JP4742254B2 - 単結晶の育成方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、LiNb1−xTa(0≦x≦1)単結晶の育成技術に係わり、特にクラック発生確率が低く、さらに粉詰まり発生確率が小さい、DCCZ法によるLiNb1−xTa(0≦x≦1)単結晶の育成技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
LiNbO単結晶(LN単結晶と称す)やLiTaO単結晶(LT単結晶と称す)、またその中間組成の結晶はSAW素子や光素子の基板材料として優れた特性を有している。以後、LN単結晶、LT単結晶およびその中間組成の結晶を含めて、 LiNb1−xTa(0≦x≦1)単結晶と称す。
【0003】
LN単結晶やLT単結晶は、育成が容易という理由で、従来はバッチ法のCZ法でコングルエント組成の結晶が育成されてきた。一方、特開平11−35393号等で開示されている、引き上げる結晶と同じ組成の原料を連続的に供給しながら結晶を引き上げる原料連続供給型二重坩堝CZ法(以下、DCCZ法)が、育成環境の経時変化、即ち、融液組成や液量減少を伴わない育成法として注目されている。このDCCZ法は、定比組成のLN単結晶やLT単結晶に特に有効であるが、コングルエント組成のLN単結晶やLT単結晶の育成においても、長尺で均一性の高い結晶を育成できるという点で、本手段は有効な手段であると考えられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来一般的に用いている供給原料の粒径は200〜400μm程である。しかしながら、前記の粒径の供給原料を用いると結晶にクラックが発生しやすくなるということが本発明者らの実験で確認され、問題となっていた。本発明はこのような従来には検討されていない単結晶の育成中の供給原料に用いる粒径に関して不利、問題点を解決したLiNb1−xTa(0≦x≦1)単結晶の製造方法に関するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、供給する原料の粒径を所定の大きさにすることでクラック発生率が減少することを見出した。さらに、振動により原料を輸送する機構を備えた供給装置を使用することで、大きな粒径の顆粒の使用でも、低い粉詰まり発生頻度での供給が可能となることを示した。
【0006】
つまり、本発明はDCCZ法によるLiNb1−xTa(0≦x≦1)単結晶の育成方法において、単結晶の育成中に原料溶液中に供給する供給原料のうち重量比で30%以上の粉末が500μm以上の粒径であることを特徴とする。また、供給原料のうち重量比で30%以上の粉末が500〜2000μm、さらには500〜1000μmであることが好ましい。
【0007】
大きな粒径の供給原料を用いることで、クラック発生頻度の低いLiNb1−xTa(0≦x≦1)単結晶の製造を実現できる。大きな粒径の原料供給を行う場合には、粉詰まりの問題はより顕著になる。よって原料を供給する部分で供給するための部品同士が摺動するものは間に粉詰まりが発生するため好ましくない。よって例えば振動により原料を輸送する機構を備えた供給装置の使用は非常に有効である。
【0008】
供給原料の粒径を大きくすることでクラック発生頻度が低くなる機構は定かでないが、供給した原料のうち、解け残ったものが育成融液内を舞い、これが結晶するためと考えられる。供給原料の粒径を大きくすることで、単位重量当りの粒子数が減り、発生する微小粒子数が小さくなり、結果としてクラックの発生頻度を低減できたものと考えている。
【0009】
本発明で用いた供給原料の粒径規定の範囲限定の理由を述べる。供給原料の粒径が500μm未満であると上記事項が原因と推察される要因から育成した単結晶にクラックの発生頻度が高くなる。逆に2000μmよりも大きくなると単位体積あたりの表面積が小さくなり、原料溶液中に供給した際溶融し難い等の問題がある。よって溶湯制御の観点から考慮すると2000μmよりも小さいことが好ましい。さらに好ましくは500〜1000μmの範囲に粒径をそろえることである。本発明において粒径とは最長辺を示したものであり、簡便な測定法としては篩を用いて分級することが挙げられる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施例を示す。
(実施例1)
高純度LiO、Nbの原料粉末を準備し、Liモル濃度が0.59の融液合成用原料と、Liモル濃度が0.50の定比組成原料を各々調整した。次に、各々の原料を約1050℃の大気中で焼結し、各々を約98MPaの静水圧でラバープレス成形し、原料塊を作成した。このうち、定比組成原料塊を、供給用原料として約1150℃の大気中で焼結し、粉砕し、大きさが50μm以上500μm、および500μm以上800μmと、2つのサイズの範囲になるよう篩を用いて分級し、それぞれの重量比が1:1となるように混合し、供給原料とした。次に、二重るつぼ法による単結晶育成を行った。作成したLiモル濃度が0.59の原料からなる原料塊を内側および外側るつぼに予め充填し、次にるつぼを加熱してLi成分過剰な融液を作成した。
【0011】
ここで、DCCZ法の原理について図1を用いて詳細に説明する。図1は本発明に用いた育成炉1を示すものである。本実施例に用いた二重るつぼの構造は、外るつぼ35の内部に、円筒36(内るつぼと呼ぶ)を設置した構造とした。内るつぼの底付近には、外るつぼから内るつぼに通じる孔を設けた。この孔は約20mm×30mmの四角形状で、内るつぼに3箇所設けた。液高さは約50mmとし、この四角形状の孔が完全に液内に沈んだ状態とした。ここで、育成に用いたるつぼの材質は白金製のものを用い、かつ周囲を育成炉体47でカバーし外部雰囲気の流入を防止した。用いた二重るつぼの形状は、外るつぼ35が直径約170mmで高さが約100mm、内るつぼ36が直径約120mmで高さを約250mmとした。内るつぼの高さを、外るつぼより150mm程高くしたのは、供給原料の一部が雰囲気中を飛散し、育成中の結晶に付着することを防ぐ為である。内るつぼ36と外るつぼ35の間は片側約25mmのスペース34があり、ここに原料45がスムーズに落下できるように原料供給管37を安定に設置した。前記原料供給管の一端には振動を利用した原料輸送機構が備えられている。融液表面の様子をビデオカメラ(図示せず)で観察した。るつぼを回転しないと融液表面の対流はほとんど見られないが、るつぼ回転機構50によりるつぼの回転数を徐々に上げていくと、回転方向への強制的な融液対流が強くなる様子が見られ、るつぼの回転の効果が観察された。
【0012】
内側るつぼ内のLi成分過剰の融液41から結晶を成長させた。融液の温度を高周波発振機48への投入電力と高周波誘導コイル43により所定の温度に安定させた後、Z軸方位に切り出した5mm×5mm×長さ70mmの単一分極状態にあるLN単結晶を種結晶40として回転支持棒38の下部に接続し、融液41に付け、融液温度を制御しながら結晶を回転させて上方向に引き上げることでLN単結晶42を成長させた。育成雰囲気は数%の酸素を含む窒素中とした。LT単結晶42の回転速度は5〜20rpmの範囲内で一定とし、引き上げ速度は0.5から3.0mm/hの範囲で変化させた。育成した結晶から約90mm径のウエハーが作成できるよう結晶の直胴部に対し、自動直径制御を行った。さらに、育成結晶成長重量をロードセル44により測定し、結晶化した成長量に見合った量のLiモル濃度モル分率が0.50の定比組成原料45を外側るつぼ35に供給した。ここではLT単結晶42の成長量変化がコンピュータ49により求められているので、原料45の供給はLT種結晶40から単結晶42の育成が始まり直径制御が安定化した時点から開始した。原料45の供給は、予め育成炉体47上部に設置した重量測定センサーを兼ね備えた密封容器46内に保管した原料45をセラミックスあるいは貴金属からなる供給管37を通じて行った。供給管37及び密封容器46に毎分50〜500ccの範囲でガス51を弁を具備するガス管33を介して流入した。ガス51の流量は供給する原料45の単位時間当たりの量と粒径によって最適化した。これによって、飛散や供給管37内での詰まりのない円滑な原料供給を行った。育成中、貴金属二重るつぼを回転させることで、供給した粉末原料の融液との均質化と同時に、強制的に結晶成長界面を液面に対してフラットもしくは凸になるよう融液の対流を制御した。各々の組成において約1週間の育成を実施した。育成終了時の結晶の融液からの切り離しは、1mm/秒の引上げ速度で行った。これにより育成中の結晶底部における固液界面状態の観察が可能となった。数回の育成を行ったが、全ての育成で、直径90mm,直胴部長さ50mm程度の無色透明のLN単結晶を得た。
【0013】
(実施例2)
Liモル濃度が0.50の定比組成原料について、約1050℃の大気中で焼結し、約98MPaの静水圧でラバープレス成形し、さらに約1150℃の大気中で焼結し、粉砕したものを、粒径が50μm以上500μm、および500μm以上800μmと、2つのサイズの範囲になるよう篩を用いて分級し、それぞれの重量比が1:2となるように混合し、供給原料とした。それ以外は実施例1と同様にしてLN単結晶の製造を行った。
【0014】
(実施例3)
Liモル濃度が0.50の定比組成原料について、約1050℃の大気中で焼結し、約98MPaの静水圧でラバープレス成形し、さらに約1150℃の大気中で焼結し、粉砕したものを、粒径が500μm以上800μmの範囲になるよう篩を用いて分級し、供給原料とした。それ以外は実施例1と同様にしてLN単結晶の製造を行った。
【0015】
(比較例1)
Liモル濃度が0.50の定比組成原料について、約1050℃の大気中で焼結し、約98MPaの静水圧でラバープレス成形し、さらに約1150℃の大気中で焼結し、粉砕したものを、粒径が50μm以上500μm、および500μm以上800μmと、2つのサイズの範囲になるよう篩を用いて分級し、それぞれの重量比が3:1となるように混合し、供給原料とした。それ以外は実施例1と同様にして、数回のLN単結晶の製造を行った。
【0016】
(比較例2)
Liモル濃度が0.50の定比組成原料について、約1050℃の大気中で焼結し、約98MPaの静水圧でラバープレス成形し、さらに約1150℃の大気中で焼結し、粉砕したものを、粒径が50μm以上500μm、および500μm以上800μmと、2つのサイズの範囲になるよう篩を用いて分級し、それぞれの重量比が4:1となるように混合し、供給原料とした。それ以外は実施例1と同様にして、数回のLN単結晶の製造を行った。
【0017】
(比較例3)
Liモル濃度が0.50の定比組成原料について、約1050℃の大気中で焼結し、約98MPaの静水圧でラバープレス成形し、さらに約1150℃の大気中で焼結し、粉砕したものを、粒径が50μm以上500μmの範囲になるよう篩を用いて分級し、供給原料とした。それ以外は実施例1と同様にして、数回のLN単結晶の製造を行った。
【0018】
(実施例4)
高純度LiO、Taの原料粉末を準備し、Liモル濃度が0.60の融液合成用原料と、Liモル濃度が0.50の定比組成原料を混合した。次に、各々の原料を約1050℃の大気中で焼結し、各々を約300MPaの静水圧でラバープレス成形し、原料塊を作成した。このうち、定比組成原料塊を、供給用原料として約1350℃の大気中で焼結し、粉砕し、大きさが50μm以上500μm、および500μm以上800μmと、2つのサイズの範囲になるよう篩を用いて分級し、それぞれの重量比が1:1となるように混合し、供給原料として使用した。次に、二重るつぼ法による単結晶育成を行った。作成したLiモル濃度が0.60の原料からなる原料塊を内側および外側るつぼに予め充填し、次にるつぼを加熱してLi成分過剰な融液を作成した。
【0019】
実施例1と同様、図1に示す装置を使用し、内側るつぼ内のLi成分過剰の融液41から結晶を成長させた。融液の温度を高周波発振機48への投入電力と高周波誘導コイル43により所定の温度に安定させた後、Y軸方位に切り出した5mm×5mm×長さ70mmの単一分極状態にあるLT単結晶を種結晶40として回転支持棒38の下部に接続し、融液41に付け、融液温度を制御しながら結晶を回転させて上方向に引き上げることでLT単結晶42を成長させた。育成雰囲気は数%の酸素を含む窒素中とした。LT単結晶42の回転速度は5〜20rpmの範囲内で一定とし、引き上げ速度は0.5から3.0mm/hの範囲で変化させた。育成した結晶から約90mm径のウエハーが作成できるよう結晶の直胴部に対し、自動直径制御を行った。さらに、育成結晶成長重量をロードセル44により測定し、結晶化した成長量に見合った量のLiモル濃度モル分率が0.50の定比組成原料45を外側るつぼ35に供給した。ここではLT単結晶42の成長量変化がコンピュータ49により求められているので、原料45の供給はLT種結晶40から単結晶42の育成が始まり直径制御が安定化した時点から開始した。原料45の供給は、予め育成炉体47上部に設置した重量測定センサーを兼ね備えた密封容器46内に保管した原料45をセラミックスあるいは貴金属からなる供給管37を通じて行った。前記原料供給管の一端には振動を利用した原料輸送機構が備えられている。供給管37及び密封容器46に毎分50〜500ccの範囲でガス51を弁を具備するガス管33を介して流入した。ガス51の流量は供給する原料45の単位時間当たりの量と粒径によって最適化した。これによって、飛散や供給管37内での詰まりのない円滑な原料供給を行った。育成中、貴金属二重るつぼを回転させることで、供給した粉末原料の融液との均質化と同時に、強制的に結晶成長界面を液面に対してフラットもしくは凸になるよう融液の対流を制御した。各々の組成において約1週間の育成を実施した。育成終了時の結晶の融液からの切り離しは、1mm/秒の引上げ速度で行った。これにより育成中の結晶底部における固液界面状態の観察が可能となった。数回の育成を行ったが、全ての育成で、直径約90mm,長さ50mm程度の無色透明のLT単結晶を得た。
【0020】
(実施例5)
Liモル濃度が0.50の定比組成原料について、約1050℃の大気中で焼結し、約300MPaの静水圧でラバープレス成形し、さらに大気中で1350℃前後で焼結し、粉砕したものを、大きさが50μm以上500μm、および500μm以上800μmと、2つのサイズの範囲になるよう篩を用いて分級し、それぞれの重量比が1:2となるように混合し、供給原料とした。それ以外は実施例1と同様にしてLT単結晶の製造を行った。
【0021】
(実施例6)
Liモル濃度が0.50の定比組成原料について、約1050℃の大気中で焼結し、約300MPaの静水圧でラバープレス成形し、さらに大気中で1350℃前後で焼結し、粉砕したものを、粒径が500μm以上800μmの範囲になるよう篩を用いて分級し、供給原料とした。それ以外は実施例4と同様にしてLT単結晶の製造を行った。
【0022】
(比較例4)
Liモル濃度が0.50の定比組成原料について、約1050℃の大気中で焼結し、約300MPaの静水圧でラバープレス成形し、さらに大気中で1350℃前後で焼結し、粉砕したものを、粒径が50μm以上500μm、および500μm以上800μmと、2つのサイズの範囲になるよう篩を用いて分級し、それらを重量比3:1で混合し、供給原料とした。それ以外は実施例4と同様にして、数回のLT単結晶の製造を行った。
【0023】
(比較例5)
Liモル濃度が0.50の定比組成原料について、約1050℃の大気中で焼結し、約300MPaの静水圧でラバープレス成形し、さらに大気中で1350℃前後で焼結し、粉砕したものを、粒径が50μm以上500μm、および500μm以上800μmと、2つのサイズの範囲になるよう篩を用いて分級し、それらを重量比4:1で混合し、供給原料とした。それ以外は実施例4と同様にして、数回のLT単結晶の製造を行った。
【0024】
(比較例6)
Liモル濃度が0.50の定比組成原料について、約1050℃の大気中で焼結し、約300MPaの静水圧でラバープレス成形し、さらに大気中で1350℃前後で焼結し、粉砕したものを、粒径が50μm以上500μmの範囲になるよう篩を用いて分級し、供給原料とした。それ以外は実施例4と同様にして、数回のLT単結晶の製造を行った。
【0025】
(実施例7)
高純度LiO、Taの原料粉末を準備し、Liモル濃度が0.485となるように秤量、混合し、各々の原料を約1050℃の大気中で焼結し、各々を約300MPaの静水圧でラバープレス成形し、原料塊を作成した。このうちの一部を供給用原料として、大気中で1400℃前後の温度で焼結し、粉砕し、大きさが50μm以上500μm、および500μm以上800μmと、2つのサイズの範囲になるよう篩を用いて分級し、それぞれの重量比が1:1となるように混合し、供給原料として使用した。次に、二重るつぼ法による単結晶育成を行った。残った焼結原料を内側および外側るつぼに予め充填し、次にるつぼを加熱してコングルエント組成の融液を作成した。
【0026】
実施例1と同様、図1に示す装置を使用し、内側るつぼ内の融液41から結晶を成長させた。融液の温度を高周波発振機48への投入電力と高周波誘導コイル43により所定の温度に安定させた後、Y軸方位に切り出した5mm×5mm×長さ70mmの単一分極状態にあるLT単結晶を種結晶40として回転支持棒38の下部に接続し、融液41に付け、融液温度を制御しながら結晶を回転させて上方向に引き上げることでLT単結晶42を成長させた。育成雰囲気は数%の酸素を含む窒素中とした。LT単結晶42の回転速度は5〜20rpmの範囲内で一定とし、引き上げ速度は0.5から4.0mm/hの範囲で変化させた。育成した結晶から約90mm径のウエハーが作成できるよう結晶の直胴部に対し、自動直径制御を行った。さらに、育成結晶成長重量をロードセル44により測定し、結晶化した成長量に見合った量のコングルエント組成原料45を外側るつぼ35に供給した。ここではLT単結晶42の成長量変化がコンピュータ49により求められているので、原料45の供給はLT種結晶40から単結晶42の育成が始まり直径制御が安定化した時点から開始した。原料45の供給は、予め育成炉体47上部に設置した重量測定センサーを兼ね備えた密封容器46内に保管した原料45をセラミックスあるいは貴金属からなる供給管37を通じて行った。前記原料供給管の一端には振動を利用した原料輸送機構が備えられている。供給管37及び密封容器46に毎分50〜500ccの範囲でガス51を弁を具備するガス管33を介して流入した。ガス51の流量は供給する原料45の単位時間当たりの量と粒径によって最適化した。これによって、飛散や供給管37内での詰まりのない円滑な原料供給を行った。育成中、貴金属二重るつぼを回転させることで、供給した粉末原料の融液との均質化と同時に、強制的に結晶成長界面を液面に対してフラットもしくは凸になるよう融液の対流を制御した。各々の組成において約1週間の育成を実施した。育成終了時の結晶の融液からの切り離しは、1mm/秒の引上げ速度で行った。これにより育成中の結晶底部における固液界面状態の観察が可能となった。数回の育成を行ったが、全ての育成で、直径約90mm,長さ50mm程度の無色透明のLT単結晶を得た。
【0027】
(実施例8)
コングルエント組成原料を、約1050℃の大気中で焼結し、約300MPaの静水圧でラバープレス成形し、さらに大気中で1400℃前後で焼結し、粉砕したものを、大きさが50μm以上500μm、および500μm以上800μmと、2つのサイズの範囲になるよう篩を用いて分級し、それらを重量比1:2で混合し、供給原料とした。それ以外は実施例1と同様にしてLT単結晶の製造を行った。
【0028】
(実施例9)
コングルエント組成原料を、約1050℃の大気中で焼結し、約300MPaの静水圧でラバープレス成形し、さらに大気中で1400℃前後で焼結し、粉砕したものを、粒径が500μm以上800μmの範囲になるよう篩を用いて分級し、供給原料とした。それ以外は実施例1と同様にしてLT単結晶の製造を行った。
【0029】
(比較例7)
コングルエント組成原料を、約1050℃の大気中で焼結し、約300MPaの静水圧でラバープレス成形し、さらに大気中で1400℃前後で焼結し、粉砕したものを、粒径が50μm以上500μm、および500μm以上800μmと、2つのサイズの範囲になるよう篩を用いて分級し、それらを重量比3:1で混合し、供給原料とした。それ以外は実施例1と同様にして、数回のLT単結晶の製造を行った。
【0030】
(比較例8)
コングルエント組成原料を、約1050℃の大気中で焼結し、約300MPaの静水圧でラバープレス成形し、さらに大気中で1400℃前後で焼結し、粉砕したものを、粒径が50μm以上500μm、および500μm以上800μmと、2つのサイズの範囲になるよう篩を用いて分級し、それらを重量比4:1で混合し、供給原料とした。それ以外は実施例1と同様にして、数回のLT単結晶の製造を行った。
【0031】
(比較例9)
コングルエント組成原料を、約1050℃の大気中で焼結し、約300MPaの静水圧でラバープレス成形し、さらに大気中で1400℃前後で焼結し、粉砕したものを、粒径が50μm以上500μmの範囲になるよう篩を用いて分級し、供給原料とした。それ以外は実施例1と同様にして、数回のLT単結晶の製造を行った。
【0032】
上記実験で確認されたクラックの発生率を表1にまとめた。発生率は、クラックが存在した結晶数を全育成結晶数で割った値に100をかけた値とする。
【0033】
【表1】
Figure 0004742254
【0034】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明方法によれば、DCCZ法における供給原料の粉詰まりなしに、さらに低いクラック発生頻度で、LN単結晶やLT単結晶を育成することができる。また、本明細書では定比組成のLN単結晶、およびLT単結晶、コングルエント組成のLT単結晶の育成例についてのみ示したが、本発明の内容が、原料供給に伴った問題を解決するものである為、コングルエント組成のLN単結晶や、LN単結晶とLT単結晶の間に位置する、LiNb1−xTa(0≦x≦1)の化学式で示される単結晶の育成においても有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いた育成炉を示す一例である。
【符号の説明】
1 育成炉、35 外るつぼ、36 内るつぼ、37 原料供給管、
40 種結晶、41 融液、42 LN単結晶、43 高周波誘導コイル、
45 原料、47 育成炉体、51 ガス、61 単結晶部、
62 セラミック層

Claims (2)

  1. DCCZ法によるLiNb1−xTa(0≦x≦1)単結晶の育成方法において、
    単結晶の育成中に原料融液中に供給する供給原料として、500μm未満の粒径を有する粉末原料と、500μm以上1000μm以下の粒径を有する粉末原料とを用い、
    前記供給原料における前記500μm以上1000μm以下の粒径を有する粉末原料の重量比は30%以上であることを特徴とする単結晶の育成方法。
  2. 振動を利用した原料輸送機構を用いて原料を連続供給する請求項に記載の単結晶の育成方法。
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