JP4748288B2 - スピロ[4.4]ノナシランを含有する組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はスピロ[4.4]ノナシランを含有する組成物およびこの組成物の利用に関する。さらに詳しくは、スピロ[4.4]ノナシランを含有する組成物およびこの組成物の利用について水素化ケイ素化合物を出発シリコン源として支持体上にシリコン膜を形成する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、アモルファスシリコン膜やポリシリコン膜の形成方法としては、モノシランガスやジシランガスの熱CVD(Chemical Vapor Deposition)法、プラズマCVD法あるいは光CVD法等が採用されており、一般的にはポリシリコンには熱CVD法(J.Vac.Sci.Technology.,14巻1082頁(1977年)参照)が、またアモルファスシリコンにはプラズマCVD法(Solid State Com.,17巻1193頁(1975年)参照)が広く用いられており、薄膜トランジスターを有する液晶表示素子、太陽電池などの製造に利用されている。
【0003】
しかしこれらのCVD法によるシリコン膜の形成には、プロセス面で以下の更なる改良が待たれていた。▲1▼気相反応を用いるため気相でシリコンの粒子が発生するため装置の汚染や異物の発生による生産歩留まりが低い。▲2▼原料がガス状であるため、表面に凹凸のある基板上には均一膜厚のものが得られにくい。▲3▼膜の形成速度が遅いため生産性が低い。▲4▼プラズマCVD法においては複雑で高価な高周波発生装置や真空装置などが必要である。
また、材料面では毒性および反応性の高いガス状の水素化ケイ素が用いられるため取り扱いに難点があるのみでなく、ガス状であるため密閉状の真空装置が必要となる。一般にこれらの装置は大掛かりなもので装置自体が高価であるだけでなく、真空系やプラズマ系に多大のエネルギーを消費するため製品のコスト高に繋がっている。
【0004】
近年、これに対して真空系を使わずに液体状の水素化ケイ素を塗布する方法が提案されている。特開平1―29661号公報には冷却した基板上にガス状の原料を液体化して吸着させ、化学的に活性な原子状の水素と反応させてシリコン系の薄膜を形成する方法が開示されている。しかし、この方法では、原料の水素化ケイ素の気化と冷却を続けて行うため複雑な装置を必要とするのみでなく、膜厚の制御が困難であるという問題がある。
【0005】
また、特開平7―267621号公報には、低分子量の液体状の水素化ケイ素を基板に塗布する方法が開示されているが、この方法は系が不安定なために取り扱いに難点があるとともに、原料が液体状であるため、大面積基板に応用する場合に均一膜厚を得るのが困難である。
一方、固体状の水素化ケイ素ポリマーの例が英国特許GB−2077710Aに報告されているが、溶媒に不溶なためコーティングによる膜を形成することができない。
【0006】
さらに、太陽電池の製造を目的として特開平9―237927号公報にはポリシランの溶液を基板上に塗布した後、熱分解してシリコン膜を遊離させる方法が開示されている。しかし、炭素を含有するケイ素化合物では、熱分解或いは紫外線照射による光分解では炭素が不純物として多量に残ってしまうため電気特性の優れたアモルファス或いは多結晶シリコン膜を得ることが困難である。
さらに特開昭60−24261号公報には、下記式
【0007】
【化2】
【0008】
(ここで、nは3、4または5であり、RはHまたはSiH3である)
で表される環式シラン化合物とハロゲン化合物の気体状雰囲気を、支持体が配置された堆積室内に形成しこれらの化合物に熱エネルギーを与えて支持体上にシリコン原子を含む堆積膜を形成する熱CVDによるシリコン堆積膜の形成方法が開示されている。上記公報には、上記式で表される環式シラン化合物が具体的に5種類化学構造式で開示されている。しかしながら、これらの環式化合物について、化合物の同定データのみならずその製造方法すら同公報には何等記載されていない。
【0009】
一方、ポリシランの製造方法に関し、一般にそれぞれの構造単位を有するモノマ−を原料として、例えば、以下の方法により製造することができる。(a)ハロゲン原子に対して当量のアルカリ金属の存在下にハロシラン類を脱ハロゲン縮重合させる方法(いわゆる「キッピング法」、J.Am.Chem.Soc.,110巻,124頁(1988年)、Macromolecules,23巻,3423頁(1990));(b)電極還元によりハロシラン類を脱ハロゲン縮重合させる方法(J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1161頁(1990年)、J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,897頁(1992年));(c)金属触媒の存在下にヒドロシラン類を脱水素縮重合させる方法(特開平4−334551号公報):(d)ビフェニルなどで架橋されたジシレンのアニオン重合による方法(Macromolecules,23巻,4494頁(1990年))。(e)フェニル基やアルキル基で置換された環状ケイ素化合物を上記の方法で合成した後、公知の方法(例えば、Z.anorg.allg.Chem.,459巻,123頁(1979年)など)によりヒドロ置換体やハロゲン置換体などに誘導することもできる。これらのハロゲン化シクロシラン化合物は公知の方法(例えば、Mh.Chem.第106巻、503頁、1975年参照)、(Z.Anorg.Allg.Chem.第621巻、1517頁、1995年参照)、(J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,777頁,1984年参照)で合成することができる。上記のようにポリシランは重縮合反応により合成することが一般的であるが、重縮合に際し、塩などが副生するため合成したポリマーを精製する工程が必要となる。近年、マクロモレキュールス(Macromolecules、27巻、2360頁、1994年)には、フェニルノナメチルシクロペンタシラン1がアニオン開環重合してポリ(フェニルノナメチルペンタシラニレン)2を生成することが開示されている。この環状モノマーの開環重付加反応は上記の重縮合反応と異なり副生するものがなく、高純度のポリシランを合成する手法として優れた方法である。特に電子材料など高純度を要求される用途においてはこのような開環付加重合が好ましい。しかし、上記のモノマーはケイ素原子にメチル基やフェニル基などの炭素原子が結合しており、このようなポリシランを熱分解しても炭素が取り込まれたポリカルボシランが生成するだけで半導体用シリコンを得ることはできない。また、スピロ[4.4]ノナシラン骨格の合成法に関し、J.Organomet.Chem.,1975年、100巻、127頁にはビ(ノナメチルシクロペンタシラニル)あるいはオクタデカメチルビシクロ[4.4.0]デカシランを塩化アルミニウム触媒で処理すると骨格転位が進行してモノシリルスピロ[4.4]ノナシラン骨格とスピロ[4.5]デカシラン骨格を有するメチル置換体が7:3の比で得られることが報告されており、スピロ[4.4]ノナシラン骨格が熱力学的に安定に存在することが判っている。しかし、そのモノシリルスピロ[4.4]ノナシラン骨格はすべての置換基がメチル基のものであり水素置換体は報告されておらず、これらも前述の有機基変性ポリシラン同様、半導体の金属シリコンへの変換はできない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ケイ素原子と水素原子だけから構成されたスピロ[4.4]ノナシランを含有する組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、スピロ[4.4]ノナシランの製造法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的および利点は以下の説明から明らかになろう。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第1に、下記式
【0012】
【化3】
【0013】
で表されるスピロ[4.4]ノナシランと環状水素化ケイ素化合物とを含有するシリコン膜形成用組成物によって達成される。
【0014】
本発明の上記目的および利点は、第2に、ヘキサデカフェニルスピロ[4.4]ノナシランをルイス酸の存在下塩化水素ガスと反応せしめてヘキサデカクロロスピロ[4.4]ノナシランを生成せしめ、次いでこれを水素化することを特徴とするスピロ[4.4]ノナシランの製造法によって達成される。
【0016】
スピロ[4.4]ノナシランは、例えばヘキサデカフェニルスピロ[4.4]ノナシランからそのケイ素原子と結合したフェニル基を塩素原子に変換し次いでさらに水素原子に変換する公知の方法(例えば、Mh.Chem.第106巻、503頁、1975年参照)、(Z.Anorg.Allg.Chem.第621巻、1517頁、1995年参照)、(J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,777,1984年参照)で合成することができる。
例えばヘキサデカフェニルスピロ[4.4]ノナシランを塩化アルミニウムの如きルイス酸触媒の存在下、塩化水素ガスを導入して塩素化し、さらにこれを水素化リチウムアルミニウムで水素化することにより、ヘキサデカフェニルスピロ[4.4]ノナシランの全部のフェニル置換基を水素原子に変換して、ケイ素原子と水素原子だけからなるスピロ[4.4]ノナシランを製造することができる。
【0017】
塩素化反応は、例えば0〜80℃の温度で、1〜12時間実施することができる。ルイス酸触媒はヘキサデカフェニルスピロ[4.4]ノナシランに対し例えば0.1〜20重量%の割合で使用することができる。反応溶媒としては、例えばトルエン等の有機溶媒が使用される。
還元反応は、例えば0〜50℃の温度で、1〜24時間実施される。
【0018】
原料であるヘキサデカフェニルスピロ[4.4]ノナシランは、例えばジフェニルジクロロシランおよびテトラクロロシランをリチウム金属などによって脱ハロゲン縮合して得られる。
【0019】
上記反応を利用して、スピロ[4.4]ノナシランは、それを含むシクロペンタシランとの組成物として次のようにして調製することができる。例えばジフェニルジクロロシランおよびテトラクロロシランの混合物をテトラヒドロフラン中金属リチウムで環化せしめてデカフェニルシクロペンタシランとヘキサデカフェニルスピロ[4.4]ノナシランを含有する混合物を生成せしめ、次いでこの混合物をトルエン中で塩化アルミニウム触媒存在下、塩化水素ガスで処理しさらに水素化リチウムアルミニウム等の水素化剤で処理することにより、デカフェニルシクロペンタシランからはシクロペンタシランを、またヘキサデカフェニルスピロ[4.4]ノナシランからはスピロ[4.4]ノナシランを生成せしめる。水素化剤による処理後、必要に応じてシリカゲル、活性炭等を用いて脱塩処理を行うことができる。
【0020】
またスピロ[4.4]ノナシランとシクロペンタシランを含む混合物はシクロペンタシランおよびシリルシクロペンタシラン混合物の溶液を不活性雰囲気下で熟成することによって製造することもできる。シクロペンタシランおよびシリルシクロペンタシランの混合物は例えばジフェニルジクロロシランをテトラヒドロフラン中金属リチウムで環化せしめてデカフェニルシクロペンタシランおよびドデカフェニルシクロヘキサシランの混合物を生成せしめ、次いで塩化アルミニウムの存在下、塩化水素で処理しさらに水素化リチウムアルミニウム等の水素化剤で処理することにより製造することができる。その後、必要に応じてシリカゲル、活性炭等を用いて脱塩処理を行うことができる。この混合物の溶液を不活性雰囲気下にて2週間以上放置すると、製造直後には検出されなかったスピロ[4.4]ノナシランが生成し、スピロ[4.4]ノナシランおよびシクロペンタシランを含む混合物の溶液が生成する。
【0021】
スピロ[4.4]ノナシランは、シクロペンタシランとの混合物としてではなく、単一化合物として取得することもできる。例えば上記で得られたデカフェニルシクロペンタシランおよびヘキサデカフェニルスピロ[4.4]ノナシランの混合物からヘキサデカフェニルスピロ[4.4]ノナシランのみを分別結晶化などにより単離し、その後は前記の工程に準じてスピロ[4.4]ノナシランを製造することができる。
本発明のスピロ[4.4]ノナシランは、ケイ素原子と水素原子だけからなる水素化ケイ素化合物、例えばシクロペンタシランの如き環状水素化ケイ素化合物をラジカル開環付加重合させて、溶媒可溶性のポリシランへ変換できるという化学的性質を持つ。すなわち、シクロペンタシラン単独を例えばトルエンの如き炭化水素系溶媒に溶解せしめ、この溶液を溶媒の沸点程度まで加熱しても重合反応は進行しないが、他方シクロペンタシランをこれに対し僅かな量例えば1重量%程度のスピロ[4.4]ノナシランと一緒に同様にトルエンの如き炭化水素溶媒に溶解せしめ加温すると、シクロペンタシランの重合反応は円滑に進行するようになる。これは、スピロ[4.4]ノナシランがそのスピロ部位でラジカル的に開裂してケイ素ラジカルを生成し、これが開始剤となって水素化ケイ素化合物、例えばシクロペンタシランの如き環状水素化ケイ素化合物のラジカル的開環反応を起こすものと推察される。
【0022】
また、このようにして得られたポリシラン溶液は塗布性が良好で、基板上に良好なポリシラン膜を形成することができ、さらに該ポリシラン膜は熱分解や光分解による脱水素反応によりシリコン膜に変換できることも判明した。
【0023】
それ故、前記の如くして取得した本発明のスピロ[4.4]ノナシランは、これを種々の水素化ケイ素化合物と混合してこれらの水素化ケイ素化合物を前記したシクロペンタシランと同様に重合せしめることができる。ここで用いられる水素化ケイ素化合物としては、例えばシクロトリシラン、シクロテトラシラン、シクロペンタシラン、シクロヘキサシラン、シクロヘプタシラン、シクロオクタシランなどの水素化環状シラン化合物;n−ペンタシラン、i−ペンタシラン、neo−ペンタシラン、n−ヘキサシラン、n−ヘプタシラン、n−オクタシラン、n−ノナシランなどの鎖状シラン化合物;1,1’−ビシクロブタシラン、1,1’−ビシクロペンタシラン、1,1’−ビシクロヘキサシラン、1,1’−ビシクロヘプタシラン、1,1’−シクロブタシリルシクロペンタシラン、1,1’−シクロブタシリルシクロヘキサシラン、1,1’−シクロブタシリルシクロヘプタシラン、1,1’−シクロペンタシリルシクロヘキサシラン、1,1’−シクロペンタシリルシクロヘプタシラン、1,1’−シクロヘキサシリルシクロヘプタシラン、スピロ[2.2]ペンタシラン、スピロ[3.3]ヘプタタシラン、スピロ[4.5]デカシラン、スピロ[4.6]ウンデカシラン、スピロ[5.5]ウンデカシラン、スピロ[5.6]ウンデカシラン、スピロ[6.6]トリデカシランなどのスピロ構造のシラン化合物などを挙げることができる。これらの内、合成および精製の容易性、安定性などの点でシクロペンタシラン、シクロヘキサシラン、シクロヘプタシランなどが好ましい。
【0024】
本発明のスピロ[4.4]ノナシランおよび水素化ケイ素化合物を含有する開環重合性溶液組成物は、これらの化合物を適当な溶媒に溶解させることにより調製することができる。かかる溶媒としては、スピロ[4.4]ノナシランおよび水素化ケイ素化合物を溶解し、これらと反応しないものであれば特に限定されない。例えばn−ヘプタン、n−オクタン、デカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロへキシルベンゼンなどの炭化水素系溶媒;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテル系溶媒:さらにプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノンなどの非プロトン性極性溶媒を挙げることができる。これらのうち、スピロ[4.4]ノナシランおよび水素化ケイ素化合物の溶解性と該溶液の安定性の点で炭化水素系溶媒およびエーテル系溶媒が好ましく、炭化水素系溶媒がさらに好ましい。これらの溶媒は、単独でも、或いは2種以上の混合物としても使用できる。
【0025】
上記溶液組成物における固形分濃度は形成しようとするシリコン膜の厚みによってその適当な範囲は変動するが、例えば0.01〜30重量%であるのが好ましく、0.1〜20重量%がさらに好ましく、1〜10重量%であるのが特に好ましい。
また、水素化ケイ素化合物に対するスピロ[4.4]ノナシランの割合は、水素化ケイ素化合物100重量部に対し0.01〜20重量部が好ましく、0.1〜15重量部がさらに好ましく、0.5〜10重量部が特に好ましい。
【0026】
上記溶液組成物は目的や機能を損なわない範囲で必要に応じてフッ素系、シリコーン系、非イオン系などの表面張力調節材を微量含有することができる。この非イオン系表面張力調節材は、溶液の塗布対象物への濡れ性を良好化し、塗布した膜のレベルリング性を改良し、塗膜のぶつぶつの発生、ゆず肌の発生などの防止に役立つ。かかる非イオン性界面活性剤としては、フッ化アルキル基もしくはパーフルオロアルキル基を有するフッ素系界面活性剤、またはオキシアルキル基を有するポリエーテルアルキル系界面活性剤を挙げることができる。前記フッ素系界面活性剤としては、C9F19CONHC12H25、C8F17SO2NH−(C2H4O)6H、C9F17O(プルロニックL−35)C9F17、C9F17O(プルロニックP−84)C9F17、C9F7O(テトロニック−704)(C9F17)2などを挙げることができる。ここで、プルロニックL−35:旭電化工業(株)製、ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンブロック共重合体、平均分子量1,900;プルロニックP−84:旭電化工業(株)製、ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンブロック共重合体、平均分子量4,200;テトロニック−704:旭電化工業(株)製、N,N,N′,N′−テトラキス(ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンブロック共重合体)、平均分子量5,000である。これらのフッ素系界面活性剤の市販品の具体例としては、エフトップEF301、同EF303、同EF352(新秋田化成(株)製)、メガファックF171、同F173(大日本インキ(株)製)、アサヒガードAG710(旭硝子(株)製)、フロラードFC−170C、同FC430、同FC431(住友スリーエム(株)製)、サーフロンS−382、同SC101、同SC102、同SC103、同SC104、同SC105、同SC106(旭硝子(株)製)、BM−1000、同1100(B.M−Chemie社製)、Schsego−Fluor(Schwegmann社製)などを挙げることがでる。またポリエーテルアルキル系界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックポリマーなどを挙げることができる。これらのポリエーテルアルキル系界面活性剤の市販品の具体例としては、エマルゲン105、同430、同810、同920、レオドールSP−40S、同TW−L120、エマノール3199、同4110、エキセルP−40S、ブリッジ30、同52、同72、同92、アラッセル20、エマゾール320、ツィーン20、同60、マージ45(いずれも(株)花王製)、ノニボール55(三洋化成(株)製)などを挙げることができる。上記以外の非イオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリアルキレンオキサイドブロック共重合体などがあり、具体的にはケミスタット2500(三洋化成工業(株)製)、SN−EX9228(サンノプコ(株)製)、ノナール530(東邦化学工業(株)製)などを挙げることができる。
【0027】
上記溶液組成物で塗膜を形成するに際しては、溶液組成物をテフロン製や再生セルロース製のメンブランフィルターなどで濾過し固形異物を除去して使用することができる。
【0028】
次に、この溶液組成物を塗布して塗膜を形成する支持体の材質、形状等には特に制限はないが、材質は次工程の熱処理に耐えられるものが好ましく、また塗膜を形成する支持体面は平面であるのが好ましい。これらの支持体の材質の具体例としては、ガラス、金属、プラスチック、セラミックスなどを挙げることができる。ガラスとしては、例えば石英ガラス、ホウ珪酸ガラス、ソーダガラス、鉛ガラスが使用できる。金属としては、例えば金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼などが使用できる。プラスチックとしては、例えばポリイミド、ポリエーテルスルホンなどが使用できる。さらにこれらの材質形状はバルク形状、板状、フィルム形状などで特に制限されるものではない。
【0029】
塗布方法は特に限定されず、例えばスピンコート、ディップコート、カーテンコート、ロールコート、スプレーコート、インクジェット法などにより実施することができる。塗布は一般には室温(20℃)以上の温度で行われる。室温以下の温度ではケイ素化合物の溶解性が低下し一部析出する場合がある。また塗布する場合の雰囲気は、例えば窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスが好ましい。さらに必要に応じて水素などの還元性ガスを混入したものでもよい。スピンコート法を用いる場合のスピナーの回転数は形成する薄膜の厚み、塗布溶液組成等により決まるが、一般には100〜5000rpm、好ましくは300〜3000rpmが用いられる。塗布は1回で、または複数回、重ね塗りすることもできる。好適な塗膜の厚みは固形分濃度に依存して適宜変動するが、固形分として0.01〜100μmが好ましく、0.1〜10μmであるのがさらに好ましい。塗布した後は溶媒を除去するために加熱処理を行う。加熱する温度は使用する溶媒の種類、沸点により異なるが通常100℃〜200℃である。雰囲気は上記塗布工程と同じ窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス中で行なうことが好ましい。
【0030】
上記溶液組成物を支持体上に塗布して塗膜を形成する前に、必要に応じて紫外線照射に付すことができる。紫外線照射により、その理由は必ずしも明らかではないが、溶液組成物の塗布性能が向上し、均一な膜厚の塗膜を容易に形成することを可能とする。紫外線照射は例えば365nmで0.1〜100J/cm2の紫外線量で十分である。紫外線の光源としては、例えば低圧あるいは高圧の水銀ランプ、重水素ランプあるいはアルゴン、クリプトン、キセノン等の希ガスの放電光;YAGレーザー、アルゴンレーザー、炭酸ガスレーザー、XeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArClなどのエキシマレーザーなどを光源として使用することができる。これらの光源としては、10〜5000Wの出力のものが用いられるが、通常100〜1000Wで十分である。
【0031】
かくして得られたポリシラン膜は、次いで熱処理や光処理に付されると脱水素反応によりシリコン膜へ変換できる。熱処理の場合には一般に到達温度が約550℃以下の温度ではアモルファス状、それ以上の温度では多結晶状のシリコン膜が得られる。アモルファス状のシリコン膜を得ようとする場合は、好ましくは300℃〜550℃、より好ましくは350℃〜500℃が用いられる。到達温度が300℃未満の場合は、ケイ素化合物の熱分解が十分に進行せず、十分な厚さのシリコン膜を形成できない場合がある。上記熱処理を行う場合の雰囲気は窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス、もしくは水素などの還元性ガスを混入した雰囲気が好ましい。生成されるシリコン膜が均一な厚みと鏡面状態に仕上がるのは驚くべきことである。これは加熱される塗膜が未反応のスピロ[4.4]ノナシランを含有することによるものと思われる。なぜなら、スピロ[4.4]ノナシランを含有しない塗膜では厚みの不均一なシリコン膜あるいは場合によっては部分的に破れたシリコン膜が形成されることが多発するからである。未だ詳細は究明されていないが、本発明者らの研究によれば、この加熱により先ず溶媒が揮発し、それと同時にあるいはそれと前後して含有されるスピロ[4.4]ノナシランがそのスピロ部位でラジカル的に開裂してケイ素ラジカルを生成し、これが開始剤となって水素化ケイ素化合物、例えばシクロペンタシランの如き環状水素化ケイ素化合物のラジカル的開環反応を起して一部がオリゴマー化し、その後このオリゴマーおよび環状水素化ケイ素化合物の熱分解により水素を生成し同時にシリコン膜を形成するものと信じられている。また、光処理の場合、使用する光の光源としては、低圧あるいは高圧の水銀ランプ、重水素ランプあるいはアルゴン、クリプトン、キセノン等の希ガスの放電光;YAGレーザー、アルゴンレーザー、炭酸ガスレーザー、XeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArClなどのエキシマレーザーなどを光源として使用することができる。これらの光源としては10〜5000Wの出力のものが用いられるが、通常100〜1000Wで十分である。これらの光源の波長はケイ素化合物が多少でも吸収するものであれば特に限定されないが、好ましくは170nm〜600nmである。またシリコン膜への変換効率の点でレーザー光の使用が特に好ましい。これらの光処理時の温度は通常室温で程度であり、雰囲気は上記不活性ガス中が好ましいが、目的に応じて適宜選ぶことができる。
【0032】
かくして、本発明のスピロ[4.4]ノナシランおよび水素化ケイ素化合物を含む組成物から、支持体の上にシリコン膜特にアモルファスシリコン膜を有利に形成することができる。シリコン膜の厚みは、例えば0.001μm〜10μmとすることができる。
本発明により形成されたアモルファスシリコン膜は、太陽電池、光センサー、薄膜トランジスター、感光ドラム、保護膜など種々の電子デバイスに利用される。
【0033】
【実施例】
以下に、本発明を下記実施例により詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、ガスクロマトグラフィーは、担体としてChromosorb W(60〜80メッシュ)で液相としてシリコーン系OV−17(5%)を用い、120℃でヘリウムガスで展開した。
また、高速液体クロマトグラフィーは、順相系カラムYMC−PACK−SIL(A−011)(商品名、YMC社製)を用い、シクロヘキサンで展開した。
【0034】
合成例1
温度計、冷却コンデンサー、滴下ロートおよび攪拌装置を取り付けた内容量が3Lの4つ口フラスコ内をアルゴンガスで置換した後、乾燥したテトラヒドロフラン1Lとリチウム金属20.3gを仕込み、アルゴンガスでバブリングした。この懸濁液に、0℃で攪拌しながら、ジフェニルジクロロシラン296gとテトラクロロシラン24.8gの混合物を滴下ロートより添加した。滴下終了後、25℃でリチウム金属が完全に消失するまでさらに12時間攪拌を続けた。反応混合物を5Lの氷水に注ぎ、反応生成物を沈殿させた。この沈殿物を濾別し、水で良く洗浄した後シクロヘキサンで洗浄し、真空乾燥することにより白色固体180gを得た。この白色固体はIR、1H−NMR、29Si−NMRの各スペクトルにより、2成分から成る混合物であることが示唆された。この混合物を高速液体クロマトグラフィーにより分離したところ、主生成物と副生成物の比は6:1であることが判った。さらに、それぞれのIR、1H−NMR、29Si−NMR、TOF−MSの各スペクトルを測定し、主生成物はデカフェニルシクロペンタシランであり、副生成物はヘキサデカフェニルスピロ[4.4]ノナシランであることを確認した。図1に上記混合物の高速液体クロマトグラムを示す。
【0035】
合成例2
温度計、冷却コンデンサー、滴下ロートおよび攪拌装置を取り付けた内容量が3Lの4つ口フラスコ内をアルゴンガスで置換した後、よく乾燥したオクタフェニルシクロブタシラン160gとリチウム金属15.1gを仕込み、この中に攪拌しながら乾燥したテトラヒドロフラン1.5Lを滴下ロートより添加した。滴下終了後25℃でさらに3時間攪拌を続けた。この懸濁液をアルゴン気流下で濾過し、過剰のリチウム金属を除去した後、0℃で攪拌しながらテトラクロロシラン18.6gを滴下ロートより添加した。滴下終了後、25℃でさらに12時間攪拌を続けた。反応混合物を5Lの氷水に注ぎ、反応生成物を沈殿させた。この沈殿物を濾別し、水で良く洗浄した後シクロヘキサンで洗浄し、真空乾燥することにより白色固体150gを得た。この白色固体をゲルパーミエーションクロマトグラフィー、IR、1H−NMR、29Si−NMR、TOF−MSの各スペクトルを測定したところ、原料に使用したオクタフェニルシクロブタシランが90%と前記のヘキサデカフェニルスピロ[4.4]ノナシラン10%の混合物であることが分った。
【0036】
合成例3
合成例1のデカフェニルシクロペンタシランとヘキサデカフェニルスピロ[4.4]ノナシランの9:1混合物50gと乾燥したトルエン500mlを1Lのフラスコに仕込み、塩化アルミニウム2gを加え、25℃で塩化水素を導入し、アルゴン雰囲気下で5時間反応を続けた。ここで別途に、水素化リチウムアルミニウム20gとジエチルエーテル200mlを2Lのフラスコに仕込み、アルゴン雰囲気下、0℃で攪拌しながらこの中に上記の反応混合物を加えた。同温度にて1時間撹拌後さらに25℃で12時間撹拌を続けた。反応混合物よりアルミニウム化合物を除去し溶媒を留去したところ粘稠な油状物が5g得られた。このものはIR、1H−NMR、29Si−NMR、GC−MSの各スペクトルより、シクロペンタシランおよびスピロ[4.4]ノナシランを9:1の比で含む混合物であることが判った。
【0037】
合成例4
温度計、冷却コンデンサー、滴下ロートおよび攪拌装置を取り付けた内容量が3Lの4つ口フラスコ内をアルゴンガスで置換した後、乾燥したテトラヒドロフラン1.5Lとリチウム金属21gを仕込み、アルゴンガスでバブリングした。この懸濁液に、0℃で攪拌しながら、ジフェニルジクロロシラン380gを滴下ロートより添加した。滴下終了後、25℃でリチウム金属が完全に消失するまでさらに12時間攪拌を続けた。反応混合物を10Lの氷水に注ぎ、反応生成物を沈殿させた。この沈殿物を濾別し、水で良く洗浄した後シクロヘキサンで洗浄し、真空乾燥することにより白色固体230gを得た。この白色固体はIR、1H−NMR、29Si−NMRの各スペクトルにより、2成分から成る混合物であることが示唆された。この混合物を高速液体クロマトグラフィーにより分離したところ、主生成物と副生成物の比は9:1であることが判った。さらに、それぞれのIR、1H−NMR、29Si−NMR、TOF−MSの各スペクトルを測定し、主生成物はデカフェニルシクロペンタシランであり、副生成物はドデカフェニルシクロヘキサシランであることを確認した。
【0038】
合成例5
合成例4のデカフェニルシクロペンタシランとドデカフェニルシクロヘキサシランの9:1混合物50gを合成例3に準じた工程に付し粘稠な油状物を5g得た。このものはIR、1H−NMR、29Si−NMR、GC−MSの各スペクトルより、シクロペンタシランおよびシリルシクロペンタシランを10:1の比で含む混合物であることが判った。かくして得られた混合物3gを窒素雰囲気下でトルエン27gに溶解した。このもののガスクロマトグラムを図2に示す。このトルエン溶液を窒素雰囲気下25℃にて2週間放置後、ガスクロマトグラフィーにより分析したところ、シクロペンタシランとシリルシクロペンタシランのほかに新たに高沸点成分が検出された。このもののガスクロマトグラムを図3に示す。この高沸点成分についてGC−MSスペクトルを測定したところ、スピロ[4.4]ノナシランと完全に一致することが確認された。参考のため、合成例3で得られたシクロペンタシランとスピロ[4.4]ノナシランの混合物のトルエン溶液のガスクロマトグラムを図4に示す。
【0039】
合成例6
合成例1のデカフェニルシクロペンタシランとヘキサデカフェニルスピロ[4.4]ノナシランの9:1混合物85gを酢酸エチル4Lで再結晶すると、純粋なデカフェニルシクロペンタシランが55g得られた。かくして得られたデカフェニルシクロペンタシラン50gを合成例3に準じた工程に付すと、純粋なシクロペンタシラン5gが得られた。このものは、ガスクロマトグラフィーにより純度99%以上であることを確認した。
【0040】
合成例7
合成例1のデカフェニルシクロペンタシランとヘキサデカフェニルスピロ[4.4]ノナシランの混合物200gを熱トルエン4Lに溶解し、熱時濾過したところ、トルエン不溶部の白色固体が20g得られた。この白色固体のIR、1H−NMR、29Si−NMR、TOF−MSの各スペクトルおよび高速液体クロマトグラフィーでの保持時間を測定したところ、前記のヘキサデカフェニルスピロ[4.4]ノナシランと完全に一致した。かくして得られたヘキサデカフェニルスピロ[4.4]ノナシランを合成例3に準じた工程に付すと、純粋なスピロ[4.4]ノナシラン2gが得られた。このものは、ガスクロマトグラフィーにより純度99%以上であることを確認した。そのトルエン溶液のガスクロマトグラムを図5に示す。
【0041】
スピロ[4.4]ノナシランは25℃では油状を呈する。その赤外線吸収スペクトルを図6に示す。このものはケイ素原子と水素原子のみから構成され、赤外線スペクトルは比較的単純で2125cm-1にケイ素―水素結合の伸縮振動に帰属されるシャープなピークが見られ、985cm-1と863cm-1にケイ素―ケイ素の伸縮振動に帰属されるピークが観察される。また、マススペクトルを図7に示す。m/e=268に分子イオンピークが観察され、分子量が268であることが分る。またm/e=236のピークが強く検出され、このものはスピロ[4.4]ノナシラン分子から1つのモノシラン(SiH4)が脱離したフラグメントと帰属され、さらにm/e=206のピークはスピロ[4.4]ノナシラン分子からジシラン(Si2H6)が脱離したフラグメントと帰属される。
【0042】
スピロ[4.4]ノナシランの化学的性質としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、インダン、デカヒドロナフタレンなどの炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、モノグライム、ジグライムなどのエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系溶媒などの通常の有機溶媒に易溶で任意の割合で溶解することができる。
スピロ[4.4]ノナシランは25℃では無色透明の油状物で、アルゴンや窒素などの不活性雰囲気中では非常に安定であるが、空気中に放置すると徐々に酸化され容易にシロキサン構造へ変換される。また、スピロ[4.4]ノナシランを不活性雰囲気中で300℃以上の熱に晒すと脱水素反応が起こりアモルファス状のシリコンへ変換される。さらにこのスピロ[4.4]ノナシランは100℃程度の加熱処理によりラジカルを発生し、上記シクロペンタシランをラジカル開環重合させ溶媒可溶性のポリシランへ変換することができる。
【0043】
合成例8
合成例2のオクタフェニルシクロブタシランとヘキサデカフェニルスピロ[4.4]ノナシランの混合物100gを熱トルエン2Lに溶解し、熱時濾過したところ、トルエン不溶部の白色固体が10g得られた。この白色固体のIR、1H−NMR、29Si−NMR、TOF−MSの各スペクトルおよびゲルパーミエーションクロマトグラフィーでの保持時間を測定したところ、前記のヘキサデカフェニルスピロ[4.4]ノナシランと完全に一致した。かくして得られたヘキサデカフェニルスピロ[4.4]ノナシランを合成例3に準じた工程に付すと、純粋なスピロ[4.4]ノナシラン1gが得られた。このものは、ガスクロマトグラフィーにより純度99%以上であることを確認した。
【0044】
実施例1
上記合成例7で得られたスピロ[4.4]ノナシランの10%トルエン溶液10gと合成例6で得られたシクロペンタシランの10%トルエン溶液90gを混合した。この混合溶液をアルゴン雰囲気中で50℃で12時間攪拌した後、再度ガスクロマトグラムを測定したところ、シクロペンタシランもスピロ[4.4]ノナシランのピークは観察されず、開環重合した高沸点のポリシランに変換されていることが判った。この溶液をアルゴン雰囲気中でガラス基板上に2000rpmでスピンコートし無色透明のポリシラン膜が得られた。このポリシラン膜を500℃で焼成したところ、金属光沢を有するシリコン膜が得られた。アルファステップでシリコンの膜厚を測定したところ1500Åであった。さらにこのシリコン膜のESCAを測定したところ、99eVにSi2pに由来するピークが観察されただけで他のピークは観察されなかった。またこのシリコン膜のラマンスペクトルを測定し、波形分離して解析した結果、480cm-1付近にTOフォノンに帰属されるラマン線が、また420cm-1付近にLOフォノンに帰属されるラマン線が、さらに320cm-1付近にLAフォノンに帰属されるラマン線が観察され、100%アモルファス状のシリコン膜であった。このアモルファス状態のシリコンにXeClエキシマレーザー(308nm)を照射したところ、シリコンが多結晶化し結晶化率が77%であった。多結晶化したシリコン膜をESCAスペクトル(そのスペクトル図を図8に示す)にてケイ素原子の2P軌道エネルギーを測定すると99.0eVであることがわかりシリコンであることが判った。
【0045】
実施例2
アルゴン雰囲気下、合成例3で得られたシクロペンタシランとスピロ[4.4]ノナシランの混合物5gをトルエン95gに溶解して溶液を調製した。この溶液をアルゴン雰囲気下にて石英基板にスピンコートしシクロペンタシランとスピロ[4.4]ノナシランの混合物の膜を形成した。この塗布基板をアルゴン雰囲気中で500℃にて5分加熱すると基板上にはシリコンの膜が残留した。このシリコン膜はラマン散乱スペクトルから、100%アモルファス状態であった。このアモルファス状態のシリコンにXeClエキシマレーザー(308nm)を照射したところ、シリコンが多結晶化し結晶化率が75%であった。多結晶化したシリコン膜をESCAスペクトルにてケイ素原子の2P軌道エネルギーを測定すると99.0eVであることがわかりシリコンであることが判った。
【0046】
参考例
アルゴン雰囲気下、合成例7で得られたスピロ[4.4]ノナシラン1gをトルエン9gに溶解して溶液を調製した。この溶液をアルゴン雰囲気下にて石英基板にスピンコートしスピロ[4.4]ノナシランの膜を形成した。この塗布基板をアルゴン雰囲気中で500℃にて5分加熱すると基板上にはシリコンの膜が残留した。このシリコン膜はラマン散乱スペクトルから、100%アモルファス状態であった。このアモルファス状態のシリコンにXeClエキシマレーザー(308nm)を照射したところ、シリコンが多結晶化し結晶化率が78%であった。多結晶化したシリコン膜をESCAスペクトルにてケイ素原子の2P軌道エネルギーを測定すると99.0eVであることがわかりシリコンであることが判った。
【0047】
比較例1
アルゴン雰囲気下、合成例6で得られたシクロペンタシラン5gをトルエン95gに溶解して溶液を調製した。この溶液をアルゴン雰囲気下にて石英基板にスピンコートしたが、ハジキが酷く均一な膜が得られなかった。
【0048】
実施例3
アルゴン雰囲気下、合成例3で得られたシクロペンタシランとスピロ[4.4]ノナシランの混合物5gをトルエン95gに溶解して溶液を調製した。この溶液をアルゴン雰囲気下にて石英基板にスピンコートしシクロペンタシランとスピロ[4.4]ノナシランの混合物の膜を形成した。この塗布基板に、アルゴン雰囲気下、UVを照射の後500℃にて5分加熱すると基板上にはシリコンの膜が残留した。このシリコン膜はラマン散乱スペクトルから、100%アモルファス状態であった。このアモルファス状態のシリコンにXeClエキシマレーザー(308nm)を照射したところ、シリコンが多結晶化し結晶化率が80%であった。多結晶化したシリコン膜をESCAスペクトルにてケイ素原子の2P軌道エネルギーを測定すると99.0eVであることがわかりシリコンであることが判った。
【0049】
実施例4
アルゴン雰囲気下、合成例5で得られたシクロペンタシランとスピロ[4.4]ノナシランの混合物(合成例5で2週間放置後のもの)5gをトルエン95gに溶解して溶液を調製した。この溶液をアルゴン雰囲気下にて石英基板にスピンコートしシクロペンタシランとスピロ[4.4]ノナシランの混合物の膜を形成した。この塗布基板をアルゴン雰囲気中で500℃にて5分間加熱すると基板上にはシリコンの膜が残留した。このシリコン膜はラマン散乱スペクトルから、100%アモルファス状態であった。このアモルファス状態のシリコンにXeClエキシマレーザー(308nm)を照射したところ、シリコンが多結晶化し結晶化率が75%であった。多結晶化したシリコン膜をESCAスペクトルにてケイ素原子の2P軌道エネルギーを測定すると99.0eVであることがわかりシリコンであることが判った。
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、スピロ[4.4]ノナシランを含有する組成物およびこの組成物を利用して水素化ケイ素化合物を出発シリコン源として支持体上にシリコン膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】合成例1で得られた混合物の高速液体クロマトグラムである。
【図2】合成例5で用いたシクロペンタシランとシリルシクロペンタシラン混合物のトルエン溶液のガスクロマトグラムである。
【図3】上記混合物を窒素雰囲気下室温で2週間放置後のガスクロマトグラムである。
【図4】シクロペンタシランとスピロ[4.4]ノナシラン混合物のトルエン溶液のガスクロマトグラムである。
【図5】合成例7で得られたスピロ[4.4]ノナシランのトルエン溶液のガスクロマトグラムである。
【図6】合成例7で得られたスピロ[4.4]ノナシランの赤外線吸収スペクトル図である。
【図7】合成例7で得られたスピロ[4.4]ノナシランのマススペクトル図である。
【図8】実施例1で得られた多結晶シリコン膜のESCAスペクトル図である。
Claims (6)
- 上記環状水素化ケイ素化合物がシクロペンタシランである、請求項1に記載のシリコン膜形成用組成物。
- スピロ[4.4]ノナシランを開始剤として環状水素化ケイ素化合物をラジカル重合して得られたポリシランを含有するシリコン膜形成用組成物。
- 上記環状水素化ケイ素化合物がシクロペンタシランである、請求項3に記載のシリコン膜形成用組成物。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載のシリコン膜形成用組成物を支持体上に塗布して得られた塗膜を熱処理または光処理することを特徴とするシリコン膜の形成方法。
- ヘキサデカフェニルスピロ[4.4]ノナシランをルイス酸の存在下塩化水素ガスと反応せしめてヘキサデカクロロスピロ[4.4]ノナシランを生成せしめ、次いでこれを水素化することを特徴とするスピロ[4.4]ノナシランの製造法。
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