JP4742466B2 - 介在物を微細化した鋼の溶製方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は介在物を微細化した鋼の溶製方法に関する。
【0002】
【発明の背景】
近年、鋼を用いた各種機械部品に対する疲労強度向上の要請が強くなって来ている。
鋼の疲労強度は、鋼の硬さを高くすること、また鋼中に存在する介在物を小さくすることが有効であると考えられている。
鋼の硬さを高くすることは、用いる鋼の材質を適当に選択することで比較的容易に実現することができる。
【0003】
一方介在物について見ると、この介在物には大別して酸化物系の介在物と硫化物系の介在物とがあり、このうち酸化物系の介在物については、その大きさを最大でも20μm以下の大きさとするための技術が一応開発されている。
【0004】
例えば鋼の製造プロセスとして、従来鋼をアーク炉等の電気炉で溶解した後、溶鋼を取鍋に移してそこで精錬(LF精錬)を行って脱酸,脱硫を行い、しかる後溶鋼の真空脱ガス処理を行ってその後に連続鋳造等の鋳造処理を行うといったことが実施されているが、介在物の少ない清浄鋼を溶製するに際して、LF精錬の初期に脱酸力の強いAlを添加してAl脱酸を行い、そしてその後に真空脱ガス処理を長い時間かけて行った上で鋳造を行うことで、酸化物系介在物をスラグ中に十分に浮上分離させ、更に鋳造に際しても溶鋼の酸化を極力防止するなどして、酸化物系介在物を少なくし且つ介在物径を20μm以下に小さくする方法が本出願人において実施されている。
【0005】
他方硫化物系の介在物については、その大きさを20μm以下に制御するための方法については未だ見い出されていない。
そこで本発明者等は、硫化物系介在物を20μm以下の小さいものに制御するための方法について研究し、先ず溶鋼中のS量を少なく制御すること、即ち溶鋼中のSの総量規制を行ったところ、硫化物系介在物全体の量については少なくなるものの、生成した介在物について見るとその中に大きな介在物が存在しており、従って単にSの総量規制を行っただけでは硫化物系介在物の大きさを十分に小さくすることはできないことが分った。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の鋼の溶製方法はこのような課題を解決するために案出されたものである。
而して請求項1のものは、鋼を溶解した後に脱硫精錬を行って溶鋼中のSを質量%で0.003%以下に低減し、脱硫処理後に該溶鋼の真空脱ガス処理を行って該溶鋼中のNを100ppm以下に低減した後、該真空脱ガス処理の末期にTiを50〜150ppmの範囲で添加し、該真空脱ガス処理後において溶鋼温度が1700℃以下で該溶鋼中にBiを添加することによって、硫化物系の介在物を20μm以下に微細化した鋼を得ることを特徴とする。
【0007】
請求項2のものは、請求項1において、前記溶鋼中のNを70ppm以下に低減した状態でTiを添加することを特徴とする。
【0008】
【作用及び発明の効果】
以上のように本発明は鋼を溶解した後、溶鋼中のNを100ppm以下に低減した状態で溶鋼中にTiを50〜150ppmの範囲で添加し、且つ溶鋼中Sを0.003%以下に総量規制するようになしたものである。
【0009】
本発明者等は、硫化物系介在物を小さく制御するため先ず代表的な硫化物系介在物であるMnSの生成機構について着眼し、そして硫化物系介在物のサイズを小さく制御するために溶鋼の凝固過程で先ず核を生成させ、その核の周りにMnSを析出させることを考えた。
【0010】
詳しくは、TiN等を晶出させてこれを核とし、その周りにMnSを析出させる点に着目し、溶鋼の製造プロセスの中でTiを積極的に添加することを考えた。
但し多量のTiを添加するとTiNが過剰に生成してこのTiN自身が介在物となってしまうため、加えるべきTiの量は必要最小限とする必要がある。
【0011】
また同様に多量のNが存在する中でTiを加えると、同じく過剰のTiNが生成してこれが介在物となってしまう問題が発生する。
従ってTiN等を核として生成させる場合においても、溶鋼中のN量,Tiの添加量,Tiの添加時期等が極めて重要となる。
【0012】
ここにおいて本発明は、鋼を溶解した後、溶鋼中のNを100ppm以下に低減した状態で溶鋼中にTiを50〜150ppmの範囲で添加するようになしたものである。
ここでTiを50〜150ppmの範囲で添加するのは以下のような理由による。
【0013】
通常、清浄鋼を溶製する場合精錬後に溶鋼の真空脱ガス処理を行うが、この真空脱ガス処理を行ったときに到達可能な溶鋼中のNレベルはほぼ70ppm以下のレベルである。
【0014】
ここで鋼の融点を例えば1500℃としたとき、NとTiとの溶解度積は図1中Yで表した線となる。
即ちこの線Yにて表した境界よりも図中上側の領域はTiNが溶鋼中に固溶し切れずに一部が晶出して来る領域であり、また下側の領域はTiNが溶鋼中に固溶したままの状態となる領域である。
【0015】
TiNを核として晶出させ、その周りにMnSを析出させるためには、MnSが析出する前にTiNを生成させておく必要があり、しかもこの場合TiNを過剰に晶出させることは、TiN自体が介在物そのものとなってしまうことから避けなければならない。
【0016】
ここでNが70ppm以下の状態で且つ溶鋼が1500℃で凝固し始めるとしたときのTiとNとの溶解度積を見ると、Tiが100ppm前後がTiNの固溶可能な最大限の量になると考えられる。
そこで本発明ではTiを100ppm前後、詳しくは溶鋼中のNレベルが100ppm以下となるレベルでTiを50〜150ppmの範囲で添加するようになしたものである。
【0017】
以上のようにN及びTiを制御して鋼の溶製を行ったところ、従来達成できなかった硫化物系の介在物径20μm以下を達成することができた。
而してこのように介在物径を小さく制御できたことによって、鋼を用いた各種機械部品の疲労強度を十分に高めることが可能となる。
尚本発明においてはSの総量規制も当然ながら必要である。
本発明では溶鋼中のSの総量を0.003%以下に規制している。
【0018】
本発明では、鋼の溶解後に脱硫精錬を行って溶鋼中のSを0.003%以下に低減した後においてTiを添加する。
更にまた脱硫処理後に溶鋼の真空脱ガス処理を行って溶鋼中のNを100ppm以下に低減した後、Tiを添加する。
この場合においてTiの添加を真空脱ガス処理の末期に行う。
【0019】
尚、溶鋼中のS量を上記量に規制することによって鋼の被削性が低下するのを避けられない。
そこで本発明では溶鋼中にBiを添加するようにしている。
但しBiは沸点が低く(1560℃)、従ってBiの添加のタイミングを溶鋼の温度が高い段階で行うとBiが蒸発によって多量にロスしてしまい、歩留りが悪くなってしまう。
【0020】
そこでBiの添加は、溶鋼の温度が1700℃以下で行う。
尚このBiは最終的に溶鋼中0.01〜0.10%の範囲で含有されるようにしておくことができる。
またOについてはその含有量を15ppm以下に規制しておくことができる。
また上記Tiを添加するに際して、その際の溶鋼中のNを望ましくは70ppm以下としておくのが良い(請求項2)。
【0021】
【実施例】
次に本発明の実施例を以下に詳述する。
JIS規定の機械構造用鋼であるSCM435を以下のようなプロセスを経て溶製した。
即ち、図2に示しているように先ず電気炉(アーク炉:EAF)10にて鋼を溶解し、次いでスラグを除去(スラグオフ:SO)するとともに溶鋼を取鍋12に移して取鍋精錬装置(LF精錬装置)14にて取鍋精錬(LF精錬)を行った。
【0022】
尚このときLF精錬の初期に造滓剤CaFとともに脱酸剤としてのAlを添加し、LF精錬において脱硫及び脱酸を行った。このとき溶鋼中に含まれているS,OはCaS,Al2O3等としてスラグ中に浮上分離する。
【0023】
続いてRH真空脱ガス装置16を用いて溶鋼の真空脱ガス処理を行った。
このときのRH真空脱ガス処理は40分間行った。
その後Bi添加を行った後、図2に示す連続鋳造装置18を用いて連続鋳造を行った。
これら一連のプロセスにおいて、本例ではRH真空脱ガス処理の末期にTiを約100ppm溶鋼中に添加した。
【0024】
次にこのようにして得た鋼の中からサンプルをランダムに5個切り出して、それぞれについて硫化物系介在物(MnS)のサイズを顕微鏡で各々10視野観察した(全部で50視野)。
結果が図3に示してある。
【0025】
一方比較のために前述と同様の組成の鋼(SCM435)を上記と同様のプロセスに従って溶製した。
この比較例の製造プロセスは、Biを添加していないこと及びRH真空脱ガス処理末期においてTiを添加していないことを除き、基本的に上記実施例の製造プロセスと同様である。
【0026】
図3の結果から分るように、本発明例のプロセスに従って溶製した鋼の場合、何れの視野においても硫化物系介在物のサイズは20μmよりも全て小さいものであった。
尚、本発明例の製造プロセスによって溶製した鋼についての硫化物系介在物のサイズの測定値を極値統計法に従って統計処理したとき、存在し得る最大サイズは一般部の場合99.9%の確率で15.09μm,中心部で17.75μmであった。
即ち鋼中に存在し得る硫化物系介在物の粒径は一般部では99.9%の確率で15.09μm以下,中心部では17.75μm以下との結果が得られた。
【0027】
一方比較例に従って溶製した鋼の場合、統計処理をした場合の最大の粒径サイズは一般部で23.3μm,中心部で22.7μmであった。
即ち本発明例に従って鋼を溶製することにより、硫化物系介在物のサイズを従来では達成できなかった20μm以下に制御することが可能となる。
【0028】
以上本発明の実施例を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明はその主旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた態様で実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明において介在物を微細化するための原理を説明する説明図である。
【図2】 本発明の実施例において行った鋼の溶製方法のプロセスを示す図である。
【図3】 本発明例に従って得られた鋼の中の介在物のサイズを示す図である。
Claims (2)
- 鋼を溶解した後に脱硫精錬を行って溶鋼中のSを質量%で0.003%以下に低減し、脱硫処理後に該溶鋼の真空脱ガス処理を行って該溶鋼中のNを100ppm以下に低減した後、該真空脱ガス処理の末期にTiを50〜150ppmの範囲で添加し、該真空脱ガス処理後において溶鋼温度が1700℃以下で該溶鋼中にBiを添加することによって、硫化物系の介在物を20μm以下に微細化した鋼を得ることを特徴とする介在物を微細化した鋼の溶製方法。
- 請求項1において、前記溶鋼中のNを70ppm以下に低減した状態でTiを添加することを特徴とする介在物を微細化した鋼の溶製方法。
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