JP4744731B2 - 軟弱地盤を利用した地盤免震構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、地盤の強非線形化や液状化による直接基礎構造物の被害を抑制しつつ、構造物に入力する加速度を低減する軟弱地盤を利用した地盤免震構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、地盤が液状化したり、超軟弱地盤が大きな地震力を受けると、地盤からの大きな強制変形により、構造物の基礎などに被害をもたらす。そこで、このような軟弱地盤の地盤に直接基礎の構造物を構築する場合、地盤改良を行い地盤の強非線形化や液状化を防止していた。これらの対策は、沈下や傾斜などの被害を軽減するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし一方で、地盤剛性が強くなることにより、構造物に入力する地震加速度は大きくなり、地盤改良したためにかえって構造物が慣性力で被害を生じる場合がある。
【0004】
上記事情に鑑み、本発明は軟弱地盤を全深度にわたり改良するのではなく、未改良部分を残す地盤免震構造において、コスト縮減、工期短縮が可能であるとともに、安定性の高い地盤免震構造を実現することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の軟弱地盤を利用した地盤免震構造は、硬質地盤による下層と、液状化地盤である軟弱地盤による上層とにより構成される地盤上の構造物の基礎に対して、前記軟弱地盤に未改良層を厚さ方向に残しつつ、地盤改良体を用いて改良する地盤免震構造において、前記地盤改良体は、その下端部に、複数の棒材が設けられており、該棒材の両端がそれぞれ前記地盤改良体および前記硬質地盤にピン接合されて、該棒材により前記地盤改良体は前記硬質地盤による下層と締結されていることを特徴としている。
【0010】
請求項2記載の軟弱地盤を利用した地盤免震構造は、前記地盤改良体の側面には、側面入力低減材が取り付けられることを特徴としている。
【0011】
請求項3記載の軟弱地盤を利用した地盤免震構造は、前記地盤改良体が、RC床版と他の地盤改良体を併用することを特徴としている。
【0012】
請求項4記載の軟弱地盤を利用した地盤免震構造は、前記RC床版の上面に、重心が中心になるとともに、分散的に配置された構造物群を設けることを特徴としている。
【0013】
請求項5記載の軟弱地盤を利用した地盤免震構造は、前記構造物群を立設する際に生じる前記地盤改良体の排土重量と、前記構造物群の重量とを等しくすることを特徴としている。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1に、本発明に係る軟弱地盤を利用した地盤免震構造の基本構成を示す。図1より明らかなように、硬質地盤1よりなる下層と、液状化地盤である軟弱地盤2よりなる上層とより構成される地盤上に設けられた構造物3は、その基礎部が地盤改良体4により改良されているが、前記軟弱地盤2の下方には一部の深度に対して未改良部分hlを残している。
【0015】
地盤における軟弱地盤2が液状化すると、地震加速度の振幅が小さくなるため、剛性低下及び履歴減衰を引き起こすこととなり、該軟弱地盤2の上面に位置する構造物3にとっては、免震効果を発揮するものである。本発明の基本構成となる地盤免震構造は、この原理を活用し、軟弱地盤2の全深度Hlのうち、下方に未改良部分hlを残すことにより、未改良部分hl が、強非線形化または液状化することにより、構造物3への地震入力加速度を低減するものである。
【0016】
なお、本発明の基本構成となる地盤免震構造における必要条件としては、地盤改良体4が軟弱地盤2に比べて十分な剛性を有していること、硬質地盤1よりなる下層も十分な剛性を有していることが挙げられる。
また、前記未改良部分hlの厚さは、要求される耐震性能に応じて自由に設定することが可能である。
【0017】
基本構成となる地盤免震構造は、直接基礎の構造物でアスペクト比があまり大きくなく、慣性力に対して泥弱な建築物に適した構造である。
【0018】
ここで用いられる地盤改良体4は、締固めた砂(サンドコンパクションパイル工法等による)、ソイルセメント系(深層混合処理)改良体、発泡スチロール、土嚢(ソイルパックバッグ)、RC床版5等が考えられるが、これにこだわるものではなく、液状化や強比線形化を防止することの出来る地盤改良材であれば、いずれでもよい。
【0019】
ただし、このような地盤改良体4は、コストが高く設計条件に合わない場合が多い。このため、特にソイルセメント系(深層混合処理)改良体やRC床版5等、剛性を有する地盤改良材であれば、図2に示すように該地盤改良体4の構造を工夫し、体積を減少させて適用させればよい。
【0020】
(第1の参考例)
図2(a)に示す地盤改良体4は、上面に構造物3が配置された平板部6と、該平板部6の下面に取り付けられて、平板部の各辺に垂直に設けられた脚板からなる底面のない枠組み7とを有している。
【0021】
これら、枠組み7とその上面に設けられた平板部6による箱体は、底面がなく、内部7aは空洞であり、軟弱地盤2が充填されている。これら該枠組み7に囲まれた軟弱地盤2は、非線形化しづらいため、従来より用いられている長方体の地盤改良体4と同じ効果を有することとなる。
【0022】
また、図2(b)に示すように、前記内部7aにさらに枠組み7と同様の厚さおよび長さを有する格子板8を用いて格子を設けることにより、前記地盤改良体4の平板部6は、前記構造物3の荷重によるたわみ等の変形に対する強度を増し、基礎構造としての強度、及び安定性が高まることとなる。
【0023】
上述する構成により、地盤改良体4としての剛性や安定性を十分に維持したままで、地盤改良体4自身の体積を減少できるため、物量の縮減に伴うコスト縮減や工期短縮等、施工性のよい構造とすることが可能となる。
【0024】
なお、前記平板部6と前記枠組み7に、同一の地盤改良材を用いてもよいが、平板部6に前記RC床版5、枠組み7に他の地盤改良材を用いる、といったように複数の地盤改良材を併用してもよい。
【0025】
(第2の参考例)
その他の地盤改良体4の構造においても、前記地盤改良体4に複数の地盤改良材を組み合わせて併用することが可能である。一例として図3に、前記RC床版5の上面に構造物3を配置し、前記RC床版5の周囲には他の地盤改良材を併用するような地盤改良体4の構造を示す。なお、図3は図1と同様に本発明の地盤免震構造の基本構成を示すもので、地盤改良体4における枠組み7、あるいは後述する棒材9の図示は省略してある(このことは図4についても同様である)。
【0026】
RC床版5を用いる地盤改良体4の構造による効果は、RC床版5に構造物3を立設することにより、基礎の沈下が一様でなく、場所により異なった沈下を起こすといった現象である不同沈下を抑制する効果を有するとともに、全体が沈下した際にはRC床版5の下面にジャッキアップや薬液注入を行う等の修復作業を施すことが可能である。
【0027】
(第3の参考例)
前記RC床版5を適用した地盤免震構造の一例として、RC床版5の上面に配置する構造物3には、図4に示すように、工場施設群のような広い構造物群11や橋脚群を適用することが可能である。ただし、これらの構造物群11や橋脚群は、全体としてアスペクト比が小さいことが必要条件であり、前記地盤改良体4に対して荷重が偏心してかからないよう、前記構造物群11や橋脚群の荷重の重心を地盤改良体4の中心に位置させる必要がある。
【0028】
これら地盤免震構造の効果は、構造物3どうしが配管や橋桁等により連結されるような広い構造物群11全体を前記RC床版5上に配置することによって、地盤の地盤の強非線形化や液状化が起こった場合にも局所的な不同沈下を抑制することが可能となり、配管や橋桁等の相対変位がなく、構造物や配管施設等への被害を最小限に押さえることを可能にするものである。
【0029】
なお、前記構造物群11や橋脚群を地盤改良体4に配置する際に、構造物群11や橋脚群の荷重と等しい重量だけ地盤改良体4を掘削し、構造物群11と地盤改良体4を併せた重量が、構造物群11や橋脚群を配置しない場合の地盤改良体4の重量に等しくなるように施工すると、地盤改良体4の安定性は一層増すこととなる。
【0030】
(第4の参考例)
ところで、本実施の形態のように構造物3の基礎に地盤改良体4を用いた場合には、先にも述べた不同沈下が起こりやすい。特に、前記地盤改良体4の上面に立設された構造物3について、地盤改良体4の中心部に荷重の重心がかからないような偏心荷重の構造物3に地盤改良体4による基礎を設ける場合には、不同沈下や傾斜が起こりやすい。このような場合には、図5(a)に示すように、重心の偏っている側の前記地盤改良体4を他の側より厚くし、重心の偏っている側の未改良部分hl2をその他の側の未改良部分hl1より薄くすればよい。
【0031】
(第5の参考例)
図5(b)に示すように、前記構造物3は偏心荷重ではないが、地盤の硬質地盤1よりなる下層が不整形地盤の場合にも、前記地盤改良体4の下面において未改良部分hl の厚さが部分的に異なることにより、地震時の加速度振幅に差が生じ、不同沈下を生じる原因となりやすい。このため、未改良部分hl の厚さが均一となるよう、前記地盤改良体4の下面を硬質地盤1よりなる下層と平行になるように設ければよい。
【0032】
これにより、地盤改良体4の下面全域に対して未改良部分hlが同じ厚さを保つため、入力される地震加速度の低減量が一定となり、これら地盤改良体4の安定性が一層増すこととなる。
【0033】
(第1の実施の形態)
また、地盤改良体4に係る補助工法としては、不同沈下を防止することを目的とした工法として、図6に示すように、前記地盤改良体4と硬質地盤1よりなる下層とを複数の棒材9を介して連結すればよい。前記地盤改良体4と硬質地盤1よりなる下層とそれぞれに対して垂直に前記棒材9を設け、該棒材9の両端を図中に○印で示したようにそれぞれ前記地盤改良体4および硬質地盤1に対してピン接合することにより、該棒材9により地盤改良体4は硬質地盤1による下層と締結され、前記地盤改良体4が不同沈下を起こそうとして生じる圧縮力に対して、前記棒材9が逆らうことにより、不同沈下を防ぐものである。
【0034】
(第2の実施の形態)さらに、前記地盤改良体4の側面からの地震加速度の入力を低減することを目的とした場合には、同じく図6に示すように、地盤改良体4の側面に粘性材やクッション材などの側面入力低減材10を設ける。該側面入力低減材10としては、アスファルトやエラストマー(ゴム)等の部材が考えられるが、粘性を有する材料であればこれにこだわるものではない。
【0035】
上述するような補助工法を実施することにより、前記地盤改良体4を安定させて、不同沈下や傾斜などの被害を抑制しつつ、構造物3に入力される地震加速度を低減することが可能となる。
【0036】
なお、これまでに示したすべての実施の形態について、前記地盤改良体4は、単一の地盤改良材を用いてもよいし、複数の地盤改良材を併用して用いてもかまわない。
【0037】
このように、本実施の形態はあくまでも一部の事例であり、本発明の趣旨を逸脱しない限り、本実施の形態に減退されずにいかなる形態をも採用しうることは、言うまでもない。
【0042】
【発明の効果】
請求項1記載の軟弱地盤を利用した地盤免震構造は、硬質地盤による下層と、液状化地盤である軟弱地盤による上層とにより構成される地盤上の構造物の基礎に対して、前記軟弱地盤に未改良層を厚さ方向に残しつつ、地盤改良体を用いて改良する地盤免震構造において、前記地盤改良体は、その下端部に、複数の棒材が設けられており、該棒材の両端がそれぞれ前記地盤改良体および前記硬質地盤にピン接合されて、該棒材により前記地盤改良体は前記硬質地盤による下層と締結されていることから、前記地盤改良体4を安定させて、不同沈下や傾斜などの被害を抑制しつつ、構造物3に入力される地震加速度を低減することが可能となる。
【0043】
請求項2記載の軟弱地盤を利用した地盤免震構造は、前記地盤改良体の側面には、粘性材が取り付けられることから、側面より地盤改良体に入力される地震加速度を低減することが可能となり、これら地盤改良体の安定性が一層増すこととなる。
【0044】
請求項3記載の軟弱地盤を利用した地盤免震構造は、前記地盤改良体が、RC床版と他の地盤改良体を併用することから、基礎の沈下が一様でなく、場所により異なった沈下を起こすといった不同沈下を抑制する効果を有するとともに、全体が沈下した際にはRC床版の下面にジャッキアップや薬液注入を行う等の修復作業を施すことが可能である。
【0045】
請求項4記載の軟弱地盤を利用した地盤免震構造は、前記RC床版の上面に、重心が中心になるとともに、分散的に配置された構造物群や橋脚群を設けることから、地盤の強非線形化や液状化が起こった場合にも局所的な不同沈下を抑制することが可能となり、配管や橋桁等の相対変位がなく、構造物や配管施設等への被害を最小限に押さえることを可能にするものである。
【0046】
請求項5記載の軟弱地盤を利用した地盤免震構造は、前記構造物群を立設する際に生じる前記地盤改良体の排土重量と、前記構造物群の重量とを等しくすることから、構造物群と地盤改良体を併せた重量が、構造物群を配置しない場合の地盤改良体の重量に等しくなるため、地盤改良体の安定性は一層増すこととなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の基本構成である地盤免震構造を示す図である。
【図2】 本発明に係る剛性の高い地盤改良材を用いた地盤改良体の構造の変形例を示した図である(第1の参考例)。
【図3】 本発明に係るRC床版と他の地盤改良材を用いた地盤改良体の構造を示す図である(第2の参考例)。
【図4】 本発明に係るRC床版を用いた地盤免震構造を示した図である(第3の参考例)。
【図5】 地盤改良体の形状の変形例を示した図である(第4、第5の参考例)。
【図6】 本発明に係る地盤改良体の補助工法を示した図である(第1、第2の実施の形態)。
【符号の説明】
1 硬質地盤
2 軟弱地盤(液状化地盤)
3 構造物
4 地盤改良体
5 RC床版
6 平板部
7 枠組み
7a 内部
8 格子板
9 棒材
10 側面入力低減材
11 構造物群
Claims (5)
- 硬質地盤による下層と、液状化地盤である軟弱地盤による上層とにより構成される地盤上の構造物の基礎に対して、前記軟弱地盤に未改良層を厚さ方向に残しつつ、地盤改良体を用いて改良する地盤免震構造において、前記地盤改良体は、その下端部に、複数の棒材が設けられており、該棒材の両端がそれぞれ前記地盤改良体および前記硬質地盤にピン接合されて、該棒材により前記地盤改良体は前記硬質地盤による下層と締結されていることを特徴とする軟弱地盤を利用した地盤免震構造。
- 請求項1記載の軟弱地盤を利用した地盤免震構造であって、前記地盤改良体の側面には、側面入力低減材が取り付けられることを特徴とする軟弱地盤を利用した地盤免震構造。
- 請求項1または2記載の軟弱地盤を利用した地盤免震構造において、前記地盤改良体は、RC床版と他の地盤改良体を併用することを特徴とする軟弱地盤を利用した地盤免震構造。
- 請求項3記載の軟弱地盤を利用した地盤免震構造であって、前記RC床版の上面には、重心が中心になるとともに、分散的に配置された構造物群を設けることを特徴とする軟弱地盤を利用した地盤免震構造。
- 請求項4記載の地盤免震構造であって、前記構造物群を立設する際に生じる前記地盤改良体の排土重量と、前記構造物群の重量とを等しくすることを特徴とする軟弱地盤を利用した地盤免震構造。
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