JP4745975B2 - 多層分析要素 - Google Patents

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Description

本発明は、臨床検査、食品検査又は環境分析等に用いられる乾式多層分析要素、およびその製造方法に関する。
臨床検査、食品検査及び環境分析の分野では、迅速・簡便に検体を処理する要求が年々高くなっており、そのニーズに応えた乾式分析要素が汎用されている。乾式分析要素の中で、血液等の受容、展開、拡散を行わせる展開層には、特開昭55−164356、特開昭57−66359、特開昭60−222769等に代表されるように、繊維質多孔性材料が用いられてきた。
この繊維質多孔性材料は、液体試料点着時の展開が速く、製造時の取り扱い性にも優れている。また、全血のような粘性のある試料に対しても適用性があり、広く使用されている。
しかし、この分野では、より高い精度(再現性)での測定が要求されるようになってきており、繊維質多孔性材料(布展開層)では、いくつか不具合がでてきている。その一つが、布自身のロット変動の問題である。通常、布展開層には、織物と編物があるが、その織り方、編み方にロット間差及びロット内差が見つかっている。具体的には、単位面積当たりの編目数、単位面積当たりの重量、厚みなどである。また、中間工程で、材料の洗浄工程があるが、その洗浄の程度により、布の親水性にロット間差、ロット内差がある。さらに、布展開層は、平滑ではないため、積層方式で、十分な接着力を確保して製造しようとすると、下層に展開層を食い込ませざるを得ない。これにより下層は乱れており、より高い精度での測定に対しては、好ましくない。また布は下層に布を接着する際に、その構造上伸びやすく、空隙体積の変化を起こしやすい。そのために液体試料点着時の展開面積が変化しやすく、ロット内差及び高精度測定が達成できない原因となっている。また近年、より少ない試料で測定することが望まれているが、布展開層では、試料液量を少なくしていくと、編目の影響による反射光量のバラツキが顕著になり、さらに展開層を接着する際の下層の不均一な乱れのために高精度の測定ができなくなる問題がある。
布展開層に代わる技術として、塗布による多孔膜を作製する方法が提案されている。代表的な発明は塗布乾燥中のポリマー相転移反応を活用したいわゆるブラッシュポリマー層(特開昭49−53888)、マイクロビーズを塗布して形成させたビーズ展開層(特開昭55−90859)が知られている。しかしながら、これらの方法は展開層の膜質が弱く、シート状の塗布物をスライド化する際(加工時)、展開層が脆くはがれやすい欠点を有していた。
これらの欠点を改良する方法のひとつとして、展開層としての均質で、かつ膜強度の高い予め成形された非繊維性多孔膜をラミネートする方法が提案されている(特開昭49−53888号、特開昭56−96245号、特開昭56−97872号)。この非繊維性多孔膜をラミネートする方法として、特開昭60−222770号、特開平7−26959号に代表して開示されている。これらは、下層を水で一様にぬらして接着する方法であり、下層の水溶性高分子剤を沁みあがらせることによって、接着する。
しかしながら、非繊維性多孔膜を使用して多層分析要素を作製する場合、非繊維性多孔膜の膜強度が加工適性を得るには弱すぎる欠点があった。また、点着されて発色する際、しばしば、中心部に白抜け状の濃度ムラが生じ、測定再現性を悪化させる問題が生じていた。
本発明は上記した従来技術の問題点を解消することを解決すべき課題とした。即ち、本発明の目的は、膜強度が高い非繊維性多孔膜を有し、白抜け状の発色ムラがなく、測定精度が高い多層分析要素を提供することである。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、折り曲げ破壊強度が20g重以上であり、50g重で引っ張った時の伸張率が2%以下である非繊維性多孔膜を展開層として使用し、接着層バインダーが非繊維多孔膜に2〜50μm沁みあがらせた多層分析要素を用いることによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、水不透過性平面支持体の片面上に、少なくとも1つの接着層と、折り曲げ破壊強度が20g重以上であり、かつ50g重で引っ張った時の伸張率が2%以下である非繊維性多孔膜からなる多孔性液体試料展開層がこの順に積層一体化された液体試料分析用乾式多層分析要素において、接着層バインダーが非繊維多孔膜に2〜50μm沁みあがっている、多層分析要素が提供される。
好ましくは、接着層バインダーは、非繊維多孔膜に2〜40μm沁みあがっている。さらに好ましくは、接着層バインダーは、非繊維多孔膜に7〜30μm沁みあがっている。
好ましくは、非繊維性多孔膜は、6,6−ナイロン、6−ナイロン、アクリレート共重合体、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル共重合体、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンとポリスルホンの混合物、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリエチレン、ポリエチレンクロロトリフルオロエチレン共重合体、ポリエチレンテトラフルオロエチレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンジフルオライド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリフルオロカーボネート、ポリプロピレン、ポリベンズイミダゾール、ポリメタクリル酸メチル、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体の鹸化物、ポリビニルアルコール、またはこれらの混合物である。さらに好ましくは、非繊維性多孔膜はポリスルホン、ポリエーテルスルホン、6,6−ナイロン、又は6−ナイロンである。
好ましくは、非繊維性多孔膜は非対称性膜である。
好ましくは、非繊維性多孔膜の膜厚は80〜300μmである。
好ましくは、非繊維性多孔膜の平均孔径は0.3〜10μmである。
好ましくは、接着層を構成するバインダーは水溶性ポリマーまたは有機溶剤性ポリマーである。
本発明の別の側面によれば、水不透過性平面支持体の片面上に、少なくとも1つの接着層を塗布し、次いで、折り曲げ破壊強度が20g重以上であり、かつ50g重で引っ張った時の伸張率が2%以下である非繊維性多孔膜をラミネートすることを含む、請求項1から9の何れかに記載の多層分析要素の製造方法が提供される。
好ましくは、接着層に構成バインダーを溶解させる水溶液、有機溶媒、又はこれらを含有する水溶液で部分的に溶解させ、その後、該非繊維多孔膜をラミネートすることができる。
好ましくは、接着層バインダーの重量より多い水溶液、有機溶媒、又はこれらを含有する水溶液を加えることにより接着層を膨潤することができる。
好ましくは、非繊維性多孔膜のラミネート時またはその直前に、接着層を構成するバインダーの溶解温度以上に加温することができる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の液体試料分析用乾式多層分析要素は、水不透過性平面支持体の片面上に、少なくとも1つの接着層と、折り曲げ破壊強度が20g重以上であり、かつ50g重で引っ張った時の伸張率が2%以下である非繊維性多孔膜からなる多孔性液体試料展開層がこの順に積層一体化されたものであり、接着層バインダーが非繊維多孔膜に2〜50μm沁みあがっていることを特徴とする。本発明の液体試料分析用乾式多層分析要素は、非繊維性多孔質膜を支持体にラミネートした分析要素において、液体検体を点着した後、非繊維性多孔質膜の中心部にできる濃度の薄い部分(白抜けと称する欠陥)を改良したものである。上記した構成の本発明の多層分析要素を用いることで、血液等分析溶液が分析素子中で発色する際、発色ムラが軽減し、高精度の測定が可能となる。
本発明においては、折り曲げ破壊強度が20g重以上であり、かつ50g重で引っ張った時の伸張率が2%以下である非繊維性多孔膜を多孔性液体試料展開層として用いるというと特徴により、製造時の展開層の切れ(展開層と下層との接着工程)等が発生しないという効果が得られ、また伸張率が低いことで空隙体積が変化しないという効果が得られる。これにより、ロット間差及びロット内差が小さく、測定精度が高く、小型化可能で、さらに製造の安定化が可能になる乾式多層分析要素を提供することができる。
本発明において、多孔性液体試料展開層として用いる非繊維性多孔膜の折り曲げ破壊強度は20g重以上であり、好ましくは30g重以上であり、さらに好ましくは50g重以上である。本発明における折り曲げ破壊強度は、2cm(幅)×5cm(長さ)の多孔膜を折り曲げ、できたループ部分に所定の重量の分銅をのせ、多孔膜が切れて破壊される時の加重を求めることで測定することができる。
本発明において、多孔性液体試料展開層として用いる非繊維性多孔膜の50g重で引っ張った時の伸張率は2%以下であり、好ましくは1%以下であり、さらに好ましくは0.5%以下であり、特に好ましくは0.1%以下であり、最も好ましくは0.0%である。本発明における50g重で引っ張った時の伸張率は、非繊維性多孔膜を2cm×8cmの短冊状に切り取り、膜の両端にテープを貼り、片方に穴を開け、穴の開いていない側をクリップで固定し、吊るした状態にし、無負荷状態での短冊の長さを測定し、その後穴に50g重の分銅を吊り下げ、負荷状態での短冊の長さを測定し、両者(即ち、無負荷状態での短冊の長さ、及び負荷状態での短冊の長さ)の長さの比率を算出することにより求めることができる。
本発明の乾式多層分析要素においては、接着層バインダーが非繊維多孔膜に2〜50μm沁みあがっている。接着層バインダーは非繊維多孔膜に2〜40μm沁みあがっていることが好ましく、7〜30μm沁みあがっていることがさらに好ましい。
本発明の乾式多層分析要素は、非繊維性多孔膜をラミネートすることで製造される分析要素である。
本発明において、接着層バインダーを非繊維多孔膜に1μm以上沁みださせる方法としては、接着層のバインダーを溶解する溶媒を含む溶液(湿し水)を接着層上に塗布、またはその溶媒で含浸することで、必要ならさらに加温し、バインダーを膨潤させその粘着性を増し、そこで非繊維性多孔膜をラミネートする方法で、湿し水量を16g/m2以上を使用するか、ヒーター温度をポリマーの溶解度温度以上を使用する。好ましくは、湿し水量を16g/m2以上を使用する。
接着層を沁みださせる方法は、ラミネート温度より溶解温度が低いポリマーを接着層バインダーとして用い、必要なら加温し、湿し水がなしでラミネートしてもよい。
湿し水は、接着層バインダーを部分的に溶解、または膨潤させるために使用し、溶剤として、水、有機溶剤、または、それらの混合物でよく、これらの溶媒に界面活性剤、硬膜剤、バインダー等を溶解し使用する。有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、ブチルアルコール等の低沸点アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類である。好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、アセトンである。これらは、単独でも、有機溶剤どうしの混合物でも、水との混合物でも使用できる。
湿し水の添加量は、接着層バインダーの接着性を調整するため、バインダーと湿し水の溶解性に応じて調節する。湿し水の添加量は、バインダー量に対し1%から1000%、好ましくは50〜500%、特に好ましくは100%〜300%である。しかしながら、接着層バインダーが粘着性を有している場合、湿し水は使わなくてもよい。
水不透過性平面支持体としては、従来公知の乾式分析要素に用いられている水不透過性の支持体を用いることができる。水不透過性支持体の例としては、ポリエチレンテレフタレート、ビスフェノールAのポリカルボネート、ポリスチレン、セルロースエステル(例、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート等)等のポリマーからなる厚さ約50μmから約1mm、好ましくは約80μmから約300μmの範囲のフィルムもしくはシート状の支持体を挙げることができる。本支持体は透明でも不透明でも良い。
支持体の表面には必要により下塗層を設けて、支持体の上に設けられる接着層と支持体との接着を強固なものにすることができる。また、下塗層の代りに、支持体の表面を物理的あるいは化学的な活性化処理を施して接着力の向上を図ってもよい。
本発明の乾式多層分析要素は、少なくとも1つの非繊維性多孔膜からなる多孔性液体試料展開層を含む。多孔性液体試料展開層は、水性の検体に含有されている成分を実質的に偏在させることなしに平面的に拡げ、単位面積当りほぼ一定量の割合で、機能層に供給する機能を有する層である。
多孔性液体試料展開層は、1層だけに限定する必要はなく、2層以上の非繊維性多孔膜を部分的に配置された接着剤により接着された積層物を用いることができる。また、多孔性液体試料展開層には、展開性をコントロールする目的で、親水性のポリマー等の展開制御剤を含ませることができる。更に、目的とする検出反応を行うための試薬、該検出反応を促進するための試薬、あるいは干渉・妨害反応を低減又は阻止する為の各種試薬、もしくはこれらの試薬の一部を含ませることができる。
本発明における多孔性液体試料展開層は、非繊維性多孔膜からなるものである。好ましくは、非繊維性多孔膜は有機高分子からなる多孔膜である。上記した有機高分子からなる多孔膜は、対称性膜又は非対称性膜の何れも使用することができる。非対称性多孔膜の場合、非対称率は好ましくは2.0以上であり、対称性多孔膜の場合、非対称率は好ましくは2.0未満である。本明細書で言う非対称性多孔膜とは、一方の表面の平均孔径が他方の表面の平均孔径よりも大きい多孔膜のことであり、非対称率とは、大きい方の平均孔径を小さい方の平均孔径で割った値のことである。非対称性多孔膜の場合、平均孔径が大きい方を展開層の表面に設けることが好ましい。
有機高分子からなる多孔膜の好ましい具体例としては、6,6−ナイロン、6−ナイロン、アクリレート共重合体、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル共重合体、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンとポリスルホンの混合物、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリエチレン、ポリエチレンクロロトリフルオロエチレン共重合体、ポリエチレンテトラフルオロエチレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンジフルオライド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリフルオロカーボネート、ポリプロピレン、ポリベンズイミダゾール、ポリメタクリル酸メチル、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体の鹸化物、ポリビニルアルコール、またはこれらの混合物などが挙げられる。
上記の中でも、6,6−ナイロン、6−ナイロン、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンとポリスルホンの混合物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、またはこれらの混合物がさらに好ましく。
さらに好ましくは、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、又は6,6−ナイロン、6−ナイロンであり、特に好ましくはポリスルホン、又はポリエーテルスルホンであり、最も好ましくはポリスルホンである。
非繊維性多孔膜の膜厚は、好ましくは80〜300μm、さらに好ましくは100〜200μmであり、特に好ましくは130〜160μmである。
また、非繊維性多孔膜の平均孔径は、好ましくは0.3〜10μmであり、さらに好ましくは0.45〜5μmである。
本発明の液体試料分析用乾式多層分析要素の構成例としては、(1)透明支持体上に、1または複数の接着層が設けられ、さらに該接着層の上に多孔性液体試料展開層が設けられている液体試料分析用乾式多層分析要素、並びに、(2)透明支持体上に、1または複数の接着層が設けられ、さらに該接着層の上に、試料分析用の試薬を含有する多孔性液体試料展開層が設けられている液体試料分析用乾式多層分析要素、が挙げられる。即ち、本発明における多孔性液体試料展開層は、試料分析用の試薬を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
また、多孔性液体試料展開層が試薬を含有する場合、予め多孔膜を試薬溶液に浸漬後、乾燥させることにより試薬含有膜を作製できる。また、別法として多孔膜上に試薬溶液を塗布後乾燥させることにより試薬含有非繊維性多孔膜を作製できるが、特に手段は限定されない。
本発明の乾式多層分析要素は、少なくとも1つの接着層を含む。接着層の数は1以上であれば特に限定されず、1層でもよいし、2層以上の複数の層とすることもできる。接着層は、多孔膜と支持体を結合する機能を有する。結合させるということは、まず、強度の高い支持体と接着することで、機械的な強度を保ち加工適性を付与するためである。さらに、接着層に他の機能(吸水、発色)があるばあい、展開層と接着層の液絡を付与するためでもある。
接着層に用いるバインダーは、親水性バインダーでも有機溶剤可溶性バインダーでもよい。親水性バインダーとしては、特公平1-33782に記載されているように、ゼラチン、アガロース、デキストランなどの天然高分子、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドンなどの広い範囲の物質が利用できる。有機溶剤可溶性バインダーとしては、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドンなどの広い範囲の物質が利用できる。
接着層には、他の機能、たとえば、液状試薬を吸水する吸水層、化学反応により生成した色素の拡散を防止する媒染層、ガスを選択的に透過させるガス透過層、層間での物質移動を抑制・促進させる中間層、内因性物質を除去する除去層、反射測光を安定に行うための光遮蔽層、内因性色素の影響を抑制する色遮蔽層、血球と血漿を分離する分離層、分析対象物と反応する試薬を含む反応(試薬)層、発色剤を含む発色層としての機能も持つことができるし、支持体と接着層の間に、上記の機能層が存在していてもよい。
接着層の厚さは、0.1μmから1mm、好ましくは1μmから100μm、特に好ましくは2μmから50μmの範囲である。
以下、接着層の中に含めることができる各種機能層について説明する。
(試薬層)
試薬層は水性液体中の被検成分と反応して光学的に検出可能な変化を生じる試薬組成物の少なくとも一部が親水性ポリマーバインダー中に実質的に一様に分散されている吸水性で水浸透性の層である。この試薬層には指示薬層、発色層なども含まれる。
試薬層のバインダーとして用いることができる親水性ポリマーは、一般には水吸収時の膨潤率が30℃で約150%から約2000%、好ましくは約250%から約1500%の範囲の天然または合成親水性ポリマーである。そのような親水性ポリマーの例としては、特開昭60−108753号公報等に開示されているゼラチン(例、酸処理ゼラチン、脱イオンゼラチン等)、ゼラチン誘導体(例、フタル化ゼラチン、ヒドロキシアクリレートグラフトゼラチン等)、アガロース、プルラン、プルラン誘導体、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等をあげることができる。
試薬層は架橋剤を用いて適宜に架橋硬化された層とすることができる。架橋剤の例として、ゼラチンに対する1,2−ビス(ビニルスルホニルアセトアミド)エタン、ビス(ビニルスルホニルメチル)エーテル等の公知のビニルスルホン系架橋剤、アルデヒド等、メタリルアルコールコポリマーに対するアルデヒド、2個のグリシジル基含有エポキシ化合物等がある。
試薬層の乾燥時の厚さは約1μmから約100μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは約3μmから約30μmの範囲である。また試薬層は実質的に透明であることが好ましい。
本発明の乾式多層分析要素の試薬層やその他の層に含める試薬としては、被験物質に応じてその検出に適した試薬を選択することができる。
例えば、アンモニア(被験物質がアンモニア又はアンモニア生成物質である場合)を分析する場合には、呈色性アンモニア指示薬として、ロイコシアニン染料、ニトロ置換ロイコ染料およびロイコフタレイン染料のようなロイコ染料(米国再発行特許第30267号明細書または特公昭58−19062号公報記載):ブロムフェノールブルー、ブロムクレゾールグリーン、ブロムチモールブルー、キノリンブルーおよびロゾール酸のようなpH指示薬(共立出版(株)、化学大辞典、第10巻63〜65頁参照):トリアリールメタン系染料前駆体: ロイコベンジリデン色素(特開昭55−379号および特開昭56−145273号各公報に記載):ジアゾニウム塩とアゾ染料カプラー:塩基漂白可能染料等を用いることができる。バインダーの重量に対する呈色性アンモニア指示薬の配合量は約1〜20重量%の範囲内であることが好ましい。
被験物質であるアンモニア生成物質と反応してアンモニアを生成させる試薬は、酵素または酵素を含有する試薬であることが好ましく、被験物質であるアンモニア生成物質の種類に応じて、分析に適した酵素を選択して用いることができる。上記試薬として酵素を用いる場合には、その酵素の特異性からアンモニア生成物質と試薬の組み合わせが決定される。アンモニア生成物質と試薬としての酵素の組合せの具体例としては、尿素:ウレアーゼ、クレアチニン:クレアチニンデイミナーゼ、アミノ酸:アミノ酸デヒドロゲナーゼ、アミノ酸:アミノ酸オキシダーゼ、アミノ酸:アンモニアリアーゼ、アミン:アミンオキシダーゼ、ジアミン:アミンオキシダーゼ、グルコースおよびホスホアミダート:ホスホアミダートヘキソースホスホトランスフェラーゼ、ADP:カルバミン酸塩キナーゼおよび燐酸カルバモル、酸アミド:アミドヒドロラーゼ、ヌクレオ塩基:ヌクレオ塩基デアミナーゼ、ヌクレオシド/ヌクレオシドデアミナーゼ、ヌクレオチド:ヌクレオチドデアミナーゼ、グアニン:グアナーゼ等を挙げることができる。アンモニアを分析する場合の試薬層に用いることができるアルカリ性緩衝剤としては、pHが7.0〜12.0、好ましくは7.5〜11.5の範囲の緩衝剤を用いることができる。
アンモニアを分析する場合の試薬層には、アンモニア生成物質と反応してアンモニアを生成させる試薬、アルカリ性緩衝剤およびフィルム形成能を有する親水性ポリマーバインダー以外にも必要に応じて湿潤剤、バインダー架橋剤(硬化剤)、安定剤、重金属イオントラップ剤(錯化剤)等を含有させることができる。重金属イオントラップ剤は、酵素活性を阻害するような重金属イオンをマスキングするために使用されるものである。重金属イオントラップ剤の具体例としては、EDTA・2Na、EDTA・4Na、ニトリロトリ酢酸(NTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸のようなコンプレクサン(complexane)を挙げることができる。
グルコース測定試薬組成物の例としては、米国特許3,992,158;特開昭54−26793;特開昭59−20853;特開昭59−46854;特開昭59−54962等に記載のグルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、4−アミノアンチピリン又はその誘導体、1,7−ジヒドロキシナフタレンを含む改良Trinder試薬組成物がある。
(光遮蔽層)
前記試薬層の上に必要に応じて光遮蔽層を設けることができる。光遮蔽層は、光吸収性または光反射性(これらを合わせて光遮蔽性という。)を有する微粒子が少量の被膜形成能を有する親水性ポリマーバインダーに分散保持されている水透過性または水浸透性の層である。光遮蔽層は試薬層にて発生した検出可能な変化(色変化、発色等)を光透過性を有する支持体側から反射測光する際に、後述する展開層に点着供給された水性液体の色、特に試料が全血である場合のヘモグロビンの赤色等、を遮蔽するとともに光反射層または背景層としても機能する。
光反射性を有する微粒子の例としては、二酸化チタン微粒子(ルチル型、アナターゼ型またはブルカイト型の粒子径が約0.1μmから約1.2μmの微結晶粒子等)、硫酸バリウム微粒子、アルミニウム微粒子または微小フレーク等を挙げることができ、光吸収性微粒子の例としては、カーボンブラック、ガスブラック、カーボンミクロビーズ等を挙げることができ、これらのうちでは二酸化チタン微粒子、硫酸バリウム微粒子が好ましい。特に好ましいのは、アナターゼ型二酸化チタン微粒子である。
被膜形成能を有する親水性ポリマーバインダーの例としては、前述の試薬層の製造に用いられる親水性ポリマーと同様の親水性ポリマーのほかに、弱親水性の再生セルロース、セルロースアセテート等を挙げることができ、これらのうちではゼラチン、ゼラチン誘導体、ポリアクリルアミド等が好ましい。なお、ゼラチン、ゼラチン誘導体は公知の硬化剤(架橋剤)を混合して用いることができる。
光遮蔽層は、光遮蔽性微粒子と親水性ポリマーとの水性分散液を公知の方法により試薬層の上に塗布し乾燥することにより設けることができる。また光遮蔽層を設ける代りに、前述の展開層中に光遮蔽性微粒子を含有させてもよい。
(接着層)
試薬層の上に、場合によっては光遮蔽層等の層を介して、展開層を接着し積層するために接着層を設けてもよい。
接着層は水で湿潤しているとき、または水を含んで膨潤しているときに展開層を接着することができ、これにより各層を一体化できるような親水性ポリマーからなることが好ましい。接着層の製造に用いることができる親水性ポリマーの例としては、試薬層の製造に用いられる親水性ポリマーと同様な親水性ポリマーがあげられる。これらのうちではゼラチン、ゼラチン誘導体、ポリアクリルアミド等が好ましい。接着層の乾燥膜厚は一般に0.1μmから1mm、好ましくは1μmから100μm、特に好ましくは2μmから50μmの範囲である。
なお、接着層は試薬層上以外にも、他の層間の接着力を向上させるため所望の層上に設けてもよい。接着層は親水性ポリマーと、必要によって加えられる界面活性剤等を含む水溶液を公知の方法で、支持体や試薬層等の上に塗布する方法などにより設けることができる。
(吸水層)
本発明の乾式多層分析要素には、支持体と試薬層の間に吸水層を設けることができる。吸水層は水を吸収して膨潤する親水性ポリマーを主成分とする層で、吸水層の界面に到達または浸透した水性液体試料の水を吸収できる層であり、全血試料を用いる場合には水性液体成分である血漿の試薬層への浸透を促進する作用を有する。吸水層に用いられる親水性ポリマーは前述の試薬層に使用されるもののなかから選択することができる。吸水層には一般的にはゼラチンまたはゼラチン誘導体、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、特に前述のゼラチン又は脱イオンゼラチンが好ましく、試薬層と同じ前述のゼラチンが最も好ましい。吸水層の乾燥時の厚さは約3μmから約100μm、好ましくは約5μmから約30μmの範囲、被覆量では約3g/m2から約100g/m2、好ましくは約5g/m2から約30g/m2の範囲である。吸水層には後述するpH緩衝剤、公知の塩基性ポリマー等を含有させて使用時(分析操作実施時)のpHを調節することができる。さらに吸水層には公知の媒染剤、ポリマー媒染剤等を含有させることができる。
(検出層)
検出層は、一般に、被検成分の存在下で生成した色素等が拡散し、光透過性支持体を通して光学的に検出され得る層で、親水性ポリマーにより構成することができる。媒染剤、例えばアニオン性色素に対してカチオン性ポリマーを、含んでもよい。吸水層は、一般に、被検成分の存在下で生成する色素が実質的に拡散しないような層を言い、この点で検出層とは区別される。
試薬層、吸水層、接着層、展開層等には界面活性剤を含有させることができる。その例としてノニオン性界面活性剤がある。ノニオン性界面活性剤の具体例として、p−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール、p−ノニルフェノキシポリエトキシエタノール、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、p−ノニルフェノキシポリグリシドール、オクチルグルコシド等がある。ノニオン性界面活性剤を展開層に含有させることにより水性液体試料の展開作用(メータリング作用)がより良好になる。ノニオン性界面活性剤を試薬層又は吸水層に含有させることにより、分析操作時に水性液体試料中の水が試薬層または吸水層に実質的に一様に吸収されやすくなり、また展開層との液体接触が迅速に、かつ実質的に一様になる。
本発明の乾式多層分析要素が対象とする被検物質は特に限定されず、任意の液体試料(例えば、全血、血漿、血清、リンパ液、尿、唾液、髄液、膣液などの体液;あるいは飲料水、酒類、河川水、工場廃水等)中の特定成分を分析することができる。例えば、アルブミン(ALB)、グルコース、尿素、ピリルビン、コレステロール、タンパク質、酵素(例えば、乳酸脱水素酵素、CPK(クレアチンキナーゼ)、ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)、AST(アスパルテートアミノトランスフェラーゼ)、GGT(γ−グルタミルトランスペプチダーゼ)等の血中酵素)などを分析することができる。
本発明の乾式多層分析要素は、公知の方法により調製することができる。溶血試薬は塗布または含浸される試薬水溶液に予め加えておけばよい。他の方法としては、単独又は界面活性剤・展開面積制御のための親水性ポリマーなどを含む水溶液、有機溶媒(エタノール、メタノールなど)溶液又は水−有機溶媒混合液溶液を展開層の上から塗布して含浸させることもできる。これを用いた被験物質の分析も公知の方法に従って行なうことができる。
例えば、本発明の乾式多層分析要素は、一辺約5mmから約30mmの正方形またはほぼ同サイズの円形等の小片に裁断し、特公昭57−283331号公報(対応米国特許4,169,751)、実開昭56−142454号公報(対応米国特許4,387,990)、特開昭57−63452号公報、実開昭58−32350号公報、特表昭58−501144号公報(対応国際公:WO083/00391)等に記載のスライド枠に収めて化学分析スライドとして用いることができ、これは製造,包装,輸送,保存,測定操作等の観点で好ましい。使用目的によっては、長いテープ状でカセットまたはマガジンに収めて用いたり、又は小片を開口のある容器内に収めて用いたり、又は小片を開口カードに貼付または収めて用いたり、あるいは裁断した小片をそのまま用いることなどもできる。
本発明の乾式多層分析要素は、例えば約2μL〜約30μL、好ましくは4μL〜15μLの範囲の水性液体試料液を、多孔性液体試料展開層に点着する。点着した乾式多層分析要素を約20℃〜約45℃の範囲の一定温度で、好ましくは約30℃〜約40℃の範囲内の一定温度で1〜10分間インキュベーションする。乾式多層分析要素内の発色又は変色を支持体が不透明な場合は展開層側から反射測光し、透明の場合では、展開層側、支持体側のいずれかの方向から反射測光し、予め作成した検量線を用いて比色測定法の原理により検体中の被験物質の量を求めることができる。
測定操作は特開昭60−125543号公報、特開昭60−220862号公報、特開昭61−294367号公報、特開昭58−161867号公報(対応米国特許4,424,191)などに記載の化学分析装置により極めて容易な操作で高精度の定量分析を実施できる。なお、目的や必要精度によっては目視により発色の度合いを判定して、半定量的な測定を行ってもよい。
本発明の乾式多層分析要素は、分析を行うまでは乾燥状態で貯蔵・保管されるため、試薬を用時調製する必要がなく、また一般に乾燥状態の方が試薬の安定性が高いことから、試薬溶液を用時調製しなければならないいわゆる湿式法より簡便性、迅速性に優れている。また、微量の液体試料で、精度の高い検査を迅速に行うことができる検査方法としても優れている。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
試験例1:ポリスルホン膜の強度と伸長率
ポリスルホン膜(SE−200:富士写真フイルム社製、以下PS膜とする)を2cm×5cmの短冊状に切り取り、本短冊の両端を重ね合わせ、中心に形成されるループ部分に50、20、10gの分銅を静かに置き、2〜3秒間静置する。続いて本短冊を反対方向に折り曲げ、先ほど折った部分に再び上記分銅をのせ、2〜3秒間静置する。本操作を行なった後に短冊が切れる頻度を確認した。表1に本試験を実施した時に切断した短冊数の結果を示す。表1の結果からPS膜は製造時の取扱いにおける安定性が非常に高いことがわかる。
Figure 0004745975
PS膜を2cm×8cmの短冊状に切り取り、膜の両端にテープを貼り、片方に穴を開ける。穴の開いていない側をクリップで固定し、吊るした状態にし、無負荷状態での短冊の長さを測定する。その後穴に50g重の分銅を吊り下げ、負荷状態での短冊の長さを測定し、伸張率を算出した。測定は22℃、湿度36%下で実施した。表2に本試験によって求めた伸張率を示す。表2の結果から、本試験条件において、PS膜は全く伸びないことが確認できた。この結果からPS膜は製造時の変化が無く、ロット内差、ロット間差が小さくできる。
Figure 0004745975
実施例1
188μm厚のPET(ポリエチレンテレフタレート)支持体上に、接着層としてゼラチンを17g/m2になるように塗布した。次に、支持体上に塗布されたゼラチン膜上に、硬膜剤を含む湿し水を塗布量29g/m2になるように塗布した。湿し水が塗布された直後、(1)50℃、(2)45℃、(3)40℃、(4)25℃の表面温度のヒーターで加温し、ゼラチンを膨潤させることで粘着性を上げ、ポリスルホン多孔質膜[FujiFilm社製 SE200]をラミネートした。送風乾燥後、恒温槽で放置してゼラチンを硬膜させた。ゼラチンの硬膜によってゼラチン層とポリスルホン多孔質膜との接着がより均一に強固となった。これらの操作により、支持体、接着層、および、非繊維性多孔質膜からなる分析要素が作製された。
比較例1
硬膜剤を含む湿し水を塗布量15g/m2、表面温度25℃のヒーターで加温しラミネートした以外は、実施例1と同じ方法で分析要素を作製した。
比較例2
硬膜剤を含み、水:エタノール=1:2の混合溶液である湿し水を塗布量15g/m2、室温のままラミネートした以外は、実施例1と同じ方法で分析要素を作製した。
評価1:沁みだし評価
実施例1および比較例1及び2で作製した上記分析要素を縦方向に切断したのち白金蒸着した試料を光学顕微鏡またはSEMで断面写真を撮影し、ゼラチンの膜への沁みだしを測定した。結果を表3に示す。比較例2の分析要素はゼラチンの沁みだし高さは1μm以下で、加工時、膜はがれのため実用に適さなかった。実施例1(温度は50、45、40、25℃)、比較例1及び比較例2の分析要素のそれぞれのゼラチン沁みだし高さを表3に示す。
評価2:点着でのムラの目視判定
実施例1および比較例で作製した上記分析要素に色素水溶液を6μl点着し、点着面および裏面における白抜けのレベルを目視判定した。結果を表3に示す。
Figure 0004745975
評価3:クロマトスキャナーでの発色ムラの測定
実施例1の(2)および比較例1で作製した上記分析要素を6μlの色素入り水溶液を点着し、分析素子をマウントに入れず、そのままクロマトスキャナー(デンシトメーターCS−9300PC、島津製作所)で発色の濃度ムラを測定した。また、プラスチックマウントに入れ加工し、FujiFilm社製医用検体検査機DRI-CHEM5000で測定した。点着液は模擬液として1%ポリビニールピロリドン水溶液に赤い色素[0.8mg/ml]を溶解させたものを使用した。なお、比較例2で作製した分析要素は、一体型分析要素を形成することができず、色素入り水溶液を点着での評価はできなかった。実施例1および比較例1の分析素子に色素点着後、水平方向に色素濃度の分布を島津社製のデンシトメーターCS−9300PCでスキャニングしてゼラチン層の色素の染色状態を観察した(図1及び2)。
比較例で作製された分析素子は、色素液を点着すると、中心部に濃度の薄い部分が存在した(図2)。これを、白抜けと称した。この白抜けは反射濃度のバラツキを意味し、測定精度を悪化させていた。一方、実施例1で作製された分析素子に同じ色素液を点着した結果を図1に示す。明らかに白抜けは解消され、濃度が一定で染み込みが均一であることが分かる。色素の染み込みが均一になったことで反射測光による光学濃度が安定し、分析精度も向上した。
実施例2
実施例1の作製条件のなかで、添加水溶液量29g/m2、ヒーター温度45℃を用い、表4の非繊維性多孔質膜を用いて、多層分析要素を作製した。実施例1で記述した色素液点着による発色ムラの目視結果を同じ表に記載した。その結果、この製造方法を用い、接着層を大きく沁みあがらせた分析要素ではいずれも白抜けが発生しなかった。
Figure 0004745975
本発明の乾式多層分析要素においては、折り曲げ破壊強度が20g重以上であり、50g重で引っ張った時の伸張率が2%以下である非繊維性多孔膜を展開層として用いることによって、製造時の展開層の切れ(展開層と下層との接着工程)等が発生しないという効果が得られ、また伸張率が低いことで空隙体積が変化しないという効果が得られる。これにより、ロット間差及びロット内差が小さく、測定精度が高く、小型化可能で、さらに製造の安定化が可能になる乾式多層分析要素を提供することができる。さらに本発明の乾式多層分析要素においては、接着層バインダーが非繊維多孔膜に2〜50μm沁みあがっていることによって、白抜けが消失し、測定精度が向上した。即ち、本発明によれば、加工強度が十分高く、測定精度の高い多層分析要素を提供することができる。
図1は、実施例1の分析素子を用いた測定結果を示す。 図2は、比較例の分析素子を用いた測定結果を示す。

Claims (13)

  1. 水不透過性平面支持体の片面上に、少なくとも1つの接着層と、折り曲げ破壊強度が20g重以上であり、かつ50g重で引っ張った時の伸張率が2%以下である非繊維性多孔膜からなる多孔性液体試料展開層この順に積層一体化することによって得られる液体試料分析用乾式多層分析要素において、接着層バインダーが非繊維多孔膜に2〜50μm沁みあがっている、多層分析要素。
  2. 接着層バインダーが非繊維多孔膜に2〜40μm沁みあがっている、請求項1に記載の多層分析要素。
  3. 接着層バインダーが非繊維多孔膜に7〜30μm沁みあがっている、請求項1又は2に記載の多層分析要素。
  4. 非繊維性多孔膜が、6,6−ナイロン、6−ナイロン、アクリレート共重合体、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル共重合体、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンとポリスルホンの混合物、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリエチレン、ポリエチレンクロロトリフルオロエチレン共重合体、ポリエチレンテトラフルオロエチレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンジフルオライド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリフルオロカーボネート、ポリプロピレン、ポリベンズイミダゾール、ポリメタクリル酸メチル、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体の鹸化物、ポリビニルアルコール、またはこれらの混合物である、請求項1から3の何れかに記載の多層分析要素。
  5. 非繊維性多孔膜がポリスルホン、ポリエーテルスルホン、6,6−ナイロン、又は6−ナイロンである、請求項1から4の何れかに記載の多層分析要素。
  6. 非繊維性多孔膜が非対称性膜である、請求項1から5の何れかに記載の多層分析要素。
  7. 非繊維性多孔膜の膜厚が80〜300μmである、請求項1から6の何れかに記載の多層分析要素。
  8. 非繊維性多孔膜の平均孔径が0.3〜10μmである、請求項1から7の何れかに記載の多層分析要素。
  9. 接着層を構成するバインダーが水溶性ポリマーまたは有機溶剤性ポリマーである、請求項1から8の何れかに記載の多層分析要素。
  10. 水不透過性平面支持体の片面上に、少なくとも1つの接着層を塗布し、次いで、折り曲げ破壊強度が20g重以上であり、かつ50g重で引っ張った時の伸張率が2%以下である非繊維性多孔膜をラミネートすることを含む、請求項1から9の何れかに記載の多層分析要素の製造方法。
  11. 接着層に構成バインダーを溶解させる水溶液、有機溶媒、又はこれらを含有する水溶液で部分的に溶解させ、その後、該非繊維多孔膜をラミネートする、請求項10に記載の製造方法。
  12. 接着層バインダーの重量より多い水溶液、有機溶媒、又はこれらを含有する水溶液を加えることにより接着層を膨潤する、請求項10又は11に記載の製造方法。
  13. 非繊維性多孔膜のラミネート時またはその直前に、接着層を構成するバインダーの溶解温度以上に加温する、請求項10から12の何れかに記載の製造方法。
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