JP4743575B2 - 現像ロール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真や静電記録等において使用する、非磁性の円筒状のスリーブ内にマグネットロールを有する現像ロールに関する。
【0002】
【従来の技術】
図9は従来のマグネットロールとそれを用いた現像ロールの1例を示す断面図である。図において、マグネットロール816は外周部に複数個の磁極を設けた円筒状の永久磁石87と、この永久磁石87の中空部に固着したシャフト6とから構成される。そして前記マグネットロール816を用いた現像ロール81は、前記マグネットロール816と、アルミ合金若しくはステンレス鋼等からなる非磁性円筒形のスリーブ2と、前記スリーブ2の両端に固着したフランジ3a、3bと、軸受け4と、シール部材5とから構成され、シャフト6とスリーブ2は軸受け4を介して相対的に回転自在に設けられる(すなわち永久磁石87と永久磁石87の中空部に固着したシャフト6とからなるマグネットロール816に対して、スリーブ2が相対的に回転する)とともに、シール部材5により現像剤(図示せず)のスリーブ2内への浸入を防止するようになっている。通常、前記永久磁石87は、成形性に優れ且つ成形後の割れや欠けが生じにくいフェライト系ボンド磁石を用いて成形され、前記成形時の磁場配向と成形後の着磁により、前記永久磁石87の外周面上に軸心方向にわたる磁極が周方向に沿って複数形成される。そして、前記各磁極は、前記永久磁石に相対回転可能に外装される円筒状のスリーブ2の表面を介して、現像剤(図示せず)の汲み上げ、搬送、感光体(図示せず)への移動ならびに現像剤ボックス(図示せず)への回収に至る各工程を分担する。
【0003】
前記各工程における現像剤の挙動は、画像品質に大きく影響するので、前記各磁極がスリーブ2の表面に形成する磁気パターンは種々の特性が要求される。特に現像剤を感光体へ移動させる現像極がスリーブ2の表面に形成する現像極磁気パターンには、現像剤を装置内にこぼさずに感光体へ移動させるための、局所的高磁束密度が要求される。しかし、フェライト系ボンド磁石である永久磁石87を具備した前記従来のマグネットロール816を用いた現像ロール81は、このような現像極磁気パターンでの局所的高磁束密度の要求に対応しにくいという問題点があった。
【0004】
特開2000−68120号公報には前記問題点を解決したマグネットロールが示されているので、図面を参照しながらこのマグネットロールについて説明する。なお、同一部分は前述の図9と同一の参照符号を付す。図10はこのマグネットロールおよびその磁気パターンを示す側面図である。複数個の磁極(N1、S2、N2)を設けるとともに、その外周面上に長手方向全長にわたる溝97cを具備したフェライト系ボンド磁石である永久磁石97と、前記溝97cに嵌着され磁極S1を有する保磁力3kOe以下の金属磁石である磁極片915と、前記永久磁石97の両端から突設するシャフト(図示せず)とから成るマグネットロール916に、相対回転可能に円筒状のスリーブ2が外装されて現像ロールが構成される。前記マグネットロール916においては前記磁極S1が現像極である。磁気パターンB97は前記磁極S1、N1、S2、N2による前記スリーブ2表面の磁束密度分布を示し、具体的には、スリーブ2表面において、スリーブ2の法線方向の磁束密度を測定し、その値をスリーブ2の法線方向の外方にとって示した分布図である。未着磁の状態で組み立てられたマグネットロール916は着磁装置を用いて着磁され、複数個の磁極(S1、N1、S2、N2)が形成される。マグネットロール916は磁極片915の保磁力が3kOe以下と小さいので着磁が容易であるとともに、磁極片915が比較的高特性の金属磁石であるため、この磁極片915が現像極となるようにすれば、現像極として必要な局所的高磁束密度が得られる。
【0005】
ここで、現像極の磁気パターンB97の磁束密度の最大値の略1/2のところを、その磁束密度分布の両側の線E、Fを横切るようにして通る、スリーブ2の周方向上の線(すなわち、E、Fを通る、スリーブ2の回転中心2Oをセンターとした円弧)Gと、磁束密度分布の両側の線E、Fとの両交点H、Iのうち、一方の交点Hとスリーブ2の回転中心2Oとを結ぶ直線L1、ならびに他方の交点Iとスリーブ2の回転中心2Oとを結ぶ直線L2との成す角度αを半値角と記すことにする。なお、現像極以外の極についても上記と同様に半値角を定義することができる。
【0006】
ところで、前述の現像剤の感光体への移動作用が最も強くなるのは前記現像極磁気パターンが現像剤を穂立ちさせる部位であり、この部位で現像剤の感光体への移動は殆ど終了する。現像剤が感光体に接触する、スリーブ周方向の幅(所謂現像ニップ部)の現像剤が穂立ちする部位を除いた残りの現像ニップ部については、感光体へ付着した現像剤をむしろ掻き取ってしまう所謂スキャベジング作用が行われる部位である。前記スキャベジング作用は画像品質を悪化させるので好ましくない。現像極磁気パターンのスリーブ周方向の幅が広いと、前記スキャベジング作用が行われる部位も広くなり画像品質の悪化が増大する。現像極磁気パターンのスリーブ周方向の幅が広いということは、前記半値角αが大きいということであり、半値角αを小さくすることが望まれていた。
【0007】
半値角αを小さくするためには、前記磁極片915のスリーブ周方向の幅寸法を小さくする方法があるが、この方法では、磁極片915のスリーブ周方向の幅寸法を極端に小さくすると、現像極磁気パターンの最大磁束密度が低下してしまうという問題点があった。また、着磁の際、永久磁石97の円周方向の現像極近傍部分も、現像極と同極性に着磁されるので、この永久磁石97の円周方向の現像極近傍部分の磁力の寄与により、半値角αが大きくなってしまうという問題点もあった。
【0008】
このような問題点を解決するためには、磁極片としてスリーブ周方向の幅寸法の小さい希土類系燒結磁石を用い、この磁極片を予め着磁してから永久磁石の溝に挿入することも考えられる。磁極片は断面の寸法(図の紙面上下方向寸法および左右方向寸法)に対して長手方向寸法が大きい所謂長尺磁石となる。そして、磁極片の材料として前記希土類系燒結磁石を用いた場合は、燒結磁石が脆いのでこのような長尺磁石は折れ易く、特に、前述のように磁極片915を予め着磁してから永久磁石97の溝97cに挿入する場合は、磁力による吸引力のため一層折れ易くなり、組立が不可能となるかあるいは組立に細心の注意を払うため労力がかかり製造原価が増大するという問題がある。磁極片915を長手方向に分割された所謂短尺磁石の繋ぎ合わせたものとすれば前記長尺磁石の折れの問題は無くなるが、繋ぎ合わせた継ぎ目において磁気パターンの磁束密度が低下し、画像品質の劣化を招来するので分割することはできず、一体の長尺磁石とする必要がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題点を解決し、現像極磁気パターンでの局所的高磁束密度が得られるとともに、現像極磁気パターンの半値角が小さく、画像品質の優れた現像ロールを提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、非磁性の円筒状のスリーブ内にマグネットロールを有する現像ロールであり、前記マグネットロールは、周面上の軸方向に延びる凹状溝を設けた円筒状永久磁石と、前記凹状溝に嵌め込まれた角柱状永久磁石と、前記円筒状永久磁石の中空部に固着したシャフトからなり、前記凹状溝に嵌め込まれた角柱状永久磁石が現像極を形成し、前記円筒状永久磁石が前記現像極以外の複数個の磁極を形成しており、前記現像極による磁界のスリーブ外側表面の最大磁束密度が、前記現像極以外の複数個の磁極による磁界のスリーブ外側表面の最大磁束密度よりも高く、さらに、前記現像極以外の複数個の磁極のうち前記現像極に隣接する二つの磁極の一方が他方よりも高い最大磁束密度を有しており、前記現像極の半値角を小さくするための面取り部を、前記凹状溝の側面と前記円筒状永久磁石の周面とが交わる2箇所の稜線部のうち、前記現像極に隣接する最大磁束密度の高い方の磁極側に具備していることを特徴とする現像ロールである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図に基づき説明する。
【0012】
(実施形態1)
図1は本発明の実施形態1を示す永久磁石とマグネットロールとそれを用いた現像ロールの断面図、図2は図1の側面図、図3は図2の後述する凹状溝7cと磁極片15を拡大したものである。なお、同一部分は前述の図9あるいは図10と同一の参照符号を付す。永久磁石7は、周面上の軸方向に延びる複数個の磁極と周面上の軸方向に延びる凹状溝7cとを有し、前記凹状溝7cの側面と前記永久磁石7の周面とが交わる2箇所の稜線部の内、図2の紙面左側の稜線部に面取り部を7d具備している。 また、永久磁石7は軸方向に延びる中空部を有し、前記中空部シャフト6が挿入固着されている。前記永久磁石7と磁極片15とシャフト6とからマグネットロール16が構成される。前記複数個の磁極の内の一つが前記磁極片15の磁力によって形成された現像極(S1)であり、前記現像極以外の複数個の磁極が前記永久磁石7の磁力によって形成された補助極(N1、S2、N2、S3、N3、S4、N4)である。そして円筒状のスリーブ2が前記永久磁石7の外周を包囲するように設けられ、且つ永久磁石7に対して回転可能に支持される。前記永久磁石7、シャフト6およびスリーブ2から現像ロール1が構成される。
【0013】
永久磁石7は通常の磁石材料を用いて形成することができ、例えば磁性粉末を樹脂バインダーに分散させた樹脂マグネット、あるいは磁性粉末をゴムバインダーに分散させたゴムマグネット等の、所謂ボンド磁石を用いることができる。前記磁性粉末としては、バリウムフェライト及び/又はストロンチュムフェライト等のフェライト磁粉、あるいはR−Co系もしくはR−Fe−B系やR−Fe−N系のような希土類系の磁粉を用いることができ、または、前記フェライト磁粉と希土類系の磁粉の混合粉を用いることができるが、一般的には経済性を考慮してバリウムフェライト及び/又はストロンチュムフェライト等のフェライト磁粉を用いることが多い。前記樹脂バインダーとしては例えばポリエチレン、塩化ビニール、エチレンーエチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレンー酢酸ビニール共重合体EVA)、ポリアセタール、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂等を用いることができる。また、前記材料中には、滑剤、可塑剤等を適量添加することができる。前記ゴムバインダーとしては、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、スチレンーブタジエンゴム、エチレンープロピレンゴム、塩素化ポリエチレン、塩化ビニール等のゴムを用いることができる。
【0014】
このような材料を用いて押出し成形あるいは射出成形により一体の永久磁石7を成形する。そして、前記成形の金型の周囲に配設された磁場配向装置により前記複数個の磁極(N1、S2、N2、S3、N3、S4、N4)が所定位置に配向された所謂極異方性となる。なお、要求される磁束密度がさほど大きくない場合は前記極異方性とせず、等方性としても良い。
【0015】
永久磁石7の側面形状は、スリーブ2の回転中心2Oをセンターとした円筒に凹状溝7cが具備された形状とする。
【0016】
凹状溝7cの幅方向の中心線が永久磁石7の円筒の中心線と一致するようにする。凹状溝7cの側面(図2の紙面上下方向の面)同士は互いに平行で、底面(図2の紙面左右方向の面)は前記側面と直交させる。
【0017】
凹状溝7cの幅寸法(図の紙面左右方向寸法)は磁極片15の幅寸法よりも僅かに大きい値にする。凹状溝7cの深さ寸法(図の紙面上下方向寸法)は、磁極片15が凹状溝7cに挿入された後、磁極片15の図の紙面上側の面が永久磁石7の外周面と略一致するように設定する。
【0018】
磁極片15は側面の寸法(図の紙面上下方向寸法および左右方向寸法)に対して長手方向寸法が大きい所謂長尺磁石となる。そして、磁極片15の材料として燒結磁石を用いた場合は、燒結磁石が脆いのでこのような長尺磁石は折れ易く、特に、磁極片15を予め着磁してから永久磁石7の凹状溝7cに挿入する場合は、磁力による吸引力のため、一層折れ易くなり、必然的に長手方向に分割された所謂短尺磁石の繋ぎ合わせたものとなる。しかし、繋ぎ合わせた継ぎ目において磁気パターンの磁束密度が低下し、画像品質の劣化を招来するので分割することはできず、一体の長尺磁石とする必要がある。このため磁極片15の材料としては可撓性が有るものが好ましく、例えば磁性粉末を樹脂バインダーに分散させた樹脂マグネット、あるいは磁性粉末をゴムバインダーに分散させたゴムマグネット等の、所謂ボンド磁石を用いることができる。
【0019】
前記磁性粉末としては、バリウムフェライト及び/又はストロンチュムフェライト等のフェライト磁粉、あるいはR−Co系もしくはR−Fe−B系やR−Fe−N系のような希土類系の磁粉を用いることができ、または、前記フェライト磁粉と希土類系の磁粉の混合粉を用いることができるが、一般的には現像極として必要な高磁束密度が得られるようにするため、R−Co系もしくはR−Fe−B系やR−Fe−N系のような希土類系の磁粉を用いることが多い。前記樹脂バインダーとしては例えばポリエチレン、塩化ビニール、エチレンーエチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレンー酢酸ビニール共重合体EVA)、ポリアセタール、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂等を用いることができる。また、前記材料中には、滑剤、可塑剤等を適量添加することができる。前記ゴムバインダーとしては、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、スチレンーブタジエンゴム、エチレンープロピレンゴム、塩素化ポリエチレン、塩化ビニール等のゴムを用いることができる。
【0020】
このような材料を用いて押出し成形あるいは射出成形により一体の磁極片15を成形する。そして、前記成形の金型の周囲に配設された磁場配向装置により、図の紙面上下方向がS−N方向となるように配向された異方性となる。なお、要求される磁束密度がさほど大きくない場合は前記異方性とせず、等方性としても良い。
【0021】
磁極片15の側面形状は、磁極片15が凹状溝7cに挿入された後、磁極片15の図の紙面上側の面が永久磁石7の外周面と一致する円弧となるようにすることが好ましいが、前記上側の面が略直線(すなわち側面形状が略矩形)となるようにしても良い。この場合、前記上側の面の図の紙面左右方向の中心が永久磁石7の外周面と一致するようにすることが一般的だが、前記上側の面の図の紙面左右方向の中心が永久磁石7の外周面より外側に(径方向寸法が大きく)なっても良いし、内側に(径方向寸法が小さく)なっても良い。
【0022】
図3に示すように、凹状溝7cの側面(図の紙面上下方向の面)と底面(図の紙面左右方向の面)が交叉する2箇所の隅部は完全には直交せず、隅肉7caが形成されてしまう。これは、前述のように、押出し成形あるいは射出成形により一体の永久磁石7を成形し、その時に凹状溝7cも同時に成形されるときに、凹状溝7cの輪郭に対応する前記成形用金型のキャビティの角部は、巨視的には直角だが、微視的には面取りを有するので、前記面取りに対応した隅肉7caが形成されてしまうためである。このため、磁極片15の底面の2箇所の角部が略直交した(すなわち面取り部を具備していないか、あるいは極めて小さい面取り部を具備している)形状であると、前記隅肉7caに前記角部が乗り上げて凹状溝7cの底面と磁極片15の底面が密着せず、隙間を生じる。そして、前述の隅肉7caへの角部の乗り上げの程度により、前記隙間の大きさが変動する。隙間が大きいと、磁極片15の図の紙面上側の面が永久磁石7の外周面よりも外側(図の紙面上側)に突出する傾向になり、隙間が小さいとその逆の傾向になり、現像ロール1の外周面における磁極片15の径方向位置の変動が大きくなる。こうなると現像極の高磁束密度の変動も大きくなり、画像品質に悪影響を与える。これを防止するためには、磁極片15の幅寸法を小さくして隅肉7caに角部が乗り上げないようにする方法も有るが、この方法でも、凹状溝7cの幅方向の一方に片寄って磁極片15が挿入されると隅肉7caに角部が乗り上げてしまうので好ましくない。
【0023】
このような不具合を防止するため、本実施形態では磁極片15の角部の内、少なくとも底面(図の紙面下側)の2箇所の角部に面取り部15aを具備した。前記面取り部15aは凹状溝7cの側面に対して45度の角度で交わる直線とし、面取り部15aの大きさは、隅肉7caに角部が乗り上げてしまわない範囲で、できるだけ小さくすることが好ましい。本実施形態では、磁極片15の上側(図の紙面上側)の面が略直線(すなわち側面形状が略矩形)となるようにし、磁極片15の上側の面の2箇所の角部にも底面の2箇所の角部の面取り部15aと同じ面取り部を具備した。このようにすることにより磁極片15は上下対称となり、上下どちらの面を凹状溝7cに挿入しても良く、組立の自由度が大きくなる。
【0024】
磁極片15を予め着磁してから永久磁石7の凹状溝7cに挿入する。このように磁極片15は着磁済みのため、永久磁石7に磁力で吸着するので、固着手段は不要であるが、接着剤を用いて固着力を補強しても良い。そして、長手方向寸法が大きい所謂長尺磁石である磁極片15を凹状溝7cに挿入する際、前述のように、磁極片15を可撓性が有るボンド磁石の一体成形体から構成されるようにしたので、折れ難く作業性が良好であり、原価を廉価にすることができる。また、磁極片15を長手方向に分割された所謂短尺磁石の繋ぎ合わせたものとせずに済むので、繋ぎ合わせた継ぎ目における磁気パターンの磁束密度の低下による画像品質の劣化を招来することがなく、画像品質の優れたマグネットロールとすることができる。永久磁石7に磁極片15が固着された後、着磁装置を用いて永久磁石7を着磁し、複数個の磁極(N1、S2、N2、S3、N3、S4、N4)を形成する(以下、別着磁と記す)。
【0025】
現像極に要求される磁束密度がさほど大きくなく、現像極の両隣の補助極が接近していないような場合は、未着磁の永久磁石7に未着磁の磁極片15を固着してから、着磁装置を用いて永久磁石7と磁極片15を着磁しても良い(以下、同時着磁と記す)。逆に、現像極に要求される磁束密度が大きく現像極の両隣の補助極が接近している場合は、前記各極に対応する着磁装置の着磁ヨーク同士を接近させなければならないが、現像極に要求される大磁束密度値を満足させるため、現像極に対応する前記着磁ヨークに巻線を多層に施す関係上、前記着磁ヨーク同士を接近させることが困難であり、前述の別着磁とせざるをえなくなる。
【0026】
前記別着磁の場合、S1極は前記着磁済みの磁極片15により形成済みであるが、永久磁石7の円周方向の磁極片15の近傍部分も着磁済みの磁極片15の磁力によって磁極片15と同極性に(後述する同時着磁の場合よりは弱目ではあるが)磁化され、特に前述のように磁極片15の材料として永久磁石7の材料よりは磁気特性の高い磁石材料が好ましく用いられるため、このことは一層顕著となり、その分、(後述する同時着磁の場合よりは小さ目ではあるが)現像極の半値角の増大を招来する。あるいは前記同時着磁の場合は、永久磁石7の円周方向の磁極片15の近傍部分も磁極片15と同極性に着磁され、その分、現像極の半値角の増大を招来する。このような現像極の半値角の増大を防止するために、本実施形態では、前記凹状溝7cの側面と前記永久磁石7周面とが交わる2箇所の稜線部の内、少なくとも1箇所の稜線部に面取り部7dを具備した。前記面取り部7dは凹状溝7cの側面に対して45度の角度で交わる直線とした。前記面取り部7dによって永久磁石7の円周方向の磁極片15の近傍部分の内図の紙面左側の部分が除去され、その分、半値角の増大を防止できる。
【0027】
このようにして得られたマグネットロール16に、スリーブ2と、フランジ3a、3bと、軸受け4と、シール部材5とを所定の手順で配設することにより、マグネットロール16の外周を包囲するように設けられ、且つマグネットロール16に対して回転可能に支持されたスリーブ2を有する現像ロール1(すなわちこのマグネットロール16を用いた現像ロール1)を得ることができる。
【0028】
(実施形態2)
図4は本発明の実施形態2を示す永久磁石27とマグネットロール216とそれを用いた現像ロール21の側面図、図5は図4の後述する溝27cと磁極片15を拡大したものである。なお、同一部分は前述の図1、図2、図3、図9あるいは図10と同一の参照符号を付す。本実施形態は実施形態1の永久磁石7において、溝の2箇所の稜線部ともに面取り部が具備されるようにしたものである。
【0029】
永久磁石27の側面形状は、スリーブ2の回転中心2Oをセンターとした円筒に溝27cを具備し、実施形態1の面取り部7d、隅肉7caと同様な面取り部27d、隅肉27caを具備するとともに、図2の紙面右側の陵線部に面取り部27eを具備する。それ以外は永久磁石27は実施形態1の永久磁石7と同じである。シャフト6、磁極片15およびスリーブ2は実施形態1と同じである。組立方法、着磁方法も実施形態1と同じである。
【0030】
そして、面取り部27dと面取り部27eとによって永久磁石27の円周方向の磁極片15の近傍部分が除去された分、半値角の増大を防止できる。
【0031】
以下、実施例、比較例を示し本発明をより具体的に説明する。
【0032】
(実施例1)
実施形態1において、下記の仕様にて永久磁石とマグネットロールとそれを用いた現像ロールを製作した。
(1)寸法
(ア)永久磁石
直径:23mm
長さ:304mm
溝幅:2.1mm
溝深さ(円筒の外周から溝底面までの寸法):3.4mm
面取り部7d:図3のh1寸法が1.45mmとなるようにした。
(イ)磁極片
側面形状:稜線部に面取り部の有る矩形側面とした。
幅:2mm
高さ(図3の紙面上下方向):3.3mm
面取り部15a:図3のh2寸法が0.3mmとなるようにした。
(ウ)スリーブ
表面の直径:25mm
(2)材質
(ア)永久磁石
バインダー:EEA 12重量%
磁性粉:Srフェライト 88重量%
(イ)磁極片
バインダー:EVA 12重量%
磁性粉:Sm―Fe―N合金 88重量%
(ウ)スリーブ:アルミニウム合金
(3)永久磁石の製造方法
(ア)永久磁石
押出し成形により一体の永久磁石を形成する。そして、前記成形の金型の周囲に配設された磁場配向装置により複数個の磁極(N1、S2、N2、S3、N3、S4、N4)が所定位置に配向された所謂極異方性とした。
(イ)磁極片
押出し成形により一体の磁極片を形成する。そして、前記成形の金型の周囲に配設された磁場配向装置により図の紙面上下方向に配向された異方性とした。
(4)着磁
磁極片を予め着磁してから永久磁石7の溝に挿入した後、着磁装置を用いて永久磁石7を着磁した(別着磁)。
【0033】
このようにして得られたマグネットロールのスリーブ表面において、スリーブの法線方向の磁束密度を測定し、その値をスリーブの法線方向の外方にとって示した磁気パターンB7の分布図を図6に示す。図より、現像極の最大磁束密度は0.114テスラ、半値角は17.5度である。そして補助極の内、磁力が最も大きいN1極の最大磁束密度は0.097テスラであるので、現像極による磁界のスリーブ外側表面の最大磁束密度が、補助極による磁界のスリーブ外側表面の最大磁束密度よりも大きく、現像極磁気パターンでの局所的高磁束密度が得られている。
【0034】
(実施例2)
実施形態2において、下記の仕様にて永久磁石とマグネットロールとそれを用いた現像ロールを製作した。面取り部27eは図5のh3寸法が2mmとなるようにした。それ以外は実施形態1と同じである。
【0035】
このようにして得られたマグネットロールのスリーブ表面において、スリーブの法線方向の磁束密度を測定し、その値をスリーブの法線方向の外方にとって示した磁気パターンB27の分布図を図7に示す。図より、現像極の最大磁束密度は0.114テスラ、半値角は16.9度である。そして実施例1と同様に、現像極による磁界のスリーブ外側表面の最大磁束密度が、補助極による磁界のスリーブ外側表面の最大磁束密度よりも大きく、現像極磁気パターンでの局所的高磁束密度が得られている。
【0036】
(比較例)
実施例1の永久磁石とマグネットロールとそれを用いた現像ロールにおいて、永久磁石7の面取り部7dを形成することなしに永久磁石37としたこと以外は実施例1と同じ仕様で、本比較例のマグネットロールを製作した。
【0037】
このようにして得られたマグネットロールのスリーブ表面において、スリーブの法線方向の磁束密度を測定し、その値をスリーブの法線方向の外方にとって示した磁気パターンB37の分布図を図8に示す。図より、現像極の最大磁束密度は0.115テスラ、半値角は21.2度である。
【0038】
実施例のマグネットロールは、現像極による磁界のスリーブ外側表面の最大磁束密度が、補助極による磁界のスリーブ外側表面の最大磁束密度よりも大きく、現像極磁気パターンでの局所的高磁束密度が得られている。そして実施例のマグネットロールは、比較例のマグネットロールに対して、現像極磁気パターンの最大磁束密度は略同じで、半値角を小さくすることができるので、画像品質の優れたマグネットロールおよびその製造方法を提供することができる。実施例のマグネットロールは、磁極片が折れにくく長手方向に一体に形成されるようにすることができるので、画像品質の優れた、且つ組立が容易で労力がかからず製造原価が廉価なマグネットロールおよびその製造方法を提供することができる。現像極に要求される磁束密度が大きく現像極の両隣の補助極が接近している場合、実施例のマグネットロールは、磁極片を予め着磁してから永久磁石の溝に挿入すること(別着磁)により、画像品質の優れたマグネットロールおよびその製造方法を提供することができる。
【0039】
以上、本発明の実施の形態あるいは実施例について説明したが、本発明は上記実施の形態あるいは実施例に限定されるものではない。実施の形態あるいは実施例に記した寸法、形状あるいは材料はこれに限定されるものではなく、機能、生産性等を勘案して最適の寸法、形状あるいは材料とすれば良い。
【0040】
また、下記のような変形も可能である。
(1)実施の形態では、永久磁石7の中空部にシャフト6が挿入されるようにしたが、前記中空部が無くシャフトが永久磁石と一体に成形されたものとしても良い。この場合は永久磁石7の側面形状は、スリーブ2の回転中心2Oをセンターとした(円筒ではなく)円柱に凹状溝7cが具備された形状となる。
(2)実施の形態では、永久磁石の複数個の磁極(補助極)をN1、S2、N2、S3、N3、S4、N4の7極としたが、この極数あるいは磁極の周方向の位置はこれに限定されず、要求される特性に応じて最適の極数あるいは磁極の周方向の位置とすることができる。
(3)実施の形態では、永久磁石7の側面を円筒状としたが、これに限定されず、例えば磁極部の直径が非磁極部の直径より大きい形状としても良く、あるいは切り欠きを具備した形状としても良い。
(4)実施の形態では、永久磁石7に着磁済みの磁極片15が固着された後、着磁装置を用いて永久磁石7を着磁したが、着磁装置を用いて永久磁石7を着磁した後、永久磁石7に着磁済みの磁極片15を固着しても良い。
(5)実施の形態では、面取り部15aあるいは面取り部7dは凹状溝7cの側面に対して45度の角度で交わる直線としたが、凹状溝7cの側面に対して交わる角度は45度に限定されるものではない。また、面取り部15aあるいは面取り部7dは直線に限定されるものではなく、円弧状の曲線等種々の線とすることができる。
(6)実施の形態では、溝の幅方向の中心線が永久磁石の円筒の中心線と一致するようにしたが、溝の幅方向の中心線が永久磁石の円筒の中心線と一致しないようにしても良い。
(7)実施の形態では、溝の側面(図の紙面上下方向の面)同士は互いに平行で、底面(図の紙面左右方向の面)は前記側面と直交させたが、溝の側面同士は互いに平行でなくても良く、底面は側面と直交させなくても良い。そしてこのようにした場合、磁極片の側面形状も前記溝の側面形状に応じて変形させれば良い。
(8)実施の形態では、現像極をS極としたが、現像極をN極とし、それにともない補助極の極性も実施の形態と逆にしても良い。
【0041】
本発明においては、上記変形同士の組み合わせ或いは実施の形態と変形との組み合わせは、任意に行うことができる。
【0042】
【発明の効果】
以上に記述したように、本発明によれば現像極磁気パターンでの局所的高磁束密度が得られるとともに、現像極磁気パターンの半値角が小さく、画像品質の優れた、且つ製造原価が廉価な現像ロールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1を示すマグネットロールとそれを用いた現像ロールの断面図である。
【図2】本発明の実施形態1を示すマグネットロールとそれを用いた現像ロールの側面図である。
【図3】図2の溝と磁極片を拡大した図面である。
【図4】本発明の実施形態2を示すマグネットロールとそれを用いた現像ロールの側面図である。
【図5】図4の溝と磁極片を拡大した図面である。
【図6】実施例1の磁気パターンを示す図面である。
【図7】実施例2の磁気パターンを示す図面である。
【図8】比較例の磁気パターンを示す図面である。
【図9】従来のマグネットロールとそれを用いた現像ロールを示す断面図である。
【図10】従来のマグネットロールおよびその磁気パターンの側面図である。
【符号の説明】
1,21 現像ロール
2 スリーブ
2O 回転中心
3a,3b フランジ
4 軸受け
5 シール部材
6 シャフト
6a 平面部
7,27 永久磁石
7c,27c 凹状溝
7ca,27ca 隅肉
7d,15a,27d,27e 面取り部
15 磁極片
16,216 マグネットロール
B7,B27,B37 磁気パターン
Claims (1)
- 非磁性の円筒状のスリーブ内にマグネットロールを有する現像ロールであり、
前記マグネットロールは、周面上の軸方向に延びる凹状溝を設けた円筒状永久磁石と、前記凹状溝に嵌め込まれた角柱状永久磁石と、前記円筒状永久磁石の中空部に固着したシャフトからなり、
前記凹状溝に嵌め込まれた角柱状永久磁石が現像極を形成し、前記円筒状永久磁石が前記現像極以外の複数個の磁極を形成しており、
前記現像極による磁界のスリーブ外側表面の最大磁束密度が、前記現像極以外の複数個の磁極による磁界のスリーブ外側表面の最大磁束密度よりも高く、さらに、前記現像極以外の複数個の磁極のうち前記現像極に隣接する二つの磁極の一方が他方よりも高い最大磁束密度を有しており、
前記現像極の半値角を小さくするための面取り部を、前記凹状溝の側面と前記円筒状永久磁石の周面とが交わる2箇所の稜線部のうち、前記現像極に隣接する最大磁束密度の高い方の磁極側に具備している、
ことを特徴とする現像ロール。
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