JP4742658B2 - 同期機の電流制御装置及び電流制御方法 - Google Patents

同期機の電流制御装置及び電流制御方法 Download PDF

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Description

本発明は、同期機の電流制御装置及び電流制御方法に関し、特に、同期機の振動の主要因であるトルク変動や騒音の主要因である半径方向節点力を低減する同期機の電流制御装置及び電流制御方法に関する。
従来、同期電動機の印加電流を制御して同期電動機のトルク変動を低減するようにした同期電動機の制御装置及び電流制御方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このものは、n相交流により駆動する同期電動機の各相に印加する印加電流として、基本電流(1次周波数電流)をK=1+Σi=12in・cos[2in(ωt+χ2in)]の式で得られる補正係数Kで補正した電流を与えて駆動する。この際、係数k2inに関して、同期電動機を正弦波電流で制御したときのトルク変動波形をフーリエ変換することにより算出される2in次成分の平均トルクに対する割合の極性を反転したものとしている。言い換えれば、基本電流を印加したときに発生するトルク変動の大きい高次周波数電流成分を打ち消すような高次周波数電流を基本電流に重畳することにより、トルク変動を低減しようとするものである。
特開2001−352791号公報
しかしながら、従来の上述した特許文献1におけるトルク変動の低減のために重畳する高次周波数電流の設定方法では、低減効果が少なく十分とは言えないという問題があった。
本発明は、この問題に着目してなされたもので、トルク変動や半径方向節点力の低減効果が大きく、同期機の振動や騒音を大幅に低減できる同期機の電流制御装置及び電流制御方法を提供することを目的とする。
このため、本発明の同期機の電流制御装置は、同期機に基本電流を印加したときに現れる半径方向節点力又はトルク変動のp次成分を低減するために、前記基本電流を前記p次の高次周波数電流成分に基づいて設定した補正係数を乗算して補正するようにした同期機の電流制御装置であって、K=[1+qcos(pωt)+rsin(pωt)]の式により得られるKを前記補正係数として与え、前記p次の高次周波数電流成分の振幅値に関連する前記補正係数K内の係数q、rの値をそれぞれ変化させたときに、前記半径方向節点力又はトルク変動の低減効果が所定以上となるような係数q、r値を選択して補正係数Kを設定する補正係数設定手段と、該補正係数設定手段で設定された補正係数Kを基本電流に乗算して得られる印加電流を前記各相コイルに印加制御して同期機を駆動制御する駆動制御手段とを備え、前記同期機は3相交流により駆動され、前記補正係数設定手段は、前記補正係数K内の係数qの値を、基本電流印加時の前記半径方向節点力又はトルク変動の波形をフーリエ変換した結果の前記p次成分の実部の、3相同時に電流を印加したときの平均半径方向節点力又は平均トルクと2相同時に電流を印加したときの平均半径方向節点力又は平均トルクの差を総計したもの、に対する比の符号を反転した値とし、前記補正係数K内の係数rの値を、基本電流印加時の前記半径方向節点力又はトルク変動の波形をフーリエ変換した結果の前記p次成分の虚部の、3相同時に電流を印加したときの平均半径方向節点力又は平均トルクと2相同時に電流を印加したときの平均半径方向節点力又は平均トルクの差を総計したもの、に対する比の符号を反転した値として設定する構成であることを特徴とする
また、本発明の同期機の電流制御方法は、同期機に基本電流を印加したときに現れる半径方向節点力又はトルク変動のp次成分を低減するために、前記基本電流を前記p次の高次周波数電流成分に基づいて設定した補正係数を乗算して補正するようにした同期機の電流制御方法であって、K=[1+qcos(pωt)+rsin(pωt)]の式により得られるKを前記補正係数として与え、前記p次の高次周波数電流成分の振幅値に関連する前記補正係数K内の係数q、rの値をそれぞれ変化させたときに、前記半径方向節点力又はトルク変動の低減効果が所定以上となるような係数q、r値を選択して補正係数Kを設定し、該設定された補正係数Kを基本電流に乗算して得られる印加電流を前記各相コイルに印加制御して同期機を駆動制御し、前記同期機は3相交流により駆動され、前記補正係数K内の係数qの値を、基本電流印加時の前記半径方向節点力又はトルク変動の波形をフーリエ変換した結果の前記p次成分の実部の、3相同時に電流を印加したときの平均半径方向節点力又は平均トルクと2相同時に電流を印加したときの平均半径方向節点力又は平均トルクの差を総計したもの、に対する比の符号を反転した値とし、前記補正係数K内の係数rの値を、基本電流印加時の前記半径方向節点力又はトルク変動の波形をフーリエ変換した結果の前記p次成分の虚部の、3相同時に電流を印加したときの平均半径方向節点力又は平均トルクと2相同時に電流を印加したときの平均半径方向節点力又は平均トルクの差を総計したもの、に対する比の符号を反転した値として設定するようにしたことを特徴とする。
本発明の同期機の電流制御装置及び電流制御方法によれば、同期機に基本電流を印加したときに現れる半径方向節点力又はトルク変動のp次成分を打ち消すようなp次の高次周波数電流を重畳し、この重畳するp次の高次周波数電流値を適切に設定することで、同期機の騒音の主要因である半径方向節点力或いは騒音の主要因であるトルク変動を大きく低減でき、同期機の振動或いは騒音を低減できる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る同期機の電流制御装置の一実施形態を示す構成図で、3相同期モータの駆動システムに適用した例を示す。
図1において、本実施形態の電流制御装置10は、図示しないコントローラからのトルク指令値と回転センサ1で検出されるモータ30の回転速度に基づいて各相の正弦波基本電流の電流値と位相を演算すると共に、この演算した基本電流(1次周波数電流)を印加したときに現れるトルク変動や半径方向節点力を低減するための補正係数Kを後述するように設定し、この設定した補正係数Kを前記基本電流に乗じて基本電流を補正する補正係数設定手段としての電流補正係数設定部11と、該電流補正係数設定部11から出力される補正電流値と各相に流れている実際の電流値を検出する電流センサ2で検出された実際の電流値との比較結果が3相/2相変換部12を介して入力し比較結果に基づいたフィードバック制御による電圧指令値を2相/3相変換部14を介してモータドライバ20に出力する駆動制御手段としてのPI制御部13を備える。
前記モータドライバ20は、入力する電圧指令値に基づいてPWM制御部21とインバータ22を介して各相のコイルに対して位相が120度ずつ異なる所定周波数の交流電圧を印加し、これにより、モータ30がその周波数に対応した回転数で駆動する。
図2及び図3に、前記モータ30として、高出力と低振動性という特性を備えるために多用される傾向にある4極対48ティースの分布巻きによる3相同期モータの構造を示す。
このモータ30は、固定子40と、回転子50と、これらを収納するモータケース60とを備える。
前記回転子50は、その軸中心に設けた回転軸70がモータケース60に設けられた軸受61,62により回転可能に支持されている。また、回転軸70に対し圧入により固定された積層鋼鈑等をベース材とし、該ベース材の外周部に8個の永久磁石51〜58が図3に示すように周方向に略等間隔に且つ図2に示すように軸方向に貫通して固定されている。前記永久磁石51〜58は、厚み方向に磁化されており、図3のように隣接する磁石のN極とS極が逆向きとなるよう配置されている。この永久磁石51〜58は、回転子50をモータケース60に組み付けると、回転子50の永久磁石51〜58と固定子40の電磁石との関係により磁路を形成する。
前記固定子40は、モータケース60に対し圧入やボルト止め等により固定された積層鋼鈑をベース材とし、該ベース材の回転子50と対向する内周部に、計48個のティース(1)〜(48)を備える。各ティース(1)〜(48)間に形成されたスロットには、前記モータドライバ20に接続されたコイル42が巻き付けられている。前記コイル42は、図3に示すように、U相のコイルとV相のコイルとW相のコイルの3相に分けられており、前記モータドライバ20からの位相が120度ずつ異なる所定周波数の交流電圧の印加により固定子40に回転磁界を発生させる。
前記電流補正係数設定部11では、補正係数Kを下記の(1)式により与え、補正係数K内の係数q、rの値を半径方向節点力の低減効果が所定以上となるように選択し設定する。
K=[1+qcos(pωt)+rsin(pωt)] ・・・(1)
ここで、pはトルク変動や半径方向節点力を低減するために1次周波数電流に重畳する高次周波数電流の次数を示す。
次に、前記電流補正係数設定部11による前記補正係数Kの式における、重畳高次周波数電流の振幅値に関連する係数q、rの値の設定方法について詳述する。尚、以下ではモータ騒音の主要因である半径方向節点力低減のためのq、r値の設定について説明するが、後述するようにトルク変動低減のためのq、r値の設定も同様である。
モータ30の騒音は、主にモータケース60の面直方向、即ち、半径方向の振動が原因であるが、この半径方向振動は、回転子50と固定子40間の電磁力変動、即ち、半径方向節点力(以下、節点力とする)に主に起因して発生する。この節点力に関して、前述の4極対48ティースの分布巻きによる3相同期モータについて電磁界解析ソフト(JMAG:株式会社日本総合研究所製)を用いて計算した。図4は計算の際の2次元モデルの1/4を表示したものであり、図5は計算に用いたU、V、W相に印加する900Aの基本電流(1次周波数電流)波形である。図6に、図4のティース(1)の節点力(固定子40の外向きを正とした)に関する計算結果を示し、図7に、図6の節点力をフーリエ変換した結果をデシベル表示したものを示す。図7から節点力は偶数次数が大きいことがわかる。
これら偶数次数の中のp次成分を低減するために重畳するp次の高次周波数電流を具体的に求めるために、印加電流と節点力の関係を調べた。その結果を図8に示す。
図8は、1次周波数電流を印加した場合にモータ30に発生する節点力波形(図中の実線)と、U、V、W相の1次周波数電流Iu、Iv、Iwの3項までを考慮した場合(図8(A))、U、V、W相の1次周波数電流Iu、Iv、Iwの6項までを考慮した場合(図8(B))及びU、V、W相の1次周波数電流Iu、Iv、Iwの7項までを考慮した場合(図8(C))の計算上の各節点力波形(図中の破線)との比較を示したものである。
図8から明らかなように、節点力は、U、V、W相の1次周波数電流Iu、Iv、Iwの7項まで考慮すると、略一致する。即ち、モータ30に1次周波数電流を印加したときに発生する節点力をF(ωt)とすると、F(ωt)は下式で表現できる。
F(ωt)=Gu*Iu+Gv*Iv+Gw*Iw+Guv*Iu*Iv+Gvw*Iv*Iw
+Gwu*Iw*Iu+Guvw*Iu*Iv*Iw ・・・(2)
ここで、G(u,v,w)は位置の関数であり、ωtの関数と考えてよい。また、(2)式は、各相電流の1次の項をすべて考慮したものと言える。尚、図8では、印加電流とは無関係の無負荷時節点力を除いてある。
尚、同じ方法をトルクに適用した結果を図9に示す。節点力と同様に、U、V、W相の1次周波数電流Iu、Iv、Iwの7項まで考慮すると略一致することがわかる。従って、ここでは節点力低減のための補正係数Kの設定方法について説明するが、トルク変動低減のための補正係数Kの設定方法についても同様の考えが適用できる。
本発明では、トルク指令値等に基づいて演算された1次周波数電流に節点力低減のためのp次の高次周波数電流を重畳するに際して、上述したように1次周波数電流にK=[1+qcos(pωt)+rsin(pωt)]の補正係数Kを乗算する。即ち、図5に示すようなU、V、W相の1次周波数電流Iu、Iv、Iwに対してp次の高次周波数電流を重畳した電流をそれぞれIu'、Iv'、Iw'とすると、補正後の印加電流Iu'、Iv'、Iw'は下記の(3)式ように表せる。
Iu'=Iu*[1+qcos(pωt)+rsin(pωt)]
Iv'=Iv*[1+qcos(pωt)+rsin(pωt)] ・・・(3)
Iw'=Iw*[1+qcos(pωt)+rsin(pωt)]
p次の高次周波数電流を重畳した電流を印加した場合の節点力F(ωt)'は、(2)式のIu、Iv、Iwに(3)式のIu'、Iv'、Iw'を代入して求めることができる。即ち、
F(ωt)'=Gu*Iu'+Gv*Iv'+Gw*Iw'+Guv*Iu'*Iv'+Gvw*Iv'*Iw'
+Gwu*Iw'*Iu'+Guvw*Iu'*Iv'*Iw'
=(Gu*Iu+Gv*Iv+Gw*Iw)*[1+qcos(pωt)+rsin(pωt)]
+(Guv*Iu*Iv+Gvw*Iv*Iw+Gwu*Iw*Iu)*[1+qcos(pωt)+rsin(pωt)]2
+Guvw*Iu*Iv*Iw*[1+qcos(pωt)+rsin(pωt)]3
となり、q、rを微小項としてテーラー展開1次までの近似とすれば、
F(ωt)'≒(Gu*Iu+Gv*Iv+Gw*Iw)*[1+qcos(pωt)+rsin(pωt)]
+(Guv*Iu*Iv+Gvw*Iv*Iw+Gwu*Iw*Iu)*[1+2qcos(pωt)+2rsin(pω
t)]+Guvw*Iu*Iv*Iw*[1+3qcos(pωt)+3rsin(pωt)] ・・・(4)
p次に関連する項を抽出して(4)式をあらためて以下のようにおく。
F(ωt)'≒(F1 0+F1 p)*[1+qcos(pωt)+rsin(pωt)]
+(F2 0+F2 p)*[1+2qcos(pωt)+2rsin(pωt)]
+(F3 0+F3 p)*[1+3qcos(pωt)+3rsin(pωt)] ・・・(5)
(5)式において、q=r=0の場合は、高次周波数電流を重畳しないことを意味しているので、F(ωt)'=F(ωt)となる。つまり、F1 p〜F3 pはp次成分の節点力を表し、F1 p、F2 p、F3 pの和は1次周波数電流により発生する節点力のp次成分を意味する。また、F1 0〜F3 0は、0次、即ち、直流(DC)成分の節点力を表し、F1 0、F2 0、F3 0の和は節点力の平均を意味する。従って、節点力の平均をFaveとすると、
ave=F1 0+F2 0+F3 0 ・・・(6)
となる。
ここで、前述した特許文献1の電流制御は、n相交流により駆動する同期電動機の各相の基本電流(1次周波数電流)を、K=1+Σi=12in・cos[2in(ωt+χ2in)]の式で得られる補正係数Kで補正するというものであり、2in次の高次周波数電流の振幅k2inに関して、同期電動機を正弦波電流で制御したときのトルク変動波形をフーリエ変換することにより算出される2in次成分の平均トルクに対する割合の極性を反転したものとしている。言い換えれば、各相の基本電流をI=Acos(ωt)+Bsin(ωt)としたときに、2in次成分を低減する高次周波数電流を重畳した電流I′を、I′={Acos(ωt)+Bsin(ωt)}*{1+qcos(2inωt)+rsin(2inωt)}として与え、qを同期電動機を正弦波電流で制御したときのトルク変動波形をフーリエ変換することにより算出される2in次成分実部の平均トルクに対する割合の極性を反転したものとし、rを同期電動機を正弦波電流で制御したときのトルク変動波形をフーリエ変換することにより算出される2in次成分虚部の平均トルクに対する割合の極性を反転したものとすることと等価と言える。
従って、低減したい節点力のp次成分の実部をFp realとし虚部をFp imagとすると、従来の特許文献1の場合、トルクを節点力に読替えてp次の高次周波数電流の振幅に関連する係数q、r(補正係数Kにおける係数q、r)を求めると、
q=−Fp real/(F1 0+F2 0+F3 0)、r=−Fp imag/(F1 0+F2 0+F3 0) ・・・(7)
となる。
一方、本発明の場合は、(5)式から、q、rを求めると、
q=−Fp real/(F1 0+2F2 0+3F3 0)、r=−Fp imag/(F1 0+2F2 0+3F3 0) ・・・(8)
となり、従来方法と異なる。
図10に、p=12として、図4に示す2次元モデルを用い、1次周波数電流900Aでのティース(1)における12次成分の節点力を低減する高次周波数電流の係数q、rの値を従来方法の(7)式で求めた場合(図中の実線)と、本発明方法の(8)式で求めた場合(図中の破線)のU相電流波形を示す。図から高次周波数電流の位相は同じで振幅が異なるのがわかる。
ところで、(8)式を誘導する過程の(4)式ではテーラー展開の1次近似を使っているので、(8)式の係数q、rが必ずしもp次成分の節点力低減の最適値とは限らない。そこで、前述の電磁界解析ソフト(JMAG)を使い、q、rを変化させてp次成分の節点力低減量を計算し、図11に示すような係数q、r値とp次成分節点力低減量との関係を示すp次成分節点力低減マップを作成した。尚、電磁界解析ソフトを使用しなくとも実験でトルクやモータケース60の振動を計測することで同様にp次成分節点力低減マップを作成できる。
図11の節点力低減マップでは、係数q、rの値は同等の低減量に対して円形状に分布し、低減量の増大に従って円形の中心に向かう目玉状のマップ形状となり、その中心に最適値(q0、r0)が存在し、最適値(q0、r0)近傍で12次成分の節点力を約24dB低減することができる。最適値(q0、r0)近傍のq、r値を用いた場合(本発明)の節点力(破線)と図6の電流補正なし(オリジナル)の場合(実線)の節点力を比較したものを図12に示し、図12の節点力をフーリエ変換した結果をデシベル表示したものを図13に示す。図13から12次成分が20dB以上低減しているのがわかる。尚、14次では悪化しているが、3相モータの場合、14次成分は他のティースの14次成分とバランスされて合力は小さくなるので問題ない。最適値(q0、r0)を用いて補正した場合のU相電流Iu'を図14に示す。また、図11に、1次周波数電流として900Aにおいて、従来方法の(7)式から得られるq、r値を(q’、r’)で示し、本発明方法の(8)式のテーラー展開1次近似により得られるq、r値を(q、r)で示してある。本発明方法の(8)式のテーラー展開1次近似により得られるq、r値では約22dBの低減効果を得られ、従来方法の(7)式により得られるq、r値では3〜4dBの低減効果しかない。
従って、例えば、図15に示すように、従来方法で算出される(q’、r’)値と最適値(q0、r0)の中間に境界を設定し、最適値(q0、r0)近傍を中心として(q'、r')と(q0、r0)間の距離の略1/2を半径とした円内の範囲を、係数q、rの選択範囲として設定することとする。これにより、従来方法に比べp次成分節点力の大幅な低減効果が得られるようになる。本計算例では約10dB以上の低減効果となり、従来方法に対して約6dB以上効果が大きく、そのまま放射音を6dB以上低減できるようになる。図15に示す円形の係数q、rの選択範囲内において、q、rを最適値(q0、r0)に設定すれば、略最大の低減効果を得ることができる。そして、q、rを最適値(q0、r0)に設定した時の高次周波数電流を重畳することによる電力増加を試算すると約3.6%であり、ほとんど問題ない。
ここで、(8)式をさらに考察する。
(2)式のF(ωt)は時間の関数であるとともに、1次周波数電流Iu、Iv、Iwの関数とも考えられ、(2)式をあらためて以下のようにおく。
F(Iu、Iv、Iw)=Gu*Iu+Gv*Iv+Gw*Iw+Guv*Iu*Iv+Gvw*Iv*Iw
+Gwu*Iw*Iu+Guvw*Iu*Iv*Iw ・・・(9)
また、(4)、(5)式の対応から、
1 0=(Gu*Iu+Gv*Iv+Gw*Iw)DC
2 0=(Guv*Iu*Iv+Gvw*Iv*Iw+Gwu*Iw*Iu)DC ・・・(10)
3 0=(Guvw*Iu*Iv*Iw)DC
ここで添え字DCは、DC成分(平均値)を示す。
(9)式を使って(10)の各式を書き改めると、
1 0=F(Iu、0、0)DC+F(0、Iv、0)DC+F(0、0、Iw)DC
2 0=F(Iu、Iv、0)DC+F(0、Iv、Iw)DC+F(Iu、0、Iw)DC
−2F(Iu、0、0)DC−2F(0、Iv、0)DC−2F(0、0、Iw)DC
3 0=F(Iu、Iv、Iw)DC−F(Iu、Iv、0)DC−F(0、Iv、Iw)DC
−F(Iu、0、Iw)DC+F(Iu、0、0)DC+F(0、Iv、0)DC
+F(0、0、Iw)DC
となり、(8)式の分母は、
1 0+2F2 0+3F3 0=3F(Iu、Iv、Iw)DC−F(Iu、Iv、0)DC
−F(0、Iv、Iw)DC−F(Iu、0、Iw)DC
=[F(Iu、Iv、Iw)DC−F(Iu、Iv、0)DC
+[F(Iu、Iv、Iw)DC−F(0、Iv、Iw)DC]
+[F(Iu、Iv、Iw)DC−F(Iu、0、Iw)DC] ・・・(11)
となる。
(11)式は、3相各相電流を同時に印加した時の半径方向節点力の平均と各相電流を2相同時に印加した時の半径方向節点力の平均の差を総計したものと言える。即ち、3相電流の内、2相を同時に印加した3つのケースの半径方向節点力平均を3相同時に印加した場合の半径方向節点力平均から差引いたものの総和である。
尚、(11)式の右辺中、F(Iu、Iv、0)DC等はJMAG等の電磁界解析ソフトでは比較的容易に求めることができるが、実験では例えばW相電流をモータ以外の負荷を経由して電流中立点に戻す等の工夫が必要となる。
図11の節点力低減マップからわかるように、節点力の同等の低減量に対して多くのq、rの組合せがある。係数q、rを選択する場合、同等の節点力低減効果であれば重畳する高次周波数電流による電力増が少ない方がよい。例として、図11において約12dBの低減効果がある2点q=0.12、r=−0.3とq=0.075、r=−0.185の場合、高次周波数電流重畳による電力増はそれぞれ5%増と2%増となり、後者のq、r値を選択することが望ましい。従って、係数q、rの値を選択する目安として、q2+r2を指標とし、q0 2+r0 2以下となるq、r値、即ち、最適値(q0、r0)による電力増以下の電力増となる係数q、rを選択するようにする。これにより、節点力の低減と共に電力増を抑制できる。
尚、係数q、rの値の選択範囲は、図15の円内の範囲に限定するものではなく、半径方向節点力或いはトルク変動の低減効果が、少なくとも従来技術のq’、r’値による3〜4dBより大きい低減効果が得られるような選択範囲であればよい。
図16に、1次周波数電流を変化させた場合の係数q、r値(図中実線で示す)を(8)式により求めた結果を示す。尚、従来方法の(7)式により求めたq、r値(図中破線で示す)についても示した。
図16から係数q、rは、1次周波数電流に応じて変化し、必ずしも一定値とはならない。従って、図16の1次周波数電流値と係数q、r値の対応データを例えばマップ化する等して、図1の電流補正係数設定部11に予め記憶格納し、この記憶データから1次周波数電流値に応じた係数q、r値を検索するようにすれば、係数q、rを(8)式による演算を行わずに設定することができ、係数q、rの設定が容易にできる。
尚、本実施形態では、節点力について説明したが、上述したようにトルク変動についても同様の論理を適用できるので、モータ振動の主要因であるトルク変動に関しても従来方法より低減でき、モータ振動を従来方法より低減できることは言うまでもない。
また、本実施形態は、同期機の一例として4極対48ティースの分布巻き3相同期モータの例を示したが、極対数やティース数が異なる同期モータにも同様に適用することができる。更に、同期ジェネレータや同期モータジェネレータにも適用することができる。
また、本実施形態は、回転子と固定子とが径方向に対向配置されるラジアルタイプの同期機への適用例を示したが、例えば、回転子と固定子とが軸方向に対向配置されるアキシャルタイプの同期機にも適用することができる。
本発明の同期機の電流制御装置の一実施形態を適用した同期モータの駆動システムの概略を示す構成図 同期型3相モータの構造を示す断面図 図2に示すモータの回転子と固定子を示す全体図 電磁解析ソフトによる計算モデル図 計算に用いたU相、V相、W相の電流波形図 計算モデルのティース(1)の半径方向節点力波形図 図6の半径方向節点力波形のフーリエ変換結果を示す図 半径方向節点力の多項式近似の説明図 トルク変動の多項式近似の説明図 高次周波数電流重畳時の従来技術と本発明の各U相電流波形の比較を示す図 係数q、rに関する半径方向節点力低減マップ 係数q、rに最適値を用いて補正した時と補正なしの時の半径方向節点力波形の比較を示す図。 図12の各半径方向節点力波形のフーリエ変換結果を示す図 係数q、rに最適値を用いた時のU相電流波形図 係数q、rの選択範囲の一例を説明する図 基本電流と係数q、rの値との対応関係を示す図
符号の説明
10 電流制御装置
11 電流補正係数設定部
13 PI制御部
20 モータドライバ
21 PWM制御部
22 インバータ
30 3相同期モータ
40 固定子
42 コイル
50 回転子
60 モータケース
70 回転軸

Claims (4)

  1. 同期機に基本電流を印加したときに現れる半径方向節点力又はトルク変動のp次成分を低減するために、前記基本電流を前記p次の高次周波数電流成分に基づいて設定した補正係数を乗算して補正するようにした同期機の電流制御装置であって、
    K=[1+qcos(pωt)+rsin(pωt)]の式により得られるKを前記補正係数として与え、前記p次の高次周波数電流成分の振幅値に関連する前記補正係数K内の係数q、rの値をそれぞれ変化させたときに、前記半径方向節点力又はトルク変動の低減効果が所定以上となるような係数q、r値を選択して補正係数Kを設定する補正係数設定手段と、
    該補正係数設定手段で設定された補正係数Kを基本電流に乗算して得られる印加電流を前記各相コイルに印加制御して同期機を駆動制御する駆動制御手段と、
    を備え
    前記同期機は3相交流により駆動され、
    前記補正係数設定手段は、
    前記補正係数K内の係数qの値を、基本電流印加時の前記半径方向節点力又はトルク変動の波形をフーリエ変換した結果の前記p次成分の実部の、3相同時に電流を印加したときの平均半径方向節点力又は平均トルクと2相同時に電流を印加したときの平均半径方向節点力又は平均トルクの差を総計したもの、に対する比の符号を反転した値とし、
    前記補正係数K内の係数rの値を、基本電流印加時の前記半径方向節点力又はトルク変動の波形をフーリエ変換した結果の前記p次成分の虚部の、3相同時に電流を印加したときの平均半径方向節点力又は平均トルクと2相同時に電流を印加したときの平均半径方向節点力又は平均トルクの差を総計したもの、に対する比の符号を反転した値として設定する構成である、
    ことを特徴とする同期機の電流制御装置。
  2. 前記補正係数設定手段は、
    前記基本電流値と前記係数q、rの値の対応データを予め記憶し、該記憶された対応データから前記基本電流値に応じて前記係数q、r値を検索する構成である請求項1に記載の同期機の電流制御装置。
  3. 同期機に基本電流を印加したときに現れる半径方向節点力又はトルク変動のp次成分を低減するために、前記基本電流を前記p次の高次周波数電流成分に基づいて設定した補正係数を乗算して補正するようにした同期機の電流制御方法であって、
    K=[1+qcos(pωt)+rsin(pωt)]の式により得られるKを前記補正係数として与え、前記p次の高次周波数電流成分の振幅値に関連する前記補正係数K内の係数q、rの値をそれぞれ変化させたときに、前記半径方向節点力又はトルク変動の低減効果が所定以上となるような係数q、r値を選択して補正係数Kを設定し、
    該設定された補正係数Kを基本電流に乗算して得られる印加電流を前記各相コイルに印加制御して同期機を駆動制御し、
    前記同期機は3相交流により駆動され、
    前記補正係数K内の係数qの値を、基本電流印加時の前記半径方向節点力又はトルク変動の波形をフーリエ変換した結果の前記p次成分の実部の、3相同時に電流を印加したときの平均半径方向節点力又は平均トルクと2相同時に電流を印加したときの平均半径方向節点力又は平均トルクの差を総計したもの、に対する比の符号を反転した値とし、
    前記補正係数K内の係数rの値を、基本電流印加時の前記半径方向節点力又はトルク変動の波形をフーリエ変換した結果の前記p次成分の虚部の、3相同時に電流を印加したときの平均半径方向節点力又は平均トルクと2相同時に電流を印加したときの平均半径方向節点力又は平均トルクの差を総計したもの、に対する比の符号を反転した値として設定するようにした、
    ことを特徴とする同期機の電流制御方法。
  4. 前記基本電流値と前記係数q、rの値の対応データを予め記憶し、該記憶された対応データから前記基本電流値に応じて前記係数q、r値を検索するようにした請求項3に記載の同期機の電流制御方法。
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