有用であり、例えば医薬関係化合物においては、分子内環化することによって短工程で含フッ素糖類を合成することが可能となる。またさらに、抗菌剤や、酵素阻害剤など、種々の生理活性物質類縁体の合成にも有用である。
以下、実施例をもって本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕 5−オキソ−2−トリフルオロメチル−2−トリメチルシロキシペンタン酸メチル:
の合成
10mlのガラス製二口付き反応器に、二つのシロキシ基がC=Cについてトランス配置の関係にある(E)−1−メトキシ−1−トリメチルシロキシ−2−トリフルオロメチル−2−トリメチルシロキシエテン(302 mg、1 mmol)と市販のアクロレイン(56 mg、1 mmol)とを秤量して入れ、これらを3mlの蒸留した塩化メチレンに溶解し、アルゴン雰囲気で−78℃まで冷却した。そして、これにトリメチルシリルトリフルオロメタンスルフォネート(11 mg、5 mol%)を撹拌下で添加し、さらに40時間、−78℃で撹拌を続けた後、12時間、−50℃で反応させた。
氷浴下、その反応液に5%炭酸水素ナトリウム水溶液を3ml添加して、反応液を洗浄した後、有機層を分取した。さらに1%塩化アンモニウム水溶液2mlで洗浄した後、同様の操作を行い、得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。有機層中の溶媒を減圧下、エバポレーターで留去した後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで単離したところ、生成物として無色のオイル状液体(266 mg、93 %)が得られた。
5−オキソ−2−トリフルオロメチル−2−トリメチルシロキシペンタン酸メチル;1HNMR(300MHz,CDCl3)δ0.18(s,9H)、2.25(m,2H)、2.53(m,2H)、3.82(s,3H)、9.74(t,1H);19FNMR(282MHz、CDCl3,C66内部標準)δ84.9(s,3F)。
〔実施例2〕 3,3,3−トリフルオロ−2−(3−オキソシクロヘキシル)−2−トリメチルシロキシプロパン酸メチル:
の合成
10mlのガラス製二口付き反応器に、二つのシロキシ基がC=Cについてトランス配置の関係にある(E)−1−メトキシ−1−トリメチルシロキシ−2−トリフルオロメチル−2−トリメチルシロキシエテン(302 mg、1 mmol)と市販の2−シクロヘキセン−1−オン(96 mg、1 mmol)とを秤量して入れ、これらを3mlの蒸留した塩化メチレンに溶解し、アルゴン雰囲気で−78℃まで冷却した。そして、これにトリメチルシリルトリフルオロメタンスルフォネート(22 mg、10 mol%)を撹拌下で添加し、さらに24時間、−78℃で撹拌を続けた後、24時間、−40℃で反応させ、さらに6時間、−20℃で反応させた。
氷浴下、その反応液に5%炭酸水素ナトリウム水溶液を3ml添加して、反応液を洗浄した後、有機層を分取した。さらに1%塩化アンモニウム水溶液2mlで洗浄した後、同様の操作を行い、得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。有機層中の溶媒を減圧下、エバポレーターで留去した後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで単離したところ、生成物として無色のオイル状液体(313 mg、96 %)が得られた。Varian社製Mercury 300MHz 19F NMRによる分析の結果、得られた生成物は、ジアステレオ比(66:34)の混合物であることがわかった。
3,3,3−トリフルオロ−2−(3−オキソシクロヘキシル)−2−トリメチルシロキシプロパン酸メチル(ジアステレオ比:66%);1HNMR(300MHz,CDCl3)δ0.19(s,9H)、1.36−1.69(m,3H)、1.90−2.56(m,6H)、3.81(s,3H);19FNMR(282MHz、CDCl3,C66内部標準)δ89.8(s,3F)。
3,3,3−トリフルオロ−2−(3−オキソシクロヘキシル)−2−トリメチルシロキシプロパン酸メチル(ジアステレオ比:34%);1HNMR(300MHz,CDCl3)δ0.18(s,9H)、1.36−1.69(m,3H)、1.90−2.56(m,6H)、3.79(s,3H);19FNMR(282MHz、CDCl3,C66内部標準)δ90.2(s,3F)。
〔比較例1〕
実施例1の反応条件に、10 mmolの水分を添加して反応を行なったところ、ルイス酸の活性を失って、48時間撹拌しても反応が進行しなかった。
〔比較例2〕
実施例1の反応条件に、100 mmolの水分を添加して反応を行なったところ、ルイス酸の活性を失うとともに、ケテンシリルアセタールが加水分解した化合物である、3,3,3−トリフルオロ−2−トリメチルシロキシプロパン酸メチルが定量的に生成した。
〔比較例3〕
実施例2の反応条件で、反応温度を−10℃に上げて反応を行なったところ、反応生成物にさらに2−シクロヘキセン−1−オンが付加した副生物が25%副生し、目的物の収率が大幅に低下した(収率43 %)。また、ケテンシリルアセタールが加水分解した化合物である、3,3,3−トリフルオロ−2−トリメチルシロキシプロパン酸メチルも23%程度副生した。

Claims (11)

  1. 式(1):

    若しくは式(1’):

    (式中、Rはパーフルオロアルキル基、ポリフルオロアルキル基、又はフルオロアルキル基を表し、
    11は水素、又は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、ヘテロアリール基、ヘテロアリールアルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルケニル基、シクロアルキルアルキル基、ヘテロシクロアルキルアルキル基、シクロアルケニルアルキル基、ヘテロシクロアルケニルアルキル基、アミノアルキル基、アシルアルキル基、アルコキシアルキル基、チオアルコキシアルキル基、アリールオキシアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、カルボアルコキシアルキル基及びアシルオキシアルキル基からなる群より選択される1価の有機基、若しくは、シリル基の1以上のHが前記1価の有機基で置換された基を表し、
    12、R13、R14、R15、R16、及びR17は、独立して、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロシクロアルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキルアルキル基、シクロアルケニルアルキル基、ヘテロシクロアルキルアルキル基、ヘテロシクロアルケニルアルキル基、アリールアルキル基、ヘテロアリールアルキル基、アリールアルケニル基、及びヘテロアリールアルケニル基からなる群より選択され、同一であっても異なってもよい。)
    で表されるケテンシリルアセタール又はこれらの混合物を、
    式(2):
    21(R22)C=C(R23)−CHO (2)
    (式中、R21、R22及びR23は、独立して、水素、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキルアルキル基、ヘテロシクロアルキルアルキル基、アリールアルキル基、及びヘテロアリールアルキル基からなる群より選択され、同一であっても異なってもよい。)
    で表されるα,β−不飽和アルデヒドと、ルイス酸、ニトリル又はこれらの組み合わせの存在下で反応させる工程を含む、式(4):

    (式中、Rf、R11、R12、R13、R14、R21、R22及びR23は前記の通りである)
    で表される化合物の製造方法。
  2. 式(1):

    若しくは式(1’):

    (式中、Rはパーフルオロアルキル基、ポリフルオロアルキル基、又はフルオロアルキル基を表し、
    11は水素、又は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、ヘテロアリール基、ヘテロアリールアルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルケニル基、シクロアルキルアルキル基、ヘテロシクロアルキルアルキル基、シクロアルケニルアルキル基、ヘテロシクロアルケニルアルキル基、アミノアルキル基、アシルアルキル基、アルコキシアルキル基、チオアルコキシアルキル基、アリールオキシアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、カルボアルコキシアルキル基及びアシルオキシアルキル基からなる群より選択される1価の有機基、若しくは、シリル基の1以上のHが前記1価の有機基で置換された基を表し、
    12、R13、R14、R15、R16、及びR17は、独立して、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロシクロアルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキルアルキル基、シクロアルケニルアルキル基、ヘテロシクロアルキルアルキル基、ヘテロシクロアルケニルアルキル基、アリールアルキル基、ヘテロアリールアルキル基、アリールアルケニル基、及びヘテロアリールアルケニル基からなる群より選択され、同一であっても異なってもよい。)
    で表されるケテンシリルアセタール又はこれらの混合物を、
    式(3):

    (式中、 21 、R 22 、R 23 、R 24 、R 25 、R 26 、R 27 及びR 28 は、独立して、水素、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキルアルキル基、ヘテロシクロアルキルアルキル基、アリールアルキル基、及びヘテロアリールアルキル基からなる群より選択され、同一であっても異なってもよい。)
    で表されるα,β−不飽和ケトンと、ルイス酸、ニトリル、又はこれらの組み合わせの存在下で反応させる工程を含む、式(5):

    (式中、Rf、R11、R12、R13、R14、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27
    びR28は、前記の通りである)
    で表される化合物の製造方法。
  3. 12、R13、R14、R15、R16及びR17が、独立して、アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキルアルキル基、ヘテロシクロアルキルアルキル基、アリールアルキル基、及びヘテロアリールアルキル基からなる群より選択される、請求項1又は2の製造方法。
  4. 12、R13、R14、R15、R16及びR17が、独立して、置換又は未置換のメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ベンジル基、フェネチル基、及びフェニル基からなる群より選択される、請求項1−3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 11が、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、及びヘテロアリールアルキル基からなる群より選択される、請求項1−4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR28が、水素、アルキル基、アルコキシアルキル基、カルボアルコキシアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、及びヘテロアリールアルキル基からなる群より選択される、請求項1−5のいずれかに記載の製造方法。
  7. ルイス酸がトリメチルシリルトリフルオロメタンスルフォネート、三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、塩化スズ、塩化亜鉛、及び臭化亜鉛からなる群より選択される1種以上である、請求項1−6の何れかに記載の製造方法。
  8. ニトリルがアセトニトリルである請求項1−7の何れかに記載の製造方法。
  9. 式(1)若しくは(1’)のケテンシリルアセタール又はそれらの混合物と式(2)又は(3)の化合物との反応が溶媒中で行われ、該溶媒が置換若しくは未置換の脂肪族炭化水素、置換若しくは未置換の芳香族炭化水素、エーテル、非プロトン性極性溶媒、又はそれらの混合物である、請求項1−8の何れかに記載の製造方法。
  10. 式(1)若しくは(1’)のケテンシリルアセタール又はそれらの混合物と式(2)又は(3)の化合物との反応が−90℃から100℃の範囲で行われる、請求項1−9の何れかに記載の製造方法。
  11. 式(1)若しくは(1’)のケテンシリルアセタール又はそれらの混合物と式(2)又は(3)の化合物との反応が常圧から200kPaまでの範囲で行われる、請求項1−10の何れかに記載の方法。
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