JP2001058996A - ノルボルニル基を持つシリコン化合物、コーティング組成物およびシリコン膜の製造法 - Google Patents

ノルボルニル基を持つシリコン化合物、コーティング組成物およびシリコン膜の製造法

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JP2001058996A
JP2001058996A JP23345899A JP23345899A JP2001058996A JP 2001058996 A JP2001058996 A JP 2001058996A JP 23345899 A JP23345899 A JP 23345899A JP 23345899 A JP23345899 A JP 23345899A JP 2001058996 A JP2001058996 A JP 2001058996A
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silicon compound
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norbornyl group
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Yasuo Matsuki
安生 松木
Satoshi Ehata
敏 江幡
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 熱や光の照射処理により優れた半導体特性を
備えた金属シリコンを与える、溶媒可溶性の新規なシリ
コン化合物、それを用いたコーティング組成物さらには
上記金属シリコンからなる被膜の製造法を提供するこ
と。 【解決手段】 下記式(1) (RSi)xy ...(1) ここで、Rは2−ノルボルニル基であり、xは5〜10
の整数であり、yは0または1である、で表される、ノ
ルボルニル基を持つシリコン化合物、それを含有するコ
ーティング組成物並びにこのシリコン組成物を用いてシ
リコン膜を製造する方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ノルボルニル基を
持つシリコン化合物、コーティング組成物およびシリコ
ン膜の製造法に関する。さらに詳しくは、LSI、薄膜
トランジスタ、光電変換装置、感光体用途等で使用され
るシリコン(元素状シリコン)に変換可能なシリコン化
合物、それを含有するコーティング組成物およびこのコ
ーティング組成物からシリコン膜を製造する方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来、アモルファスシリコン膜やポリシ
リコン膜の形成方法には、モノシランガスやジシランガ
スの熱CVD(Chemical Vapor Depo
sition)法やプラズマCVD、光CVD等が利用
されている。一般的にはポリシリコンには熱CVD法
(J.Vac.Sci.Technology.,14
巻1082頁(1977年)参照)が、またアモルファ
スシリコンにはプラズマCVD法(Solid Sta
te Com.,17巻1193頁(1975年)参
照)が広く用いられており、薄膜トランジスターを有す
る液晶表示素子、太陽電池などの製造に利用されてい
る。
【0003】しかしこれらのCVD法によるシリコン膜
の形成においては、プロセス面では以下の点で更なる改
良が待たれていた。気相反応であるので気相でシリコ
ンの粒子が発生するため装置の汚染や異物の発生による
生産歩留まりが低い。原料がガス状であるため、表面
に凹凸のある基板上には均一膜厚のものが得られにく
い。膜の形成速度が遅いため生産性が低い。プラズ
マCVD法においては複雑で高価な高周波発生装置や真
空装置などが必要である。
【0004】また、材料面では毒性、反応性の高いガス
状の水素化ケイ素を用いるため取り扱いに難点があるだ
けでなく、ガス状であるため密閉状の真空装置が必要で
ある。一般にこれらの装置は大掛かりなもので装置自体
が高価であるだけでなく、真空系やプラズマ系に多大の
エネルギーを消費するため製品のコスト高に繋がってい
る。
【0005】近年、これに対して真空系を使わずに液体
状の水素化ケイ素を塗布する方法が提案されている。特
開平1―29661号公報にはガス状の原料を、冷却し
た基板上に液体化して吸着させ、化学的に活性な原子状
の水素と反応させてシリコン系の薄膜を形成する方法が
開示されているが、原料の水素化ケイ素について気化と
冷却を続けて行うため複雑な装置が必要になるだけでな
く、膜厚の制御が困難である、という改善すべき点を有
している。
【0006】また、特開平7―267621号公報に
は、低分子量の液体状の水素化ケイ素を基板に塗布する
方法が開示されている。この方法は系が不安定なために
取る扱いに難点があるとともに、液体状であるため、大
面積基板に応用する場合に均一膜厚を得るのが困難であ
る。一方、固体状の水素化ケイ素ポリマーの例がGB−
A−2,077,710号公報に報告されているが、溶媒
に不溶なためコーティングによる膜を形成することがで
きない。
【0007】さらに従来はシリコン膜のパターンを形成
する場合には、基板全体に上記真空成膜法でシリコン膜
を形成した後、所望のパターンをフォトリソグラフィ
ー、エッチング法により形成する方法が多用されてい
た。しかしながら、この方法は大面積にわたって素子を
形成するには工程数も多く、高価な装置や多種の材料を
使用し多大のエネルギーを消費するために生産コストが
高いという欠点があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、新規
なシリコン化合物を提供することにある。本発明の他の
目的は、熱や光の照射処理により優れた半導体特性を備
えたシリコンを与える、溶媒可溶性の新規なシリコン化
合物を提供することにある。本発明のさらに他の目的
は、本発明の上記シリコン化合物を含有するコーティン
グ組成物を提供することにある。
【0009】本発明のさらに他の目的は、特に大面積の
基板にシリコン膜を形成するデバイスの製造において、
コーティング法によりシリコン化合物(前駆体)からな
る膜を形成した後、該シリコン化合物膜を不活性雰囲気
中で熱および/または光処理により該シリコン化合物を
半導体のシリコンに変換することにより、デバイスを製
造するためのコーティング組成物を提供することにあ
る。
【0010】本発明のさらに他の目的は、従来の真空成
膜を行わずに、省エネルギープロセスにより安価で安定
的にシリコン膜を形成することのできる、シリコン化合
物を含有してなるコーティング組成物を提供することに
ある。本発明のさらに他の目的は、本発明の上記コーテ
ィング組成物から半導体特性を備えたシリコン膜を製造
する方法を提供することにある。本発明のさらに他の目
的および利点は、以下の説明から明らかになろう。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、本発明
の上記目的および利点は、第1に、下記式(1) (RSi)xy ...(1) ここで、Rは2−ノルボルニル基であり、xは5〜10
の整数であり、yは0または1である、で表される、ノ
ルボルニル基を持つシリコン化合物によって達成され
る。本発明の上記目的および利点は、第2に、上記式
(1)で表されるノルボルニル基を持つシリコン化合物
を含有することを特徴とするコーティング組成物によっ
て達成される。また、本発明の上記目的および利点は、
第3に、基板の表面に本発明の上記コーティング組成物
を塗布しそして乾燥して塗膜とした後、光および/また
は熱によりシリコン化合物を分解せしめてシリコン膜に
変換することを特徴とする、シリコン膜の製造法によっ
て達成される。以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】本発明の新規化合物は、上記式(1)で表
されるノルボルニル基を持つシリコン化合物である。上
記式(1)においてRは2−ノルボルニル基である。2
−ノルボルニル基は下記式
【0013】
【化1】
【0014】で表される。また、上記式(1)におい
て、xおよびyはそれぞれ5〜10の整数および0また
は1である。上記式(1)で表されるシリコン化合物と
しては、例えば下記式(2)〜(6):
【0015】
【化2】
【0016】で表されるシリコン化合物を挙げることが
できる。
【0017】本発明で使用するシリコン化合物は、通常
それぞれの構造単位を有するモノマ−を原料として、ケ
イ素−ケイ素結合を形成させて合成することができ、ケ
イ素−ケイ素結合の形成方法としては以下の方法を用い
ることができる。(a)アルカリ金属の存在下にハロシ
ラン類を脱ハロゲン縮重合させる方法(いわゆる「キッ
ピング法」、J.Am.Chem.Soc.,110
124(1988)およびMacromolecule
s,23,3423(1990)参照);(b)電極還
元によりハロゲン化シラン化合物を脱ハロゲン化により
縮重合させる方法(J.Chem.Soc.,Che
m.Commun.,1161(1990)およびJ.
Chem.Soc.,Chem.Commun.,89
7(1992)参照);(c)金属触媒の存在下にヒド
ロシラン類を脱水素縮重合させる方法(特開平4−33
4551号公報参照):(d)ビフェニルなどで架橋さ
れたジシランのアニオン重合による方法(Macro
molecules,23,4494(1990)参
照)。(e)フェニル基やアルキル基で置換された環状
ケイ素化合物を上記の方法で合成した後、公知の方法
(例えば、Z.anorg.allg.Chem.,
59,123−130 (1979)など)によりヒド
ロ置換体やハロゲン置換体などに誘導することもでき
る。また、これらのハロゲン化シクロシラン化合物は公
知の方法(例えば、E.Henggeら Mh.Che
m.106,503,(1975))で合成することが
でき、合成条件を最適化することによりクロル体、水素
化体および部分クロル化体を使用することができる。
【0018】本発明のコーティング組成物は上記シリコ
ン化合物を溶媒に溶解した溶液からなる。本発明で使用
する溶媒は、好ましくは大気圧下での沸点が30〜35
0℃のものである。溶媒の沸点が30℃より低い場合に
は、コーティングで塗膜を形成する場合に溶媒が先に蒸
発してしまい良好な塗膜を形成することが困難となり易
い。一方、上記沸点が350℃を越える場合には溶媒の
乾燥が遅くなりシリコン化合物のコーティング膜中に溶
媒が残留し易くなり、後工程の熱および/または光処理
後にも良質のシリコン膜が得られ難くなる。
【0019】本発明で使用する溶媒としては、シリコン
化合物を溶解し且つシリコン化合物と反応しないもので
あれば特に限定されないが、例えばn−ペンタン、n−
ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、ジシ
クロペンタジエン、ベンゼン、トルエン、キシレン、デ
ュレン、インデン、テトラヒドロナフタレン、デカヒド
ロナフタレン、スクワランなどの炭化水素系溶媒;ジエ
チルエーテル、ジプロピルエーテル、エチレングリコー
ルジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエー
テル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエ
チレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコ
ールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエ
チルエーテル、テトラヒドロフランテトラヒドロピラ
ン、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエ
チル)エーテル、p−ジオキサン、テトラヒドロフラン
などのエーテル系溶媒;さらにプロピレンカーボネー
ト、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリド
ン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチル
スルホキシド、塩化メチレン、クロロホルムなどの極性
溶媒を挙げることができる。これらの内、シリコン化合
物の溶解性と該溶液の安定性の点で炭化水素系溶媒、エ
ーテル系溶媒が好ましく、さらに好ましい溶媒は炭化水
素系溶媒特にトルエンである。これらの溶媒は、単独で
も、或いは2種以上の混合物としても使用できる。
【0020】本発明のコーティング組成物は、溶質とし
ての上記シリコン化合物と、また溶媒として上記例示の
ものからなり、均一塗布性に優れている。溶質の濃度は
通常1〜80重量%程度であり、所望のコーティング方
法やシリコン膜厚に応じて適宜調製することができる。
これらの溶液には、目的の機能を損なわない範囲で必要
に応じてフッ素系、シリコーン系、ノニオン系などの表
面張力調節材を少量添加することができる。かくして調
製したシリコン化合物溶液の粘度は、好ましくは1〜5
00mPa・sの範囲に入る。粘度が1mPa・sより小
さい場合にはコーティングが困難であり、粘度が500
mPa・sより大きい場合にもコーティングが困難とな
る。
【0021】本発明で使用するコーティング方式として
は、例えばスピンコート、ディップコート、スプレーコ
ート、ロールコート、カーテンコートなどの他にインク
ジェット方式を用いることができる。さらに必要に応じ
てこれらを組み合わせることもできる。上記コーティン
グ方式で本発明の組成物溶液を塗布するときの雰囲気
は、好ましくはアルゴン、ヘリウム、窒素などの不活性
ガスであり、温度は溶液材料のレオロジー特性などによ
り室温から100℃程度まで適宜選ぶことができる。
【0022】本発明のコーティング組成物を塗布する基
板としては特に限定されないが、通常の石英、ホウ珪酸
ガラス、ソーダガラスなどのガラス類;ポリエチレンテ
レフタレート、ポリフェニレンサルファイドなどのプラ
スチック類;金、銀、銅、ニッケル、鉄、チタン、アル
ミニウム、タングステンなどの金属類の他、さらにこれ
らの金属を表面に有するガラス、プラスチック、他種金
属基板などを使用することができる。
【0023】本発明のコーティング組成物は塗布した
後、溶媒を除去するために加熱処理に付される。加熱す
る温度は使用する溶媒の種類、沸点により異なるが、好
ましくは100℃〜200℃である。雰囲気は上記塗布
工程と同じ窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス
中で行うことが好ましい。
【0024】本発明のシリコン化合物の塗膜は熱処理お
よび/または光照射処理によってシリコン膜に変換する
ことができる。かくして得られるシリコン膜はアモルフ
ァス状あるいは多結晶状であるが、熱処理の場合には、
一般に到達温度が700℃以下の温度ではアモルファス
状、それを超える温度では多結晶状のシリコン膜が得ら
れる。アモルファス状のシリコン膜を得たい場合は、好
ましくは300℃〜600℃、より好ましくは350℃
〜500℃が用いられる。到達温度が300℃未満の場
合は、シリコン化合物の2−ノルボルニル基の熱分解が
十分に進行せず、十分な厚さのシリコン膜を形成できな
い場合がある。上記熱処理を行う場合の雰囲気は窒素、
ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスもしくは水素など
の還元性ガスを混入したものも使用できる。熱処理条件
を多段階に分けて行うこともできる。
【0025】本発明で使用する光の光源としては、低圧
あるいは高圧の水銀ランプ、重水素ランプあるいはアル
ゴン、クリプトン、キセノン等の希ガスの放電光の他、
YAGレーザー、アルゴンレーザー、炭酸ガスレーザ
ー、XeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、
ArF、ArClなどのエキシマレーザーなどを光源と
して使用することができる。これらの光源は一般には、
10〜5000Wの出力のものが用いられる。通常10
0〜1000Wで十分である。これらの光源の波長は環
状ケイ素化合物および光開環ケイ素化合物塗膜が多少で
も吸収するものであれば特に限定されないが、好ましく
は170nm〜600nmである。また、シリコン膜へ
の変換効率の点でレーザー光の使用が特に好ましい。こ
れらの光処理時の温度は、好ましくは室温〜500℃で
あり、得られるシリコン膜の半導体特性に応じて適宜選
ぶことができる。
【0026】また、本発明のシリコン化合物の塗膜は溶
媒を除去された後、不活性ガス雰囲気中で、熱処理およ
び/または光処理に供される。溶媒可溶性のシリコン化
合物は本熱処理および/または本光処理により溶媒不溶
性の強靭な塗膜になるだけでなく光学的電気的特性に優
れたシリコン塗膜に変換される。特にプラスチック基板
などの場合には熱処理よりも光処理の法が好ましい。こ
れらの金属シリコン膜への変換するための熱処理だけあ
るいは光処理だけでもよく、両者を組み合わせて行うこ
ともできる。
【0027】本発明のシリコン化合物は、例えば2−ノ
ルボルニルトリクロロシラン、2−ノルボルニルトリブ
ロモシラン、2−ノルボルニルトリヨードシラン、1,
2−ジ(2−ノルボルニル)テトラクロロジシラン、
1,2−ジ(2−ノルボルニル)テトラブロモジシラ
ン、1,2−ジ(2−ノルボルニル)テトラヨードジシ
ラン、1,2,3−トリ(2−ノルボルニル)ペンタク
ロロトリシラン、1,2,3−トリ(2−ノルボルニ
ル)ペンタブロモトリシラン、1,2,3−トリ(2−
ノルボルニル)ペンタヨードトリシランのような、2−
ノルボルニル基を含有するハロシラン化合物とアルカリ
金属またはアルカリ土類金属とをエーテル系溶媒中で反
応させることにより製造することができる。エーテル系
溶媒としては、例えばジエチルエーテル、ジ−n−プロ
ピルエーテル、ジ−イソプロピルエーテル、ジブチルエ
ーテル、エチルプロピルエーテル、アニソール、フェネ
トール、ジフェニルエーテル、ジエチレングリコールジ
メチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテ
ル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレ
ングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリ
コールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエ
チルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテ
ル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、エ
チレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコー
ルジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエー
テル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、プロ
ピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコ
ールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチル
エーテル、プロピレングリコールメチルエチルエーテ
ル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどを挙げること
ができる。これらのうち上記ケイ素化合物の溶解性が良
好であるので、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラ
ン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレング
リコールジエチルエーテルなどが好ましい。これらのエ
ーテル系溶媒は水分を予め除去しておくことが望まし
い。水分の除去法としては、ナトリウム−ベンゾフェノ
ンケチルの存在下での脱気蒸留法などが好ましい。エー
テル系溶媒の使用量は、上記ケイ素化合物1重量部に対
して1〜20重量部が好ましく、より好ましくは3〜7
重量部である。
【0028】アルカリ金属としては、例えばリチウム、
ナトリウム、カリウムが好ましく、またアルカリ土類金
属としては、例えばマグネシウムが好ましい。これらの
使用量は、反応させるケイ素のハロゲン原子に対して
1.5当量以上である。アルカリ金属の使用量が1.5当
量より小さい場合には、また、反応では必要に応じて外
部から超音波を照射することにより反応を促進すること
ができる。ここで使用される超音波の振動数としては1
0〜70KHz程度のものが望ましい。
【0029】反応の温度は−78℃〜100℃が好まし
い。反応温度が−78℃未満では反応速度が遅く生産性
が悪くなり、また、反応温度が100℃を超える場合に
は、反応が複雑になり目的物の収率が低下するようにな
る。
【0030】
【実施例】以下に、本発明を下記実施例により詳細に説
明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものでは
ない。
【0031】実施例1 温度計、冷却コンデンサー、滴下ロートおよび攪拌装置
を取り付けた内容量が1Lの4つ口フラスコ内をアルゴ
ンガスで置換した後、乾燥したテトラヒドロフラン50
0mLとリチウム2.3gを仕込み、アルゴンガスでバ
ブリングした。これを0℃で攪拌しながら2−ノルボル
ニルトリクロルシラン25gを滴下ロートよりゆっくり
添加した。反応系はすぐに褐色に着色する。2−ノルボ
ルニルトリクロルシランを滴下終了後、さらに0℃で2
時間攪拌した後、さらに室温で攪拌しリチウムを完全に
反応させた。反応終了後、少量のエタノールを加えリチ
ウムを失活させ、さらにこれを多量の水に注ぎ生成物を
沈殿させた。沈殿物を濾別し水洗した後、真空乾燥する
ことにより11g(82%収量)の白色粉末を得た。こ
の白色粉末をシリカゲルのクロマトグラフィーにより
3.5gのシリコン化合物が得られた。このものの1H−
NMRスペクトル、 13 C−NMRスペクトル、IRスペ
クトルをそれぞれ図1、図2および図3に示す。また、
この化合物のTOF−MSスペクトルを図4に示す。な
お、図4において、m/z=739.58のピークは式
(5)で表されるシリコン化合物に由来するものと信じ
られ、m/z=863.862、986.58、111
0.15、および1233.25の各ピークは、式
(6)、式(3)、式(4)、および式(2)で表され
るシリコン化合物にそれぞれ由来するものと信じられ
る。
【0032】実施例2 実施例1で使用したリチウム2.3gに代え、マグネシ
ウム4gを使用し、20℃で撹拌しながら2−ノルボル
ニルトリクロルシラン25gを滴下ロートよりゆっくり
添加した。はじめの10gの添加で反応系は還流が始ま
り、系は褐色に着色した。さらに外部からの加熱するこ
となく還流が持続するように残りの2−ノルボルニルト
リクロルシランをゆっくりと滴下した。滴下終了後、室
温下にてさらに3時間撹拌を続けた。他の工程は実施例
1と同様にして、4.0gのシリコン化合物を得た。こ
のシリコン化合物の1H−NMRスペクトル、13C−N
MRスペクトル、IRスペクトルおよびTOF−MSス
ペクトルは実施例1で得られたシリコン化合物と実質的
に同一であった。
【0033】実施例3 実施例1で得られたシリコン化合物5gをトルエン95
gに溶かした透明黄褐色の溶液を調製した。この溶液の
粘度は15mPa・sであった。この溶液を40℃で1
週間保存した溶液について観察したところ、外見上何の
変化も観察されず、再度粘度を測定したが15mPa・
sであり、粘度変化は観察されなかった。
【0034】実施例4 実施例1で得られたシリコン化合物5gをシクロヘキサ
ノン95gに溶解してシリコン化合物溶液を調製した。
この溶液を石英基板にスピンコートした後、この塗布基
板をアルゴン雰囲気下で700℃に加熱すると、ノルボ
ルニル基が熱により除去され、基板上にはシリコンの膜
が残留した。このシリコン膜はラマン散乱スペクトルか
ら、100%アモルファス状態であった。このアモルフ
ァス状態のシリコンにXeClエキシマレーザー(30
8nm)を照射したところ、シリコンが多結晶化し結晶
化率が75%であった。多結晶化したシリコン膜をES
CAスペクトルにてケイ素原子の2P軌道エネルギーを
測定すると99.0eVでありシリコンであることが判
った。
【0035】実施例5 実施例4で用いたシリコン化合物溶液を石英基板にスピ
ンコートした後、クリーンオーブン中で100℃で30
分間加熱処理を行い乾燥させた。このケイ素ポリマー膜
をアルゴン雰囲気下でXeClエキシマレーザー(30
8nm)を500mJ/cm2照射した。照射した部分
の膜をESCAスペクトルにてケイ素原子の2P軌道エ
ネルギーを測定すると99.0eVであった。ケイ素ポ
リマーに直接XeClエキシマレーザーを照射すること
によりケイ素ポリマー膜はシリコン膜に変換されること
が判った。
【0036】
【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば、従
来のシリコン膜形成方法と異なる新しいコーティングプ
ロセスでシリコン膜を形成することができるため、従来
のCVDのような気相からの堆積ではなく、液相の材料
を塗布した後、熱および/または光のエネルギーにより
電子材料としてのシリコン膜へ変換するためのコーティ
ング可能な新規なノルボルニル基を持つシリコン化合物
が提供される。本発明では、従来のCVD法と異なりシ
リコン膜形成時に粉末の発生を防止でき、大掛かりな真
空プロセスを用いないので、高価な装置を必要としない
のみならず大面積の基板上にも容易にシリコン膜を形成
できるので、本発明により、シリコン膜を有するLS
I、薄膜トランジスター、光電変換装置、及び感光体な
どの半導体デバイスを省エネルギープロセスで製造する
ことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた本発明のシリコン化合物の
1H−NMRスペクトル図である。
【図2】実施例1で得られた本発明のシリコン化合物の
13C−NMRスペクトル図である。
【図3】実施例1で得られた本発明のシリコン化合物の
IRスペクトル図である。
【図4】実施例1で得られた本発明のシリコン化合物の
TOF−MSスペクトル図である。
フロントページの続き Fターム(参考) 4H049 VN01 VP06 VP07 VP08 VP09 VQ06 VQ76 VR11 VR21 VU20 VU25 VU36 VW02 4J038 DL011 JC30 PB09 4K030 AA06 AA09 BA29 DA08 5F053 AA03 AA06 BB09 DD01 FF01 GG02 GG03 HH05 LL04 LL10 RR13

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記式(1) (RSi)xy ...(1) ここで、Rは2−ノルボルニル基であり、xは5〜10
    の整数であり、yは0または1である、で表される、ノ
    ルボルニル基を持つシリコン化合物。
  2. 【請求項2】 上記式(1)で表されるノルボルニル基
    を持つシリコン化合物を含有することを特徴とするコー
    ティング組成物。
  3. 【請求項3】 基板の表面に請求項2に記載のコーティ
    ング組成物を塗布しそして乾燥して塗膜とした後、光お
    よび/または熱によりシリコン化合物を分解せしめてシ
    リコン膜に変換することを特徴とする、シリコン膜の製
    造法。
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