本発明は、発光システムおよび光伝送システムに関する。
近年、光伝送技術は、幹線系伝送網だけでなく、LANやアクセス系、ホームネットワークにも展開されてきている。例えば、イーサネットにおいては、10Gbpsの伝送容量が開発されてきている。将来的には更なる伝送容量の増加が求められており、10Gbpsを超えた光伝送システムが期待されている。
LANや光インターコネクション用の光源としては、垂直共振器型面発光半導体レーザ装置(VCSEL)の使用が検討されるようになってきている。VCSELは、端面発光型半導体レーザに比べて、低消費電力であり、また製造工程で劈開が不用で、ウエハ状態で素子の検査が可能であるため、低コスト化に優れた特徴を有している。そのため、10Gbpsを超えた大容量の光LANや光インターコネクション用の光源として、VCSELが期待されている。
しかしながら、電流注入によって発振するVCSELは、通常、多層膜反射鏡を通して電流が注入される。この多層膜反射鏡は、屈折率が互いに異なる半導体層を交互に積層したものであり、多数のヘテロ界面を持つため、どうしても抵抗が高くなる。その結果、VCSELの素子抵抗が高くなりやすく、CR時定数による変調帯域への制限から、高速変調が難しくなりやすく、かつ電流注入による発熱が問題になりやすい。また、素子抵抗を下げるために多層膜反射鏡のドーピング濃度を上げて低抵抗化しようとすると、今度は光吸収によりVCSELの発振が妨げられてしまうという問題が生じる。
また、VCSELを光通信や光インターコネクション用光源として用いる際には高速での変調が望まれるが、高速変調にはVCSELの素子容量の低減が好ましく、そのためにはVCSELの素子径を小さくすることが有効である。しかし、素子径を小さくすると電流注入による熱の放熱に不利になってしまう。
このようにVCSELはいくつかの問題点から高速変調に対して制限がかかりやすいが、VCSELを高速に変調する方法としては、これまでいくつかの技術が提案されている。
そのような提案の一形態として外部からの注入光(外部励起光)を用いる方法が提案されている。
例えば特許文献1には、VCSELに光注入励起を行う横方向共振器型半導体レーザが同一基板上に集積されて形成されており、VCSELの活性層の禁制帯幅を横方向共振器型半導体レーザの禁制帯幅よりも小さく設定し、かつ横方向共振器型半導体レーザの禁制帯幅がVCSELの障壁層の禁制帯幅より小さいことで、光励起効率を高めており、外部変調として、横方向共振器型半導体レーザからの変調光信号を入力させることにより、VCSELの変調周波数を増加させる技術が示されている。しかしながら、特許文献1の仕方では、横方向に共振器構造を形成してやらなければならないので、素子の製造工程が煩雑になり、高コスト化するという問題があった。
また非特許文献1には、励起用の0.85μm帯VCSELと1.3μm帯VCSELを集積した構造が報告されている。この非特許文献1では、1.3μm帯VCSELにおいては電流注入構造はとられておらず、0.85μm帯VCSELで励起することで1.3μm帯VCSELの発振を得るようになっている。この場合は、1.3μm帯VCSELの多層膜反射鏡を通して活性層を励起しなければならず、そのため多層膜反射鏡の高反射帯域から大きくずれた0.85μm帯のVCSELで励起を行っている。よって、励起用VCSELの容量や抵抗を含む各種特性によって、素子全体の変調特性が制限される。また、本来1.3μm帯VCSELの活性層の禁制帯幅よりエネルギーが高く、障壁層の禁制帯幅よりエネルギーの低い励起光を用いると励起効率が良いが、中でも1.3μm帯VCSELの多層膜反射鏡の高反射帯域に対応するような波長の光では多層膜反射鏡を透過できないため励起光として用いることができない。
また、非特許文献2には、VCSEL発振モードに同期した光を外部から注入してVCSEL中での光密度を高めることで、VCSELの緩和振動周波数を増加させ、高速変調を可能にさせることが報告されている。しかし、この方法では、VCSELの共振モードに厳密に一致したレーザ光を外部から注入してやらなければならず、数nmの波長ずれでモード同期が不可能になり、かつVCSELの共振モードからずれることで多層膜反射鏡の反射でVCSEL内部への光の注入が不可能になってしまう。そのため、注入用のレーザ波長とVCSELの共振モード波長との厳密な一致を必要とし、双方のレーザの歩留まりが制限され、高コスト化してしまうという問題がある。
特開平7−249824号公報
Electoron. Lett., 1998, 34, pp1405−1407
LQE2003−155
本発明は、外部励起光によって垂直共振器型面発光半導体レーザ装置(VCSEL)の活性層(活性領域)を励起する構成をとる場合に、垂直共振器型面発光半導体レーザ装置(VCSEL)の製造工程を煩雑化させることのない構造のものにすることができ、また、VCSELの活性層の禁制帯幅よりもエネルギーが高く、障壁層の禁制帯幅よりもエネルギーの低い励起光で励起効率を上げつつ、VCSELの多層膜反射鏡の高反射率帯域内の光であってもVCSEL共振モード波長と外部励起光の波長を厳密に一致させなくても多層膜反射鏡を通して励起可能な構成で、高速変調に適した垂直共振器型面発光半導体レーザ装置を用いた発光システムおよび光伝送システムを提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、基板上に多層膜反射鏡で上下をはさまれた共振器構造を有している垂直共振器型面発光半導体レーザ装置と、該垂直共振器型面発光半導体レーザ装置に入射させる外部励起光を発生する外部励起光源とを有しており、前記共振器構造内に、電流注入で発光する第1の活性領域と、外部励起光によって発光する第2の活性領域とを有し、電流注入で発光する第1の活性領域と外部励起光で発光する第2の活性領域とは同一の共振モード波長に対して利得を有し、前記外部励起光は、前記共振器構造が有する共振モード波長よりも短く、かつ前記多層膜反射鏡の高反射率帯域の波長を有しており、共振器構造への外部励起光の入射角を垂直入射方向から側面方向に徐々にずらしていくときに共振器構造における見かけ上の共振モードが短波長側にシフトしていくことを利用して、前記外部励起光の波長が、短波長化した見かけ上の共振モードの波長と一致するよう、前記外部励起光の入射角が設定されていることを特徴としている。
また、請求項2記載の発明は、基板上に多層膜反射鏡で上下をはさまれた複数の共振器構造を有し、複数の共振器構造が光学的に結合して1つの共振モードを形成する垂直共振器型面発光半導体レーザ装置と、該垂直共振器型面発光半導体レーザ装置に入射させる外部励起光を発生する外部励起光源とを有しており、1つの共振器構造内に電流注入で発光する第1の活性領域を有し、他の共振器構造内に外部励起光によって発光する第2の活性領域を有し、電流注入で発光する第1の活性領域と外部励起光で発光する第2の活性領域とは同一の共振モード波長に対して利得を有し、前記外部励起光は前記共振器構造が有する共振モード波長よりも短く、かつ前記多層膜反射鏡の高反射率帯域の波長を有しており、共振器構造への外部励起光の入射角を垂直入射方向から側面方向に徐々にずらしていくときに共振器構造における見かけ上の共振モードが短波長側にシフトしていくことを利用して、前記外部励起光の波長が、短波長化した見かけ上の共振モードの波長と一致するよう、前記外部励起光の入射角が設定されていることを特徴としている。
また、請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載の発光システムにおいて、前記外部励起光として、複数の外部励起光が用いられることを特徴としている。
また、請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の発光システムにおいて、活性領域には、窒素とその他のV族元素を含む混晶半導体が用いられていることを特徴としている。
また、請求項5記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の発光システムにおいて、前記外部励起光源は、半導体レーザであることを特徴としている。
また、請求項6記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の発光システムにおいて、前記外部励起光源は、垂直共振器型面発光半導体レーザ素子であることを特徴としている。
また、請求項7記載の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の発光システムが用いられていることを特徴とする光伝送システムである。
請求項1記載の発明によれば、基板上に多層膜反射鏡で上下をはさまれた共振器構造を有している垂直共振器型面発光半導体レーザ装置と、該垂直共振器型面発光半導体レーザ装置に入射させる外部励起光を発生する外部励起光源とを有しており、前記共振器構造内に、電流注入で発光する第1の活性領域と、外部励起光によって発光する第2の活性領域とを有し、電流注入で発光する第1の活性領域と外部励起光で発光する第2の活性領域とは同一の共振モード波長に対して利得を有し、前記外部励起光は、前記共振器構造が有する共振モード波長よりも短く、かつ前記多層膜反射鏡の高反射率帯域の波長を有しており、共振器構造への外部励起光の入射角を垂直入射方向(共振器構造の発光光軸と平行な方向)から側面方向に徐々にずらしていくときに共振器構造における見かけ上の共振モードが短波長側にシフトしていくことを利用して、前記外部励起光の波長が、短波長化した見かけ上の共振モードの波長と一致するよう、前記外部励起光の入射角が設定されているので、高効率で励起を行うことが可能になるとともに、外部励起光を垂直共振器型面発光半導体レーザ装置(VCSEL)の表面あるいは裏面から入射させることが可能になる。これにより、活性層の側面方向から外部励起光を入射させるような構成に比べて、素子構造やプロセスが単純で済むため、コスト的に有利である。また、外部励起光を変調することにより、高速変調が可能になる。
また、請求項2記載の発明によれば、基板上に多層膜反射鏡で上下をはさまれた複数の共振器構造を有し、複数の共振器構造が光学的に結合して1つの共振モードを形成する垂直共振器型面発光半導体レーザ装置と、該垂直共振器型面発光半導体レーザ装置に入射させる外部励起光を発生する外部励起光源とを有しており、1つの共振器構造内に電流注入で発光する第1の活性領域を有し、他の共振器構造内に外部励起光によって発光する第2の活性領域を有し、電流注入で発光する第1の活性領域と外部励起光で発光する第2の活性領域とは同一の共振モード波長に対して利得を有し、前記外部励起光は前記共振器構造が有する共振モード波長よりも短く、かつ前記多層膜反射鏡の高反射率帯域の波長を有しており、共振器構造への外部励起光の入射角を垂直入射方向(共振器構造の発光光軸と平行な方向)から側面方向に徐々にずらしていくときに共振器構造における見かけ上の共振モードが短波長側にシフトしていくことを利用して、前記外部励起光の波長が、短波長化した見かけ上の共振モードの波長と一致するよう、前記外部励起光の入射角が設定されているので、高効率で励起を行うことが可能になるとともに、外部励起光を垂直共振器型面発光半導体レーザ装置(VCSEL)の表面あるいは裏面から入射させることが可能になる。これにより、活性層の側面方向から外部励起光を入射させるような構成に比べて、素子構造やプロセスが単純で済むため、コスト的に有利である。また、外部励起光を変調することにより、高速変調が可能になる。
また、請求項3記載の発明によれば、請求項1または請求項2記載の発光システムにおいて、前記外部励起光として、複数の外部励起光が用いられるので、各外部励起光源として、より低出力のレーザを用いることが可能になり、励起光源の制約が少なくなり低コスト化に有利である。
また、請求項4記載の発明によれば、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の発光システムにおいて、活性領域には、窒素とその他のV族元素を含む混晶半導体が用いられているので、光通信に好適な1.3μm帯で発光が可能なデバイスを提供できる。
また、請求項5記載の発明によれば、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の発光システムにおいて、前記外部励起光源は、半導体レーザであるので、安価で小型化が可能になり、コスト面で一層有利となる。
また、請求項6記載の発明によれば、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の発光システムにおいて、前記外部励起光源は、垂直共振器型面発光半導体レーザ素子であるので、より小型で安価な発光システムを提供できる。
また、請求項7記載の説明によれば、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の発光システムが用いられているので、安価で小型の光伝送システムを提供できる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
(第1の形態)
本発明の第1の形態は、基板上に多層膜反射鏡で上下をはさまれた共振器構造を有している垂直共振器型面発光半導体レーザ装置(VCSEL)において、前記共振器構造内に外部励起光によって励起する活性領域を有しており、前記外部励起光は、前記共振器構造が有する共振モード波長よりも短く、かつ前記多層膜反射鏡の高反射率帯域の波長を有しており、共振器構造への外部励起光の入射角を垂直入射方向(共振器構造の発光光軸と平行な方向)から側面方向に徐々にずらしていくときに共振器構造における見かけ上の共振モードが短波長側にシフトしていくことを利用して、前記外部励起光の波長が、短波長化した見かけ上の共振モードの波長と一致するよう、前記外部励起光の入射角を設定(調整)可能となっていることを特徴としている。
外部励起光は、垂直共振器型面発光半導体レーザ装置(VCSEL)の共振器構造が有する共振モード波長よりも短く、かつ前記多層膜反射鏡の高反射率帯域の波長を有している。つまり、外部励起光としては、VCSELの共振モード波長よりわずかに短い波長のものを用いるが、通常の垂直入射では反射鏡で反射されてしまうため活性領域を励起することができない。これに対して垂直入射方向から側面方向に入射角を徐々にずらしていくと、見かけ上の共振モードが短波長側にシフトしていく。そのため、この短波長化した見かけ上の共振モードと外部励起光の波長とが一致したとき、VCSEL内部に励起光が注入可能になる。つまり、VCSELの共振波長と外部励起光の波長との関係が適当な範囲に入っていれば、外部励起光の入射角を調整することで、見かけ上の共振モードに一致させて励起光の注入が可能になるため、VCSELの共振波長と外部励起光の波長とを厳密に一致させる必要が無く、コストの低減に役立つ。また、外部励起光として、VCSELの共振波長よりも短い波長の光を用いる場合には、VCSELの共振波長と同じ場合よりも励起効率が良好である。
具体的に一例を挙げると、例えば1300nmで発振するVCSEL共振器構造の場合、垂直入射(90°入射)では、1300nmの共振モードであるのに対して、75度入射まで倒すと、1296nmまで見かけ上の共振モードが短波化する。さらに45度まで倒すと、1270nmまで見かけ上の共振モードが短波化するため、45度入射までであれば約30nm短い励起光まで利用可能になる(図7を参照)。
外部励起光を用いる場合に、側面方向から活性層に入射させるには、どうしても素子構成が複雑になりコストが増加しやすい。これに対して、第1の形態では、素子の表面あるいは裏面から外部励起光を入射させることができるので、素子入射のための開口部分を素子の表面あるいは裏面という比較的プロセス上の制約の少ない部分に設けることができ、かつプロセスの難易度も高くならずに済むため、コストが低くて済むという利点がある。また利用可能な励起光源波長がVCSELの発振波長と近く、かつ短い波長なので、光の励起効率もよくできる。このような構成では、VCSELは外部励起光により変調できる。
半導体レーザを直接変調する場合に、変調帯域を制限する原因として、CR時定数から決まる電気的周波数応答特性が挙げられる。CR時定数τ=CRは入力電圧に対する電流値変化の遅れ量を表す値であるから、この時定数を少なくすることは変調帯域を広げるのに重要である。
一般に、VCSELにおいては、酸化狭窄構造に起因する静電容量C、あるいは、DBR中のヘテロ界面での抵抗に起因するRが大きくなりやすく、どうしても電気的周波数応答が端面発光型半導体レーザに比べて不利になりやすい。
本発明においては、より電気的に直接変調の行いやすいDFB(分布帰還型)レーザなどを外部励起光源として用い、このDFBレーザなどの外部励起光源の光出力を直接変調することで、VCSEL活性層からの発光強度を変調させるため、より高速変調が行いやすい。
(第2の形態)
本発明の第2の形態は、基板上に多層膜反射鏡で上下をはさまれた共振器構造を有している垂直共振器型面発光半導体レーザ装置(VCSEL)において、前記共振器構造内に、電流注入で発光する第1の活性領域と、外部励起光によって発光する第2の活性領域とを有し、電流注入で発光する第1の活性領域と外部励起光で発光する第2の活性領域とは同一の共振モード波長に対して利得を有し、前記外部励起光は、前記共振器構造が有する共振モード波長よりも短く、かつ前記多層膜反射鏡の高反射率帯域の波長を有しており、共振器構造への外部励起光の入射角を垂直入射方向(共振器構造の発光光軸と平行な方向)から側面方向に徐々にずらしていくときに共振器構造における見かけ上の共振モードが短波長側にシフトしていくことを利用して、前記外部励起光の波長が、短波長化した見かけ上の共振モードの波長と一致するよう、前記外部励起光の入射角を設定(調整)可能となっていることを特徴としている。
すなわち、第2の形態の垂直共振器型面発光半導体レーザ(VCSEL)は、共振器内に設けられた電流注入で発光する第1の活性領域に加えて、電流注入機構を有せず外部励起光によって発光する第2の活性領域を備えたことを特徴としている。第1の活性領域に注入する電流を変調することにより、第1の活性領域内のキャリア密度が変化して、光出力強度が変調される。一方、第2の活性領域では、外部から励起光を連続的に注入することで誘導放出が生じ、励起光強度を閾光出力以上に増加させると、レーザ発振が生じる。
この第2の形態においても、第1の形態と同様に、VCSELの共振波長と外部励起光の波長との関係が適当な範囲に入っていれば、外部励起光の入射角を調整することで、見かけ上の共振モードに一致させて励起光の注入が可能になるため、VCSELの共振波長と外部励起光の波長とを厳密に一致させる必要が無く、コストの低減に役立つ。また、外部励起光として、VCSELの共振波長よりも短い波長の光を用いる場合には、VCSELの共振波長と同じ場合よりも励起効率が良好である。また、素子の表面あるいは裏面から外部励起光を入射させることができるので、素子入射のための開口部分を素子の表面あるいは裏面という比較的プロセス上の制約の少ない部分に設けることができ、かつプロセスの難易度も高くならずに済むため、コストが低くて済むという利点がある。
また、第2の形態では、電流注入で発光する第1の活性領域と外部励起光によって発光する第2の活性領域とは、同一の共振器構造内に設けられており、また共振器の有する同一の共振モード波長に対して両者ともに利得を有している。従って、電流注入による発振光と外部励起光による発振光は同一波長で発振し、モード同期する。これにより、従来の電流注入によって発生する光子密度に、外部励起光で発生させた光子密度が同一モードで加えられるため、素子内部の光子密度を従来よりも増加させることができる。
半導体レーザを直接変調する場合に、変調帯域を制限する原因として、CR時定数,キャリア輸送効果,緩和振動周波数などが挙げられる。特に、緩和振動周波数は、発光層におけるキャリア密度変化に対して誘導放出速度が追随できなくなる限界の周波数であり、直接変調する場合に本質的な制限となっている。 緩和振動周波数frは一般に次式(数1)で表わされる。
ここでΓは光閉じ込め係数、ηは微分利得、Sは光子密度、τpは光子寿命である。
この第2の形態では、光子密度を増加させることができ、これによって、数1からわかるようにVCSELの緩和振動周波数を増加させ、高速変調が可能となる。
(第3の形態)
本発明の第3の形態は、基板上に多層膜反射鏡で上下をはさまれた複数の共振器構造を有し、複数の共振器構造が光学的に結合して1つの共振モードを形成する垂直共振器型面発光半導体レーザ装置(VCSEL)において、1つの共振器構造内に電流注入で発光する第1の活性領域を有し、他の共振器構造内に外部励起光によって発光する第2の活性領域を有し、電流注入で発光する第1の活性領域と外部励起光で発光する第2の活性領域とは同一の共振モード波長に対して利得を有し、前記外部励起光は前記共振器構造が有する共振モード波長よりも短く、かつ前記多層膜反射鏡の高反射率帯域の波長を有しており、共振器構造への外部励起光の入射角を垂直入射方向(共振器構造の発光光軸と平行な方向)から側面方向に徐々にずらしていくときに共振器構造における見かけ上の共振モードが短波長側にシフトしていくことを利用して、前記外部励起光の波長が、短波長化した見かけ上の共振モードの波長と一致するよう、前記外部励起光の入射角を設定(調整)可能となっていることを特徴としている。
第3の形態の垂直共振器型面発光半導体レーザ装置(VCSEL)では、第1の活性領域に注入する電流を変調することにより、第1の活性領域内のキャリア密度が変化して、光出力強度が変調される。一方、第2の活性領域では、外部から励起光を連続的に注入することで誘導放出が生じ、励起光強度を閾光出力以上に増加させると、レーザ発振が生じる。この第3の形態においても、VCSELの表面または裏面から入射角を垂直から傾けて、見かけ上短波になった共振モードに一致させて励起光を注入することで、利用可能な励起光源波長がVCSELの発振波長と近く、かつ短い波長にできる。ゆえに光の励起効率もよくできる。また、VCSELの構造も、側面方向からの励起光入射を行う場合に比べて、複雑でなくて済むので、コストを低減できる。
また、第3の形態では、電流注入で発光する第1の活性領域と外部励起光によって発光する第2の活性領域とは、異なる共振器構造内に設けられているが、複数の共振器構造は光学的に結合して1つの共振モードを形成している。また、同一の共振モード波長に対して、電流注入で発光する第1の活性領域と外部励起光によって発光する第2の活性領域は、ともに利得を有している。従って、電流注入による発振光と外部励起光による発振光は同一波長で発振し、モード同期する。これにより、従来の電流注入によって発生する光子密度に、外部励起光で発生させた光子密度が同一モードで加えられるため、VCSEL内部の光子密度を従来よりも増加させることができる。従って、VCSELの緩和振動周波数が増加し、高速変調が可能となる。
(第4の形態)
本発明の第4の形態は、第1乃至第3のいずれかの形態の垂直共振器型面発光半導体レーザ装置(VCSEL)において、前記外部励起光として、複数の外部励起光が用いられることを特徴としている。
本発明では、VCSELの表面または裏面から、入射角を垂直方向から側面方向に向けて傾けて見かけ上短波になった共振モードに一致させて、励起光を注入することで、VCSELに対して斜めに外部励起光源を配置できる。VCSELへの垂直入射では外部励起光源を複数にすることには困難が伴うが、VCSELに斜めに外部励起光を入射可能な本発明の構成では、VCSELに対して複数の外部励起光源を用いることができる。これにより、各外部励起光源に比較的出力の弱いレーザを用いることも可能であり、それによって、より安価に光源を選ぶことができる。また、複数の外部励起光源は厳密に同一波長でなくてもよく、それぞれの波長がわずかにずれていても入射角をコントロールすることで励起光源として利用可能であるので、コストが最低限で済む。
(第5の形態)
本発明の第5の形態は、第1乃至第4のいずれかの形態の垂直共振器型面発光半導体レーザ装置(VCSEL)において、活性領域には、窒素とその他のV族元素を含む混晶半導体が用いられていることを特徴としている。
ここで、窒素と他のV族元素との混晶半導体としては、例えばGaNAs、GaInNAs、GaNAsP、GaInNAsP、GaNAsSb、GaInNAsSb、GaNAsPSb、GaInNAsPSb等がある。上記混晶半導体は、GaAs基板上に結晶成長可能な長波長帯材料系であり、以下GaInNAsを例にして説明する。
GaInNAsは、GaAs等の障壁層との伝導帯電子の閉じ込め障壁高さを300meV以上と高くすることができるため、電子のオーバーフローが抑制され、良好な温度特性を有している。また、AlGaAs材料系を用いた高反射率,高熱伝導性の分布ブラッグ反射鏡を用いることができ、長波長帯で良好な性能の垂直共振器型面発光半導体レーザ装置を形成可能である。
本発明は、変調周波数を向上させることで、10Gbpsを超える大容量伝送を可能とする垂直共振器型面発光半導体レーザ装置(VCSEL)を提供することを目的としている。10Gbps以上の高い伝送帯域では、石英光ファイバの分散によって伝送距離が制限される。GaInNAs等の窒素と他のV族元素との混晶半導体を活性領域に用いることで、石英光ファイバの分散がゼロである波長1.31μmのVCSELを形成できるため、本発明の高速変調特性を生かすことができる。
第5の形態では、第1乃至第4のいずれかの形態の垂直共振器型面発光半導体レーザ装置(VCSEL)において、活性領域には、窒素とその他のV族元素を含む混晶半導体が用いられているので、光通信に好適な1.3μm帯で発光可能なデバイスを提供できる。
(第6の形態)
本発明の第6の形態は、第1乃至第5のいずれかの形態の垂直共振器型面発光半導体レーザ装置(VCSEL)と、該垂直共振器型面発光半導体レーザ装置(VCSEL)に入射させる外部励起光を発生する外部励起光源とを有していることを特徴とする発光システムである。
この第6の形態の発光システムには、第1乃至第5のいずれかの形態の垂直共振器型面発光半導体レーザ装置(VCSEL)が用いられるので、高速変調が可能であり、また、コスト的に有利な発光システムを提供できる。
(第7の形態)
本発明の第7の形態は、第6の形態の発光システムにおいて、前記外部励起光源は、半導体レーザであることを特徴としている。
第7の形態では、外部励起光源を半導体レーザにすることで、発光システムのサイズを小型化することができ、また発光システムの消費電力を低減することができる。外部励起光源として用いる半導体レーザとしては、分布帰還型(DFB)半導体レーザ,分布ブラッグ反射型(DBR)半導体レーザ等を用いることができる。
(第8の形態)
本発明の第8の形態は、第6または第7の形態の発光システムにおいて、前記外部励起光源は垂直共振器型面発光半導体レーザ素子であることを特徴としている。
垂直共振器型面発光半導体レーザ(VCSEL)は、端面発光型半導体レーザに比べて、消費電力が低く、また低コストで製造することができる。従って、外部励起光源としてVCSELを用いることにより、より一層の低消費電力化と、発光システムの低コスト化が可能となる。
(第9の形態)
本発明の第9の形態は、第1乃至第5のいずれかの形態の垂直共振器型面発光半導体レーザ装置(VCSEL)が用いられていることを特徴とする光伝送システムである。
第9の形態の光伝送システムは、本発明の垂直共振器型面発光半導体レーザ装置(VCSEL)を用いた高速変調に好適な構成を有しており、そのため、外部変調器や電子冷却素子を用いない安価な構成となっており、大容量,低コストの光伝送システムを提供することができる。
次に、本発明の実施例を説明する。
図1(a),(b)は本発明の実施例1の面発光半導体レーザ装置(VCSEL)を示す図である。なお、図1(a)は断面図、図1(b)は上面図(平面図)である。
図1(a)を参照すると、n型GaAs基板上には、n型半導体多層膜反射鏡(n型DBR)、GaAs下部スペーサ層、Ga0.7In0.3N0.01As0.99/GaAs DQW量子井戸活性層、GaAs上部スペーサ層、Al0.9Ga0.1As層/Al0.98Ga0.02As酸化層/Al0.9Ga0.1As層、p型半導体多層膜反射鏡(p型DBR)が順次に形成されている。ここで、Al0.9Ga0.1As層,Al0.98Ga0.02As酸化層,Al0.9Ga0.1As層の3層は、全体で光学長で3/4λとなる低屈折率層として設計されている。この低屈折率層の厚さは1/4λの奇数倍であれば良く、必ずしも3/4λでなければならないわけではない。Al0.98Ga0.02As層は例えば30nm厚になっている。Al0.98Ga0.02As層を含む低屈折率層の上部には1/4λのGaAs高屈折率層から始まる積層構造を成長し、全体で上部の反射鏡として働くp型DBRが形成される。この面発光半導体レーザ装置(VCSEL)を作製する工程は以下のようになる。
まず、有機金属化学気相成長(MOCVD)法によりn型GaAs基板上にGaAsとAl0.9Ga0.1Asとをそれぞれレーザの発振波長に対して光学長が1/4λとなるような厚さで交互に積層(例えば35周期)して下部DBR(n型DBR)とし、その上部に、GaInNAs層からなる量子井戸活性層(層厚が8nm×2)をGaAsスペーサ層で挟んだ光学長λの共振器構造を成長する、さらにその上に、Al0.9Ga0.1As層,AlAs酸化層,Al0.9Ga0.1As層の3層で形成した低屈折率層から始まる上部DBR(p型DBR)を(例えば25周期)成長する。
次に上記積層構造を反応性イオンエッチングにより活性層下までエッチングし、例えば約50μmφのポスト状のメサに加工する。そして、エッチングにより表面が露出した側面からAlAs層を選択的に酸化し、酸化物による絶縁領域を形成することにより、電流狭窄構造が形成される。電流は、絶縁領域によって例えばおよそ5μmφの酸化開口領域に集中して活性層に注入される。
また、p型DBRの表面にはp側電極が形成されるが、p型DBRの表面の一部には、図1(b)に示すように、外部励起光を入射させるための入射口として電極が付けられていない部分が設けられている。また、n型GaAs基板の裏面にはn側電極が形成されている。
このようにVCSELの構成そのものはほとんど通常のVCSELと変わりなく、外部励起光の入射部のみを考慮すればよく、しかも、この入射部は、基板の表面あるいは裏面に設けられるので、プロセス的な手間はほとんど無く、困難なく設けることが可能である。
実施例1のVCSELでは、DQW量子井戸活性層で発光した光は、上下の半導体多層膜反射鏡で反射して増幅され、レーザ光として基板と垂直方向に放射される。この実施例1では、例えば1300nmで発振を得られるように共振器構造は設計されている。
なお、この実施例1では、外部励起光をVCSELの表面から入射させているが、VCSELの裏面から入射させる構造でも良い。また、外部励起光を発生する外部励起光源としては、波長1270〜1275nmで発光するDFBレーザを用いることができる。ここで、DFBレーザは、その発光波長が安定であれば、厳密に波長が設定される必要は無く、例えば本実施例のように1270〜1275nmの発振波長であれば、入射角を40〜45度の範囲で調整することで、p型DBR上の入射口(入射部)を通じて内部へ励起光を注入することが可能になる。そのため、DFBレーザの波長は、厳密に特定波長で設定されず、一定波長で駆動するための温度コントロールさえなされていれば、あとは入射角のコントロールのみで注入が可能になる。
また、この実施例1のVCSELには、電流注入構造も設けられており、活性層に電流注入を行なうことができるようになっている。そこで、実施例1では、VCSELの活性層にしきい電流値よりもわずかに低い電流を連続して注入しておく、このとき活性層は発振直前までキャリアが注入された状態で保たれていることになる。そこに外部励起光としてDFBレーザからの光が注入されることで発振が起きる。このとき、DFBレーザの波長は1270nm程度であり、VCSELの発振波長より30nm短くなっている。このように、VCSELの発振波長に近い波長でかつより短波長である光を注入できるため、励起効率が良くなる。
このように外部励起光を併用することで、注入電流を低い状態で発振させることが可能になる。また、光の変調はDFBレーザの変調を用いて行うことで、VCSEL単体の電流注入で発振を得る場合に比べて、より高速での変調が可能になる。具体的には、例えばDFBレーザーで光パルスを10GHzで入力することで、VCSELの活性層が光パルスに対応して励起され、10GHzでの変調が可能になる。DFBレーザは一般に10GHz程度の変調特性は得られており、この帯域程度であれば比較的容易に変調が可能な素子が得られる。
以上のようなレーザ構造において、VCSELの発振波長に近く、なおかつわずかに短波長のレーザ光を励起光として用いることが可能になるため励起効率が高くなる。外部励起光源の波長は一定であれば外部励起光源の波長に合わせて外部励起光の入射角をコントロールすることで、ある程度の波長範囲のものを利用可能であり、光源の自由度が上がることで、コストを下げられる。また横方向(側面方向)からの励起光注入(入射)と異なり、励起光を活性層に入射するために特別な構造を形成する必要がなく、コストも高くならずに済む。
図2は本発明の実施例2の面発光半導体レーザ装置(VCSEL)を示す図である。
図2においては、半絶縁性基板(GaAs基板)上に、ノンドープAlGaAs/GaAs積層構造からなるDBR1が形成されている。ここで、DBR1を構成する各半導体層は1/4波長厚である。ノンドープDBR1上には、GaAsからなる第1スペーサ層(スペーサ層1)、GaInNAs/GaAs多重量子井戸からなる第1活性層(活性層1)、n型GaAsからなる第2スペーサ層(スペーサ層2)、GaInNAs/GaAs多重量子井戸からなる第2活性層(活性層2)、GaAsからなる第3スペーサ層(スペーサ層3)、p型AlAs選択酸化層、p型DBR2が順次に積層されている。p型DBR2はp型のAlGaAs/GaAsの積層構造であり、それぞれ1/4波長厚さで構成されている。
図2では、積層構造表面からn型の第2スペーサ層(スペーサ層2)の途中まで円筒状にエッチングされて、メサ構造が形成されている。また、メサ側面からAlAs選択酸化層が酸化されて電流狭窄構造が形成されている。また、p型DBR2の表面には光射出部分を除いてリング状にp側電極が形成されている。さらにメサ底面の第2スペーサ層(スペーサ層2)上にはn側電極が形成されている。
この実施例2においては、p電極,n電極から電流が注入されることによって第2活性層(活性層2)が励起されて1.3μm帯の光が発生する。この際、電流狭窄構造により電流が狭窄され活性層2へと注入される。
活性層2で発した光は、2つのDBR(DBR1,DBR2)に挟まれた共振器内で共振して垂直方向にレーザ光が取り出される。この実施例2では、レーザ発振波長が1300nmである。
この実施例2のVCSELにおいては、電流注入で発光する第2活性層(活性層2)とは別に、外部励起光の入射で発光する第1活性層(活性層1)が設けられている。この活性層1には電流注入構造はなく、活性層1は、外部励起光の入射によって発振する。外部励起光を発生する外部励起光源としては波長1270〜1275nmで発光するDFBレーザを用いることができる。ここで、DFBレーザは、その発光波長が安定であれば厳密に波長が設定される必要は無く、例えば本実施例のように1270〜1275nmの発振波長であれば、入射角を40〜45度の範囲で調整することで、VCSELの裏面(基板の裏面)から内部へ外部励起光を注入することが可能になる。そのため、DFBレーザの波長は厳密に特定波長で設定されず、一定波長で駆動するための温度コントロールさえなされていれば、あとは入射角のコントロールのみで注入が可能になる。
入射する外部励起光の強度を閾値以上にすれば、第1活性層(活性層1)は1.3μm帯で発光し、共振器構造で発振が生じる。第1活性層(活性層1)、第2活性層(活性層2)ともに等しいバンドギャップにしてあり、かつ同一共振構造で発振するように構成してあることで、電流注入で発振した第2活性層(活性層2)と光入射で発振した第1活性層(活性層1)とは同一波長での発振となる。第1活性層(活性層1)が連続して光励起された状態で第2活性層(活性層2)にしきい電流値以上の電流注入を行い連続的に発振させると、VCSELは単一モードで連続発振する。ここで、第2活性層(活性層2)の注入電流の電流値を変調させると、第2活性層(活性層2)のキャリア密度の変調に対応してVCSELから射出されるレーザ光の強度が変調される。このとき、電流注入による第2活性層(活性層2)からの発光に第1活性層(活性層1)から発生した光が同一モードで加えられるため、VCSEL構造内における光子密度が増加する。
このように、第2活性層(活性層2)における電流注入によるキャリア密度を抑えたまま光子密度を高くすることで、電流注入する第2活性層(活性層2)のキャリアオーバーフローによる利得飽和が抑制され、その結果、緩和振動周波数が増加して高速変調が可能になる。特に、この実施例2では、石英光ファイバーの分散による影響を低くできる1.3μm帯での発振波長を有しており、10Gbps以上での高速伝送が可能な光源として利用可能な構成になっている。
以上のような高速変調に好適なVCSELにおいて、VCSELの発振波長に近く、なおかつわずかに短波長のレーザ光を励起光として用いることが可能になるため、励起効率が高くなる。外部励起光源の波長は一定であれば外部励起光源の波長に合わせて入射角をコントロールすることで、ある程度の波長範囲のものを利用可能であり、外部励起光源の自由度が上がることで、コストを下げられる。また、横方向(側面方向)からの励起光注入と異なり、励起光を活性層に入射するために特別な構造を形成する必要がなく(基板の裏面に励起光の入射部を設けるだけで良く)、コストも高くならずに済む。
図3は本発明の実施例3の面発光半導体レーザ装置(VCSEL)を示す図である。この実施例3では、半絶縁性GaAs基板上にノンドープのDBR1が積層されている。DBR1はAl0.9Ga0.1As/GaAsを1/4波長厚で積層したものである。
ノンドープDBR1上には、ノンドープGaAsのスペーサ層1、GaInNAs/GaAs多重量子井戸からなる活性層1、ノンドープGaAsのスペーサ層2、ノンドープDBR2が順次に積層されている。ここで、ノンドープDBR2もAl0.9Ga0.1As/GaAs積層であるが、その層数はノンドープDBR1より少なくなっている。
さらにその上には、n型GaAsスペーサ層3、GaInNAs/GaAs多重量子井戸活性層2、GaAsスペーサ層4、p型AlAs層、p型DBR3が積層されている。
ここで、DBR3は、p型にドープされたAl0.9Ga0.1As/GaAsの積層からなり、その厚さは各1/4波長厚さである。
この実施例3では、積層構造の表面から第3スペーサ層(スペーサ層3)の途中までをエッチングし円筒状のメサ構造を形成している。メサ構造の側面からは選択酸化を行いAlAs層を選択酸化して電流狭窄構造を形成している。また、P型DBR3の表面には、リング状のp電極を設け、メサ底面の第3スペーサ層上にはn電極を形成している。
この実施例3の構造では、VCSELに、DBR1とDBR2とに挟まれた共振器と、DBR2とDBR3とに挟まれた共振器との2つの共振器が存在する。なお、この実施例3では、各DBRのブラッグ反射波長はすべて1300nmにしてある。また共振器の共振波長は1300nmの整数倍にしてある。DBR2の積層数がDBR1およびDBR3よりも少なくなっていることで、2つの共振器は光学的に結合して1つの共振モードを有する複合共振器を形成することになる。
この実施例3のVCSELにおいて、p電極,n電極から電流を注入することによって電流狭窄構造で電流が狭窄されて第2活性層(活性層2)に注入され、活性層2では1.3μm帯の光を発する。活性層2で発生した光は複合共振器内で共振し、基板と垂直にレーザ光を射出する。
この実施例3のVCSELにおいては、電流注入で発光する第2活性層(活性層2)とは別に、励起光入射で発光する第1活性層(活性層1)が存在する。この活性層1には電流注入構造はなく、外部からの光注入(外部励起光の入射)によって発振する。外部励起光を発生する外部励起光源としては、波長1270〜1275nmで発光するDFBレーザを用いることができる。ここで、DFBレーザはその発光波長が安定であれば厳密に波長が設定される必要は無く、例えば1270〜1275nmの発振波長であれば入射角を40〜45度の範囲で調整することで、VCSELの裏面(基板の裏面)から内部へ外部励起光を入射させることが可能になる。そのため、DFBレーザの波長は厳密に特定波長で設定されず、一定波長で駆動するための温度コントロールさえなされていれば、あとは入射角のコントロールのみで入射が可能になる。
第1活性層(活性層1)に外部励起光を注入すると活性層1は1.3μm帯の光を発し、閾値を越えると上記複合共振器内で発振しレーザ光を射出する。2つの活性層は同一のモードを有して複合共振器内で発振するため2つの活性層は同一波長で発振する。
第1活性層(活性層1)を光励起で連続発振させ第2活性層(活性層2)へしきい値以上の電流を注入し連続発振をさせると、VCSELは単一モードで連続発振をする。このとき、第2活性層(活性層2)への注入電流値を変調させるとキャリア密度が変化し、これに対応して発振しているレーザ光強度が変調される。このとき第1活性層(活性層1)からのレーザ発振光が同一モードで加わるためVCSEL中の光子密度が高くなり、第2活性層(活性層2)のキャリアオーバーフローを抑制でき、利得飽和が起きにくくなり、緩和振動周波数が増加して、高速変調が可能になる。この実施例3では、石英光ファイバーの分散による影響を低くできる1.3μm帯での発振波長を有しており、10Gbps以上での高速伝送が可能な光源として利用可能な構成になっている。
以上のような高速変調に好適なVCSELにおいて、VCSELの発振波長に近く、なおかつわずかに短波長のレーザ光を励起光として用いることが可能になるため、励起効率が高くなる。外部励起光源の波長は一定であれば光源の波長に合わせて入射角をコントロールすることで、ある程度の波長範囲のものを利用可能であり、外部励起光源の自由度が上がることで、コストを下げられる。また、横方向(側面方向)からの励起光注入と異なり、励起光を活性層に入射するために特別な構造を形成する必要がなく(基板の裏面に励起光の入射部を設けるだけで良く)、コストも高くならずに済む。
図4は実施例4の発光システムを示す図である。この実施例4は、基本構成は実施例2と同一であるが、外部励起光を発生する外部励起光源を複数設けている点が異なっている。この実施例4では、外部励起光源として、DFBレーザを2個用いているが、可能であればもっと増やしてもかまわない。本発明では、外部励起光を垂直以外の角度で入射しているので、複数の外部励起光源からの外部励起を同時に同一のVCSELに入射することが容易になる。複数の外部励起光源を用いることができれば、各々の外部励起光源として、より出力の低いレーザを用いることが可能になり、低コスト化が可能になる。また、複数の外部励起光源で少しずつ波長がずれていても、入射角度を調整することで、問題なく外部励起光源として利用可能であり、コスト面で有利である。
図5は実施例5の発光システムを示す図である。この実施例5は基本構成は実施例2と同一であるが、外部励起光を発生する外部励起光源としてVCSELを用いている点が異なっている。VCSELは小型集積化が容易なレーザ構造であり小型で安価な半導体レーザとして知られているため、これを外部励起光源として用いることで、より低コストで小型の発光システムを構成できる。また、この実施例5において、外部励起光源としてVCSELを複数用いることもできる。VCSELは一般に出力が端面発光型に比べて低くなるため、外部励起光源として用いる際に複数の素子を使えることは有利である。
図6は実施例6の光伝送システムを示す図である。図6を参照すると、光送信部において、電気信号が光信号に変換されて光ファイバケーブルに導入される。光ファイバケーブルを導波した光は、光受信部で再び電気信号に変換されて出力される。
光送信部と光受信部は、1つのパッケージに集積されており、光送受信モジュール(光通信モジュール)として構成されている。光ファイバケーブルは、送り用と受け用の2本が一対となっており、双方向に通信可能となっている。
この実施例6の光伝送システムの光送信部には、光源として実施例2のレーザ装置を用いている。実施例2のレーザ装置は緩和振動周波数を向上させており、高速変調が可能であり、高ビットレートの信号伝送が可能となっている。本実施例では石英光ファイバーの分散による影響を低くできる1.3μm帯での発振波長を有しており、10Gbps以上での高速伝送が可能な光源として利用可能な構成になっている。以上のような高速変調に好適なシステムにおいて、VCSELの発振波長に近く、なおかつわずかに短波長のレーザ光を励起光として用いることが可能になるため、励起効率が高くなる。外部励起光源の波長は一定であれば外部励起光源の波長に合わせて入射角をコントロールすることで、ある程度の波長範囲のものを利用可能であり、外部励起光源の自由度が上がることで、コストを下げられる。また横方向(側面方向)からの励起光注入(入射)と異なり、励起光を活性層に入射するために特別な構造を形成する必要がなく、コストも高くならずに済む。
実施例1の面発光半導体レーザ装置(VCSEL)を示す図である。
実施例2の面発光半導体レーザ装置(VCSEL)を示す図である。
実施例3の面発光半導体レーザ装置(VCSEL)を示す図である。
実施例4の発光システムを示す図である。
実施例5の発光システムを示す図である。
実施例6の光伝送システムを示す図である。
外部励起光の入射角度と見かけの共振モード波長との関係を示す図である。