以下、本発明を実施するための形態に関するいくつかの例について、図面を参照しながら説明する。図面において、実質的に同一の構成、動作、および効果を表す要素については、同一の符号を付す。図面の符号は、式において、符号により示される変数の値としても用いられる。
(第1の実施形態)
図1は、発光素子駆動装置200の構成を示す回路図である。発光素子駆動装置200は、駆動電圧生成回路210、電圧調整回路40、41、および42、電流駆動回路群39、カソード経路P36C、P37C、およびP38C、検出経路P26、P27、およびP28、ならびに電圧源経路P2を含む。発光素子駆動装置200は、発光素子群36、37、および38を駆動し、発光させる。電流駆動回路群39は、電流駆動回路26、27、および28を含む。駆動電圧生成回路210は、コンバータ制御回路220、DC/DCコンバータ230、および制御経路P35を含む。
発光素子群36は、発光素子14、15、16、および17を含む。発光素子群37は、発光素子18、19、20、および21を含む。発光素子群38は、発光素子22、23、24、および25を含む。各発光素子は、たとえばLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)により構成される。発光素子群36〜38の各アノード端は、DC/DCコンバータ230の出力経路PC2に接続される。発光素子群36〜38のカソード端は、それぞれカソード経路P36C〜P38Cに接続される。発光素子14〜17は、アノードからカソードへの順方向が、出力経路Poutからカソード経路P36Cへの方向となるように、互いに直列に接続される。各発光素子群37〜38内の発光素子についても、発光素子群36の場合と同様に接続される。
電圧調整回路40は、NチャネルMOS(Negative channel Metal Oxide Semiconductor:Nチャネル金属酸化膜半導体)トランジスタ11およびオペアンプ(演算増幅器)29を含む。電圧調整回路41は、NチャネルMOSトランジスタ12およびオペアンプ30を含む。電圧調整回路42は、NチャネルMOSトランジスタ13およびオペアンプ31を含む。電圧調整回路40において、NチャネルMOSトランジスタ11のドレインは、カソード経路P36Cに接続され、同ソースは、検出経路P26に接続されるとともにオペアンプ29の反転入力端子に接続される。オペアンプ29の非反転入力端子は、電圧源経路P2に接続され、同出力端子は、NチャネルMOSトランジスタ11のゲートに接続される。各電圧調整回路41〜42内のNチャネルMOSトランジスタおよびオペアンプについても、電圧調整回路40の場合と同様に接続される。
電流駆動回路26〜28の一端は、それぞれ検出経路P26〜P28に接続され、他端は接地される。このように、出力経路PC2と接地との間において、発光素子群36、カソード経路P36C、電圧調整回路40(詳しくは、電圧調整回路40に含まれるNチャネルMOSトランジスタ11)、検出経路P26、および電流駆動回路26は、互いに直列接続される。同様に、発光素子群37、カソード経路P37C、電圧調整回路41(詳しくは、電圧調整回路41に含まれるNチャネルMOSトランジスタ12)、検出経路P27、および電流駆動回路27は、互いに直列接続される。同様に、発光素子群38、カソード経路P38C、電圧調整回路42(詳しくは、電圧調整回路42に含まれるNチャネルMOSトランジスタ13)、検出経路P28、および電流駆動回路28は、互いに直列接続される。
駆動電圧生成回路210は、駆動電圧VC2を生成し、出力経路PC2を介して発光素子群36〜38へ供給する。発光素子群36における4個の発光素子の順方向電圧の総和は、全順方向電圧V36と呼ばれる。同様に、発光素子群37〜38における順方向電圧の総和は、それぞれ全順方向電圧V37およびV38と呼ばれる。カソード経路P36C〜P38Cと接地と間の電圧は、それぞれカソード電圧V36C、V37C、およびV38Cと呼ばれる。発光素子群36は、駆動電圧VC2を、全順方向電圧V36とカソード電圧V36Cとに分割する。同様に、発光素子群37は、駆動電圧VC2を、全順方向電圧V37とカソード電圧V37Cとに分割する。同様に、発光素子群38は、駆動電圧VC2を、全順方向電圧V38とカソード電圧V38Cとに分割する。
検出経路P26〜P28と接地との間の電圧(すなわち、それぞれ電流駆動回路27〜28の両端電圧)は、それぞれ両端電圧V26、V27、およびV28と呼ばれる。電圧調整回路40における降下電圧、すなわちカソード電圧V36Cから両端電圧V26を差し引いた電圧は、調整電圧V40と呼ばれる。同様に、電圧調整回路41における降下電圧、すなわちカソード電圧V37Cから両端電圧V27を差し引いた電圧は、調整電圧V41と呼ばれる。同様に、電圧調整回路42における降下電圧、すなわちカソード電圧V38Cから両端電圧V28を差し引いた電圧は、調整電圧V42と呼ばれる。電圧調整回路40は、カソード電圧V36Cを、調整電圧V40と両端電圧V26とに分割する。同様に、電圧調整回路41は、カソード電圧V37Cを、調整電圧V41と両端電圧V27とに分割する。同様に、電圧調整回路42は、カソード電圧V38Cを、調整電圧V42と両端電圧V28とに分割する。
電流駆動回路26〜28は、それぞれ駆動電流J26、J27、およびJ28を生成する。電流駆動回路26は、駆動電流J26を、検出経路P26、電圧調整回路40、およびカソード経路P36Cを介して、発光素子群36へ供給する。同様に、電流駆動回路27〜28は、駆動電流J27〜J28を、検出経路P27〜P28、電圧調整回路41〜42、およびカソード経路P37C〜P38Cを介して、発光素子群37〜38へそれぞれ供給する。
電流駆動回路26〜28は、駆動電流J26〜J28をそれぞれ所定の大きさにしてもよい。また、電流駆動回路26〜28は、オン/オフ制御されることにより、駆動電流J26〜J28を、それぞれ所定のパルス高さを有するパルス幅変調された電流にしてもよい。この場合、オフ状態における各両端電圧V26〜V28は、オン状態における両端電圧V26〜V28のいずれよりも大きい。電流駆動回路26〜28を含む電流駆動回路群39は、たとえばカレントミラー回路などの回路構成を用いて、一つの半導体基板上に形成される。この半導体基板上に、発光素子駆動装置200を構成する各構成要素が形成されてもよい。
電圧源3は、電圧源経路P3と接地との間に接続され、所定電圧V3を発生させ、電圧源経路P3へ出力する。電圧源2は、電圧源経路P2と電圧源3との間に接続され、所定電圧を発生させることにより、所定電圧V3と電圧源2の所定電圧との和電圧を表す所定電圧V2を電圧源経路P2へ出力する。なお、電圧源2は、電圧源3とは別個に電圧源経路P2と接地との間に接続され、所定電圧V2を発生させてもよい。
電圧調整回路40において、オペアンプ29は、両端電圧V26を反転入力端子に受けるとともに、電圧源経路P2からの所定電圧V2を非反転入力端子に受け、所定電圧V2から両端電圧V26を差し引いた電圧を増幅することにより、ゲート制御信号V29を生成する。NチャネルMOSトランジスタ11は、活性領域で動作する場合、ゲート制御信号V29をゲートに受け、ドレイン・ソース間電圧を調整する。両端電圧V26が所定電圧V2よりも小さくなるにつれてゲート制御信号V29が大きくなるから、NチャネルMOSトランジスタ11は、ドレイン・ソース間電圧を小さくし、その結果、両端電圧V26を大きくしようとする。反対に、両端電圧V26が所定電圧V2よりも大きくなるにつれてゲート制御信号V29が小さくなるから、NチャネルMOSトランジスタ11は、ドレイン・ソース間電圧を大きくし、その結果、両端電圧V26を小さくしようとする。ここで、NチャネルMOSトランジスタ11〜13のドレイン・ソース間電圧は、それぞれ調整電圧V40〜V42に等しい。このように、電圧調整回路40は、両端電圧V26を所定電圧V2に大略等しくする。
各電圧調整回路41〜42についても、電圧調整回路40の場合と同様に動作する。すなわち、オペアンプ30、31は、それぞれゲート制御信号V30、V31を生成する。NチャネルMOSトランジスタ12〜13は、それぞれゲート制御信号V30〜V31をゲートに受け、ドレイン・ソース間電圧を調整する。これにより、電圧調整回路41〜42は、それぞれ両端電圧V27〜V28を所定電圧V2に大略等しくする。
コンバータ制御回路220は、最小電圧検出回路32、エラーアンプ(誤差増幅器)33、電圧源経路P3、抵抗7、コンデンサ6、およびPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)制御回路221を含む。
最小電圧検出回路32は、両端電圧V26〜V28のうち、最小の電圧を表す最小両端電圧Vdを生成し、エラーアンプ33へ出力する。最小電圧検出回路32は、レベルシフト回路を含み、両端電圧V26〜V28のうち、最小の電圧をレベルシフトすることにより、最小両端電圧Vdを生成してもよい。エラーアンプ33は、最小両端電圧Vdを反転入力端子に受けるとともに、電圧源経路P3からの所定電圧V3を非反転入力端子に受け、所定電圧V3から最小両端電圧Vdを差し引いた電圧を増幅することにより、エラー信号Veを生成する。抵抗7およびコンデンサ6は、位相補償用フィルターを構成し、エラー信号Veの位相を補償する。
PWM制御回路221は、三角波発生器34および比較器35を含む。三角波発生器34は、三角波信号Vcを発生させる。比較器35は、エラー信号Veを非反転入力端子に受けるとともに、三角波信号Vcを反転入力端子に受け、エラー信号Veと三角波信号Vcとの比較結果を表すPWM制御信号V35を生成し、制御経路P35へ出力する。PWM制御回路221は、三角波信号Vcの周期で繰り返すパルス信号を、エラー信号Veが大きくなるにつれてハイレベルの期間が長くなるようにパルス幅変調することにより、PWM制御信号V35を生成する。
このように、コンバータ制御回路220は、両端電圧V26〜V28に基づいて、PWM制御信号V35を生成し、制御経路P35へ出力する。最小両端電圧Vdが所定電圧V3よりも小さくなるにつれて、PWM制御信号V35のハイレベルの期間は長くなり、最小両端電圧Vdが所定電圧V3よりも大きくなるにつれて、PWM制御信号V35のハイレベルの期間は短くなる。
DC/DCコンバータ230は、電圧源経路PC1、コンデンサ4、インダクタ8、NチャネルMOSトランジスタ10、ショットキーダイオード9、平滑コンデンサ5、および出力経路PC2を含む。電圧源1は電圧源経路PC1と接地との間に接続され、コンデンサ4は電圧源1に並列に接続される。インダクタ8の一端は電圧源経路PC1に接続され、同他端はNチャネルMOSトランジスタ10のドレインおよびショットキーダイオード9のアノードに接続される。NチャネルMOSトランジスタ10のソースは接地され、同ゲートは制御経路P35に接続される。ショットキーダイオード9のカソードは、平滑コンデンサ5の一端および出力経路PC2に接続され、平滑コンデンサ5の他端は接地される。
電圧源1は、所定電圧VC1を発生させ、電圧源経路PC1へ出力する。コンデンサ4は、電圧源経路PC1における所定電圧VC1の変動を抑制する。NチャネルMOSトランジスタ10は、制御経路P35からのPWM制御信号V35をゲートに受け、PWM制御信号V35によりオン/オフされる。インダクタ8は、NチャネルMOSトランジスタ10のオン動作およびオフ動作により、電圧源1からの電力を、それぞれ充電および放電する。ショットキーダイオード9は、充電時に出力経路PC2からの逆流を防止し、放電時に放電された電力を順方向に通過させる。平滑コンデンサ5は、通過した電力を充電し、出力経路PC2に平滑化された駆動電圧VC2を生成する。
このように、DC/DCコンバータ230は、所定電圧VC1を駆動電圧VC2に変換し、出力経路PC2を介して発光素子群36〜38へ供給するとともに、制御経路P35を介して受けるPWM制御信号V35に基づいて、駆動電圧VC2を調整する。DC/DCコンバータ230は、所定電圧VC1よりも大きい駆動電圧VC2を生成する昇圧コンバータとなっている。
PWM制御信号V35のハイレベルの期間が長くなるにつれて、NチャネルMOSトランジスタ10のオン期間が長くなるから、インダクタ8の充電期間は長くなり、その結果、駆動電圧VC2は大きくなる。駆動電圧VC2が大きくなると、両端電圧V26〜V28も大きくなる。反対に、PWM制御信号V35のハイレベルの期間が短くなるにつれて、NチャネルMOSトランジスタ10のオン期間が短くなるから、インダクタ8の充電期間は短くなり、その結果、駆動電圧VC2は小さくなる。駆動電圧VC2が小さくなると、両端電圧V26〜V28も小さくなる。
上述したコンバータ制御回路220の動作も考慮すると、最小両端電圧Vdが所定電圧V3よりも小さくなるにつれて、駆動電圧VC2は大きくなるから、両端電圧V26〜V28も大きくなり、最小両端電圧Vdが所定電圧V3よりも小さくなることは抑制される。反対に、最小両端電圧Vdが所定電圧V3よりも大きくなるにつれて、駆動電圧VC2は小さくなるから、両端電圧V26〜V28も小さくなり、最小両端電圧Vdが所定電圧V3よりも大きくなることは抑制される。
このように、駆動電圧生成回路210は、両端電圧V26〜V28のうち、最小両端電圧Vdが所定電圧V3に大略等しくなるように、駆動電圧VC2を調整する。
以下では、電流駆動回路26〜28は、すべてオン状態にあるとしている。オフ状態にある電流駆動回路の電力損失は実質的にゼロであり、駆動電圧生成回路210または電圧調整回路40〜42による調整動作も行われないので、考慮する必要がない。出力経路PC2から、発光素子群36〜38、カソード経路P36C〜P38C、電圧調整回路40〜42、および検出経路P26〜P28に至る3系統の経路のうち、最小両端電圧Vdに対応する経路は、最小電圧経路と呼ばれる。最小電圧経路以外の経路は、非最小電圧経路と呼ばれる。最小電圧経路および非最小電圧経路の系統数は、それぞれ1以上であり、合計で3となる。発光素子駆動装置200は、コンバータ制御回路220、制御経路P35、DC/DCコンバータ230、および最小電圧経路を経由するクローズドループ経路を通した制御動作により、最小両端電圧Vdを所定電圧V3に収束させる。
電流駆動回路26〜28が、正常に所望の駆動電流を生成するために必要な最小限の電圧は、動作可能最小両端電圧と呼ばれる。所定電圧V3を動作可能最小両端電圧に設定すれば、最小電圧経路に駆動電流を供給する電流駆動回路の両端電圧が、動作可能最小両端電圧となる。さらに、最小電圧経路における電圧調整回路は、両端電圧を調整する必要はなく、できるだけ電力を消費せずに駆動電流を通過させればよい。このため、所定電圧V2を所定電圧V3よりも若干大きめに設定することにより、最小電圧経路におけるオペアンプは、NチャネルMOSトランジスタをフルオン駆動(飽和領域で駆動)し、NチャネルMOSトランジスタをフルオン状態(飽和状態)にする。このとき、最小電圧経路の調整電圧は、NチャネルMOSトランジスタのオン電圧となる。動作可能最小両端電圧と、フルオン状態時の調整電圧と、最小電圧経路における発光素子群の全順方向電圧とを加算した電圧に、駆動電圧VC2が等しくなるように、駆動電圧生成回路210は駆動電圧VC2を調整する。
最小電圧経路の両端電圧が両端電圧V26〜V28のうちで最小となるのは、最小電圧経路における発光素子群の全順方向電圧が、全順方向電圧V36〜V38のうちでもっとも大きいことに起因している。すなわち、非最小電圧経路では、発光素子群の全順方向電圧は、最小電圧経路の場合よりも小さい。一方で上述したように、電圧調整回路40〜42は、両端電圧V26〜V28を所定電圧V2に大略等しくしようとするので、非最小電圧経路における電圧調整回路の調整電圧は、最小電圧経路の場合よりも大きくなる。このように、非最小電圧経路において、電圧調整回路は、NチャネルMOSトランジスタを活性領域で動作させることによって、最小電圧経路の場合よりも小さい全順方向電圧の段差を吸収し、両端電圧を最小電圧経路の両端電圧に合わせようとする。
上述したように、所定電圧V2を所定電圧V3よりも若干大きめに設定することにより、発光素子駆動装置200は、最小電圧経路を含むクローズドループ経路において最適に調整される。その結果、発光素子駆動装置200は、最小電圧経路に駆動電流を供給する電流駆動回路の両端電圧を、動作可能最小両端電圧に一致させることができる。同時に、電圧調整回路40〜42は、非最小電圧経路に駆動電流を供給する電流駆動回路の両端電圧を、動作可能最小両端電圧の近傍に調整することができる。
次に、発光素子駆動装置200について実際の動作例を説明する。所定電圧V3は0.5V、所定電圧V2は0.51V(すなわち、電圧源2が発生する電圧は0.01V)、駆動電流J26〜J28は100mA、およびNチャネルMOSトランジスタ11〜13のオン抵抗は50mオームとする。発光素子14〜25には、同一種類のLEDが用いられる。順方向電圧のばらつき幅は2.9V±0.1V(100mAの駆動電流時)とし、発光素子群36のLEDの順方向電圧はいずれも3V、発光素子群37〜38のLEDの順方向電圧はいずれも2.8Vとする。さらに、上述した動作可能最小両端電圧は、0.5Vとする。
このように設定された場合、全順方向電圧V36は3V×4=12Vとなり、全順方向電圧V37およびV38は2.8V×4=11.2Vとなる。したがって、発光素子群36、カソード経路P36C、電圧調整回路40、および検出経路P26を経由する経路が最小電圧経路となり、他の発光素子群37および38をそれぞれ経由する2系統の経路が非最小電圧経路となる。最小電圧経路における両端電圧V26は、所定電圧V3=0.5Vに等しい。オペアンプ29は、非反転入力端子に所定電圧V2=0.51Vを受け、反転入力端子に両端電圧V26=0.5Vを受けるため、ゲート制御信号V29は最大となる。このとき、NチャネルMOSトランジスタ11は、50mオームのオン抵抗を有するフルオン状態(飽和状態)となり、ドレイン・ソース間電圧(調整電圧V40)は50mオーム×100mA=5mVとなる。したがって、カソード電圧V36Cは0.5V+5mV=0.505V、駆動電圧VC2は0.505V+12V=12.505Vとなる。一方、非最小電圧経路における両端電圧V27〜V28は、活性領域で動作する電圧調整回路41〜42の調整機能により所定電圧V2に等しくなり、0.51Vとなる。
その結果、電流駆動回路26〜28における消費電力は式4のようになり、電流駆動回路26〜28のすべての両端電圧が0.5Vとなる理想状態の場合(式5)に近い結果が得られることになる。式4の式5に対する差電力、すなわち式4における電力損失は2mW程度であり、全消費電力の2パーセントにも達しない。
0.5V×100mA+0.51V×100mA×2=152mW ・・・(4)
0.5V×100mA×3=150mW ・・・(5)
さらに、電圧調整回路40〜42が設けられていない場合、両端電圧V26は0.5V、両端電圧V27〜V28は1.3Vになるため、電流駆動回路26〜28における消費電力は式6のようになる。式6における電力損失は160mW程度であり、全消費電力の100パーセントを越える。式4を式6と比較すると、電圧調整回路40〜42により、電力損失が大きく低減されることがわかる。
0.5V×100mA+1.3V×100mA×2=310mW ・・・(6)
このように、発光素子駆動装置200によれば、電圧調整回路40〜42は、発光素子の順方向電圧のばらつきに起因して、互いに大きく異なる発光素子群の全順方向電圧V36〜V38の差異を吸収することができる。その結果、電圧調整回路40〜42は、電流駆動回路におけるすべての両端電圧V26〜V28を、発光素子群36〜38から所望の発光量を得る必要最小限の大きさにすることができる。これにより、電流駆動回路の両端に必要以上の電圧が印加されないため、電流駆動回路の電力損失を極めて小さくし、電流駆動回路の消費電力を必要最低限にすることができる。
1つの半導体基板上に電流駆動回路26〜28が形成される場合には、この半導体チップの発熱を低減することができ、半導体チップの品質を向上させるとともに、同一半導体基板上にさらに多くの電流駆動回路を含む構成要素を形成することができる。さらに、発光素子を選別する必要がないので、選別用工数および発光素子群のコストを削減し、したがって発光素子駆動装置200を含む発光装置のコストを低減することができる。
発光素子群の全順方向電圧V36〜V38が互いに異なる原因には、発光素子群を構成する発光素子における順方向電圧のばらつきの他に、次のような場合がある。一つ目は、駆動電流J26〜J28が互いに異なる場合である。二つ目は、発光素子群36〜38ごとにLEDの直列数が異なる場合である。三つ目は、発光素子群36〜38ごとに順方向電圧の異なる種類のLEDを用いる場合である。四つ目は、発光素子群36〜38ごとに周囲温度に差がある場合である。このような場合にも、結果的に全順方向電圧V36〜V38が互いに異なることになり、電圧調整回路40〜42の動作によって上述したような効果を得ることができる。
さらに、1つの電流駆動回路が生成する駆動電流は、その両端電圧に依存して変化する傾向にある。たとえば、両端電圧が大きくなるにつれて、駆動電流は増加する傾向にある。しかし、この電流駆動回路に接続される電圧調整回路は、両端電圧の変動を抑制することができるため、1つの電流駆動回路における駆動電流の相対的精度を向上させることができる。また、3個の電流駆動回路26〜28のうち、オン状態にある電流駆動回路の両端電圧の中から最小両端電圧Vdが検出されるため、駆動電流は、オン状態となる電流駆動回路の固有の特性に依存して変化する傾向にある。しかし、3個の電流駆動回路26〜28のうち、いずれの電流駆動回路がオン状態となっても、オン状態の電流駆動回路に接続される電圧調整回路は、両端電圧の変動を抑制することができる。このため、3個の電流駆動回路26〜28における駆動電流の絶対的精度を向上させることができる。
なお、電流駆動回路26〜28における駆動電流値が異なるなどにより、電流駆動回路26〜28の動作可能最小両端電圧が異なる場合には、オペアンプ29〜31は非反転入力端子にそれぞれ異なる最適な所定電圧を受け、電流駆動回路26〜28における消費電力を最適化してもよい。
なお、図1では、発光素子群36〜38ごとに電圧調整回路40〜42を設けているが、必ずしもすべての発光素子群に対して設ける必要はなく、必要な発光素子群に対してのみ、電圧調整回路を設けてもよい。たとえば、発光素子群36〜38ごとに、LEDの種類(それゆえ順方向電圧)が異なったりLEDの直列数が異なったりする場合には、事前に電圧調整回路を設けると効果的な発光素子群がわかり、この発光素子群に対してのみ電圧調整回路を設けてもよい。また、発光素子群の個数が多く、コスト面などから必ずしもすべての発光素子群ごとに電圧調整回路を設ける必要がない場合もある。
(第1の実施形態の変形例1)
図2は、発光素子駆動装置200Aの構成を示す回路図である。発光素子駆動装置200Aが図1の発光素子駆動装置200から変更されている点は、さらにアノード経路P36A、P37A、P38Aを含む点、および電圧調整回路40A、41A、42Aがそれぞれ電圧調整回路40〜42から変更されている点である。電圧調整回路40Aは、NチャネルMOSトランジスタ11Aおよびオペアンプ29Aを含む。電圧調整回路41Aは、NチャネルMOSトランジスタ12Aおよびオペアンプ30Aを含む。電圧調整回路42Aは、NチャネルMOSトランジスタ13Aおよびオペアンプ31Aを含む。
アノード経路P36A〜P38Aは、発光素子群36〜38のアノード端にそれぞれ接続される。電圧調整回路40Aにおいて、NチャネルMOSトランジスタ11Aのドレインは出力経路PC2に接続され、同ソースはアノード経路P36Aに接続される。オペアンプ29Aの反転入力端子は、カソード経路P36Cおよび検出経路P26に接続され、同非反転入力端子は、電圧源経路P2に接続され、同出力端子は、NチャネルMOSトランジスタ11Aのゲートに接続される。各電圧調整回路41A〜42A内のNチャネルMOSトランジスタおよびオペアンプについても、電圧調整回路40Aの場合と同様に接続される。
オペアンプ29A〜31Aは、ゲート制御信号V29A、V30A、V31Aをそれぞれ生成する。ゲート制御信号V29A〜V31Aは、それぞれ図1のゲート制御信号V29〜V31よりも、平均的に大きな電圧となっている。このように、発光素子駆動装置200Aは、上述した発光素子駆動装置200と同様な動作により、同様な効果を得ることができる。
なお、NチャネルMOSトランジスタ11A〜13Aは、それぞれ発光素子群36〜38におけるLED間に接続されてもよい。
(第1の実施形態の変形例2)
図3は、発光素子駆動装置200Bの構成を示す回路図である。発光素子駆動装置200Aが図1の発光素子駆動装置200から変更されている点は、電圧調整回路40B、41B、42Bがそれぞれ電圧調整回路40〜42から変更されている点である。電圧調整回路40Bは、PチャネルMOS(Positive channel Metal Oxide Semiconductor:Pチャネル金属酸化膜半導体)トランジスタ51およびオペアンプ54を含む。電圧調整回路41Bは、PチャネルMOSトランジスタ52およびオペアンプ55を含む。電圧調整回路42Bは、PチャネルMOSトランジスタ53およびオペアンプ56を含む。
電圧調整回路40Bにおいて、PチャネルMOSトランジスタ51のソースは、カソード経路P36Cに接続され、同ドレインは、検出経路P26に接続されるとともにオペアンプ54の非反転入力端子に接続される。オペアンプ54の反転入力端子は、電圧源経路P2に接続され、同出力端子は、PチャネルMOSトランジスタ51のゲートに接続される。各電圧調整回路41B〜42B内のPチャネルMOSトランジスタおよびオペアンプについても、電圧調整回路40Bの場合と同様に接続される。
オペアンプ54〜56は、ゲート制御信号V54、V55、V56をそれぞれ生成する。ゲート制御信号V54〜V56は、それぞれ図1のゲート制御信号V29〜V31を反転した信号となっている。このように、発光素子駆動装置200Bは、上述した発光素子駆動装置200と同様な動作により、同様な効果を得ることができる。
(第1の実施形態の変形例3)
図4は、発光素子駆動装置200Cの構成を示す回路図である。発光素子駆動装置200Cが図3の発光素子駆動装置200Bから変更されている点は、電圧調整回路40C、41C、42Cがそれぞれ電圧調整回路40B〜42Bから変更されている点である。電圧調整回路40Cは、PチャネルMOSトランジスタ51Cおよびオペアンプ54Cを含む。電圧調整回路41Cは、PチャネルMOSトランジスタ52Cおよびオペアンプ55Cを含む。電圧調整回路42Cは、PチャネルMOSトランジスタ53Cおよびオペアンプ56Cを含む。PチャネルMOSトランジスタ51C〜53Cは、出力経路PC2とアノード経路P36A、P37A、P38Aとの間にそれぞれ接続される。オペアンプ54C〜56Cは、それぞれ図3のオペアンプ54〜56の代わりに接続される。
オペアンプ54C〜56Cは、ゲート制御信号V54C、V55C、V56Cをそれぞれ生成する。ゲート制御信号V54C〜V56Cは、それぞれ図3のゲート制御信号V54〜V56よりも、平均的に大きな電圧となっている。このように、発光素子駆動装置200Cは、上述した発光素子駆動装置200Bと同様な動作により、同様な効果を得ることができる。
なお、PチャネルMOSトランジスタ51C〜53Cは、それぞれ発光素子群36〜38におけるLED間に接続されてもよい。
(第1の実施形態の変形例4)
図5は、発光素子駆動装置200Dの構成を示す回路図である。発光素子駆動装置200Dが図1の発光素子駆動装置200から変更されている点は、駆動電圧生成回路210Dが駆動電圧生成回路210から変更されている点である。駆動電圧生成回路210Dは、図1のコンバータ制御回路220の代わりにコンバータ制御回路220D、図1のDC/DCコンバータ230の代わりにDC/DCコンバータ230D、および図1の制御経路P35の代わりに制御経路P35Dを含む。コンバータ制御回路220Dは、図1のPWM制御回路221の代わりにPWM制御回路221Dを含む。PWM制御回路221Dは、図1の比較器35の代わりに比較器35Dを含む。DC/DCコンバータ230Dは、図1のインダクタ8、NチャネルMOSトランジスタ10、およびショットキーダイオード9の代わりに、PチャネルMOSトランジスタ64、ショットキーダイオード66、およびインダクタ65を含む。
PチャネルMOSトランジスタ64のソースは電圧源経路PC1に接続され、同ゲートは制御経路P35Dに接続され、同ドレインはショットキーダイオード66のアノードおよびインダクタ65の一端に接続される。ショットキーダイオード66のカソードは接地され、インダクタ65の他端は出力経路PC2に接続される。
比較器35Dは、エラー信号Veを反転入力端子に受けるとともに、三角波信号Vcを非反転入力端子に受け、エラー信号Veと三角波信号Vcとの比較結果を表すPWM制御信号V35Dを生成し、制御経路P35Dへ出力する。PWM制御回路221Dは、三角波信号Vcの周期で繰り返すパルス信号を、エラー信号Veが大きくなるにつれてハイレベルの期間が短くなるようにパルス幅変調することにより、PWM制御信号V35Dを生成する。最小両端電圧Vdが所定電圧V3よりも小さくなるにつれて、PWM制御信号V35のハイレベルの期間は短くなり、最小両端電圧Vdが所定電圧V3よりも大きくなるにつれて、PWM制御信号V35のハイレベルの期間は長くなる。
PチャネルMOSトランジスタ64は、制御経路P35DからのPWM制御信号V35Dをゲートに受け、PWM制御信号V35Dによりオン/オフされる。インダクタ65は、PチャネルMOSトランジスタ64のオン動作およびオフ動作により、電圧源1からの電力を、それぞれ充電および放電する。ショットキーダイオード9は、充電時にインダクタ65を接地電位から遮断し、放電時に放電された電力を、接地を介して順方向に通過させる。
このように、DC/DCコンバータ230Dは、所定電圧VC1を駆動電圧VC2に変換し、出力経路PC2を介して発光素子群36〜38へ供給するとともに、制御経路P35Dを介して受けるPWM制御信号V35Dに基づいて、駆動電圧VC2を調整する。DC/DCコンバータ230Dは、所定電圧VC1よりも小さい駆動電圧VC2を生成する降圧コンバータとなっている。
PWM制御信号V35Dのハイレベルの期間が短くなるにつれて、PチャネルMOSトランジスタ64のオン期間が長くなるから、インダクタ65の充電期間は長くなり、その結果、駆動電圧VC2は大きくなる。反対に、PWM制御信号V35のハイレベルの期間が長くなるにつれて、PチャネルMOSトランジスタ64のオン期間が短くなるから、インダクタ8の充電期間は短くなり、その結果、駆動電圧VC2は小さくなる。
このように、発光素子駆動装置200Dは、エラー信号Veと駆動電圧VC2との関係を、上述した発光素子駆動装置200の場合と同様な関係にすることができ、したがって同様な効果を得ることができる。
なお、駆動電圧生成回路210Dは、図2〜図4、および後述する図6〜図9において、駆動電圧生成回路210と置き換えてもよい。
(第2の実施形態)
図6は、発光素子駆動装置200Eの構成を示す回路図である。発光素子駆動装置200Eが図1の発光素子駆動装置200から変更されている点は、電圧調整回路40E、41E、42Eがそれぞれ電圧調整回路40〜42から変更され、電圧源経路P71が電圧源経路P2から変更されている点である。その他に、図6の電圧源71が、図1の電圧源2から変更されている。第2の実施形態におけるその他の構成、動作、および効果は、第1の実施形態と同等であるので、説明を省略する。
電圧調整回路40Eは、NチャネルMOSトランジスタ75、抵抗78、および比較器72を含む。電圧調整回路41Eは、NチャネルMOSトランジスタ76、抵抗79、および比較器73を含む。電圧調整回路42Eは、NチャネルMOSトランジスタ77、抵抗80、および比較器74を含む。電圧調整回路40Eにおいて、NチャネルMOSトランジスタ75のドレインは、比較器72の反転入力端子、抵抗78の一端、およびカソード経路P36Cに接続され、同ソースは、抵抗78の他端および検出経路P26に接続される。比較器72の非反転入力端子は、電圧源経路P71に接続され、同出力端子は、NチャネルMOSトランジスタ75のゲートに接続される。各電圧調整回路41E〜42E内のNチャネルMOSトランジスタおよび比較器についても、電圧調整回路40Eの場合と同様に接続される。
電圧源71は、電圧源経路P71と電圧源3との間に接続され、所定電圧を発生させることにより、所定電圧V3と電圧源71の所定電圧との和電圧を表す所定電圧V71を電圧源経路P71へ出力する。なお、電圧源71は、電圧源3とは別個に電圧源経路P71と接地との間に接続され、所定電圧V71を発生させてもよい。
電圧調整回路40Eにおいて、比較器72は、カソード電圧V36Cを反転入力端子に受けるとともに、電圧源経路P71からの所定電圧V71を非反転入力端子に受け、カソード電圧V36Cと所定電圧V71との比較結果を表すゲート制御信号V72を生成する。NチャネルMOSトランジスタ75は、ゲート制御信号V72をゲートに受け、オン/オフされる。カソード電圧V36Cが所定電圧V71よりも大きい場合、ゲート制御信号V72はローレベルとなるから、NチャネルMOSトランジスタ75はオフされる。その結果、電圧調整回路40Eは、調整電圧V40Eを、駆動電流J26と抵抗78との乗算値に設定する。カソード電圧V36Cが所定電圧V71よりも小さい場合、ゲート制御信号V72はハイレベルとなるから、NチャネルMOSトランジスタ75はオンされる。その結果、電圧調整回路40Eは、調整電圧V40Eを、駆動電流J26とNチャネルMOSトランジスタ75のオン抵抗との乗算値(すなわち、NチャネルMOSトランジスタ75のオン電圧)に設定する。各電圧調整回路41E〜42Eについても、電圧調整回路40Eの場合と同様に動作する。すなわち、比較器73〜74は、それぞれゲート制御信号V73〜V74を生成する。NチャネルMOSトランジスタ76〜77は、それぞれゲート制御信号V73〜V74をゲートに受け、オン/オフされる。
NチャネルMOSトランジスタは、最小電圧経路ではオン状態にされ、非最小電圧経路ではオフ状態にされる。その結果、図1〜図5(第1の実施形態)において上述した場合と同様に、最小電圧経路では、調整電圧はMOSトランジスタのオン電圧となる。駆動電圧生成回路210は、最小電圧経路の両端電圧を動作可能最小両端電圧に調整する。同時に、駆動電圧生成回路210は、動作可能最小両端電圧と、オン状態時の調整電圧と、最小電圧経路の全順方向電圧とを加算した電圧に駆動電圧VC2が等しくなるように、駆動電圧VC2を調整する。
抵抗78〜80の抵抗値は、この抵抗値と駆動電流との乗算値が、調整された駆動電圧VC2から動作可能最小両端電圧と非最小電圧経路の全順方向電圧とを差し引いた残りの電圧よりも小さくなるように設定される。さらに、抵抗78〜80の抵抗値は、NチャネルMOSトランジスタのオン電圧よりも大きくなるように設定される。所定電圧V71は、最小電圧経路におけるカソード電圧よりも大きく、かつ非最小電圧経路におけるカソード電圧よりも小さく設定される。このように設定されることにより、NチャネルMOSトランジスタは、最小電圧経路ではオン状態にされ、非最小電圧経路ではオフ状態にされる。さらに、非最小電圧経路において、電圧調整回路は、両端電圧を、動作可能最小両端電圧の方向に小さくする。なお、非最小電圧経路における発光素子群の順方向電圧のばらつきに起因して、非最小電圧経路のNチャネルMOSトランジスタがオン状態にされてもよい。
次に、発光素子駆動装置200Eについて実際の動作例を説明する。所定電圧V3は0.5V、所定電圧V71は0.9V(すなわち、電圧源71が発生する電圧は0.4V)、駆動電流J26〜J28は100mA、およびNチャネルMOSトランジスタ75〜77のオン抵抗は50mオームとする。発光素子14〜25には、同一種類のLEDが用いられる。順方向電圧のばらつき幅は2.9V±0.1V(100mAの駆動電流時)とし、発光素子群36のLEDの順方向電圧はいずれも3V、発光素子群37〜38のLEDの順方向電圧はいずれも2.8Vとする。さらに、上述した動作可能最小両端電圧は0.5V、抵抗78〜80の抵抗値は4オームとする。
なる。
このように設定された場合、全順方向電圧V36は3V×4=12Vとなり、全順方向電圧V37およびV38は2.8V×4=11.2Vとなる。したがって、発光素子群36、カソード経路P36C、電圧調整回路40E、検出経路P26を経由する経路が最小電圧経路となり、他の発光素子群37および38をそれぞれ経由する2系統の経路が非最小電圧経路となる。最小電圧経路における両端電圧V26は、所定電圧V3=0.5Vに等しい。NチャネルMOSトランジスタ75は、50mオームのオン抵抗を有するオン状態(飽和状態)となり、ドレイン・ソース間電圧(調整電圧V40E)は50mオーム×100mA=5mVとなる。抵抗78はオン抵抗に比べて十分大きいため、調整電圧V40Eに与える影響は省略されている。したがって、カソード電圧V36Cは0.5V+5mV=0.505V、駆動電圧VC2は0.505V+12V=12.505Vとなる。一方、非最小電圧経路におけるカソード電圧V37C〜V38Cは、12.505V−11.2V=1.305Vとなる。比較器73〜74は、非反転入力端子に所定電圧V71=0.9Vを受け、反転入力端子にそれぞれカソード電圧V37C〜V38C=1.305Vを受けるため、ゲート制御信号V72はローレベルとなる。したがって、NチャネルMOSトランジスタ76〜77はオフされ、両端電圧V27〜V28は1.305V−4オーム×100mA=0.905Vとなる。
その結果、電流駆動回路26〜28における消費電力は式7のようになり、第1の実施形態において説明した式4と比べて、電力損失の削減度合いは小さいが、電圧調整回路81〜83が設けられていない場合の式6と比べて、電力損失は削減されている。
0.5V×100mA+0.905V×100mA×2=231mW ・・・(7)
電圧源71の0.4V、および抵抗78〜80の4オームなどの設定値は、全順方向電圧V36〜V38の値12V〜11.2Vのばらつき幅0.8Vを、両端電圧V26〜V28において約0.4Vと半分に吸収する場合の設定値である。カソード電圧V36C〜V38Cが、動作可能最小両端電圧0.5Vよりも約0.4V以上大きい場合、電圧調整回路41E〜42Eは、抵抗4オームによる電圧降下により両端電圧V27〜V28を0.4V低下させている。これらの設定値は、所望の条件に応じて変えることができる。
このように、発光素子駆動装置200Eによれば、オペアンプよりも安価な比較器で構成した電圧調整回路40E〜42Eの動作により、電流駆動回路26〜28の両端電圧V26〜V28を低減し、電流駆動回路の消費電力を削減することができる。
なお、電流駆動回路26〜28における駆動電流値が異なるなどにより、電流駆動回路26〜28の動作可能最小両端電圧が異なる場合には、比較器72〜74は非反転入力端子にそれぞれ異なる最適な所定電圧を受け、電流駆動回路26〜28における消費電力を最適化してもよい。
なお、比較器72〜74の非反転入力端子の接続先は、反転入力端子の接続先と入れ換え、かつNチャネルMOSトランジスタ75〜77はPチャネルMOSトランジスタと置き換えてもよい。
なお、抵抗78〜80は、同等のオン抵抗を有するMOSトランジスタ、または同等の電圧降下を発生するダイオードと置き換えてもよい。
(第2の実施形態の変形例1)
図7は、発光素子駆動装置200Fの構成を示す回路図である。発光素子駆動装置200Fが図6の発光素子駆動装置200Eから変更されている点は、電圧調整回路40F、41F、42Fがそれぞれ電圧調整回路40E〜42Eから変更されている点である。電圧調整回路40Fは、NチャネルMOSトランジスタ75、NチャネルMOSトランジスタ84、NOT回路87、および比較器72を含む。電圧調整回路41Fは、NチャネルMOSトランジスタ76、NチャネルMOSトランジスタ85、NOT回路88、および比較器73を含む。電圧調整回路42Fは、NチャネルMOSトランジスタ77、NチャネルMOSトランジスタ86、NOT回路89、および比較器74を含む。
電圧調整回路40Fにおいて、NチャネルMOSトランジスタ75およびNチャネルMOSトランジスタ84の各ドレインは、比較器72の反転入力端子およびカソード経路P36Cに接続される。NチャネルMOSトランジスタ75およびNチャネルMOSトランジスタ84の各ソースは、検出経路P26に接続される。比較器72の非反転入力端子は、電圧源経路P71に接続され、同出力端子は、NチャネルMOSトランジスタ75のゲートおよびNOT回路87の入力端子に接続される。NOT回路87の出力端子は、NチャネルMOSトランジスタ84のゲートに接続される。各電圧調整回路41F〜42F内のNチャネルMOSトランジスタおよび比較器についても、電圧調整回路40Fの場合と同様に接続される。
NOT回路87は、ゲート制御信号V72を反転し、反転ゲート制御信号V87を生成する。NOT回路88は、ゲート制御信号V73を反転し、反転ゲート制御信号V88を生成する。NOT回路89は、ゲート制御信号V74を反転し、反転ゲート制御信号V89を生成する。NチャネルMOSトランジスタ84〜86は、それぞれ反転ゲート制御信号V87〜V89をゲートに受け、オン/オフされる。NチャネルMOSトランジスタ84〜86のオン/オフ動作は、それぞれNチャネルMOSトランジスタ75〜77のオン/オフ動作とは逆相となる。
NチャネルMOSトランジスタ84〜86のオン抵抗は、それぞれNチャネルMOSトランジスタ75〜77のオン抵抗よりも大きく設定される。たとえば、NチャネルMOSトランジスタ84〜86のオン抵抗を、図6における抵抗78〜80の抵抗値(たとえば4オーム)に等しくすれば、発光素子駆動装置200Fは、上述した発光素子駆動装置200Eと同様な動作により、同様な効果を得ることができる。
(第2の実施形態の変形例2)
図8は、発光素子駆動装置200Gの構成を示す回路図である。発光素子駆動装置200Gが図6の発光素子駆動装置200Eから変更されている点は、電圧調整回路40G、41G、42Gがそれぞれ電圧調整回路40E〜42Eから変更され、電圧源経路P105が追加されている点である。その他に、図8の電圧源105が追加されている。電圧調整回路40Gは、電圧調整回路40Eの構成要素に加えて、さらにNチャネルMOSトランジスタ99、抵抗93、および比較器96を含む。電圧調整回路41Gは、電圧調整回路41Eの構成要素に加えて、さらにNチャネルMOSトランジスタ100、抵抗94、および比較器97を含む。電圧調整回路42Gは、電圧調整回路42Eの構成要素に加えて、さらにNチャネルMOSトランジスタ101、抵抗95、および比較器98を含む。
電圧調整回路40Gにおいて、NチャネルMOSトランジスタ99のソースは、抵抗93の一端および検出経路P26に接続され、同ドレインは、抵抗93の他端、抵抗78の一端、およびNチャネルMOSトランジスタ75のソースに接続される。NチャネルMOSトランジスタ75のドレインは、抵抗78の他端、比較器72の反転入力端子、比較器96の反転入力端子、およびカソード経路P36Cに接続される。比較器72の非反転入力端子は電圧源経路P71に接続され、比較器96の非反転入力端子は電圧源経路P105に接続される。比較器72の出力端子は、NチャネルMOSトランジスタ75のゲートに接続され、比較器96の出力端子は、NチャネルMOSトランジスタ99のゲートに接続される。各電圧調整回路41G〜42G内の2個のNチャネルMOSトランジスタおよび2個の比較器についても、電圧調整回路40Gの場合と同様に接続される。
電圧源105は、電圧源経路P105と電圧源経路P71との間に接続され、所定電圧を発生させることにより、所定電圧V71と電圧源105の所定電圧との和電圧を表す所定電圧V105を電圧源経路P105へ出力する。
比較器96およびNチャネルMOSトランジスタ99の動作は、比較器72およびNチャネルMOSトランジスタ75の動作と同様である。すなわち、比較器96は、カソード電圧V36Cを反転入力端子に受けるとともに、電圧源経路P105からの所定電圧V105を非反転入力端子に受け、カソード電圧V36Cと所定電圧V105との比較結果を表すゲート制御信号V96を生成する。NチャネルMOSトランジスタ99は、ゲート制御信号V96をゲートに受け、オン/オフされる。同様に、比較器97はゲート制御信号V97を生成し、NチャネルMOSトランジスタ100はゲート制御信号V97によりオン/オフされる。同様に、比較器98はゲート制御信号V98を生成し、NチャネルMOSトランジスタ101はゲート制御信号V98によりオン/オフされる。
電圧調整回路40Gにおいて、カソード電圧V36Cが、所定電圧V105およびV71よりも小さい場合、NチャネルMOSトランジスタ99および75がオンされる。この場合、調整電圧V40Gは、NチャネルMOSトランジスタ99および75の両方のオン抵抗の和と、駆動電流J26との乗算値になる。カソード電圧V36Cが、所定電圧V105よりも小さく所定電圧V71よりも大きい場合、NチャネルMOSトランジスタ99がオンされ、NチャネルMOSトランジスタ75がオフされる。この場合、調整電圧V40Gは、NチャネルMOSトランジスタ99のオン抵抗と抵抗78との和と、駆動電流J26との乗算値になる。カソード電圧V36Cが、所定電圧V105およびV71よりも大きい場合、NチャネルMOSトランジスタ99および75がオフされる。この場合、調整電圧V40Gは、抵抗93および78の両方の抵抗値の和と、駆動電流J26との乗算値になる。各電圧調整回路41G〜42Gについても、電圧調整回路40Gの場合と同様に動作する。
このように、発光素子駆動装置200Gは、発光素子駆動装置200Eに比べて、各調整電圧V40G、V41G、V42Gが調整可能なステップ数を増すことにより、全順方向電圧V36〜V38の差異をさらに吸収する。これにより、発光素子駆動装置200Gは、両端電圧V26〜V28をさらに小さくすることができる。
(第3の実施形態)
図9は、発光素子駆動装置200Hの構成を示す回路図である。発光素子駆動装置200Hが図1の発光素子駆動装置200から変更されている点は、一つ目は、駆動電圧生成回路210Hが、駆動電圧生成回路210から変更されている点である。二つ目は、出力経路PC2から駆動電圧生成回路210Hへの経路が、検出経路P26〜P28から駆動電圧生成回路210への経路から変更されている点である。三つ目は、電圧源経路P106が、電圧源経路P2から変更されている点である。その他に、図9の電圧源106が、図1の電圧源2から変更されている。第3の実施形態におけるその他の構成、動作、および効果は、第1の実施形態と同等であるので、説明を省略する。
電圧源106は、電圧源経路P106と接地との間に接続され、所定電圧V106を発生させ、電圧源経路P106へ出力する。オペアンプ29〜31の非反転入力端子は、電圧源経路P106に接続される。オペアンプ29は、電圧源経路P106からの所定電圧V106を非反転入力端子に受け、所定電圧V106から両端電圧V26を差し引いた電圧を増幅することにより、ゲート制御信号V29を生成する。各オペアンプ29〜31についても、オペアンプ29の場合と同様に動作する。
駆動電圧生成回路210Hは、図1のコンバータ制御回路220の代わりにコンバータ制御回路220Hを含む。コンバータ制御回路220Hは、最小電圧検出回路32の代わりに帰還回路222を含む。帰還回路222は、抵抗107および108を含む。抵抗107の一端は出力経路PC2に接続され、同他端は抵抗108の一端およびエラーアンプ33の反転入力端子に接続される。抵抗108の他端は、接地される。帰還回路222は、駆動電圧VC2を所定の割合で分割し、分割電圧Vd1を生成する。エラーアンプ33は、分割電圧Vd1を反転入力端子に受けるとともに、電圧源経路P3からの所定電圧V3を非反転入力端子に受け、所定電圧V3から分割電圧Vd1を差し引いた電圧を増幅することにより、エラー信号Veを生成する。
ここで、全順方向電圧が全順方向電圧V36〜V38のうちで最大となる経路(第1の実施形態の最小電圧経路に対応)は、発光素子群36を経由する経路であるとする。また、抵抗107および108の抵抗値はそれぞれR107およびR108、動作可能最小両端電圧はVMIN、NチャネルMOSトランジスタ11のオン抵抗はRONとする。この場合、式8のように所定電圧V106を設定すれば、両端電圧V26〜V28は、動作可能最小両端電圧VMIN以上で、かつ動作可能最小両端電圧VMINの近傍になる。さらに、駆動電圧生成回路210Hが、式9のように駆動電圧VC2を調整すれば、発光素子群36〜38が所望の発光量を得るとともに、電流駆動回路26〜28の電力損失を削減することができる。すなわち、式10が成り立つように各抵抗値R107、R108および所定電圧V3を設定すれば、駆動電圧生成回路210Hにおける帰還制御により、駆動電圧VC2は式9のようにすることができる。
V106≧VMIN ・・・(8)
VC2≧V36+RON×J26+VMIN ・・・(9)
VC2=V3×(R107+R108)/R108 ・・・(10)
なお、図9の構成は、図1の構成から変更した例であるが、図2〜図8の構成から変更しても、同様な効果を得ることができる。
(実施形態のまとめ)
以上のように、発光素子駆動装置および発光装置によれば、電圧調整回路は、発光素子の順方向電圧のばらつきに起因して、互いに大きく異なるN個の発光素子群の全順方向電圧の差異を吸収することができる。その結果、電圧調整回路は、N個の電流駆動回路におけるすべての両端電圧を、発光素子群から所望の発光量を得る必要最小限の大きさにすることができる。これにより、電流駆動回路の両端に必要以上の電圧が印加されないため、電流駆動回路の電力損失を極めて小さくし、電流駆動回路の消費電力を必要最低限にすることができる。
1つの半導体基板上にN個の電流駆動回路が形成される場合には、この半導体チップの発熱を低減することができ、半導体チップの品質を向上させるとともに、同一半導体基板上にさらに多くの電流駆動回路を含む構成要素を形成することができる。さらに、発光素子を選別する必要がないので、選別用工数および発光素子群のコストを削減し、したがって発光素子駆動装置を含む発光装置のコストを低減することができる。
N個の発光素子群の全順方向電圧が互いに異なる原因には、発光素子群を構成する発光素子における順方向電圧のばらつきの他に、次のような場合がある。一つ目は、N系統の駆動電流が互いに異なる場合である。二つ目は、N個の発光素子群ごとに発光素子の直列数が異なる場合である。三つ目は、N個の発光素子群ごとに順方向電圧の異なる種類の発光素子を用いる場合である。四つ目は、N個の発光素子群ごとに周囲温度に差がある場合である。このような場合にも、結果的にN個の全順方向電圧が互いに異なることになり、電圧調整回路の動作によって上述したような効果を得ることができる。
さらに、1つの電流駆動回路が生成する駆動電流は、その両端電圧に依存して変化する傾向にある。たとえば、両端電圧が大きくなるにつれて、駆動電流は増加する傾向にある。しかし、この電流駆動回路に接続される電圧調整回路は、両端電圧の変動を抑制することができるため、1つの電流駆動回路における駆動電流の相対的精度を向上させることができる。また、N個の電流駆動回路のうち、オン状態にある電流駆動回路の両端電圧の中から最小両端電圧が検出されるため、駆動電流は、オン状態となる電流駆動回路の固有の特性に依存して変化する傾向にある。しかし、N個の電流駆動回路のうち、いずれの電流駆動回路がオン状態となっても、オン状態の電流駆動回路に接続される電圧調整回路は、両端電圧の変動を抑制することができる。このため、N個の電流駆動回路における駆動電流の絶対的精度を向上させることができる。
本発明に係る発光素子駆動装置を含む発光装置には、たとえば液晶テレビおよびノートパソコンなどの液晶表示装置用のバックライト、さらには、室内照明装置、およびヘッドライトを含む各種車載用照明装置などの照明装置がある。本発明に係る発光素子駆動装置は、このような発光装置を駆動するLEDドライバーICとして有用である。
以上において、記述された数字は、本発明を具体的に説明するために例示したものであり、本発明は例示された数字に限定されない。さらに、ハイレベル/ローレベルにより表される論理レベルは、本発明を具体的に説明するために例示したものであり、論理回路の構成を変更すれば、例示された論理レベルとは異なる論理レベルの組み合わせにより、同等な結果を得ることが可能である。また、ハードウェアによって構成された構成要素は、ソフトウェアによっても構成可能であり、ソフトウェアによって構成された構成要素は、ハードウェアによっても構成可能である。さらに、上述した実施形態におけるすべての構成要素のうち、いくつかを上述した実施形態とは異なる組み合わせで再構成することにより、異なる組み合わせの効果を奏することが可能である。
以上、実施の形態におけるこれまでの説明は、すべて本発明を具体化した一例であって、本発明はこれらの例に限定されず、本発明の技術を用いて当業者が容易に構成可能な種々の例に展開可能である。