JP4743936B2 - 圧電トランス及びコンバータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧電トランス及びコンバータに関し、例えば、各種電子機器に用いられるADコンバータやDC−DCコンバータなどのスイッチング電源に好適に用いられる圧電トランス及びコンバータに関する。
【0002】
【従来技術】
近年、各種電子機器の小型化に対応して、スイッチング電源回路の小型及び低背化が重要な課題である。特に、小型低背化を図るうえにおいては、電圧の昇圧や降圧を行うトランスの小型低背化が重要となる。
【0003】
一般的には、回路の高周波化に伴い電磁トランスの小型化を図る方法、もしくは圧電トランスを用いることで小型化が図られている。特に低背化に際しては、電磁トランスでは小型化による損失の増大が起こるため、圧電トランスが有効な部品として使用されるようになってきている。例えば、液晶バックライトに用いられる冷陰極管の点灯用インバータの昇圧用圧電トランスとして実用化されている。
【0004】
昇圧用圧電トランスの構造としては、従来、図9に示される長方形状圧電基板81の長手方向の約半分を1次側として、厚み方向に電極82、83が形成され且つ厚み方向に分極され、さらに残りの約半分を2次側として、長手方向端面に電極84が形成され且つ長手方向に分極された、ローゼン型圧電トランスが知られている。
【0005】
ローゼン型圧電トランスは、昇圧比が高く、且つ出力側インピーダンスが数100KΩの高インピーダンスであることから、インピーダンスの整合がとりやすいバックライト点灯用インバータに適した特性を有している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記ローゼン型圧電トランスでは、降圧特性が得られないという問題があった。特に、ADアダプタやDC−DCコンバータ用降圧トランスとして用いる場合、負荷のインピーダンスが1KΩ未満程度と低インピーダンスであるため、インピーダンス整合をとることが困難であり、出力電力及び効率が低くなるといった問題があった。
【0007】
そこで、近年では、PESC’98 Records,1255〜1261頁、「Efficiency Improvement of Piezoelectric−Transformer DC−DC Converter」及び特開平11―97756号公報に示されるように、複数の入力層および複数の出力層を絶縁物を介して接合し、長さ方向に分極して長さ方向の縦振動を用いる、長さ縦振動型圧電トランスが提案されている。
【0008】
しかしながら、この論文や特開平11―97756号公報に開示された圧電トランスでは、効率が周波数によって大きく変動するという問題があった。即ち、一般に、アダプタやコンバータの出力電力を制御するために、スイッチング電源のスイッチング周波数を変化させる周波数制御方式が用いられるが、スイッチング周波数を変えることで、出力電力を所望の値にできる。
【0009】
上記論文や特開平11―97756号公報に開示された圧電トランス、即ち、長さ縦振動型圧電トランスにおいても、スイッチング周波数を変えることで、出力電圧や出力電力を変化できるものの、圧電トランスの効率が周波数によって大きく変動するため、高効率を維持したままで、出力電力の制御を行うことが困難であるという問題があった。
【0010】
本発明は、低負荷時に高出力電力、高効率が得られるとともに、周波数変動による効率変動が少ない圧電トランス及びコンバータを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の圧電トランスは、両主面が長さL、幅Wの長方形状である圧電基板の長さ方向に、第1電圧入力部、電圧出力部、第2電圧入力部をこの順に備え、前記第1および第2電圧入力部における前記圧電基板の両主面にそれぞれ入力側電極が設けられており、前記電圧出力部における前記圧電基板の両主面に第1の出力側電極が設けられており、同一平面上に設けられた一対の前記入力側電極の総面積S1と、前記第1の出力側電極の面積S2との比(S1/S2)が0.5〜5であり、前記圧電基板は、厚み方向に分極されているとともに、主面の長さLと幅Wとの比(L/W)が2.5〜6であり、前記第1および第2電圧入力部に同位相の交流電圧が入力されることによって、前記圧電基板の主面の幅方向に縦振動して、前記電圧出力部より交流電圧が出力される。
【0012】
このような構成を採用し、主面の幅方向に対して基本波モードで縦振動させて使用することにより、1KΩ未満の低負荷インピーダンスにおいて高出力電力かつ高効率特性を示すことができ、圧電基板の幅方向振動の基本波振動に対応した周波数及びその近傍の周波数においては、周波数変動による効率の変動が殆どなく、ADコンバータやDC−DCコンバータに好適に用いられる降圧用圧電トランスが得られる。
【0014】
さらに、前記電圧出力部における前記圧電基板内部に、厚み方向に所定間隔をおいて第2の出力側電極が複数形成されており、該第2の出力側電極が交互に電気的に接続されていることが望ましい。このような構成によれば、電圧出力部における容量を増加することができる。電圧入力部においても同様に入力側電極を圧電基板内部に複数形成しても良い。
【0017】
また、本発明のコンバータは、上記圧電トランスを具備するものである。さらに、本発明のコンバータは、前記圧電トランスの前記第1および第2電圧入力部への入力信号の周波数を、前記圧電基板の幅方向の縦振動の基本波振動に対応した周波数及びその近傍の周波数において変化させることにより、前記圧電トランスの前記電圧出力部からの出力電力を変化させることにより、前記圧電トランスの電圧出力部からの出力電力を変化させることが望ましい。圧電トランスは、上記したように周波数変動により出力電力が変動するものの、効率は周波数変動しても変動が殆どないため、入力信号の周波数を変化させることにより、所望の出力電力を得ることができる。
【0018】
また、本発明のコンバータは、交流電圧を直流電圧に変換する1次側整流回路と、前記直流電圧を高周波交流電圧に変換するとともに、前記圧電トランスを有し、かつ前記高周波交流電圧を降圧する発振回路と、降圧された前記高周波交流電圧を直流電圧に変換する2次側整流回路とを具備するものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の単板型の圧電トランスは、図1に示すように、厚さ方向に分極され主面が長さL、幅Wの長方形状の圧電基板11に、その長さ方向に、第1電圧入力部A1、電圧出力部B1、第2電圧入力部C1が順次形成されている。
【0020】
これらの第1電圧入力部A1、電圧出力部B1、第2電圧入力部C1における圧電基板11の上側の主面には、入力側電極12、出力側電極14、入力側電極13がそれぞれ形成されており、これらの電極12、13、14は、圧電基板11の長さ方向に所定間隔を置いて形成されている。
【0021】
また、圧電基板11の下側の主面には、入力側電極15、出力側電極17、入力側電極16が、圧電基板11の長さ方向に所定間隔を置いてそれぞれ形成されている。
【0022】
即ち、第1電圧入力部A1における圧電基板11の両主面には、入力側電極12、15が形成され、電圧出力部B1における圧電基板11の両主面には、出力側電極14、17が形成され、第2電圧入力部C1における圧電基板11の両主面には、入力側電極13、16が形成され、電極12〜17は、一辺が圧電基板11の主面の幅Wと同一長さとされ、他辺は主面の長さ方向にそれぞれ任意の長さ、例えばL1、L2、L3とされている。
【0023】
また、入力側電極12と入力側電極15が同一寸法とされ、出力側電極14と出力側電極17が同一寸法とされ、入力側電極13と入力側電極16が同一寸法とされている。
【0024】
そして、本発明の圧電トランスでは、主面の長さLと幅Wの比(L/W)が2.5〜6とされている。このようにL/Wを設定することにより、出力電力は、駆動周波数が圧電トランスの共振において最大値となり、共振からずれると共に低下するが、効率は、共振周波数近傍から特定の周波数帯域において、ほぼ一定とすることができる。
【0025】
一方、L/Wの値が2.5よりも小さい場合には、出力電力が小さくなり、逆に、6よりも大きい場合には出力電力が大きいものの、効率の周波数依存性が大きくなるからである。
【0026】
また、圧電基板11の上側の主面に形成され同一平面上の一対の入力側電極12、13の総面積S1と、出力側電極14の面積S2との比(S1/S2)が、0.5〜5とされている。このように設定することにより、効率の周波数による変化をさらに小さくできる。
【0027】
本発明の圧電トランスは、例えば、セラミックスからなる圧電基板11に、電極12〜17を形成した後、120℃のシリコーンオイル中にて、圧電基板11の上面の3個の電極12、13、14と、圧電基板11の下面の3個の電極15、16、17の間に直流電圧を印加して、約30分間分極処理することにより得られる。
【0028】
電極12〜17は、例えば、Ag粉末とガラスからなるペーストをスクリーン印刷した後、焼成して形成してもよい。また、蒸着、スパッタ等の手法を用いて金属電極を形成しても良い。また、Ag以外の導電性材料を用いても良い。
【0029】
本発明の圧電トランスでは、入力側電極12、13間と入力側電極15、16間に、圧電基板11の主面の幅W方向に振動する基本波振動(図1に示す)の共振周波数及びその近傍に対応した周波数を持つ同位相の交流電圧を印加することで駆動することが最も望ましい。
【0030】
この場合、第1電圧入力部A1と第2電圧入力部C1は、圧電基板11の幅W方向に振動する基本波振動の共振周波数及びその近傍の周波数で、且つ同位相の交流電圧の印加で励振することで、第1電圧入力部A1と第2電圧入力部C1に形成された振動が電圧出力部B1に伝搬し、電圧出力部B1の振動により圧電効果を介して交流の出力電圧が発生する。
【0031】
本発明の圧電トランスでは、強制振動部となる電圧入力部A1、C1を電圧出力部B1の両側に弾性的な連続体として形成することで、電圧出力部B1においても強制振動部と同一方向の振動が形成しやすくなり、弾性損失の低下とともに高電力化、高効率化を図ることができる。
【0032】
一方、最大電力および最大効率を得るための負荷抵抗、すなわちインピーダンス整合となる負荷抵抗RL’は、駆動周波数をfr、出力側静電容量をCd2とするとRL’=1/(2πfrCd2)で決定される。本発明の圧電トランスでは、出力側電極の面積を広くとれるため、低インピーダンスにおいて、高出力電力および高効率となる。
【0033】
また、本発明の圧電トランスは、分極方向が単一方向であるため、ローゼン型圧電トランスと比較して、基板の長さ方向の分極処理の必要がないため、製造工程を簡略化でき、厚さ方向に分極するため分極電圧を低くすることが可能であり、製造工程における安全性を向上できる。
【0034】
本発明の圧電トランスは、圧電基板の主面の幅方向への振動を入力部に交流電圧として入力することから、圧電横効果の電気機械結合係数K31をもって交流の入力電圧が機械的な振動に変換されることになる。さらには、出力部において再び圧電横効果の電気機械結合係数K31をもって交流の出力電圧に変換されることになるため、エネルギー伝送の高電力化、高効率化を図るためには、圧電材料としては電気機械結合係数K31の大きな材料とともに弾性振動の伝搬を利用する事から、低損失すなわち機械的品質係数Qmが大きな材料が望ましい。特にPZT系やNaNbO3系などの圧電セラミック材料が望ましい。また、単結晶材料を利用することも可能である。
【0035】
上記圧電トランスを、スイッチング電源回路用トランスとして用いると、ある一定の周波数変動幅に対して効率が低下しない回路を作製できる。また、この特性を利用し、動作周波数を変えることで、効率が低下せずに目標とする出力電力が得られる回路を作製できる。
【0036】
図2は、本発明の積層型圧電トランスを示すもので、この積層型圧電トランスは、主面が長さL、幅Wの長方形状の圧電基板41に、その長さ方向に、第1電圧入力部A2、電圧出力部B2、第2電圧入力部C2が順次形成されている。
【0037】
これらの第1電圧入力部A2、電圧出力部B2、第2電圧入力部C2における圧電基板41の上側の主面には、入力側電極42a、出力側電極44a、入力側電極43aがそれぞれ形成されており、これらの電極42a、43a、44aは、圧電基板41の長さ方向に所定間隔を置いて形成されている。また、圧電基板41の下側の主面には、入力側電極42d、出力側電極44j、入力側電極43dが、圧電基板41の長さ方向に所定間隔を置いてそれぞれ形成されている。
【0038】
第1電圧入力部A2における圧電基板41の内部には、入力側電極42b、42cが形成され、電圧出力部B2における圧電基板41の内部には、出力側電極44b〜44iが形成され、第2電圧入力部C2における圧電基板41の内部には、入力側電極43b、43cが形成されている。
【0039】
入力側電極42a〜42dは同一寸法とされ、出力側電極44a〜44jは同一寸法とされ、入力側電極43a〜43dは同一寸法とされている。入力側電極42a、43a、出力側電極44aが圧電基板41の上側の主面において同一平面上に設けられ、入力側電極42b、43bと出力側電極44d、入力側電極42c、43cと出力側電極44gが圧電基板41の内部において同一平面上に設けられ、さらに、入力側電極42d、43d、出力側電極44jが圧電基板41の下側の主面において同一平面上に設けられている。尚、図2の出力側電極については一部のみ符号を付した。
【0040】
入力側電極42a〜42dは、圧電基板41の両側面に形成された一対の外部電極45a1、45a2により交互に接続され、出力側電極44a〜44jは一対の外部電極45b1、45b2により交互に接続され、入力側電極43a〜43dは一対の外部電極45c1、45c2により交互に接続されている。
【0041】
そして、この積層型圧電トランスにおいても、上記と同様に、主面の長さLと幅Wの比(L/W)が2.5〜6とされている。また、同一平面上に設けられた入力側電極42a、43aの総面積S1と、出力側電極44aの面積S2との比(S1/S2)が、0.5〜5とされている。
【0042】
次に積層型圧電トランスの製造方法について説明する。所望の組成にて混合されたPZT系等の圧電セラミックを、900〜1100℃で仮焼成する。この仮焼成粉を粉砕し、バインダー、可塑材等を添加し、有機溶剤中に分散させてスラリーを作成する。得られたスラリーをドクターブレード法などを用いて、所望の厚さのセラミックグリーンシートとする。
【0043】
このセラミックグリーンシートの片面に、例えばAg−Pdペーストのような高耐熱性の導電ペーストをスクリーン印刷する。この場合に、図3に示すように、入力側電極となるパターン57と出力側電極となるパターン59が形成されたグリーンシート61と、出力側電極となるパターン59のみが形成されたグリーンシート63を作製し、これらを図3に示すように積層し、これを熱間プレスにより連結し、一体化させ、400〜500℃で加熱により脱脂を行った後、1100〜1300℃で焼結する。尚、図3には、一部のグリーンシートのみ記載した。
【0044】
次に焼結体の両側面に外部電極として導電ペーストを塗布する。入力側電極42a〜42dは、一対の外部電極45a1、45a2により一層毎に接続されている。出力側電極44a〜44jは一対の外部電極45b1、45b2により一層毎に接続されている。さらに、入力側電極43a〜43dは一対の外部電極45c1、45c2により交互に接続されている。即ち、入力側電極、出力側電極は、積層型コンデンサや積層型圧電アクチュエータのような構造であり、内部電極が外部電極により一層おきに電気的に接続されている。
【0045】
さらに、積層体を120℃のシリコーンオイル中にて、入力側電極42a〜42d、43a〜43dおよび出力側電極44a〜44jに、各々直流電圧を印加して、約30分間分極処理することにより、積層型圧電トランスを得る。
【0046】
この積層型圧電トランスで、長さLと幅Wの比(L/W)を2.5〜6とすると、出力電力は、駆動周波数が圧電トランスの共振において最大値となり、共振からずれると共に低下する。一方、効率は、共振周波数近傍から特定の範囲内において、ほぼ一定とすることができる。
【0047】
さらに、同一面上に入力側電極と出力側電極が存在する面において、入力側電極の総面積S1と出力側電極の面積S2の比(S1/S2)が0.5〜5の範囲内となるよう積層型圧電トランスを作成した場合、効率の変動をさらに抑えることができる。
【0048】
また、積層型圧電トランスの上下面を、外部との絶縁を取るために、同一組成からなる圧電セラミックスで覆ってもよい。また、圧電基板41の主面に入力側電極、出力側電極を形成せず、内部のみ形成しても良い。
【0049】
積層型圧電トランスでは、出力側電極の面積を増加できるため、同じ長さと幅を持つ単板型圧電トランスに比べて出力電力を大きくできる。
【0050】
さらに、積層型圧電トランスにおけるインピーダンス整合となる負荷抵抗RL’は、単板型圧電トランスと比べて、出力側静電容量Cd2を大きく取ることができるため、より低インピーダンスにおいてインピーダンス整合とすることが可能である。さらに積層圧電トランスでは、容量比を自由に変更できるため、インピーダンス整合をとったままで、所望する変圧比を得ることができる。
【0051】
さらに、第1電圧入力部と第2電圧入力部への入力信号の周波数を、圧電基板の幅方向振動の基本波振動に対応した周波数及びその近傍の周波数において変化させることにより出力電力を変化させることが可能になることから、圧電トランスを用いた降圧回路とACをDCに変換する出力側平滑回路と圧電トランスの周波数制御回路を組み合わせることで小型で高効率なAD及びDDコンバータを得ることが出来る。
【0052】
図4に、本発明のコンバータのうちADコンバータを示す。このADコンバータは、交流電圧を直流電圧に変換する1次側整流回路と、直流電圧を高周波交流電圧に変換するとともに、該高周波交流電圧を降圧する発振回路と、降圧された高周波交流電圧を直流電圧に変換する2次側整流回路とを具備するものである。
【0053】
1次側整流回路は、例えば、ブリッジダイオードとコンデンサとを有し、2次側整流回路は、例えば、2個のダイオード、コンデンサを有し、発振回路は、スイッチング回路と、上記した圧電トランスを有している。
【0054】
尚、上記圧電トランスでは、図2に示すように、第1電圧入力部A2における圧電基板41の内部に入力側電極42b、42cを形成し、第2電圧入力部C2における圧電基板41の内部に入力側電極43b、43cを形成した例について説明したが、図5に示すように、第1電圧入力部A2、第2電圧入力部C2における圧電基板41の内部には、入力側電極を形成してもよい。
【0055】
本発明の圧電トランスでは、入力側電極を積層構造とすることができ。これにより、圧電トランスの容量比(出力側静電容量/入力側静電容量)を所望の値とできる。容量比は圧電トランスの変圧比に関係しており、容量比を大きくとれば、降圧型トランス、小さくとれば昇圧型トランスとなる。出力側容量はインピーダンス整合のとれる容量とし、入力側容量を変えることにより、圧電トランスの変圧比を変えることができる。
【0056】
【実施例】
実施例1
先ず、PZT系材料からなる圧電基板を作製し、銀とガラスを主成分とする電極ペーストを圧電基板の両表面に塗布し、焼き付けることにより、図1に示す入力側電極および出力側電極を有する単板型圧電トランスを作製した。
【0057】
ここで、圧電トランスのL/W比は、表1に示す7種類のものを作製した。入力側電極の総面積S1と出力側電極の面積S2の比(S1/S2)は2.0とし、圧電基板の厚みはすべて0.4mmとした。次に、各々圧電トランスを120℃のシリコーンオイル中で1.6kV/mmの直流電圧を印加し、30分間分極を行い、圧電基板の厚み方向に分極した。
【0058】
測定回路は、図6に示すように、圧電トランスの入力側電極(1次側電極)を入力とし、出力側電極(2次側電極)を出力として、この出力側電極に負荷抵抗RLを接続した。ここではRL=220Ωとした。入力電圧として振幅20Vの正弦波に20Vのオフセット電圧を加えたものを入力電源52から入力側電極に印加し、入力電流(A)を測定することで入力電力を求めた。
【0059】
一方、出力側電極からの出力電圧(V)、出力電流(A)を測定することで出力電力(W)を求めた。効率(%)は出力電力および入力電力より求めた。また、周波数に対する効率変動η(drift)を、最大電力を示す周波数での効率η(fmax)に対して、−5KHz低周波側へシフトした場合の効率η(f−5KHz)の変化を、η(fmax)−η(f−5KHz)=η(drift)として求め、これを表1に記載した。
【0060】
【表1】
【0061】
この表1から、L/W比が6を越える試料No.1のとき、−5KHzの周波数変動に対して、効率変動は−28.12%であった。一方、L/W比が2.5より小さい試料No.7では、−5KHz周波数変動において、効率変動は−1.57%とほとんど変動しないものの、出力電力は1.134Wと本発明の実施例に比べて低いことが判る。
【0062】
これに対して、L/W比が2.5〜6の範囲の本発明の試料No.2〜6では、−5KHzの周波数変動に対して、効率変動が−5%以内であり、2W以上の高出力電力が得られることが判る。
【0063】
図7に従来の試料No.1の圧電トランス、図8に本発明の試料No.4の圧電トランスにおける出力電力と効率の周波数特性を示す。図7から、従来の圧電トランスでは、周波数の変化に伴い、出力電力、効率とも大きく変動するため、効率を落とさずに出力電力を制御することは難しいことが判る。一方、図8によると、出力電力の変化に対して、効率はほぼ一定であるため、周波数を変えることで、効率を落とすことなく容易に出力電圧を制御できることが判る。
実施例2
実施例1と同様の工程にて図1の単板型圧電トランスを作製した。作製したトランスの形状は、主面の長さLをそれぞれ28.46、24.0及び18.38mmとし、幅Wをそれぞれ4.743、5.625、及び7.35mmとした。ここでL/W比は、6.0、4.27あるいは2.5の3種類として、入力側電極の総面積S1と出力側電極の面積S2の比(S1/S2)を5種類に変更した。圧電基板の厚みは0.4mmである。
【0064】
測定回路は、上記と同様であり、入力電力、出力電力(W)を求め、効率(%)を求め、効率変動(%)を求め、表2に記載した。
【0065】
【表2】
【0066】
この表2において、S1/S2が0.5〜5の範囲外である試料No.8、12、13、17、18及び22の場合、効率変動が−3%以上を示すか、あるいは出力電力は2W未満のいずれかとなるが、S1/S2が0.5〜5の範囲では効率変動が−3%以内であり、2W以上の高出力電力が得られることが判る。
実施例3
先に述べた積層型圧電トランスの作製工程に基づいて、図2の積層型圧電トランスを作製した。作製した積層型圧電トランスの形状は表3に示す。ここでS1/S2は、同一平面上に入力側電極及び出力側電極が存在する面における入力側電極の総面積S1と出力側電極の面積S2の比である。入力側を3層、出力側が9層となるように積層し、さらに積層体の上下面を同一組成の圧電セラミックスで覆った。一層あたりの圧電体の厚みは、入力側で762μm、出力側で254μmであり、積層体の厚みは2.286mmであった。
【0067】
測定回路は実施例1、2と同じものを用い、出力側電極に負荷抵抗RL=10Ωを接続した。入力電圧として振幅20Vの正弦波に20Vのオフセット電圧を加えたものを入力側電極に印加し、入力電流(A)を測定することで入力電力を求めた。
【0068】
一方、出力側電極からの出力電圧(V)、出力電流(A)を測定することで出力電力(W)を求めた。効率変動(%)は出力電力及び入力電力より求めた。
【0069】
表3に示した形状の圧電トランスの共振周波数時の出力電力と、共振周波数から−5KHz変動した場合の効率変動を示す。
【0070】
【表3】
【0071】
この表3から、本発明の積層型圧電トランスでは、出力電力が2.8W以上であり、効率変動は−5KHzの帯域において−5%以内であり、S1/S2=0.5〜5を満足する試料では、出力電力が5W以上であり、効率変動は−5KHzの帯域において−3%以内であった。一方、本発明の範囲外の試料では出力電力が2.3W未満であるか、または効率の周波数変動が5%以上であった。
【0072】
また、本発明の積層型圧電トランスは、負荷抵抗10Ωにて高出力電力であり、低負荷インピーダンスにて、インピーダンス整合を容易にとれることが判る。
【0073】
【発明の効果】
本発明の圧電トランスは、周波数変動による効率の変動が殆どなく、1KΩ未満の低負荷インピーダンスにおいて高出力電力かつ高効率特性を示す、ADコンバータやDC−DCコンバータに好適に用いられる降圧用圧電トランスを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の単板型圧電トランスを示す斜視図である。
【図2】本発明の積層型圧電トランスを示す斜視図である。
【図3】図2の積層型圧電トランスの製造方法を説明するための説明図である。
【図4】本発明のADコンバータを示す回路図である。
【図5】本発明の他の積層型圧電トランスを示す斜視図である。
【図6】本発明の圧電トランスの測定回路を示す斜視図である。
【図7】比較例の試料No.1の圧電トランスの出力電力と効率の周波数特性を示す図である。
【図8】本発明の試料No.4の圧電トランスの出力電力と効率の周波数特性を示す図である。
【図9】従来のローゼン型圧電トランスを示す斜視図である。
【符号の説明】
11・・・圧電基板
12、13、15、16・・・入力側電極
14、17・・・出力側電極
L・・・主面の長さ
W・・・主面の幅
S1・・・入力側電極総面積
S2・・・出力側電極総面積
A1・・・第1電圧入力部
B1・・・電圧出力部
C1・・・第2電圧入力部
Claims (5)
- 両主面が長さL、幅Wの長方形状である圧電基板の長さ方向に、第1電圧入力部、電圧出力部、第2電圧入力部をこの順に備え、前記第1および第2電圧入力部における前記圧電基板の両主面にそれぞれ入力側電極が設けられており、前記電圧出力部における前記圧電基板の両主面に第1の出力側電極が設けられており、
同一平面上に設けられた一対の前記入力側電極の総面積S1と、前記第1の出力側電極の面積S2との比(S1/S2)が0.5〜5であり、
前記圧電基板は、厚み方向に分極されているとともに、主面の長さLと幅Wとの比(L/W)が2.5〜6であり、
前記第1および第2電圧入力部に同位相の交流電圧が入力されることによって、前記圧電基板の主面の幅方向に縦振動して、前記電圧出力部より交流電圧が出力されることを特徴とする圧電トランス。 - 前記電圧出力部における前記圧電基板内部に、厚み方向に所定間隔をおいて第2の出力側電極が複数形成されており、該第2の出力側電極が交互に電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電トランス。
- 請求項1または請求項2に記載の圧電トランスを具備することを特徴とするコンバータ。
- 前記圧電トランスの前記第1および第2電圧入力部への入力信号の周波数を、前記圧電基板の幅方向の縦振動の基本波振動に対応した周波数及びその近傍の周波数において変化させることにより、前記圧電トランスの前記電圧出力部からの出力電力を変化させることを特徴とする請求項3に記載のコンバータ。
- 交流電圧を直流電圧に変換する1次側整流回路と、前記直流電圧を高周波交流電圧に変換するとともに、前記圧電トランスを有し、かつ前記高周波交流電圧を降圧する発振回路と、降圧された前記高周波交流電圧を直流電圧に変換する2次側整流回路とを具備することを特徴とする請求項3または請求項4に記載のコンバータ。
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